395 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2006/02/14(火) 20:49:45 [ WHZho/p6 ]
曳航索異常なーし!」
「バカヤロウ!張力の架かった索に近づくな!」
先輩海士に怒鳴られる2等海士。海上自衛隊ではいつもの光景だ。
「す、すみません」
弾かれたように後部甲板の中央に延びる鋼鉄製のワイヤーから飛び退く。しかし下がった足が環がねら
れた予備索を踏む、そこに船の動揺も重なりバランスを保てず
「きゃっ!」
背中から倒れる。
「痛い〜」
「常盤!何やってんだ。もう船乗って2ヶ月過ぎてんだぞ。」
先輩海士、伊藤士長が呆れ果てる。
「すみませんすみません大丈夫です」
常盤と呼ばれた2等海士、常盤海帆(みほ)は俗にウェーブと呼ばれる女性海上自衛官だ。
しかし、海帆は入隊基準ギリギリの小柄な体と子供っぽい顔付きで高校生によく間違えられる。
無理もない。
約半年前まで海帆は現役女子高生だった。卒業後、高倍率の試験を突破し海上自衛隊に入隊した。4ヶ
月間横須賀教育隊で自衛官としての基礎を学び2ヶ月前『げんかい』に配属された。
多用途支援艦『げんかい』はひうち型の4番艦。排水量980トン、全長57メートル、救難や訓練支
援等を任務とし広い後部甲板に曳航式水上標的を2機搭載できる。
海帆たちは訓練支援のために水上標的を曳航しているところだった。
「常盤、索が切れたらホント危ないからな。まして、標的引っ張ってるワイヤーだからお前の体なんて
簡単に真っ二つだからな。」
ベテランの海曹が半ば脅しのように言うが、索での事故で大怪我し陸上勤務になったり退職する乗組員
は少なくない。実際に乗組員が死亡する事故も起きている。最前線でミサイルを撃ち合う護衛艦に限ら
ず艦船勤務は危険が伴っている。
「常盤、こっちの作業はいいから使わない索とかごみとか片付けてくれ。」
「はい!」
元気よく返事すると指示された作業にかかる。しかし所詮2等海士、用途どころか名前すらわからない
道具、曳航具がごろごろ出てくる。
何これ?どこに片付けりゃーいいの?
考えても解るわけないので伊藤士長に聞くことにした。
「伊藤士長ー!これどこ置けばいいですかー?」
「あ゛ー?ちょっと待ってろ。艦橋、後部、現在急に視界が悪くなってきた。曳航標的を視認できない
艦橋から視認でき・・・・」
そこで無電池電話を被り伝令をしていた伊藤士長は音を聞いた
ピキバキ・・・ブチブチ・・・
音のするほうを見る。
「・・・・・・まさか!常盤離れろ!!」
「ふぇ?」
バーンと曳航索が切れたと同時に右舷から殴られたような衝撃が船体に走った。
船体が大きく揺れる。
「くそ!!艦橋!後部!曳航索が切れた!曳航索が切れた!」
『船体に大激動!急速探知はじめ!』
カーンカーンカーンカーン
耳障りな警報音が鳴り響く。
「何かにつかまれー!怪我人いないか!?」
後部指揮官が状況を把握しようと周りをみる。
全員が伏せあるいは何かにしがみ付いていたが一人だけ立っていた。
「常盤伏せろー!!落ちるぞ!!」
しかし海帆は動揺に操られるようにうつろな目でフラフラと歩きついに海に落ちてしまった。
「おい!!常盤が落ちたぞ!救命浮環だ早くしろ!」
誰かが叫ぶ。しかし海帆には誰が叫んだか解らなかった。意識が遠のく。言葉の意味すら理解できなか
った。
海帆が理解できたのは視界いっぱいに広がる青い世界と体を包む海水の冷たさだった。
414 名前:長崎県人 投稿日: 2006/07/31(月) 11:25:39 [ dqay7chg ]
貴公を、最大級の驚異と判断する!!(褒め言葉)
うまいですね〜龍をそう使うとは、楽しく読ませていただきました
場所が霞ケ浦、ということは珍し物好きの元司令こと、あの人が飛んで来そうですね、楽しみです。勝てば命令を聞くんだな、と撫子さんと花札で勝負!とか(ポーカーは知らないだろうし、将棋もありか?麻雀とか、あの人面白くないと言ってるけどあり、か?)
負け続けて博之に八つ当たりしたり、龍になってあばれたり。博之だけ負け続けて
例えば
『弱いの〜大尉、あ、それな、ロン、緑一色な』
『お、わしもそれじゃ!!!何か文字いっぱ〜い!!どーん!』
『ちょ!ダブロンで緑一色と四暗刻とか・・・!役もろくに言えない奴にぃ〜!』
『いえ〜い(あの人とハイタッチ)払うもんがないなら、裸にでもなってもらおうかのぅ(ニヤリ)』
『点数からすってんてん、だな、大尉(ニヤリ)』
『ぎぃやぁああああっー!!!』
とあの人と何か物凄く仲良くなったり
米国の方は龍も結構傷ついてるでしょうから・・・ちょっと心配です。でもイメージとして猛牛の彼と
『『キルジャーップス!!!HAーHAHAHAHAHAHA!!!』』
とエンプラの艦首で並んでしてそな気がw
663 名前:長崎県人 投稿日: 2006/09/13(水) 00:14:37 [ QDKBCzwM ]
アイスランドニートドラゴンブチ切れver(妄想の産物なのであしからず)
『誰も居ない静寂を私は望むのに・・・』
なにもかも、人さえも凍りついたレイキャビクに米大西洋艦隊とリバティ船を中心とした揚陸艦隊は近づこうとしていた
彼女が作り出した幻の艦隊はレーダーの普及で実体が見極められ、事如く結石が破壊されていた
『そんなに・・・私をいじめたいの?』
ニューヨーク級の2隻にニューメキシコ級3隻が砲撃を開始する、米大西洋艦隊の主力だ、水スマシのようにLVTが前進してくる
ドーン!!!ドーン!!!ドーン!!!
