204 :長崎県人:2007/11/26(月) 01:58:43 ID:2MxH4A12O
同刻・ハワイ大学
『大佐!島田大佐はおられるか!』
ワイキキビーチ方面から上陸した帝國陸軍第五師団を始めとした部隊は、その勢力を二分し、一方はダイアモンドヘッド要塞を包囲しに、もう一方は太平洋艦隊司令部攻略へと向かわせていた
『・・・ここだ、ちったぁ休ませてくれんのかね』
半壊したハワイ大学の講堂の椅子に置かれた毛布ががばっと起き上がる
『戦車を中心とした、強力な阻止攻撃点が行われています!現在イオラニ宮殿でアテとホニ車を中心に持ちこたえておりますが、島田大佐の部隊も、投入したいとの事!』
『現在我が部隊が使用可能なチセは、4両しかないが、決定か?』
チセは、このハワイへの上陸戦におよそ60両が投入され、その三分の二が、ワイキキから海岸に突っ込んだ改小SB艇から歩兵の盾として投入され、海岸線陣地突破に大きな役割を果たした。しかし、ハワイ大学を取った時点で、撃破されたものは過小だったものの、あらゆる攻撃を受け
アけ、耐えに耐えたチセは、一度整備を受けねばならない車両ばかりで、稼動数は島田が言った通り、4両にまで減少していた
『動ける対戦車兵器は全て投入するとの事です』
参謀命令ではないようだな、と、島田は頭を掻く
205 :長崎県人:2007/11/26(月) 02:01:51 ID:2MxH4A12O
『良しわかった。少しの間耐えてもらってくれ。海からの支援射撃はあるんだよな?』
海の方が騒がしいが
『現在、最後の支援を行っています。大佐が着く頃には止んでいる筈です。これ以上は距離が近すぎて・・・』
事態は大体把握した
『逐次投入になるが、整備を急がせて出来次第送らせよう』
恐らく、どちらかのスタミナが切れるまでの持久戦になるだろう。チセが一両でも多く必要だ
『あ、あともうひとつ』
伝令にきた兵長は、さらに伝えた
『海軍陸戦隊から、こちらにいいものがあるから、ついでに持っていけとのこと。木箱を二十箱程預けられたのですが』
『いいもの?まぁいい、わかった。適当に車体の上に載せといてくれ』
ちなみに海軍陸戦隊の奴らは、上陸第一波で一緒に苦労した仲だ。ここまでの建物は、陸戦隊のもつ短機関銃が威力を発揮して奪い取ったも同然だ・・・その分消耗して、我々と同じく再編中であるが
『急ごう、チセがあるとないじゃ、兵隊のやる気が大きく違うからな。その旨伝えてくれ・・・そのいいものの使い方はあっちに伝わってるんだろうな?』
『はい、陸戦隊の数人が説明にいっています。それでは、御武運を!』
伝令は敬礼をして、駆け足で戻っていった
206 :名無し三等陸士@F世界:2007/11/26(月) 02:04:35 ID:G8d.1vLg0
支援
207 :長崎県人:2007/11/26(月) 02:05:07 ID:2MxH4A12O
ハワイ大学・グラウンド
『稼動戦車乗員は集合!』
島田は戦車の魚河岸となっているハワイ大学のグラウンドで叫んだ。すぐに20人が島田の前に集まった
『すぐに出てもらう。4両で何が出来るかとも思うが、ないよりはあった方が良い状況だ』
『相手は判っているのでありますか?』
戦車長の一人が手を挙げ質問する
『戦車だ。奴ら、上陸した時にやられた事の意趣返しをしにきたらしい』
車種はおそらくシャーマンかグラント。それを部隊の前面に押し出して敵はやってくる
『では、徹甲弾を多めに持っていってよろしいですか?』
『許可する。定数はきにするな、動けそうにない車から分けてもらっても良い』
今俺達は、戦場に居るのだから
『場所はイオラニ宮殿を中心とした川向かいを挟んだ場所だ。そこで防衛線を張る』
地図をがさごそと広げる
『ここの川にかかる橋は五箇所、アレワハイツの橋は艦砲射撃で落ちているから、各架橋に一両ずつ、いいな』
『川の深さは』
『無理をすれば通る。が、建物を破壊して進まねばならないし、橋からは横腹が丸見えだ。まずは大丈夫だ』
島田は顔を上げた
『話は以上だ。チセは中戦車とは名ばかりの重戦車だ、その恐怖を思い知らせてやれ』
208 :長崎県人:2007/11/26(月) 02:07:46 ID:2MxH4A12O
イオラニ宮殿
『こいつは、ドイツからの舶来物でして』
その陸戦隊の兵士は箱を開ける。箱にはマッチ棒を巨大化したようなものが四本入っていた
『あちらの言葉でパンツァーファウスト、戦車へのげんこつ、です』
『げんこつ、ですか・・・』
陸戦隊の兵士はその一つを取り出して見せる
『欧州から帰って来た艦隊が持ってきたのですが、120ミリまでなら確実に抜けます・・・簡単にいうなら、チセの正面装甲を抜けます』
『なんと・・・!』
陸軍の将兵は目の前でチセが砲煙弾雨を耐えて前に進んだのを見ている、あの装甲を抜く事が出来るというのか!
