137 :中将:2007/02/13(火) 23:04:21 ID:lwaeKRsw0
現代合衆国召喚13

 アーリア帝国の下方に位置する島には、三つの国が存在する。島全体の大きさは、丁度前世界の日本位である。この島の形は、特徴的で中央がへこんでおり、V字型になっている。その中央に位置するのが、フォマルグ共和国である。左側には、アルゲフト王国。右側には、グップス帝国。この左右の国は、非常に仲が悪く、絶えず争いを繰り返していた。そんな中で悲惨を極めていたのが、フォマルグ共和国だった。まるで将棋の駒のように両国に取ったり取られたりしていて、常に争いに巻き込まれていた。ただ、一度占領されても粘り強い抵抗運動により必ず追い返してはいた。そんな中で、フォマルグ共和国の領内の山脈で金鉱が発見された。埋蔵量は、かなりあるとされていて、左右の国の欲望の的となった。

 ただし、この両国以外にもその金鉱を狙う存在がいた。それが、アメリカである。アメリカは、他国との貿易のための金貨の原料の金の安定した供給先を求めていた。そんな時にダークエルフからの報告にフォマルグ共和国の金鉱の情報が入ったのである。アメリカにとって渡りに船とは、正にこのことだった。さっそく、フォマルグ共和国に接触した。フォマルグ共和国もアメリカの強さは、耳にしており、左右の国から守ってくれるならという条件付きで、一部の金鉱の採掘権を譲るという返事が返ってきた。それに対してアメリカは、アーリア帝国に派遣していた部隊の一部をフォマルグ共和国に送り込んだ。

 アルゲフト王国首脳部では、突如として乱入してきたアメリカの対応に苦悩していた。今回の会議もそれについてである。王の側近達が次々と発言する。

「全く以ってあのアメリカとかいう国は、けしからんですな。我が国とグルップス帝国の争いに口出ししてくるとは。」

「その通りだな。進撃経路として重要なフォマルグ共和国を通るなとは。」

「フォマルグ共和国を通らずにどうやってグルップスに攻め込めばいいのだ。」

「おまけに金鉱を奪うには、アメリカと戦火を交えることになるな。」

138 :中将:2007/02/13(火) 23:05:44 ID:lwaeKRsw0
出てくるのは、文句ばかり。黙って聞いていた王が突然発言する。

「余は、良い考えを思いついたぞ。グルップスとアメリカを戦わせるのだ。」

 王の思いつきは、好い加減だということを知っている某側近が疑問を投げかける。

「一体どうやるのですか?グルップスは、アメリカに戦争を仕掛けるつもりは無い様ですが…。」

 にやりと笑って王が答える。

「グルップスに化けて、アメリカを攻撃するのだ。怒ったアメリカはグルップスと戦争をする。恐らくはアメリカが勝つだがろうが、運が良ければ共倒れになるかもしれん。アメリカが勝ったとしても弱っているだろうから、我が軍で潰せるだろう。」

 その話を聞いた側近達が口々に賛同の声をあげる。

「おお、それは名案ですな。我が軍の損害も抑えられます。」

「さすがは、王様ですな。」

「王様万歳!!!」

 その光景を某側近は、実に冷ややかな目で見ていた。

「世の中そんなにうまくいく筈が無い。勝ったとしてもそれは、局地戦においてだ。戦争に勝つわけではない。」

 吐き捨てる様につぶやいた言葉は、王を持ち上げまくる他の側近の声に掻き消されてしまい、誰にも聞かれることは無かった。

139 :中将:2007/02/13(火) 23:07:04 ID:lwaeKRsw0
フォマルグ共和国沿岸で一隻のアーレイバーク級ミサイル駆逐艦フライトUAが沿岸警備を行っていた。艦内は、のんびりした雰囲気が漂っていた。沿岸警備なんてバカンス程度と考えていたからである。コーヒーを飲みながらレーダーを見ていた士官が、突然声を上げる
 
「高速の船舶が三隻接近して来ています。」

 その言葉に艦長が素早く反応する。

「何だと。大きさは?」

「その辺の漁船より少し大きい位です。その割には、速過ぎます。20ノット以上出てます。」

 艦長は、素早く考えを巡らせる。それだけのスピードを出すには、魔石を用いた推進装置が必要だ。しかし、高価なので使用する者は限られている。金持ちか軍隊だけだ。金持ちは、左右の国の海軍が小競り合いをする物騒なこの海域に来る筈は、無い。残るは、軍隊だけだ。問題は、どうしてこんなとこで推進装置を使用しているかだ。無限に使用できるわけではないし、第一にこんなとこで使う必要が無い。可能性としては、どちらかの国の海軍の艦艇が敵国にちょっかいを出しに行く。或いは、我が艦……。冗談じゃない。

