32 名前:長崎県人(こんなのどう?) 投稿日: 2006/05/27(土) 11:05:17 [ qolO/Z6Q ]
自衛隊ではないですが
午前五時、浦賀水道沖・パナマ船籍貨物船エンパイアホープ
『今日の霧は濃い、対行船に注意せよ、見張りを増やす』
『くそっ!船長、こりゃガラクタをつかまされたみたいで、レーダーにノイズが入ってろくに使えやしない!』
『おいおい、ちゃんと内装品は日本製だぞ?がわは韓国製だが』
『船長!!ぜ、前方に通達のない大型艦!!軍艦です!!ぶつかる!』
『な、なにぃ!?取り舵!!』
エンパイアホープをぎりぎりかわし212Mの巨体がが横切っていく、マストには四分割された白い旗、その左上部分に旭日旗
『何なんだこいつらは!?』
午前六時、首相官邸
『いやぁ楽しみだね、エアフォースワン、乗ってみたかったんだ』
『閣下、緊急事態です』『また北でも燃料注入でも始めたか?』
『浦賀水道に国籍不明の大型艦を含む艦船が複数北上中です』
『どういうことですか、横須賀の在日米軍ではないのか?』
『在日米軍も現在混乱しております、問い合わせたところ一艦も水上艦艇は出していないそうです、信頼できる筋からも米艦が動いた形跡はありません』
『!!・・・全閣僚を呼びなさい』
テレビをつける
『ご覧下さい戦艦です、信じられません!』
34 名前:長崎県人 投稿日: 2006/05/27(土) 11:32:49 [ fIFx11L2 ]
『報道各局に報道管制をひけ!今すぐだ!相手は軍艦なんだぞ!』
『はっ』
ドン・ドン・ドン・ドン
『射撃です!国籍不明艦が我々のヘリに向かって射撃を・・・!』
『威嚇だ馬鹿者!早く退かんか!』
テレビに噛り付く
『あ、ただいま政府より報道管制がヘリに撤収命令が』
『よしよーし・・・最悪の事態h』
『テレビ朝陽は最後に大型艦のブリッジにできるだけ近づいてアップをお茶の間の皆様にお届けしようと』
『なにをしている、よせ!』
『こ、こちらに何やら箱のようなものが向きました、また威嚇でしょうか!あ、撃ちました!やばい!逃げろ!つ、追尾してくる、うわぁ!!!』
別の局に変えると朝陽のヘリは物の見事に打ち抜かれ炎上し海面に墜落した
『閣僚を・・・ええい!とにもかくにも防衛庁長官はまだか!!!』
38 名前:長崎県人(じゃあこれからちみっとずつ投下しますね) 投稿日: 2006/05/27(土) 22:41:31 [ fIFx11L2 ]
『・・・報道から二時間で集まったか、思ったより早かったかな?国民の反応はどうだ?』
『警察庁から言わせてもらいますと、現状はあまりに現実みがなさ過ぎて国民にパニック等はおこっていません。』
警察庁長官が答える
『皆にはまだ説明しておらんが自衛隊の出動を要請させてもらった』
『当然です』
外務大臣が頷く、彼でなかったら真っ先に顔色を変えたことだろう
『現在即応体制あった護衛艦二隻、たかなみとおおなみからなる第五護衛隊が出航しつつあります、順次準備が出来次第、第一護衛艦隊は全艦を持って東京湾に阻止線を張ります、ほかに陸自の練馬第一師団が海ほたる他、東京湾横断道路に展開予定です、空自他の航空機は厚木・百里・
O沢基地等で待機中となっております』
防衛庁長官の言葉に法務大臣が血相を変える
『超法規的行為です!閣議も審議もなく!!』
『すでに国民が死んでいるのです、大臣。』
『官房長官・・・しかし!!』
『海上保安庁からは横浜から、しきしまとやしまをはじめ関東各地から召集予定です』
『どこもかしこも・・・拡大したいのですかあなた方は!内閣は吹っ飛びますぞ!』
『大いに結構、どうせ終わる内閣だよ法務大臣』
『そんな・・・』
39 名前:長崎県人 投稿日: 2006/05/27(土) 22:50:23 [ vmEEgS4w ]
『運輸大臣としては・・・出動には全面的に賛成します、東京湾に存在する船舶への誘導が必要ですから』
手を上げる
『撃墜されたヘリの乗員家族にに対しての保障はどうしたら・・・』
頭を抱える厚生大臣
『早期解決をしていただかないと株価が・・・株価が・・・』
同じく頭を抱える財務大臣
『まぁみんな聞いてくれ、彼等は実際に存在するんだ、東京が1000万都市である以上、海輸ができなければそれは則ち都市機能の壊滅を意味する、それはここに居る皆にとって痛い話だ。退陣前にいい仕事をしようじゃないか、みんな』
『まずは交渉ラインを築く事、ですね』
『ああ、その通りだ官房長官』
頷く首相
『では先方にここは外務大臣の私が直接出向きましょう・・・それで米国とは・・・』
外務大臣と外務大臣の目が合う次期首相を争う二人だ、良い刺激になるだろう
『うむ、米国は私がホットラインで話してみよう。それから宮内省は・・・』
『我等の仕事をします、陛下の委任状ですね』
『助かる。さぁ、それぞれの仕事場にもどろうじゃないか。やれると信じてやろう、無信不立だよ。みんな』
52 名前:長崎県人 投稿日: 2006/05/30(火) 15:48:24 [ dqay7chg ]
神殿を思わせる広い空間、単従陣のまま浦賀水道に居座る艦隊の旗艦はその三番目に位置する龍壌である・・・この国の軍艦は全て帝国から譲渡されたものだ
『リンクTなんとか通じます』
『よし、風精霊情報収集機構、再起動!』
司令官の女性らしさのある凛とした声が元は格納庫だったそこに響く、艦載機の大型化により艦隊型軽空母はその役割を終え、情報統制指揮艦となっているのだ
『このような不可思議な事が起こってもタワーは無事か・・・』
タワーに関してはいい感情は無い、Tリンクシステムもしくは・・・Tアイズ、帝国はこれに直接関わるものを我々原住の人間に丸投げしている
タワー、我々が彼等がいう一次大戦時の技術力を保持し世界を圧していたが、その源となるもの、それは繁栄の象徴だった
ある日帝国が現れ。我々を圧倒的な力で押しのけ制圧した際、タワーに突入した陸軍大佐がタワー内に取り込まれてからは隷属の象徴と化した
帝国は優しく、かつよい支配者であったが、これだけは許せない
タワーと繋がるものは、つまり魔力を扱うもの全てが取り込まれたその陸軍大佐・・・つまりは精神で辻政信と繋がらなければならないのだから
『引き続き他の機構の回復急そげ!』
57 名前:長崎県人 投稿日: 2006/05/31(水) 23:57:09 [ PX2g/hVY ]
皆はもう疑問点にお気づきだろうか?帝国配下に併呑されたとはいえかつて攻撃した国に、何故、武器を旧式とはいえ与えるのか?その国はその世界のスーパーパワーだった、なら、何故か、と?
『境界線震動!!!やつらです!!』
『しまった!!近頃は全くないので忘れていた!全艦急速前進!東京湾に進路を取れ!!』
にわかに空が曇り渦をまく、それは第五護衛隊にも観測できた
第五護衛隊たかなみ
『なんだ?前進してくるぞ!』
発光信号は発砲と間違えられる可能性があるのと格の問題から奉書と第一護衛艦隊の旗艦に外務大臣が来るのを接触せずに待っていたのだ
『おおなみより通信です!』
『・・・代わった、やるか?』
『やるしかあるまい、首都圏を主砲の射程内には入れさせるわけにはいかない、閉塞だけでもまずいがそれ異常にだ』
『しかしあれ、三万トンだろ?二隻で一万ないんだぜ、無茶だな。』
『好きな癖に。ま、対艦戦闘に強化した我々がなんとかしてやらにゃ、な』
一応、たかなみ型はむらさめ型に比べ水上打撃戦闘を強化してある
『右から俺達の艦が行く』
『左だな』
通信を切る、ふたりの艦長の鳩首会談は終わった
『戦艦と護衛艦のおしくらまんじゅうだ』
58 名前:長崎県人 投稿日: 2006/06/01(木) 04:11:47 [ 9TlQkVJc ]
情報統制指揮艦龍壌
『扶桑前面に展開していた軍艦二隻!左右に併走して・・・何する気だ!?ぶつかる!扶桑と二艦衝突しました!』
モニターを見ていたオペレーターが絶叫する
『最大限の好意ね、首都に向かう正体不明の武装艦、あっちも軍人がいるわ!でも・・・扶桑はそのまま巨体で押しかえして前進なさい!』
こんな狭い所で戦っては、流れ弾がどこに飛ぶかわからない
『Tシステムは!?』
下手すると邪魔をする物に勝手に照準をしかねない
『いえ、どうやらなにかに困惑気味らしく、かなりおとなしいです』
『不幸中の幸いね』
下手に敵は作りたくない
『境界層の悪魔!!!出現します!!大型が一体!!』
『なら戦艦の主砲が必要ね、ますます、東京湾に進入しなければ・・・ええぃ!』
まだ二隻は扶桑に張り付いている、艦隊速力を抑えねばならない
『そこをどけぇっ!』
第五護衛隊たかなみ
『な、なんだありゃあ・・・』
茶色系の色をしたその姿形はまるで
『キング・・・◯ドラ・・・?』
『あんな物が重力に負けず存在できるのか!?』
浦賀水道を抜けてすぐの千葉側に着水し水柱をあげる
『総員戦闘配置!!!』
65 名前:長崎県人(すいません、遅くなったのでこそーり) 投稿日: 2006/06/14(水) 21:02:27 [ fIFx11L2 ]
『長官!境界層の悪魔に巨大熱現反応!』
モニターを監視していた要員が叫ぶ
『いけないわ!神罰の雷光が来る!まだ扶桑から二艦は離れないの!?最悪撃沈も許可します、リングを展開できなければこの辺りは焼き尽くされてしまう』
大型の境界層の悪魔なんて帝国が転移してしばらくしかでなかったし、殆ど対応したのが私の軍人として一世代前の人達だったし、彼等は帝国との一戦でほぼ、全滅してしまったから
帝国も最初は軽く見て、第六戦隊の今うちの国にある青葉を除く全艦が消し飛ばされてからこちらの世界にあった対応法を叩き込んだんだっけ
『第一駆逐隊、第二駆逐隊前に出ます!!』
『無茶よ!基点となる艦が重巡以上の出力と装甲がなきゃ!呼び戻しなさい!本艦隊でシールドを張ります!』
『・・・もうすでに通信を全て切られました』
『なんてこと・・・』
護衛艦たかなみ
『流石戦艦、重い。しかし、あれは一体何をしているんだ?』
『艦長!モニタリングしていた赤外線センサーが飛びました!!』
エセギドラの胸部が直視できないほど光っている
『所属不明艦隊バラけました!駆逐艦クラス六隻、我々を抜けて前に出ます!』
『えぇい!誰か状況を説明しろ!!』
66 名前:長崎県人 投稿日: 2006/06/14(水) 22:12:33 [ KRpK8t7E ]
『駆逐艦、脇を抜けます』
むこうの艦橋で艦長らしき人影が敬礼をしている『な、なんだ』
エセギドラが一瞬の強い光を放つ
『うわっ!?』
目をつぶる・・・そして目を開けても光球はまだ空中を進んでいる
『しまった!直撃する!』
回避できない、しかし最初から見ていても回避できなかっただろう、航空機なら話は別だが
『ダメだ・・・』
弓なりに展開した駆逐艦六隻の周囲が薄く光る、すると命中間近で光球は弾かれ上空へと消えていく、ただ、近過ぎたのか、熱量で駆逐艦のマストがぐにゃりと折れ、搭載爆薬が有爆し波間に次々と沈んでいく
『こ、これは・・・』
熱量からして生き残れまい・・・彼等はこれを防ぐために
情報統制指揮官龍譲
『白露・・・時雨・・・村雨・・・夕立・・・春雨・・・五月雨、全艦、沈黙・・・ううっ』
オペレーターが涙を堪えて報告する
『あの、大馬鹿どもがぁあああああっ』
うつむき海図机を叩く
『衝突艦、離れます!主砲、撃てます』
『・・・六艦の・・・犠牲を無駄にするな!!!扶桑、山城!!主砲統制射撃!テェー!!!』
一撃は放たれた
72 名前:長崎県人(今日はこれで勘弁してm(__)m) 投稿日: 2006/07/20(木) 22:56:44 [ 25Xn9yoU ]
音速の壁を引き裂き二艦の砲弾がエセギドラへと叩き込まれる、しかしいくらかは、着弾の前にエセギドラの首の回りに生じた歪みに吸い込まれ、砲弾が消えてしまっていた。
この相手の問題点は、常に敵の首等に生じる空間の歪み以上の弾数をなるべく多方向から同時に送り込まなければならない、ということ。
その為に戦艦が必要とされているのだ
情報指揮統制艦・龍醸
『やったか・・・!』
残った砲弾が着弾し爆炎がエセギドラを包む
ザーッザザッ・・・ザーッ!!!
