204 名前:中将 投稿日: 2006/12/06(水) 22:40:23 [ /6/ctAVg ]
現代合衆国召喚

プロローグ

 これは、神が与えた天罰なのだろうか?

 確かに我が国は、自己の権益の為にキレイゴトを名目にして、他国にかなり横暴な
行動をとってきたが、全ては、国民の為だった。その行為が、いけなかったのかもし
れない。

 しかし、私は、国を背負う人間として、その行動を容認している。私は、悪党かも
しれない。だが、国の行く末を決定する者としては、国民に辛酸を舐めさせる様な事
は、できない。

 これから、私は、自分の人生どころか、国の存亡に関る重大な決断をしなければな
らない。究極の二者択一だ。第三の選択肢が、あればいいのだが。そんなものは、な
い。私は、決断する。本物の国民の幸せを得るための決断だ。願わくば、その道が
誤っていないでほしい。そして、犠牲が少ないように。

 コンコンというノック音と共に、執務室のドアが開けられ、秘書が入ってくる。

「会議に出席する者が、全員揃いました。」

 それだけ言うと、秘書は下がっていった。

 さあ、行かなければならない。今から行く場所で、何を言い、何を決断するかは既
に決めた。

 そこまで考えると合衆国大統領は、立ち上がり、歩き出した。果たしてその道が
どうなるかは、神のみぞ知るだ。

 会議室には、陸、海、空の各長官とその副官に各部門の最高責任者が、集まっていた。
大統領が、入って来ると全員起立した。

「諸君、座ってくれ。」

全員が座ったのを見て大統領は、言葉を続ける。

「今までに分かっている事をもう一度説明してくれ。」

その言葉にまず空軍長官が、答える。

「各国との連絡がとれなくなってから、幾度となく偵察機を飛ばしましたが、我々の知っている国は、
一切発見できませんでした。」

そう言いながら、正面のモニターに幾つかの写真をうつす。その写真には、煉瓦づくりの家々が写っている。

「ご覧の通り、この様な一昔前の建造物の街しか発見できませんでした。」

次に陸軍長官が口を開く。

「空軍の報告を元にして、偵察部隊を送りました。報告の内容は、目に入る全ての物が、中世の物の様だと言う事です。
一部では、鎧を着た騎士の様な一団を見たとの事です。住民とは、接触しませんでした。」

「近海を哨戒していた艦からは、遠方に帆船を見た等の報告があります。」

海軍長官も発言する。

「地理は、どうなっている?」

「我が国の北、南、西は、海に囲まれており、唯一東は、陸続きで、先に人家を発見し、偵察隊を派遣したのもここです。
なお、アラスカと連絡がとれなく、付近に見当たらない事から、各国と同様に消滅したと考えます。」

大統領の言葉にすぐに陸軍長官が答える。

「君達は、以上の事からどう判断する。」

その言葉に代表で、陸軍長官が、答える。

「各国が消滅したか、我が国が元の世界から消滅したとしか考えられません。私達は、後者だと思います。
この世界の人々は、おそらく中世の時代を生きていると考えられます。ただ、我々のいた世界には、無い物が、
あります。」

そこで、言葉を切ると一枚の写真を取り出す。そこには、キリンのミニチュアの様な赤い皮膚をした生き物が、
写っている。

「偵察隊の撮った物です。おそらくドラゴンだと思います。」

そこまで聞くと大統領は、軽く笑った

「一夜にして他の世界へ放り出されてしかもその世界は、中世でドラゴンがいるとはな普通は、出来の悪い
エイプリールのジョークだと思うだろう。しかし、之は、現実だ。これから、どうすれば良いと思うかね?」

そこまで言った所で、秘書が大統領に一枚の紙を差し出す。その紙を読んでいく内に大統領の眉根が、つりあがっていく。

「諸君、問題発生だ。」

211 名前:中将 投稿日: 2006/12/07(木) 20:09:00 [ BZr3styQ ]
現代合衆国召喚01

 そう言うと大統領は、内容を話し出す。

「コロンビア川河口から、北へ約10kmの地点に座礁船を哨戒中の艦が、発見。その船は、帆船でそれなりの大きさで約100名が乗っていると思われる。今後の指示を求む。」

大統領が、読み終えると居並ぶ者がざわめきだす。

「座礁船だと。どうしろというんだ。」

「救助するしかないだろう」

「しかし、助けた後は、どうする?」

そんな声を聞きながら、大統領が言葉を発する。

「私は、彼等を助けたいと思う。生存者は、いるのか?」

「報告によると甲板に出ていた者が、10名から25名いたとのことです。少なくともそれだけはいるでしょう。」

「ならば、助けよう。」

「しかし、そうなると当然、彼等と接触する事になります。我が国の存在が、バレるでしょう。」

海軍長官の声に賛同の声が上がる。

212 名前:中将 投稿日: 2006/12/07(木) 20:10:14 [ BZr3styQ ]
「この世界の人々は、我々を敵とみなすかもしれません。」

「危険です。もう少し様子を見るべきです。」

その声に大統領が、答える。

「いずれ我が国は、発見されるだろう。その時にこの世界がどういう所か、知っていないといろいろ困るだろう。それにあのまま放って置いたら、彼等に犠牲者が出るかもしれん。その様な事には、なってほしくない。」

「情報収集が、優先だと私も考えます。」

「座礁しているなら船は、損傷しているでしょう。助けた後、すぐには帰れないはずです。それならば、我が国の存在が発覚されるのも遅れるでしょう。絶好のチャンスです。」

陸、空の両長官もその言葉に賛成する。

 結局、彼等を助け暫く身柄を確保する事となった。

 救助には、付近の艦を三隻派遣し、コンタクトをとってから、搭載のSH-60Bで何度も往復し救助することにした。接近してこちらも座礁したら、シャレにならないからだ。

 大統領は、執務室に戻ると息をゆっくり吐いた。

 この世界の人々は、我々のことを化け物の様に見るかもしれない。考え過ぎかもしれないが、戦争になるかもしれない。そう考えたから、今まで、現地の住民との接触を厳しく禁じてきたのだ。しかし、これ以上の情報収集は、不可能になってきたので現地の住民と接触しようと考えたのだ。だから、今回の会議で、偵察隊の発見した住民との接触をするように命令を出すつもりだった。しかし、座礁船のおかげでその必要が、無くなった。彼等なら助けてくれた人達のことを悪人とは、思わないだろう。我々についてしっかり説明すれば、彼等の国に戻った時に悪印象を持つ事もないはずだ。

 後は、その考えが上手くいくことを祈るだけだ。


222 名前:中将 投稿日: 2006/12/09(土) 01:23:24 [ s03Bl9TU ]
現代合衆国召喚02

 今回の作戦に参加する三隻の艦艇の内訳は、タイコンデロガ級一隻、アーレイバーク級フライトUA二隻である。

 なお、余談だがこの世界への転移の際、各国に駐留中の部隊が、基地ごとアメリカ国内の各所に転移された。今まで何も無かった場所に忽然と基地が出現したので、大騒ぎだった。海軍艦艇も例外ではなく、艦艇が各港に突然出現した。その混乱のせいで、母港に戻れない艦が多数あり、彼等はそれぞれの場所で任務に就いている。

 三艦が当該海域に集結すると作戦が、開始された。格納庫からSH-60Bが引き出され、ローターを騒音と共に回していく。そして、発艦する。そのまま、一直線に座礁船に飛行していく。