『戦の音・・・聞きたくない・・・聞きたくない・・・聞きたくない』
崩れていく、壊れていく、完璧な静寂が、停止した時間が、完全冷凍されその立ち位置のまま固まった人間が砕けていく
『聞きたくない聞きたくない聞きたくない聞きたくない・・・聞きたくない!!!』
少女の姿から白銀の龍へと姿を変える、ダイヤモンドダストの輝きを身体中に煌めかせつつ
『私の静寂を乱す者は何者も許されない!許しはしない!凍りなさい!絶対零度の元で!』
口から吐かれたブレスは上陸部隊を撫いだ、海岸一体が一瞬で凍りつく。人体、機械を一切問わずにだ
664 名前:長崎県人 投稿日: 2006/09/13(水) 00:19:05 [ 5k.cDmFg ]
俺達が一番最初に海水にパンツを濡らすんだと豪語していた海兵隊のある指揮官は部下ごと凍りつき、バランスから重力に負け、足をポッキリ折って、地面でバラバラに身体が砕けた
LVTはあまりの外気温の変化についていけず、車体が収縮を起こしてクラックを生じ、流れ込んできた海水に沈んでいった、乗員はさらに悲惨をきわめ車体に身体が触れている部分すべてに火傷と同じ症状、もしくは車体に自らの皮が張り付き、脱出できずパニックのまま溺れ死んでいった
更に吐かれるブレスは混乱する輸送船団の脱出を支援しようとしたフレッチャー級の駆逐艦の一隻はブレスを艦中央部煙突付近に受け、機関が立ち消えになって、行動不能になったあげく丁寧に艦橋正面からブレスを浴び艦体の至る所にクラックを生じて沈んでいった、駆逐艦の火器は鱗に弾かれるのみでどうにもなりはしない
艦隊に分散各個退避が命じられたのか、無秩序な方向に輸送船団が、いや、大西洋艦隊そのものが全速力で逃げだす、その中で一艦だけ前に突き進んでくるものが居た
ニューメキシコ級三番艦アイダホだった、最初の時間稼ぎの贄として龍にたった一艦で挑むつもりなのだ
665 名前:長崎県人 投稿日: 2006/09/13(水) 00:23:10 [ /9tm..U. ]
『艦は絶対に正面をみせんな!喰らうにしても腹に当てさせろ!砲術!とにかく弾をバラ撒け!射点につかせんな!!!』
アイダホのこの艦長、偶然にもアイダホ生まれのアイダホ育ちであった、縦横の比が日本艦よりも小さい為速力はでないが、熟達した指揮で小回りを効かせて舵をを切り、何度かブレスを避けることさえこなした、龍にも焦りが見れる
『確実にブレスを当てたきゃ近づかなきゃなんねぇ!だが近づきゃ貴様にこのじゃじゃ馬娘のの巨砲を叩き込んでやる!来な!デッドヒートだ!!!』
お互いにドックファイトのように旋回しつつブレスと主砲弾を浴びせあう
『グゥレイト!!やったぜ!!』
一発のアイダホの主砲弾が龍の首を掠めて、鱗を何枚も引きちぎり、血を噴出させる、しかしそれは龍の逆鱗に触れる事と同じ事であった
『私に人間ごときが傷を・・・殺す・・!・殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!』
『今のは念波か?随分とお怒りのようだな、悪龍(ドラゴン)さんよ!文字通り、傷物にしてやったぜ!!!』
中指を立てる、見えてるかどうかはわからないが
クォオオオオオオオオっ!!!
龍が吠える、海中から正八面体の結石が出現する
『パーフェクトフリーズ!!!』
666 名前:長崎県人 投稿日: 2006/09/13(水) 00:27:17 [ KRpK8t7E ]
砲弾を避けつつ、龍がブレスを結石に向けて放つ、ブレスを受けた正八面体はそれを乱反射させる、反射したブレスはまた別な結石で反射されアイダホの逃げ場をうち消していく。いや、こんな乱反射、航空機でも避けきれるものではない、範囲内のものを全て凍らせる、故にパーフェクトフリーズか!
『くそったれめ!そんなのアリか!ぬおあっ!!』
被弾の衝撃で身体をしたたかに打ち付ける、何度目の被弾だろう、これまでの被弾で出来た船体のクラックと外れ弾で凍った海面を無理矢理割った為浸水がそろそろまずいことになってる筈だが、更なる被弾も避けられそうにない
『ぐっ!ダメージリポー・・・っ!』
手を置いた艦橋の縁に皮が全部持っていかれて張り付いているが気にしない、顔をあげ真正面を向いて絶句した、奴が真正面にいる
『何をしている砲術!今だ、撃て!!!』
『被弾はトップの射撃指揮所です。砲側照準は・・・間に合いません!』
龍がダイヤモンドダストの輝きを増しながら息を吸い込んでいる
『総員退艦!!急げ!』
ちっ!今までどいつもこいつも
『誰がアイダホ畑のジャガイモ頭だって!?』
俺はくそったれな事にここまでだが、ジャガイモ頭以上に戦って見せろよ
667 名前:長崎県人 投稿日: 2006/09/13(水) 00:38:03 [ hxY6CuZ2 ]
野郎ども、と思考で考えるよりも先に真正面から龍のブレスがアイダホの艦橋を貫く、船体の前半部分が凍りつき、脆くなった所に推進力のある後半部分が無理に押し込んだ形で力がかかり、アイダホがくの字に折れる
『許さない・・・私を傷つけるもの全て・・・もっと、もっと静寂を増やさなきゃ・・・そのためには・・・』
後に彼女が世界を氷河期にすべく、メキシコ暖流を絶ちに南下し、シチリアの龍の力を得たイタリア艦隊が英米海軍を一時的にとはいえ配下に置き、彼女と大西洋上で決戦を行うのは、また別なお話・・・果たしてイタリアは世界を救えるのか!!!
続かないw
283 :長崎県人:2007/01/14(日) 22:41:35 ID:QDKBCzwM
アイスランドニートドラゴン〜彼女は一人〜
静寂の中、あらゆる物が凍りつき、立ち尽くす中で彼女は歌っていた
『お前は人間じゃない!バケモノが!』
『いやらしい雌が!』
『殺せ!殺せ!殺せ!』
『あっちいけ!二度と顔を見せるな!』
『人間の奴隷としての存在でしかないお前は物と同然』
『何故死なない、何故老いない・・・バケモノが・・・!』
『その力が欲しい・・・奪え、奪え、奪えェェ!!!』
『お前に殺された家族の・・・ギャアアアアアアッ!!!』
『嫌だ、イヤだ・・・イヤだぁああああっ!!!』
あらゆる悪意が彼女に向けられた、そして戦う事で向けられる怨恨と死の連鎖の悲鳴も、相手の思考が読めるとはそういう事だ
『もう、何も聞きたくない、知りたくない』
だから凍らせる、一瞬で、何も考えさせないうちに
ポタリと頬から涙が落ちた
『何とも関わりたくない・・・何とも触れたくない・・・失いたくない・・・』
遠い昔、本気で愛したその人は、老いて朽ちていった。何も残らなかった、肉は朽ち、骨は粉になり風と共に散った
『もう二度と・・・』
歌は途絶え、ダイヤモンドダストと吹雪が彼女の姿を覆い隠した
287 :長崎県人:2007/01/15(月) 18:00:22 ID:2aOBt6HQ
アイスランドニートドラゴン〜熔けない氷〜
あの人が死んで、一度熔けた私の心はまた凍りついた・・・一週間・一ヶ月・一年・十年・百年、ずっと彼の亡骸を抱きしめ続けた。何をしたらいいのか解らなかったから・・・こうすることしかできなかった・・・あの人が起きてきて、私をまたその温もりで熔かしてもらいたかったから・・・
一週間め・・・彼が崩れ始めた。私は必死でそれを治そうとした、死を信じたくなったから、生きてると信じたかったから
一ヶ月め・・・どうにもならない、氷で固めたら彼を殺してしまう、そんなのはイヤ!でも、私が抱きしめるだけで彼の肉は崩れ落ちてしまう・・・どうしたら・・・どうしたら・・・
一年め・・・冷たいよ・・・どうして・・・骨だけに・・・冷たい・・・よ・・・
十年め・・・もう、こんなに軽くなってしまった・・・ぽろぽろぽろぽろ・・・あなたのかけらが剥がれ落ちる・・・私は必死でそれを掻き集める・・・寒いよ・・・心が・・・
百年め・・・もう・・・かけらも無くなってしまった・・・いくら抱きしめても、日に日にあなたは少なくなっていく・・・消えてしまう・・・あなたが・・・ならば・・・いっそ・・・私の心も・・・
299 :長崎県人:2007/01/16(火) 19:22:34 ID:dqay7chg
ハワイインフェルノドラゴン〜烈火の敗残兵〜
『あたい達は負けたのさ、あっちの世界でな』
腕をがしっと組んで、カフク岬に彼女は立つ。不敵そうに海を見ながら
『違う世界のモンに、自分のルールを合わさせるような真似はできねぇ、しちゃいけねぇ、あたいはそう考えるのさ!』
だから、己の力のみで立って戦うんだ
『あいつらにはガッツがある!』
メリケンって国は、そしてその住人達はたとえ押し込もうが何しようが立ち向かってくる。
『あたいが倒すべきはあいつらで、あたいが倒されるべきはメリケンの奴らしか認めねぇ!』
あたい達は逃げ出した。あっちの世界で終わらせるべきだった事にこの世界を巻き込んで、ろくに戦わないでこっちに来ちまった、頭を下げて戦ってください?そんな真似、あたいに出来やしないのさっ!