テレビ画面の砂嵐のような彼等の断末魔の音を残してそれは消えていった
『戦闘終了・・・どうしたもんかしらね』
失われた僚艦、この世界の軍艦も扶桑とやり合って舷側が大いに凹んでいる、そして境界層の悪魔
『ダメ・・・私じゃ説明しきれそうにないわ』
『司令。』
オペレーターが申し訳なさそうに言い出す
『なに?』
『帝國の艦の通信が入ってます、出られますか?』
『帝國艦もこちらに来たの!?艦籍をモニターに』
『IJNーABBー01と02の二艦です』
あの伊勢クラスが来たって言うの!?
『所在は!?』
オペレーターにわかるはずがない、こちらの地図もないのだから
『雷神と風神が・・・』
97 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/16(土) 01:58:07 [ hxY6CuZ2 ]
29.22
それはまた突然、何の前触れも無く起こった・・・帝國は元の世界に戻されたのだ。先に挙げた数字は誤差である。帝國の異世界での八年が元の世界に於いては29.22日しか経っていなかった
1941年12月18日、この日に帝國は帰ってきたのだ
世界は激変していた
日本及び、日本人が消えたことはグァムやフィリピンの米軍等により確認された。今後残された日本領をどうするか、連合国が協議する直前にこれである。
米英はその異変を探るより、転移前の如く態度を硬化させた。英国としては欧州戦線の為にも米の参戦に全ての政治的能力を傾けていたし、米国はなんにしろ勝つ自信があったからだ。勝ったその後に帝國から空白の日々を聞き出せば良い
問題は日本にもあった
異世界の大陸などの、遠隔地にあった艦艇と人員はあろうことか地中海側、イタリアを主に転移したのだ。台湾、朝鮮、内南洋への再配備を地中海に現れた大陸で溜め込んだ資源と兵力の引き上げと共に実行しなければならない。イタリアから日本、あまりにも遠すぎる。モスクワ、ベン
Kジから撤退し、戦局不利な兆しの見え始めたドイツやイタリアと手を組むのは海軍が主導を取った日本にとって望む所では無くなっていた
98 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/16(土) 01:59:34 [ wezaJ53A ]
どうやら、前回と違ってブレが出たのは異世界人、レーヴァテイル、並びに獣人を含め配偶関係にあった諸種族も多数転移していたことに関係があるのかも知れないと言われた・・・しかし今はこの難局を乗り切る事に帝國は集中するしかなかった
帝國海軍艦艇覧(本土)
第一戦隊 大和 武蔵 紀伊 尾張
第二戦隊 長門 陸奥 伊勢 日向
第三戦隊 金剛 比叡 榛名 霧島
第四戦隊 鞍馬 白根
第五戦隊 最上 三隈 鈴谷 熊野
第六戦隊 利根 筑摩 伊吹 剣
第七戦隊第一分隊 高雄 鳥海
第八戦隊第一分隊 妙高 那智
第一航空戦隊 信濃
第二航空戦隊 瑞鶴 翔鶴
第三航空戦隊 飛龍 蒼龍
第四航空戦隊 加賀 赤城
第五航空戦隊 雲龍 天城
第六航空戦隊 葛城 笠置
第七航空戦隊 阿蘇 生駒
第八航空戦隊 隼鷹 飛鷹 龍譲
第九航空戦隊 千代田 千歳 瑞穂
第十航空戦隊 瑞鳳 祥鳳 龍鳳
第一〜第四水雷戦隊旗艦の阿賀野級四隻以下陽炎並びに夕雲、秋月、島風級48隻
根拠地隊総括艦(5500トン軽巡)7隻、海防艦並びに松級駆逐艦132隻
予備駆逐艦(吹雪〜朝潮級の駆逐艦群)32隻
建造中(戦艦2 空母1他)
99 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/16(土) 02:00:59 [ CDVnjlgM ]
帝國海軍艦艇一覧(イタリア・アドリア海に出現)
第十戦隊山城 大淀 仁淀
第七戦隊第二分隊 摩耶 愛宕
第八戦隊第二分隊 足柄 羽黒
第九戦隊 青葉 衣笠
第十一航空戦隊 大鷹 沖鷹 雲鷹
根拠地隊統括艦7隻、海防艦並びに松級駆逐艦144隻
なお、航空戦隊には各3〜4隻の秋月級駆逐艦が付く。潜水艦はイ号が本土の32隻にイタリアに14隻の転移が確認された
大陸産の石油を始め、宙に浮いた状態のリソースをイタリアが、ドイツが、この転移した艦隊を、日本を見逃すはずがなかった。三国同盟を楯に彼等は開戦を迫ってくる
両大洋で帝國は、枢軸側、連合側双方との衝突は避けられなくなっていくのであった・・・
100 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/16(土) 02:02:48 [ kXkOHBG6 ]
1942年1月、大隅海峡
『リーチ艦長、私は偉大な英国と国王陛下へ尽くす事に疑念を持ったことは一度もないが、今回は何をどう考えても馬鹿げていると、らしくもない言葉を吐きたくなる』
小柄だが、どこか優しげな顔をしていて、このイギリス東洋艦隊の兵達からは親指トムと呼ばれる彼が珍しく愚痴っている・・・しかし無理もない
『彼の国が22日の間に何があったかは知らんが、それで混乱しているこの時期に、裏口からいきなり現れるような真似をするのが紳士のやり方か?』
鹿児島への表敬訪問、日本への通達は《ちょっとした手違い》で遅れる事になっている
『鹿児島は日本海軍にとってある意味故郷のようなものです、英国の存在感を押し出すには適当な場所でしょう。呉や横須賀に突っ込めと言われないだけマシでしょう・・・あまり縁起の良い場所ではありませんが』
薩英戦争時、我がロイヤルネイヴィーが一敗地となった所である
『・・・もしもの場合もあの頃とは違い、こちらはウェールズを始め、インドミダブルも居る。逃げるだけなら、なんとかなるか・・・ますます気に食わないね』
雪辱戦も行えない・・・無論戦わずに済むのならそれで良いが
『レーダーに艦影探知!大型艦が4!』
101 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/16(土) 02:04:18 [ ibELFYCQ ]
『ああ、こちらでも見えている』
佐田岬が影になり探知が遅れたようだ
『位置からして佐世保の部隊ですかな?』
『それはわからん、ここは彼等の庭だからな・・・ナガトかムツ、イセかヒュウガでもないとこの皇太子には釣り合わぬが・・・』
フィリップスが双眼鏡を構えるとフィリップスの口角が釣り上がるのが見えた。リーチもその後につづく
『嬉しそうですね』
『そうかね?』
なんにしろ親指トムは戦艦が、いや、軍艦が大好きなのだ
『日本は我々と同じく条約を遵守してくれたみたいだな、今までと違い特徴的だが美しい艦だ、もう2隻とも揃えてるとは思わなかったが、艦形はこぶりだ、シャルン程k』
『さ、サー、トム!その2艦から目を離して右舷に目を向けてください!』
『進路妨害には巡戦タイプの艦の方が・・・どうした』
リーチの狼狽ぶりに、現れた日本艦をつぶさに観察できなかった苛立ちが萎む
『なんだ、あれは・・・!?』
この皇太子が子供に見える、形は先ほどの艦とそっくりだ
『見張り員!相手の旗を確認しろ、 相手の方が上か!それとも下か!』
見張り員も見とれてしまっている、無理もないが
『え、あ、は・・・はっ!あれは・・・中将旗です!』
『そうか』
102 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/16(土) 02:06:23 [ fIFx11L2 ]
『サー、まさか?』
『命令には鹿児島湾への進入が明記されている。相手の性能を見るよい機会だ、突破するぞ!』
ただ追い返されたとあってはお話にならない、政府が何を考えているにしても、命令は絶対だ
『相手艦から発光信号、停船せよ、繰り返しています!』
フィリップスが見張り員を指差す
『君、あとで感状を出すから許してくれたまえ、誰か彼を殴り倒せ』
『え、ええっ!?うわっ!』
一発KOだ、運ばれていく
『これで発光信号は見えなかった事にする』
『む、無茶苦茶ですな』
『リーチ艦長、擦り抜けられるか?』
フィリップスの目は本気だ
『・・・あちらの巡戦もこちら同様、幅がいささか狭いようですから、擦り抜けるならあちらの頭をこちらに向けさせて一気に』
回頭性能の違いで出来る合間を利用するしかない
『出来るんだな?』
お世辞にもこの皇太子は高練度だとは言い切れない
『日本の連中の腕がよかったならば、大変危険な事になりますが・・・』
『・・・』
政府の連中は日本と戦争したがっている。米国の参戦が第一次世界大戦の頃のように連合側有利に持ち込む最良の手だからだ
『新型艦が見れたのは、ある意味奴らにとって都合がよいことになりそうだな』
103 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/16(土) 02:08:20 [ 7Vp0wi8U ]
大和・昼戦艦橋
喧嘩っ早い水雷屋は連れていくな、と第一戦隊の第一分隊と第四戦隊だけで駆け付けたが
『英国艦隊停まりません!』
『発光信号を続けたまえ』
『宇垣司令』
参謀が心配そうに声をかける
『・・・』
わかっていると無言で頷く、戦争をここで始める訳にはいかない、再展開とイタリアに居る同朋の回収、これは戦争しながら出来ることでない
『(異世界へ転移した当初のように、今の状況で備蓄がなければまた即開戦、とまで追い込まれて居ただろうが、今は違う)』
日本にある分だけでも勝ち馬に乗れるまで引き篭れる備蓄はある。欧州の大戦が終わって政治の季節になれば、孤立したままの現在よりうまい立ち位置に、帰ってきたばかりの日本を軟着陸出来る、それが日本の願望であり選択だった
『我等の師たるロイヤルネイヴィーだ、隙を見せたら突入されると思え、各員気を抜くな。一足一挙動を見逃してはならない』
これが英国の挑発行為だということはわかっている、何らかの理由をつけて、英国は言い訳をもう用意しているはずだ、なにせ大使館他が消失したままなのだからどうでも出来る。だからこちらは苦しくとも相手が参るまで粘るしかない
『任務は違えぬ、お互いな』
104 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/16(土) 02:10:15 [ QDKBCzwM ]
同日
イタリア・ローマ
『おーう、東洋の素晴らしきつややかな黒髪と白雪のような肌、あなたにはまるで女神が宿ったようだ!』
『???』
『ちょっとそこの軽薄男!そこに直りなさい!』
ギュム(足ふんづけ)
『あうちっ!!おおぅ!嫉妬させてしまいましたか、申し訳ないでーす、しかしあなたはイタリア語が出来るようだ、聡明な貴女と共にこのローマを』
『・・・頭痛くなってきた』
イタリア男って奴は10分に一度の間隔でナンパしにくる・・・堅物な志摩がホントに貴重に思えてくるわ