『ただ、抜くだけです。必ずしも撃破できるとは限りません。ですが、うまくいけば一発で撃破出来ます』
そしてこれが、やはり噴進弾の常として風に弱いこと、直線ではなく、山なり弾道を描く事を説明する
『射距離はいくらになりますか?』
陸軍の兵士が聞く
『30mです』
『近いな』
頷く陸戦隊兵士
『ですが、この広い市街地を持つハワイなら、話は別です』
接近する為の遮蔽物には困らない。欧州から帰って来た艦隊からの報告書で、その点が書かれていた事が大きい
『八十本ほど、チセと一緒に来ます、有効に活用して下さい』
209 :長崎県人:2007/11/26(月) 02:12:19 ID:2MxH4A12O
そして彼等はやってきた
『シャーマンを先頭に押し出して来ます!距離、1500!』
『遠距離から数を減らすぞ!』
こちらへの距離を減らすべく、シャーマンは四車線の道路に一列横隊で突っ込んでくる。ただ迎撃しては損害を受けると判断した車長は、直ちに砲撃を始めることを命じる
『砲塔まわせ!ちょい左!よし!撃て!』
チセの砲塔がにわかに動き、敵に向けて砲弾を放つ
ドン!!
55トンの車体が、砲の動揺を受け止めて制御する。放たれた砲弾は、65口径の76ミリ砲弾。ちなみに史実のタイガーキラー、ファイアフライが積んだ76ミリ砲は58口径。これが高速撤甲弾使用の場合、一キロ前後で192ミリを抜く。チセの場合、未だ高速撤甲弾は使われていないが、口径の
優位から、一万五千でも100ミリは固いだろう
一方、史実トーチ作戦が行われずじまいの米陸軍が持ち出したシャーマンは、完全な初期型。その最大装甲厚は76ミリ。熟達したチセの射手は、高角砲転用で、伸びの良いこの砲を使いこなし、狙い過たず彼の戦車を撃ち抜いた
バガッ!
ティッシュペーパーのようにシャーマンの装甲を撃ち抜いたチセの砲弾は、シャーマンの中を跳ね回り、中の人をミンチより酷い状態にする
210 :長崎県人:2007/11/26(月) 02:14:39 ID:2MxH4A12O
『あいつはやった!次!』
まるで糸の切れた人形のように動きの不安定になったシャーマンを戦闘不能と読んだ車長が、次の目標を指示する
ガンッ!
チセの砲塔を、強い衝撃がひっぱたいた。シャーマンの射撃だ。しかし、シャーマンの砲は38口径もない。ただむなしく装甲に弾かれた
『ようやってくれたなぁ!撃てぇっ!』
ドンッ!
またチセが一両のシャーマンを血祭りにあげる。今度は搭載弾薬に引火したのか、砲塔ごと吹き飛ぶ
『車長!敵が!』
このままではまずいと判断したのか、米軍はグラントやスチュアートなど種類構わず投入してくる
『接近してくる奴に集中しろ!』
敵にとっちゃ、俺達を舐めてない限りは、速度が出て、威力のある砲を持った戦車を最初に出してくる筈だ。そいつらをやったら、俺達は無敵だ
『撃て!』
ドンッ!
『ちぃっ外した!再装填!急げ!』
流石に三両目ともなると、回避運動をしてくる
『車長!もう一両が!』
俺達の横腹を突く位置を得ようとしている
『ほっとけ!』
なぜならあそこには・・・
ドゴァッ!
半壊した建物の二階から、打ち下ろすようにパンツァーファウストが撃たれて、シャーマンが火だるまになる
211 :長崎県人:2007/11/26(月) 02:17:59 ID:2MxH4A12O
『す、すげぇっ!』
パンツァーファウストを使った陸軍兵士は、その威力に驚嘆した。向こう側では、最初に突っ込んで来たシャーマンのうち、撃破されてない最後の車両が、チセの射撃を受けて横転する
ドダダダダダ!
川向かいの建物から、米兵が猛射を浴びせてくる
『場所を変えるぞ、急げ!』
『おう!』
あっちはトンプソンをバラバラ撃ってくる。しゃれになんねぇ
ドドドド!!!
今度は聞き慣れた射撃音が聞こえてくる。アテだ!
『川を渡る気だな!』
元のチハの機動力をいかして、川にアテは入り、両軍の突破の要である橋の下に、配備されていた。多分、エンジンが水に浸かって再使用は難しいが、川を身体で渡ってくる米兵には悪魔のような存在になる。アテの弱点であるオープントップも橋が防いでくれるから、死角がない
『まんまと引っ掛かったな!』
シュバァアアア!ドカン!