『戦って戦って、あたいはあたいの生きた証をあたい自身の魂に刻みつける!そしてメリケンの向かって来た奴らの全てを忘れねぇ!絶対だ!』
こっちに来て戦った、全ての情景を魂に刻みつけている。あいつらはみんな勇者だ
『龍は勇者に倒される、基本だろ!?』
さぁ戦おうぜ、勇者さん達よ
『あたいの全てを見せ付けてやる!!』
855 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/28(土) 00:10:06 [ hcXctpKE ]
「いかがでしょう皇帝陛下?」
今、天馬騎士を召抱えて作った新しい近衛兵団の制服の選定作業をしている。
「どれが近衛兵の服にふさわしいかしらねぇ?」
目の前には、新調候補の軍服を着た近衛兵が三人いる。三人の格好は三者三様!
式典時には近衛天馬騎士団や天馬騎士団の格好でやるんだけどね。
「クレーグ、どれもいい感じ。私には決められないわ。」
「私にも無理だよエーテ。エンツェンベルガー補佐官はどうですか?」
「コストと性能で言えばナイトロス製の耐寒機能付きの物を薦めますが・・・しかし」
補佐官は言い淀んだ。
「選定候補には六種類の軍服を選びました。直接は見ていないのですが。おかしいですね・・・」
三人しかいないじゃないの。
「残りの三人を呼んできなさい!」
856 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/28(土) 00:10:53 [ hcXctpKE ]
皇帝の間の入口で口論が起きているのが聞こえた。『やだ』とか『恥ずかしい』とか。
少し経ってから、残りの三人が両脇を同僚に抱えられて、引き摺られるように私の前に引き出された。
ガシャン!
皇帝の間に嫌な音が響いたのは、私が王杖を手から滑り落としてしまったから。
「何よその格好は・・・!」
その三人は騎士のような格好をしていた。うん。多分騎士のものだと思うの。
格好よりも、スカートの丈の短さが目に入った。一人に至ってはおへそ丸出し・・・娼婦?一部のエルフ族は喜ぶかしれない。
「み、見ないでください・・・」
ここにいるのは女性ばかりだけど、夫や大臣や軍人の男も少々いる。クレーグは口が開いたままになっていた。
三人は羞恥心で顔が真っ赤になっていた。揃いも揃ってスカートの裾(とおへそ)を押さえている。
「あ、あなた達はもう着替えていいから!」
857 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/28(土) 00:11:36 [ hcXctpKE ]
六人を着替えの為に退出させた。丈の短かった三人は最後は泣いていたと思う。
「補佐官。さっきの服を作ったのは誰?」
「確か・・・ニホンの方だと思いますが。皇帝宮にまだいると」
「今すぐ呼んで!!!!」
呼ばれてきたのはニホン人・・・?ニホン人ぽいけど言い表せない違和感がある。
「これは麗しき皇帝陛下。下賎なる私めがお会いできるとは誠に光栄であります。」
顔は媚びと諂いと下心・・・私に取り入ろうとした貴族の連中と同じ顔。
不快だわ。特大に不快感を感じる!
「先ほどの服。貴公が製作したのか。」
「はい。左様で。」
「そうか。ならば近衛兵団と予が貴公を歓迎せんとな・・・」
「ははぁっ!ありがたき幸・・・」
ドゴッ
翌日。日本列島連合政府仮大使館前に、麻袋に入った瀕死の人間が置き去りにされていた。
『Nerdzは星を越えて 失われた民族の章』より
992 名前:文章下手 投稿日: 2006/11/28(火) 21:38:56 [ 1IKhEE6s ]
氷山空母大暴れ話
アイスランド攻防戦における大損害によって米海軍上層部は激しく混迷していた。
エセックス級空母の増産?モンタナ級戦艦の早期竣工?と意見が三転五転と転がって
参加してる政治家も軍人もいい加減眠くなってきた時にその男がやってきた。
イギリス人で発明家のジェフリー・N・パイクである。
「敵のドラゴンが氷を吐くなら我々は氷で空母を作れば良いのです。」
会議場の誰もが聞き間違いだと思った瞬間であった。
それから三日後、全長1,700m、排水量860万トン、推定搭載数一千機の
試験氷山空母CVB-35ハボクックの建造が決定された。
993 名前:文章下手 投稿日: 2006/11/28(火) 21:39:58 [ 1IKhEE6s ]
943年アイスランド沖
氷山空母は凍っている都合上、暖房が効いている区画以外は寒い。
南洋にに進出すればおそらく溶け落ちてしまうだろう。
示威行動のためにアイスランド沖に進出した人類史上空前絶後の巨艦
はドラゴンに爆弾の雨を降らせるためにそこに居た。
搭載された500機のP-40ならびに二百機のB-25は75o砲を装備した試作型まで含まれている。
暖機運転をしているのは陸軍航空隊が主であり母艦航空隊は僅か100機に過ぎない。
だが発艦した航空隊はドラゴンに対して有効な打撃を与えうる事ができなかったため
単艦で航行中の最高速力6ノットの氷山空母に向かって敵はやってきた。
ハボクックCIC
「爆撃隊はD甲板より順次着艦せよ。戦闘機隊は補給次第発艦」
滑走路だけでAからDまであるので管制は困難なのだ
「艦長、敵が戦闘機群と蝕接中。例のアイスドラゴンです。」
その直後ハボクックに向かって吐かれたブレスは人も兵器も凍りつかせた
「35高射砲から240高射砲まで壊滅。戦闘機隊からは応答がありません」
「ぐぬぬ、やはり通常兵器でドラゴンに勝つのは無理か」
航空参謀はあまりの損耗率に呻き声を上げていたが乗っているのが通常のエセックス級空母なら
とうの昔に死んでいた事に気が付いていない。更なるブレス攻撃によって
氷山空母であるハボクックの排水量は微々ながらどんどん増大していた。
それから30分後、根負けして引き上げるドラゴンの
『何故!何故?何故人間如きにィぃぃ』
と言う地獄の雄たけびを甲板下(甲板上の人間はほぼ全滅)の乗員は聞く事になる。
「艦長、駆逐艦を分離しておいたのはやはり正解でしたね。」
陸軍の人間も海軍の人間も皆意気消沈していた
「まさかこれほどの損害を受けるとは」
米政府はハボクックの敗北によってマンハッタン計画の更なる推進が決定された
終わり
583 :凡人:2007/05/04(金) 21:32:44 ID:Az61To2k0
「じゃあ今日の報告を聞かせてちょうだい」
「はい、では報告します閣下、今日も変化は特に無しです・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「本当に?」
「はい。悲しいくらいに」
「・・・は〜(鬱」
ここ、ハワイの元アメリカ軍基地の指令室にて女性2人が憂鬱そうな顔をつき合わせていた。
「不幸だわ。だいたい何でこんな事に・・・」