『あんた、うちの夫に何されてもしらないわよ?』
『恋に立場と時期なんて!こんな所に貴女を待ちぼうけにするようなつまらない夫などほっといt』
訂正、私に何されてもしらないわよ
数分後
『あの・・・桂さん、噴水に垂直で人を突き刺さすのはどうかと』
『志摩の悪口言ってたからいいのよ!』
『へぇ・・・そうなんですか』
ミスミの目が妖しく光った
『スマン待たせた・・・というより、このまわりの死々累々はなんだ?(汗)』
噴水に七人程沈んでおり、街路樹には十人程タロットカードのように吊された男が存在し、その全員の服がトランクス以外バラバラに切り裂かれていた
105 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/16(土) 02:32:00 [ jqMmKaZo ]
『別にぃ〜』
『何もありませんでしたよ(ニコッ)』
『・・・(深く詮索しないでおこう)やっと調べがついたよ。邦人や陸軍が合わせて39万人、海軍・民間の艦艇に乗っている4万人が転移して来ているとさ』
転移した邦人や陸軍側の海軍との取り次ぎを志摩は頼まれていた
『43万人・・・』
『食べるだけで大変ね』
『うん、陸軍やその統括する邦人側は特にな』
だからこそ先に帰らんとする大陸展開の海軍艦艇将兵に志摩すら使って引き止めをしているのだ
『なんで海軍側は置き去りにしようとしてるの?』
志摩がムッとした
『置き去りとか言うな・・・居るだけで艦艇は枢軸、連合双方から干渉されるんだ。人と陸軍戦力はこの数ではなかなか動かしたり出来るものではない、ならば先に主な艦艇だけでも引き上げた方が無用な衝突を起こさずに済む、海軍側はそう理解しているようだ・・・国家の為にこちら
ノ転移した資源を運び出すのにも専念したいらしいが、な』
難しいものを引き受けたよ、と頭を掻く志摩
『しかし、戦いをこの国はしているのでしょう?必ずしもこの地が安全とは言えません。邦人さん達も自分達を運ぶ船がいなくなってしまっては心細くなってしまいますし・・・大変ですね』
106 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/16(土) 02:34:05 [ ApfSecOw ]
ミスミが志摩に擦り寄る
『ありがとう、海軍側もただ待ってもらうつもりではない・・・イタリアだけでなく、ヴィシーフランス、フランコ総督のスペイン、それにチェコにも働き掛けている・・・海防艦程度ならここで売却する手筈も整えるそうだ』
だが、我々の戦力を欲する独伊が、国内の通過を許すかどうか・・・唯一トルコが全面的に好意的な回答を既によこしてくれているが、陸路では無理過ぎる。そして海路はやはり激しく動き回れば連合を始め干渉してくる事だろう・・・志摩が眉をひそめる
『で、あたし達は?』
ミスミを押しのけつつ桂が言う、一番身近で大事な問題だ
『・・・陸軍側にも私を信頼していない人間は多い、先に帰ってもらいたかったが、出来そうにない、人質だな。宿舎は手配してもらった。大事な人質だから護衛も付く、ある意味ありがたいが・・・すまん』
獣人・ダークエルフ・レーヴァテイルの存在は今のところ各国にバレていない、どこまで開示していいのかわからないし、何から手をつければよいのやら・・・すべて手探りだ
『我々は帰ってきた、まったく、神が居るのならば我々に一体何をさせようとしているのだろうな』
志摩が空を仰ぎ見る。激動が始まろうとしていた
111 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/17(日) 00:31:18 [ Xq7PfW/w ]
イタリア・ローマ
《ああ!レパルス日本艦に衝突され沈没》
《条約違反の巨艦多数建造か?日本の侵略的意志明確に》
《英米は協調して日本問題に取り組み》
どこから入荷したのかロンドンタイムス紙を志摩が読んでいる、その見出しにはこう書かれていた
『これは・・・参ったね』
挑発だけで戦艦を一隻ペイするとは・・・英国の本気を見誤ったな
『志摩!!ラジオ聞いて!』
桂が部屋に駆け込んでくる、部屋で掃除をしていたミスミがラジオのスイッチを捻る
【我等ドイツ第三帝国とイタリアは、突如現れた友胞の帰還に協力するのにやぶさかではない、が、それを邪魔するものが存在する。そう!戦争狂チャーチルに率いられた英国である!もはや忍耐のときは過ぎた!先日、日本のカゴシマという地で、悪辣な英国は卑劣な横暴を働いたと聞
ュ!これを友胞として、はたして許せるものだろうか!いや、許せはしないのだ!立つのだ、誇り高きサムライの末裔よ!共に英国と戦おう!2600年の不敗を持つ帝國こそ!我が第三帝国と世界を分かつべき存在なのだ!】
『ドイツの宣伝省め、素早い・・・それにアジに関しては一枚も二枚も上手か』
目の前の何が問題なのか明確にし、軍ではなく民衆を煽る
112 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/17(日) 00:32:54 [ wslbeVyE ]
『明日、いや、今日から陸軍。ひいては邦人の海軍に対する突き上げは激しくなるだろう・・・馬鹿め、地中海から日本だぞ・・・!英国の協力か無関心なくば無事に帰りつけるものか!』
だが結局の所、民衆の情に官の理は勝てないのは事実だ
『じゃあ・・・』
戦争になるんですか?とミスミが心配そうな顔をしている
『まだだ、まだ諦めてなるか・・・!』
『でも、志摩って海軍を交渉で引き止める役割でしょ?』
むしろ陸軍や民衆側の代表の一人だ。しかも引き止めたなら引き止めるほど状況は悪化していく
『ストッパーが居なくなるのも問題だ、陸軍だけで邦人を抑えられるものか!』
またぞろ勝手に戦を始められる訳にはいかない
『つまり、八方塞がりな訳ね』
『・・・』
『あーもぅっ!なるようにしかならないわよ、一人で出来ることには限界があるわ』
『しかし・・・っ!?』
桂が志摩の手を無理矢理とって胸にあてさせる。トクンとゆっくりとした鼓動が、やわらかい胸の感触を通じて伝わってくる
『あんたは気が回り過ぎるのよ・・・これで、少しは落ち着いた?』
『あ、ああ・・・』
まったく、見てないようでよく見ている
『・・・』
ミスミはその様子を羨ましそうに見ていた
113 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/17(日) 00:35:24 [ QDKBCzwM ]
大隅海峡・プリンスオブウェールズ
『これが狙いでしたか』
外電の内容を綴ったものをわざわざウェールズまで出向いた宇垣が差し出す
『事故が発生したのは事実です、救助に全力を尽くしていただいたのには大変感謝しておりますが、狙ってなど、心外ですな』
演技だとわかる態度でフィリップスが応対する
『レパルスのテナント艦長以下、救助した人員の受け渡しはこれで完了です・・・あなた方は、民意という蜂の巣を突いてしまった。避けたいと願っていますが、次はおそらく戦場での相対となるでしょう』
宇垣は表情を変えない
『我々もそうならない事を願っていますが、ね。そちらの艦は無事でしょうか?出来れば艦名を教えてもらえるとありがたいが』
『・・・大和です、船の構造として強い位置にある艦首部をレパルスの横腹にめりこませただけですので浸水他、航行には問題ありません』
フィリップスがしきりに感心している
『ヤマト、か・・・あのような艦をいつの間に用意したのですか?』
『・・・』
『機密、ですか・・・』
下手に教えては帝國の戦力をさとられる、異種族の者達を見せたとしても信じるかどうかの分は悪い
『いつか教えてさしあげれたら、とは考えております』
114 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/17(日) 00:38:57 [ /9tm..U. ]
『これは呟きです』
フィリップスが宇垣を見て唐突にそう言った
『在イタリアの日本保有の資源が枢軸側に油の一滴たりとも譲渡がなされれば、我が大英帝国海軍は、在イタリアの日本海軍艦艇に攻撃をかけることでしょう』
宇垣の目が見開いた
『馬鹿な、ある程度の切り売りが出来なければ邦人が餓えて死んでしまう!』
『我々は自由フランスの許可こそ取りましたが、寝返りの疑いのあるフランス軍艦艇を攻撃しましたよ?』
メルセルケビクでの戦いだ・・・宇垣にとっては九年前の話になる、忘れていて当然だった
『・・・このような突発的な状況でも、ですか?』
『突発的な状況だからこそ、です。独伊にとってこれは非常にチャンスです』
イタリア海軍の石油備蓄は八ヶ月、戦力的には疑問符がつくが、これが復活する、なんだかんだ言ってあの戦力が北アフリカへの輸送船団の護衛につくのは厄介だ、それが基でカイロ、スエズが落ちてしまったならば・・・英国にとってなによりも痛い損失となる
『長話が過ぎました、では、今度は・・・戦場(いくさば)にて』
『・・・』
お互い敬礼を交わして宇垣は武蔵に向かう(大和は長崎に回した)
『忠犬、か・・・』
そう呟いて宇垣は再び沈黙した
122 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/18(月) 01:07:09 [ WERj3NJg ]
ロンドン・ダウニング街一番地
『サー・ウィンストン・チャーチル、合衆国の日本に対する政策をお持ちしました、あとスコッチを』
『いいね、入りたまえM』
英国宰相、ウィンストン・チャーチルはニヤリとした英国人らしい笑みを浮かべてMI5の長を迎えた
『ハワイ、グァム、マニラから日本の内南洋に進出した米軍の先遣隊は、そのまま閣下のなされたルーズベルト大統領への御進言通り、米国保護領として管理する模様です。』
グラスにスコッチを注ぎつつそらんじている報告書の要点を読み上げるM
『ふむ、植民地の連中にも我々のようなあくどさを身につけてもらわねばな』
スコッチを受け取り、一気にあおるチャーチル
『22日の空白で日本の領地権は一時的に消滅しました。その間に上陸した地域は原則的に上陸した者の保護下にあり、現状での返還は出来ない』
『そうだ、そして何をしたのかはわからんが、彼等の戦力は増えていた。しかも条約を大幅に上まってな、叩けば埃はいくらでも出る』
台湾や朝鮮、満州や中国大陸で同様の事が出来なかったのは、まず島藷ではなかった事、総督府などの機関や組織が既にあり、現地の人間の職員での運用が、最低限の範囲ならば可能であったことだ
123 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/18(月) 01:08:11 [ 2aOBt6HQ ]
