852 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/02(水) 23:05:38 [ fIFx11L2 ]
1942.4.20・ロンドン、ビックベン地下
ここには円卓と呼ばれる、英国をいにしえから裏で支える12人が集う場所が存在している。数多くの政治犯らを幽閉し、また殺してきた事により、その怨念をまとったビックベンは霊的結界として彼等の御座を守護しているとも言えよう
『この大戦の折に、我等が呼ばれるはクロムウェル(独の英本土上陸を示す略号)以外無いと思っておりましたが・・・』
ブリテンという国そのものの存亡に関わるとき以外に、彼等が動くことは無い。であるのに集合がかかった
『理由はプリンセス御本人がお聞かせくださるでしょう。我等は騎士、王に仕える者だ』
『その言葉、嬉しく思う』
上から声が響く。専用のゴンドラに乗ってプリンセス(史実のエリザベス女王)が降りて来たのだ。12人の騎士は円卓の椅子から退き、膝まづく
『貴卿らを呼び出したのは他でも無い』
女王は息をここで切った。衝撃を受け止めるように
『クイーンズガーデンが起動を始め。昨日夜、突如稼働を始めたガーディアンによって、英国魔女協会の魔女八人が惨殺されました』
『なんと!?』
『紅きマルス・・・マリスなぞ、神代の昔話だと思っておりましたが・・・』
事の重要さに場がざわつく
853 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/02(水) 23:06:47 [ vEJ1auuw ]
『この戦を、一刻も速く終わらせなければなりません。さもなくば・・・』
血筋を越えて、英国王室に伝わる秘術を、クイーンズガーデン。現在の形を整えたビクトリア女王の名を持つそこで行わねばならない
『なるほど、確かにブリテンの危機、ですな』
『あれを失う訳にはまいりません』
円卓の騎士らは頷いた。あれの存在もあってか、ブリテンは七つの海を支配する事が出来た
『ギリギリまでは待ちます。あくまで人の世は人によって決着をつけるべきです。しかし、人の世が全て魔に覆われるならば、我がブリテンだけの問題には出来ません』
我がブリテンは、秘術の為に滅ぶことになろうとも、人の世が残ればブリテンの名誉は永遠に語り継がれる
『しかしあれは多少欠けておりますが・・・』
『この義務は、たとえ国を離れようと果たす。出来なくば王族であろうと死、あるのみ』
彼等にも不安要素はあるようだった
『頼みました、円卓の騎士らよ』
プリンセスは目を細める
『全ては御意のままに』
マリスの解放は、英国の裏の力を動かし始めた。その行く先は、いまだ知れない
854 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/02(水) 23:10:51 [ IiySVxhQ ]
同日、ローマ・イタリア海軍省
『なんというか、問題を先送りにしたみたいな気がして落ちつかんなぁ・・・』
海軍省ビルの前に、今度は桂だけでなく、ミスミも連れて志摩が立っていた。
志摩の先程のセリフは、栗田中将らが詰めている日本大使館の海軍部に、昨日の事で叱責される物と、おっかなびっくりで出頭したのだが、昨日の騒ぎの顛末はまだ彼等に伝わっておらず(ムッソリーニは、昨日の騒動に、ぶっ続けの演説をかましたせいで、今日は寝込んでいた)何を突っ
ァっておるか!と、仕事をしろとばかりに追い出されてしまったのだ
海軍部に詰めているスタッフもいつも以上に神経質になっていたようだが・・・
『あの・・・旦那様、私は役に立てるのでしょうか?言葉もわかりませんし』
ミスミが不安げに尋ねてきた
『いや、言葉がわからないからいいんだよ』
桂の方を見る。グーで頭を殴られた・・・理不尽だ
『はい?』
ミスミは訳がわからず首を傾げている
『いいの!深く考えないで!』
志摩は頭を掻いた
『しかしまぁ・・・これも独断専行だよなぁ』
勿論、与えられた仕事は行う。まだやるべき事は山積みのままだ。が、昨日のあれに関わって、何もしないでいるというのは・・・
855 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/02(水) 23:13:17 [ vEJ1auuw ]
『お待たせしました、ご婦人方』
赤いフェラーリに乗ってアルが現れた・・・っていいのかよ?石油足りないんだろうに
『中佐、あくまで仕事d』
『いやいやいや、桂さんが太陽ならば、あなたは月の落としたもうた宝玉。再び出会えたこの奇跡は私の淋しき夜に、神が仕わせたもうた使s』
『やっぱり節操なしかい!』
志摩を無視してミスミの前に膝まずき、長広舌を始めたのを、桂が後頭部をどついてやめさせる
『日本語、お出来になさるのですね?』
『『『・・・』』』
ミスミがアルの言葉を完全に理解している
『これは・・・やはり?』
『でしょうね』
アルと志摩はお互いを見合う。桂は一人肩を落として
『あたしの仕事無くなっちゃった・・・』
と、呟いた
『な、なんなんですか?』
一人説明を受けていないミスミはうろたえるばかりだ
『中佐はイタリア語しか使ってないんだよ。ミスミ』
『え!?』
全くわからなかったのに
『陸軍の方に聞いてみたら、化け物の死体は崩れ落ちるよう倒れたあと、石や骨を除いて、渦を巻くように霧散してしまったそうだ』
『あんなおっきい物が!?』
しかしこれでは解明の仕様が無い
『骨や石のみという事は、可動部分が消えたわけだな』
856 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/02(水) 23:15:56 [ BTaSp5ZA ]
『おっしゃる通りです』
彼等は知るよしもないが、死んだそれを無理矢理生かし、限界以上に酷使された細胞はマリスの消失と共に存在を保てなくなったのだ
『ということは現場に行っても』
『何も成果は得られないか、と』
男二人の会話に桂が横から入った
『それでも連れてってもらえるかしら?』
逃走劇の最中に感じた悲しさが消えない。その感情に決着をつけたい
『これでもあたし、父方は神官で巫女の技もほんの少しくらいは出来るから』
清めるとまではいかないけど、御霊を慰めるくらいは・・・前に百度参りで参るだけでなく、水を被ったりしたのだ(くろべえさん保管庫・唄う海32参照)
『おおぅ、桂さんはジャポネのキエーザ(教会)の血筋なのですか?』
わざわざ強調したり、文化面で解りにくい所はカタカナかつヘンテコなイントネーションの日本語で伝えられるらしい
『・・・巫女装束はなかろう?道具も』
少し心配になった
『適当に見繕うわ、御神酒は高いけど用意したから』
『私も何か出来ればよろしいのでしょうが・・・』
ミスミもそういった役割の人間なのだが、幼少の頃の事件とラスプーチンに・・・よそう。とにかく、虫の操作すら危うく、技術の継承は行われていない
857 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/02(水) 23:20:05 [ wFko1i7. ]
『ぬぅ・・・大佐!あなたという人は!何と羨ましい!いや、腕を失うような勇者であれば、ジャポネの軍人は国から神の御使いたるシスターを宛わr』
すらり
『それ以上喋ったら殺します』
アルの首元にナイフを突き付け、抑揚をつけずミスミは言った
『旦那様を、女を宛われたら、そのまま喜んで抱くような、低俗な方と見る事は何人も許しません』
『アル君、それ地雷・・・』
あちゃー、と桂
『ミスミ、止しなさい。一般的に好色で女を囲っていると見られるのは仕方ない・・・次回から気をつけてくれ、中佐』
『・・・はい、旦那様』
ヒュン
頷くと、流れるような動作でナイフをスカートの中に直すミスミ
『は、はは・・・はっ!勿論です!』
直立不動で敬礼を返すアル
『車もわざわざこんなの用意しなくてよかったのに』
女性を口説くに車はかかせない道具、と張り込んで来たのだろうが・・・桂とミスミには根本から効かない
『大佐。二人相手だと手に余ったりしてませんか?私も手伝いくらいは・・・』
小声でそうのたまうアル。いい加減諦ろというか、さすがは、というべきか・・・
『ちょっといい?』
桂が地獄耳を働かせたようだ、さようなら中佐、君の事は忘れない
858 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/02(水) 23:23:25 [ 5dL2ey5s ]
ギュム!!!