今度はチヘに搭載されている噴進弾の音だ。振り向けば、トンプソンを撃ってきた建物が煙にまかれている
『急ごう、これじゃ獲物がなくなっちまう』
『おう!』
アテの面制圧、チヘの火点制圧、そしてチセの戦車撃破、日本の機甲戦力全ての凝縮が、ここハワイで行われていた
212 :長崎県人:2007/11/26(月) 02:21:10 ID:2MxH4A12O
帝國陸軍は、歩兵とともに移動可能な火力が戦車しかないから、と、今回の集中を行ったのだが、それが最適解だったのだ(野戦砲陣地の代わりに海軍の駆逐艦を使えたのがかなり大きかったともいえる)
ともかくも、米軍の破城鎚は、最初の一歩目で破綻した。戦史叢書にはそう記されている。チセの砲弾によって撃破されたシャーマンと、同じく串刺しにされたスチュアートの写真を添えて
222 :長崎県人:2007/11/28(水) 00:38:51 ID:2MxH4A12O
ついでにおまけ、その法的根拠は?
『ねぇあなた、志摩君をそんなにすっきりやめさせられるの?』
幽弥は松浦に聞いた
『ああ、その事か』
松浦は頭を掻く
『あいつ腕を失って、むこうに特別佐官待遇として三年間ぐらい、ウ゛ァイスローゼンのハマに居たろ?人事局はその間を待命、もしくは休職と判断してる』
この時点であいつは既に予備役と同じと見なされている
『でも、大佐として向こうで頑張ってたじゃない』
『ああ、それか』
それは栗田さんが緊急避難として指示したこととなり、軍人としては彼は一切存在していない。資料的には、愛宕の艦長は戦死していても指揮をとり続けて居た事になる
『んで、だ。士官の予備役は疾病その他身体、または精神の異常により、永久服役に堪えない時服役を免ずるとあるんだ』
塚原さんは同じような負傷はしても、半年で復帰して予備役には入ってないので事情が違う
『こちらが服役に堪えないと判断したなら、すっぱり退役だ』
『で、今やめれば退職金をだせるぞ、と、あなたは言うのね』
戦略的にも、個人的にも、それがベストよね
『桂ちゃんがいれば、志摩君も受け入れたでしょうけど』
幽弥は志摩の立場を思って、目を細めるのであった
231 :長崎県人:2007/12/07(金) 09:54:33 ID:2MxH4A12O
ハワイ真珠湾・紗那
『くっ!かなり当てている筈だが・・・!』
地上配置の魚雷発射管からの攻撃をレーウ゛ァテイルの水中測音で回避し続けた一支の紗那と対馬の鈴鹿だが、未だユタのトップへの命中弾を得る事は出来ていなかった
『せめて傾いてくれりゃあ・・・』
観測は止められる。なんとか比叡と榛名に連絡をつけて、回避行動を行わせているが・・・どれだけ持たせられるだろうか
『大体、一式弾をあれだけ至近に受けて傾かないってのはどういう仕掛けだ?』
俺達は水中弾がある程度発生する距離で砲弾をぶっ放している。相手が着底しているとも考えられない。観測に肝心な高さを、いくらかなりとも得られなくなるからだ
『・・・』
一式弾に欠陥が?いや、有り得ない。九一式で出た不具合を改善したものがそれだ、距離さえ適正な物を維持していれば、水中弾は必ず出る。標的艦やってたほどの旧式戦艦であるユタの水中防御は、脆弱といってもいい。弾き返しているとは考えられない。であるならば、何故?
『なんて・・・こったいよ!』
はたと、一支は考えついた。そうだ、アレを使えば、水中弾を完全にストップさせられる。米海軍はそうしたに違いない、そうであるしか有り得ない!