 機長は、不安だった。何しろこの世界の人間との初めての接触だ。いきなり、攻撃を受けたらどうしよう等と考えずには、いられない。やがて、水平線に黒い点が見えたと思ったら、みるみる内に船の形になっていく。そのまま、接近し、問題の船の上でホバリングする。近くで、見るとその船は、やはり帆船で三本のマストが並んでいる。唯、布はボロボロで木造の船体のあちこちに傷がある。甲板には、アジア人と同じ位の色の肌をした人間が二十人以上集まり、ほうけた表情でヘリを見つめている。妙に耳が尖がっていた。中央(政府)から、派遣された高官がメガホンを使い話しかける。

「我々は、アメリカ合衆国海軍の者だ。貴方達の所属を明らかにしてほしい。」

言葉が通じる事は偵察隊の報告から分かっていた。少ししてから、大声で返答があった。中年の野太い声だった。

「聞いたことの無い国だ。貴様等は、ベルトリア王国の配下の者か?それとも、アーリア帝國の手の者か?」

「そのような国は知らないし、関り合いも無い。」

「本当か?貴様等の国は、何処だ!」

何故かは、知らないが随分いきり立っていた。

「君達の後ろに見える大陸が、我々の国だ。最初の質問にもどらさしてもらう。貴方達は、何者だ。」

223 名前:中将 投稿日: 2006/12/09(土) 01:24:55 [ s03Bl9TU ]
それからの返答には、少し間があった。今度は、随分戸惑った声で返答がある。口調には、微かな絶望感が、感じられる。

「我々は、見てのとおりダークエルフだ。」

その言葉に高官は、固まってした。今度は、自分達が戸惑う番だった。エルフなんて神話に登場するような存在だからだ。それでも、どうにか言葉を続ける。

「その、貴方達は本当にダークエルフなのか?」

「そうだ。見れば大体分かるだろう。」

 高官は、頭がクラクラしてきた。ダークエルフだって?それに最初の態度や自分達について話すときの態度から察するに何か訳有りらしい。これは、こんなまどろっこしい会話ではなく、じっくり話し合う必要がある。

「もう少し詳しく話をしたい。貴方達の船に移ってもいいですか?」

彼等は、何か話し合ってからこたえる。

「いいだろう。但し、一人だけだ。」

「了解した。」

そう言って、ヘリをさらに下降させロープを甲板に降ろし、滑り降りた。

 それからは、高官が一人で彼等と話し合いをした。

224 名前:中将 投稿日: 2006/12/09(土) 01:26:07 [ s03Bl9TU ]
 それをまとめると、彼等(ダークエルフ)はこの世界では迫害にあっているらしい。高官は、独自の判断で、自分達に起こった異変を全て話し、彼等に危害を加えることはないと説得した。その御蔭で彼等は、自分達のことも素直に話した。彼等は、ここより北西へ数十kmの場所にそれなりの大きさの島々が並ぶ諸島に隠れ家を持っているらしく、そこには、仲間が千人近く居ると言った。他にも世界中に二千五百人近くの仲間が、居るそうだ。そこに向かう途中で、嵐に遭遇し、その結果ここに座礁してしまったと言う事だそうだ。

 そして、救助については是非ともお願いするとのことだった。船の中には、八十六人のダークエルフが居るとのことだ。食料が、無くなりけていて、ピンチだった。

 事態を無線で、報告すると混乱しながらも、救助を行うこととなった。

 すぐに後続のSH-60B五機が、やってきてダークエルフをピストン輸送で、救助した。その後、三隻は最寄の港に寄港すると、中央からの命令でダークエルフをすぐに首都へ航空機で送った。

 政府では、すぐに緊急会議が開かれた。

 大統領が会議が始まってすぐに話す。

「諸君、事態は、説明した通りだ。今後、彼等を如何にすべきかね?」

今までいろいろ忙しく、会議に参加できていなかった国防長官が、発言する。

「とりあえず、彼等の知っていることは、全て聞き出しました。その中で、特筆すべきことは、元カナダがあった場所にある唯一我が国と国境を接している国のことだと思います。」

「続けてくれ。」

大統領が、続きを促す。

225 名前:中将 投稿日: 2006/12/09(土) 01:28:40 [ s03Bl9TU ]
「その国の名は、ベルトリア王国と言うそうで、幾つもの中小国を配下に置き、それらを含めると国土は、カナダよりも一回り小さく、戦力は、十万以上の兵とワイバーン、ワイバーン・ロード合わせて、六百騎。このワイバーンというのは、以前偵察隊の撮った写真の中にあったドラゴンのことです。攻撃は、ブレス攻撃と言うらしく、火球を発射し目標を攻撃します。最近、我が国の領空侵犯を犯しているのは、コイツです。速力七百五十キロをワイバーン・ロードはもち、ワイバーンは、性能がおとるがコストが、安く量産しやすいらしいです。政治は、いわゆる絶対王政で現王は、かなり横暴で好戦的だと言うことです。」

「危険だな。我が国のことはどれほど知っている?」

「まだ、詳しくは把握しておらず、ワイバーンによる偵察を繰り返しています。一部では、F-15Cのスクランブルにたまげて逃げ出したりしています。」

腕を組むと大統領は、悩み始める。

「彼等とコンタクトをとるのは、可能か?」

「はい。首都は海に面していて、港もあり、外交団を送ることができます。」

「まず、彼等と話し合ってみよう。」

「しかし、ダークエルフの情報によると現王は、かなり横暴で、異常なまでの領土拡張主義者だそうです。危険だと思います。」

「おとなしく、穏やかに接すれば大丈夫だろう。そこで、今後の両者の関係について話し合えばいい。」

「まぁ、確かに。一国の王なのですから、ある程度の自制心もあるでしょう。」

「それでは、ダークエルフから詳しいことを聞いてから外交団を送ろう。」

 こうして、隣国ベルトリア王国に外交団を送ることとなった。大統領も国防長官もまさかいきなり暴力に頼るようなことは、しないと思っていた。だが、そのまさかは、現実となるのだった。

 この会議で、さらに決まったことは、ダークエルフを全面的に保護することだった。理由は、彼等はこの世界に精通しており、独自の情報網で、各国の行動を知ることができるから。また、彼等の隠れ家になっている諸島は、金、銀、銅等のさまざまな資源の宝庫であり、近海からは、海底油田も発見されているからである。石油は、まだまだ余裕があるがいつかは無くなる。その時が、来ても大丈夫なようにするためだ。さらにドワーフも居る。彼等は、資源発見の天才で、ダークエルフと同じような状況にあるから、友好的になれることは、間違いない。また、彼等は稀少な魔石等の魔法に関する資源と知識も豊富に持っていることから、同盟関係にあることは、素晴らしい。ダークエルフを介して、ドワーフと交渉することも決まった。これらは、迅速に行われる予定である。


240 名前:中将 投稿日: 2006/12/09(土) 15:05:31 [ oh8E1NFo ]
現代合衆国召喚03

 先の会議で、決定された隣国ベルトリア王国への外交団派遣は迅速に行われた。タイコンデロガ級一隻(ダークエルフ救出作戦に参加した艦と同一)をチャーターし、それに外交団が乗り込み出発した。外交団の員数は十名。そのまま、ベルトリア王国の首都の港に入港。アメリカ合衆国の使者だと理解させるのにかなり苦労したが、何とか理解させ外交団を降ろした。そして、王と謁見することとなった。

 贅沢としか言いようのない造りの宮殿に案内された外交団は、王座にふんぞりかえっている王の前に引き出された。外交団の代表が話し出そうとするといきなり側近の一人がわめいた。