しかし、彼等が各国に対し、意志を決定し表明するには22日は短すぎたのだ、しかし島ごとの部族に別れ、南洋庁に管理されていた内南洋は違った。米軍が彼等に日本人はどこに行ったのだと聞いても、答えられるはずがなかった。彼等もそれでやっと事態に気付いたのだから
『それから次の段階として日本の戦力の削減を要求する。特に軍艦をな』
『まこと、理不尽ですな』
Mがグラスを回す、毒を気にする癖が長じてチビチビやるタイプらしい
『軍艦の持つ魔力は国を問わず、大の大人から子供まで掴んで離さない、私が言うのも何だが、フッドが沈んだときはドイツへの激情を耐えるのに苦労したよ。日本の国内は盛り上がる、我々を、植民地人を討て、とな』
『もし、あの賢明なヒロヒト帝がいわゆる天からの一声をかけた場合は?』
チャーチルが頭を横にふる
『かのミカドは賢明であるが故に自縄自縛に陥っている、我が英国にならい、立憲君主制民主主義国としてあるべく民意を尊重しようとしている為だ。以前自分の若さ故の言葉で国家首班を殺してしまった。それがミカドの根底にある。そう心理分析を行ったのは君達ではないか。私はそ
黷ヘ正しいと考えている』
他国を思うように操ってこその英国だ
124 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/18(月) 01:09:21 [ zeLnApqc ]
『ごもっともです』
そのための長い外套と短剣の主が現在のMその人なのである
『英国の勝利が確定して、植民地人どもの加減のない戦争機械に、すでに消滅していなければ、仲介ぐらいはしてやろう、ミカド本人や皇族の保護ぐらいは言い出しても良い。我等が国王陛下を始め、親日の頃を偲ぶ人間はこちらにもいまだ居る。また忠実なペットに戻るならば十分に使
ヲる位置に彼等は居る・・・本当の敵に対してな』
北の大地で今は手を組んだ仲間である赤い悪魔ども
『さすがにモスクワが落ちそうなときにスターリンはマンチュリアに手を出すほど馬鹿ではありませんでしたが、手を出さなかったのは我々にとって幸いでした』
目が完全に北に向かれたことだろう。日本国内の満州、朝鮮に対してもつ明治帝の御遺産という心理的影響は捨てがたい
『スターリンはこれからどうするつもりかね?』
『先ずは退く独軍を追撃、でしょう・・・しかしかのスターリンも米国の参戦は望んでおります、そこをちらつかせればマンチュリアへは当分手を出しますまい』
我々と同じように、独軍との戦争が確定段階に入ってから日本に対してその薄汚い手を延ばしてくる事だろう
『引き続き日本問題に関しての情報を頼むぞ』
125 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/18(月) 01:11:01 [ KRpK8t7E ]
『特に、日本国内を沸騰させる為に行うアドリア海での作戦行動に関わる。日本国内の情報は現在のもので十分だ、次は在イタリアの日本人達の方を詳細に頼む』
『はっ・・・失礼します』
Mはグラスを空にし、チャーチルの執務室から出ていった
『香港のフィリップスは実に命令の奥にある事柄を理解し、良い仕事をした・・・次は』
わざわざマルタ島で輸送任務に携わるはずだったイラストリアスを引き抜いたのだ。しかも今回はタラント奇襲よりも数を揃える。失敗したなら痛い所ではない、しかも相手はイタリアではなくあのトーゴーの息子達だ・・・それなりの物をこっちとて掛金にかけている
『勝利の為には俄然悪辣にもなろうものよの』
それが心底楽しくて仕方がない、まったく、どうしようもない戦屋だなと笑いながらひとりごちる
『日本の再出現は最大の危機であり、チャンスだ。これを生かせずして宰相などやっておられるか、そしてこれを乗り切ることこそ宰相最大の醍醐味でもある』
英国人のアクの強い、戦時の粘り強さというのはチャーチルの浮かべる顔そのものであるのかもしれなかった
130 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/18(月) 20:35:58 [ gPuSt/kQ ]
『ヒョウ!小艦艇の数がかなり多いですな、サー』
『ハルダー君、それをいかに君の母艦達で卸すかが問題なのだ』
ジブラルタル・大英帝国海軍地中海艦隊司令部・長官公室
『資料にあるように、大型艦も戦艦のフソウクラスが一隻、重巡がミョウコウ、タカオクラスの各2隻ずつ。古いがアオバクラスも2隻居る。加えて護衛の空母が三隻、だ』
心労の種が増えたとソマービルは肩をすくめた
『はははっ、これでは彼等を一撃で行動不能にするには、我が大英帝国の保有する全ての空母を揃えても無理ですよ、それに反復攻撃を行うにはアドリア海だ、いかにイタ公がマヌケだろうと我々は大損害を受ける。それに相手はあのトーゴーの子孫』
メルセルケビクは交渉中の据え物切り、タラントは夜討ち、まともにぶつかったダカールに至っては至近弾のみで我等がストアリングバッグたるソードフィッシュは被害のみだった。魚雷による攻撃でなかった事も災いしたのだろうが・・・まともな相手ならよほどの事がなければ戦果は
げれない
『護衛の空母から戦闘機でも出た次第には・・・』
貴重な空母を危険にさらすだけになる
『情報部の見解でな、イタリアとドイツの航空隊が漸時他の地に移転されている』
131 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/18(月) 20:37:52 [ 62Dc2aCc ]
『場所は?』
『マルタ島を攻撃できるイタリア南西部とソ連領だ、アドリア海での作戦可能機は確実に減っている』
ハルダーが軽そうな笑いをやめ考え込む
『・・・彼等も根本的解決を望んでいる、ということですか?』
日本の参戦と米国との戦端
『レンドリースを始め、アメリカからの輸送船団を直接叩かなければ何もならない、そして君と同じような事を考え、日本人の戦力が枢軸にとって直接増える為ならば、多少目減りしても、攻撃された方が良い。そう考えるのは、まぁ自然な流れだ』
事実、メルセルケビクのあとヴィシーフランスや植民地のフランス軍はイギリスに対して態度を硬化させてしまった。ダカールの失敗はそのためでもある
『大体・・・これも情報部からだが、この時期になって、それほどの戦力を持ち、43万人もの人間がこのまま欧州で、旗色を鮮明にしないままでいられると思うかね?いや、むしろ日本という勢力そのものが、か』
そして英国はアメリカと日本を天秤にかけ、より易があるであろうアメリカの参戦を選んだ。つまり贄なのだ、日本は
『・・・政治の問題はお任せします。敵空軍の脅威が減じるならば攻撃自体は可能です。タラントと同じく奇襲効果も得られるでしょう』
132 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/18(月) 20:40:03 [ gPuSt/kQ ]
『ですが、空母三隻による航空隊合同の夜間空襲は困難を極めます、魚雷の数も少なくなり、攻撃力にもさし障ります、空中衝突の恐れも飛躍的に高まる。昼間の空襲で今回は行きたいと思います』
妥当な所だとソマービルが頷く
『夜間空襲の発案者であるレイスター君は嫌がるだろうね』
『奇策も良し悪し、ですよ・・・ですが、多少日本人が哀れに思いますな、突然本土から切り離されてこの地に放り込まれ、戦え、とは』
ソマービルがまた肩をすくめた
『仕方なかろう、現実が全てだ。それで手加減する君ではあるまい?』
居住まいを正すハルダー
『それはもちろん。この作戦は英国にとってかなりデリケートですから、彼等は叩きます。徹底的に。では部隊の方に』
『うむ、頼むぞ』
敬礼を交わしてハルダーが部屋を出ていく
『マリアも親御さんに釣られて、親日家だったな・・・だが、許してくれよ?』
ソマービルがいつも伏せている写真立てをとって呟く・・・未だ忘れられないのだ、彼女が
『今も昔も現実が全てでしかないのだ・・・』
現実は厳しい、どんなに願っても死んだ彼女は帰ってこない。ましてや我が祖国は・・・日本人よ、これからの現実を受けて、お前達は一体どう動くのだ?
133 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/18(月) 20:41:51 [ u9FMJxgs ]
『ただいま』
なんというか、近頃は痛々しい姿で志摩は帰ってくるようになった
『志摩!?』
『旦那様!頭から血が!タオルを持ってきますから、ちょっと待ってくださいね!』
ミスミが更衣室に駆け込む、その間、桂が傷口を確認している
『何もこんな時に歩いて帰ってこなくともいいのに・・・』
『配給が段々とか細くなっていく中で海軍側に意志が通じず、邦人が苛立ってる。悪意を向けられる相手が居るなら向けられた方がいい、爆発せずに済む』
海軍側のしめした海防艦らの売却が、本土からの指示で頓挫した為、約束していた食料の配給ができず。だんだん少なくなっていっていることで不安に耐えられなくなっているのだ。そして先に本土に帰るつもりで居る海軍側への妬み
戦争をしている独伊両国が対価もなく食料を回してくれるはずも無く(同情的なコメントを宣伝省が流しつつ追い込むつもりなのだろう)、日に日に邦人のイギリス討つべしという声は高まって来ている。日本本土も同じ状況のようだ、内南洋を手放さない米国もあちらの討つべしという声
フ中に交じっているようだが
『あの、これを』
ミスミが持ってきたぬるま湯に濡れたタオルで傷口を拭く
『おう、ありがとう、いててて』
134 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/18(月) 20:44:28 [ niTZ37Wk ]
『すまん、ラジオでもつけてくれ、どうせ戦時の勇ましい放送しかしとらんだろうが』
『はい、ただいま』
『じゃああたしは軽いものを何か作るから、休んでなさいよ?』
【zべルトは、日本に対し、制限条約下において米英が35000トン級を建造していたのに対し、すでに60000トン級の巨艦を多数用意してあるのは、国際社会に対する挑戦であり裏切りと述べ、日本の戦争意志の表れであると、日本政府に対し解体を要求し】
馬鹿な、条約は切れt、そうか!彼等(お互い様だが)にとってドック数はハッキリしている、今現在の艦隊勢力は条約下にあって秘密裏に造り続けたものとしか見えてないのか・・・!そしてそれは絶対的な正義を連合国に与える
【続けて、もし、本当に平和の意志を彼等が持って居たというのならば、断じて解体を行っていた筈だった、しかし彼等は平和を望む我々を騙し、さらなる建艦を続けていた。私は日本が保持する全ての新造艦の解体を命じぬかぎり、ワシントン条約における平和に対する罪において、日
{に対し、宣戦を布告するものであろう!と、述べ】
パリン!