232 :長崎県人:2007/12/07(金) 09:57:38 ID:2MxH4A12O
『奴らは、レキシントンをユタの盾にして沈めていやがるんだ!』
一支の叫びに、艦橋にいた全員が呻いた。そう、内南洋での決戦のあと、ダメ押しに、と、二式大艇によるハワイの石油タンクへの爆撃を行い、巻き添えの形でレキシントンを誘爆、横転させていた。その事は大々的に朝陽新聞などが取り上げていたから、兵の間にもその事はよく浸透し
トいる
『あの巨体なら、ユタの船体の全てをカヴァー出来るし、米軍がいつまでもレキシントンを給油岸壁で沈ませておく事は考えられません!』
動かす事に否やはなかった筈。そしてこれまでの敗戦で艦船に余裕の無い米海軍が、盾として船を新たに沈めることも有り得ない。それでいて、盾となる艦としての防御は、レキシントンの方がユタよりも上なのである
『で、どうするのかね、艦長』
大森中将は冷静に前を見たまま問う。このまま射撃を続けて、まぐれの一撃に賭けるか、それとも
『それは・・・!』
一支は大森が示唆したそれに行き着いて凍り付いた
『答えは、一つしかなかろう?』
あれを野放しにしておくわけにはいかない。ならば方法は一つだ。大森は、いつものように穏やかに言い切った
『真珠湾内に我が戦隊は突入し、目標を撃破する』
233 :長崎県人:2007/12/07(金) 10:00:13 ID:2MxH4A12O
ハワイ・潜水艦岸壁
米潜水艦の損耗率は開戦からうなぎ登りであり、太平洋艦隊司令部の近くにあるこの広大な潜水艦基地は、あまりに広すぎる物となっていた。故に、玉黍作戦によってパルミラ島とミッドウェイが日本の空挺部隊に占領されて以来、防衛戦力の底上げにと、水雷艇部隊が同居していた
『魚雷は定数の半分あればいい!早く持って行ってやるんだ!』
しかし、実際に日本軍のハワイ攻略が行われている現在、悪天候の為に魚雷艇は使用不可能である。だが、湾内であれば問題ない。地上設置の発射管が、紗那と鈴鹿の絶妙な回避によって魚雷の不足に陥った時、魚雷の運搬を担ったのが彼等だった
『ケネディ少尉!先程出ていったC班が帰ってきません!』
しかし、その結果として黒姫と音羽から行われた制圧射撃で、消息を断ってしまう魚雷艇の班が多くなっていた
『ジョン、これ以上はまずい!戦力を維持できなくなる!』
『くっ』
さすがにそれは、部隊指揮官ではないジョンには出来ない相談だ。少しずつであるが、天候も落ち着きつつある現状ならなおさらだ
『だが、ここから持っていく事が出来なくなったら、ユタがやられてしまうぞ!?』
レキシントンの盾があるとて、どうなるか
234 :長崎県人:2007/12/07(金) 10:03:29 ID:2MxH4A12O
日本側ばかりでなく、米側もかなり追い込まれている状態であった。まさに、こちらが苦しい時は、あちらも苦しい、だった
『味方の艦隊が届けば・・・!』
『もうすぐ夜が明けます!そうなれば、航空機が!』
まさに八方塞がりだ。そんな時、彼等は現れた
『ケネディ少尉!敵艦が真珠湾内に!』
紗那と鈴鹿による、湾内突入が行われたのである
『・・・俺達が、本来の目的で働けるのは、ここしかない!準備しよう!出撃だ!』
そして間を置かれることなく、命令は下された
湾内に突入せし敵艦を撃沈せよ!
数をいくらか減らしたPTボートが、勇ましく岸壁から離れていく。それを司令部から、愛おしそうに見つめる影があった
『ハルゼー長官!脱出用の高速艇の乗員を流用しましたね!』
その影に叱咤の声がかけられた
『ブローニング、俺はあれだ、進退窮まった時に、ジャップどもの言うハラキリをやる以外に、もうこの場じゃする事は何もねぇ。戦える奴に戦える力を与えただけだぜ』
若いのはガッツがあって良い。それに、自分の脱出の為に遊んでいていい兵なんて不愉快なだけだ。ブローニングの気遣いには感謝するがな
『閣下は合衆国にとって、失われてはならないお人です!』
235 :長崎県人:2007/12/07(金) 10:06:10 ID:2MxH4A12O
ブローニングの言葉に、ハルゼーは首を横に振った
『失われてはならんのは、あいつらのような合衆国の息子達(マイサンズ)だ。この俺の代わりなんぞ、いくらでもおるわ』
ハルゼーは、くっくっく、と笑った
『そしてブローニング。俺はまだタオルを投げる気なんて一つもねぇぜ』
魚雷艇の奴らに人員を回す際、ハルゼーは彼等に一つだけ条件をつけた。水道での敵艦沈没だけは、絶対にするな、と。なぜなら、俺達が何とか踏ん張った後での、本国からの補給は港が使えなければならないからだ
『スコットが敵主力をハワイからかなり離した。暫くは戻って来れない』
ハルゼーは拳をにぎりしめた。モンタナ発の通信にはこうあった
我が艦隊は、優勢なる敵艦隊と遭遇し、その任を果たしつつあり。我、航行不能なるも、戦闘に支障なし。全弾薬の尽きるまで、戦い続ける事を誓う。ウィル、後を頼む
『《彼女》がやってくる。そうなれば、ジャップの奴らは退却するしかない』
スコットは、もう生きてはいないだろう。でなければ、あいつは後を頼むなぞ言いやしない。勝つ為には、ユタの観測と彼女を揃えていなければ