「貴様等、まさか王に対し臣下の礼をとらないつもりか!」

何のことだかわからない外交団は、ポカンとしてしまった。他の側近が呆れながらも説明する。

「床に両手をつき、頭も床にこすりつけるのだ。」

早い話が、土下座だった。理解すると同時に外交団は、多少怒りながらも抗議する。

「我々は、貴方達の属国ではないのですからそのようなことは行いません。」

その言葉に猛烈な抗議が返ってきた。

「そんなことは、関係ない。王の前では何人もこの行いをしなくてはならないのだ。」

「ふざけるなよ、何て態度だ。」

「全く貴様等の国の程度が知れるな。」

これだけでもう交渉がおじゃんになりそうだった。

241 名前:中将 投稿日: 2006/12/09(土) 15:06:44 [ oh8E1NFo ]
「まあまあ、下輩のやからだから大目に見てやりましょう。」

誰かがこう言ったので、とりあえず収まった。外交団は、かなり気を悪くしたが気を取り直して交渉に入る。

「我々の国は、貴国との相互不可侵条約を結び、協力しあう考えがあります。貴国の同意さえ得られればすぐにこの提案は、実施できます。どうしますか?」

その言葉にはっきりと嘲笑が感じられる口調で王が答えた。

「相互不可侵条約だと?笑わせるてくれるな。突然現れた得体の知れない国と我が王国が対等に付き合えると思っているのか?馬鹿が。丁度、全土を平定して余力を持て余していたところだ。貴様等の国も我が王国の一部としてやろう。貴様等が抵抗すると言うのなら、仕方ない戦争だな。分かったな?」

その言葉に外交官が、真っ青になりつつも抗議する。

「それでは、あまりにも横暴すぎです。その様な事は認められません。考え直して下さい!」

「ふん、もう遅い。国境に兵力の集結を命じた。配下の中小国の動員も行っている。貴様等には、服従か負け戦かのどちらかの道しかない!衛兵、こいつらを捕まえろ。見せしめに処刑してやる。」

どかどかという足音と共に衛兵がやって来ると悲鳴を上げながら逃げ回る外交団達を捕まえる。

 この様子は無線で艦に伝えられており、全速力で艦は港を離れた。ワイバーン十騎の追跡を受けたが、本国からの指示でSM-2により全騎撃墜した。

242 名前:中将 投稿日: 2006/12/09(土) 15:07:22 [ oh8E1NFo ]
この事件は、衝撃と共にアメリカに激しい怒りを覚えさせた。転移直後から、米政府は国民に一部の情報以外は全て伝えていた。そのためこの事件を知った米国民は怒り狂い、ベルトリア王国に断固たる決意で制裁を下すべきだと主張した。米政府はその主張に応え、ベルトリア王国側の国境に集結しつつある敵軍に対しこちらも陸、海、空の戦力をもって対抗すると発表した。すでに陸軍兵力は、ベルトリア王国に対しこちら側の国境に前進基地を築いているとも発表した。空軍も同様に簡易飛行場を建設した。海軍は、主力艦艇を近海に派遣した。こうして、ベルトリア王国に対し強力な戦力が指向された。

 大統領はこう発言した。

「今回の事件は、横暴かつ傍若無人な態度をとったベルトリア王国に全ての責任がある。彼等は、我が国を蹂躙しようとしているがそんなことは断じてさせない。犠牲になった外交官達には、誠に申し訳ないと思っている。責任の一端は私にもある。それを挽回する意味でも私は、ベルトリア王国に対し正義の鉄槌を下すことを決意した。」

 後に第一次対ベルトリア王国戦争と呼ばれることとなるこの戦争は、ベルトリア王国側のワイバーン三百騎による前進基地への空襲から始まった。

 なお、ダークエルフは多数の諜報員をベルトリア王国に派遣し情報収集を行っており、ベルトリア王国の行動は米国に筒抜け状態だった。ベルトリア王国だけでなく、世界中の国々に潜伏しているダークエルフが、出来うる限りの情報収集を行い始めた。さらにドワーフとの同盟もダークエルフの仲介の御蔭でうまくいった。今後、彼等には資源の発見と魔法に関する知識を米国に教えてもらう。石油の採掘に関してはアメリカの強力な力ですでにプラットフォームが建設されており、本格的な採掘もすぐに行われるとのことだ。鉱産資源もドワーフの協力により、採掘が開始される。これらが、軌道に乗れば資源に困ることはない。


255 名前:中将 投稿日: 2006/12/10(日) 00:42:47 [ WaR3GEj6 ]
現代合衆国04
 
 ベルトリア王国のワイバーン三百騎による前進基地に対する空襲は王国内に潜伏しているダークエルフにより、事前に米国に察知されていた。空軍はこの事態に対し迅速に戦力の集結を行い、空襲に備えていた。

 そして、ダークエルフからの運命の通信が届く。

「ワイバーン三百騎、全騎離陸し集結。貴国に向かいつつある。目標は、貴国の前進基地なり。」

 この通信を受けた空軍は、ただちに待機していた戦闘機を離陸させ、迎撃に向かわせた。その数は、百機。敵の三分の一だが、それでもこの世界のワイバーンに対しては充分すぎる程だった。

 この世界で初めての化学技術を使用した空戦の幕開けだった。

 今回の敵ワイバーン迎撃作戦に参加する機種は、F-15C/D二十五機、F-16四十五機、F-22A三十機となっていた。この内、F-22Aは最新鋭機でこの数をそろえるのに苦労した。今回の作戦には、本来ならステルス能力が落ちることからミサイル等を積まない翼下にもミサイルを積んで出撃した。理由は、単純でこの世界にはレーダーなど無いからだ。したがってステルス能力よりミサイルが優先されたのだ。同様の理由で機関砲の発射口もタイムラグを無くす為に開いた状態とした。翼下にも搭載することにより中距離空対空ミサイル十四発を搭載することができた。さらに短距離空対空ミサイル二発も搭載された。

 ベルトリア王国のワイバーン三百騎の内訳は、ワイバーン・ロード百騎、残る二百騎は量産型ワイバーンである。

 それ程飛ばない内に機上レーダーに敵ワイバーンを捕らえた。米国戦闘機群の隊長は、すぐに指示をだす。

256 名前:中将 投稿日: 2006/12/10(日) 00:44:12 [ WaR3GEj6 ]
「全機に告ぐ。射程内に敵を捕らえたら私の指示で一斉発射せよ。各隊長は、目標振り分け作業を行え。」

「了解。」

 あっと言う間に両者の距離は、縮まった。何しろ片方は、マッハの速度を誇っているからである。一方、ベルトリア王国側ワイバーンは、量産型の速力六百キロに合わせている。

 射程内に入ったところで、隊長は命令を出す。

「全機、各目標に対し攻撃を実施せよ。」

「了解。攻撃開始!」

「中距離空対空ミサイル発射。」

機体から、ミサイルが白煙をひきながら発射され目標へと突進していく。そして目標のワイバーンを命中と共に真っ赤な火の球に変えた。竜もそれに乗る竜騎士も即死した。

 この第一一斉発射によりきっかり百騎のワイバーンを叩き落とした。正に百発百中だった。彼等は、運悪く性能の良いワイバーン・ロードを前面に出していたので、いきなりワイバーン・ロードを全騎失うこととなった。後には、量産型の二百騎のワイバーンしか残っていない。この攻撃で勝敗は、決したようなものだ。元々勝敗は、目に見えていたが。

