499 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/13(火) 23:02:06 [ gY4wlmWo ]
1942.4.6三陸沖・サラトガ
《やーっほぅー!!司令部建物にヒットだぜぇ!》
《こちら第三小隊、兵舎を攻撃中、効果大、繰り返す、効果大》
高声器から攻撃隊の音声が流れている、傍受される為こちらからはとやかく言うことは出来ないが、パイロット達は特に問題は無い、それを通信室が気を効かせて艦内放送で流してくれている。なにも問題は無い、彼等は元気良く攻撃を行っている
『うちのボーイズのはしゃぎ様からして、上手くいっとるようだな』
サラトガの艦橋でそれを聞いて、ブルドックのような顔をくしゃっとさせて、この隊の指揮官、W・F・ハルゼー中将は笑った
今回の攻撃は、横須賀や大湊など、多くの攻撃目標が幕僚から挙げられる中、日本と言う蜂の巣をつつく作戦の為に選定されたのは、太平洋に面し、航路に島が無く警戒が薄いと思われ、かつ何かしらの施設がある場所。つまり陸軍の第二師団が置かれているこの仙台とその周辺と言う訳
セ
『ジャップのネイヴィーに攻撃をかけたい所だったがなぁ』
その点だけがハルゼーにとっては不満の様だ
《こちら釜石攻撃隊、鉄工所が吹っ飛んだ!しかし、配布された資料よりも目標が増えている。爆弾が足りない、追加を頼みたいよ》
500 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/13(火) 23:03:54 [ QAIBb81Q ]
どうやら釜石に放った攻撃隊も上首尾にいっているようだ。攻撃隊の編成としてはSBDを仙台へ、TBDを釜石への爆撃に充てている
『日本の工業力を削ぎ落とすことは日本海軍の配備能力を落とすことになります』
糞真面目に参謀長のブローニングが言う、間接的に日本海軍に対しての攻撃になっていると言いたいのだろう
『それから長居するのも得策ではありません、機体がこれまでの航海で消耗しています』
日本海軍の警戒線を抜ける為、ハワイから北寄りの航路をとったおかげで、露天繋止の機体はほぼおじゃんで、エンタープライズなぞ開放式格納庫のシャッターが危うく破れそうになったぐらいだ。下手をすればサラトガ一艦の攻撃になりかねなかった
『わかってるさ、ブローニング。敵主力とハズがぶつかるのに遅れても、へばっててもいけねぇ。わかってる。わかってはいるがな』
一旦戻るのがなんとも自分の気に食わない。力を出し尽くさず、燃やした闘志を不完全燃焼させたようなもどかしさを感じるのだ
『南、ヒロヒトに一発食らわせてやりてぇが・・・やっぱり駄目か?』
『駄目です!』
ブローニングが色をなして否定した
『・・・冗談だ、俺だって一応勇気と無謀の区別ぐらいはつく』
501 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/13(火) 23:06:02 [ 50Ied/7E ]
ハルゼーが苦笑した
『も、申し訳ありません、言い過ぎました』
ブローニングが言い過ぎたと謝る。ハルゼーは手をひらひらさせて気にしてないと言って苦笑を微笑に変えた
『構わん構わん、俺は時に闘志が行き過ぎて宙に浮いちまう。地面に引っ張り戻す奴が必要で、それがお前だ、ブローニング。他の奴も、いざって時はこの憎たらしい顔なら、いくらでも殴って止めてもらって構わんぞ』
艦橋要員を見回してにやっとウィンクした。こういう所が水兵受けする由縁だろう
『しかし、司令を殴ったら殴り返されませんかな?』
艦長が聞いて来た
『当然だ、やられたらやり返すのが礼儀だろう?艦長、何の問題がある』
なにを当たり前の事をハルゼーは言った
『司令、それだと大佐が海に吹っ飛んでしまいますぞ』
ハハハハハと艦橋が笑いに包まれた。どうやらスポーンとサラトガの艦橋からハルゼーにすっとばされるブローニングが幻視されたらしい
『皆さん勘弁してくださいよ』
困り果てるブローニング。笑いの余韻を残しつつハルゼーが宣言した
『それじゃ仕方ねぇが、逃げ支度といくか!ブローニング、予定はどうなっている』
うまく気分を変えてくれたようだ。ブローニングは安堵して話始めた
502 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/13(火) 23:08:24 [ HVdVzoX. ]
『収容後はウェーク、ミッドウェー間の海域に引き上げることになっています』
北太平洋の航路が荒れているのはある程度予想されていたので、ウェークとミッドウェーには予備機をいくらか置いて来ている。予備機を補充して空母部隊は決戦に備えるのだ。
『うまく釣れると良いのですが』
本土を急襲され、敵がなけなしの戦力を割いてくれるならしめたもの、と言う訳だ
『釣れてほしいもんだな、その分だけ暴れられる』
うまくいけばハズも随分やりやすくなるだろう
『大物が出てくれば万々歳だな』
大物とは戦艦だ、空母の威力をいくら理解していても、洋上航行中の戦艦を撃沈するという航空屋の目標を成し遂げたい、という欲は否定し難い
『ハズは、合衆国が保有する半分もの空母を俺に預けてくれた。普段から言っている事をやってみせろって事と俺は理解している。そして俺がそう思っている事をボーイズも理解している。みんなもだな?』
代表してブローニングが頷いた
『ええ、勿論』
無論敵空母を叩いて、制空権を得てから。というのはハルゼーもここに居る皆も、攻撃隊のボーイズも理解している。そして日頃軽視されている鬱屈を晴らしたい
『戦艦屋の鼻を明かしてやる、必ずな』
503 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/13(火) 23:10:17 [ /9tm..U. ]
一方、日本側にとってこの仙台空襲は寝耳に水であった
釜石・海域統制艦、五十鈴
『撃て!撃ちまくれ!!』
改装され、砲兵装として14センチ砲を全て撤去し装備された二基の高角砲が火を噴く。大量に配備された機銃は敵が向かってこない為、用を成していない、まったく釜石に対しての支援砲火になっていない、成すがままだ
『うちの航空隊や陸軍の航空隊はどうしとる!その前に電探は何故知らせなかった!!』
完全な油断としか言いようが無い、電探は確かに接近する敵編隊をキャッチしていた。しかし電探員はこれを故障と判断したのだ。北西の方向からの編隊、その前に海軍さんの哨戒線や偵察機に捕まるだろう。なによりこんな東北の中部に何の用があるのか・・・来るなら南の横須賀や北
フ大湊だ、おそらく故障に違いない。使い続けてさらにぶっ壊れたらもったいない、一旦切れ、と命令し、のんびりバラして修理に当たっていたのだ
空襲が頻繁に行われ、大防空戦となりつつある九州沖縄であれば有り得ない行動である。隙を突くという面で、日本は既に完敗していた
ドーン!!ドドーン!!
TBDの水平爆撃で釜石が誇る鉄工所が吹き飛んでいく、ある意味この空襲は人災でもあった
504 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/13(火) 23:12:19 [ CDVnjlgM ]
『戦闘機でも来てくれれば・・・!』
ギリッと五十鈴の艦長は歯ぎしりした
飛行機が飛ぶにはそれなりに時間がかかる。即応態勢にある機もあったが、状況が複数機の攻撃との事がわかり、逐次投入の愚をしてはならぬと上げる数をとにかく増やそうと、必死で努力していた。結果として間に合わず、海上へ飛び去る敵機を見送る形になり、役立たず!税金泥棒!
l殺し!の声が東北に存在する航空隊に向けられることになる。人々にとっては攻撃を受けた事が大事であり、二次攻撃に備えてなぞどうでも良いのだ
また、警報を最初に出すべき警戒線は特設哨戒艇・・・何の事は無い、漁船に零戦が使っていた20o一号銃か、九六艦戦の7.7oが二、三丁あるか無いかの武装にを取ってつけて、比較的大型の漁船にはちらほらと低精度の対空電探がつきはじめているが、他は人の目で見張るしか無いシロ
モノだ
対空電探の装備は、敵性勢力が帝國に進入してくるならワイバーンだろうという考えからだ(帆船は接近に時間がかかり過ぎ、発見の確率は高くなる)対艦電探が付かなかったのは何の事は無い、艦舷が低過ぎて効果的に使えない。まっとうな理由であるが、実際は漁船に高い金をかけてど
、するのか?が理由である
505 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/13(火) 23:13:40 [ CDVnjlgM ]
ともかく、その哨戒艇であるが、エンタープライズの開放式格納庫のシャッターが破れかねないほどの荒れようと、米軍が警戒線を抜けれるように隻数を限ったことと、ハルゼーが距離を少し置いてさらに隊を二つに割ったことで、目視でも電探でも米艦隊を発見出来なかった。
『くそったれ!』
艦長は艦橋の外板を蹴り上げ、罵った
『GFは何してやがんだ!!!』
国民に、艦長と同じ感情が沸き上がるのに時間はかからなかった。そしてその想いは将兵に伝わり、異世界でアドバンテージを得たという再転移以降の楽観や傲慢な楽勝ムードは完全に払拭された
・・・機は熟しつつあった
506 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/13(火) 23:14:57 [ /9tm..U. ]
同日、ハワイ真珠湾
星条旗よ永遠なれが軍楽隊によって吹奏されている。紙吹雪が舞い、岸壁に家族や、昨日の夜、愛を誓いあった恋人、一夜の逢瀬を共にした女性ら様々な縁者が集まって手を振っている
太平洋艦隊旗艦・ペンシルヴァニア
『ふむ、嬉しいね。このように見送りを受けることが出来るとは』
ここから出撃する56隻の艦艇、いや、トラックのスプルーアンスや三陸沖のハルゼーの艦隊を入れれば、総計82隻の長ハズバンド・E・キンメル大将は満足げに鼻を鳴らした
『太平洋艦隊は、あらゆる困難を排除し、条約を無視し、合衆国にむけて牙を剥こうとしている日本艦隊を必ずや打ち破って来る事を、皆さんに約束したい、か』
出撃前に新聞記者に求められた時に言ったコメントだ
『よろしかったのですか?そんな約束をなされて』
マクモリス大佐だ、呟きを聞き止めたらしい
『負けぬよ、我々は。その為に存在している』
ましてやこれ程の戦力・・・
『君は馬鹿馬鹿しいと思うだろうが、私は不退転でこの戦いに挑む。あんな事を言って負けて帰ってくるなんて出来ないだろう?』