『頼み事は果たさなきゃならんのだ!』
先に逝ったハズとスコットの為にも
236 :長崎県人:2007/12/07(金) 10:09:39 ID:2MxH4A12O
第三艦隊・加賀
『夜が明けるか・・・』
小沢は長年の経験から、夜が明ける雰囲気を、感覚的に掴んでいた
『長官、よろしいですか?』
樋端が電信綴りの束を持って現れた
『なんだ?宇垣君からは敵艦隊の殆どを沈めたと聞いたが。黛君のところも、追撃をやめて、引き戻しに入っている。ハワイもだいぶ混乱しているが、後少しで第五戦隊が到着するから、押し戻せるだろう。なにか問題か?』
たとえ、第四戦隊の戦艦が全部沈んでも、第九戦隊が観測点潰しをしているからには、いずれ制圧されることは間違いない。トリックを暴かれた秘密兵器は敗れ去っていくだけだ
『いえ、敵の電波を探っていたら、気になる事がありまして、是非お耳に』
『聞こう』
小沢は樋端に向き直った
『はい。我々帝國海軍は、転移する前から情報船をだし、米太平洋艦隊の各艦の出す電波の癖を拾ってきました。これは大和田を始め、欧州から帰還してきた艦隊もそれを行っています。』
どちらかと言うと、我が海軍は暗号解読よりも、直接的に位置がつかめるこれを重視してきた
『各艦隊が接敵した敵戦艦の数は、報告とあっとります。ただこちらの超甲巡相当は、我々に敗北した機動部隊について帰還中の筈でした』
237 :長崎県人:2007/12/07(金) 10:12:48 ID:2MxH4A12O
敵機動部隊から敵の超甲巡を示す電波は、確かに発信されていた、が
『一度だけ、ハワイ南方で潜水艦らしい発信があったのですが、その電信の癖が』
みなまでいわずとも、小沢は理解した。奴らはあらゆる手を使ってくる
『我々が掴んでいた、超甲巡の電信員の癖と同じ、といいたいわけだな?で、本物の敵超甲巡は、ハワイ南方にいる。そして、我々の艦隊が離れている内に、要塞砲とで挟み撃ちか』
樋端が頷いた。おそらくは、黛君の仕留めたアイオワ級二隻が本命だったのだろうが、超甲巡だけでも突っ込んでくるとは、良い度胸だ
『例の要塞砲沈黙に手間どると、いくら第五戦隊で相手できるといえども、少々重荷です。ですから』
『我が艦隊から、いくらか攻撃隊を割こうと言うわけだな。しかし・・・』
夜明けと同時の地上支援の為、既に攻撃機には陸用爆弾を積み込んでいる
『戦闘機だけお貸しください。制空権を取った今、複数機による機銃掃射は可能です。そうしたならば、指揮所の観測窓等は破壊出来る可能性が高まります。それに、攻撃機では夜間発進ですし、今すぐには出せませんから』
『わかった、許可する。好きにしたまえ』
そこまで考えてるならよし、と小沢は樋端に指揮を任せた
238 :長崎県人:2007/12/07(金) 10:21:46 ID:2MxH4A12O
これで抑え切った。米海軍は、空襲時を始めとして、確認されている分全ての大型艦を、真珠湾に突入させる事に失敗する事になろう
『今現在確認が取れているだけでも、空母十二隻、戦艦が七隻、人的損害は二万人は堅い』
集計が追い付いていないが、重巡以下の損害も、五千が失われているのが、堅い所だと思われる。内南洋決戦と同規模以上の損失は、米海軍そのものの本質を失わせていくだろう。これに我々がハワイの地歩を確保した事が加われば、合衆国は大きく揺れる事は間違いない。その時こそ講
aの道筋が・・・
『本艦の陣風隊、発艦します!』
物思いにふけっていた小沢の意識は、艦を斜めに発艦していく陣風の爆音に引き戻された。その時である
『・・・っ!?』
ぞくり、と悪寒が走った。何かに狙われている。いや、見られているような感覚
『なにか、見落としでもあるというのか?』
言い知れない不安が走る。何故だ。味方の報告は米海軍の編成通りだった筈だ。あれでも米海軍は無理を押しての出撃で、これ以上の艦艇は絶対に存在し得ない
『だが・・・なんだ、この不安は』
偵察機を出すべきか・・・利根と筑摩は手元にある
『・・・』
小沢の軍人としての感は、出せといっている
239 :長崎県人:2007/12/07(金) 10:25:40 ID:2MxH4A12O
しかし第三艦隊は現在、ハワイ北西の海域に位置しており。偵察機を放っても、ハワイ展開の上陸部隊を誤認してしまう可能性は高い
『樋端!ハワイ南方に偵察機は出せるか!?今すぐだ!』
小沢は、何か手はないかと、樋端を怒鳴る
『どうかされましたか?そう、ですね・・・』
ハワイの部隊は戦闘中、宇垣さんは遠いし、現在戦闘隊列を再編中だ。白根級の二隻はハワイに急行させているし、黛さんとこの伊勢は改装で設備が無くなっている
『無理ですね、現状では。しかし、電信情報や、敵情を鑑みれば・・・』
樋端の話を、小沢は途中から聞いていなかった
『くっ!』
穴だ。ぽっかりと戦域に穴が開いている。そしてそこは、なにもかもを飲み込んでしまいそうな程、暗い
『長官、南方の敵艦隊は、第五戦隊で対処できると考えますが』
『敵がその通りの編成だったらな』