軽食を持ってきた桂が恐ろしさのあまり、盆を床に落とした、それほど志摩の顔は憤怒に満ちあふれていた
139 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/20(水) 01:51:20 [ QDKBCzwM ]
フィリピン・マニラ、アメリカ合衆国海軍東アジア艦隊司令部会議室
『このハートの呼び出しに各国の提督の方々、集まっていただき、誠、恐縮です』
東アジア艦隊の主、ハート中将が挨拶をする、集まったのは彼を含めて四人
『英海軍、フィリップスです』
『オーストラリア海軍、クラッチレーです、よろしく』
『蘭海軍、ドールマンだ、よろしく頼む』
それぞれが簡潔に自己紹介する
『ここに集まっていただいたのは他でも無い、南シナ海の安全確保の為です』
ハートが指揮棒をとりだした
『残念ながらこの地には資源がさほど産出致しません。南と較べ全くと言っていい程です。ですから我々は常に輸送を行ってきました。それをこれからはあなた方と交えて行いたい』
一人手を上げる、クラッチレーだ
『補給の繁雑さが増し、それぞれの海軍が行うより逆に、能率が落ちるのではないか?ハート中将』
頷くハート
『ごもっともです、規格や使用燃料、書類をすり合わせる必要があるでしょう』
掛けてある地図の上を指揮棒をなぞる
『現在こそ、旧日本領、内南洋は我が手にあります。しかしその土地に、我々は必ずしも慣れている訳では無い。思わぬ苦戦を強いられてしまう可能性があります』
140 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/20(水) 01:52:16 [ Xq7PfW/w ]
地図の上で×を内南洋に描く。今の在内南洋の戦力は微々たるものだ
『日本の反撃で、このまま無策の状態のまま、補給線を閉ざされたならば・・・』
ここには居ないが、マッカーサーの言う、在フィリピン陸軍航空隊による日本本土への爆撃行には多量の爆弾、燃料を必要とする。台湾への日本の航空隊配置は今まで我々を刺激しない為か、行われていない。幸いにも無視していい。もし、これが続けていけるならば、フィリピンだけで
煢艨Xは勝てるかもしれない
『補給が続かなければ戦えない。内南洋が落ち、ここが落ちたら、次は香港、シンガポール、バンドン、ポートダーウィン・・・ドミノ倒しだ』
ドールマンが唸った
『加えてもし、そこで我々が別個に日本軍にあたっても、各個撃破のいい的です、現在の戦力では御三方と合わせたとしても不利には変わりありませんが、ずっとましです。ここで日本の戦力を最大限引き付け、出来得るかぎり長く戦い続ける事ができれば』
指揮棒をハワイから内南洋へと指す
『合衆国は日本に対し、加速度的に圧力をかけていく事が可能になります。これは皆さんの負担の軽減にも繋がることです。その為にも、南シナ海を預かる我々の物資の共有化を進めていきたい』
141 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/20(水) 01:55:10 [ bBlcovoo ]
『それで防御に縦深を持たせようと言うのだな?』
クラッチレーが納得したと腕を組んで頷いた、ハートはフィリップスに向き直る
『艦隊指揮は戦艦と空母をお持ちのフィリップス提督にお任せしたい』
それまで話を黙って聞いていたフィリップスも頷いた
『謹んでお受け致しましょう』
合意が達したことで会議がお開きになり、幕僚達がそれぞれの提督と話し合い、自己紹介を挟んで打ち合わせを始める
『フィリップス提督』
ハートが近づいて声を掛けて来た
『日本を見て、どう思われましたか?率直にお聞かせ願いたいのですが』
フィリップスは目を閉じ、一拍おいて述べた
『良く訓練され、良い指揮官が居る、楽に、そして短期間で勝てる相手ではない、まさに強敵と言ってよいでしょう』
確信が持てたというようにハートも頷いて同意する
『そうですか・・・私も今回仮定での話をしましたが、内南洋で我が軍は一敗地にまみれるのではないかという悪い予感がしてならないのです、近くに居るからこそ、解るのですが、彼等は強い。間違いなく、強い。いえ・・・そのような認識をお持ちでしたら良いのです。太平洋艦隊に
ヘ、内南洋を取ったことで、もう勝った気になっている者も多いのですよ』
142 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/20(水) 01:58:06 [ 2WXBLbPM ]
その一言にハートの苦悩が滲み出ている。ハワイには九隻もの戦艦が存在するというのに、東アジア艦隊には一隻も無い。しかも太平洋艦隊にはさらにノースカロライナ級二隻の追加すらあるという
『余り自国の敗北を言うものでは無いですよ、ハート提督。現に我々はここにあり、戦い続ける覚悟を持つ事が、今我々には重要なのです』
心配も過ぎれば部下に感染していく、勇将の元に弱卒なし、戦う姿勢を見せることが重要なのだ。将であるためにはむしろ戦を楽しむ事も必要だ、と言っても良い
『わかっては、いるのですがね・・・』
『当たり前の事ですが、我々はそれぞれの祖国が勝つために存在しています。我々は勝ちます、最終的には、ね』
戦闘には負けるかもしれない、戦後の世界に自分自身は居ないかもしれない、だが、祖国はこの戦争に勝つ、ならば良いではないか・・・ここまで割り切るのは難しいかもしらんが
『いけませんな、私は・・・己の職分を忘れ、置かれた状況に腐していたようです。そうだ、我々は勝つのだ、必ず・・・っ!』
私から見れば、合衆国の人間は基本的に陽性の人間だ、そしてそれが彼等の持つ美徳でもあると思う
『勝ちましょう、提督!』
がっちりと握手は交わされた
148 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/21(木) 15:15:51 [ wslbeVyE ]
東京・海軍省海軍大臣室
『外交的解決は不可能なのですか?』
『小沢君、先方がやる気なままではどうにもならないヨ、取り付く島も無い。そしてこっちの国民もな、見たまえ』
山本が窓に近づいてバインダーをあげる、みれば海軍省ビルの下で大和の解体を許すな!横暴な英米を討て!欧州の邦人を救え!といったプラカードをもった集団がつめかけていた
『全国の小学生から、二万通も大和を解体しないでください、とかいう手紙が来たよ、手紙を書いて返すのが私の趣味だったが、さすがにこの数はなぁ』
苦笑する
『以前お会いしたときに、お上は太平洋に波風は立てたくない、とおっしゃっていたと聞きましたが、国内はそれで』
小沢の言を山本が区切る
『納まらんヨ、それに最初に言ったが、あちらさんはやる気だ。受け入れたとしてさらに厳しい案を出された時、君はどうするね?残されるのは減らされた戦力と、もはや抑える事の出来ない国民だけだ』
いうなれば、陛下はこの国を収める最後の最後の手段だ、多用してはその効果を減ずるばかり
『・・・判りました、では在伊の邦人はどうするのですか?』
一刻も早く本土に戻さなければ
『それだがな、例の英機動部隊の存在が確認された』
149 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/21(木) 15:17:21 [ 62Dc2aCc ]
衝撃が走る
『欧州の栗田君はもう限界だと悲鳴をあげています・・・このままでは糧末が持たないと』
『宇垣君の話は正しいと見ていいだろう、なんにしろやる気という事だ、彼等は』
小沢を見直す山本
『閣議決定が成された、小沢治三郎GF長官、対米英戦の準備に入りたまえ』
英米同時開戦か!小沢にも感慨深いものがあった
『・・・今なら転移直前、開戦を望んだ永野さんの気持ちが良く判るヨ。で、プランは参謀いらずの君だ、草案ぐらいはあるのだろう?聞かせてくれないか?』
『やはり内南洋、ここが全てです。米国はフィリピンと内南洋を軸に我が国本土へと圧力をかけてくる事に違いありません』
小沢は頭の中の地図で再現しつつ説明する
『しかし現在の内南洋に於ける米軍の戦力は微々たるものです。ハワイから物資を積んだ船団と共に要塞化、根拠地化を図る、そう考えて間違いありません』
我々は持てる力を以てそれの阻止に出向く
『しかしそれは米軍も承知。だが、我々のオーソドックスな作戦である漸減作戦なしであれば、たとえ我が国の戦力がいくらか増えたところで戦力の優越という根本的な優位は変わらない、ならば向こうにとって決戦は望む所、か』
『はい、その通りです』
150 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/21(木) 15:22:59 [ jqMmKaZo ]
『むしろ我々こそ、戦艦と空母を含む香港とフィリピンにも戦力を割り振らなければならず。さらに今度は攻勢に転じた中国国民党に対する陸軍兵力の輸送と地上支援。GF全力での内南洋進攻は事実上不可能になっています』
逆に自分達が仕掛けるはずだった漸減作戦を行われている、なんともいえない皮肉である
『食らってみれば、やはり痛いものだな、私の真珠湾への奇襲案は、一種、漸減作戦への不信感からきたものだが』
そう都合良くいくものか、と思っていた。いや、現在の我々に当て嵌めて言うならば都合良く動かされていると言った方が正しいが
『長年練られたものだからこそ、効果は堅実とも言えます。そればかりに固執し続けては、虎の巻になり、害毒になるばかりですが』
それしか考えられなくなる、完成度が高い故にそれに満足してしまうのだ。そしてそれが権威として蔓延る
『して、こちらの宣戦布告はいつ?』
『英海軍が在伊の艦隊を攻撃してきたその時、だ。今も国民には熱意が有り余っておるが、まだ総動員体制をかけれる程ではない。きっかけが必要だ・・・栗田君へ海防艦他の売却許可を与えたまえ』
これで在伊邦人の今日のパンは得られる、明日は銃弾になってるかもしれんがね
151 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/21(木) 15:25:45 [ LIawiXzY ]
地中海・英機動部隊
タキシング中のアルバコアとシーハリケーンの轟音がイラストリアスの艦上に響いている
『幸運でした、一度も襲撃を受けずにここまで来れた。やはりマルタ島へのフェイントが効いたのでしょう』
違う、独伊両国の望み通りだからだ。帰りは手ひどいお迎えがあると見ていい・・・ハルダーが声をかけてきた参謀に注意する
『警戒は怠るな、ロイヤルネイヴィーのほぼ半分の空母を集めている、連中にジャックポットを引かせたくなかろう?』
『はっ』
甲板要員が両手に持った指示棒で艦首を指した。発艦だ、先に軽いハリケーンが滑走していく、飛び立った!
『何度見ても、空母から飛行機が飛びたつたびに安堵と喜びを覚えるね』
空母の発着艦には神経をに使う、艦を預かる艦長はもっとだろう、聞こえてくる発艦作業中の声にまったく余裕が無い
『(英海軍航空隊初の大規模編隊空襲だ・・・だが、世界の海を切り開いてきたロイヤルネイヴィーの一員である諸君らならばこなしてくれる、私はそう信じている)』
出撃前の訓辞ではえらく恥ずかしい事を言ってしまったが、想いは言ったそのままである
『アルバコアが54機、ハリケーンが12機、タラントの三倍で、はたして・・・』
164 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/22(金) 23:37:00 [ 7mGOixHY ]
1942.2.14
アドリア海、帝國海軍重巡洋艦・愛宕
『艦長、レーダーに感だそうです』
愛宕ら第七戦隊は転移からこの方、艦隊停泊地の最縁部で接触を図ってくる政府要人を出迎えたりするのみで撫りょうを囲っていた、勢い士気も緩む。伝令もゆったり歩いて艦橋へと入って来た
『イタリアかドイツの航空隊か〜?』
一応公的な飛行路の図と説明は受けていた
『いいえ、教えられた物には・・・速度は100ノット程でこちらに向かってくるとの事、規模は50機程』
・・・鈍くなっていた艦長の頭が少しずつ覚醒していく、おかしいぞ・・・
『しかし、100ノットたぁえらく遅いな、ちょっとレヴァ子呼んでこい、中央指揮所に居たはずだ』
『はっ』
ワイバーンより遅い編隊、はて、なんだろうか
『キュ〜・・・私はレヴァ子じゃないって言ってるのに〜』
伝令に連れられてレーヴァテイルのカーヤが入って来た
『おう、レヴァ子。ちょっと音聞いてくれないか?』
近頃は本土からの連絡で水中から忍び寄る者が居ないか、レヴァ子をソナーにつきっぱにしていたのだ
『キュウ?』
ブゥゥーン
『キュウ・・・似たような音を聞いたことがあります。えっと〜九六式艦攻です、羽根が二枚あるやつ』
165 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/22(金) 23:37:59 [ HVdVzoX. ]
『二枚の羽根があるから音の反射が違うんですよ〜キュウ?』
しばらく聞いて答えを呑気に言うカーヤに艦長の顔が真っ青になった。欧州で二枚羽、大量運用、それは・・・!
『ソードフィッシュだ!艦隊に防空態勢を成すよう伝達!伝令!』
何を言われたのかわからず伝令が一瞬立ち尽くした
『伝令!!!』
『は?ははっ!』
ブゥゥーン
『ダメだ、間に合わんか!』
人間の耳いや目にも見える、間違いない!あれはソードフィッシュだ!間違いない!低空を、この愛宕を頭を飛び越して行くつもりだ!
ソードフィッシュの後部座席の銃口がこちらを向いた
『危ないっ!』
『キュ!?』
ダダダダ!!!
ガシャン!パリーン!
愛宕の艦橋をソードフィッシュの放った銃弾が掃射する、外していない硝子が飛び散り銃弾と共に艦橋要員を切り刻んでいく
そして訪れる静寂
『無事・・・か、レヴァ子』
硝子を貫いたことで初速の落ちた銃弾は艦長の身体で炸裂した。カーヤに己の身体の一部を張り付かせて艦長はそう言うと腹の部分の肉が無くなり支えていた背骨が支えかね、上半身が折れて地面に落ちた
『い、いやっ!嫌ぁああーっ!!!』
血肉に濡れた彼女の絶叫が艦橋にこだました
166 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/22(金) 23:39:43 [ 50Ied/7E ]
イラストリアス航空隊
『良い感じに当たったな!あとでビールおごってやる!』
『まじっすか!?』
いくらか伝達が遅れて防空態勢が調うのが遅れるかもしれない、褒めて当然だ
『ちゃんと温くして炭酸抜いてやるがな・・・っ!』
『あんた外道だーっ!!!』
全くこれだから任地でヤンキー風のビール飲んできた奴は困る、ビールはそういう風にして飲むものだ
『にしてもかなりの数だ・・・!また飛び越えるぞ!』
まったく知らない形の駆逐艦(松級)の頭を飛び越える、いいぞ!まだ奴ら何が起きてるか気付いてない
『攻撃目標はオイラーと空母です、平べったい船を探してください!』
『あれはダメか!?』
なんて背の高い戦艦だ・・・!