 ワイバーン部隊の隊長は、何が起こったのか理解できなかった。敵の機械飛竜が一斉に魔法の槍を発射したと思ったら、前にいたワイバーン・ロードが信じられないことに全騎炎に包まれた。そんなはずは無い。我が王国が誇るワイバーンがこんなに簡単にやられるなど。しかも、自分達より高性能のワイバーン・ロードだ。呆然としていた彼のワイバーンにもミサイルは、向かっていき直撃した。避ける暇などなかった。たとえあったとしても無駄だっただろう。何しろアクティブレーダーホーミングだ。

257 名前:中将 投稿日: 2006/12/10(日) 00:44:49 [ WaR3GEj6 ]
混乱していたワイバーンにも容赦なく第二、三一斉発射が行われた。目標割り振りをする暇が無かったので、だぶってしまったところがあったためわずかに敵ワイバーンが、残った。
 
 隊長は、敵ワイバーンが壊滅状態になり逃げようとしているのを見て、新たな命令を出した。

「敵残存騎を逃がすな、全機攻撃続行。」

米国戦闘機群は、その言葉に残存ワイバーンに対し、止めと言わんばかりにミサイルを射ち込んだ。

 隊長は、敵の全滅を確認すると帰投命令を出した。

「全機に告ぐ。敵は、全滅した。これより帰投する。」

「了解。」

 今回の空戦とも呼べない戦いは、ベルトリア王国側ワイバーン三百騎の全滅で幕を閉じた。一騎も生還できなかった。正に全滅だ。そのことをベルトリア王国は、一騎の帰還もないことから判断した。

 この報告を受けたベルトリア王国は、最初信じられずに何度も確認した程の衝撃を受けた。なぜなら、王国の保有していたワイバーンの半分が失われたからだ。しかも、ワンサイドゲームでだ。おまけに敵には、全く損害を与えていない。ベルトリア王国には、悪夢としか思えない事態だった。この報告を受けた国王は、怒り狂った。そして、今度は国境に集結した七万五千人の地上兵力による大規模攻勢を行えと命じた。この命令は、さらなる悪夢を引き起こすこととなるが、特に反対も無くあっさりとその命令は伝達された。理由は、何と言ってもその大兵力にある。これだけの数の兵力なら……と考えるのは、ある意味当然だった。だが、彼等は近代技術の軍隊の強さをこの後思い知ることになる。嫌と言う程。そして、最大のミスを犯したことにも。

273 名前:中将 投稿日: 2006/12/10(日) 21:24:22 [ VMKoXCck ]
現代合衆国召喚05

 ベルトリア王国の十万の兵力による、大規模攻勢は迅速に実施された。なお、動員軍二万五千人の兵力が急遽加わったため、十万となった。ベルトリア王国軍から米軍前進基地まで、約六キロ。王国軍が一キロ進んだ時、数え切れない程の航空機が彼等の上空に現れると襲いかかり始めた。

 前線からの報告で敵が前進を始めたと聞くと空軍は、地上攻撃能力のある航空機を向かわせた。

 その航空機の内訳は、護衛として前回の空中戦と同様の装備を行った、F-22A三十機、地上攻撃機としてA-10サンダーボルトU、C-130輸送機、B-52ストラトフォートレスが出撃した。この他にE-3Cセントリー(早期警戒機)も出撃している。なお、敵の航空戦力、対空戦闘能力の壊滅が確認されしだい、攻撃ヘリAH-64Dアパッチ・ロングボウも戦闘に加わる。予備兵力として爆装したF-15C/D、F-16が待機する。

 これらの地上攻撃機群は、E-3Cセントリーの指示のもと一斉に進軍を始めたベルトリア王国軍に襲いかかった。

 クラスター爆弾、FAEB(燃料気化爆弾)、デイジー・カッターありとあらゆる爆弾が発生させる爆炎が王国軍を包み込む。通常爆弾も雨霰のように投下される。B-52ストラトフォートレスは、絨毯爆撃を行った。地上にいた王国軍をまとめて吹っ飛ばしていく。地上は、爆炎地獄とかした。王国軍は戦竜、魔道砲を持っていたがそれらは、いい目標となりすぐに壊滅状態となった。魔道砲には、対空型もありそれまで、危険と判断され出撃していなかった攻撃ヘリAH-64Dロングボウ・アパッチも出撃した。これも凄まじい火力を発揮した。爆弾を使い果たした機は、機関砲による機銃掃射を行った。その被害も甚大だった。何しろ、A-10サンダーボルトUのそれは30mmガトリング砲である。途中、何度かワイバーンが現れたが、護衛のF-22Aに叩き落とされた。

274 名前:中将 投稿日: 2006/12/10(日) 21:25:10 [ VMKoXCck ]
山の上に設置された司令部では、司令官が王国軍の上空を乱舞する味方航空機を見つめていた。自ら招いたこととはいえ彼等が気の毒になってくる。それでも彼等は、奇跡的にまだ四万の兵力を残していた。あれだけの空爆を受けたことから見れば、奇跡だ。その理由は、FAEBが輸送中の事故により予定の数を揃えることが出来なかった等の事情があったからだろう。予定数が揃っていれば、彼等は全滅していたかも知れない。それ程の威力が、FAEBにはある。彼等は、狂ったように突撃を行っている。死体の山を築きながら。気が進まないが仕方ない。司令官は、新たな命令を出す。

「地上兵力も戦闘に参加する。まず、砲撃を実施せよ。」

 命令が伝達されると砲撃準備を行い始める。

 砲撃準備が終わると、砲兵隊長が叫ぶ。

「全門、撃ち方始め!」

 距離三万メートルで、砲撃が開始される。その実行者は、M109 155mm自走榴弾砲、M198 155mm榴弾砲である。弾着と共に数十人の騎士が吹き飛ばされる。が、それでも彼等は突撃を敢行してくる。
 
 距離一万五千メートルで、M1エイブラムス戦車も砲撃を加えはじめる。120mm滑空砲を迫って来る王国軍の騎士の群れに直接照準で、ブチ込んだ。

 距離一万メートルで、MLRS(多連装ロッケトシステム)と大型迫撃砲が砲撃に加わる。MLRSの威力は、凄まじく王国軍の騎士をバタバタ倒していった。何しろ、一発で二百平方メートルを制圧可能な兵器だ。この時点で、王国軍の兵力は二万を切っていた。それでも、彼等は突撃をやめなかった。

 距離五千メートルになると重機関銃と小型迫撃砲にM2/3ブラッドリー歩兵戦闘車、LAV25軽装甲車等の各種戦闘車輛による攻撃も開始される。次々に突撃を行う王国軍は、将棋倒しでなぎ倒される。

 さらに距離が縮まり、M16A2、M9ピストル、軽機関銃等の小火器、手榴弾、カールグスタフ、Mk19自動敵弾銃が火を噴き始めるにあたってついにベルトリア王国軍は、全滅した。十万もの兵力が、文字通り全滅である。この他に航空支援として配備されていたワイバーン、ワイバーン・ロード合わせて百七十五騎を失った。

275 名前:中将 投稿日: 2006/12/10(日) 21:25:55 [ VMKoXCck ]
 ベルトリア王国軍司令部は、信じれない事態に虚脱状態に陥っていた。いや、既に自軍が空爆により炎に包まれた時からそうなっていた。途切れることなく降り注ぐ爆弾になすすべもなくやられていく自軍を見れば、誰だってそうなるだろう。今回の王国軍の全滅は、撤退をせずに突撃を敢行した要因が、一番大きい。途中で、撤退すれば少なくとも全滅は、無かっただろう。司令官は、半狂乱になりつつも執拗に突撃命令を出し続けた。そのせいで、王国軍は突撃を続けてしまった。結果、全滅してしまった。当然、大量の負傷者が出たが、そのほとんどが重傷者で助けることができなかった。しかも、軽、中傷者がいたにしろ戦闘終結まで放って置かれたので、手遅れになっていた。あれだけの攻撃を受けたので当然だった。結局、生き残ったのは戦闘に参加しなかった後方支援部隊と指揮官だけだった。戦闘に参加した者は、全員戦死した。司令官は、味方の全滅を知ると卒倒した。