小沢の中では、敵艦隊の規模がそうではないと、既に確定事項だった
『GF長官として、この艦隊を最大脅威として指定する。黛大佐旗下の警戒隊は単艦でも最短距離でハワイまで戻られたし!本艦隊の利根と筑摩も、全速力でハワイへ向かわせる!』
しかし、これで間に合うかどうか・・・
『戦いはまだ終わっちゃいない!』
240 :長崎県人:2007/12/07(金) 11:18:55 ID:2MxH4A12O
ハワイ・南方海上
聯合艦隊が想像だにしなかった艦隊が、ここには存在していた
『米艦隊、合流しまぁす!』
『よろしい、これでキュイラッセ(戦艦)が三隻になった』
戦艦が合計三隻、巡洋艦が八隻、駆逐艦は十六隻。パイプをくゆらせたエミール・ミュゼリエ中将はにんまりと笑みを浮かべた。二十七隻、十分な戦力だ
『ラ・ピュセルに乗る閣下もよろこぶな』
自由フランス海軍・戦艦リシュリュー
彼女が太平洋のここに居るのには、様々な要因があったが、大きな理由は二つ。米海軍の深刻な戦艦不足。そして、ヴィシーフランス政府がイタリアと共に、イギリス側に寝返った事である。足場を失ったドゴールは、イギリスから軽巡ジャンヌダルクでアメリカに自由フランスの本拠を
レした。自由フランスとヴィシーフランス、どちらもドイツと戦うとなっても、別れた道は大きかったのだ。おりしも、米海軍は戦艦不足に喘いでおり、リシュリューは喉から手がでるほど欲しい存在だった
『今後、私を首魁とし、フランス復興に優意な資金援助と物資を与える約束の元ならば』
そういってドゴールはルーズベルトにリシュリューを差し出し、その成果を元にフランス本土に返り咲こうとしたのだ
241 :長崎県人:2007/12/07(金) 11:30:26 ID:2MxH4A12O
『我々が本国に帰るために、日本人どもにはいけにえになってもらう』
自由フランス海軍の将兵にとって、今さらヴィシーフランス海軍に、何も手土産無しで戻ったてしても先は無いのだ。大体、ミュゼリエ自身が、ヴィシーフランス海軍の長官をやっているダルラン大将に左遷させられていたのだから、なおさら戻れるわけがない
彼等には手土産として、なんらかの戦果が必要とされた
渡りに船だったのだ。幸いにヴィシーフランス海軍の一部は、欧州に出現した日本艦隊に付き添っていた事もあり、日本人どもはフランスを一くくりに味方だと思っている節もある。これを利用しない手は無い
『そして我々の行動は隠匿された。ありがとう米海軍の諸君、そしてさようなら、米海軍の諸君』
内南洋決戦に敗れて以降。練度に劣る米海軍が、自身の戦力の殆どを囮にして、練度の高い我々を突入戦力の隠し玉としない訳がなかった。舞台は思う通りに整えられた
ミュゼリエは目を閉じる。後は征くのみ、彼は手を掲げ、旗下の艦艇に命じた
『全艦、槍の穂先をあわせよ!目標、日本輸送船団!蹂躙せよ!繰り返す、蹂躙せよ!』
ハワイを巡る五回の海戦、その最後の海戦の幕が、開かれようとしていた
251 :長崎県人:2007/12/13(木) 23:30:14 ID:2MxH4A12O
その頃、ホワイトハウス
『かっ、海軍はなにをしているのか!』
白亜の館の主は、海軍からの途中報告に激怒していた
『勝つ為の戦いをしております』
冷や汗を垂らしまくる海軍長官のノックスをよそに、キングは淡々と言ってのけた
『何故ここまで被害をうけたのか聞いているんだ!』
ルーズベルトは金切り声をあげる
『これほどの被害は指揮官であったタワーズにあると思われますがね』
ちらりと冷酷な目でノックスを一瞥する。任命責任はあんただと言わんばかりに
『それでもフランス海軍と、我が海軍の合同艦隊がハワイの輸送船団を撃滅したならば、我々のハワイ防衛は成功したも同然です・・・被害は内南洋の時と同じようにずらして発表していればいい。幸い、戦果もありますからな。タワーズの過大報告でもね』
少なくともネタはある。ハワイさえ守ればなんとか
『ぐぅううっ、わかった。ただし、必ず勝ちなさい!いいね!』
ルーズベルトは、マイネイウ゛ィーと海軍を呼ぶ程海軍を愛していたが、それが憎悪に変わりかけていた。しかし、キングの言う通りなのでそれしか言えない
『先程も言いましたが、最終的に勝つ為に我々海軍は動いております』
政権は倒れるかもしれんがな
252 :長崎県人:2007/12/13(木) 23:35:03 ID:2MxH4A12O
『君は・・・この政権がなくなれば、君の首も飛ぶんだぞ!』
最終的に、というのに、ノックスが噛み付いて来た
『私はこの作戦に、余り関わっておりませんからな』
タワーズ閥とキング閥の争いはここまで来ていた。のちに米海軍は、仲間内で戦い、片手間で帝國海軍と戦っていたと言われるだけはある
『閣下』
キングとノックスが口論になったのに頭を抱えるルーズベルトに、マーシャル陸軍長官が耳元で囁く
『デューイが暗号について気付いた節があります。そして国務長官のノートの中味にも』
『なんだと!』
日本の外交暗号を解いていた事を知っているということは、日本がどの程度譲歩を示していたか、そしてそれを上回る形でハルノートを出した事が公に知れてしまう!