自らの退路を切った。キンメルなりの決意表明だった。ああいってしまえば、もはや勝つしか無くなる
507 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/13(火) 23:16:51 [ cnmf7h96 ]
『いえ』
マクモリスは首を横に振った、傲慢からでなければ問題は無い。ただ、もしもの場合引き際を誤らなければいいが、とは思うが
『情報封止しなくて良かったのか、と思いまして』
『この艦隊でかね?どうしたって露見するさ。』
規模が通常の艦隊と違い過ぎる。隠し通せる筈が無いのだ
『そして日本海軍もな』
日露戦争でロシアを日本が打ち破って以降、いままでただお互いを見つめあって来た相手だ
『太平洋艦隊の全力という最大の敬意をもって叩き潰すのが礼儀というものだ』
そして、勝者になるのは彼等では無い、グァムまで3300海里、12日後に、勝利の歓声を上げているのは我々なのだ
『征こう、マクモリス君。またこの歓声に出迎えられる為に!』
キンメルが見据える方向。そこにはサイパン、グァムの島々が横たわっている
508 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/13(火) 23:18:59 [ kXkOHBG6 ]
1942.4.11・神戸
『キュ〜?ゴトー?』
深夜、ニーギはベッドの横に居る筈の夫が居ないのに違和感を覚えて目が覚めた。三歳になったクーニャと新しい家族になった一歳の灯夜(とうや、男の子、夜の闇に明かりを射すような、かざせるような子にしてほしいと五島が命名)はぐっすり眠っている
『ごめん、少し寒かったかな?』
沖の見える家、空襲圏内にある長崎から家を借りて神戸に越してくる際、唯一五島が出した条件だ。
今五島は、対潜噴進弾開発の責任者になっていた。試作品が作られては試験艦に積んで試験、またドック入りを繰り返すという行為を、長崎とその近隣海域で行っていたが、開戦と共に、わざわざ敵に見られるような場所でやるもんじゃないだろうと神戸に根拠地を移したのだ。引越しの
摎Rはそれである。勿論ニーギらの安全も考えて、というのは言うまでも無い
『何見てるの〜?』
五島は双眼鏡を構えてしきりに外を見ている
『見るかい?』
招き寄せて双眼鏡を渡す
『真ん中のが長門、右から陸奥、伊勢・・・』
星の名前を言うように、楽しそうに五島は言う
『凄い数・・・戦うの?』
少し悲しそうにニーギが聞いた
『ああ・・・』
少しトーンを落として五島は答えた
509 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/13(火) 23:20:28 [ XK2obbq6 ]
国内からの聯合艦隊は何をしているのかの大合唱。それからこそこそ逃げるような夜の艦隊、出航自体は新聞に出ていたが、今日この場で遠くからでも見て手を振ってくれているような人間が家族以外にいくらいるのか
『無事帰って来て欲しいな、ニーギ』
軍艦好きとしても、人としても・・・志摩さんは向こうでどうしているんだろうか
『うん』
ニーギは五島に寄り掛かった
『さ、戻ろう。クーニャや灯夜が寒くて起きちゃうから』
今、家族四人で幸せだ・・・あの艦隊にも乗っている人数分だけ家族が居て、それぞれ幸せがあるはずだ。そしてそれはその人間が生きていてこそ、なのだ。ハマの沖合で二人一緒に死線を越えて得た訓戒だ
『戻ってこいよ、みんな無事で・・・』
五島が部屋に戻って扉を閉めつつ呟く、そしてそれが叶わぬ望みであることも理解していた。
日米両海軍の激突まで、あと、わずか・・・その時、世界は変わる
515 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/14(水) 13:35:30 [ 2aOBt6HQ ]
1942.4.12、イタリア・ローマ
扉は開かれた
『お帰りなさいませ・・・旦那様』
ミスミが心底よかったという笑顔で出迎えてくれた
『ただいま、ミスミ』
愛宕が修理に入り、倉庫街の復旧、そして独・伊両国との交渉、ローマの日本人はまたあわただしい日々を取り戻すだろう
『・・・すぐお戻りになられるのですか?』
ミスミは制帽と志摩の手荷物を受け取る
『いや、しばらくイタリア海軍との交渉に私は回される事になったよ』
アルが口走った事は既に艦隊内に知れ渡っている。目が見える者ほど志摩は受けが悪い、危うく艦隊を全滅させかねない事を妻にやらせたのだから・・・その事は桂やミスミには言わないでおこう、うん。ともかくイタリア海軍に顔が利くなら、と嫌みたっぷりに愛宕艦長兼、イタリア海
R折衝役を言い渡されたのだ・・・たいした怪我ではもうないが、負傷しているのに休ませる気はないらしい
ミスミに言っておこう
『今回の海戦で耳をやられてね、治りかけてるが、あまり小さい声は聞き取れないかもしれないから。二度聞きは必ずしてくれな』
『はい・・・!でも、そんなお怪我を・・・』
『ああ、艦橋を弾が掠めてな、俺以外はみんな死んで・・・運がよかったよ』
516 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/14(水) 13:36:57 [ KYi//xS. ]
ミスミの顔が青ざめた。志摩は死ぬところだったのだ
『よかった・・・本当に・・・』
泣きそうになっているミスミにおろおろしつつ志摩は話題を変えようとした
『あー・・・でだ、その手荷物は変えの制服が入っているんだが、その時、漏らしちまってな。血とかもついてたし。な、何度か洗ったんだが、シミとか何とかしてもらえないかな?』
実はイタリアに転移して、未だ被服の補給がままならない。イタリア海軍の制服を着るわけにもいかず。イタリアの服屋と交渉が始まっていたが、やっとラインに乗った所だ。僅かな備蓄も、今回の襲撃で燃えてしまっていた。一般人の服なら材料さえあれば転移してきた洋裁の出来る人
轤ノ頼めば良い。が、海軍の制服となるとそうはいかない、志摩が血やら小便で汚れた制服を捨てなかったのはその為である
『はい!任せてください・・・!』
あなたの為になるならなんでも、そう言うようにミスミは頭を下げた
『さて、問題は・・・』
向こうの部屋を見つつ、志摩は制服のつめ襟のホックを外した
『何かしらで桂と離れたあと、戻ってくる時はいつも緊張するんだよな、夫婦なのに』
苦笑する。なんというかお互い何を言えば、どんな表情をしたらいいのか・・・
517 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/14(水) 13:39:03 [ 2aOBt6HQ ]
『たぶん、桂さんもそう思ってますよ、同じように』
ミスミが笑う、志摩が帰ってくると聞いてからの桂の慌てふためきようはなかった。ミスミ本人はメイド服を常用しているので悩まなかったが。桂の場合、ラフな普段着でいいのやら、誘うような服のほうがいいのやら・・・結局ミスミがよさそうなのを選んで数着出し、これから選ぶな
閧オてください。それともいっその事着ないで、下着のままで会いますか?と、してきたのだけれどもどうなったことやら
『ふぅ・・・じゃあ、行ってくる』
決心が付いたようだ
『ミスミ』
『はい?』
志摩が名前を呼んだ。笑顔のまま首を傾げる
『たぶんしばらく出てこない、間に風呂に入る。用意しておいてくれ』
物凄く真面目な顔をして志摩が告げた
『わかりました』
ミスミは顔を赤らめた。旦那様、志摩さんはかなりヤる気だ
パタン
志摩が扉の向こうに消える。私も準備を始めなきゃ・・・
518 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/14(水) 13:41:17 [ CDVnjlgM ]
同刻、倉庫街郊外
読経が行われていた。倉庫街を破壊していったイギリスの工作部隊の遺体が一所に集められ、埋められている。参加者は少ない
少し離れた所で帝國人とダークエルフの男女が話し合っていた
『ろ穫兵器が欲しい?』
『そうです。今回の戦闘で、我々ダークエルフは代え難く、また多大な喪失を被りました。魔導さえあればこんな被害は受けずに済んだかもしれません』
『私達には魔導の代わりとなるものが必要なのです』
それがこのブレンガンを始めとしたこの銃器爆薬
『確かに、我が軍の装備を削る事なく、貴様達をもっと有効に使えることになるな』
『必ずやお役に立てて見せます!』
ダークエルフの魔導が復活すれば、もっともっと同朋は働ける。軍の命から離れた独断専行であるが、独断専行の責は自分の身をもって全うする。一死をもって奉公する、それが帝國陸軍から学び取った教えだ。たとえこの身は逆賊となろうと、残りの皆が働ける場所を得れるなら・・・
タいものだ
『わかった、師団長に通してみよう。貴様達が所在なげにしているのを見ると俺も心苦しかったからな』
『ありがとうございます!』
『いい、いい』
そう言って人のよさそうな陸軍将校は去っていった
519 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/14(水) 13:44:18 [ 7ctwgltA ]
『私の氏族ととりわけ親しい者だけを集めろ、他の何も知らぬ氏族に迷惑はかけられぬ』
彼が見えなくなってから、男の方のダークエルフは言った
『はい』
『すまぬな・・・お前にも死んでもらうことになる』
『皆が安寧の地を得られるなら、仕方ありませんわ』
彼女は別の氏族から来たダークエルフだ。彼にとって巻き込む形になったのはあちらの氏族を含め申し訳ない気持ちでいっぱいだった
『たとえ違う世界の天上でも、あなたと一緒であれば寂しくありませんし』
彼女は笑った
『俺はスイスガードとかいう奴らの素性をもっと洗ってみる。装備している武器の種類と性能がわかればやりようはいくらでもある。建物内だしな』
『決行はいつ頃になりますの?』
武器の調達と操作、移動・・・
『一週間、一週間後だ』
それくらいはかかるだろう
彼等は扉を開けようとしていた。地球のマナというパンドラの箱を
526 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/16(金) 14:35:55 [ KRpK8t7E ]
1942.4.14、ミッドウェー・ウェークの中間地点・サラトガ
『予備機収容を急げ!』
ミッドウェー、ウェーク島からの機体が着艦しては艦内に収容されていく。甲板員があわただしくかけずりまわってその指示を伝えている