 その後、ベルトリア王国は、遺体の回収を名目に暫定的ながらも停戦条約の交渉を行い、米国はそれに応じた。これにより第一次対ベルトリア王国戦争は、終わりを告げる。これでベルトリア国王は、反省するかと思ったが、全然そうではなかった。反省どころか残存兵力を集結し、まだ戦いを挑むつもりだった。一部の良識を持った軍関係者が、説得しなければそうなっていただろう。この後、ベルトリア国王は、懲りずに新たな戦いを引き起こす。他国の力を借りて。


312 名前:中将 投稿日: 2006/12/12(火) 00:46:48 [ 4tMm3RZQ ]
現代合衆国召喚06

 ベルトリア王国は、先の米国に対する大規模攻勢の大敗北により、十万もの兵力を丸丸失った。ワイバーンの喪失も六百騎中、四百七十五騎という凄まじい損害を出している。兵力は、予備軍と徴兵を行い六万が揃ったが、実態は装備も足りず張子の虎状態だった。ワイバーンも無理やり若いものを徴用したり、王国中から掻き集めたものと生き残りのものを足しても二百二十騎である。こんな戦力で、再度米国に戦いを挑もうとしていたベルトリア国王の周りから、まともな者は次々と離れていった。十万の兵力とワイバーン四百七十五騎をもってしても大敗北したのだ。それが、弱体化した六万の兵力と二百二十騎のワイバーンで勝てるかどうかなど、単純に数の上から見ても子供だって分かる。現王の無能さに呆れるのは、当然だった。

 しかし、現王にはある秘策があった。それがあったからこそかろうじて王の地位を維持できているのである。その秘策とは、アーリア帝國への救援要請だった。

 アーリア帝國は、米国の南に海を挟んで存在する大陸を統治する国である。国土は、アメリカの三倍程。兵力は、約四十万。ワイバーン三千五百騎を擁する。実はベルトリア王国は、その配下の中の自治権を与えれた数少ない国の一つである。ベルトリア王国は、ちょっと強い子分のようなものである。

 アーリア帝國は、ベルトリア王国の救援要請に対し戦争に勝った暁には、米国の領土を全て貰い受けるという条件で海軍の派遣を決定した。この条件には、ある決定的な間違いがある。それは、戦争に勝ったら米国の領土を全て貰い受けるという点である。彼等の考えに負けるなどという考えは、一切ないのである。負けたら損するだけの戦争だ。負けて得する戦争などないが。

 とにかく、米国に対し海軍の全戦力を派遣することが決まった。その戦力は、大量の魔道砲をハリネズミのように張り巡らした一級砲撃戦艦五隻、一回り小さい二級砲撃戦艦八隻、さまざまな雑用を行う三級砲撃戦艦十隻、搭載ワイバーン四十騎の飛竜母艦五隻、ワイバーン三騎搭載の偵察特化艦四隻という戦力である。この他に支援艦艇十三隻がある。合計四十五隻にワイバーン二百十二騎というこの世界では、史上稀に見る大艦隊である。これ程の海軍戦力をアーリア帝國が持っている理由は、国土の四方を海が囲んでいて、ベルトリア王国のような場所に大規模な兵力を輸送する場合にこれ位の戦力が必要だったからである。この大艦隊の出撃は、大急ぎで準備された。

313 名前:中将 投稿日: 2006/12/12(火) 00:47:33 [ 4tMm3RZQ ]
この事は、やはりダークエルフにより米国に知らされた。米国もこれら大艦隊の迎撃に空母機動部隊を投入することとした。その戦力は、通常艦載機七十二機、ヘリ六機搭載可能なキティホーク級航空母艦一隻、艦載機九十機を搭載可能なニミッツ級航空母艦一隻、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦四隻、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦十隻、原子力潜水艦二隻である。この他支援艦艇二隻。合計二十隻で、数の上ではアーリア帝國海軍に劣る。しかし、戦力としてはアーリア帝國海軍を全滅させてもお釣りがくると思われる。なお、アーリア帝國海軍との海戦に合わせて艦隊の編成は、改造されてこのようになった。艦隊の名前は、第一混成空母機動部隊とされた。

 すぐに両者は、同時に出撃した。かつてない程、激しい海戦が行われるだろう。

 ベルトリア王国のスパイから米国とやらも艦隊を出撃させたそうだが、その数は僅か二十隻だ。我々の四十五隻の前には、到底かなうまい。アーリア帝國海軍の提督は、そう考えて事態を楽観していた。敵艦隊を鎧袖一触で葬り去った後は、米国とやらに艦砲射撃とワイバーンによる空襲で、ボロボロにしてやる。そんな考えを抱きながらも艦隊の指揮をする。

 今回アーリア帝國海軍は、新兵器も投入する。それは、二種類の対艦型魔法の槍である。

 二種類の対艦型魔法の槍の性能は、新型高性能タイプの威力は、七百五十キロ爆弾相当。射程距離は、約百キロ。速度は、時速八百キロから九百キロ。弾数は、百発。従来タイプの威力は、五百キロ爆弾相当。射程距離は、約七十キロ。速度は、時速七百キロ。弾数は、二百三十発。合計三百三十発である。

 これが、彼等の自信の源と言っても過言ではない。

 後にアーリア帝國紛争と呼ばれるこの海戦にアーリア帝國海軍はやる気マンマンで米国海軍に挑むのだった。

327 名前:中将 投稿日: 2006/12/12(火) 22:57:46 [ GRTqYAeU ]
現代合衆国召喚07

 出撃したアーリア帝國海軍は、事前にベルトリア王国のスパイから得た情報をもとに、偵察特化艦四隻が搭載しているワイバーン十二騎を索敵騎として発艦させた。米国海軍は、空母からE-2ホークアイを発艦させた。それにより、七十キロ先にアーリア帝國海軍を発見した。やや遅れたが、アーリア帝國のワイバーンも米国海軍を発見した。その後、執拗に付きまとい情報を送り続けた。

 七十キロ先に敵艦隊を発見したという報告が、アーリア帝國海軍提督に届くと、すぐさま今後の命令を出した。

「距離六十キロで、対艦型魔法の槍を全弾発射せよ。各艦は、攻撃準備をしろ。さらにそれと同時にワイバーン全二百騎も攻撃に参加しろ。」

 この命令を受け、アーリア帝國海軍の対艦型魔法の槍を搭載した各艦は、一斉に発射準備を行った。対艦型魔法の槍は、目標の方角さえ分かれば発射した後、生命反応感知センサーが働き目標まで誘導される。だからこの距離でも発射可能なのだ。

 米海軍司令官も同様の報告を受け取ると命令を出した。

「敵艦が、対艦型魔法の槍を発射したらF/A18ホーネット四十機で敵艦隊を攻撃させろ。」

 司令官の考えは、敵艦からの攻撃後に対艦ミサイルを積んだF/A18ホーネット四十機で猛反撃を行うつもりだ。この敵艦からの攻撃後というのは、公式にはアーリア帝國とは交戦状態ではないので、アーリア帝國に対する攻撃の大義名分を立たせるために先に攻撃させるのである。既に全機の発艦は、終わって上空で待機している。