『しかし、奴らがワシントン海軍軍縮条約を破っていたことは明白ではないか!』
それでキンメルが負けたのがケチのつきはじめだった
『関係ありません。援蒋ルートへの援助、フライングタイガース。この政権回りのチャイナロビー。我々が意識的に挑発を行っていたから日本は軍備を増強したと、ある事ない事書き立ててくるでしょう。ある程度真実であるのも問題です』
それに加えて、先に内南洋を掠め取ったのは我々だ
253 :長崎県人:2007/12/13(木) 23:38:09 ID:2MxH4A12O
『我々は、もっと言を重ねるべきではなかったのか?そうデューイ候補はぶちあげるつもりです』
今更な事をデューイは・・・何を言っているんだ
『今は戦時だぞ!』
『ヨーロッパはヴィシーフランスとイタリアの寝返りで、我々と関係なく巻き返しております。ナチスは敗れつつあるんです。そして懲罰戦争である対日戦は、貴方が命じた捏造の戦果で、被害はあったがお仕置きは成し遂げつつあり、もういいんじゃないか?そう市民感情は移りつつあ
驍です』
ルーズベルトはまた頭を抱えた。おそらくデューイは、こちらが負け続けで、大損害を受けていることまでは知らない。だから言を重ねるなんて事が言えるんだ。そして市民に、日本と講和して夫や息子、恋人を戻すというのを強みにして選挙に勝つつもりなのだ。それに否を言えば理由
問われる。それに自分は答えることは出来ない
『勝つしかないのだな?』
本当に勝っていれば、挑発の部分を、日本の罪状を滔々と謡いつつ、講和してやる、と出来たろう(勝っていればデューイを説得して、合衆国に不利益な、日本に挑発していた事を闇に葬る事も出来たかもしれない。彼は彼で愛国者であるから)しかし、負けている今現在、そんな事をし
スら・・・
254 :名無し三等陸士@F世界:2007/12/13(木) 23:38:12 ID:xsS49mlo0
支援砲火を久々に
255 :長崎県人:2007/12/13(木) 23:44:33 ID:2MxH4A12O
選挙に負けるどころじゃない事になる。一体合衆国がどうなるか、見当もつかない
『どうすればいい、マーシャル』
すがるようにルーズベルトは問うた
『それは・・・』
事実を隠したまま選挙をしてもルーズベルトは負ける。公表したらルーズベルトは確実に弾劾裁判送りで、状況によっては合衆国自体どうなるかわからない・・・一番良いのは隠したまま選挙、あるいは早急に日本に勝利することだが、どうみても無理だ
ジリリリリリリン!