「総員戦闘配置につけ。どっちの国かはわからんが、本艦を攻撃する可能性がある。」

 全員が緊張する。やがて、その船の姿が見えてくる。所々を鉄板で覆っており、中央に何かのカタパルトがある。明らかに軍艦だ。それが三隻横一列に並んで進んでくる。後部には、剣をモチーフにしたどこにでもありそうなグルップス帝国の国旗がはためいている。レーダーを見ている士官が距離を報告してくる。

140 :中将:2007/02/13(火) 23:08:21 ID:lwaeKRsw0
「距離900、800、700、600…!」

 正面から接近して来ていたグルップス艦の中央のカタパルトから距離600になった瞬間、しゅぼんという音と共に光り輝く物体が射出される。合計三本。真っ直ぐにアーレイバーク級目掛けて突撃してくる。グルップス艦は、そのままUターンして逃走していく。

「近過ぎるぞ!回避は無理だ。衝撃に備えろ。」

 艦長の悲鳴じみた声が響く。次の瞬間、艦橋に一発が直撃した。猛烈な爆発を引き起こして艦橋を文字通り吹き飛ばした。火災が発生した。さらに一発が前部の砲に命中。砲を木っ端微塵に破壊した。もう一発は、変な方向へ飛び去った。しかし、さすがは米海軍である。直ちにダメコンチームが被弾箇所に急行して、消化活動を行った。幸いにも通信設備は、無事ですぐに救援を求めた。救援が駆けつけ、大破状態のアーレイバーク級を救助した。アメリカ本土へと後送されることになる。

 この事件は、あっと言う間に当事国のアメリカ、他三国に知れ渡った。グルップス帝国は、そんなことはしていないと必死に弁明したが、怒り狂ったアメリカは聞く耳を持たず、一方的に宣戦布告をした。

 アルゲフト王国は、目論見通りにいったことを大喜びして事態の推移を傍観することにした。ちなみに攻撃を敢行した艦は、沈められ、乗員は、待機していた商船に化けた艦に乗り込み、意気揚揚と帰った。
 
 ただ、アルゲフト王国は自分達の国に多数のダークエルフ諜報員が潜入していることを知らなかった。

 余談だが、アメリカは、技術漏洩を恐れて(ダークエルフの入れ知恵)もっぱら金、銀、銅貨で貿易を行っている。


301 :中将:2007/03/13(火) 18:37:00 ID:JCbwyun60
現代合衆国召喚14

 怒り狂うアメリカ軍は、一斉にグルップス帝国へと進軍を開始する事とした。進軍に先立って国境付近に布陣しているグルップス帝国軍への航空攻撃が実行された。A-10サンダーボルトU、AC-130ガンシップ、B-52ストラトフォートレスが出撃した。護衛として、F-16ファイティング・ファルコンが出撃した。さらにE-3Cセントリーも出撃した。

 辺りはなだらかな丘陵地帯で、広く約八万のグルップス軍は展開していた。航空攻撃の格好の的だった。上空に現れた米軍地上攻撃機に対して、グルップス帝国軍は盛んに対空型魔道砲を撃っているがとんでもなく下手糞で全く命中しない。この世界の対空型魔道砲の命中率は、非常に悪い。射程距離も短い。おまけに砲弾の威力も弱く、ワイバーンならともかく米軍航空機に対しては、直撃でもしない限りダメージを与えられない。ワイバーンが飛来して必死に迎撃しようとしたが、護衛のF-16に次々と撃墜されていく。まるで七面鳥打ちだった。地上攻撃機群は、一斉に地上にいるグルップス帝国軍に襲い掛かった。大量の爆弾が降り注ぎ、片っ端から帝国軍を吹き飛ばしていく。

 米軍に楽勝ムードが漂っていた時に突然、地上から光線が延びると、それが命中したAC-130ガンシップが火を噴きながら落ちていった。さらに光線が発射されて別の機がギリギリで回避する。最初は、呆然としていた米軍航空部隊も我に返ると光線が発射された場所に爆弾を落としまくった。地形も変わる程だった。それから、光線は発射されなくなったが、泡を食った米軍航空部隊は高度を上げて、爆弾をばら撒くと撤退した。