「まあ、全てを突き詰めていくと、閣下の出現位置とアメリカの宗教観念との相性が悪かったとしか言いようがありません」
「・・・は〜(鬱」
先ほどからため息を吐いている女性は、何を隠そうハワイを焼いたと噂されているドラゴンであり、
報告しているもう一人はその眷属たるワイバーンの上位種のファイヤドラゴンである。
そもそも何故、彼女達がこうも悩んでいるかとゆうと彼女達が追い詰められているからであった。
「それじゃあ食料問題の解決はまったく進展してないのね?」
「はい、色々やっているのですが根本的に貯蓄と供給が足りていないのでこのままでは・・・・」
「食料の切り詰めや、地元の人間に漁をさせてるのに?」
「閣下もご存知の通り我々ワイバーンは基本的に大喰らいです。はっきり言って焼け石に水です」
「・・・は〜(鬱」
まず現状を理解してもらうために、彼女達の生態を説明しよう。まずワイバーンの生態はかなり龍に似ている。
省エネのために人に変化する事。竜化してワイバーンになる事。
また単純な戦闘能力なら龍の眷属の中でも1・2を争う程の力を持っている事など、
黒耳長族のような特殊技能や諜報能力こそ無いが、アメリカ太平洋艦隊に勝った事を考えればその実力は本物である事が知れよう。
しかしそんな彼女達にも弱点はもちろん存在している。
「強いのは良いけど、
燃費悪いからすぐに空腹になるし・・・それに竜化できる時間にも制限あるし・・・・・・」
「そのせいで長距離移動には乗り物か徒歩しかありませんしね。
行く先々で食料があれば飛んで食べて飛んで食べてを繰り返せばOKですし」
「ああ〜、やっぱり龍脈契約は別の場所にすべきだったわ。明らかに私達ここに住むの向いてないし」
「そもそも狩猟民族的な生活していた我々が、こんな広大な海のど真ん中の島に住むのが間違ってるんですよ」
元々F世界にて、彼女達は火山地帯に住み。その周辺に広がる高原に住む大型獣を食料にして暮らしていた。
ところがこちらに来たら、刈り取る獲物に相当する大型陸上生物どころか、周囲には海しか存在しなかったために、
彼女達は自力での食料調達が不可能になってしまったのだ。ちなみに彼女達は農作や漁等はまったくした事が無い。
そのおかげで基地宿舎からは「お腹すいた・・・」「あ、お花畑」「シロウ、ひもじいです」ets ets...
とゆう素敵な呟きがいたるところから聞こえてくるようになった。
584 :凡人:2007/05/04(金) 21:33:15 ID:Az61To2k0
「アメリカ軍が混乱によって置き去りにした物資が無かったら、私達は本当に現地人を食べないといけなかったかもしれませんね」
「そう!それよ!そもそも、なんで私達が人間食べた事になってるのよ!!」
「まあ、不幸なすれ違いとしか言い様が無いですね」
「こっちは完全な善意でやった行為なのよ?!なんでそんな誤解受けないといけないの!!」
アメリカ人に人間捕食疑惑が掛けられた経緯はこうだ。
ハワイに突如ドラゴンが出現したために起きたパニックにより色々な場所で略奪強盗火災などが起きたのだが、
あるワイバーンが火災現場近くに倒れてる子供を見つけたので100%の善意から安全な場所まで運ぶ事にしたのだ。
素晴らしい博愛精神であるし褒められるべき行動である。
・・・・・・・・・ただ人々の目の前で子供を口の中に咥えこみ飛び立って行かなければなお良かった。
考えて欲しい、突如襲来するモンスター(住民視点)、混乱する人々、
そして突如降り立ってきた怪物が目の前で子供を食べてそのままテイクアウト(これも住民視点)
・・・阿鼻叫喚である。しかも始末の悪い事に同じような事が何件かあったため、未だにハワイ住民はドラゴンが人食いであると信じている。
「もう仕方ないですよ。誤解でも皆さん完全信じてるし。
それにアメリカ軍との戦いで何人かは巻き込まれて人死が出てるので、クリーンなイメージなんて微塵もありませんよ」
「それこそ仕方ないじゃない!こっちの話も聞かずにいきなり攻撃してきたのは向こうよ!!」
「まあまあ、落ち着いてください閣下。我々の中で閣下が悪いなんて考えてる竜は心の中にしかいませんから」
「ちょっと!!」
「ジョークですよ」
「・・・・・・(怒」
「さて、閣下が落ち着かれた所で話を先に進めます。とにかく自力での必要分の食料供給が望めない以上外部から持ってくるしかありません」
「強奪でもする気(怒」
「閣下のお声がトゲトゲしい気がしますが、まあ気のせいですね。
とりあえずそれも選択肢に入れたい所ですが肝心の強奪相手が我々の行動範囲に居ないのでそれは選択肢から除外します、
ですので交渉したいのですが・・・」
何時もの癇癪をなだめながら、朗々と話していた部下が突然言い辛そうに口を噤んだ。
「どうしたの?」
「人食いの噂のせいでどの国も交渉に来ません」
「・・・・・・」
「しかも敵対したアメリカなんですが、この世界でも有数の大国らしいので、
仮にこちらから交渉を掛けてもアメリカに睨まれたくないために拒否される確立が高いです」
「・・・なんか泣きたくなってきたわ・・・・・・・なんでカメラをこっちに構えてるのよ」
「いえ閣下が泣く姿なんて激レアですし、何より今の閣下の姿なら非常に萌えで魅力的ですよ」
「そのモエってのはよく判らないけど、私の今の姿のどこがいいわけ?」
ここで2人の容姿について解説します。眷属のファイヤドラゴンの方は東洋系の背中まで有る黒髪に黒目、
180cm近い長身と凛々しい顔立ちでモデルになれるようなスタイルだ。
そして龍の方は眷属とは正反対に典型的な西洋人タイプで、金髪碧眼の140cmほどの身長に
肩までの髪とやわらかそうな顔立ちが余計に外見を幼く見せておりスタイルも凹凸がわずかしかないため、
西洋人形みたいであったのだが、龍の美的感覚ではカワイイのは理解できてもそれが=性的魅力であるとは考えつかないのであった。
585 :凡人:2007/05/04(金) 21:33:51 ID:Az61To2k0
「萌えについては説明が困難なので、またの機会にて説明しますが・・・・・でも閣下?閣下のその姿はご趣味では無いので?」
「そんなわけ無いでしょ。いつも通り会った人間にとって1番魅力的な姿になっただけよ。私は常に美しく見られたいわ」
「・・・・・・ちなみにその人間は今どこに?」
「多分死んだんじゃないかしら?この世界に初めて来た時に、出会い頭に攻撃してきた戦闘機のパイロットだから。私自身が撃墜したし」
「・・・・・・(まあその人のおかげで今の閣下があるわけですから、そんな反アメリカ的なロリコンに感謝を)」
「そういえば、アメリカ軍が置いて行った石油だっけ?あれの使い道って見つかった?あと武器の調査は?」
「石油の方は今の我々にとって価値ゼロです。ほとんど消費してません。そもそも使うはずだった船舶が無いので使いようが無いです。