『あおっ!?』
『お、おい!』
桂が、その、なんだ・・・アルのズボンの真ん中を握りしめた
『赤くて三倍速い上に、これ?』
いや、赤は関係ないだろう、桂よ
『はぁ・・・小さい男はこれだから』
ばっちいとばかりに桂は手を振る。そしてミスミは目配せする。心底軽蔑した目で言い放った
『性格通り、出る物は口も下も軽薄なんでしょうね』
ああ・・・中佐が真っ白に・・・というか灰に。イタリア男として最大の恥辱を・・・(汗)
『じゃあ志摩、ミスミさん。一回戻って御神酒とか取ってきましょ、車借りるわよ』
『お、おぅ(汗)』
アルの返事を待たず、三人だけで車は走り去った・・・残されたのは灰になったアル一人。これ以降、彼が彼女らをしつこく誘うことはしばらく無くなる。相当ショックだったようだ
一方三人は、コロッセオの現場で桂が御神酒を撒き、場を清めたあと。お払い棒の代わりの月桂樹の枝で場を掃い、一応の慰霊鎮守とし・・・そのあとは仕事として昨日行けなかった現場視察に行って、この一日を終える事になる
そして舞台は再び太平洋に
859 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/02(水) 23:25:44 [ t4UopWMg ]
1942年4月20日、犬吠埼沖上空
『こちら飛島1、横須賀空、二式を随分揃えたもんだな』
双発の機体が横に並んで翼を振った
『飛島1、こちら浮船1、霞ケ浦の東海が全部集まるのだって、始めて見たさ』
総数100機に及ぶ空中集合、確かに壮観だった
『空中給油、任せたからな』
『なるべくな』
東海は九州飛行機の作で、本当は対潜哨戒機として進空するはずであったが、転移により超長距離の進出が必要となった帝國軍機に必要なのは、空中給油である!とした社長の英断により、現在東海の就役機の三分の二が給油機として生産されていた
『では、降ろす、きちんと掴んでくれよ?』
空中給油の概念は史実の太平洋戦争勃発の10年前から存在し、行われてきた。やってやれないことは無い。危険性を考えないならば
『ああ。先行した補潜にも給油してもらうが、爆弾を多く積んでハワイに飛ぶには貴様達の手を借りにゃならん。巻き込んですまんな』
東海が機体上方にまわり、機速を合わせて管を巻き降ろしていく
『いいって事よ、一世一代の大作戦だ・・・よし、いいぞ!捕まえた!』
給油管を二式大艇側の乗員が掴んで引き入れた
『コルク良し!今だ、出してくれ!』
二式大艇側がOKを出した
860 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/02(水) 23:27:55 [ L6SZuRPE ]
『おう、たっぷり飲んでけ!』
東海側から油が送られる
『こちら飛島4、失敗しました!ペラで切られた!』
『落ち着け、給油管を放棄、もう一つの方で再挑戦しろ』
東海の給油管は両エンジンの下に二つ。なにか問題が発生すれば、すぐさま切り離せるよう投下式で装着してある
『無理なようなら両機とも離脱しろ。各機、聞いたな?いった通りにするんだ。まだ戦争は始まったばかりなんだ、無茶するな』
それでも四組、8機が空中で爆発や接触事故を起こして墜落し、7機の二式大艇が給油に失敗して引き返した。この攻撃隊には二式大艇三個飛行隊、54機が参加している。初期の段階で二式大艇11機の損失、成功率約80%・・・高い、と見るべきだろう。これから補潜の待っているであろう
C域へ離着水を行わなければならない。エンジントラブルも考えて、ハワイに半分も行ければ十分。そうGF司令部は考えていた
『帰って来たらおごれよ?航空加棒でたんまり儲けるんだからな!』
『アホ抜かせ、大戦果をあげて帰って来てやるから、貴様らが酒買って待ってろ!』
そういったやり取りののち、二つの編隊は東と西に別れて、空の向こうに消えていった
871 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/05(土) 12:40:59 [ wezaJ53A ]
1942.4.21、ハワイ・真珠湾
米太平洋艦隊の一大根拠地として名高いここ真珠湾は、艦隊がその全力で出撃した事により、閑散とした姿をさらしていた
『しっかし、ジャップに随分してやられたみたいだなぁ・・・』
石油タンクの職員が、港の方を見ながら仕事仲間に話し掛けた
『空母の機体の方もずいぶんやられたらしいぜ?』
『うーん・・・キンメル大将も死んじまうしなぁ』
発表によると、戦艦二隻と巡洋艦三隻の撃沈の発表と共に、第三任務部隊の大損害とペンシルヴァニアの沈没とキンメル大将の戦死したらしい。そしてまだ戦いは続いてるとの事だ
『でもなんでレディレックスも帰って来たんだろうな?たしか所属は第一任務部隊だろ?』
石油タンクの岸壁にレキシントンが横付けしている。彼等はレキシントンの給油作業に借り出されていたのだ
『戦況が良くねぇんだろ・・・戦艦が十七隻(戦艦と巡洋艦の合計)もいたらしいからな。四隻も多かったら、かなり不利だぜ』
『くそっジャップめ!』
やっぱり隠し玉を用意してやがった。うす汚ねぇ真似しやがる
『こいつをはやく戻してやって、前線を楽にしてやらにゃあな。うら、仕事が来たぞ!』
『ほいさ!』
彼等は全力で作業を続ける
872 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/05(土) 12:44:24 [ WERj3NJg ]
レキシントン・艦橋
『上陸すら許されないとはね』
レディレックスの主、フレッチャー少将はため息をついた。太平洋艦隊の崩壊の様を、この艦の乗員は歯噛みして見ているしかなかった。他の艦が速度性能や、航続距離で一足に来れなかった距離を、レキシントンは逃げ帰って来たのだが、これでは士気が下がるのもやむを得ない
一方空戦は、相手が零戦だった事とサッチ少佐らの適切な指揮で、圧倒された訳でなく。パイロット達は雪辱を晴らしたくていきりたっている・・・両極端な感情が艦を支配している。彼等の頭を冷やす為に、休暇を要請したが許可は降りなかった
『航空戦力をほぼ喪失した第三任務部隊のシスターサラらと違い、油さえあればレディサラは戦えます。ハワイ近海の哨戒を・・・ね』
何の事は無い、レディサラはハワイの為のカナリアだ。しかし、たった一隻で何が出来るというのか。いや、ハワイにある戦力でか
『これからどう戦っていくか・・・一刻も早く態勢を立て直さなければならない』
その新しい態勢に立て直すには、我々の戦訓は必要不可欠である。だというのに我々がすぐに出撃である。次を戦う為の工作が必要なのも解るが、今この時、高リスクの行動を行うのはどうか
873 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/05(土) 12:47:20 [ L6SZuRPE ]
フレッチャーは正直な所、ハワイが攻撃されてもいいと考えていた
『あれだけの人員が失われたのだ』
艦を海上で失い、制海権をうしなえば、人員の喪失率は非常に高いものとなる。技術者集団である水兵達が、である。ここを攻撃されて、艦を失ったとしても、最低限の損失で済む
『本来、やりようはまだまだあるはず』
ペンシルヴァニアの喪失と共に、太平洋艦隊司令部の上位スタッフもまた消滅した。敗北から三日たったとはいえ、未だ混乱状態なのだ・・・
『しかし、出された命令は命令だ』
再建の為の手は、多くの人が打とうしてくれている。これに頭となる
ブオォォォン
フレッチャーの耳に蚊の鳴くような重低音が聞こえてくる
『何事か』
『演習、でしょうか・・・リスト取ってきます』
艦橋のスタッフに尋ねる。上陸が無いというので、乗員のメンタルを考えたフレッチャーは、いくらかでも休ませようとして、総員休業、楽にしてていい。とした為に、艦橋には最低限の人数しかいない上に、気が完全に抜けていた
そしてハワイの人々の誰もが、危機感を感じだしてはいたが、日本軍が来るにしても今日や明日はあるまい。日本からハワイは、いくらなんでも遠すぎる。そう考えていた
874 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/05(土) 12:50:45 [ 7Vp0wi8U ]
ハワイ真珠湾の南方海上から、その災厄はやって来た
『何機付いて来ているか!?』
『34機です!』
海面スレスレの低空を、34機もの二式大艇が飛ぶ。なんとも勇壮かつ危険な光景だ。空中給油で脱落したのが11機、43機でハワイに向かい、今は34機しかいないという事は、エンジントラブルで引き返したり、離水の失敗や、この低空飛行で海面に激突したりと、最終的に敵にたどり着け
スのは60%あまりになったと言うことだ
『真珠湾は未だ沈黙!』
『電信しろ、奇襲成功!ヌエ・ヌエ・ヌエ、だ!こんな事もあろうかと、手間をかけて二回の給油をした甲斐があったぜ!』
海面スレスレの低空飛行をするには油がかかる。爆弾もそうだが、油を空中給油という危険な形を選んでまで補給したのはこの瞬間の為、である
ハワイにはカフク岬を始め、既にレーダーが配置されていたが、彼等の飛んで来た高度故に役に立たなかった
『あとは爆弾落としてずらかるだけだ!投下用意!』
爆弾は、史実の二式大艇による第二次真珠湾攻撃時に搭載した25番四発ではなく、25番三発に80番一発の組を搭載した機がほとんどである。自機搭載量の半分しか積めなかった史実の1.5倍の爆弾をこの場に持ち込むことに成功したのだ
875 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/05(土) 12:53:36 [ HVdVzoX. ]
物凄い勢いで風景が流れていく、海軍工廠らしき場所にはボロボロの空母が入り、フォード島にはレキシントン級空母が一隻。工廠ごと空母と石油タンクをやるのもいいが、こちら側の石油タンクは規模が小さい。狙うは太平洋艦隊司令部そばの石油タンク
『目標近くにもう一隻レキシントン級がいます!』
『補給中なのか!?』
なんたる好都合。爆撃コースの端に進路を変更して空母を含むようにする
ドン、ドン!ドドン!
対空砲火が始まる。いまさら遅いわ!
『機位を固定する!』
もはや止められはしない!
『よーそろー・・・よーそろー・・・』
爆撃手がスコープを覗いて呟く。最終的に爆撃がうまくいくかは、彼にかかっているのだ。頬には汗が光っている
『よぉーい・・・てぇっ!!!』
その彼が爆撃索を引く
ヒュルルル・・・
最初に25番が、最後に80番が落ちて爆撃が終了する
『よおっし!ドンピシャだ!』
喜色を浮かべて爆撃手は叫んだ
『後部銃座!他の機と後続はどうか!?』
『大丈夫です!無事に投下してます!』
よし、次は帰る事に専念せねば・・・戦果確認は最後部の奴らに任せれば良い
『爆撃終わり次第、小隊ごとに分散し離脱!集結場所へ向かえ!』
876 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/05(土) 12:55:42 [ HdOAZwo2 ]
レキシントン・艦橋
『爆撃、だと・・・』
四発の大型飛行艇が、低空で編隊を組み、向かってくる。今さっき考えていたことが現実になるとは・・・
『っ!戦闘機隊を上がれるようにしろ!急げ!』
攻撃を受けてもいいとはフレッチャーも考えたが、やられっぱなしでいいとは考えていない
『速い・・・!』
四発の大型飛行艇であるのに、カタリナと比べても明らかに速い。海戦の時といい、これといい・・・我々が考えて来た日本人とは・・・
ヒュルルル・・・
『司令!危険です!』
艦橋のスタッフに引き倒される
ドドドドドドド!!!
『うおおっ!』
レキシントンが揺さ振られる
『ダメージリポート!』
すぐにフレッチャーは覆い被さっていたスタッフを押しのけて叫んだ
『艦前部飛行甲板に被弾!』
その言葉に釣られて艦の前方を見るが、特に変化は・・・いや、小さな穴が
ドカン!ドカン!ゴアアアアア!!!
『時間差!?』
石油タンクと艦の横で爆発が起きる。最初の爆発からいくらか間が開いている。タンクの消火作業を邪魔する為としては中途半端、むしろ火災の火炎をわざわざ爆圧で消すような真似をしている
『重油を撒き散らすだけでは・・・』
877 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/05(土) 12:58:19 [ BTaSp5ZA ]
『くそっジャップめ!やりやがったな!』
やっと全員が位置についた見張り員達が罵声をあげる
『だ、第二派来ます!』
その中の一人が叫んだ
『機関室、早く動けるようにしろ、戦闘機隊をあげなきゃならん!』
無風の状態でもF4Fは飛べるが、甲板を長く使う。今さっきの爆弾はその貫通力で、斜めに艦を貫通して艦外に。レキシントン傍での爆発はその爆弾によるものだ。幸運だった、爆発が甲板、もしくは艦内で爆発していたら、発艦自体ができなかっただろう
『ちぃっ・・・くせえな』
誰かが呟いた。二回目の爆発で石油があちこちに飛び散って気化しているのだ
『そうか!』
聞きとめたフレッチャーが叫んだ。一回目の爆発は触発信管で石油タンク上部に充填されている不可燃ガスを吹き飛ばし、二回目の爆発は一回目の爆発に耐えるだけの厚みを持つ爆弾(事実、余っていた16インチ砲弾改造爆弾を使用していた)を重油内で爆発させ、これを散す。散らして表
ハ積が増えるほど、重油から気化するガスは増える。そこに火が着けられたならば!