302 :中将:2007/03/13(火) 18:37:35 ID:JCbwyun60
 ダークエルフに尋ねると謎の光線の正体は、一種のレーザー兵器だということだった。特殊な魔石をエネルギーとしてレーザーを発射して目標を攻撃する。このレーザー兵器自体は、かなり前に発明されていたのだが、魔石の調達にべらぼうに金がかかるためほとんど普及していなかった。また、射程もそれほど長くない。米軍機を撃ち落すのなら割に合うと判断されて使用されたらしかった。グルップス帝国は、そんな大国ではないので一門でも持っていたこと自体が奇跡で、もう無いだろうとの事だった。しかし、これを恐れた米空軍は有効な対抗策を講じるまで出撃を控えることにした。

 今度は、米軍地上部隊が進撃を始めた。迎え撃つのは、爆撃ですり減らされた約六万のグルップス帝国軍。米軍は、M1エイブラムス戦車を先頭にして、歩兵を搭乗したM2/M3ブラットレー歩兵戦闘車、ストライカー装甲車、M113装甲兵員輸送車、ハンビー、トラックが続く。完全に機械化されていた。上空には、AH-64Dアパッチ・ロングボウが援護についている。この他に対空部隊も続く。

 進出してきた戦竜が、一斉にブレス攻撃をM1エイブラムス戦車に浴びせ掛けるが、全く通用しない。すぐに凄まじいお返しが来た。戦竜は、120mm滑空砲の一撃を受けて焼け焦げた肉の塊に変えられてしまった。そのまま、必死に抵抗する戦竜を次次に撃破しながら前進する。それまで、塹壕に隠れていた騎士が米軍戦車隊に勇敢に立ち向かい爆弾を投げつけまくる。さすがのM1エイブラムス戦車も破壊こそされなかったが、ショックで射撃統制装置が故障したり、駆動系統を損傷する等の損害が出始めた。たまらず、アパッチに援護を要請する。猛烈な火力で米軍戦車隊に近づく騎士を倒していく。しかし、一機が対空型魔道砲の直撃を受けて撃墜された。臆病風に吹かれてアパッチは、後退してしまった。今度は、車輛に乗って前進して来た歩兵が下車して戦闘を始めた。激戦となった。米歩兵は、手持ちの銃火器を撃ちまくり突撃してくる騎士を鎌で刈り取られていく葦の如くなぎ倒していく。そこに魔道砲の砲撃を受けた。これまで、温存されていたものだった。すぐさま、米軍砲兵隊も155mm榴弾砲やMLRSで応戦する。おまけにワイバーンまでが現れた。米軍対空部隊が迎撃する。もはや激戦では、形容出来ない程の戦いになってしまった。剣を振り翳して突撃してくる騎士を凄まじい弾幕を張り寄せ付けまいとする米軍との死闘となっていた。各種戦闘車輛の搭載している火器も火を吹き続けている。迫撃砲部隊が後方に配置されて、騎士に対して砲弾を送り込む。

303 :中将:2007/03/13(火) 18:40:43 ID:JCbwyun60
この時、グルップス帝国は乾坤一擲の勝負をかけて、後方に温存していた四万の予備兵力を新たに投入していた。米軍がもう六万は、始末したと思っているのに騎士の数が減らないのは、その為だった。丘を越えて雲霞の如く湧き出てくる騎士を無我夢中で、米歩兵は撃ちまくった。凄惨な戦場が発生していた。砲弾の弾着と共に数人の騎士が吹き飛ばされ、銃弾の嵐が騎士達の体をズタズタに引き裂いていく。騎士達は、死山血河を築いた。余りにグロテスクな光景を前にして、神経の細い米兵の一部は撃ちまくりながら吐いていた。

 結局、激戦が続いたが兵力の切れたグルップス帝国軍は、敗走することになった。グルップス帝国軍は、総兵力の約十二万を全て失った。ワイバーンも全滅した。米軍も決して少なくない損害を出した。砲撃とワイバーンの搭載していた爆弾の直撃を受けて二輛のM1エイブラムス戦車が破壊され、コンピュータや駆動系を損傷したものが四輛。各種戦闘車輛十一輛を喪失。アパッチ一機が撃墜された。兵員三十三名が死亡。五十一名が重軽傷を負った。また、シェルショックになった者が十二名。この世界に来てからの初のまとまった損害を出した。今回の損害の一番の原因は、魔道砲とワイバーンによる攻撃だった。騎士達の攻撃による損害は、少ない。機関銃の待ち構えている所に白兵突撃を行っても死体の山を築いただけだった。