『ブローニング!』
ハルゼーはブローニングの肩を掴んで吠えた
『敵が釣れたんだな!?』
唾は勘弁してください、と顔を背けつつブローニングが報告する
『マーカスの西で電信量が増えております。これはサルヴァ(硫黄)島を南下しつつある艦隊とは別な物です』
位置はともかく、艦隊の存在をお互い隠そうとしていない、まさに殴りあいだ
『よおっし!!』
ハルゼーは両の手を握りしめガッツポーズをした
『空母戦闘は先手必勝!この海域を離脱次第、該当海域に偵察爆撃隊を総動員だ、ボーイズにそう伝えろ!』
『はっ!』
当時の米空母の編成は、戦闘機隊、爆撃隊、偵察爆撃隊、雷撃隊と四つに分かれており偵察爆撃隊は空母の偵察艦的役割を色濃く残す部隊だ。偵察に一個部隊を丸ごと載せているというのは情報の重要性を考えている米海軍ステキ、と、なりそうだが、考えようによっては、発見後の攻撃
烽ノその機体は組み込めない訳であり・・・何事も良し悪しである
527 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/16(金) 14:38:06 [ zIQO46G. ]
『待ってろジャップめ、叩きのめしてやる』
サラトガの脇をアトランタが抜けて行った。出来たばかりでホヤホヤの艦だ。つい先日ハワイに回航されて来たのだが、ハルゼーの艦隊に護衛艦艇が少ないのと、一隻だけで戦隊の組めないアトランタを交ぜるのは艦隊決戦の阻害になりかねない。との事で、この海域でハルゼー艦隊に編
されたのだ。キンメルなりのハルゼーへの心遣いだろう
『敵はなけなしの戦力を分けた。これでキンメルは勝ったも同然だ、あとは俺が勝てば、おい、トーゴーみたいな大勝利じゃないか』
日本の奴らは完全に俺達の手中に落ちて、俺達の思うように
『拍子抜けだな』
陸軍のマッカーサーが唯一役に立つ情報として送って来た東シナ海に展開する空母が6隻居るという情報。いくらか日本の奴らは条約違反で空母を増やして居たとしても、10隻や20隻も居る訳でもあるめぇ、合衆国でも7隻、たとえ10隻は居たとしても、6隻は東シナ海、そして搭載機数はこ
ちらが上だ
『ボーイズ達もハワイでみっちりしごいたんだ。ジャップには負けねぇ』
練度でも問題がない。機体も新鋭のF4FにSBD、TBD・・・TBDはどうかと思うが紅茶野郎どもの羽布張りのソードフィッシュよりはましだ
528 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/16(金) 14:40:24 [ 7Vp0wi8U ]
『あるとすれば俺の判断ミスだが、それにはブローニングらが存在する』
あいつらは俺より優秀だ、信頼のおけるスタッフ。これほど頼もしい存在は無い
『負ける要素がねぇ、あとは勝つだけだ』
ハルゼーは拳をぱしん自分の手にうちあわせた
だが彼らは、いや、米国は知らない。八年越しの日本が、正規空母だけで13隻、艦隊型軽空母が9隻の22隻も保有する事を、そしてその搭載機が紫電改や流星改といった技術的に一、二世代先を行っている(紫電改にいたっては交代が差し迫っている)シロモノである事を
己がラマンチャの男である事を未だハルゼーは知らない。いや、かの男は風車をドラゴンと見立てて突撃した。しかしハルゼーの見立てたドラゴンは、ワイバーンという本物の龍を喰らい、叩きのめし、異世界人から機械竜とよばれる、本物以上に血に餓えた龍の群れとその巣なのだ。ラ
}ンチャの男など比較にならない
無謀以上の無謀、しかし彼に罪は無い。誰が、誰がたかだか一ヶ月で仮想敵が八年の年月を経たと考えるだろうか
『司令、収容が各艦終わりました、いつでも行けます』
艦長が報告を受けて告げる。にやっとハルゼーは笑った
『おぅ、じゃあ行くか!日本の奴らをぶっとばしにな!』
529 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/16(金) 14:42:20 [ fIFx11L2 ]
同日、マーカス島(南鳥島)西方海域、信濃
『宮城県周辺地域を空襲した米空母部隊・・・明らかに釣りだな』
信濃のただっぴろい飛行甲板を見下ろしながら山口は呟いた
『わざわざ釣られなくてもよかったのでは?』
『友永か』
相変わらずのったりとした話し方である。山口とは二航戦の飛龍にいた頃からの付き合いであるが、この信濃の飛行長になってもその調子は変わらないようだ
『戦艦なんぞより、敵空母を沈めるのが先だ。釣られたわけじゃない』
宇垣と揉めているというポーズはまだ貫かなければならない、その瞬間まで
『利根や筑摩は久しぶりにその役割をはたせるな』
遠くに利根らしき艦影を見つける。航空巡として生を受け、初めてその能力をフルに生かせるのだ
『機銃を甲板に増設しましたから他の艦と同じ程度に機数は減ってますが?』
『・・・君は空気を読まないね』
これも昔から変わらない。そこにある事をただ正確に報告する。そう言う男だ
『申し訳ありません』
あまり申し訳なさそうに友永は頭を下げる
『まぁいい。整備する設備は他艦より揃っている。瑞雲はいい機体だ、飛びさえしたらいい働きが出来るだろう』
零式三座水偵の後継として配備が完了したばかりだ
530 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/16(金) 14:45:14 [ 5k.cDmFg ]
『勿論、彩雲もだすよ』
二航戦の角田さんあたりは水偵があるのに偵察機を搭載するのは気にくわん。なんて事を言っていたが、整備をする上では空母の方が野ざらしの各艦艇よりも上だ。偵察に出せる機数の確実性がだいぶ増す・・・説明したら納得はしてくれたが不満そうだったな
『機載電探がうまく働いてくれるなら、それでも楽ですが、もう少し増やしたい所ですね。北は荒れますし』
偵察機の損耗はただ敵を見つけず、飛んでいても起こり得る。米海軍と比べたらその層は半分くらいか・・・機載電探も見逃しが少なくなる、といった程度(しかしだいぶましだ、偵察の穴が空きにくくなるし、偵察の頻度も下げられる)だ
『それは場合によろうよ・・・俺はむしろ、今のように単発機に微弱な電探をつけて数を飛ばすよりは、二式大艇のような大型機に精度の良い機材をごっそり載せたのを造った方がいいと思うがな』
墜落の原因は気候を除き、得てして大部分は発動機に起因する。その数が多ければなかなか落ちにくくなる。機材を動かす発電量も増える
『機体も人も消耗品です。一機に金がかかり過ぎます。護衛をつけるのも手間です。何よりそんな大型機は空母に乗りません。電探が小さくなれば別ですが』
531 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/16(金) 14:47:24 [ qolO/Z6Q ]
『・・・君は本当に空気を読まないね』
加えていうなら二式大艇を改造する場合、着水という行為をするが故に電子機器のメンテと故障率が間違いなく上がるという事。陸上機を使う?燃料馬鹿食いの四発で大航続距離、空母に載せられず、常に帰りを気にしなければならず、飛行場の整備の調ってない場所では使えず、護衛が
K要で撃墜されたら余りに高くつく・・・まだまだ技術的に無理があり過ぎる。確かに友永が言ったように、機器が小さくなり、双発機ぐらいに納められれば可能性はあるが・・・
『申し訳ありません・・・性格でして』
史実のE2Cなどに連なる偵察・電子戦機の萌芽は既にこの時期から存在していた。だが、開発にはまだ大きな障害が山積していて、山口が言う事はまだ妄想の域を出ないものだった
『この海戦が終わりましたら提言してみては?源田さんが空技におりますし』
『終わったら、な』
終わった時、おそらくは航空隊の大部分の面々から総スカン食らっているだろう俺が、か
『長官?』
『・・・いや、空母どうしの初顔合わせだ。手抜かりの無いようにせねばな』
『はっ』
山口の瞳に一瞬浮かんだ暗い炎。友永を始め、第三艦隊がその意味を知るのは3日後の事であった
539 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/17(土) 21:58:51 [ u9FMJxgs ]
1942.4.17、北太平洋上空
『ロゥランズ♪ロゥランズ♪アウェイマイジョイン♪』
音程の外れたひどい歌がSBDのコクピットに響いている
『その歌、縁起悪いっすよ?』
船乗りに故郷の恋人の死を告げる悲しいキャプスタンシャンティ(車座巻船歌)だ、というよりこの音痴め!勘弁してくれ!
『あぁ?いいんだよ、俺たちゃカナリアだ、敵に見つける役割だが、見つけたら俺達の命は終了だ。歌でも歌ってなきゃやってられねぇぜ!おぉ〜う♪』
また歌いだす、本当に勘弁してくれ、せめて景気のいい曲にしてくれたっていいじゃないか!
『あぁ・・・最悪』
天を仰ぐ、おお神様、何故私にこのような試練を・・・
キラッ
何かが空で光った。空で光るものといえば太陽か・・・
『機長!!!』
グォン!
後席の叫びに歌うのをやめ、咄嗟に急降下に移る
ドダダダダダダダ!!!
ぶっとい射線が追っかけてくる。20oか!?
『何機だ!?』
『三機です!!もぅだめだぁっ!!』
高度が2000・・・1500・・・1000・・・機体がガタガタ言っている
ガガガガガ!!
このドーントレスの降下に、奴ら付いて来やがるのか!?くそっ!操縦管が重い、もう限界だ!
『機長!爆弾!』
540 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/17(土) 22:00:15 [ O28l2xuA ]
そうか、爆弾か!何て慌てぶりだ!後席が言うまで爆弾を落とすのをすっかり忘れていた。降下速度が付き過ぎた、やばい!
『爆弾投下!!』
ヒュルルルル・・・
間の抜けた落下音
『上がれぇ!!!』
根心の力を込めて操縦管を引いた。機銃の的になるが、このまま落ちたら、確実にあの世行きだ。カナリアだって、最後まで生きる事を諦めたりはしない
『もがきあがく者こそが生き残れんだ!諦めるものかぁっ!!!』
上昇、雲は・・・あった!雲の中は乱気流だったり、雷雲だったりしてとても酷いことになる。もしかしたらそれで落ちるかもしれない。しかし、戦闘機に追われているより、どれだけマシか。明確な殺意の元にいるのと、神のみぞ知る危険な場、選ぶべきがどちらか言うまでも無い。こ
「つは戦闘機ではない、爆撃機なのだ
『連中、追ってきません!』
後席が叫んで報告する。よぅっしっ!