『総員!艦内に退去!急げえぇっ!』
叫んだその時には、7機の二式大艇から爆弾が投下されていた。その爆弾は勿論、発火性の高い、黄燐を含んだ・・・
878 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/05(土) 13:00:38 [ KATvUXoY ]
キュボァッ!!!
撒かれた爆弾が小さめの三号6番だったため(当然だ、日本側は石油タンクの中身を効率的に燃やすことを考えていただけなのだから)、小さな火球がいくつも発生し、石油タンク基地を覆い尽くした
一回の大爆発ならば、むしろ被害は抑えられたろう。燃料が気化し爆発した場合でも、その爆風の危害半径の減衰は大きい。その範囲だけの被害になった筈だ・・・FAEの開発時から一足跳びに現在技術で作られたFAEの爆発と同じ効果を叩きつけられたのだ、最悪な事に、全くの偶
Rで
そしてもう一度二式大艇が攻撃した石油タンクの位置を確認しておこう。太平洋艦隊司令部のすぐ南、なのである。そして給油の為、唯一戦力を保っていたレキシントンが横付けしていた
この区域で燃料気化による爆発・・・悪夢といかいいようがなかった
太平洋艦隊司令部では、司令部引き継ぎ等を取り急ぎ行う為に、ハワイに残っていたスタッフ達は昼夜問わずに働いていた。彼等の半分が、呼吸傷害や、一酸化炭素中毒、爆圧によるショック死。そして太平洋艦隊司令部の建物窓ガラス、これが割れて飛び散って動脈などを切り刻まれた
メ、といった様々な死因によって無残な姿をさらし、生き絶えていた
879 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/05(土) 13:02:57 [ LIawiXzY ]
一方レキシントンは、大火災を爆発が納まった後に発生させ、焼け落ちようとしていた
艦橋に居たり、対空砲火を浴びせようとしていた将兵は、司令であるフレッチャーも含めて太平洋艦隊司令部の人々と同じような姿で死体となり果てた
しかし、火災は爆圧によって消えていても良さそうなものだが、何故大火災が起きているのかというと、フレッチャーが命じた戦闘機隊の発艦命令、それから解放式格納庫だった事が理由である
ガソリンと機銃弾を給油しようとしていた整備員達と、機体に乗り込んでいたパイロット達は解放式格納庫の特徴である解放口からの爆圧にフレッチャーらと同様のありさまにされ、さらに機体どうしが接触(解放口が狭い為、勢いが増した)それが発した火花に、漏れ出したガソリンに引
ホ、格納庫内でF4Fが燃え始めた・・・これだけなら大火災にはならない、が、石油タンクの爆発により、周辺の空気が引きよせられ、突風が吹いていた。巨大なふいごにより風が送られてしまったのだ
パーン!パーン!パーン!
火災は機銃弾の誘爆を引き起こし、さらに事態は悪化した。言うまでも無いが、消火にかかる人数も、指揮者も、恐ろしく少なく、やがて火災の熱は、弾庫へ達し・・・
880 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/05(土) 13:05:23 [ QDKBCzwM ]
『うおおっ!?』
ドドドドドドド!!!
最初に離脱した先頭の二式大艇にすら届く轟音は、太平洋艦隊最後の稼働空母、レキシントンが真っ二つに折れて横転した音だった
『おいおいおい、後続は何やりやがったんだ?』
しつこいかもしれないが、日本側としては、ただ重油を効率的に燃やしたかっただけなのだ。実際、最後の仕上げにかかった7機の二式大艇の内4機までもが、予想外の気流の乱れに墜落、自爆している
『・・・そうだな、我が小隊は回頭して東に抜けて南回りに帰還しよう』
爆発に気を引かれているだけでは部下は率いてられない。機長は燃料計を睨んで決める。彼の出した命令は、バラバラに離脱すれば、我々がどこからやって来たのかわかりにくく出来るし、追撃される機数を分散できる。そう考えての措置だ。まだまだコンバットボックスのような思考に
ヘまだ遠い、それに飛行艇である以上、下部銃座が無いため穴の埋めようが無いが
『なんだぁ、あいつは?』
そんな物思いに一瞬耽っていると、副操縦士が声をあげた。B17が一機でほっつき歩いている。爆撃機である以上、迎撃に上がって来たという訳ではあるまい
『ここはハワイの東だ。あいつは西海岸からの輸送便だな』
881 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/05(土) 13:08:21 [ BTaSp5ZA ]
待てよ・・・編隊でなく、一機で?ハワイに輸送で一機だけ、というのもおかしい。あるとすれば・・・そうだ、米軍は公表した自らの被害に、前太平洋艦隊司令のキンメルが戦死したことは含まれていた
『もしかしたら、あれには敵さんにとって重要な人間が乗っとるかもしれん』
やるか・・・
機長の気持ちは機内の仲間にすぐ伝わる。飛行艇は一機に乗る人数も多い、それ故に自分達を◯◯一家と呼び、信頼を築いている者は少なくない
『やりましょう!』
『やり合うとなれば、タンクを打ち抜かれる可能性がある、下手をすると帰れなくなるぞ』
『そんなんで俺達が嫌と言うと思ってんですか?』
お前ら・・・
『よし!カマすぞ!機を横並びにする、機銃座、気合入れろ!・・・二番機以下、貴様達は帰れ』
二、三番機が文句を言ってくるのが解る、それに機長(兼小隊長)は怒鳴った
『あれに何が乗ってるかわかっちゃおらんのだ、命令だ、帰れ!それとも貴様ら!俺達が簡単に打ち負けるとでも思ってんのか!』
有無を言わせず、機長は無線を切った二、三番機はバンクをうって離れていく。御武運を、そういっているように見えた。機長はそれを見てわずかに涙ぐんだ
『行くぞ野郎どもっ!』
882 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/05(土) 13:11:15 [ /nd8Ea2c ]
『敵機向かってきます!閣下!パラシュートの準備を!』
彼の予測は正しかった。そのB17に乗っていたのは、次期太平洋艦隊の司令に任命されたチェスター・ニミッツ本人が搭乗していた
『まさか爆撃機が向かってくるとはね。機長君、機長君、引き離して離脱は出来ないのかい?』
『長官、敵の方がいくらか優速さね』
にょろーんと小首を傾げるニミッツ。日本機が飛行艇でもそのような速度が出せるとは・・・やはり、今までの情報は一度洗い直す必要があるな
『横につかれます!銃座!撃ちまくれ!』
ドダダダダダダダ
指向できる全ての銃座が火を噴く
ガキン!ガキン!
この機体にも敵の射撃が命中し、跳ねる。危険だ。嫌でもアドレナリンが生産され、テンションが上がってくる
『射線の数はこっちが上だ、銃座から沈黙させろ!』
機内に硝煙の匂いが充満する。これでは銃弾と煙でスモークチーズにされてしまう
『機長君、機長君、敵機の下に潜ったらどうかね?』
敵に下部銃座は無い、好きに撃ち込める
『わかってます!座ってて下さい!』
ニミッツ自身がやられたら何の意味もないのだ
『上部銃座!下に潜る、潜ったら好きに撃て!』
敵飛行艇の巨体が迫って来る
884 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/05(土) 13:14:01 [ wFko1i7. ]
『く・・・そ・・・』
二式大艇側は阿鼻叫喚の巷となっていた。あまりに手数が違い過ぎる。まともに攻撃できたのは数分間だけだった。あとは一方的に撃ちまくられ、艇内は血に塗れ、仲間の死体が転がってるという目もあてられぬ状態へ。彼自身も弾片によって貫かれ、瀕死の状態である
『誰でも良い・・・銃座に・・・!』
『機長!敵が下nがぱっ』
下に潜ったB17の射撃で、無事だった最後の一人が上半身を分離させられた。もはや、ここまで
『いや・・・手は・・・ある!』
操縦管を前に引き倒した。そこが安全だと思って、好き勝手している奴らを、海に引きずりこんでやる
『ざま・・・みやがれ』
位置の関係上、敵の機体が見えなくなる前に、上部銃座の敵兵が、大きく目を見開いたのが見えた。奴は潰したな
『一緒に海水浴を、楽しもう・・・ぜぇ・・・』
機長は出血多量で生き絶えた
主の居なくなった二式大艇を載せ、ニミッツを乗せたB17は海面へと突っ込んで大きな水柱を立てた
ニミッツらB17の乗員の死体は発見されなかった。このあたりの海流は早く、流されたと見られる。彼等は戦闘後行方不明と判定され、名簿から抹消された。太平洋艦隊は再び指揮官を失ったのだ
899 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/07(月) 17:37:00 [ ClyEUp7U ]
1942.4.22小笠原沖
『ち・・・魚雷調整に手間取っていたら・・・』
太平洋艦隊・第七任務部隊。この部隊は潜水艦を主体とした部隊であり、内南洋に備え、展開を完了していた。しかし、ロックウッドの乗る隊旗艦のサーモンは、魚雷調整に手間取って他艦より出遅れていた
『クリスティーヌの馬鹿野郎め、潜水艦は通商破壊に使用してこそ』
ブツブツとロックウッドは愚痴っている。太平洋艦隊に所属している潜水艦は51隻、うち34隻が開戦に従い海上展開を終えていた。最初の命令はクリスティーヌ少将も補給路破壊や通商破壊を命じていたのだが、理由なく(敗戦を伝えなかった)、退避中の日本艦隊を狙う事を命令したのだ
ロックウッドが不機嫌なのはそのためだ・・・だが、彼は知らない。レーヴァテイルの聴音能力により、艦隊に接敵した潜水艦は片端から爆雷攻撃を受け沈められている事に。その数は21隻にものぼるが、それがはっきりするのは一ヶ月後の事である
『ソナーに感!複数です!距離、4000!』
『ふん・・・読み通りか』
ロックウッドは鼻を鳴らした。出撃が遅れた彼は、普通の方法では戦果を上げれまいと、危険を冒して日本本土に接近。安全地帯だと安心してる敵を食うつもりでいた
900 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/07(月) 17:37:59 [ ClyEUp7U ]
『潜望鏡深度まで浮上、敵確認ののち回頭して前部発射管の一斉射。後は逃げる』
ロックウッドは簡潔に命じた。性格に多少難があるが、やるべき事はやる男である
『っ!別方向から敵艦、単艦です・・・なんだこいつは・・・ピンを打ち鳴らしながら航行しています。距離、2500』
『なんだそれは?深度上げ、しばし待て』
ロックウッドがソナー室に移動し、ソナーマンからレシーバーを受け取る
カーン!カーン!カーン!