 その後、兵力を失ったグルップス帝国は降伏した。


383 :中将:2007/03/20(火) 22:38:50 ID:UKNJbdq.0
現代合衆国召喚15

 グルップス帝国の降伏後、突如としてアルゲフト王国がフォマルグ共和国及びアメリカ合衆国に対して宣戦布告し、国境を越えて進軍を開始した。その兵力は、片っ端から動員を行い掻き集めた結果、十六万という大軍だった。米軍主力部隊は、グルップス帝国へ行ってしまっており、この電撃的な侵攻作戦は成功するかと思ったが潜入していたダークエルフにより知られていたため、フォマルグ共和国軍が待ち構えていた。その数は、八万。アルゲフト王国軍の半分だが、地の利をいかして激しく応戦している。実は、フォマルグ共和国軍にはこれまでの戦争でアメリカが鹵獲した大量の武器、防具、魔道砲、戦竜、ワイバーン等が供給されていた。このため、充実した軍備を誇っており、猛反撃を行っていた。士気も高かった。

 一方、僅かに残っていた米軍も戦闘に加わっていた。さらに沖合いに遊弋している第七艦隊の空母から発艦した艦載機もアルゲフト王国軍を何度も爆撃している。空軍もやっと例のレーザー兵器がアルゲフト王国には、無いという情報をダークエルフの諜報活動から入手して、地上攻撃機を派遣して、爆撃を敢行している。

 フォマルグ共和国軍と米軍の反撃により、アルゲフト王国の侵攻は食い止められている。そこにグルップス帝国へと出払っていた米軍主力部隊が、帰還した。直ちに米軍は、大規模な反撃を行った。各地でアルゲフト王国軍は敗北し、押し返されていった。アルゲフト王国軍は、一旦撤退して、戦力を整えるとノビスカート平原に全戦力を集結させた。その兵力は、十万。六万の犠牲をこれまでの戦いで出していた。アルゲフト王国は、この戦いに全てを賭けていた。これに対して米軍もグルップス帝国軍との戦闘の時と同様の戦力を派遣した。

384 :中将:2007/03/20(火) 22:40:15 ID:UKNJbdq.0
 両軍の戦いは、砲爆撃から始まった。米軍は、前回のグルップス帝国との戦いに懲りて、予備攻撃を徹底させることにした。猛烈な爆撃と砲撃が情け容赦無く行われた。爆撃を阻止しようとしたワイバーンは、護衛の戦闘機に片っ端から撃墜された。砲撃戦も米軍の砲撃は、アルゲフト王国軍の魔道砲を軽くアウトレンジしてしまい勝負にならなかった。しかし、アルゲフト王国軍側も塹壕や地下陣地に籠り、この攻撃から必死に耐えた。それでも、残ったのは僅かに二万。勝敗は、決したも同然だった。グルップス帝国軍の時と同じ陣容の米軍地上部隊が進撃を開始した。抵抗する王国軍を難無く撃破して進撃する。

 その途中で、米軍対空部隊のレーダーが接近する飛行物体を探知した。

「何だこれは?ワイバーンにしては、速過ぎるぞ。時速八百キロは、出ている…。味方の航空機じゃないしな。」

レーダーを見ていた兵士が訝しがる。その方向を双眼鏡で見ていた上官が双眼鏡の丸い視界の中一杯に見える光り輝く物体に気づくと大慌てで命令を出す。

「正体は、分からないが撃墜しろ。俺達に向かってきてるぞ。」

命令通りにミサイルが舞い上がり次次に光り輝く物体を撃ち落していく。それでも余りに数が多過ぎた。百は、越えていた。生き残った幾つかの光り輝く物体が米軍地上部隊に突入する。直撃を受けた装甲車が爆発炎上する。同じ様に他の車輛もやられた。

385 :中将:2007/03/20(火) 22:40:57 ID:UKNJbdq.0
戦闘終結後にまたしてもダークエルフに尋ねると正体は、対地型魔法の槍とのことだった。名前通りで、地上の敵を攻撃するために開発された物だった。本来は、戦竜や強固な陣地を攻撃するのに使用するとの事だった。欠点は、高価で大量生産が出来ないという事だそうだ。今回、アルゲフト王国軍は保有していた全弾を使用した。その戦果は、M1エイブラムス戦車一輛が大破。二輛が中小破。各種戦闘車輛四輛喪。兵員十三名が死亡。重軽傷の者が二十一名。