『なにしとるか!さっさと無電を打て!』
敵艦は発見できなかったが、こんな島も無い所で戦闘機の迎撃を受けるということは敵部隊が近くに存在する。ということだ。どこに三機だけ戦闘機を外に出す奴がいるというのか・・・先手はもらった
『しかも俺達は生きている!』
神様、感謝します
541 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/17(土) 22:02:06 [ wFko1i7. ]
『ちっ・・・ワイバーンのようにはいかんな』
この当時、第三艦隊の防空体制はどうなっていたのか?簡単に説明するとこうだ。まずは艦隊上空を四分割する。一つの空域に戦闘機を三機に偵察機を一機、この場合紫電改と彩雲のペアを二組用意し、彩雲の機上電探(対空特化と対艦特化の二組が各母艦にある、ちなみに彩雲の小隊編成
はこれに合わせて二機になっている)で探知し、それぞれペア毎で向かわせる。対応しきれない数が探知されたら、母艦から一斉に戦闘機隊の本隊がおでまし、とまぁこういうわけだ
『水かぶって調子が悪くなったな』
どうも発動機がおかしい。あの偵察機らしい爆撃機が落とした爆弾で発生した水柱、なんとかかわしたものの、この調子である。機体の性能に自惚れて、追撃にしか頭がなかった。反省せねば・・・敵機は距離も離れてしまったし、雲の中に逃げた
『敵機は逃げた。こちら第三小隊、してやられた。発動機不調、これより帰投する』
『・・・了解』
彩雲の方から返答がある、これで母艦から代わりの小隊が来る・・・しかし、連続、散発的に接敵がある。敵は何機偵察機を飛ばしているのだろうか・・・
『次は叩き落としてやる』
もう失敗はしない、それが戦闘機乗りだ
542 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/17(土) 22:03:11 [ 7mGOixHY ]
同海域・サラトガ
『敵の居場所が掴めたな!?』
『直掩機に出くわした、というだけですが・・・』
ブローニングはハルゼーを海図台に招いた
『偵察爆撃隊の十機以上がこの海域で失われています』
ブローニングが海図に赤ペンで小さく×を書く。あきらかに位置が集中していた
『ジャップめ、墓穴を掘ったな!』
何の事は無い、初めての空母戦、日本側は生真面目に、来るものを片っ端から撃墜していた。目に見える範囲に来そうに無い機体まで。ある種の勤勉さがここでは裏目に出た
『偵察爆撃隊のボーイズをねぎらってやらにゃならんな。ジャップの喉元に食い付いたのはあいつらだ。あとで撃墜された奴の名前と住所を頼む』
『はい』
史実でもハルゼーは戦死した、知己のスコット少将の奥方に手紙を書いている。性格は違うが、山本五十六と同じような行動を取っているのは面白い。転移で差がついてしまったが、ハルゼーと山本は同い年である
『よしっ!そういうのは後でやる。攻撃隊の準備はできているな!?』
『長官のお言い付けで、今すぐにでも』
三機目の消息不明の報があった時、臭いと思ったハルゼーは攻撃隊を準備させていたのである。先に攻撃されたら危険極まりない行為だが
543 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/17(土) 22:04:25 [ 5k.cDmFg ]
『飛ばせ飛ばせ!全部飛ばせ!急がせろ!グズグズしてる奴は俺がケツぶっとばしてやる!自分のケツけっとばされたくなかったら、さっさとジャップの汚ねぇケツをけっとばして来い!』
火の玉親父の面目躍如である。飛行長に向かってそう吠える
『エアボス、という訳だ。攻撃隊の発艦を任せる』
すまんね、と言った顔で苦笑しつつ、ブローニングはきちんとハルゼーの言葉を命令の形で伝える
『イエスサー!ジャップをけっとばしてきます』
飛行長がにかっと笑ってハルゼーに敬礼する
『おぅ行ってこい!!』五分ほどして、艦橋下の搭乗員待機所からわらわらとパイロット達、ハルゼーが愛すべきボーイズが機体へ群がる。甲板に置いてあったF4Fがプロペラを回し始め・・・その間に艦は風上に艦首を向ける。甲板員が機体の下に潜り込んで機体止めを外した。甲板
キが機体の横で大きく旗を振る。この旗の役目は長である彼の役目だ
『レディゴーレディ!・・・ゴーッ!!!』
バサリ
旗は大きく振り降ろされた。一番機がするすると前へと加速していく
『アトランタより報告!単機で接近する機あり!』
新鋭艦であるアトランタのレーダーが捕らえたのだ
『一足遅かったなぁ!ジャップ!!』
544 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/17(土) 22:05:34 [ kXkOHBG6 ]
同海域、信濃
ハルゼーがしてやったりと笑っているその対象である彩雲から発見の報が信濃の第三艦隊司令部に伝えられる。同時に敵部隊が発艦している事も
『こちらも急いで攻撃隊を準備しませんと!』
『待て!』
山口が焦る参謀らを制した
『準備が完了して飛び立つ手合いには敵編隊が上空へ到達する。一度受けきるぞ!』
『・・・っ!』
艦橋内がざわめく、攻撃を受けきる。下手をすると攻撃を受けて反撃できないかもしれない。そんな想定が起こりうる決断を山口はしたのだ
『長官!』
『戦闘機隊、発艦準備為せ』
攻撃、ともかく攻撃を行わないとどうにもならない。米国と事を構える事を考えるならなんにしろそこに行き着く。簡単な帰結だ、艦を極力失いたくないのだ、我々は。補充がつかないが故に
『大丈夫だ、我々は3年前の扶桑とは違う』
七隻の空母、四隻の戦艦、六隻の巡洋艦に十六隻の対空駆逐艦に直掩機、直掩なしに戦艦一隻、巡洋艦二隻、駆逐艦四隻のたった七隻で防空戦やった艦隊とは大いに違うのだ
『うちの搭乗員ならば止めぬいて見せる筈だ、むしろ打ち抜いてみせろ、と、そうは思わないか?』
余裕を見せることが重要だ、浮ついていては守れぬ物も守れないからだ
545 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/17(土) 22:09:00 [ zIQO46G. ]
ここで、日本側の搭載機数の内訳を言っておかねばならないと思う
各正規空母は紫電改9機、流星改18機の27機をもって一つの形を取っている。このグループを二つ彼女らは搭載している。それに、彩雲が四個小隊、8機を加えたものがスタンダードである。この場合、62機が常用となる訳だが、信濃は当然として、翔鶴らでもさすがにスペースが余る。そ
フ為、紫電改を増載しているのが常だ、これが18機、勿論、解体して搭載しているのが半分で補用な訳であるが、余りの9機が直掩用、先の18機が攻撃隊護衛用となる訳である
勿論、飛龍や蒼龍・雲龍級には18機もの紫電改は入らない。この数を半分の9機にし、うち6機を分解収容、3機を常用に加えている
それでもスペースが足らない?いや、足りるのだ。理由は流星改艦攻が艦爆を空母から追い出したことである。帝國海軍は艦攻に関しては折り畳みを推進して来た。ちなみに流星改はTBFより小さい、なんとかなるもんである(そこ!こじつけ言わない!)
逆に信濃では18機の紫電改を(うち陣風が3機交じっているが)常用で搭載し、補用に9機、さすがは信濃である
そんな訳で、最終的に迎撃にあがった紫電改らの数が100機以上になるのも、理解いただけると思う
546 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/17(土) 22:14:31 [ 2lSfKk9s ]
北太平洋上空
以前、志摩がラーナのならず者達にこう言った事がある
『神は知る、始まりは天、終わりは地。ならば我は知る。汝らの終焉は天より来たる!!』
と。この災厄もまた、天より来たる物であった。
山口が打ち抜いて見せろと上げ、彩雲の電探によって誘導された100機におよぶ紫電改の上空からの逆落とし、その機体の発する合計400門の20o機銃弾の雨、しかもこの雨は、第三艦隊、帝國海軍が誇る空母部隊。その最精鋭たるパイロット達の手によってもたらされた
《うおおおおっ!!!》
《散れッ!!散開しろーっ!!!》
さすがに紫電改の機数が機数だ。米攻撃隊もその存在に気付きはしたが、高度差はいかんともしがたい
死が、訪れた
《ウボァーッ!!!》
《右も左も避け道なんてなi!!》
《ははは・・・これは夢、ゆm》
一気に四十機ほどが落伍する。ハルゼーが送り出した攻撃隊は約240機、落ちていくのは、やはり動きの鈍いSBDやTBDの機体だ
《攻撃隊を守れ!戦闘機隊、フライトリードだとか考えなくていい!とにかく守るんだ!》
空戦が始まる。だが、先の無線交信が言うように、編隊が崩れてしまっては、それぞれが個々で戦うしか無い。
547 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/17(土) 22:17:19 [ zeLnApqc ]
同刻、サラトガ
『ボーイズがどうしたって!?』
通信室にハルゼーが怒鳴り込んできた。顔には焦燥が浮かんでいる。居ても立っても居られなかったのだ
『攻撃隊は壊乱状態のようです・・・ミーサクーラです。うちのVFの第四小隊長です』
トランシーバーを通信兵が差し出すのをがばっと奪い取る
《くそっ!!!振りきれない!!!速力も旋回も全く勝ち目が無い!武装は20o、20oが4丁、う、うしろに付かれた!・・らめぇ・・・・・ちん・・・みる・・・・・でち・・うぅぅぅ・・・!!ザザッザザザッ》
『おい!無事か!ミーサクーラ!!!おい!!!』
ハルゼーが怒鳴る。耳障りの悪い砂嵐が聞こえるだけだ
『通信兵!修理しろ!!』
通信兵はトランシーバーを突き付けるがトランシーバーを置いてその回線を切って言った
『司令、壊れたのは向こうの方です・・・撃墜されました』
『なにィ!!!』
通信室には同じような声があふれかえっていた
『応答しろっ!!!どうした!誰か答えろ!!』
『ダメだ、次の回線を回してくれ!』
『・・・』
ハルゼーも馬鹿ではない、ミーサクーラの通信を思い出す
『20o4丁に・・・旋回も速度も上、だと・・・?馬鹿な!!』
ありえない
548 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/17(土) 22:19:12 [ X8fclSxo ]
一方、殺戮の場から取り残された一団が居た。発艦の順番が最後の方の隊で、先発の隊に追いつける程の速力の無いTBD36機である
『たっ隊長!海面に、友軍機が!畜生!ちくしょう・・・!』
ガソリンの輪が海面にいくつもいくつも咲いている・・・後席は泣いているようだった
『・・・俺達が敵を取ってやるさ』
上の方では大規模な空戦が行われている。本来なら彼等が敵部隊を叩いた後、後落した艦の始末をこの魚雷でつけるのが役割だと言うのに・・・今では部隊を保っているのはこの隊だけだ
『しかし低空では燃料を食います。戻れないかも知れません』
操縦員が言う
『それは大丈夫だ、火の玉親父は俺達を絶対見捨てない、それだけはなによりも確かだ』
俺達はジャップにぶちかまして、生きて帰ってくればいい、誰よりも喜んでくれるだろう
『俺達が、やるんだ・・・!』
36機、戦艦だってなんだって沈めてみせる!!
だが、日本側はそんな彼等に対してすら、歓迎委員会を用意してあるのだった。もてなしは、全ての人に、平等に、ここまで来ると悪辣にしか思えないが
549 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/17(土) 22:21:24 [ wXB4VivE ]
第三艦隊、金剛
『電探に感、距離三万!』
『来たか・・・』
主砲を対空砲に使う場合、低空の方が使いやすいのは自明の理だとわかるだろう。砲弾は放物線を描く、その最終到達地点は海面なのだから
『零式弾、及び三式弾装填完了です!』
『信管を二万五千に合わせ』
日本には未だ近接信管は無い、噴進弾にはついているが・・・ならば、同じ時限の時限信管をもって、爆発する場所を測定し(これは弾道表を測定すれば意外と簡単だった、だからこそハマの沖合で虫を拘束し、その空域に砲弾を送り込めたのだ)、敵の機体が到達する頃合いを見計らって
bソ込めば良い。航空機の拘束は難しいが、ただ突破されるのとどちらが良いか。対策を取ってバラバラに侵入してきたら?各個撃破である。個々に向けられる火力は増える。同時攻撃なんて殆ど夢物語でしかない
『敵機、定点に達します!』
定点、敵の速力と砲弾が出会う最適距離
『撃てぇっ!!!』
ドドドド!!!