いくらかは現地人が必要らしいので、上げてますけどそれ以外何も使う事が無いです。国と交渉ができれば手札の1つとして使えますけど、
それだけです。武器の方もあらかた調べ終えました。少なくとも歩兵が携帯できる武器では、竜化した我々の防壁はまず突破不可能です。」
「つまり私達が警戒しないといけないのは大型の兵器だけだ。と?」
「今のところは、ただ相手は人間ですのでどのような対抗手段を編み出してくるか判りません。
それに当初戦った航空機にはそれなりに手こずりましたので、あれが強力になって来たらこちらにも被害が出るかと・・・」
「・・・・・・何度聞いても悪いニュースしか無いわね。これはアレ?神の試練かしら?」
「えらく陰険な神様ですね。まあ深刻に成りつつある食料問題以外に関してはコレといった問題はありません。
あと一部のワイバーン達にいたっては元気になっていますし」
「?この状況でなんで元気になれるの?普通はやる気が下がるでしょ?」
「人食い事件で助けた民間人の少年がお礼に料理を作って来てくれるそうです。その一部のワイバーン曰く
『シロウの料理さえあれば100年は戦えます!』だそうです。他の竜も「あの半ズボンが・・・」とか「・・・ジュル」とか言って鼻血出してます」
「・・・・・・(もしかして私って部下に恵まれていない?)」
自分の眷属の教育に関して何が間違っていたのだろうと悩むドラゴンであった
「では閣下、今日の報告は以上です。」
「・・・何よ。本当にいつもと同じ日常じゃない」
「はい。我々ワイバーンの脱出不可能な餓死全滅の危機の日常です。では閣下、私は寝てきます」
「・・・唐突ね。そういえば最近あなたこの時間になるとよく寝るわね。体調でも悪いの?」
「いえ閣下、体の健康は良好ですよ。ただ夢を見るのです」
部下の不思議な答えに怪訝そうにするドラゴン
「夢?」
「はい。この時間に寝ると夢の中で何時も同じ人物と会えるんですよ。よくその人と上司に関しての愚痴なんかを話してるんです。
なんかお互いにシンパシーを感じちゃって」
「・・・とりあえず愚痴の内容は後で聞くとして、いったい誰と話してるのよ」
「たしかお名前はエドワードって名前でしたよ。上司がよく葉巻吸って健康に悪そうだ。とかよく癇癪を起こす。とか色々ストレス貯めてましたね」
「あー、そう・・・まあ、愚痴言う相手が居るのは幸運よね・・・・・・ねえ本当に交渉できる相手いないの?
何か私ペテンに掛けられてる気分なんだけど」
「どうしたんですか閣下?いくらなんでもこんな重要な事でウソなんて言いませんよ」
「・・・そうよね。うん、やっぱり気のせいみたい。もう行っていいわよ。エドワード君によろしくね」
「はい。それでは閣下お休みなさいませ」
今日もハワイは平和であった。
Fin
628 名前:626 投稿日: 2006/09/08(金) 07:10:07 [ 4hle9deg ]
右手に持ったダイスを振る。
ローマ市内のレストランの個室でマッシモ・ペリーニは芳醇な香りのするワインを片手に
テーブルを挟んで向かい側に座る美しい女を眺めた。本当なら、既に二人は
ペリーニの家で、愛を交わしているところだが、彼の人生の拘りがそれを邪魔している。
彼の人生における拘りは四つある。一つは食事、うまい食事とワインは、
人生に不可欠なものだ。次に女性、美しい女性に声をかけるのはイタリア男子の
義務である。次に仕事、これのやりがいと結果が男の表面的な価値を高める。
そう彼は考えている
最後にこのバックギャモン(西洋双六の一種)である。
今、彼の出した賽の目は悪くない。これで次に彼女が出す賽の目で勝負は決まる。
今彼は、この行きつけのレストランに三日かけて口説いた女と食事に来ている。
うまい食事と見目麗しい女性。彼の今日の出来は、人生の拘りのうち二つにおいては、
なかば達成されている。
そして食後の会話の切っ掛けとして始めたバックギャモン。今、勝敗は一勝二敗。
この四ゲーム目、彼女の次の一振りしだいで勝負はイーブンになる。イーブンになったら、
後は場所をペリーニの家に移し、五回目の勝負をベッドの上でしよう、彼はそう思いながら彼女の
美しい顔を見つめながら次のダイスの目を待った。
その時だった、個室の戸をノックして入ってきたコンシェルジュが、
「ペリーニ様、ただ今玄関にお客様がお見えになり、こちらをペリーニ様へと申しおります」
と、彼に耳打ちしながら差し出した小さな封筒をペリーには一瞥しながら、
疑問に思い、ソムリエに聞き返した。
「誰だ、この大事な時に?」
「職場の部下で、緊急の要件だと申しております」
職場からのもの、しかも、緊急ならば仕方がないと、彼は顔をしかめながらその封筒に入っていた
一枚の紙切れを読み、顔をさらにしかめた。
「すまないマリエッタ。緊急の用ができた、今日はここまでだよ」
ペリーニは心底残念そうに言った。
「そんなマッシモ!次はいつ会えるか分からないのよ」
ああ本当に残念だ、彼は今彼女が出したダイスの目を見ながらそう思った。
ダイスの目は彼の勝利を表していたのだから。
コンシェルジュに部下に伝言を頼んだ後、彼の不義理に燃え上がった女を甘い囁きと軽いキス一つ鎮火させ、
レストランの前に待っていた車に乗り込みながら、彼は、こんな大事な時に上官直々のこの呼び出しはなんだ?
日頃の自分の行状に対する叱責か、それともつい先日摘発したローマ市内のスパイ網のことか?
そんな事を彼は考えていた。
そんな彼の疑問を置き去りにして車はローマ市内を走り、彼を仕事場である憲兵本部に連れ戻して行っく。
629 名前:626 投稿日: 2006/09/08(金) 07:12:14 [ 4hle9deg ]
身だしなみを軽くチェックしてからノックの後、彼を甘いひと時から、
やりがいのある仕事の場へ連れ戻した憎い上官である憲兵総監のいる部屋にペリーニは入る。
部屋の正面にある執務机越しに、ドゥーチェに対する忠誠と、自分同様仕事に対する情熱で
その地位まで登りつめた上官に言う。
「総監殿、マッシモ・ペリーニ入ります」
「よく来てくれたなペリーニ憲兵少佐、緊急の命令だ」
緊急の命令?日ごろの自分の行状に対する叱責を覚悟していたペリーニには
上官の言っている意味がよく分からなかった。
「はい総監殿、緊急の命令とはいったい何なのですありますか?」
「ペリーニ憲兵少佐、君はシチリアに飛来したドラゴンについて知っているかね?」
630 名前:626 投稿日: 2006/09/08(金) 07:14:59 [ 4hle9deg ]
憲兵総監の唐突な言葉に、ペリーニは聞き返した。
「ドラゴンですか?子供向けのおとぎ話に出て来るあの?」
「そうだ、そのドラゴンだ」
「それがいったい何か?」
ペリーニには総監の言っていることがさらに分からなくなった。
ドラゴンだと?あの空を飛び、火を吐くキリスト教徒の敵の?