 その後、アルゲフト王国軍は壊滅する。王都にまで進軍した米軍は、逃走しようとしていた王と側近を捕まえた。既にダークエルフにより米艦への奇襲攻撃は、アルゲフト王国の仕業だった事が判明していおり、激怒したアメリカは死刑にした。当然、アルゲフト王国は降伏した。

 こうして、金鉱を巡る一連の戦争はアメリカの勝利に終わった。しかし、アメリカも新兵器や必死の反撃によりそれなりの損害を出した。この貴重な戦訓を米軍は、これからの戦いで生かしていく事になる。

 しかし、突如出現した強大なアメリカに対して敵意を剥き出しにしつつある国々が存在した。アメリカの知らぬ場所で事態は、刻刻と進展していった…。


419 :中将:2007/03/30(金) 13:18:30 ID:IIVCkGpI0
現代合衆国召喚16

 アメリカから西の方角にあるユニスク大陸には、十一ヶ国の王国がある。各国は同盟を結んでおり、まとめてユニスク大陸王国連合と呼称されている。十一ヶ国の中で、一番強力な軍隊をもっているヴェーレン王国で各王国の首脳を集めた緊急会議が開催されていた。会議は、アメリカに対する不満や怒りが吐き出されていた。

 ヴェーレン王国の代表が発言する。

「あの国は、本来我々が買う筈だった鉄を買い占めました。こんなことが許されると思いますか?」

 その問いかけに居並ぶ全員が怒りを剥き出しにして答える。

「そんなことは、断じて許されない!」

「アメリカは、横暴すぎるぞ。このまま野放しにしておく訳には行かない。」

「制裁を下すのだ!」

 事の発端は、ユニスク大陸王国連合が買う筈だった鉄をアメリカがより高い値段で購入してしまったという出来事だった。ユニスク大陸王国連合はアメリカに抗議したのだが、アメリカからの返事は自分達より高い値段を提示すればいいだろうというものだった。この態度に激怒したユニスク大陸王国連合が今後の対応を練るためにこの会議が開催されたという訳である。

420 :中将:2007/03/30(金) 13:19:46 ID:IIVCkGpI0
 他の代表者も次次に不満を述べていく。

「鉄以外の鉱産資源もアメリカに独占されつつある。このままでは……」

「鉱産資源だけではなく、食料等も独占されつつあるぞ。」

「アメリカは、我々を餓死させる気か!」

 事実、アメリカは大量の物資を自国の為に独占していっていた。

「我が国としては、この辺りでアメリカに思い知らせてやる必要があると思います。」

 ヴェーレン王国代表の提案に全員が食いついた。

「その通りだ。アメリカに一発ガツンと食らわせてやるのだ。」

「しかし、具体的には何をする?」

 その質問に素早くヴェーレン王国の代表が答える。

「アメリカの都市を襲撃します。」

421 :中将:2007/03/30(金) 13:20:57 ID:IIVCkGpI0
 アーリア帝国にあった港街であるセティス市は、アメリカの御蔭で急速に成長した都市の一つである。良好な港を備えたこの港街は、アメリカと各国との貿易の一大拠点とされ、アメリカ人が多く住んでいる。というか、ほとんどアメリカの都市と化していた。現地人は、貿易関係者以外はほとんど追い出されていた。郊外には、アメリカ陸軍の基地もある。人口は、約二百万人。この都市が惨劇の舞台となった。

 惨劇の始まりは、突如として市内に侵入してきた三万人近い騎士達によるものだった。侵入してきた騎士達は、無差別に市民を虐殺し始めた。これに対して警察が反撃した。セティス市警察の総員数は、約六千人。市内各所にバリケードを築いた。警察の反撃は、熾烈を極めた。何しろ騎士達が襲った相手は、無実の一般市民である。怒り狂うのは、当然だった。さらに外地の都市だけあって、危険性も高いことからセティス市警察の装備は強力だった。携帯する拳銃は、治安機関用のフルオート射撃が可能なグロック18Cや軍でも採用されているベレッタが配備されていた。さらに凶悪犯罪や非常事態に対応可能なようにコルトM4A1カービン、MP5サブマシンガン、レミントンM870ショットガン、レミントンM700スナイパーライフル等の強力な銃器も配備していた。おまけにM113装甲兵員輸送車(12.7mm重機関銃M2は撤去されている)まで警察の装備として、配備されていた。正に警察軍と呼んでもいいぐらいの重装備だった。今、はからずもその重装備は役に立つ事になった。しかし、騎士達の方もワイバーンや戦竜によるブレス攻撃で警察に猛攻撃を加えた。小型魔道砲(迫撃砲と同等)による砲撃も行われた。