主砲一斉発、八発の14インチ砲弾が飛んでいく。彼等がそれに耐えたら?よかろう、彼等には236門の高角砲、1000を軽く越える機銃群に噴進砲が勇者を出迎える・・・いにしえの物語より、勇者はすべからく倒れる運命にあるのだ
555 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/23(金) 12:31:05 [ h7T8ta3M ]
第三艦隊、信濃
帝國海軍は、己の造り出したシステムがどれだけの物かわかっていなかった
『中間報告ですが、戦闘機隊は100機以上を叩き落とした模様です』
信濃には次々と紫電改隊が着艦してくる。航空史に残るような勝利の凱旋である。高角砲員や機銃座の兵員まで甲板で手を振って出迎えている
『金剛らが落とした機を考えれば140機程か・・・』
空恐ろしい。一度の襲撃でそれだけの被害を得たならば、我が国では航空隊そのものが変質してしまう数だ。ヴァイスローゼン事変で三号爆弾と機銃掃射でズタズタにされた列強のワイバーン隊のように
『逃げ帰った機が百を切っているのは確かです』
山口は瞑黙してそれを聞いていた。やがて口を開く
『被害はどうだ?』
『被弾機は多数ありますが、落とされのは5機程と報告が来ています』
『・・・圧倒的だな、零戦だったら、もっと落とされていたかな?』
『転移時の零戦の場合、20oは各銃60発に過ぎません、彩雲の誘導もありませんから、間違いなく突破を許したでしょう。戦果はあげられたでしょうが』
攻撃を受けていた、つまりやられていた可能性もある訳だ。空母七隻、集中運用である以上その全てが
『勝利と敗北の差は紙一重、か』
556 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/23(金) 12:33:14 [ bBlcovoo ]
自分がけして有能ではないことの証明だ、次期のGF司令など周りに言われて自惚れて居るのではないか?多聞よ。そして米海軍の用兵が、神速をたっとび、自分達を消し飛ばす可能性のある優れた指揮であった事の証明でもある・・・さすがは米海軍、仙台東北を我々の隙をみて襲う事
完璧に成し遂げてまたこの手腕。いい人材が居る
気付くと、皆がこちらを見ていた。その命令を待っているのだ。我々は敵の攻撃を受け切った、ならば・・・!
『敵の空母部隊を攻撃する、至急、攻撃準備を為せ』
『はっ!!』
艦橋内が一気に慌ただしくなった。山口は航空参謀に命令した
『何かと飛行機を飛ばされると面倒だ、流星の半分には降爆をさせたまえ、各艦にも下令を頼む』
『は?はっ!わかりました!』
普通、艦隊の長たるものが攻撃隊の装備兵装までは口を出すものでは無い、だが、航空参謀はなにかしら山口に考えがあるものと。その命令を伝えた
伝えられた者は思った、ああ、山口長官は敵主力艦隊に使う魚雷を温存するのだ、と。初めて航空機で洋上航海中の戦艦を沈める為に、と。だから疑問を誰も挟まなかった。山口は少しのワンマンを許せる立場と人柄であったから
彼等の想像は半分は当たっていた
557 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/23(金) 12:35:13 [ 7ctwgltA ]
米第四任務部隊、サラトガ
一方、ハルゼーの機動部隊には、編隊を崩され、僚機を撃墜された攻撃隊が三々五々で帰投して来ていた
『被害は・・・160を越えるものと思われます・・・被弾機を含めると攻撃隊の稼働機は40機程度になるかと』
ブローニングが報告した、彼も信じられないといった口調でそれを報じている
ヨークタウン級が85機程度を、サラトガが90機程その所属機として搭載していたが、その58%にあたる機体が失われたり、撃破されたりしたのだ・・・一方的に、戦果も上げられず
『320ものボーイズが失われた。そしてもはや飛べないボーイズがまだ出てくる・・・ちくしょう・・・ジャップめ!』
年の差を感じさせず、ハワイで肝胆照らして語り、笑い、酒を飲み訓練しあった仲間が、あいつらは俺の事を親父と呼び、俺はボーイズ、自分の息子のように思って来た。合衆国の未来は彼等と共にある。その未来を担うべきボーイズが・・・
『ジャップめ・・・!ジャップめ!ジャップめ!ジャップめぇっ!!!』
艦橋の柱を殴り続けるハルゼー、拳が血まみれになって、年相応に息切れするまでそれを続けた
『撤退なさりますか?』
ブローニングが恐る恐る聞く、撤退しても構わない損害だ
558 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/23(金) 12:38:03 [ CDVnjlgM ]
その言葉でハルゼーの導火線に火が付いた
『撤退?馬鹿な事を言うな!ここで俺が退くってことは、主力部隊を見捨てるって事だ!ボーイズを死なせただけで飽きたらず、俺に今度はキンメルを、級友を見殺しにしろというのか!!!』
まずい、中将が感情的になり過ぎている
『しかし、稼働機が四空母で100機前後ではっ!撤退して、ハワイに連絡し、機材をミッドウェーに集めて補充する時間を得た方が良いはずです!これだけの迎撃を受けた、ということは敵は戦闘機を優先したということでしょう。敵が攻撃隊を放つまで時間があるはずです!!』
敵の恐るべき新鋭機は我々の知るクラウド(九六艦戦)とは桁違いだ、F4Fでは歯が立たない!せめて数を揃えなければ!それに主力にはレキシントンが居るじゃないか!
『攻撃機に戦闘機が勝てないなんてこたぁない!奴らと同じ事をしてやればいい!そうすれば奴らにも損害が出る!俺が楯になってキンメルを守るんだ!ジャックのレキシントンたった一隻居たって守りきれるものか!空母の威力はブローニング、貴様もわかってんだろうがっ!!』
怒鳴り合う二人(ブローニングはハルゼーにかき消されないようにだが)実際、どちらにも一理ある。甲乙つけにくい
559 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/23(金) 12:41:46 [ a1KJrS8g ]
睨み合いが続く
『参謀長・・・』
唐突に、包帯を巻かれ、松葉杖をついた人物が二人の前に現れた、いや、二人が気付いてなかっただけなのだが
『エアボス・・・その恰好は』
絶句する、寝ていなければならない負傷だ。しかし彼は言った
『参謀長、親父さんが言っているようにやらせてください。俺はこんな風になっちまいましたが、みんなまだやる気です』
『し、しかしだな・・・』
ブローニングが手堅い事を言っているのはわかっていると言うように飛行長は頷いた
『ですが、主力艦隊がジャップに攻撃を受けたら、どんなに防いでも明日の決戦に支障が出るでしょう?だったら俺達は結局の所負けるかもしれないですが、絶対にここで食い止めた方が良い、このまま退いてはドミノ倒しに状況が悪化してしまう』
艦の一隻や二隻、失ったっていいじゃないか。ジョン・ポール・ジョーンズの時代から、合衆国海軍は。よし、船を沈めたか。次を造ってやろう。を、胸に置き、艦を失う事を思うあまり、怯惰に陥らぬ事を自らに言い聞かせて来たじゃあないか
『・・・』
ブローニングは沈黙し、しばらく考えてから、ゆっくりと口を開いた
『全体の勝利の為、ですか・・・わかりました、良いでしょう!』
560 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/23(金) 12:44:23 [ 25Xn9yoU ]
『・・・すまねぇな、ブローニング。俺ぁ熱くなり過ぎていたようだ。貴様が言ってることも正しい、と思う。だが、この場は・・・』
ブローニングは笑った、謝罪するハルゼーに向けて快活に、嫌みにならないように
『私もあなたの部下ですからね、ちょっとばかし、勇猛さが感染してしまったようです』
くやしいが、攻撃の失敗によって自分達は主役の座を降りなきゃならない。しかし、まだ決戦という演目は続いている。脇役なら脇役なりに、出来ることはまだまだあるはずだ。たしかに退けば、自分自身は守れるだろう。が、演目が成り立たず、太平洋艦隊という劇団が潰れてしまって
ヘ何の意味も為さない。いや、自分達のせいでやられたのだ、と後ろ指差されることになる・・・自部隊だけを私は考え過ぎていた
『こういう忍耐的な戦闘も、我々には出来るんだ、と日本の奴らと太平洋艦隊の司令部を驚かせてやりましょう』
ブローニングはそう言葉を締め括った。
第四任務部隊の意志はこのようにして決定された。彼等は敢えて、日本海軍の攻撃に身をさらす事を決意したのだ。残存のF4FとSBDが整備点検、機銃弾補充の後、飛ばされる。さすがにTBDは出せないが、ほぼ文字通りの全力迎撃である
561 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/23(金) 12:46:42 [ QDKBCzwM ]
三時間後、北太平洋上空
第三艦隊から飛び立った192機(各母艦27機、彩雲3機)が編隊を組み米艦隊の上空に差し掛かろうとしていた
《こちらカテ(加賀偵察隊)4、対空電探に感、高度五千!直掩隊は高度上げ!・・・反応が多すぎる!敵は大編隊と見られる、先行排除せよ!》
彩雲の偵察員は電探の反応に多少動揺し、普段は発すべきでない、多すぎるという言葉を口走しったが動揺しつつも素早く直掩隊に迎撃を命じた
《上がるぞ!また頭から弾の雨を降らしてやれ!》
《おぅ!!!》
攻撃隊が含有する戦闘機のうち、45機が高度を上げる。全てでは無いのは高空に引き付けておいて、敵直掩の第二波が低空で待ち受けた時(位置が同じで高度が違うところに敵編隊が存在した場合、哀しいかな帝國の電探では見分けがつかないのだ)に対処できるようにする為である。そし
トもう一つ
《こちらアカテ(赤城偵察隊)1こちらが誘導する、シナセ(信濃戦闘機隊)1は先行して敵直掩の有無の確認、直衛艦の制圧を為せ!ほかの小隊はヒリテ(飛龍偵察隊)2の指示に従え!》
《こちらシナセ1了解!敵の対空火力をひっぺがしてやる!小隊続けェ!!》
《了解っ!!》
陣風3機が加速して高度を下げる。目指すは、敵艦隊!