ルーズベルトの傍らの電話機が鳴る
『私だ』
受話器の向こうにいたのは、ハリー・ホプキンスだった。彼は腹心として、合衆国の現状を知っている
『閣下、この時局に対し、聞いていただきたい話があります・・・ただ、十分に気をつけてください。彼は、危険な人間です』
『今、一応は陸海軍の報告の最中なのだが・・・ハリー、一体誰と私は話すんだ?』
『・・・代わります』
電話の回線が入れ代わる音がすると、しわがれた声が聞こえてくる
『はじめまして大統領閣下。私はイゴール・ギルバートと申しまして、かつてアーカム大学で教鞭をとっておりました。ヒッヒッヒ』
教授・・・1899年の復讐者が、歴史の表舞台に踊り出た瞬間だった
256 :長崎県人:2007/12/13(木) 23:47:24 ID:2MxH4A12O
同時刻・秋田県、黒又山
『まったく!こんな時期にこんな場所に呼び出しよってからに!』
『時期が重要なのですよ、辻閣下』
朝鮮半島での一件以来、矢鹿は辻の信任を得ていた
『もうすぐ到着します』
夏の夜に鬱蒼と繁っている林に、突然広場が現れた。そこには既にダークエルフの兵が居て、なにかの作業・・・石積み?を行っていた
『半島でのようなことは困るぞ、災害派遣で忙しかったからな』
一抹の不安を覚えた辻が、苦言をていす
『なに、半島はなにもかも中途半端でしたから』
半端なマリス解放と、半端な復活。まぁ、あれがあったからこそ、国内で護りが手薄なここを見つけだし、奪取するだけ(聖地として護っていたマタギの集落を、皆殺しにして二つ程燃やした)ですんだのだが
『しかしなんだ、こんな奇妙なものが、皇国日本にあるとは』
『イギリスにもあります、ストーンヘンジと言いますが。つまるところ、世界を支配する国は決められていたということです』
辻はその言葉ににんまりとした
『大英帝国に代わり、神国日本が世界を統べるのは運命、という事か』
『さぁ、その引き金をうつのは辻閣下、貴方です』
矢鹿は、コンソールらしき装置のついた場所へと辻を誘う
257 :長崎県人:2007/12/13(木) 23:51:38 ID:2MxH4A12O
『やり方は、覚えておられますね』
『当たり前だ、わしを誰だと思うておる!』
辻はやる気満々でコンソールにとりつく。やり方は朝鮮で《覚えさせていた》から、問題無い。それでも操作には集中を要する
『では閣下』
夢中になっている辻をよそに、矢鹿は下がる。そして、辻から見えなくなったあたりから必死に走りだす。山の麓に、和潔が木野瀬と共にカ号で待っている
『ひっ、ふっ、ハハハハハハハ!』
大変な、大変な事になる。日本の皇室は、古代を除いてマリスを自然な形で封じることを目としていた。あるいはキリスト教の連中のように制御して力を利用する(だからローマは朝鮮のようにならなかった)ことも可能なのだろうが、ここには本土に蝦夷が屈服して以来使われていない
カのマリスが貯まっている
『アーッヒャッハハハ!!!』
高千穂で姶良、あるいは阿蘇のカルデラを造った連中が天孫降臨してきたと考えるならば、その威力は・・・!あの愚か者にはそこまでの力は無かろうが、大変な事になる。大変な事になるぞぉーっ!!!
1943年7月4日早朝
十和田湖周辺火山域に於ける破滅的噴火が発生、巨大な爆発発生、秋田・青森・岩手の山間部壊滅。記録には、そう残されている
258 :長崎県人:2007/12/13(木) 23:56:04 ID:2MxH4A12O
同時刻・モスクワ
『は、ははっ・・・』
死人どもの攻勢にさらされ、再び陥落寸前に陥ったクレムリンで、一発の乾いた銃声が響いたのは必然だったのかもしれない。倒れているのは、ヨシフ・スターリン。薄く硝煙をあげる銃をもって、呆然と笑うのはベリヤ、NKVD長官だった
10分程時を遡る
『将軍どもは何をしている!後退したものは銃殺だ!例外は許さん!』
死人を含めると600万を越えるドイツ軍を、ワルシャワ前面で崩壊したソ連軍は支え切れず、一年の年月を経て、モスクワに追い込まれていた
『閣下!死人が生き返るのです!今は人間を大事に扱わねば、敵を増やすだけです!』
その当時、現状を正確に認識していたジューコフは、スターリンにこう直訴した。しかし、スターリンは死人が生き返るなぞ有り得ぬ、と、敗戦の責任と利敵行為、及び精神錯乱で銃殺してしまう。これで、誰も真実をスターリンに告げることは出来なくなっていた
『敵の数が多かれば、人民をさらに供給するのみだ!』
敵の弾数より多くの人民を送る。それがソ連のやり方だった
『同志、市街にドイツ軍が入りました。ここは危険です。移動の御準備を』
ベリヤは、ただそれを告げにきた。それだけだった
259 :長崎県人:2007/12/13(木) 23:59:03 ID:2MxH4A12O
ベリヤは、政治委員の報告や、捕虜として連れて来られた死人を見ているので、現状の理解はしていた。しかし、迂闊に言い出せば、やはり自分もジューコフの二の舞になると恐怖し、それをスターリンに報告していなかった
『ええい!何故将軍どもは私の命令を聞かないのだ!貴様の部下の政治委員どもは何をしている!』
『はっ、まこともっておっしゃる通り。このベリヤ、政治委員を二倍に増やそうと存じ上げます』
激怒状態のスターリンには、そうとでも言うしか無い
『貴様が甘やかすから将軍どもは後退するのだ!』
『はっ!私めの努力が足りませんでした』
ただただベリヤは平伏する
『つまりは、モスクワ失陥は貴公の責任というわけだ』
『へ?』
スターリンは、ベリヤが脱出するための護身用として持って来ていた拳銃を構えていた
殺される!
その行為は、小心者で、彼の恐怖に怯え、かつ、武器を持っている彼にすべき行為ではなかった
気付けば、スターリンは倒れ、自分の手には拳銃が握られていた
『閣下!スターリン閣下!ベリヤ閣下!どうされました!』
警護に付くはずだった者達が、銃声を聞き付け駆け寄ってくる。ベリヤの耳には、その足音がやけに大きく聞こえた