それが、この俺、ペリーニ憲兵少佐に何の関係があるのか?
ペリーニのそんな疑問が顔に表れていたのだろう、憲兵総監はさらに言葉を続けた。
「シチリアに飛来したドラゴン。あれはわが国の防衛に対する重大な危機だ」
「そこまでは知っております」
「同様に現在世界には何匹かのドラゴンが飛来している。
君は日本に飛来しているドラゴンについての情報に触れたことは無かったな?」
「はい、総監殿。その情報は現在、
国家首脳部と一部軍関係者のみの閲覧の重要機密だったかと記憶しております」
「そうだ、我が国と同じように飛来したそのドラゴンを、
かの国は手なずけて軍事力の一部にしてしまったそうだ」
「はあ?ドラゴンをですか?!」
ペリーニはあまりのことに思わずそう言ってしまった。
631 名前:626 投稿日: 2006/09/08(金) 07:16:56 [ 4hle9deg ]
「これを見たまえ」
そう言うと総監は執務机に幾枚かの書類を載せた。
「これは?」
「ドラゴン関連のシチリアからの情報だ。
現在、シチリアには各国の諜報が入り乱れドラゴンを探っている」
「では命令とは、各国の諜報機関に対しての情報漏洩を防ぐということですありますか?」
「いや違う」
「では一体何を?」
「そこで君には日本が行ったようにドラゴンを手なづけて貰いたい
これが命令だ」
「ちょ、ちょっと待ってください。何故自分なのですか?」
ペリーニのあせったような発言に憲兵総監はニヤリとしながら答えた。
「ペリーニ少佐、それは君が我が憲兵隊一の色事師だからだよ。君の日頃の行状はよく知っているよ
マッシモ・ペリーニ・イタリア軍憲兵少佐、三十二歳、古いイタリア貴族に繋がる家の次男坊にして、
このローマ屈指の伊達男 今まで狙って落とせなかった女性は皆無といわれる憲兵隊一の種馬。
これは君だからこその命令だ」
「この命令は拒否は可能ですか?自分はあいにく爬虫類と愛を語る趣味は持ち合わせておりませんが」
ペリーニはあまりの命令にそう答えた。
632 名前:626 投稿日: 2006/09/08(金) 07:19:09 [ 4hle9deg ]
「これを見てもそう言えるかな」
そう言うと総監は一枚の写真を胸のポケットから取り出しペリーニに見せる。
「これは?」
その写真には一人の人外の美しさを持った女性が写っている。
隠し撮りなのだろう女性の顔は分かるが、画像はあらい。ペリーニは今までの話と、
写真の女性に関連が思いつかなかった。
「日本のドラゴンが人間にその身を変えた姿だそうだ。
シチリアのドラゴンがその身を変えると、
これと同等の美しさになるいう話だ。どうだ?これでもやらんかね?」
「やります!やらしてください!!
これほどの美しさを持った女性を口説かなければイタリア男子の名折れです!」
「そうか、いやー、やってくれるか。
きみが逝かなければ私自ら行くつもりだったのだよ
あー、残念だ」
633 名前:626 投稿日: 2006/09/08(金) 07:22:14 [ 4hle9deg ]
ああ、そういえばこの人も若い時分は憲兵隊屈指の色男だったって聞いたことがあったなー。
ペリーニのそんな感慨に総監は気づくことなく、さらに言った。
「この件は全てにおいて優先される。
早速、君はシチリアへ向かってくれたまえ。
なお、この件に関して君の全ての要求は優先されることになっている。
つまり、どんな手も許されるということだ。負けないようにな」
「負ける?総監殿、誰に一体負けるというのでありますか?」
「各国の諜報機関、それに各軍がそれぞれの色男をシチリアに送り込んでいるそうだ。
世界に名だたるイタリア男の名にかけて彼らに負けることはあってはならん、
絶対にだ!分かったな!?」
「はっ!総監殿、マッシモ・ペリーニ憲兵少佐、これからイタリア男の名誉と情熱
それを表してきます!
それから一つ先ほどの総監殿の発言を訂正させてください」
「何だね?」
「自分は種馬ではありません。なぜなら、自分は種をまいて芽吹かせるような
へまをした事はありません!」
「あー、そうか、いやすまん。そうだったな。
まっ頑張ってくれたまえ吉報をまっているぞ」
ああー、こいつらきっと本まもんのアホなんやなー、
実は先ほどから室内にいて一言も発していなかった
総監付きの秘書は書類を整理しながら故郷のナポリ訛りそう心の中で一人語ちた。
これが、シチリアを舞台に各国諜報に軍さてはマフィアまで入り乱れて行われた諜報戦、
後の世では、「色男達の宴」と呼ばれる、戦いのイタリア参戦の瞬間であった。
落ちもなく終われ
658 名前:626 投稿日: 2006/09/12(火) 23:06:05 [ 4hle9deg ]
イギリス編
大英帝国宰相の朝は一巻きの葉巻と薫り高い紅茶で始まる。
しかし、その日の英国首相チャーチルはすでに憂鬱だった。
すべては手元にある一枚の報告書に起因している。
そこにはイタリア軍が何らかの形でシチリアのドラゴンの捕獲、
又は戦力化を目的とした行動に入ッたという報告。
それに仮に捕獲・戦力化が成功した場合のイギリスに与える影響予測が載っていたからである。
もちろんその影響予測には前向きのものなど一つも無く、最悪の一歩手前といった現状が、
最悪に片足どころか両足そろえて突っ込んでいく、といった未来予想図が記載されている。
報告書を提出に来た秘書官にチャーチルは尋ねた。
「この予測の確率はどのくらいかね?」
「予測は予測ですが、確度はかなり高いかと、首相閣下」
「なぜだね?」
「実際、首相閣下もご存知のとおり、極東では日本が戦力化に成功し、
中国政府に圧力をかけ、成果を挙げております。
これにより我々は対アジア戦略の組み直しを余儀なくされました」
「では、それと同等の事態がこのヨーロッパでも起こりうると?