562 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/23(金) 12:48:46 [ PX2g/hVY ]
《こいつら、爆撃機まで迎撃に!》
20oを叩き込まれたSBDが空中分解をしつつ落ちていく
《降下速度は厄介だ!落とせ!落とせ!!攻撃隊に近寄らせるな!》
攻撃隊はそれほど高い高度で敵艦隊へは接近しない。初期高度が低いと、いくら彩雲の電探によって敵の位置がわかっても活かせない場合がある。と、これはこの海戦の後に早急に為すべき改善点として報告されている。何にしてもお互い初めてなのだ、錯誤は付き物である
《勇気は買うが、爆撃機で戦闘機と渡り合えると思うなよ!》
違う、彼等はそんな事は考えていない。しかし悲劇は、米海軍航空隊が先に探知され、先行して来たのが戦闘機だけ、というのを知らなかった事である。もう少し随伴艦が多く、艦隊側にアトランタの対空電探がいくらか配備されていれば、隊を分けたことが伝えられ、少しは避けれた悲
かもしれない
結局は爆撃機を投入した以上、戦闘機に大部分が落とされるのは避けられなかったろうが、一方的過ぎる展開にはならなかったのでは無いか?後世にはそう記述を残す書物も多い
《数が多い!後ろにに気をつけろ!落とされるぞ!》
《こいつら・・・気合が入っていやがる!》
しかし、それでも米海軍航空隊は奮戦した
563 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/23(金) 12:51:00 [ qolO/Z6Q ]
《くそっ!12.7oじゃ落ちねぇ!!》
《囲め!囲め!撃てば落ちるんだ!》
《ジャムった!ファッキンブローニングめ!》
この時、米海軍航空隊は数の有利を活用し、必殺の機銃弾を多数紫電改に送り込んでいるが、紫電改の重防御になかなか落ちず、苦しめられている。発射数も多くなる関係でジャムが発生した機も多数報告されている。この戦訓で米海軍の戦闘機は12.7o機銃は6丁搭載が絶対とされ、急速
投入された為に、味方殺しの悪名高いF6Fを改良し、20oを4丁搭載した型でやっと紫電改と並ぶ戦闘機を得ることに成功するが、それは少し後の話
《攻撃機だ!攻撃機を探せ!》
《一機落とし・・・畜生!うわぁっザザッザザザッ・・・》
なにしろ求めるべき攻撃機が居ない、いくら戦闘機を落としたとしても、攻撃を阻止出来なければ意味が無い、焦りが隙を生み、米海軍航空隊はその機数を減らしていった。
《死角を見せるな!お互いを守れっ!くそっ!やられっぱなしじゃないか!》
《ええい!なんて機動だ!?くそったれめ!うおおおっ!!!》
《脱出する!俺の代わりに、誰でもいいジャップどもをぶちかましてくれ!ああっ!火g!》
空戦が行われているその低空を、陣風が突き抜けていく
564 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/23(金) 12:53:28 [ zIQO46G. ]
《どうやら敵は低空には部隊を配置していないようだな》
《アカテ1そろそろ離脱しろ・・・結構落ちているな》
海面に幾多の油の花が破片と時たま搭乗員とともに咲いている、その中には紫電改とわかる機体もあった
《何事も無傷とはいくまい、あちらも軍人だ・・・シナセ1、新型機の威力を見せてくれ、アカテ1、離脱する》
誘導してくれていた彩雲が翼を翻す、遠くに敵艦隊の姿が見えたように感じた
《怯むなよお前ら!》
《誰に言ってるんですか?》
《ま、当然》
列機が返答する、こいつらめ
《よーし、突っ込むぞ!!!ついてこい!!!》
フルスロットル、機体がグンと前へと進む、大馬力が心強い。高度を少し上げる、敵艦を射撃する際、撃ち下ろす形にする為だ、わざわざ前面装甲にぶちあてる義理は無い・・・誰だ、海面低空飛行が苦手だからとか言ったやつは!
《見えた!》
空母4に他が9、やけに少ないな・・・
ドンドンドンドン!!!
対空砲火が一斉に放たれる
《気付かれましたね》
《うおっすげぇっ!あいつやりましょうぜ!あいつ!》
指差す方を見ると一際多くの火線を投げ掛けてくる艦が居る・・・あれは攻撃の邪魔だ。よし、やるか!
《あいつをひっぺがすぞ!》
565 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/23(金) 12:55:44 [ 9TlQkVJc ]
近づけば近づく程、激しい砲火が三機を揺るがす
《対空艦ですな、秋月よりだいぶ大きいですが・・・片舷へは七基の砲塔が指向できる・・・おっと》
機体を滑らせる、今まで居た空間が爆煙に包まれる
《死角はねぇな、中央線上に乗せてりゃ当たり前の話だが》
配置スペースの関係で薄い場所がある場合もある・・・陣風の実戦試験を任せられる小隊となれば、こういった判断の出来る手だれが選ばれている。勿論、地上掃射の腕も一級品である
ちなみにこれまでの会話を無線を通じて聞き取れるのは損失した場合に備え三機の搭乗員に情報を共有させる為である。日本側は、普通喋るのは小隊長のみであとは受信だけである
《艦の前後砲塔群をお前達がやれ、俺は艦橋をやる!》
ダダッダダッダダッ!!!
米艦から、今度は40o機銃の射撃が始まる、牛乳瓶ほどの火線が加わるのだ、恐怖心はかなり増す
《待ってろよ、今、その恐ろしさを、たっぷり返してやるからな!》
40oと30o、艦載と機載では差があるが、打ち上げと打ち下ろし、30oの射程もいくらかは伸びる
《恐怖を、感じろ!!!》
銃把を握る
ドダダダダダダ!!!
火線が小さな水柱を立てて敵艦へと向かう
《吹き飛べ!!!》
566 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/23(金) 13:04:17 [ wshQOogU ]
アトランタ
米海軍の主力装備であるマーク28、38口径5インチ両用砲。それが果断無く射撃を続けている
『いけいけぇっ!ジャップを叩き落とせ!!』
艦橋では兵員が興奮を隠さず、ハイになって作業に就いている。熟練不足と言われても仕方が無いが、最新鋭艦を無理矢理持って来たのだ、ある意味仕方ないと言えば仕方ない、今はこの状態でうまくいっている、水を挿すべきでは無い。彼女の艦長はそう考えていた
『40o、射撃開始します!』
ボフォースの四連装が火を吹く、見れば兵員が五発ずつの弾倉をとっかえひっかえしている
『敵がなんで三機程度で突っ込んで来たのかはわからんが、敵の本隊が来る前のいい演習だ!各員、落として見せろ!』
低空から来ている、ゴツイ機影からして雷撃機か?
『空母を守r!!?』
マーク28、38口径5インチ両用砲、その砲塔に張られている装甲は19〜50o、アトランタ級は覆原性に問題ありとされていた為、薄めの物が搭載されていた
30o機関砲四丁の威力はその装甲に対してあまりに凶暴過ぎた
ガッ!ガギンッ!バキャッ!!
砲塔は最初の被弾にはかろうじて耐えたものの、次々と飛び込んでくる銃弾に耐えきれず、砲塔前面をたたき割れて沈黙した
567 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/23(金) 13:06:40 [ ApfSecOw ]
『ぐうっ・・・』
敵機はそのままアトランタの上を飛び越していく
『ダメージリポート!!』
艦長は痛みを堪えて立ち上がった、艦橋にも銃弾は飛び込んで来ている
『2番3番・・・4番砲塔沈黙!復旧が出来るかどうかは未知数です!』
『射撃指揮所、全滅です!畜生!ここは、血の池だ!』
『後部射撃指揮所も半壊、高射装置破損!副長戦死!!』
次々と報告が入る。ふと、艦長は気付いた。今まで鳴り響いていた40oの発射音がしない
『左舷機銃座が一基、破壊されました!こらぁっこのチキン野郎!敵は行ったぞ!機銃座から逃げるなっ!!』
兵が逃げるのも無理は無い、砲塔程の防御は機銃座に存在しないのだから。練度が低いのも原因だろう
『復旧作業急げ!あれは先発だ、今に本隊が来るぞ!』
今なら奴らの意図がわかる。奴ら、俺達のような邪魔な艦を潰すつもりだ、それで抵抗が弱くなったところに爆弾や魚雷を叩き込む。畜生・・・まるで悪魔みたいな野郎どもだ
『艦長!敵の攻撃隊、来ます!!』
もう来やがったか!
『射撃指揮所はそのまま復旧に尽くせ!砲は砲側照準で撃て!機銃座、何をしている!またブチ込まれたいのか!!』
くそっ!100機は居るぞ、どうすりゃいいんだ
578 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/25(日) 23:27:47 [ vmEEgS4w ]
第四任務部隊、サラトガ
『アトランタが!』
見張りが叫んだ、ハルゼーが見ると、三機の敵機が上昇し離脱するその下で、新鋭軽巡であるアトランタがキラキラと日の光に輝いている。アトランタ自身がバラ撒いている破片に反射しているのだ。ハルゼーは唸った
『敵攻撃隊来ます!!!』
けし粒が黒ずみになり、やがてそれぞれの機影がはっきりしてくる
『あれがジャップどもの飛行機か』
ハルゼーは来日した事はあるが、知識としてしか日本機を知らない、勿論その知識も日本が転移する前の九六艦戦等の機種に過ぎない。ミーサクーラの報告を聞こうとも、想像する事ができないのだ
『100機はいるじゃないか!うちの航空隊は何をしている!?』
参謀の一人が叫んだ
『今呼び戻してます!』
通信担当が弁明する
『・・・大丈夫だ、ボーイズは戻ってくる、何があってもだ。戻る所を残してやらにゃならん!艦長!』
『このレディサラ、足運びには自信があります、華麗なダンスを踊りきってみせましょう!!』
ハルゼーにサラトガ艦長が答え、そして命じた
『機関室、最大戦速だ!ハワイ・ロサンゼルス間を一週間で横断するレコードを持つのが、一体誰なのか日本人どもに教えてやれ!!』
579 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/25(日) 23:30:22 [ kXkOHBG6 ]
サラトガ艦長が回避を旨として選んだのに対し、攻撃を受けるのに際して、もう一つの選択肢を選択肢を選んだ艦長が居た
『っ!?ホーネットに異常排煙、不完全燃焼・・・煙幕のようです!!速力落ちまぁす!!』
『何をしているミッチ!』
あれでは狙い撃ちじゃないか!・・・そうか!奴は自分の艦に敵を引き付けようとしている。思い到ってハルゼーは絶句した
ホーネット
『この艦は先年の10月に出来上がったばかりだ。乗員もそれほど出来上がっては居ない。敵があの数だ、まず持つまいし、見逃されぬ。ならば我々が引き付けて、重要度の高い空母を生き残らせる方が得策だ』
自身の乗る艦と乗員にそのような評価をつけることにシワだらけの顔を歪ませてミッチ、ことマーク・A・ミッチャーは言ったという
『戦場では弱った艦から攻撃するのが習いだ』
見張りが鬼気迫る顔で振り向いて報告した
『敵攻撃隊、分散しました!本艦には・・・40程!』
したりとミッチは満足そうに微笑んだ攻撃隊の三割近くを一隻に集められれば十分だ
『あちらも人間だ、罠には陥る、勝てない相手では無いぞ!』
訳のわからない化け物では無い。航空隊の状況に士気が落ちている乗員(勿論私もだ)をアジる
580 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/25(日) 23:32:52 [ 2FpTlyyE ]
四隻の母艦を9隻で守るとなると対空砲火の密度は薄くなる、ましてや最大火力を誇るアトランタが不具合をきたしたとあっては、まばらと言っていいものだ
『偵察艦の構想のままではダメだ、きちんと艦隊として組まなければ、空母は限りなく脆い!』
ホーネットの高角砲が撃ちだす、射撃命令自体は先程の敵機が現れたときに既に出してある
『敵機、来ます!!』
ドダダダダダダ!!!