422 :中将:2007/03/30(金) 13:22:06 ID:IIVCkGpI0
 セティス市警察に所属する警察官である彼は、最悪という言葉はこういう時に使うのだと思った。道路にパトカーを利用して構築したバリケードの陰でロングマガジンを装着したグロック18Cを撃っていた。クソッタレな状況だと思った。撃っても撃っても騎士達の数は、全然減らなかった。いきなり通りの向こうから戦竜が現れるとブレスを放ってきた。

「伏せろ!ブレス攻撃が来るぞ。」

 同僚に叫ぶとパトカーの陰に隠れた。次の瞬間、別のパトカーにブレスが直撃して爆発した。爆風で怯んでいる隙に騎士達が突撃してきた。

「調子に乗るな!地獄へ行け。」

 フルオートでグロック18Cを撃ち、突撃してきた騎士を言葉通りに地獄へ送ってやった。お返しにブレス攻撃がきて、警察官数人を吹き飛ばす。新しいマガジンを銃に装填しながら無線に向かって叫んだ。

「戦竜を何とかしないとやられてしまう。何とかならないのか。」

 この要請を受けて、セティス市警察は陸軍に救援を求めた。

 要請を受けた郊外の陸軍基地の司令官は、悩んだ。砲撃は自国都市だから無理。地上部隊は既に向かわせたが到着までに時間がかかる。その間に警察はやぶられてしまう。制空権は、敵のワイバーンが握っている。無理を承知で攻撃ヘリを向かわせることにした。

「攻撃ヘリだ。攻撃ヘリを向かわせろ。」

423 :中将:2007/03/30(金) 13:23:18 ID:IIVCkGpI0
 命令が伝達され、AH-64Dアパッチ・ロングボウが出撃する。

 アパッチの福操縦士は、セティス市がヤバイ状態になっているということを上空から一瞬見ただけで、すぐに分かった。ブレス攻撃や砲撃で市内各所で火災が発生している。眼下で警察と謎の騎士達が激しく戦っている。戦竜を見つけて、捕捉する。

「クタバレ!」

 発射されたヘルフャイヤ対戦車ミサイルが直撃し、戦竜を肉片に変える。

「三番機が撃墜されたぞ。畜生、敵のワイバーンだ。」

 パイロットがそう告げる。

「スティンガーで撃ち落してやる。」

 ワイバーンを捕捉するとスティンガーを発射する。ワイバーンを操る竜騎士もそのミサイルに気が付いたらしく回避運動を行う。機動力を利用して必死に回避していたが、哀れミサイルが命中して爆発四散した。

「ははは、いい気味だ。」

 そう言うと次の目標を捜した。

 最高速度で勝るワイバーンと強力な武装のアパッチの間で激しい空戦が行われたが、損害を出しながらもアパッチは果敢に地上攻撃を敢行し、警察を悩ませていた戦竜を撃破していった。

424 :中将:2007/03/30(金) 13:24:21 ID:IIVCkGpI0
 この御蔭で、警察は何とか持ち堪えて地上部隊が到着した。今まで、アパッチ以外の脅威を受けずに好き勝手に暴れまわっていた戦竜がM1エイブラムス戦車の砲弾で吹き飛ばされる。騎士達も米軍歩兵の圧倒的な火力の前に撃退されていった。ワイバーンも飛来した戦闘機により撃墜されていった。しかし、市街地の混戦で米軍も被害を出した。

 こうして、セティス市に攻め込んだ約三万の騎士は壊滅した。ワイバーンも全騎撃墜された。アメリカ側の被害は、市民に一万人以上の死者を出した。負傷者も五万人を越えた。市民を守ろうと必死に戦った警察は、三百名近くが死亡。重軽傷者九百名以上を出した。軍は、アパッチ四機が撃墜された。各種戦闘車輛を九輛喪失。戦死者二十五名。重軽傷者六十六名。都市も火災により大被害を受けた。インフラも壊滅的な打撃を被った。