現状の泥沼から抜け出す方法は無いのかね?」
「お読みの報告書では、そう結論付けております。
あれです、腰まで泥沼にはまっていたのがさらに、
首までつかるぐらいの違いかと。
それに、これは未確認の情報なのですが」
「何だ?これ以上に最悪のものなら聞きたくないぞ」
「バチカンも動いていると」
「バチカンだと!?一体全体何が目的だ?」
「ドラゴンを調伏し得たなら、カソリックの権威は高まる。
まあ、そんなところかと」
「ふんっ!あの古臭い墓守どもが考えそうなことだ!」
バチカン!バチカンだと!?権威を鼻にかけて、プライドだけ高い。
その上、色々なところに首を突っ込んでは事態をさらに複雑にする厄介者の宗教屋の狂信者どもめ。
チャーチルは彼の支持者が聞いたら眉をひそめるような罵声を心の中で叫んだ。
659 名前:626 投稿日: 2006/09/12(火) 23:09:15 [ 4hle9deg ]
チャーチルは一旦窓の外に目をやってから、秘書官へ向き直り、尋ねた。
「我々が打てる手立ては?現在我々はアメリカに対するドラゴンの強襲と極東の状況の変化によ
り、戦略の見直しを行っているところだ。さらにこれ以上の予想外の事態が持ち上がったなら
どうしようもなくなる、それは絶対に阻止しなければならん」
「すでに、現状で我々はどうしようもない状況に陥っているかと思いますが、首相閣下。
現在、我々の最も優秀な諜報員をシチリアに派遣するよう準備しております」
秘書官の皮肉の混じった発言を気にせず、チャーチルは言った。
「あいつか?」
「あいつが誰を指すかは分かりませんが、最も優秀と聞いて首相閣下が思いつくのなら
彼です」
ああ、そうだろう。確かにあいつは優秀だ。優秀であれば、個人の性的嗜好に文句は無い。
けれど、あいつを外に出すのは大英帝国の恥を輸出しているも同然じゃないか。
チャーチルは頭の中でそんな事を考えた後、
落ち着くために冷め掛けた紅茶を飲みながら言った。
「あいつなら首に縄つけてでもドラゴンを引きずってきそうだが、大丈夫か?」
「ご安心出来るかどうかわかりませんが首相閣下。海軍の方からも人員を派遣している
そうです」
「誰だね?」
「詳しくは存じ上げませんが、ジェームズ・なんとか少佐、と聞いております」
「(ブフッツ!)海軍のジェームズだと!?」
あまりの事にチャーチルはせっかくの紅茶にむせ返りながら絶叫した。
秘書官も知っているだろうが、秘密情報部で最も優秀な男はソドムの使徒だし、
海軍のジェームズといえば、確か、伊達男で下半身に節操の無いことで有名だ。
その二人をセットで外国に行かせるとは。
最悪のブラックジョークにも似た秘書官の発言を受け、
こりゃもしかしたしたらシチリアを舞台に大英帝国は大恥を晒すかもしれんぞ。
そんな事を考えながらチャーチルは、震える手で葉巻を手に取った。
677 名前:626 投稿日: 2006/09/13(水) 23:09:57 [ 4hle9deg ]
ここで小ネタを投下
武装メイドの起源
ドラゴンの出現でヨーロッパにおける戦力の配置は大きく変化していた。まず、満州を完全に支配下に置いた日本の輸出によりドイツ・イギリス双方の継戦能力が向上。一方で満州にいる日本の関東軍を警戒してソヴィエトは戦力の引き抜きを躊躇、そのため、ドイツ=ソヴィエト間の戦線はモスクワ近郊で停滞、正に大祖国戦争は地獄の蓋が開いた様相を呈している。現状に不満のあるヒトラーは、ロンメルをアフリカ戦線より呼び戻し対ソヴィエト戦に事態の打開を狙って投入するも、悪名高い冬将軍と祖国防衛に燃えるソヴィエト兵を相手に手間取り事態の打開までは至っていない。ドイツ=英国間の戦いは主に空を舞台に行われ、数多くの空戦のエースたちがスコアを稼いでいる。
この状況下でドイツが最も悩ませられたのはヴィジー政権下のフランスとドイツ占領下各国におけるレジスタンス活動である。特に、高級将校を目標としたものは、暗殺は爆弾から始まり、はたまた愛人として情報を引き出すといった多岐多様に及び、ドイツ首脳部はその対応に頭を悩ませていた。そんな中、ある一人のSS将校が酒の場で冗談交じりに考えた一案に、各将校に監視と護身を主目的とした特殊部隊員を張り付かせるというものがあった。これを妙案として首脳部は採用するようその将校に命じる。
しかし、担当として指名された当の将校は頭を抱えた。何処からその特殊部隊員を抽出せいっちゅうねん!?現在各戦線に振り分けられた戦力を見回しても、抜き出すことを可能とした戦力なぞ、何処にも存在しなかったのである。ここでこの将官はふと気が付いた。男でなくてもええやん。女の方がレジスタンスに警戒されへんし、戦線に直接出張ることもないし、数もようけおるし、将校の士気も上がる。ええことずくめや。ここら辺でこの将校は暴走を始める。自分の趣味を様々な口実で隠し選抜を行い、戦闘訓練から始まり、行儀作法、メイドの心得などなどを徹底して教え込んだ。
結果生まれたのが、実験的武装御手伝い少女特戦隊、通称武装メイド隊である。
611 :陸士長:2007/05/11(金) 01:37:37 ID:72tZhjm20
そいや、マリアナのドラゴンネタを書こうとしてすっかり投げっぱなしジャーマンになってましたな。
……まだ、竜神様の中の人は「空気読めない」「海洋(特に海流)操作と海中生態系維持管理」ですか……。
作者の方は構想が固まってるようですが、折角ですんで…取り敢えず投げてみますね。
まぁ、みんなネタと思ってご容赦するよろし。
サイパン島 沖合
清々しい赤道直下の海原に、ひっくり返った一艘の漁船が浮いていた。
そう言えば昨日は海が荒れた。うっかり漁に出た船が難破したのかもしれない。
実際、船腹の上には憔悴した表情の日本人猟師達が身を寄せ合っていた。
「ああ、今日も」
そしてもって、半分に海水に浸かりながら青空を見上げている水兵服姿の超美人が一人。
胡乱な目付きで歌を謳っていた。
「海、サイッコー♪」
機嫌よさげに足をパシャパシャ動かす度に、船は海流に乗って近くの無人島に近付いて行く。
ミクロネシア諸島には島が無数にある。その中の一つに彼女は猟師達を漂着させるつもりらしい。
尤も、そんな事は猟師達には理解出来なかった。
嵐で船をやられ、嵐が静まったと思ったら鮫に周囲を囲まれたのだ。
そんな時に彼女が何だか海中から現れて鮫を追い払ったのだ。
妙に甲高い、天上の謳声と評せるような美声で。
猟師達もその声を聞いた途端、頭がぼんやりとして前後不覚になってしまっている。
今も、ぼんやりと自分達が漂着しようとしている島の緑を見つめているだけだ。
「ボーイ達は運が良い。海の男だから助けてあげた。海の男はいい男、これ助ける常識」
したり顔で女は笑った。何を言っているのか全然解らない。
だが、女は空気を読めない者特有の自己完結的な思考で沈黙を了解と受け取った。
「『板コ一枚下は地獄』。海流を司る者からの忠告だ。忘れるなよボーイズ?」
猟師達は惚け顔でニヘラと笑う。
良い笑顔だと女も笑い、サムズアップで返礼した。
「ボーイズ、そのスマイルだ。また懲りずに漁に出る海の漢の笑顔だ。その笑顔を忘れるなよ、ボーイズ。バーイ」
この時期。ミクロネシア諸島では怪奇現象を多くの人間が目撃している。
だが、誰一人としてその怪奇現象を詳しく覚えている人間は居なかった。
一つだけ、この世のモノとは思えない美しい歌声が聞こえたという虚ろな記憶だけを残して。
「来るねぇ……あの馬鹿竜。陸竜なのに海に入ろうとしている。肺呼吸なのに海に入ろうだなんてすげぇナンセンス」
海溝の下で眷属の群れを従えながら、女は笑った。
「悪いけど全ての海洋と海流は私のものだから。悪いけどそういう事だから。OKシスターズ、 ロッケンロール!」
『ロッケンロール!』
―――
海に飛び込んで来ます。
828 :勝手に外伝です。:2007/09/05(水) 16:57:07 ID:XsR6Qi7M0
1942年 5月10日 シチリア島パレルモ
1889年に建てられ、広大な庭園を持つ大邸宅ヴィラ・マルフィターノ。
この館は建築以来最も可憐で優美、かつ危険な者達を主に迎えていた。
庭園を眼下に見下ろすテラスで美女と美少女が向かい合っていた。
一人は月光をそのまま髪にしたような金髪、もう一人は闇を固めたような黒髪、
共通するのはどちらも人ならざる物の象徴として、血色の瞳と鋭い牙を持つことだった。
「ヴィオラ、首尾は?」
金髪の美女の問いに黒髪の少女が答える。
「バチカンとやらの犬共は全て処分した。姫様の邪魔はさせんよ」
その少女の言葉に美女は軽く笑みを浮かべて頷く。
「しかし、この世界の神とやらはよほど信者が死ぬのが好きらしいな、レシティア」
少女──ヴィオラはあざけるように口の端を歪めた。
「この戦争で我らの世界なら一国が傾くほど人が死んでいる。僅か二年でな」
「どちらも同じ神の名を祈りながら」
歌うように金髪の美女──レティシアが続ける。
「そんな神の使いとやらがどの面下げて我らと姫様を邪悪と断じるのだ?