あまり間を開けずにピン音が聞こえてくる。無意味にこんな事をしていては、自分の位置、ひいては艦隊の位置をさらすだけだ
『しかし、耳障りかつ、目障りだな・・・位置特定、出来るな』
『これだけ情報があれば、すぐにでも』
ソナーマンがレシーバーをロックウッドの手よりとって、耳に当てつつ考えている
『こちらには向かってきてません。斜めに後方を横切るようです。回避行動もしてません』
ソナーマンの言葉に頷いてロックウッドは艦内無線のブザーを押す
『水雷長、馬鹿だがうるさい奴を後部でやる、前部発射管はそれからだ』
『アイ』
単艦行動のみならず、回避行動もしていないとは・・・愚か者め
『航海士、針路を1―4―0へ、回頭はゆっくりとだ』
901 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/07(月) 17:39:02 [ a1KJrS8g ]
ゴアァッ!!!
回頭を終えようとしたその時、ソナーマンの耳に異音が響いて来た
『ソナーコン(コンタクト)!静音を!』
なんだ?あの音は・・・
冷汗が流れる。潜水艦は、気付かれたら終わりだ・・・慎重さは潜水艦乗りの必須条件だ。うん、敵艦はまったく航路を変えていない
『こちらソナー、異常音響あるものの、敵艦はこちらに気付かz』
ポチャン!ポチャン!ポチャン!
『なっ!』
ソナーに有り得ない音響が響いた。これは・・・!
『爆雷着水音!直上です!』
そう言っておいて頭は否定し続けている。馬鹿な!距離はまだ2000は間違いなくある。英海軍のヘッジホッグだって射距離は250mなんだぞ!?
『一体どうなっている!?敵艦を見逃したのか!』
ロックウッドも焦っている。この状況は、いくらなんでも非常識だ
『そんな筈は・・・!』
キュボン!!!
問答の暇すら、爆雷は与えてくれなかった。艦後部に直接命中したそれは、海水を勢いよく艦内に流入させ、そこに居た将兵達を冷たい水の中へ誘った
キュボン!!!
沈降を始めた潜水艦を追い討つように、一定の深度まで潜った事で信管が入った機雷がすべて爆発し、下から艦体に圧力を叩きつける
902 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/07(月) 17:42:39 [ KATvUXoY ]
ザッパーン!!!
海上に水柱が噴き上がった
『・・・敵潜、撃沈確認!』
ロックウッドの乗艦を沈めたのは、施設艦から対潜装備実験艦となった白鷹だった
『敵艦の奴ら、何が起こったのかわからんかったろうな』
2000m先にいる艦から爆雷を投射されるとは誰も考えないだろう
『そのための兵器ですから』
計画責任者として乗り込んでいる大佐が現れた
『レーヴァテイルによって2000m先の潜水艦が、位置からなにから丸見え、というのが前提ですけどね』
五島は撃沈した潜水艦の方を向くと十字を切る
『五島大佐』
責任者の名前を呼ぶ、レーヴァテイル関連の物事の総責任者、レーヴァテイル達の大元締めの男だ
『第一艦隊の出迎えに出て来た甲斐がありました』
『新兵器も役に立ちましたからね』
白鷹の前後に搭載されていた高角砲が取り外してあり、その代わり円形の筒(まんまRBUー6000を想像されたい)が装備されている
『探知距離が増大したのに、対潜兵器がそのままなんぞ怠慢ですから』
違う。今までの爆雷が数百mの距離で爆発する事によって、レーヴァテイルの耳を痛めてしまうのを防ぐよう、お神輿として前線から遠ざけられて三年。こいつを造るのににかかりきりだった
903 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/07(月) 17:44:08 [ Vs9CdO7s ]
開発には形とか、ロケット弾のバラけ具合い、横風に流され過ぎないか、生産の配分、爆発の方式の選択、弾庫に何発積むか。いろいろ頭を悩ましもした。兵器の開発とは、これほどの難事が付き纏うとはつゆほども考えていなかった。なるほど、用兵側の傲慢というのはこういうものか
Aと。技術士官達にはずいぶんお世話になった
『第一艦隊より入電、釣果はいかばかりか、です』
伝令が来た
『大漁なり、で、いいですかな』
艦長が五島にむけて微笑む
『はい、お願いします』
しかし、愛するニーギの為、もとい、レーヴァテイルと作ったはいいが、作ったのは兵器、か。なんだかなぁ
『しかし、砲座を一つ潰すような大きさだと、配備に問題が出て来そうな気もします。これは私より、さらに上の人に決めてもらうことになるでしょうが』
うん。それは軍人である以上仕方ないこと、か
艦長に話しつつ考える。ニーギを悲しませない為にも、レーヴァテイル達の乗る我々の艦を、極力撃沈されないよう努力をするしか無い。そのためには、敵艦をより多く、効率的に沈める事が必要・・・因果だな
『そんなもんですか』
『そんなもんです』
五島はしばらく取り留めない会話を艦長と交わしてその場を離れた
904 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/07(月) 17:45:54 [ YYyvVf0I ]
この後も、白鷹は本土から来た他の出迎え艦と共に第一艦隊の護衛を続け、その帰還を援護した。
白鷹の行動は、聯合艦隊将兵に目立って見られ(ロケットの轟音が目立つ)敵潜の撃沈をロックウッドの乗艦の撃沈のほか2隻上げたこともある。これは新兵器の対潜ロケットの効果が大きい。ほぼ、探知即攻撃が可能なのは将兵にとって非常に魅力的に見えたのだ。レーヴァテイルの負担も
軽い
勿論、出迎えに白鷹を派遣したのは艦隊上部や将兵に対して売込みの面があった。これは結論から言えば大成功だった。採用が決定されたのは言うまでもない
そして敵艦からこの兵器を見ると厄介どころでは無い。ヘッジホッグのように、自分の所に向かって来ていないのに攻撃される上、こちらが発見したと思ったら即直上に爆雷が降ってくる。さらに後期型では、爆雷の沈降速度を速めたものが投入され、被害はさらに増大。レーヴァテイル
フ存在と共に、太平洋は米潜水艦乗りの墓場と言われた
戦後の確認記録だが、米潜の被害の最高記録として、月間47隻という数字も記録している
米潜水艦隊の灰色に彩られた苦難の戦いはここから始まったのだ
917 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/09(水) 10:28:26 [ /nd8Ea2c ]
1942.5.7、ハリコフ前面
『あいつら、何で死なないんだ!?』
あちこちで同じ言葉のドイツ語が飛び交い、悲鳴がこだまする。小火器や機関銃でソ連兵を撃ち抜いても、しばらくは苦悶の表情を浮かべながら突撃して来てこちらを殺しに来る。独兵も死ににくくなっているが、この場合数の多い方が優位である
『進め!進めぇっ!』
準備不足の中始められたハリコフ攻撃、しかし、タンクデザントの奴らが思った以上に働いている。戦車に乗って督戦していた政治士官は満足していた
『いつもこれだけ働けば良いものを・・・こいつらはどこの出身だったかな』
一山いくらで集めてくる兵士達だ、一々どこの出身だ、と、確認などしていられない
『ま、これほどの戦果をあげたのだ、私の出世は・・・ふふふっ』
ドッドッドッ!!!
『な、なんだ?』
地鳴りか?T34の覗き穴のスリットから政治士官は外を見る
『ひぎぃやぁっ!!!』
『ふぐぅあああっ!!!』
何か黒い影に兵士達がやられていく、なんだあれは!
『ええい!』
無用意に彼はハッチを開けて外を確認しようとした
ガチャン!
ハッチの立てる音でそれに気付かれてしまった
『な、な・・・うわぁああっ!!!』
918 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/09(水) 10:29:50 [ INa3QEAc ]
政治士官はハッチから乗り出した上半身をそれに喰いちぎられた
グルルルルルッ!!!