328 名前:中将 投稿日: 2006/12/12(火) 22:58:49 [ GRTqYAeU ]
 なお、対艦型魔法の槍の情報は既にダークエルフの情報収集により米国海軍に知られている。

 距離六十キロで、一斉にアーリア帝國海軍艦艇から対艦型魔法の槍新旧合わせて三百三十発が発射される。それと同時に発艦を終えて待機していたワイバーン二百騎も米艦隊に対し攻撃を行うべく突撃を行いはじめる。

 これに対し米艦隊は、F/A18ホーネット四十機を対艦攻撃に向かわせる。その一方で、各艦は目標振り分け作業を行う。

 発射された対艦型魔法の槍が、SM-2の射程である距離三十二キロに接近すると米イージス艦群は一斉に猛烈な勢いで、SM-2を発射しはじめる。発射煙で、艦が白く包まれた程である。発射されたSM-2は、定められた目標に食いついた。あっと言う間にあっけなくアーリア王国海軍の放った三百三十発の対艦型魔法の槍は、叩き落された。

 アーリア帝國海軍の提督は、信じられないものを見せられた。発射された対艦型魔法の槍が敵の放った対空型魔法の槍に全て落とされるというありえない光景だ。確かに対空型の魔法の槍で、迎撃するという考えはかなり初期からあり実験で可能ということは、証明されてもいる。しかし、あれだけの対艦型魔法の槍を撃たれたら全ての迎撃は、不可能のはずだった。その常識は、物の見事に提督の目の前で覆された。さらに別の災厄が襲い掛かってきた。敵の竜母から発艦した機械飛竜だ。

 F/A18ホーネット対艦攻撃部隊は、レーダーに目標を捕らえると一斉に対艦ミサイルを発射した。レーダーによって誘導されたミサイルは、そのまま目標へと突っ込んだ。対艦ミサイルの直撃は、アーリア帝國海軍艦艇にすさまじいダーメージを与えた。瞬時に轟沈したもの、大火災を起こしたもの、火災を起こしながらも進み続けるもの等の散々な状態である。大破を免れたものも次の一斉発射の前にあえなく止めをさされてしまった。浮いているものも沈んだも同然の状態だった。ここにアーリア帝國海軍の主力は、全滅してしまった。

329 名前:中将 投稿日: 2006/12/12(火) 23:00:29 [ GRTqYAeU ]
哀れを止めたのは、母艦の全滅を知らずに攻撃を敢行したワイバーン二百騎である。彼等に対し米イージス艦群は、各艦搭載のMk45 5インチ単装砲を使い応戦した。この砲は、旋回性能や毎分二十発程度の発射速度という点で対空目標に対する攻撃は不向きとされていたが、速力たかだか六百キロのワイバーンに対しては、充分使用可能という判断から使用された。レーダー管制の一撃必中の猛砲火の前に彼等は、次々撃ち落とされていった。何しろ、各艦合わせて十八門もある。そして全滅した。たとえこの砲火を潜り抜けたとしてもCIWS近接火器防御システムが、待ち構えている。これもレーダー管制だからワイバーンは、すぐに撃ち落されていただろう。その時、レーダーが新たな目標を探知した。

「新たな対空目標を探知。数は、二百二十騎。敵ワイバーンと思われます。」

 担当の士官が報告する。

 その言葉に司令官は、首を捻る。敵の艦載ワイバーンは、全滅させた。とするとこのワイバーンは、どこから現れたんだ?すぐに答えに思い当たった。このワイバーンは、おそらくベルトリア王国の残存ワイバーンだ。数も丁度一致する。全く、休戦協定を結んだのにアーリア帝國に助けを求めたり、今回の海戦に飛び入り参加する行為には、不誠実という言葉がピッタリだ。とにかく、まずはこいつらを始末しよう。そう考えると司令官は、命令を出す。

「敵ワイバーンに対し先と同様に主砲を使用し迎撃せよ。」

 襲い掛かってきたワイバーンは、片っ端から撃ち落とされていった。奇跡的にこの砲火を潜り抜けたワイバーンが十二騎あったが、CIWSの前に蜂の巣にされた。

 こうして、この海戦は、米国海軍の圧勝に終わった。当然と言えば当然の結果だったが。アーリア帝國は、この事態に驚愕しすぐに米国と和平した。

 今回の海戦を引き起こしたのは、ベルトリア王国のせいだとして米国は、休戦条約を破棄して侵攻を開始することとなった。


442 名前:中将 投稿日: 2006/12/16(土) 23:39:11 [ szkDPJM. ]
現代合衆国召喚08

 ベルトリア国王は、アーリア帝國海軍と米国海軍との海戦で、アーリア帝國海軍の勝利を確信していたからこそ今後のアーリア帝國の自国の印象を良くするため、手持ちのワイバーンを全騎投入した。結果は、アーリア帝國海軍の予想外の大敗北に加えて投入したワイバーンを全騎失うといった惨憺たるものだった。さらに米国との休戦条約を破棄されてしまうという、極めつけの凶報を招いてしまった。頼みの綱のアーリア帝國も米国と和平してしまいベルトリア王国など知らん振りだ。事ここに至って、ベルトリア国王の支持をする者は、一部の取り巻きだけとなった。その事を悟った国王は、疑心暗鬼にかられ怪しいと思う者は、片っ端から処刑していった。何とか国王の暴走を止めようと離れずにいた知識人も処刑されてしまった。処刑されなかった者も国王から逃げ出した。最悪の状態になった。軍の指揮命令系統も政府にいた指揮官の処刑等のせいで乱れきった。さらに国境を越えて米軍が侵攻を始めた事態になり、その際の攻撃でもベルトリア王国軍は大損害を被った。

 米地上兵力は、国境を越えて進軍するにあたって空軍に国境に再度集結した約四万のベルトリア王国軍への空爆を要請した。  

 なお、この侵攻が第二次対ベルトリア王国戦争とされた。

 この要請に応えて空軍は、対地攻撃機を多数向かわせた。前回の十万の軍勢に対する空爆と同様の兵力が参加した。猛烈な空爆で約四万のベルトリア王国の軍勢は壊滅した。特にFAEBは、予定数が揃い凄まじい威力を発揮した。王国軍は、跡形も無く吹き飛ばされた。

 これを確認した米陸軍は、侵攻を始める。戦力を集中させて、一本槍となりベルトリア王国に雪崩れ込んだ。その最終目標は、ベルトリア王国の首都である。既に海軍は、航空母艦の艦載機であるF/A18ホーネットで首都の軍事施設を空爆し壊滅させた。イージス艦群も搭載の砲でこの間の外交団の恨みとばかりに港内に停泊していた武装帆船を撃沈した。外交団を輸送した艦から外交団を助けることが出来なかった無念を語られていたからだ。

443 名前:中将 投稿日: 2006/12/16(土) 23:40:00 [ szkDPJM. ]
 陸軍は、途中何度か攻撃を受けたが圧倒的な火力で全くダメージを受けずに難なく撃退した。随伴の攻撃ヘリAH-64Dアパッチ・ロングボウは、凄まじい火力を発揮して待ち伏せを仕掛けようとしていた王国軍を粉砕した。こうなるともう王国軍は、全滅したも同然だった。

 首都に到達した米陸軍は、このまま一気呵成に制圧しようとしたが、その必要が無くなった。怒り狂った民衆に国王とその取り巻きは惨殺されていたからだ。具体的にいうと首を跳ね飛ばされた上に四肢を切断されて、さらにバラバラにされていた。馬鹿な国王のせいで国が滅ぶのを黙って見ているほど民衆は愚かではなかった。米軍を民衆は、迎え入れて代表が交渉にあたった。米軍が要求したことは、以下の通りである。