『ダメですっ!航空機と戦車を動かす燃料をロンメルに渡さないことが絶対です!』
ちぇっ・・・こういうのにはしっかりしてやがらぁ・・・
これが日本の海軍航空隊で、戦艦を狙って魚雷の一本も当てようものならば、感状が出たはずだ。大物病といわれる、かなり厄介な病気である
『居ました!一時!空母!発艦じゅn痛てぇっ!』
『舌噛まないよう黙っときなっ!』
機体を横滑りさせる。発艦の為に艦を風上に向けて直線行動、一番の狙い時だ
167 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/22(金) 23:40:45 [ qolO/Z6Q ]
ダダダダダダダ!!!
ようやく対空砲火が始まった
『おせーんだよ!猿どもgぶべらっ!』
『ちぃっ!』
艦尾からロケット弾が飛んでくる。うるさく音をたてる物も交じっている後席がまた舌を噛んだ、静かになれば嬉しいのだが
これもまた機体を横滑りさせて避ける、接近してロケット弾がまだそれほどバラけてないのとこの復葉機、アルバコアの運動性にある・・・ソードフィッシュだったら少しの差で今さっきのに捕まっていたろう。機体としてストリングバックの方が上だが、今回は助かった
『よぅし!トリプル9だ!てぇっ!!』
英海軍航空隊の教範に実例として乗せていいほどパーフェクトだ
『アイ!!』
後席が投下レバーを引いた事で魚雷が機体から離れる、まったく、軽空母だってのになんて対空砲火だ!
火の玉がヒュンヒュン飛んでくる
『そうだいけっ!いけぇっ!』
ズバァン!!!
『『イエヤッハァッ!!!』』
空母が水柱をあげたのを見て二人歓声をあげる、こればかりは誰にも抑えられない
ドンドンドンドン!
次の瞬間、仁淀からの10p高角砲弾が彼等のアルバコアを捕らえ、空中にジョンブル魂を飛散させた。温いビールは飲まなくて済んだが、呆気ない物だった
168 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/22(金) 23:44:02 [ X8fclSxo ]
魚雷が命中したのは沖鷹だった
『ぬぅおおおっ!』
パリーン!!
やはり外してなかった窓ガラスが直下の水柱によって吹き飛ばされた25o機銃座の破片で粉々になり沖鷹の乗員を襲う
『被害報告っ・・・!』
被雷した時に反対舷に吹き飛ばされた関係でガラス片に切り刻まれなかった沖鷹艦長が痛む身体を抑えながら命を下す
『右舷兵員室に浸水!艦が傾きまぁす!』
『甲板上の第一分隊の三番機が衝撃を受けて海面に落ちました!』
『こちら機関室!機関は正常なれど左舷スクリューに推力なし!艦が、旋回します!』
落ちた零戦でスクリューの羽根が折られたか・・・!
『左舷注水傾斜の復元に徹せよ、機関室、機関最大!壊れてもかまわん!航海科!舵を最大限に使って直進を維持しろ!』
『艦長それは!』
『直掩機を出す、それが我々軽空母の役割だ!今ここで出さなくして、いつ出せというのだ!』
速度を出すことで破孔は広がってしまうが他の艦の損害を少しだけでも減らした方がずっとマシだ!
『出せるかぎりの零戦を出せ!今すぐ出せ!何があっても上げてやるんだ!彼等を海で死なせるな!』
この沖鷹は沈むだろう、だが、ただではやられん!任務は果たして見せる・・・っ!
169 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/22(金) 23:46:12 [ wXB4VivE ]
そこに最悪の知らせが届く
『第一エレベーター破損!落下して上がりません!』
『構うな!身の軽い零戦なら行けるはずだ!』
『はっ!』
グォォン
飛行甲板の下なので見えないが、零戦の飛び立つ音が聞こえる一機、二機、三機・・・いいぞ!
キキィーッ
五機目の時スリップ音が聞こえたかと思うと沖鷹艦長は突っ込んできた零戦の翼の残骸と艦橋の縁に挟まれ胸を潰されて生き絶えた
『か、艦長戦死!!』
他の者も大なり小なり負傷してしまっている
『一番エレベーターの穴に突っ込んだのか・・・』
一人が呟いた時、まだ熱を持つエンジンに漏れたガソリンが引火、爆発して艦橋に生存者は居なくなった
『こちら機関室、水が入って来た、水蒸気爆発の可能性あるものの限界まで保持すべく、我等機関科、総員意気盛んなり、帝國海軍、空母沖鷹万歳!万歳!万z』
誰も存在しなくなった艦橋に機関長の声がこだまする。そしてそれきり機関科から声が聞こえる事はなかった。ただ、沖鷹が沈没するまで、機関は駆動をやめなかった事が僚艦により確認されている
この後指揮を受け継いだ副長による総員退艦の命から三十分後、右舷艦首側から一気に転覆、彼女はアドリア海にその身を没した
170 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/22(金) 23:48:00 [ wezaJ53A ]
沖鷹航空隊
『俺達の母艦が・・・』
『探せっ!魚雷を抱えてる奴らは必ず撃ち落とすんだ!それが俺達を飛ばしてくれた艦長へのなによりもの手向けだ!』
黒煙を吐いている(艦橋の爆発)沖鷹を見ながら、聞こえてきた空中無線に激を飛ばす、結局発艦出来たのは八機だったが・・・十分だ!
『テメェら、これだけの事しておいて、ただで帰れると思うな!』
味方の対空砲火を省みず大鷹に迫ったアルバコアを撃墜する
『奴らはオイラーを狙っているのか!』
流れ出した重油で燃えている艦がちらほらしている。それにオイラーは沈みにくいためか三機セットで攻撃している。艦隊側には行動を拘束するためか一機ずつバラバラ・・・手がこんでやがる!
『賢しいんだよ、テメェらぁっ!』
見つけた敵編隊、よし、まだ魚雷を落としていない・・・!
ダダダダダ!!!
カチッカチッ
二機を落とした所で怒りのあまり長押ししすぎたのか弾が切れた
『くそったれがぁああっ!!!』
機を加速させる。残り一機の後部座席員の顔が安堵した顔から形容し難い顔に変わる、わりぃな。その魚雷一本でだいぶ違うんだよ、畜生め
『さぁ、一緒に空で死のうぜぇぇっ!!!』
笑いながら彼の意識は消えた
171 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/22(金) 23:51:47 [ hxY6CuZ2 ]
『い、一度も振り返らなかった・・・』
シーハリケーンでアルバコアを追撃している日本機を撃墜したものの、後ろについてながら日本機のもつ気力に圧倒された。自機に火が吹いても前しか見ず最後までアルバコアを撃ち続けた
『全機!敵のパイロットは手強い!コクピットを狙え!』
奴らの気にあてられないようにしなければ、気後れした我々のせいで味方の損害が増える。気以外は生き残る事を放棄した連中だ。落とすことはたやすいはず!
『これがサムライと言う奴か!』
それにこいつの7.7oじゃなかなか落ちない、もう少し威力が要る・・・!しかしハリケーンの弾幕は相手の頭撲ち抜くには丁度良いはずだ!
『くっ!?』
新しい一機を見つけた時にはその機はアルバコアに体当たりをしていた
『さすがは・・・!』
あ、畜生、俺はもう日本人に毒されつつあるぞ・・・
『隊長・・・アルバコアに、もう残弾がありません』
部下からの無線が入る
『そうか、空母は二隻を残したか・・・仕方あるまい、手数がまだ足りん。引き上げるぞ』
あまり長居しては本隊にも危険が及ぶし、ハリケーンで艦は沈められない。機を傾けハリケーンを旋回させる
後ろには燃え盛る艦隊が残るばかりであった
182 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/24(日) 14:58:00 [ 5k.cDmFg ]
同日
イタリア・ローマ
『あの、旦那様。少しよろしいでしょうか?』
『ん、どうした?というか何だその包装紙の山は』
食料問題が今後の事が一層不明瞭になったとはいえ解決されたことで、久々の休暇を志摩は部屋で紅茶を飲みつつ過ごしていた
『バランティンデーとか言われて、男性の方達からこれを』
チョコレート・クッキー・カード・・・そういえば、桂と俺が結婚してるのを知って、ならば、とミスミにモーションをかけるイタリア男が増えている。ミスミはイタリア語が判らないので助かっているが
『あの、志摩さん?』
『ああ、今日はバレンタインデーと言って、好きな娘にこういった物をあげたり、愛を誓ったりする日なんだ』
だったよな、確か。イタリア語が出来る桂にカードの内容を読んでもらうか、たぶん甘ったるい文なんだろうが
『あの・・・』
ミスミが赤面している
『旦那様は・・・その、私にバレンタインでしてくれる事は・・・無いんですか?』
紅茶を口から噴きかけた、あぶないあぶない
『あ、あのね・・・いや、なんだ』
泣きそうな顔に言葉を飲み込む
『・・・夜、部屋にいく。それでいい、かな?』
『はい!』
瞬間、部屋の温度が10度以上下がった気がした
183 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/24(日) 14:59:39 [ wXB4VivE ]
『ふーん』
い、いつの間に桂が後ろに・・・いや、三年間三人でいろいろあってして来たが、まったくこういう立場関係に変わりは無い
『僕はイタリア空軍の少尉、だけれど任地が変わって君に会えるのはこれっきりになる。夜八時◯◯ホテルへ・・・じゃああたしが代わりに行っちゃおうかしらね〜』
平板に耳元へ後ろから言わないでくれ(汗)
『ん・・・?』
待てよ、書く人ごとに字の流れこそ違うが、同じ綴りばかりだ
『ミスミ、言い寄ってくる男どもに何か変化は無かったか!?なんでもいい!』
『え・・・え?』
声根が変わった志摩にミスミが戸惑う
『そう、ですね・・・青い服を来た人が一気に減った気がします』
青い服・・・イタリア空軍の部隊が減っている?何故だ
『どうしたの?いきなりナンパ男の種類なんて聞いて』
『ちょっと問い合わせてみる。おそらく帰ってこれない、食事は二人で済ませてくれ!』
制服を自分で適当にだして着替え、ローマに出来た大使館(現在、転移して来た陸海邦人の代表が顔を会わせて会議する場となっている)に向かう事にした
『はい、ちょっと待った』
桂がその前に立ち塞がる
『なんだ!?』
『あんたが杖ついて歩くより』
桂がバイクを指差した
184 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/24(日) 15:01:40 [ .V7VR5C. ]
『バイク、借りま〜す!』
桂がバイクに跨がり、一気にアクセルを踏む。サイドカーには志摩が乗り込んで
『ま、待たんかこらぁっ!』
『あの、すいません!すいません!』
いきなりの事に、制止の怒声を浴びせかける陸軍さんにミスミが謝り要員としてペコペコと頭を下げている
『む、無茶するなぁ・・・免許持ってるのは知ってたけど』
女性の社会運動に関わっていた桂は、男に負けない為、沢山の技能を保持しようという運動側の意向と本人の気性もあってか、いろいろな免許を持っている。その代わり家事全般の技能が落ちるのは否めないが。
『かっとばすわよぉっ!!』
『まったく、どんな休日だ』
サイドカー付きのオートバイで夫を乗せて妻が暴s・・・もとい、疾走させるローマの休日、逆なら絵にもなろうか?