三つの犬の頭を持ち、尻尾は二つの化け物。その身体は言語も、戦争の意味もわからず突撃をさせられ、痛み、苦しみ、何故自分がこのような目にあわなければならないと苦悶、嫉妬して死んだ者達の腐肉で形成されている
そして頭は・・・地雷犬として、何もわからずに銃火にさらされた犬達が、死んでもなお、ソ連に戻ろうとする意志と、このようになった恨みで満ちている
これを目撃した独兵達は言った。まるで、ケルベロスであった、と
死にきれない死者と化け物の跳梁する東部戦線。数百万の軍同士の激突は、マリスの渦の力の供給源となり、かつまた、その力によって化け物は生み出され・・・必要の無い両軍の犠牲は増えていく
大消耗戦となった東部戦線に、独軍は撤退に次ぐ撤退を余儀なくされた。あることが、ドイツ本土で起きるまでは・・・
ドイツ東部戦線については、ここで筆を休めておきたい。いずれ来るマリスの波動の行く末が、明らかになるまでは
919 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/09(水) 10:36:39 [ IiySVxhQ ]
1942年5月7日、ドイツ総統官邸
『うぐはっ!』
『総統!』
嘔吐した総統に側近達が駆け寄る。介抱され、青い顔をしながらもヒトラーは休息を拒んだ
『余は、倒れるわけには・・・いかぬ。日本が、あれだけの勝利を・・・あげたというのに、わがドイツの首領が、倒れるわけには・・・』
4月20日の誕生日に、内南洋決戦の大勝利をイタリアの日本大使館海軍部から伝えられた(故に4月20日に志摩が海軍部を訪れた際、神経質になっていたのだ)ヒトラーはそれを我が事のように喜び、その翌日には、日本戦勝の演説を急遽執り行い、資源問題で在伊艦隊に無理を言ってきてい
ス独海軍を一喝、今後一切の手出し無用のお墨付きを与えるほど熱狂していた(英米の戦艦を、開戦からたった二ヶ月で12隻も沈めればそうなる)だが、そのあとすぐに体調を大きく崩してしまっていた
『何故、ここに来て余の身体は言う事を聞かぬ・・・!』
この体調不良、クイーンズガーデンでヒトラー呪殺の儀式をしていた英国魔女協会の魔女達が、クイーンズガーデンが起動したことで動き出した防衛機構に殺され、血を捧げたことによって、マリス開放と共にその効力を発揮していたのだ
『余は、余はドイツを、救わねば・・・!』
920 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/09(水) 10:38:05 [ cnmf7h96 ]
『総統の御身あってのドイツです!どうか御自愛を!』
フラフラのヒトラーを見ては、側近も引き下がれない
『将軍達は今どうしている。何故彼等はロシアごときに引き下がるのだ!』
モスクワの前面からの撤退以降、ヒトラーにとって東部戦線からの前線後退の報告は苦痛でしかなかった
しかしながら、ヒトラーは東部戦線こそがドイツの命運を握るという事が理解できない頭では無いので、苦痛であっても報告をきちんと聞いていた。その事が彼にとってストレスになっていた(逆にロンメルや日本の戦果は彼の心の清涼剤として機能していた)
精神的に健全ならば呪いの効果なぞ、タンスの角に足の小指ぶつけた程度だったろう。しかし、マリスは人の弱み、あってしかるべき負の感情をに作用するのだ
もし、人間の心の琴線が切れてしまったその時、マリスの渦の中心が傍にあったならばどうなるか・・・その結果の一つが、この20日後に明らかになる
ただ言えることは、ヒトラーが病床につきがちになった為、将軍達はヒトラーの横槍を考えずに済むようになった
しかし、良くも悪くも強い指導力を持つヒトラーの不在は、ドイツの戦略を一時的に停滞させる結果を生む。大戦の行方を狂わせるほどの・・・
921 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/09(水) 10:40:17 [ 62Dc2aCc ]
1942年5月7日、トリエステ・アドリアティコ造船所
第二次マタパン海戦の後、日伊海軍は協同路線を採るように取り決めが行われ、現在10隻の海防艦が、部品取りの為に退役作業を行っていた。今後は宿泊艦となる予定だ
『電探がそんなに足りないとはおもわなんだな』
志摩が呟く
退役にあたり、早速取り外されたのは、今では旧式化し、海防艦に出回ってきた二一・二二・一三号の各電探だ。これらの電探は、ドイツが自身の為に必要なため、回してくれる電探が少ないイタリア海軍にとって福音だった
さらに良いことに使用電力は少なく、軽め(性能は?)な日本電探はイタリアの各艦に対しても取り回しが効きやすかったのだ。しかも二二号は射撃用にも使えるとなれば、飛びかかりもする
山城以下、重巡に大淀、仁淀の二艦だけは、性能が安定してきた三二号電探(それでも史実米軍のmk8より多少落ちる性能)が装備されていたから、供与に問題問題は無いのだが・・・
『青葉はどうしたもんかね・・・』
愛宕は艦中央部を中心に被弾して、潰れたのが高角砲などであったから、替えが効いた。足柄は奇跡的に無傷だったが、青葉は第三砲塔をやられており、そこに何を積むか在伊の日本海軍は頭を痛めていた
923 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/09(水) 10:50:13 [ JlgIauw. ]
実は見兼ねたOTO社が、快く砲を提供しても良いと申し出てくれた
しかし、換装するイタリアの砲自体は素晴らしい物だったが、サイズの問題や重量問題、弾の種類が変わる事により、一、二番砲塔とデータが違ってしまう事で不具合を起こしてしまうだろう。無理に合わせようとすれば、一、二砲塔にも影響が出かねない。申し訳ないが、丁重にお断り
ウせてもらった
第二案は高角砲を積んで、対空力の向上をはかる案だった。問題は取り付けを変えてターレットを埋めようとする場合、工作艦では荷が重く、イタリアのドックを埋めなければならない事
伊海軍の量産しつつある軽巡と青葉の性能はどっこいどっこい。新しい分、伊軽巡に分があるか?だから、わざわざドックを埋めてまで修理させてくれ、とも言えない
だから現在、三番砲塔跡に鉄板をはり、機銃だけを増載する方向で修理が行われているのだが、20p砲が4門しかない重巡をどう使えというのか、と、また用兵側は頭を抱えている。ただでさえ使える艦の頭数が足りないのに
『バカバカしいあのイタリア海軍懐柔の策が当たらない限り、俺達は・・・』
そう、取り外された電探を取り付ける為にヴェネチアにイタリア艦が回ってくる。そこを狙うのだ
933 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:28:37 [ 2FpTlyyE ]
1942年5月10日、合衆国某所
『時は至れり』
『時は至れり』
暗がりに人影が何人か集まり話している
『世に悪意は放たれた』
『世に悪意は放たれた』
いや、会話になっていない。一人が詠唱するのをほかが復唱している。それだけだ
『機は来たれり!』
『機は来たれり!』
やがて影はそれぞれ別れた。各々が行動すべき事を胸に秘めて
その場に詠唱していた一人だけが残っていた
『43年前のあの日から、いつかは・・・いつかは、と、思っていましたが』
激しい銃撃音、ふみにじられる人々。あの時12歳だった脳裏にこびりついている凄惨な光景
『欧州で悪意が放たれた。これならば《門》が開けるに違いないでしょう』
影は笑った
『ああ・・・素晴らしい事になるでしょうねぇ』少なくとも、合衆国は崩壊する。南米に林立するろくでなしどもの政府も
『この南北の大陸に住む住人にすべからく、幻視の夜は来るのです』
幸い、我々と同様にふみにじられた人間は多数居た。同志を得るのにこそ時間はかからなかったが、絶対的な悪意が足りなず、あれから43年の月日を経てしまった
『だが、今回は違う・・・もはや遅いのですよ、全てね』
残った一人の影も、消えていった
934 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:30:53 [ HdOAZwo2 ]
同日・ダウニング街一番地
『行くのかね、パウンド海軍卿』
首相執務室に現れた彼を見て、チャーチルがまず発した言葉はそれだった
『後任にはトーヴェイ君を推します』
パウンドは敬礼をしてそう答えた。パウンドの顔色は相当悪い
『私が動けるうちに、地中海の決着をつけたいと思っております』
彼の古巣なのだ、地中海は。そして、任務につく限界も自覚していた
『ロイヤルネイヴィーを、老人一人の死に場所を与える為に動かすつもりは無いぞ』
『最後に一暴れしたら、おとなしく帰ってきますとも』
どこか物悲しく二人は笑いあった
『ネルソンとロドネーを頼む』
『お任せを』
今回の作戦でロイヤルネイヴィーは投入できる主力艦全てを地中海に投入する予定だ・・・負けは許されない。そこに不退転の将を配置するのは当然である。パウンドはその条件にまったく適していた
『戦艦10隻に空母5隻か』
パウンドが退出した後、葉巻の先を切りつつチャーチルは呟いた。イタリアには日本の艦隊も含めて戦艦が7隻空母に至っては2隻しか居ない
『よく見ろ日本人、これが英国の本気だ』
日本艦隊がイタリアに現れた事で、この戦争の天秤が大きく揺れている。そのツケを払ってもらうのだ
936 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:32:20 [ cnmf7h96 ]
同日、呉・連合艦隊司令部
『まいったよ・・・何もかもが大戦果だ』
『は、はぁ・・・』
小沢の前で、松浦は恐縮していた。ハワイ空襲をよしとした自分の目的は、こんな大戦果をあげない事が目的だったのに・・・
『国民は大熱狂だ。ハワイの割譲を求めよ、なんて嘆願の投書も新聞にはあがっている』
こうなっては熱を冷ますのにかなりの手間がかかるだろう
『かといって米国は情報を操作し、思った程の影響は与えていない・・・山本大臣から昔の話を元に愚痴られたよ』
ハワイの奇襲攻撃案ならば、国民の目の前でやるのだから欺瞞もできなかったろうと云々である。史実では、それでも真珠湾奇襲の損害を一時的にごまかしているから山本の愚痴は正しいとは言えない
『こうなった以上、累積の戦死者であちらの厭戦気分を煽るしかありますまい。あとはこちらの捕虜をいかに使うか・・・』
松浦にした所で、内南洋決戦で、普通の海軍であれば、まるまる消滅するような戦果を挙げていながら、手が無いというのに困惑していた。まだ二週間程しかたっていない・・・策がぽんぽん出てくるような相手なら苦労はしない
『そうか』
それでも小沢は不満げだ
『しかし・・・』
松浦は言葉を繋げた
937 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:35:31 [ EixJOQD. ]
『一つだけ言えるのは、米国に勝利という希望の目を与えない事です』
勝ち続けることが一番敵に厭戦気分を与えるのだ。こちらが一度でも負ければ、やりようがあると相手は戦いを続けるだろう。もう一つ、厭戦気分を引き起こすのは自分達が勝っているのに、人に対して多大な損害を受け続けることだが、これは国も軍人としても受け入れられる物では無
「
『敗北か。何を以て我々の敗北と為す』
小沢が興味を持った
『一つ、我々の固有領土の失陥。一つ、ハワイからフィリピンへの我々を突破しての艦隊入港。一つ、戦艦又は、正規空母の撃沈です。一隻でも手遅れになる可能性があります。敵にとって宣伝に申し分ないでしょうから。俺達の戦いはここからだ、と』
『ふむ・・・我々は戦う戦い全てにリスクを背負う訳だな』
小沢はあれこれ考えている
『なにかお有りで?』
松浦がそれとなく促す
『貴様になら、良いか・・・実は次に行う作戦は聯合艦隊司令部では既に決まっている。内南洋西部のパラオを攻略する』
パラオ、南洋庁の置かれていた、転移前の我々にとって重要拠点だった場所だ
『あの島からならば、ニューギニア、蘭印からのフィリピン・ダバオへの航空路を断てる。勿論、艦船もな』
938 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:37:27 [ 6IS4voV6 ]
インド洋方面からの補充されてくる航空機は防げないが、現状よりもっと楽になるだろう。九州・沖縄とフィリピン間で行われている航空戦がだ。特に米陸軍のBー17に補充で邪魔がはいるのは痛い筈だ
『渡りに船、というわけですね』
『マニラに集まった連合軍艦隊と、突き進んでくるであろう米艦隊次第だがな』
現状で使える戦艦は、大和と金剛級の四艦に思った程撃って居なかった長門級の二隻、第三艦隊の空母は弾薬補給で全く余裕が無い。重巡も戦えるのは四隻だけ、駆逐艦も四個水雷戦隊が魚雷を使い果たしているので、予備の駆逐艦を引き連れていく予定であると小沢は語った
『またしてもギリギリの戦いですね』
『それでいて君の注言だ』
八年の猶予を経て、先の大勝利を得ながら、敗北の影が付き纏う・・・勿論、国民はそんな事は露知らずに提灯行列と、新聞の威勢の良い飛ばし記事に酔っている。兵にもいずれ感化されていく事だろう
『頭痛の種が増えたよ』
苦笑する小沢
『申し訳ありません』
『いや、何も知らぬまま戦う愚は冒したくない。良い話を聞いた。君に敵味方の情報操作を分析する部署を任せて正解だったな』
頭を下げる松浦を小沢は褒めた
『また貴様を呼ばせてもらう』
939 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:39:20 [ INa3QEAc ]
『下がって良し』
松浦は恐縮して部屋から退出する。まったく・・・寿命が縮む。気に入られるのも、相手が上過ぎると問題だ
『しかし小沢長官・・・我々は在伊艦隊に一体何がしてやれるのでしょうか?』
あそこには山城が居る。彼女がやられてしまったら・・・太平洋で手一杯だからといって、考慮の外に置くべき問題では無いと、自分は考えるが・・・ましてや同盟国の手前、味方を残しての撤退なぞ出来るわけが無いのだ。それが正しいとしても・・・するならば、余程の覚悟が居る。
I田中将にそれが出来るか・・・その後の邦人達の扱いも変わってこよう
そしてあそこには・・・
『なんとしても逃げるんだぞ、志摩よ』
どうして貴様にはいつも面倒がまとわいつくんだ!