ああ、同族を殺さぬから悪なのか?」
ヴィオラは肩を竦めて見せた。
「もしくは私たちと姫様を利用しようとする手合いばかり」
レティシアはヴィオラの横に立ってパレルモの中心部の方に視線を向けた。
灯火管制の闇の中でも彼女たちの目はたやすくそこに駐留する兵士達や
各国のエージェント達の姿を捉えることが出来る。
「愚か者共、我らが姫様をおめおめ利用させると思ったか。容姿は優れていても、
俗物だらけだ」
「でも、例外もいるでしょう?」
レティシアの言葉にヴィオラは表情を和らげて彼女の主と客人が滞在している部屋の方に視線を向けた。
「アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ」
滞在している二人の客人のうち、一人の名前を口にする。
「”Le Petit Prince”(星の王子様)──豊かであるということは素晴らしいことね」
レティシアの言葉にヴィオラも頷く。
「音楽、料理、文学、絵画、それに映画といったか? 我々の世界とは比べものにならぬ」
「それに、それを生み出す人々。決して愚者ばかりではないわ。姫様もそう思っているでしょう」
もう一度その言葉に頷いてヴィオラはきびすを返した。
「お客人に失礼がないように見回ってくる」
「やれやれ、旦那も物好きだね」
居心地が悪くなるほど豪華なソファに身体を埋めてこれまた飲んだこともないような高級なコニャックをすすりながら、
第一次世界大戦の名パイロットにして先日以来MIAのイタリア空軍パイロット、マルコ・パゴットは自分の前のソファに腰を下ろした、
作家にして亡命フランス人パイロット、現在MIA中のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリを見つめた。
「あの姫様を連れて帰ればそれこそ連合国の英雄だってのに、自分の作品を毎晩読み聞かせるだけってのは」
そのあけすけなイタリア人らしい言葉にサン=テグジュペリは苦笑した。
「君こそ、祖国のためには飛行機で彼女のお相手をするだけでなく、彼女を口説き落とすべきではないのかね?」
「このくそったれな戦争のためにあんないい娘を利用するくらいなら、俺は豚になっちまった方がマシでさあね」
そう言ってグラスを掲げるマルコにサン=テグジュペリもグラスを掲げて見せた。
「私も同感だよ。彼女をこんな戦争に巻き込むべきではない。……愛国者としては失格かもしれないがね」
「乾杯しましょうや」
「二人の馬鹿と」
「姫君に」
そういってグラスを合わせる二人を、屋敷中から人ならざる、しかしどこか暖かい視線が見つめていた。
894 :長崎県人:2007/10/08(月) 23:12:21 ID:2MxH4A12O
1942年某月某日
『やぁ、気を楽にしてくれ。適当にくつろぐといい』
山城の艦長室に、若い大尉が呼び出されていた
『はっ、いえ、立ったままで結構です』
その大尉は、艦長という雲の上に呼び出されて緊張している
『楽にしていいという、この小畑の命が聞けんかな?』
『も、申し訳ありませんでした!失礼します』
それでようやく大尉はソファーに座る
『君は軍令部の方に行きたいそうだな』
小畑は煙草をくゆらせる
『結婚で出世欲に火がついたかな?』
いきなりこの人は何を言い出すのだろう、と大尉は面食らった
『チャンスをやろう。竜神の話は聞いているな』
『ええ、人並みには』
というよりは嫁が、これはチャンスよ!と騒いでいたのを諌めに入って、口論と喧嘩(嫁に一方的に殴られるだけだったが)になったから、人よりは知っている
『なら良い、画家を連れて竜神の絵をしばらく描いてもらう』
『は・・・?』
首を傾げる大尉に、小畑は続けた
『今回発行される戊号軍票は元から竜を描く事が決まっていた。本物が居るなら、モデルになってもらう』
動揺していた大尉の目が一点に止まった
『写真で直接竜を撮るのはわざとらし過ぎる、だが、絵画のモデルならば・・・』
895 :長崎県人:2007/10/08(月) 23:14:24 ID:2MxH4A12O
詳細な竜の姿が描き写せる。それは・・・
『あれが我が国の内に属するからには、我々は殺し切る用意をしなければならない・・・一応はな』
小畑はもともと第四艦隊司令部からの転任・・・彼は井上中将の配下で参謀だった。あの人は、こういう事には手を抜かない。弱点を探るきっかけに、適当な人材は居ないか?と言われていたのだ
『アレに関わると骨抜きにされる者も多い』
だぁくえろふ(誤字?)
らのおねぇさん達の事だ
『だが、君は昔から蓼食い虫と呼ばれ、一穴(純愛)主義者とも聞く、それでいて新婚だ』
調べはついてる、といった所か
『はい、そちらはお任せ下さい』
他人に言われると、微妙にむかっとくるが、確かに妻以外になびく事は無い
『もしや、とは思うが。主はともかく、従者が非合法の手段を採る場合も考えられる』
さらっと小畑は言った
『画家、あるいは自身の身を守って鎮守府か造幣局までたどり着け』
鎮守府か造幣局なら、絵の精彩なコピーが出来る(ガリ版刷りなら軍艦でも出来る)コピーが出来たなら、原板に用は無い
『わかりました』
『任務が達成できたなら報いるが、事故死に恩給は無い』
その大尉は頷いた
『では、行って良し。気をつけたまえ、志摩大尉』