1、ベルトリア王国は、今回の戦争の全責任を負うこと。
2、外交団の遺族への謝罪及び賠償を行うこと。
3、米国側の戦費を一部支払うこと。
4、米軍の駐留を認めること。
5、王政を破棄し米国主導の議会政治を執り行うこと。
6、一部の領土の割譲と資源の無償供給を米国に行うこと。
7、ダークエルフ及びドワーフへの迫害を止めること。

 民衆は、これを受け入れることとした。というか、他に選択肢など無かった。

 こうして、対ベルトリア王国戦争は終わりを告げた。この出来事は、世界中を駆け巡り米国の強さを知らしめた。

 これにて一件落着かと思ったが、今度は、アーリア帝國がゴネ始めた。元々ベルトリア王国は、自分達の属国で、その領土の支配権は自分達にある等と言い出したのだ。全くもって横暴極まる主張だ。米国からすればあの海戦のことは、無しにしてやってるのだから、この上そんな主張が通るはずもなくその主張を跳ねのけた。すると、またしても戦争だ何だと言い出した。米国は、この聞き分けのない幼児よりたちの悪いアーリア帝國に呆れつつもそんなに戦争が、したいのなら受けて立つと言った。両者の中は、決定的に悪くなった。この後、アーリア帝國は、軍事行動を行う。



456 名前:中将 投稿日: 2006/12/17(日) 12:28:31 [ qwpDt5Bk ]
現代合衆国召喚09

 アーリア帝國は、大規模な上陸作戦を発動した。輸送船約百五十隻を揃えた凄まじい規模の上陸作戦である。その上陸予定地は、旧ベルトリア王国領である。上陸兵力は、約三万五千人。この他ワイバーン百五十騎が、加わる。第一波が上陸後に輸送船団は、トンボ返りで第二、第三波を輸送する予定だ。しかし、この作戦は、無茶苦茶だった。前回の海戦の大敗北で、海軍は支援艦艇を失っている。このため、敵艦隊に遭遇したら一溜まりもない。さらに艦砲射撃等の支援を受けられない。しかし、この問題を何とかアーリア帝國は、クリアした。敵艦隊は、ある作戦で現場にむかえない。上陸予定地は、まだ米軍が展開していない。これらのことから、上陸さえすれば何とかなるとアーリア帝國は考えた。こうして、この上陸作戦は、実施されることとなった。

 当然これだけの規模の上陸作戦に米軍が気づかないはずがない。米海軍は、第一混成空母機動部隊に迎撃命令を出した。しかし、現場海域に向かう途中で、問題が発生した。その問題とは。

「海上に浮遊物多数発見。」

 その声に司令官は、何事かと思った。浮遊物だと、これはまさか!

 恐ろしい予感にかられて司令官は、命令を出す。

「全艦に命ずる。浮遊物から至急離れよ。」

「浮遊物が接近します。」

「何だと!主砲で攻撃しろ。CIWSも使え。」

457 名前:中将 投稿日: 2006/12/17(日) 12:29:22 [ qwpDt5Bk ]
 浮遊物に一番接近していた艦が接近する浮遊物目掛けて主砲を撃ち込む。その瞬間に大爆発が起こる。

「くそ、やはり機雷だったか。迎撃しつつ後退しろ。」

 この機雷は、アーリア帝國の新兵器である。目標がある一定の距離に接近すると生命感知センサーが働き目標に接近して触れると爆発を起こす。この機雷のせいで第一混成空母機動部隊は、敵輸送船団の迎撃に間に合わなくなった。

 一方、米陸軍は上陸予定地に迅速に展開した。ほとんどが、車輛化されているからだ。上陸予定地は、長い砂浜で奥には林が広がっている。その林の中に巧みに迎撃部隊を配置した。

 そんなことは、知らないアーリア帝國上陸部隊は、米国艦隊の迎撃がないことに大喜びで海岸線にアプローチした。輸送船団は、海岸から距離五千メートルの地点で一斉に上陸用舟艇を降ろした。この上陸用舟艇は、小型の推力発生用の魔石を動力源としている。そして、準備が整うと一斉に海岸線目掛けて発進した。ワイバーン百五十騎も援護のために飛来する。

 米迎撃部隊の指揮官は、軍用双眼鏡で接近してくる上陸用舟艇群を見ながら命令を出す。

「もっと引きつけろ、もっともっとだ。距離八百メートルで、迎撃しろ。」

 上陸用舟艇群が、距離八百メートルに差し掛かると米迎撃部隊は、反撃の火蓋を切った。

458 名前:中将 投稿日: 2006/12/17(日) 12:30:07 [ qwpDt5Bk ]
 迫撃砲、155mm榴弾砲、MLRSが一斉に火を吹く。上陸用舟艇群の真っ只中に弾着を示す水柱が大量に沸き起こる。舟艇は、次々と騎士をバラ撒きながら吹き飛ばされた。その光景を見たワイバーン部隊は、林の中に潜む米軍にブレス攻撃を浴びせようとしたが、その前に叩き落された。設置されたTHAAD、ペトリオット対空ミサイル車輛にアベンジャー、M-6ラインバッカー、LAV-ADの仕業だった。この他にもFIM-92スティンガー携帯用地対空ミサイルもワイバーンを攻撃した。ハープーン対艦ミサイル車輛からは、ハープーンが轟然たる発射音と共に発射され輸送船団をボカスカ攻撃した。海に放り出された騎士は重い甲冑を着ているため泳ぐことが出来ずに溺死した。必死に舟艇にしがみつくがその騎士達も重機関銃の餌食となった。正に地獄絵図だった。さらに輸送船団に機雷を突破した第一混成空母機動部隊が襲いかかった。航空母艦から発艦したF/A18ホーネットが、輸送船と上陸用舟艇を攻撃した。イージス艦は、高価なミサイルを使わずに搭載の砲で、輸送船を沈めまくった。喫水線に砲撃を受けると浸水してしまい輸送船は、あっけなく沈んでいった。

 こうして、上陸部隊は全滅した。約三万五千の兵力と百五十隻の輸送船にワイバーン百五十騎がである。陸と海から猛烈な攻撃を受けた結果だった。この上陸作戦をきっかけに両者は、戦争状態に突入した。米軍は、アーリア帝國への逆上陸作戦を計画し始めた。一方のアーリア帝國は、海上戦力を失ったため何も出来ない状態だった。

 なお、資源の採掘及び輸送は順調である。この世界の通貨もベルトリア王国から大量に入手した。この他にドワーフにも採掘した金、銀、銅で各種通貨の製造を行ってもらっている。今後は、この通貨で不足している物資の買い付けを各国から行う予定である。

 ダークエルフ及びドワーフの国の建国もベルトリア王国から割譲した領土に行う予定である。

 また、労働者として獣人も各地から集まって来ている。彼等の扱いも米国は、考えている。



469 名前:中将 投稿日: 2006/12/19(火) 22:07:24 [ ILz5WRAU ]
現代合衆国召喚10
 
 米国は、アーリア帝國に対する上陸作戦を実施することとした。その戦力は、護衛として第一混成空母機動部隊と輸送手段としてワスプ級強襲揚陸艦全七隻を参加させる。上陸兵力は、陸軍と海兵隊合わせて約一万四千人。第一波が、橋頭堡を築くと後続を次々と輸送する予定だ。アーリア帝國は、米国のほぼ南に位置している。国土は、横に延びていてその中央に米国侵攻部隊は、上陸する予定である。