・・・しかしいつも貴様はそれを乗り越えて来た、傷つきながらも・・・次もそうであってほしい
松浦はもう一度呟いた
『我々に、彼等に対して一体何がしてやれるというのか・・・』
941 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:41:50 [ L6SZuRPE ]
『ふっ・・・私にかかれば、軍艦に忍び込むなどたやすいことです』
『マスター、これ犯罪行為ですよぅ〜・・・』
滝涙であうーと泣いている幻影を連れたシスターは、とある松級駆逐艦の調理室に忍び込んでいた。曜日は勿論金曜日
『大丈夫です。鍋のカレーを少しずつもらっていくだけです。ここに居る100艦程巡りますが』
『そ、そんなに巡るんですかぁ〜(涙)』
そんな幻影をよそに、喜々として鍋を開けるシスター
事件はそこで発生した
『な、無い!カレーが無い!有り得ないわ!こびりつきもないなんて!』
『ふはははははは!!!』
『何奴!』
背後から高らかに誰かが笑う
『我等、大日本帝國海軍カレー百人衆のカレーを、水兵でも無い貴様が食しようなぞ、大和に亀甲船が勝つようなものだ!』
幻影の女の子はそ現れたいつの姿を見て絶句した。褌一丁で、日本海軍の制帽にカレー皿と出来立てほかほかのカレーが載っている
『この艦のカレーが食べたければ、我を倒すことだな』
『いいでしょう!セブン!!』
『え?ええっ!?』
シスターの方は戦う気満々である
『我が艦はチキンカレー甘口!ヘルシーヘルシーと侮るなよ!』
少女激闘中(しばらくお待ち下さい)
942 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:43:54 [ YYyvVf0I ]
『ふっ・・・ご馳走様でした』
カレーのついた口をハンカチで拭くシスター、そして次の艦へ
『良く来た、と、言いたい所だが・・・おのれ、次は中辛おかわりだ!甘口のようにはいかんぞぉー!』
『ここもなんですかぁーっ!?(涙)』
そしてシスターはやる気満々である
『はあぁぁぁぁっ!!!』
少女激闘中(しばらくお待ち下さい)
『良いシステムです。戦うたびにお腹を減らして、違う味を食べさせてくれる・・・大日本帝國海軍、侮れませんね』
口を拭きつつシスターは言った。そして次の艦へ
『あのぅ・・・やっぱり』
褌にカレーが現れた
『ほぅ、出来るな娘子よ、貴様の予想通り、我が艦は辛口である!』
『辛さと共にスパイスの割合は違い、味を整えるのには手だれがいります。そのカレー、いただきます!』
少女激闘中(しばらくお待ち下さ(ry
『チキンカレーはこれで終わりでしょうか?』
口をハンカチで拭くシスター。そして次の艦へ
『あまい!あま過ぎる!いかにカレーを辛い所でフィットさせるか。戦隊旗艦の本艦は激辛!辛い辛いと水ばかり飲むのなら、最初から辛口などと大きな口を叩くな!』
『その挑戦、受けます!』
少女激闘中(しばらく(ry
943 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:45:52 [ BG2fxolM ]
『チキンカレーの神髄、見せてもらいました』
口をハンカチで拭くシスター。そして次の艦へ
『ふっ・・・我が艦は豚カレー甘口、この豚の違い、見切れるか!』
『私にカレーで謎かけですか、笑止です!』
少女激闘中(しばらく(ry
『こ、これは黒豚!しかも最高級の甘さ!故に甘口なのですね!』
『マスターが・・・マスターがぁ(涙)』
口をハンカチで拭くシスター。そして次の艦へ
『甘口は導入、さて、本艦は中辛だ・・・この豚の違いが解るか!』
『カレーの謎なら、何度来ても同じです!』
少女激闘中(ry
『和のカレーにイベリコ豚、しかもこの合わせよう。絶品です!』
『・・・(もはや言葉も無い)』
シスターは口をハンカチで拭き、そして次の艦へ
『豚肉の甘さはカレーの辛さを中和する。その難しさを越えた辛味の境地、見えるか!この謎が貴様に!』
『カレーの一滴も見逃がしません!』
少女激闘(ry
『まさか・・・まさかここに来て一ランク豚肉の質を落として、香草豚を持ち込むとは・・・危うくダマされる所でした』『マスター・・・生き生きしすぎです』
シスターは(ry
『良く来たな、戦隊旗艦の本艦は豚、激辛。違いにしびれろォ!』
944 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:47:57 [ E0XZvauo ]
『大した自身ですね、返り討ちにしてあげます!』
少女激闘中(ry
『精神の輝きが違います・・・まさかこの時代。軍艦に冷蔵庫なく、生きたまま艦に乗せられて漢達とともに戦場を潜り抜けた誇り高い豚のカレーが食せるとは・・・!』『ま、マスターが泣いてます(汗)』
シスターは(ry
『我が身既にルーなり、我が腹すでに空なり・・・本艦は牛カレー甘口!推して参る!』
『牛肉の重さなどぉぉ!』
少女激闘中(ry
『私はカレーなら、いくらでも食べられるんですよ?(カメラ目線)』
『誰に言ってるんですか?』
『名も無く、地位無く、姿無し・・・されど、この世にうまいカレーあらば、まずいカレーも有ると知れ!牛中辛!本艦の魂の輝きをしれぇっ!』
『そ、そんなっ・・・!』
少女激闘中(ry
『あたら、カレーまずく作れるという才能を・・・!』
『えぇっ!?こ、殺してたんですか!?(んなこたぁない)』
シスターは口を(ry
『おうおうおう!ここまで来るたぁ大したもんだ!だが、おめえさんの悪事は、この背中のカレー吹雪が全部お見通しでぇい!』
『こんなにおいしいカレーを軍内部に留めている罪、この私が断罪してあげます!』
少女激闘(ry
945 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:50:34 [ sllZbCOI ]
『牛カレー辛口、そのカレー吹雪。際どい所で服にカレーの染みを作る所でした・・・』
『マスター・・・今更だと思います・・・』
シスターは口をハンカチで(ry
『よくぞ・・・よくぞカレーの基本三種を極めたな。隊旗艦の本艦は牛激辛カレー。汝は望むか。さらなる極みを!』
『望む所です!』
少女(ry
『なんて高尚な海軍なのでしょう。神よ、彼等がここに現れたことに感謝します』
『カレー以外の物が食べたいです・・・マスター(涙)』
シスターと幻影の女の子は、次々と在伊艦隊の出番の無い海防艦や松級駆逐艦を回りつつ大日本帝國海軍カレー百人衆を倒しつつカレーを食していった。魚介やキーマ、様々なカレーがアドリア海を黄色く彩った。けしてネタが無くなったわけでは無い。ついでに説明が後になる程薄くな
チていくことは突っ込まないで欲しい
『いよいよ残り7艦ですか・・・素晴らしい香りがします』
シスターが食い飽きたようなそぶりを見せたことは一度も無かった。色んな意味で化け物である
『マスター、もう艦を皿と言ってるように聞こえますよぅ・・・はぁ〜』
『カレーが私を待っているのです。セブン』
いや、拳を握って言われても・・・
946 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:52:09 [ EixJOQD. ]
『・・・今度の相手は少し違う?』
『アハハ、アハハ、良くここまで来たね、この艦のカレーは僕の考案した子供用レトルトカレーさ、アハハ、アハハ!商品名は決めてあるんだ。カレーの王子の力、思い知れー』
少女(ry
『くっ・・・性格や言動はともかく・・・カレーの味はよかった・・・こんな人材まで揃えているなんて』
『・・・どう見ても暖かくなると増える夢見がちな大人の一人ですよぅもぅやですー!(涙)』
シスターはハンカチで口を拭いた
『あともう少しだけ、がまんしなさい!』
『横暴だー(あうー)』
そして彼女らは次の艦へ移る
『あ、ようこそ、この艦は私の担当ですのでお手合わせ願います』
『なるほど、ドライ、という訳ね』
『ええ、私はドライカレーでサバサバしてます。艦での業務もドライに遂行しております。では、お覚悟を』
少女激闘中(ry
『ふうん・・・乾洋輔、38歳ね。しかも仕事も友人関係もドライで、夫婦関係も乾ききってると』
『マスター、そんな情報をどこから(汗)』
シスターはハンカチで口を拭き、また次の艦へと移る
『こ、この匂いは!』
『ヒャホホ!本艦は高貴なるカレーの血統を継ぐ者、この私に勝負を挑むのは誰か!』
948 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:53:43 [ INa3QEAc ]
『あなたはカレーではありません!』
シスターは怒りの形相で睨みつける
『うっ!?私の正体を嗅ぎつけるとは・・・そう、私はハヤシライス!カレーなどでは無いわっ!!!』
『あなたはカレーなど、というのですか!いいでしょう!セブン!』
少女即殺中(大変申し訳ありません)
『艦の乗員が本当のカレーを知る前に、エセカレーのハヤシライスを教えるなんて・・・カレーに対する大罪です!ざんげなさい!』
『・・・(汗)』
シスターは熱々のハヤシライスを、トドメとばかりに褌一丁で気絶している林さんの傷口にふりかけて次の艦へ移った。結構鬼畜である
『本艦は調達と資金繰りが下手で、カレーはサラサラのスベスベ、肉はおろか、野菜も入ってないの!あなたみたいなアマちゃんに、貧乏のつらさがわかってたまるものか!さぁ!カレーの具になるが良い!』
『マスター、ここってもしかしてうちのカレーとかわらなi』
少女おしおき中(ry
『ルー本来の味を知るためには、一番良い食べ方だと気付かなかった。それがあなたの敗因よ』
『うぅ・・・なんで私まで(涙)』
シスターは口をハンカチで拭くと次の艦へと移った