さらに機銃群が射撃を開始して艦橋に響く音は堪え難い程になる。日本機は高度を取った機体とさらに低空に降りた機体、どちらも機影が同じようにみえるが、攻撃機に急降下爆撃までやらせているのか?・・・ともかく間合を計る、被害を受ける、というのを決めたならば、魚雷だけは
ゥわさなければなるまい
『よし!偽装やめ!全速!舵は切るな、直進だ!』
機関の出力を戻す、舵を切らないのは艦のエネルギーを殺さないためだ。一際濃い煤煙を出していたホーネットの煙突からその煤煙が消えた
『魚雷は艦の予測位置を狙って投下しなければならない、この速度回復は予想外のはずだ!』
機関の余裕だけは新しい艦の特権である。多少の無茶は効く、この無茶にミッチャーは 賭けたのだ
『かかったな!アホが!!』
581 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/25(日) 23:35:17 [ u9FMJxgs ]
ホーネットを攻撃した攻撃機、その魚雷搭載機の搭乗員は、己が引っ掛けられた事に歯噛みしつつも投下索を引かざるをえなかった。両舷から、逃がさぬように魚雷の網を張ったが、それを見事に擦り抜けられたのだ。それが彼等を激昂させた
《やろうっ!!各機!魚雷の代わりに弾くらわしてやれ!!》
《了解!!》
魚雷を手放した事で身軽になった機体を滑らせ銃把を絞る。彼が率いるのは左舷側に攻撃をかけた彼の隊の9機
《うぅらぁあああああっ!!!》
ドドドドドドドド!!!
横に並んだ18丁の20o機銃から火線がほとばしる。いくつかホーネットの船体に着弾の閃光が走るのを見つつ機体を上昇させる。陣風が襲撃した時と違って、上から撃ち下ろすのではなく、低い高度から機体を上昇させる関係で撃ち上げる形になり、目標とした場所に当てられたか、で見
驍ニあまり結果はよろしくない。外れた弾の方が圧倒的に多いのだから
しかし、外れた弾はホーネットの艦舷を飛び越す、飛び越した先には米空母の煙突と一体化した巨大な艦橋に飛び込んだ。完全に偶然の産物である
問題は、その飛び込んだ機銃弾の一弾が艦の頭脳、マーク・A・ミッチャーの褐色の脳細胞を撃ち抜き、飛散させた事である
582 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/25(日) 23:38:54 [ WERj3NJg ]
指揮系統の断絶、就役から五ヶ月の空母にそれは致命的だった。舵を取る人間が呆けてしまい、魚雷が抜けて尚、直進を続けてしまったのだ
爆弾を搭載した流星が襲いかかり、瞬く間に八発の500キロ爆弾が叩きつけられた
ゴアアアッ!!!
火災がホーネットを包む、誰もが自艦の状況を見るのに集中していた。だから視認が遅れた。ミッチャーがもっとも避けるべきとした攻撃機、それが放った魚雷がもはや避けられないところまで忍び寄るまで
片舷に命中魚雷、五、大抵の戦艦を沈めるのに十分な数である。ホーネットは耐える耐えないの前に、構造から破壊された。そして不十分な練度の兵員。艦長の不在、様々な要因が重なりあい、艦が限界を越える
『か、艦が転覆する!?』
『逃げろ!もうもたんぞ!』
『副長はどこだ!?指揮権の委譲を!』
『もうとっくに死んでる!甲板長は飛び込めって言ってるぞ!』
混乱の坩堝のなか、2000名もの命を抱え
『誰か機関を止めろ!このままじゃ飛び込んでも水蒸気爆発で爆発する!身体がひきちぎられるぞ!』
『馬鹿か!今更艦内に戻れるか!』
チカッ
光が全てを飲み込んだ。傾斜により缶の火が漏れたのだ、そして浸水してきた海水と接触した
583 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/25(日) 23:42:05 [ PX2g/hVY ]
サラトガ
『ホーネットが・・・』
『ミッチ!!!』
ドグァァン!!ゴゴゴゴゴゴ!!!
横転したホーネットが機関部から光を放ち、真っ二つに折れるのが見えた。後から大音響がついてくる
『ヨークタウン被雷!水柱が上がっています!!』
今度はホーネットと同じ戦隊を組んでいたヨークタウンがやられた。水柱が何本かはわからないが魚雷が近いところに被弾したためか、すこし横に広い水柱となって立っている。爆弾も数発命中したようだ、黒煙が沸き上がる
『戦隊司令以下、艦の放棄を考慮に置けと伝えろ!無線、発光なんでもいい!伝えられるうちにだ!』
ハルゼーが叫ぶように伝える。ヨークタウンには戦隊司令のブラウン中将が座上している。ホーネットがあっと言う間に沈んだための予防措置だ
『ヨークタウンから返信ありました、命中魚雷三!被弾四、復旧は攻撃が続く現状では不可能、艦を放棄する、との事です!』
わらわらとヨークタウンから乗員が出てくる。日本機も退艦している艦に追加で攻撃はしないようだ。しかしそれは、魚雷や爆弾を持て余した敵機がこちらに向かってくるということでもある
『攻撃力が違い過ぎる!!』
ブローニングが呻いた、なんて苛烈な攻撃だ
584 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/25(日) 23:44:19 [ a1KJrS8g ]
『日本人め・・・』
機体の性能が違う、雷爆共用の機体、爆弾や魚雷を積んでいても、その速さはとてつもなく速い、有り得ないぐらいに。乗っているパイロットも腕がいい。ボーイズが劣るという事は絶対無いが、編隊の維持、突入までのプロセスの手際の良さ、戦闘機隊も数の優位があるにも関わらずこ
ソらに戻って来れていない。それだけ優秀なのだ、あちらのパイロットも
『雷撃機、右舷!数9!』
『面舵一杯!!』
艦橋がぐぅっと傾ぐ。三万トンの巨艦が機敏に艦首を回す、海水の塊が割られて白い波を立てる
『敵機魚雷投下ぁっ!!!』
艦長に苦渋の表情が浮かぶ。艦を回すタイミングが半分、自分のベストと思うタイミングから半分ズレている・・・白い航跡がサラトガへと伸びてくる
『司令、数発貰うやもしれません。少々レディサラは魅力的過ぎたようです』
『わかった。艦の保全に勤めてくれ・・・ボーイズの戻る所を残してやらにゃならん』
『対衝撃準備!!!魚雷が来るぞぉっ!!』
各々が顔を強張らせて体勢を作る。魚雷を喰らうなど、訓練以外初体験なのだ。どんな衝撃が起きるのか想像つかない。艦長は降爆にやられぬよう、上空を睨みつけている
『っ!?アトランタ前進!!!』
585 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/25(日) 23:48:38 [ HVdVzoX. ]
アトランタ
『総員上甲板!!そのまま海に飛び込め!』
『舵中央そのまま!あとは私があてる、航海長!君もいけっ!』
『艦長!』
射撃指揮装置が失われ、火力も半減し、練度の足りない650名より、ビッグ4の一艦として十五年もの間親しまれ、かつ習熟されているレディサラの1900人
『どっちが大事か、なんてわかり切った話だ』
総員上甲板をし、退艦をさせている為失われる人員は650名からさらに下回る。安い、安い買物だ。このアトランタ級も、他に3隻が本土で完成し、残りも建造中、引き換えには悪くない。合衆国をもってすればこのクラスの艦など、掃いて捨てる程量産できる
『畜生め、生き残るのに俺が入ってないのが残念だがな!』
戦闘詳報は航海長に預けた、必ずこの戦訓を次の戦闘にフィードバックしてくれる筈だ・・・三、四、五・・・六本、喰らうかな?トップヘヴィーのこいつが吹っ飛ぶには十分だ
『畜生、やっぱり艦長が残らないといかんもんかな?』
誰も居ない艦橋、いくら泣き言や弱音を吐いても、航海長以下、艦長は艦橋に残り、勇敢にも魚雷に向かって舵をとり続けたと言ってくれるんだろうな。くそったれ!!