しかし・・・
『物凄く、嫌な予感がした・・・』
欧州の航空機は航続距離が短い、その為飛行場を転々として目的地に移動する。が、その分無くなった燃料補給その他にかかる時間を食う
もし、英国の機動部隊を逃してしまったならば・・・伊空軍が今からこちらに戻ってくる事は不可能だ。つまり、アドリア海の艦隊は、空の守りも無いまま、軟らかい横腹をさらすばかりなのだ
185 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/24(日) 15:03:55 [ 2lSfKk9s ]
桂には玄関で待っていてもらう。
『失礼します』
大使館の海軍側が使う部屋に入った時、その雰囲気の重さに圧倒されそうになった
『志摩・・・特佐か、どうした?』
大陸派遣艦隊の代表をやっている栗田中将が直に聞いてくる、海軍はこういう場では厳しく身分を問う。いつもなら参謀さんらの誰かが聞くのに、どうしたんだ?とにかく大事だと思うので言う
『イタリア空軍がアドリア海のカヴァーから離れた可能性があります、艦隊に対空警戒の』
『いまさらもう遅い!!!』
『はっ・・・!は?』
いきなり怒鳴られても困る
『いや、そうか。上陸中の君は知らないのか・・・おぃ』
参謀さんから走り書きのメモを渡される
『こ、これは・・・!』
沈没 空母沖鷹 重巡衣笠 駆逐艦6 海防艦11 タンカー類7隻(各艦放棄も含む)
『未だオイラーから流れ出した燃える重油を避けようとしての衝突事故が絶えない、オイラーは7隻で五万トン相当がやられた。小艦艇の損失は先に言った重油の延焼による放棄がほとんどだ』
大陸派遣艦隊の場合、長期航海と敵の存在の薄さに可燃物だらけだったのも災いした
志摩の肩が落ちるがすぐに持ち直す
『反撃は!?』
『無駄だ、空母は二隻しかない』
186 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/24(日) 15:06:57 [ 2lSfKk9s ]
『大鷹級は予備機除いて24機搭載だ、そして地上制圧と掃射の関係から搭載は戦闘機が主、艦攻は二艦で12機しかない。無駄に死人を増やすだけだ。それに魚雷はその12機12本しか用意していない』
志摩が食い下がる
『しかしっ!攻撃を受けたままであるなど!』
『特佐控えろ!我々も努力はしとるよ!!』
イタリア海軍の哨戒部隊に位置の特定を頼んだりはしている
『そうだ!足止めなら・・・隣の陸軍さんの機材をt』
『陸軍の助けなどいらん!!』
『空を飛べれば蝶々トンボも鳥の内か!?話にならん!!』
批難が参謀連中からあがる
『しかし、反撃を他国軍に任せきりでは・・・!』
後々の交渉と立場に大きな不利益を得る
『それに、地中海は多島海で目印になる灯台他も多く整備されています。いくら陸軍航空隊が洋上飛行が苦手であったとしても、出来る筈です!トドメに我々の機体を出せばいい!』
『馬鹿な事を言うな!陸式にそんな事が出来るものか!』
『女の安全の為に海軍を捨てた陸軍の手先め!』
聞き捨てならない
『なんですと!私の海軍への忠誠を疑いなさるか!?』
『お前達、すk』
『馬鹿な事を言ってるのはお前さんらだぜ』
栗田中将の制止の途中に扉が唐突に開かれた
187 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/24(日) 15:10:12 [ fIFx11L2 ]
『本人がいないところで出来る出来ないを決めつけないでいただきたいな』
話はしたことが無かったが見た人だ。加藤健夫大佐、陸軍航空隊の代表でローマ入りしていた
『陸軍が何の用だ!出ていけ!』
『これは海軍の管轄だ、関係のない奴がしゃしゃり出てくるな!』
『俺達が乗って帰る船だ、関係なくあるか!!!』
加藤大佐が一喝して参謀連中を黙らせる
『では、お聞きしますが。出来るのですか?』
栗田中将が気を取り直して聞く
『・・・出来ます。幸い地上支援を恒常的に行う必要のあった我々は爆弾には困っておりませんし、機体の数も十分です。艦隊攻撃の経験こそありませんが、動く戦竜に我々は爆弾をブチ込むのが信条です。絶対に当てて見せます。当たるならば、送り出せる機数が多い方が戦果をあげら
黷驍ニするのが道理です』
栗田がさらに問う
『そちらが保持する陸用爆弾で思った効果がありますかな?』
相手はおそらく英国の装甲空母
『攻撃を受けた相手の回避運動、消火作業、陣形再編。足止めをするには十分です。そしてトドメは我々が!』
志摩が栗田に言う
『海軍さんが喰う分は残しておきますよ、これはあなた方の仇だ』
栗田は考えた後立ち上がり、頭を加藤に下げた
188 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/24(日) 15:12:49 [ 62Dc2aCc ]
『よろしくお願いします』
参謀連中が狂ったかとでも言うような驚きようで栗田に意見する
『司令、陸軍ですぞ!?恥の上塗りを許すような物です!御再考を!』
『その時は存分に陸軍をお叩きなされい、それで状況が変わるとは思えませんがな』
『なにをっ!?』
どこ吹く風で加藤が悪意を受け流す
『それでは失礼します。吉報をお待ち下さい』
栗田に敬礼をして部屋から出ていく、あとに残された《異物》は志摩のみ
『志摩君、君は海上勤務はどれほど?』
栗田が場の雰囲気を参謀連中が何か言い出してさらに悪くなる前に切り出した
『海大を目指すことになりまして、規定の分は、以前』
『艦によっては人員に欠員が出ているに違いない、艦を預かって貰う事を頭に入れておいてくれ、今日は上陸だろう。ご苦労だった、あとは任せたまえ』
栗田なりの思いやりなのだろう
『はっ!失礼します』
部屋を辞す。まだ、長い一日は終わりそうに無かった
194 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/25(月) 14:49:24 [ PX2g/hVY ]
同日・ハワイ太平洋艦隊司令部
『さて諸君、連絡ではイギリスの紳士達が日本人に対して攻撃を仕掛けた筈だ。OSSを始め、日本はそれを区切りにうって出てくると思われる。図らずも現状はオレンジプランが完遂した上で計画を練らなくてはいけなくなった。意見を聞きたい』
米太平洋艦隊の長、ハズバンド・E・キンメルは周りの提督やスタッフを眺めて言った
『さっさと東京に旗をおっ立てたいところだが、小笠原のあたりのジャップを追い出したらどうだ?』
先ずはハルゼーが手を上げるなりブルドックのような顔で言った。うん、とキンメルは頷くと今度は静かに手を上げているスプルーアンスに意見を求めた
『何をするにしても、先ずは工作艦を。そうですね、駆逐隊を五セットほどつけて、グァムかトラックに配備すべきかと。マニラやシンガポールの修理施設が東アジアでは現在使えますが、マリアナから北の海域が戦域となる以上、損傷を受けた艦を連れて帰るにも中継は必要と思われま
キ。私個人としては海域データが十分揃っているグァムに先に置くのがベストかと』
なるほど・・・と呟いてキンメルは一人、腕を組んで唸っているフレッチャーに言葉を投げ掛けた
『ジャック、どうした?』
195 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/25(月) 14:50:24 [ KYi//xS. ]
『ええ、日本人の戦力が増えたとして、いかほどのものが奴らの手にあるのか気になりまして』
『なんだ、その事なら心配無い』
キンメルは快活に言った
『奴らの言う八八艦隊で物になったナガト、空母になったカガ、アカギの元の戦艦群の解体または沈没は我々も確認している。名前はこの限りでは無いがキイクラスが4隻、13号艦という巡洋戦艦が4隻がペーパーで終わったとされているが、これが存在していると思われる。実際フィリ
bプス提督が見た戦艦は二種類、つじつまは合う。よって日本海軍がもつ戦艦は最高で従来の11隻(比叡が復帰したのを知らない)に8隻を足したものであろう』
うち1隻は大西洋、デカいらしい1隻はフィリップス提督がレパルスと引き換えにドック入りさせた。
『大陸やフィリピンに張り付かねばならぬ戦力を差し引くとな』
転移直前、南シナ海にコンゴウの2隻が展開していたが、これをさらに増大させた物を分派しなければならなくなった。倍の4隻は固い、しかもウェールズが居る為ナガトやイセといった主力を派遣せねば対抗は不可能だ
『そして相手は内南洋に攻め込まねばならない立場だ』
足を固めて撃ち合うなら日本艦のアドヴァンテージである優速を殺すことができる
196 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/25(月) 14:52:14 [ u9FMJxgs ]
『22日間の消失は、まさに日本の悪事を合衆国が正すべく神が為された奇跡だとしかいいようが無い』
予想外の大兵力が守る地域に攻め込む、優速の日本艦は内南洋という自分の庭でしつこく食い下がってくる。こちらは重防御のかわりに低速だ、勝てば問題は無いが、そのような場合引き上げるには甚だ困ったことになったろう。まぁどんな場合でも最終的には勝つが、被害は少ない方が
ヌいに決まっている
『ウィルの案は良いがまだまだ内南洋を固めてからの方が良策と判断する』
『ちぇっ、そういうと思ったぜ』
舌を出して肩をすくめる
『だが、内南洋侵攻を遅らせたり、戦力を分散させるうえで分攻は手だ』
ハルゼーが身を乗り出した
『ハズ、そいつぁ・・・』
『太平洋艦隊の空母部隊を好きに使え、ウィル。本土に殴り込むなりなんなりやりたい放題に暴れ回れ、得意だろう?』
キンメルがウィンクする
『グレイトだハズ!持つべきはクラスメートの上官だな!!』
今にも踊りだしそうだ
『お前はブル(猛牛)なんだろうが、ブルに縄つけて走らせるなんて馬鹿な真似はせんよ。ただ、レディレックスだけは直掩に欲しいのだが』
『レディサラとビッグEの三姉妹がいりゃあジャップなんぞ十分だ!』
197 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/25(月) 14:53:06 [ qolO/Z6Q ]
『こうしちゃおられん、ボーイズに訓練の上乗せを指示しなきゃならん!行ってくるぜ!』
動き出したらハルゼーの事居ても立ってもいられない苦笑しつつキンメルが手ででていけと指示する
『ウィルには強行偵察の意もあるのですね』
微笑みながらスプルーアンスがキンメルに言った
『そうだ、レイ。あの火の玉小僧がぶつかって来て何の反応も無いなんて事はありえん。まさにうってつけだよ、それに奴はボーイズの事を良く考えている。あれで引き際は意外なほど見事だ、空母が今後の主力だという主張は認められんが、空母を扱わせたら一番の奴だ、というのは理
している』
そして巡洋艦部隊はこの眼前のスプルーアンスが一番である事も理解している
『レイ、グァムかトラックと言ったが、それでは場所を特定されやすい、五個駆逐隊といわず、君の部隊他、軽速部隊の三分の二を展開させる。決戦時、分散配置状態の巡洋艦部隊を一つにまとめ上げて馳せ参じて欲しい、そしてそれがレイ、君にならできると私は考えている』
『意に添えるよう努力します』
頷く
『ジャック、君の用兵は慎重かつ丁寧だ、レディレックスしかないが、私とパイ君の頭を守っていてくれたまえ』
『仰せのとおりに、サー』
198 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/25(月) 15:01:48 [ t4UopWMg ]
分散した日本艦隊をノースカロライナ級2隻が増派された我が太平洋艦隊の主力、11隻の戦艦の隊列が一つずつ確実に撃滅する
『decrease、漸減作戦、か・・・オレンジプラン自体も味気ないが』
キンメルは少し考えた
『ポトマック河岸の桜は綺麗なものだが、日本の靖国神社にも綺麗な桜があるという、ならば散ってもらおう、我々はその後できる実をおいしくいただく。作戦名、フォール・ザ・パーフェクトチェリーブロッサム』
相手は条約を破り、自らが完璧な状態で我々と当たる事ができると思っているだろうがそうはいくか、満開になった桜はただ散るのみ!