949 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:55:48 [ h7T8ta3M ]
『本艦は究極のカレーを出しておる。美しきカレーの具道者よ、汝も究極のカレーを求めるか?』
『あれ?マスター。ルーがありませんよ?』
『究極のカレーは、この世にカレーには存在せぬ。具も肉も、香辛料さえ必要としない。すべてはイマジネーションの中、貴様なにをすr』
少女抹殺中
『い、いままでで一番御高齢の方みたいでしたけど(汗)』
『いいんです!次です次!』
シスターはご飯だけの皿を、瀕死のカレー仙人の顔に押し付けて、次の艦へと移った
『へぇ・・・君達凄いねぇ、ここまで来るなんて。本艦のカレーは玉子カレー。もはや問答は必要ないかな?気をつけるが良いさ、本艦の玉子は熱いぞ!なんたって半熟だからな!』
『あと二皿!こんな所で負けられません!』
少女激闘中(しばらくお待ち下さい
『玉子が載っただけで50銭高くなるという憎い相手に、負ける訳にはいきませんでした』
シスターは口をハンカチで拭き次の艦へ移る
『来たな。よくも我々大日本帝國海軍カレー百人衆の栄光を、ここまで踏みにじってくれた。だが、ここで終わりだ!カレーの栄光を、やらせはせん!やらせはせんぞぉーっ!!!』
『ここが、最後!』
少女最終決戦中
950 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/11(金) 02:57:44 [ 6IS4voV6 ]
『最終艦のカレー・・・勝カレーであるが故に、最後まで勝負を諦めないその勇姿と力・・・素晴らしいものでした。日本式カレー・・・侮り難し、いや、もしかするとインド本家すら越えていたかもしれません』
シスターはしみじみと言う
『愚かな・・・我等は今、その力を半分程度しか出しておらぬ』
倒れたまま、苦しそうに勝カレーは言った
『負け惜しみは、そのカレーを汚しますよ』
『気付かなかったのか、我等にらっきょうと、福神漬けが添えられていなかった事に・・・!』
『っ!?』
『西洋人の・・・小娘は知るまいな・・・ははは・・・日本のカレーは・・・まだ、戦え・・・』勝カレーは生き絶えた
『・・・セブン。日本へ行きますよ!』
『えぇっ!?』
『こんな屈辱・・・その福神漬けとやらと、らっきょうを手に入れてから、もう一度勝たなければ何の意味もありません!さぁ!』
『もぅいやぁああああっ(滝涙)』
そんなこんなで、日本に渡ったシスターが、マリスに冒された七福神と戦い、究極の福神漬けを手に入れたり、至福のらっきょうを手に入れるために、出雲大社を守ろうと大暴れするのは・・・多分書かれないだろう・・・おそらく・・・きっと・・・
966 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/13(日) 22:44:02 [ vEJ1auuw ]
5月12日、大西洋・サウスダコタ
『うーん、促成出来たのは良いことなんだろうけどなぁ』
サウスダコタの艦橋で、艦長のガーランドは頭を掻いた。サウスダコタは三月の末に就役したばかり。まだまだ訓練が足りず、実戦には出せない艦であったはずである
『アーカンソーをわざわざ行動不能にしてまでこいつに人員を回すなんて乱暴なやり方』
練習戦艦となっていたアーカンソー、そこで教官となるべき基幹要員を完全に引き抜いてこのサウスダコタに乗せている。当然、アーカンソーは動ける状態では無い。訓練も開店休業状態だ
『上が焦ってる?』
そりゃあ、太平洋じゃ負けたのかもしれないけど、日本がちょっとやそっとの事で本土まで攻撃できる訳じゃ無い。時間さえあれば巻き返しは出来るはずじゃないか・・・大統領選だってまだ先の話だし
ガーランドのような、ある程度地位のある軍人でも、段階的に負けたと思わされているのだ。だから、太平洋艦隊が敗北して、合衆国海軍が受けた、一朝一夕ではどうにもならぬ人的被害に気付くはずが無い。だから、彼に焦って戦果を求める大統領府と合衆国海軍上層部の意向を理解で
ォるはずが無い
遺族は敗北だけで、身内の死を納得できはしないのだ
967 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/13(日) 22:45:46 [ 7ctwgltA ]
『まぁ、記念日に海戦が重なりそうなあたりも、気に入らないんだけどさ』
五月二十七日は合衆国海軍の記念日である。そこで勝利を歌い上げるつもりなのだろう
『それにイギリスさんとも一緒だから、少し面倒になりそうだ』
嘆息する
うちの方が隻数は多いけど、全体の指揮はイギリス海軍がとるらしいし。元帥が海の上にまで出しゃばって来て・・・イギリスは本気という意味なのだろうけど、無用なプレッシャーだよな、やっぱり
『でも、連合軍の戦艦が10隻も一同に揃うんだよなぁ』
なんだかんだいって、彼も軍艦好きである。そして未来の艦隊司令官向きな事に、何の気がねない単艦行動よりも艦隊行動が、たとえ自分の艦が旗艦でなくとも彼は大好きだった。そのあたりの才能も見込まれて、若輩ながらサウスダコタの艦長に任命されたのだ
『ロイヤルネイヴィーの新鋭戦艦、KGX級の戦技も見たかったけど・・・まぁいっちょ、古強者のネルソンの胸を借りますか!』
16インチのビックガン同士、通じることは沢山あるに違いない
そんなアメリカ人らしいポジティブシンキングで思考を切り替える
サウスダコタと米艦隊は地中海へと針路を向けた、激闘がそこに待ち受けている事も知らずに
968 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/13(日) 22:47:35 [ HdOAZwo2 ]
同日、ハワイ・太平洋艦隊司令部
『ひでぇ有様だな』
新しくこの建物の主となった人物は、長官室で書類をめくりながら、ゲジゲジ眉毛をひそめてそう言った。ドタドタと外を忙しくかけずりまわるスタッフの足音が聞こえてくる
今現在、この建物の中に居るスタッフの数は昔・・・ほんの一ヶ月前と比べて、異常に少ないものとなっているのだ。それぞれのスタッフにかかる負担が大きくなり過ぎている
『ハズ、レイ、ジャック、リーにパイ、ミッチ、シャーマン、マクモリス、キンケイド』
戦隊司令らの名を上げれば、まだもっと太平洋艦隊が失った将官や艦長は増える。そして彼等を支えていた幕僚達も
『それでいてニミッツまでか・・・くそったれ!』
それで俺にお鉢が回ってきた。最初はゴームリーで決まりかけていたが、南太平洋からも本土からも、最高指揮官クラスの急いた異動は、無用のリスクをおかしかねない、と、ハワイに居た俺に白羽の矢が刺さったのだ
しかし、司令部要員さえ全く足りない。再建されるはずだった司令部は爆撃でスタッフの半数と、司令官自身をまたも失い、壊滅した
『キャラガン!どこに居る!』
受話器を掴み、ゴームリーから無理矢理引き抜いた参謀長を呼び出す
969 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/13(日) 22:49:16 [ TpKp83XI ]
『お呼びですか?ハルゼー長官』
キャラガンはすぐに現れたが、その顔は憔悴しきっている。生き残った高級士官で彼が一番書類仕事が出来るため、どうしても仕事が集まってしまうのだ
『鏡見て、とっとと顔洗って一日休みやがれ、貴様が倒れてもらった方が困る』
オーバーワークなのはすぐわかった、つっぷつして寝たのか、顔に新しいインクで書類が丸写しされている
『は・・・しかし・・・』
『近日中にマッケーンが来る、あいつも出来る奴だが、一人となるとどうにもならん、命令だ』
こうなんて言うか、大統領附きだった経験のせいか、きっちりこなし過ぎるきらいがキャラガンにはある
『わかりました。ですが・・・』
『パラオに関しては俺がやっておく、性分じゃねぇが、任せろ』
ハルゼーは笑って見せる。その気配りと精力的な様が、なんとか沈みがちな司令部を持たせている
『長官は仕事が出来ても文字が汚くて、解読に時間が・・・』
キャラガンはぼそっと言って、冷汗をかきつつ退出した
『スコット、無理すんじゃねぇぞ・・・』
パラオを突破しフィリピンへの増援に向かう旧友の身を案じる。信頼できる奴だが、ジャップの奴等が一体どれだけ居るのか、わかったものでは無いのだ
971 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/13(日) 22:54:31 [ M7VYRcWY ]
米軍艦艇所在地一覧・五月(地中海はペデスタル作戦参加艦艇)
戦艦
ニューヨーク(地中海) テキサス(地中海)
ネヴァダ(ハワイ) オクラホマ(ハワイ)
アリゾナ(ハワイ)
ニューメキシコ(地中海) ミシシッピー(地中海) アイダホ(地中海)
サウスダコタ(地中海) インディアナ(訓練中) マサチューセッツ(訓練中) アラバマ(建造)
空母
ラングレー(マニラ)
サラトガ(ハワイ・戦力喪失)
ワスプ(地中海)
レンジャー(地中海)
エンタープライズ(ハワイ・修理中)
ロングアイランド(ハワイ)
チャージャー(大西洋・練習艦)
重巡
チェスター(ハワイ・修理中) ルイスビル(ハワイ・修理中) ヒューストン(マニラ) オーガスタ(地中海)
インディアナポリス(ハワイ・修理中)
タスカルーサ(地中海) クインシー(地中海) ヴィンセンズ(地中海)
ウィチタ(船団護衛)
軽巡
ブルックリン(地中海) フィラデルフィア(船団護衛) ナッシュビル(船団護衛) ボイス(マニラ) ホノルル(ハワイ・修理中)
セントルイス(ハワイ・修理中)
オマハ(船団護衛) リッチモンド(ダッチハーバー) コンコード(南米) トレントン(パナマ) マーブルヘッド(マニラ)