『貴様らの思い通りにはさせんぞジャーップ!!!』
586 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/26(月) 00:17:28 [ bBlcovoo ]
アトランタがかき消えた。航空魚雷の六本が8500トンの船体を吹き飛ばしてしまったのだ。コマ送りに状況を撮れる現代のカメラがこの時あれば、艦体上構部が魚雷弾頭の爆発により四散した後、そのエネルギーが艦を傾け、弱っていたアトランタの船体を断裂、いくつかの塊にわかれて
Cに飲み込まれた。そう映っていることであろう
サラトガ
『アトランタが・・・楯になってくれた・・・?』
ブローニングが呟いて顔をしかめた、今、ほんの一瞬・・・いや、今も良かったと思う自分が居る
『残りの魚雷、それます!!』
海中状況の変化で軌道が逸れたらしい。サラトガに命中せずに魚雷は反対舷へと抜けた
『敵機!急降下ぁ!!!』
『次から次へと・・・!』
見張りの報告にハルゼーが呻く
『面舵!!!そのまま円を描く!』
艦長が、今度はタイミングを逃さなかった。艦が勢いを維持したまま回る
『敵は一本棒で突っ込んでくる、最初の一機を外したら・・・避けれる!』
しかし最初の一機目が避けれないと連続して被弾する事も意味する
『エンタープライズ被弾!ああっ!艦橋直撃!』
僚艦の被弾が悲痛にもたらされる、上から同じように爆弾が降ってくる
『回れっ!回れぇっ!!!』
587 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/26(月) 03:22:29 [ gY4wlmWo ]
第三艦隊、信濃
『で、空母2、乙巡1、駆逐艦1撃沈、空母1隻大破・・・一隻は無傷で残した訳か』
山口が渡された電信綴りを読んでいる
『報告によれば、降爆の攻撃方法には一考の余地があるようです。それから老練な艦長にしてやられた、と』
ホーネットに魚雷を使い過ぎたのだ、アトランタの献身や、ミッチャーのそれが無ければ、間違いなく四空母全てが海に消えて居ただろう
『なかなか撃沈撃沈また撃沈とは行かないね』
やはり世界初の空母決戦、高速で動き回る敵艦を航空機で撃沈するのに、まだまだ研究と鍛練が足りないか
『・・・』
皆がこちらを見ている。何を言いたいかはわかっている。しかし・・・
山口は息をついた
『・・・第二次攻撃隊は出さない。』
『なっ!?』
ありありと不満と驚きの表情が参謀、艦橋要員達の間に広がる
『第二次攻撃隊を送れば残りの二隻を喰えます!何故ですか!被害も倍以上の数を支えた紫電改隊こそ比較的多いですが、攻撃隊の損害は微細なものです!ここは是非!』
本来の俺なら有無も無く頷くのだがな
『俺には厳封命令が渡されていてな』
山口は懐から封筒をだして開封し、一瞥して参謀に手渡した
『我々の本当の攻撃目標は、他にある』
588 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/26(月) 03:29:43 [ Xq7PfW/w ]
米第一任務部隊、ペンシルヴァニア
『ハルゼーは死ぬ気か!?』
ハルゼーの第四任務部隊が大損害を受けたと知ったキンメルは、ハルゼーに直ちに撤退命令を出した。損傷艦の処分もやむなしの権限も含めて。しかし帰ってきた答えは
《我、空母の保全に万全を尽くせり、ハワイに向けて曳航中。日本機に気をつけられたし、後は任せた》
であった。エンタープライズを曳航出来る艦といったらサラトガしかいない。そしてそれでは無傷のサラトガをも危険にさらすことになる・・・何の事は無い、ハルゼーは敵空母を引き付けるつもりなのだ
『それだけ閣下を信用なされているのでしょう・・・それから引き付けなければならぬほど、日本人の空母の攻撃力が高いと見た、と言うことでしょう』
キンメルはハルゼーが馬鹿でない事を知っている、あいつがここまでしなければならないという事は、今、マクモリスが言った推論が正しいという事だ
『・・・日本機は、我々が知らぬ間に日本が戦艦を造っていたように、機密の航空機を開発していた、と?』
『おそらくは』
『シェンノートの報告、か・・・眉唾だったが』
認めざるを得まい
『マクモリス君・・・君は日本人が夜戦を仕掛けてくると思うかね?』
589 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/26(月) 03:36:01 [ 2aOBt6HQ ]
『はい、例のインヴィジブルトピードーを生かすとしたら夜戦が一番でしょう。スプルーアンス少将も指摘しておりました』
夜間、視界の効かない中、海中を見えない暗殺者が襲ってくる。まさに最悪である
『しかし彼は魚雷戦に日本側が全てを賭けるかどうか疑問である、ともしている』
キンメルが切り返す。マクモリスはすぐに答えた
『彼が参考にしたのは英海軍の戦訓でしょう。その時は昼戦だった。夜戦になれば砲撃の精度は落ちます。損害もかの海戦より被弾率の低下から撃沈される艦艇数は減るでしょう。彼等がその旨考えて、我々に損害を抑えながら魚雷をうまく当てられる。と、勘違いする可能性は高いでし
蛯、』
日本側も、発射のそぶりを見せれば、我々が回避行動を行い、被雷数を抑えることが可能だとわかっている。昼戦ならなおさらだ、ならば
『偵察機の報告によれば駆逐艦の数が多いとあります。投射する魚雷数を増やす為でしょう。肉薄し発射さえしたなら、我々は大規模ですから、当たる可能性は高い、彼等には勝つ算段がある。そうはさせませんが。でなければ戦艦が七隻で出て来たりはしません』
駆逐艦以外の艦艇数は我々の方が多い、まともにぶつかったら敗れるのは日本人の方だ。
590 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/26(月) 03:41:04 [ X8fclSxo ]
『その戦艦の三隻は我々が保有するものよりも巨大、だがな』
日本機が異常な強さを見せた以上、日本戦艦も、とキンメルはいいたいのだろう
『戦艦個々で強くとも、数は覆せません。他の艦が叩かれた後、袋だたきにされるだけです。なにより、その他の艦であっても日本側にとって喪失した場合、取り返しがつきません』
キンメルはため息を着いた
『まぁ・・・な、七隻のうち四隻はナガトにイセ、古馴染みだ。わかってはいるが、イマイチ腑に落ちんのだ。この日本海軍は少しおかしい、そう思えてならん』
見ず知らずの艦が増えているのだ、違和感はあってしかるべきものだろうが・・・マクモリスは少々声をあらげた
『では、撤退なさいますか?』
『・・・いや、内南洋の各諸島に展開したグァム、ウェーキ他の将兵を見捨てる訳にはいかない・・・そうだな』
結局のところ、退く訳にはいかないのだ。安心させるようにマクモリスが付け加えた
『七隻もの空母を揃えて、防御の薄い艦隊を攻撃して二隻しか撃沈に成功しておりません。空母の攻撃力は敗れたハルゼー中将には悪いですが、言うほど大した事はないと言えます』
それに、艦隊直衛任務で戦闘機隊を増量したレキシントンが無傷で残っている
591 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/26(月) 03:45:10 [ vmEEgS4w ]
『敵空母はハルゼー中将が引き付けてくれています。しばらくは空母を考えずに済むでしょう。敵の夜襲さえ切り抜ければ我々は優利に戦えます』
『うむ・・・』
マクモリスが言っている事に間違いはない、勘繰り過ぎか?
『ハルゼーが後は任せたとあった。死なせたくないが、先ずは日本人に勝たねばどやされるな』
『当然です、私も怒ります。ハワイで万難を排してでも勝利を得るとおっしゃったではありませんか』
ふぅ、とキンメルが息を抜く
『ふふっ・・・それが仕事だったな』
それにこの戦争の戦争目的は、太平洋における日本の軍事能力の大幅な削減、それに伴う合衆国のプレゼンスの拡大だ。日本は戦えば戦うほど追い込まれていく、損害がゼロなど有り得ないからだ。ただただ戦えばいい、軍人として戦う事に否やはない。己の力を振るうだけだ
『日本の艦隊とは明日の朝にぶつかる針路だったな』
『敵は部隊を分け、軽速艦艇で夜襲をかけたあとの混乱にじょうじて現れるつもりでしょう・・・ですが』
『そこに現れるのは各個撃破に成功した我々、そうだな?』
ニッと笑うキンメル
『良い夜にしたいね』
しかしその夜、日本の夜襲部隊が太平洋艦隊の前に現れることはなかった
597 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/27(火) 17:23:45 [ e.yRiOXc ]
1942年4月18日、第三任務部隊、アストリア
『おはよう諸君』
艦橋の扉を開けてスプルーアンスが入ってきた、日本側の夜襲の恐れがなくなったと判断した彼がまっさきにしたことは仮眠しに向かった事である。豪胆きわまりない、色んな意味で。もっとも彼からすればベストコンディションで決戦へと臨まないのはおかしいと思っているかもしれな
「が
『言っておいた水偵の用意はできたかね?』
スプルーアンスが指揮官席に納まると同時に従兵がコーヒーを差し出す
『はい、キンメル大将からも夜明けと共に偵察線を展開するようにと命令がきています。既に命令さえいただければ発進できます』
ムーアが報告する
『許可する、飛ばしたまえ』
『はっ!』
アストリアやニューオリンズを初め、合衆国海軍の重巡には偵察艦的要素が盛り込まれている、魚雷を降ろした事もあろうが、格納庫付きで四機の水偵を利用できる。雨ざらしの日本の重巡はこの面ではまったくアメリカに及ばない。しかし、船体部が大きくなるし、披弾した場合火災が
ュ生したら投棄しにくくもあるので、何事も良し悪しである
『ふぅ・・・』
スプルーアンスはコーヒーを一気に飲み干す。喉を通して芳醇な薫りが沸き上がってくる
598 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/27(火) 17:29:37 [ zIQO46G. ]
ポン!ポン!
コーヒーによってすっきりした頭に、カタパルトから水偵が射出される音が聞こえてくる
『夜襲ではないなら・・・一体どんな手を使うつもりかね、日本人は・・・』
スプルーアンスは呟く。空母、だろうか?今囮に徹しているウィルを昨日攻撃したからには、稼働機は減っているだろう。我々にそれで決戦を挑む気であれば。反復攻撃が必要になるため、敵主力は一時的に我々と距離を取るはずだ・・・キンメル長官はそのあたりの確信を得たいのだろ
、
『もし、そうでないとしたら』
遠くない所に日本の艦隊は存在するはずだ。我々を破る、なんらかの策を携えて
『偵察機から緊急電!敵艦隊発見!距離、艦隊より30マイル!』
スプルーアンスは従兵に空になったカップを渡し、瞑目した
『っ!スプルーアンス司令!』
ムーアが振り向いて叫ぶ。30マイル、つまりここから五十四キロ先に、長年に渡って向かい合ってきた彼等が居る。この距離は、お互いを視認できる距離になるまで三十分を切る距離だ、雌雄を決するつもりなのだ、日本人達は
『・・・総員戦闘配置、対水面、水中警戒を厳となせ』
目をゆっくり開き、物静かにスプルーアンスは命じた。その瞳にほのかな闘志を滲ませて
599 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/27(火) 17:31:53 [ O28l2xuA ]
第一艦隊旗艦、武蔵
『宇垣司令』
参謀が声をかける
『わかっている』
宇垣は頷いた。対空電探によって水偵は高度を上げた所をレンジ内に唐突に現れた事で補足されていた。敵の針路は昨日より変わっていない、我々との決戦を望んでいるのだ・・・だから、敵の水偵を放置したのだ、お互い隠さず戦い合おう、と
『九航戦より零戦隊あがります!』
千代田、千歳、瑞穂の三艦から零戦が舞い上がった
『敵機複数探知!!敵艦隊のあるらしき場所からです!』
水上電探は地球の丸みのせいで未だ敵艦隊を捉らえていないが為に、あるらしき、と、奥歯に物が挟まったような報告をしているが、仕方あるまい
『これで、空の上では相殺ですな』
『こちらの水偵の射出はまだか?』
言ってきた航空参謀に自艦の水偵の発進準備の状況を問う
『今すぐに。本艦や、紀伊、尾張は6機搭載ですし、他艦と違って格納庫から出さねばなりません』
ポン!ポン!
なんとも軽い、爆ぜるような音が微かに聞こえてくる
『射出開始です』
第一戦隊だけで18機、第二戦隊で12機の、という風に水偵が射出されるのが数値を見ればそうなのであろうが、第二戦隊には8機しかないし、巡洋艦も各2機の搭載となっている
600 名前:長崎県人 投稿日: 2007/03/27(火) 17:33:33 [ e.yRiOXc ]
事情は米海軍も同じようなもの(ただし、米海軍の方が航海日数が多いため、ニューオリンズらの格納庫持ちの重巡以外、各2機の稼働となっている)で、両軍が50機もの水上機を繰り出し100機以上の下駄ばきが乱舞するという史上初の海戦となったのは意外としられていない
『うむ』
宇垣は満足そうに頷いた。ここまでは艦隊決戦の手順そのままである。ああそうだ、と宇垣は皆を見回した
『聯合艦隊司令部は陸にあがってしまったが・・・どうだ?あの旗を揚げないか?』
あの旗、景気つけには持ってこいである
『はい!是非とも!』
『そうですな、あれが無いと艦隊決戦は始まりませんな!』
参謀らが相好を崩す。髭づらやシワも目立つような年の男達が、あれがあるとなると嬉しくてしょうがないのだ。宇垣は命令を明朗に発した
『信号長!Z旗を掲げよ!』
皇國ノ興廃、カカリテコノ一戦ニアリ、各員奮励努力セヨ
日本海軍に属する人間の心の琴線をこれほど震わす物は無い。するすると武蔵のマストをZ旗が昇っていく、艦隊全ての乗員の士気が、その旗のようにあがっていくのが伝わってくる
『第一艦隊は、これより米太平洋艦隊との決戦に突入する!』
この旗の下、戦艦巨砲の宴が始まるのだ