『さぁ諸君、仕事を始めよう!』
同日
フィリピン・クラークフィールド
Bー17が70機、静かに飛び立つ時を待っている
『攻撃目標は八幡製鐵所、そしてもう一つ』
見送りにきているマッカーサーはニヤリとした
『狙いはフィリップス提督が傷をつけた巨大戦艦が入渠した長崎造船所!』
シンク・ザ・ヤマト!
『フィリピンへ合衆国の更なるBー17の増援と市民の支持を得る為にこれほどのパフォーマンスは無い』
私のやり方がアジアでは正しいのだ!私がアジアで合衆国を体現せねばならない、それを世界に証明してやる
206 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/27(水) 10:05:16 [ KYi//xS. ]
地中海・陸軍航空隊
『百式司偵からの誘導は続いている、か。有り難いことだ』
四式重爆、飛竜の中隊機を先頭に陸軍航空隊は飛ぶ
海軍さんから渡された推定データにより九機の百式司偵が扇状偵察で敵を思ったよりも早く見つける事ができた。そして優速を生かして敵戦闘機を振り切りつつ無線誘導を続いている。転移してアドリア海側に現れた陸軍航空隊は発見の報を受け、その機材のうち78機が英機動部隊攻撃に
び立たった。内訳は疾風が24機、屠竜が36機、飛竜が18機である
『しかし、海軍さんを笑えんな、海に出ると尻がムズムズする』
あいつらはこれを太平洋や大内海でやっていた、不安はないのだろうか?いかんいかん!
『脱落者が出ないようお互い注意しろ、こんな外国で迷子になったら往生するぞ!』
といっても欧州に居る俺達全員が迷子のようなもんだが
『ん?』
列機の一人が右前の上を指さした、高度で上を取られているが相手の数は8機程、よし!
『続けェ!』
増槽を落とし、バンクして列機に伝えてフルスロットル。続くのは半数の12機、残り半分は加藤の指揮らしくきちんと爆撃機と屠竜を護衛し続けている。敵しか目の内に入れないという粗忽者はこの加藤の部隊には居ない
207 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/27(水) 10:06:21 [ bBlcovoo ]
地中海・英機動部隊イラストリアス
『うるさい蝿はまだ落とせんかね?』
ハルダーが聞く
『ダメです、600キロ以上でその機は飛行しており、ハリケーンではどうにも・・・』
航路も対マルタに集まった枢軸機を避け、一度アレキサンドリアに入港してから気を見てジブラルタルに戻るはずがこんなところで捕まるとは
『速度もさる事ながら、滞空時間もたいした物です』
知る限りの独伊の機体であれば、もうとっくに引き返している
『では、やはり日本機か?』
『ほぼ十割。信じ難いですが』
日本機がそんな性能を持っているとは思いたくないですが、と参謀は付け加える。模造品とコピーばかりでは無いのか?
『ですが、米軍機が我々の機材よりも航続距離は長い、太平洋に米国と相対している日本機の航続距離が長い可能性は高いでしょう』
性能はともかく、もっともな推測だ
『RDFに敵編隊を探知!』
『来たか!対空戦闘用意、あるだけのハリケーンを上げたまえ、攻撃を阻止するんだ』
英国にとってこの機動部隊は至宝だ
『まず2小隊をぶつけて護衛を引き付けたら、覗き屋を追った奴らを引き戻す。それと残りの1小隊で敵陣を崩す!』
編隊を崩せれば敵の攻撃効率は著しく低下する
208 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/27(水) 10:07:23 [ 7Vp0wi8U ]
それにRDFを使った誘導、迎撃は我々の十八番だ
『伝えてくれ、RDF班、本艦隊上空の防空は貴官らに任せる、頼むぞ』
『はっ!』
探知を伝えに来た担当の伝令に言付けを言い付ける
『第2、第15巡洋艦戦隊、輪形陣展開します!駆逐艦戦隊、続きます!』
ある意味賭けの奇襲に相応しく、保険として対空巡洋艦のダイドー級が七隻艦隊に配備されていた。各艦四基の両用砲に仰角がかけられる
『ハリケーン隊突破されました!』
『なにっ!?もうか?』
だが、ハルダーが望んだ迎撃のイニシアチブは加藤が常日頃から部隊に浸透させていた心掛けと、疾風とハリケーンの性能差によって一度も握られることもなく、大日本帝國陸軍航空隊がその攻撃力を英機動部隊へ叩きつける事になる
『・・・巡洋艦一隻をつけてイーグルを離脱させよ!』
『サー!?それは!』
イーグルは21ノットしか出ない。彼女を盾に・・・!
『イーグルは速力が遅すぎる!これが私の責務だ!』
この罪は私がいつか死んで主の御座でイーグルの乗員達に許しを請う、こちらに攻撃が集中する場合もある、ならば最悪イーグル一隻は残る!分散するならば最良で全部残る!ジブラルタルから出撃した時から胸に秘めていた策だ
209 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/27(水) 10:10:07 [ CDVnjlgM ]
陸軍航空隊
『すっげぇ対空砲火だ!』
英機動部隊がさかんに対空砲火を撃ち上げる、異世界に行っていた頃とは較べものにならない
『練習相手の海軍さんの師匠らしいからな!』
不謹慎ながら、陸軍航空隊にはGFを想定して攻撃目標として海上目標攻撃の練習をしていた。(故にチセ開発の時、峯風級の火器搭載数などの情報が参考に出来たのだ)
といってもダイドー級が激しいだけで、今となっては秋月級や第2砲塔を撤去し機銃の増えた駆逐艦を揃え、巡洋艦、戦艦とが存在する海軍が見たら、まだまだ足りないと言い出すかもしれなかったが(これは自らの持つ、空母主体の第三艦隊を仮想敵にしたため)
『だがよ、俺達は陸軍だ、陸軍らしいやり方でお前らに痛い目をあわせてやる・・・!』
飛び立った陸軍航空隊の攻撃の主体は屠龍だ、そして屠龍の内9機は爆弾を搭載していなかった、その代わり37o砲弾をフルで装備していた
その爆弾を搭載していない屠竜は3機ずつ小隊に別れて目標とした艦を選別し、高度を下げ、海面近くを全速で駆け抜ける。爆弾を搭載しているもののうち9機は離れた場所に居る別な空母へ向かった、組しやすしと見たのだろう
『ちゃんとみんな後ろについて来てます!』
210 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/27(水) 10:12:46 [ 5k.cDmFg ]
『俺達陸軍はよぉ』
照準器のレクチルをパイロットが覗きながら呟く
『敵の火点を一つずつ潰しながらでしか前進できねぇんだ・・・テメェの火力は俺達の進む道に居て邪魔なんだよ・・・だから』
レクチルの中央にはこちらに火を吐き続けるダイドー級の砲塔が捉われていた
『さっさと潰れてくれやぁっ!!!』
ドムッドムッドムッ
ガガガガガガガガカ!!!
機首の20oと37oが20oは連続的に、37oは断続的に音を立ててダイドー級の砲塔へと吸い込まれる。高角砲塔はその対空目標への追随の為厚い装甲は張られていない、戦車のように中の空間が狭いわけではないので、抜けたとしても確実に撃破できるとは言えないが
『やりました!敵砲沈黙!』
砲撃がやんだ、砲身がこうべを垂れたまま動かない
『おまけだ!抜けるときは後部銃座でやつらの頭を下げさせろ!』
『了解!!』
ダダダタダ!!!
『みんな行けっ!行けえっ!!』
彼等は離脱するが、残り18機は出来た対空砲火の穴からイラストリアス級空母へと突入する。軽爆がやるような急降下でなく緩降下でしかないが、空母の乗員からしたら、悪魔の使いである事に違いはない
ドドドドド!!!
そして空母は爆煙に包まれた
211 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/27(水) 10:14:23 [ JlgIauw. ]
英機動部隊・イラストリアス
『クレオパトラが!!!』
ダイドー級の一隻をイーグルに付けた為、イラストリアスとビクトリアスには各三隻、護衛にダイドー級がついていたが、イラストリアスについていて、最後まで砲火を被せてくれていたクレオパトラのAとB砲塔の間に日本機が突っ込んだ。彼女の艦橋に破片が飛び込んだのだろう、指
ヲが途切れた無事な後部のXY砲塔が迷ったように首を振る間に日本機が彼女を飛び越えてくる
『これは、いかん!総員衝撃に備えよ!』
ハルダーが屠龍を睨む、対空艦を黙らせてから攻撃部隊を目標に送り込む・・・機数と経験がなければ出来ぬことだ、それが奴らにはある・・・!
ヒュルルルル
爆弾の空を裂く音
『提督!!当たります!伏せて!!!』
参謀が体当たりをかますようにハルダーを押し倒す
ドドドドド!!!
体が抑えられていたというのに一度宙に浮き、床に叩きつけられる、見た感じからして五発は固かったはずだ
『ダミッジリポート!』
艦長が叫ぶ、ハルダーが艦橋から甲板を見る
『よおっし!』
艦の左舷側前部高角砲こそ破壊され、チロチロと炎を見せているが、爆煙の晴れた飛行甲板には・・・
『これが装甲の勝利だ!』
212 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/27(水) 10:16:46 [ 5dL2ey5s ]
陸軍航空隊
『なにぃっ!?』
250キロ爆弾の直撃だぞ!?
向こうでは敵空母が燃えている。対空砲火が濃いイラストリアス級のグループに近づけなかった飛竜の隊が別れて飛んで行った屠龍隊のあとに続いて攻撃した結果だろう、しかし・・・18機でやって命中弾多数だってのに・・・
『当たり前だ、イラストリアス級は500キロ爆弾の被弾を想定したものだ、ましてやそちら、陸用の爆弾じゃ元から抜けるはずなかろう・・・トドメは任せな!』
無線に割り込みが・・・首を振り回すと海面近くを濃緑の機体が滑っている
『海軍さんの天山か!』
数はひぃふぅみぃ・・・9機
『あいつを沖鷹の元に送ってやらなきゃ、勘定があわねぇんだよ、イギリスさんよぉ!』
腹には魚雷、そして流星改を装備する本土の機動部隊以外、世界の攻撃機が行ってしかるべきとされる範囲外の機動と速度で射点へと
『低い!ペラが海面を叩いてやがる・・・!』
気迫の効果もあるのだろうが、何て奴らだ
『でもこれで、これで・・・!』
あいつにトドメが刺せる!
『左舷側の対空砲火に穴が出来てる、ありがとうよ、陸軍さん』
頭を抑えてがっちりブチ込んでやる
『海の底で沖鷹に詫びて来いや!!てぇーっ!!!』
213 名前:長崎県人 投稿日: 2006/12/27(水) 10:19:35 [ gY4wlmWo ]
イラストリアス
『っ!?』
爆煙の向こうから今までと違って、単発の機体が低空を横一列に並んで突っ込んでくる
雷撃機だ!!!
しかし理性は否定している、魚雷を積んであのような速度が出るはずが・・・
『艦長!』
艦長が頷いて航海士に命令する
『ハードスターボード!』
そうだ、魚雷を積んだ雷撃機は動きが鈍い、これで射点をはずせr
ピタっと敵機は艦の動きにあわせて機体を滑らせる
『馬鹿な!!』
艦長が叫んだ。想定がストリングバックやアルバコアでは仕方がなかったのかもしれない
『・・・なれば汝、受難を甘んじて受けん』
敵の機体から魚雷が投下され、白い航跡が伸びてくる。これは避けられまい。全てがゆっくり動く、だが時は止まらない。魚雷が艦の影へ入った
被雷数4、全て片舷。イラストリアスの命運はここに窮まった
『総員退艦!こいつは頭が重い、傾いたら一気に行くはずだ!』
艦長は被雷数と状況から半ば艦の保全を放棄していた、そしてそれが多数の乗員の命を救うことになる
『閣下!』
『・・・我々は取り返しのつかない火種をつけてしまったのかもな』
ハルダーと艦長が離艦した15分後、イラストリアスは地中海へその身を没していった