972 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/13(日) 22:56:08 [ BG2fxolM ]
メンフィス(ハワイ・修理中)
ジュノー(ハワイ) サン・ディエゴ(ハワイ) サン・ジュアン(訓練中)
ペデスタル作戦参加艦艇数
戦艦6隻 空母2隻 重巡4隻 軽巡1隻 駆逐艦9隻
太平洋艦隊所属艦艇数
戦艦3隻 空母3隻 重巡3隻 軽巡5隻 駆逐艦25隻
東アジア艦隊所属艦艇数
空母1隻 重巡1隻 軽巡2隻 駆逐艦14隻
973 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/13(日) 22:58:01 [ zIQO46G. ]
英軍艦艇所在地一覧(地中海はペデスタル作戦参加艦艇)
戦艦
クイーンエリザベス(スカパフロー) ウォースパイト(スカパフロー) ヴァリアント(南アフリカ・修理中) マレーヤ(地中海)
リヴェンジ(地中海) ロイヤル・ソヴリン(船団護衛)
レナウン(スカパフロー)
ネルソン(地中海) ロドネー(地中海)
キングジョージ5世(スカパフロー) プリンスオブウェールズ(マニラ) デュークオブヨーク(スカパフロー) アンソン(建造中) ハウ(建造中)
空母
フューリアス(地中海)
アーガス(地中海)
ハーミズ(マニラ)
ヴィクトリアス(地中海) フォーミダブル(スカパフロー) インドミダブル(マニラ)
アーチャー(船団護衛) アヴェンジャー(訓練中) バイター(訓練中) ダッシャー(建造中)
重巡
ケント(スカパフロー) バーウィック(スカパフロー) カンバーランド(船団護衛) コーンウォール(マニラ) サフォーク(地中海)
ロンドン(船団護衛) デヴォンジャー(アレキサンドリア・修理中) サセックス(スカパフロー) シュプロッシャー(マニラ)
ノーフォーク(船団護衛) ドートセッシャー(マニラ)
エクゼター(地中海)
軽巡
リアンダー(マニラ)
974 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/13(日) 22:59:45 [ 7ctwgltA ]
アキリーズ(マニラ) オリオン(地中海) エイジャックス(地中海・修理中)
アレシューザ(地中海) ペネラピ(米本土・修理中) オーロラ(修理中)
シェフィールド(英本土・修理中) グラスゴー(マニラ) バーミンガム(南米)
マンチェスター(船団護衛) リヴァプール(船団護衛)
ベルファスト(英本土・修理中)
ダイドー(地中海・修理中) フィービ(地中海) ハーマイオニー(地中海) ユーラリアス(地中海) クレオパトラ(地中海・修理中) シリウス(訓練中) アルゴノート(建造中) カリュブディス(建造中) スキュラ(建造中)
ケニヤ(地中海) モーリシャス(マニラ) ガンビア(訓練中) ジャマイカ(建造中) バミューダ(建造中)
ペデスタル作戦参加艦艇数
戦艦4隻 空母3隻 重巡2隻 軽巡6隻 駆逐艦26隻
本国艦隊所属艦艇数
戦艦5隻 空母1隻 重巡3隻 駆逐艦14隻
東洋艦隊
戦艦1隻 空母2隻 重巡3隻 軽巡4隻 駆逐艦15隻
981 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/16(水) 11:53:24 [ vEJ1auuw ]
1942年5月13日、アメリカ国防省のある一室
大損害を受けたアメリカ海軍ではあるが、その損害を受けての建艦計画が、この一室で行われていた
『太平洋艦隊は、日本の七隻の戦艦に敗れた。当然だ、内南洋は元々日本の物、防御三倍の法則を考えれば、二倍弱程度で勝てるはずが無い』
軽く頷く面々。建艦計画の基本プロットが出来上がったのだ
『ならば三倍を越える戦艦をぶつけてやる。そうですな?』
紙面を部屋の机に広げる
『建造期間が二年・・・力をさらに入れればもっと短縮できるであろうサウスダコタ級を量産戦艦とし、六隻の増艦を行います。これに異論はありませんな?』
説明者が見回すが反論は出ない
『代わりにアラスカ級は三隻で打ち切りとなります』
これには少し質問が入った
『重巡の大量喪失を鑑みるに、計画通りの方がよかったのではないか?』
『重巡は、バルチモア級二十二隻建造することで対応できます。というより、アラスカ級三隻のハイと、軽空母への転用が決まった九隻を除く、三十七隻のクリーブランド級軽巡のローで急速建造を重巡よりも先に行っていきたいと考えております』
質問者は納得したように座った
『では、戦艦群の話に戻らさせていただきます』
982 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/16(水) 11:54:56 [ m/OW6Vig ]
『他の戦艦については手元の資料を』
参加者が資料をめくる
『アイオワ級を六隻、モンタナ級を五隻、モンタナ級の砲塔を18インチに換装したフロリダ級を四隻、計十六隻を計画しております』
『先のサウスダコタ級の増産と既存の艦で二十六隻の増産、か・・・』
凄まじき数である
『これにエセックス級空母二十四隻、カイザー造船所でのカサブランカ級護衛空母五十隻、か・・・そういえば、護衛空母計画は一部変更だったな』
思い出したように航空関係者が言った
『はい、他の計画艦三十九隻(イギリス貸与分のアタッカー級十四隻を含む)を十五隻に縮小し、インディペンデンス級準拠の小型快速空母を十二隻予定しています。太平洋でちんたら輸送任務に就かせる余裕はありませんから』
ハワイ以外の守るべき領土が遠いから、太平洋での護衛空母は純減するが、恐ろしい計画だ
『駆逐艦は大雑把に、護衛駆逐艦の建艦予定数を千隻から八百隻に減らして、フレッチャー級を三百隻に、リヴァモア級を対艦用に、サマーズ改良型の駆逐艦を百隻建造する、でよかったね』
頷く説明者
『はい、まぁこれは造れるだけ、一山いくらで構わないでしょう』
まさに狂気である・・・だが、彼等は大まじめだった
983 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/16(水) 11:56:59 [ /nd8Ea2c ]
同日、奄美大島近海
ボロボロになったBー17の編隊が、なんとか陣形を維持しながら九州へと歩を進めていた
『やっと空母艦載機の壁を通り抜けたか・・・自殺行の第一段階はクリア、だな』
機長はほっとする。東シナ海に展開する空母による迎撃は、日本本土直撃の最大の妨げとなっていて、沖縄への航空基地攻撃における損害を、大きくつり上げていた
そして今となっては殆ど意味の無い、パフォーマンスだけの日本本土空襲はパイロット達に自殺行と呼ばれ忌避されていた
『次は鹿児島の奴らだ!警戒を怠るな!』
沖縄上空での迎撃の後は、鹿児島近海までほんの少しの間、余裕が出来るのだ
『なにが日本本土に我々は手をかけている。だ・・・』
海戦で負けても、我々は日本の首を絞めているだって?とんでもない、絞められているのはどっちだと思ってんだ
沖縄航空戦の開始以来、既に米英の300機を越える爆撃機がこの海に散っている。とにもかくにも、護衛戦闘機が無ければ話にならない・・・そういえば、戦闘機無用論を振り回すルメイとか言う馬鹿が、就任すぐに全力出撃のうえの今回の自殺行を無理に言い出しやがったんだった
ま、全力出撃だったからこそ迎撃を抜けれたとも言えるがな
984 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/16(水) 11:58:15 [ 7ctwgltA ]
その困った御人であるルメイはもうこの世に居ない。沖縄沖で乗機を撃墜され、脱出はしたものの、飛行服に火が燃え移り、火達磨となって空中で火葬されながら墜ちていったからだ。ケチで隊でも有名だった腹心のマクナマラは脱出の機会もなかったようだ
『機長!右前方に上昇する機影!速い!』
『なにっ!?』
つまらん事は頭から追い出す。自分が生きねばなんにもならない
『なんだ、あの形は・・・』
プロペラが後ろについていやがる!
『識別表にありません!塗装から・・・海軍機です!』
『くそったれのネイヴィーか!』
練度から見て、海軍機の方が練度が高い
大陸に展開し、戦闘を比較的行うので、損失のある陸軍と較べれば差が多少出るのは仕方ないだろう。ノモンハンでの痛手からは回復したが、その分海軍が練度的に先に行っているのだ
『700は出てるぞ!?』
敵の機体はぐんぐん上昇していく。逆落としに襲いかかるつもりだ
『上部銃座!覚悟決めろ!』
敵の新型機・・・今までも有り得ないほどキツかったというのに!
『く、くそぉ!角度が鋭くて狙いがつかねぇ!』
機銃座がわめく
『無茶でもやるんだよ!なんでもいいからぶっぱなせ!畜生が!』
ドダダダ!!!
985 名前:長崎県人 投稿日: 2007/05/16(水) 12:00:35 [ zIQO46G. ]
『12機で攻撃して10機撃墜か、まぁまぁだな』
急降下のGに耐えつつ、首を捻って帝國海軍初である震電戦闘機隊の部隊長は戦果を確認した。30o機銃を受けた敵の爆撃機はバラバラといっていいほどに空中分解しながら墜ちていく・・・
《もう一度いくぞ》
《了解!》
無線で他の機に呼びかける。今度は下から逆袈裟斬りだ
サムライソード
米軍は、畏怖を込めて震電に対してこのコードネームをつけた。上空からの示現流の一撃と見まごうばかりのダイブ攻撃、それから逆袈裟のような返しの攻撃。日本刀のように鋭い刃筋を、新鋭戦闘機、震電は見せ付けたのだ
非公式に、日本側でもこのようなコメントが残されている。震電の切れ味、決して鈍らず、と。この後に、震電改に於いてをは、と続くのだが・・・ここで一度筆を置かせてもらおう。
ともかく、在フィリピンの米英航空部隊が受ける苦難が、また一つ増えたことは確かであった