 出撃したアーリア帝國侵攻部隊がアーリア帝國沿岸に接近すると地上発射型の対艦型魔法の槍の迎撃を受けたが、護衛のイージス艦のSM-2に全弾撃ち落された。さらにワイバーン二百騎も襲ってきたが、搭載砲とCIWSに迎撃された。米艦隊は、事前攻撃として航空母艦からF/A18ホーネットが発艦すると海岸に集結しているアーリア帝國軍を攻撃した。この攻撃で、かなりの損害をアーリア帝國軍は出した。

 そのまま強襲揚陸艦群は、海岸線に接近すると距離五千メートルの地点でAAV7水陸両用強襲車を発進させる。さらに航空支援としてAV-8BハリアーU、攻撃ヘリAH-1Wスーパーコブラ、AH-64Dアパッチ・ロングボウが発艦した。AAV7水陸両用強襲車は、搭載の重機関銃と40mm擲弾発射機を撃ちまくり海岸に展開していた騎士達をなぎ倒した。AV-8BハリアーUは、敵ワイバーンと対空型魔道砲を攻撃して制空権を確保した。二種類の攻撃ヘリは、アーリア帝國軍を片っ端から攻撃した。アーリア帝國もワイバーンで反撃し激しい戦闘となったが、米国側との火力の差が大きく次第にアーリア帝國軍の反撃は衰えていった。それを確認するとM1エイブラムス戦車、M2/3ブラッドリー歩兵戦闘車、LAV25軽装甲車、ハンビー等の各種戦闘車輛を搭載したLCACが発進して浜に各種戦闘車両を上陸させた。これらは、凄まじい火力を発揮して襲い来るアーリア帝國軍を迎撃した。CH-53Eスーパースタリオン等の輸送ヘリもピストン輸送で兵員を運んだ。

470 名前:中将 投稿日: 2006/12/19(火) 22:08:16 [ ILz5WRAU ]
 アーリア帝國軍指揮官は、小高い丘の上から戦闘の状況を見ていたが、絶望を感じ始めた。まず、敵の艦載機械飛竜に攻撃されて散々な目にあったと思ったら敵の輸送船から発進した鉄戦竜に襲われて浜に配置していた兵を壊滅させられてしまった。おまけに敵の小型の艦載機械飛竜と回転翼機械飛竜に遠慮容赦なく攻撃された。これで終わりかと思ったら、今度は敵の鉄戦竜が大量に上陸すると必死に攻撃する味方の兵を次々に倒していった。敵の鉄戦竜は、恐ろしく強くこちらの戦竜のブレス攻撃の直撃を受けても全くダメージを与えられない。このままでは、全滅してしまう。そう考えると全軍に撤退命令を出した。

 敵が撤退すると米軍は、一帯に防衛線を張った。そして、後続部隊を上陸させた。米軍の上陸作戦は、大成功に終わった。大損害を受けたアーリア帝國軍は、内陸へと撤退した。今回の戦闘でスーパーコブラが対空砲火とワイバーンの攻撃で一機が撃墜された。さらに一両のハンビーが、戦竜のブレス攻撃の直撃を受けて破壊された。乗員は、戦死した。転移後の初めての戦死者が出た。対するアーリア帝國軍は、五万五千の兵力と三百騎のワイバーンを失った。

 今後は、じりじりと侵攻し占領地域を米軍は広げていくつもりだ。さらにアーリア帝國は、元々国土の四分の三近くが併合した中小国である。かなり乱暴に併合を行った場合もあり、それらの国は米国にすり寄った。そうでない国も米軍の圧倒的な強さを知りアーリア帝國を裏切り米国の味方に付く場合が多かった。これらは、ほとんどがダークエルフの根回しの成果である。ダークエルフは、様々な面で米国を支援している。


534 名前:中将 投稿日: 2006/12/23(土) 01:12:54 [ .uVqL1ys ]
現代合衆国召喚11

 米国と協力することとなった中小国の総兵力は、十九万人とワイバーン千六百騎である。米国は、これらの兵力はまだ必要無いと判断して、待機させることにした。上陸に成功した米軍は、未だにアーリア帝國本国に忠誠を誓う忠犬の始末にいくつかの部隊を派遣した。主力部隊は、アーリア帝國本国の侵攻に向かうこととなった。主力部隊は、たまに攻撃してくるアーリア帝國軍を撃破しながら、じりじりと侵攻していった。その最終目標は、アーリア帝國の皇都である。この世界でも首都を攻め落とされたら大抵は、ゲームオーバーである。

 その途中で巨大な城塞にぶちあたった。それは、アーリア帝國本国の防衛の要であるシャステッド城である。この城は、アーリア帝國本国が武力を用いて他国を占領する場合の前進基地とされてきた。城は、かなりの規模で城内には多数の魔道砲と兵員にワイバーンが配備されている。魔道砲とワイバーンは強力で、今までに幾度となく攻め込まれたがこの支援の御蔭で生き残れたと言っても過言ではない。さらに城全体に防御結界を張ってある。ワイバーンや魔道砲の攻撃を受けてもある程度は、防ぐことが可能だ。

 この城の対応を巡って会議が急遽開かれた。各指揮官の考えは、二つに分かれた。

「迂回するべきだと思います。こんな城に構ってないでさっさと敵首都を陥落させましょう。」

「現在敵の戦力が集結しています。こいつを始末すれば、後々楽になります。」

 という感じの意見だった。司令官は、二つの意見をしっかりと聞くと結論を出す。

535 名前:中将 投稿日: 2006/12/23(土) 01:13:58 [ .uVqL1ys ]
「シャステッド城は、アーリア帝國軍の士気の柱でもある。この城を陥落させれば、敵の士気の低下が狙える。さらに無視して進軍した時に後ろから攻撃されるのは、好ましくない。以上のことからシャステッド城の攻撃作戦を行うこととする。」

 こうして、シャステッド城の運命は決定された。

 アーリア帝國軍は、難攻不落のシャステッド城が陥落させられるなど全く考えていなかった。そのため兵力は、五万しか配備されていなかった。ワイバーンは、三百騎が蓄積されていた。魔道砲は、約二百門が配備されていた。

 米軍の攻撃は、砲撃から始まった。155mm榴弾砲の砲弾が城目掛けて発射される。防御結界は、想定をこえた威力の砲弾の前にあっけあく最初の数発で降参した。防御結界が消えたことに呆然となっていたアーリア帝國軍に大量の砲弾が降り注ぐ。155mm榴弾砲の威力は、凄まじく煉瓦で構成されている城壁を木っ端微塵に吹き飛ばした。城は、滅茶苦茶に破壊された。それこそ、原形を保っていない程にだ。城内及び付近にいた騎士約三万とワイバーン百五十騎以上の損害に加えて魔道砲は、全滅してしまった。

 シャステッド城は、瓦礫となってしまったために残存兵力は、米軍に突撃する以外の選択肢を失ってしまった。撤退は、許されていなかった。無理に撤退をすれば良くても投獄、悪ければその場で死刑だ。約二万の騎士とワイバーン約五十騎が米軍に向かって突撃を行い始める。

 米軍砲兵隊長は、彼等の戦意に感心した。あれだけ砲撃で叩かれたのに向かってくるというのは、かなりの精神力が必要のはずだ。事実は、他に選択肢が無かっただけなのだが。しかし、残念なことに彼等の突撃を許すわけには、いかない。

「目標は、接近中の敵。砲撃開始せよ。」

536 名前:中将 投稿日: 2006/12/23(土) 01:14:29 [ .uVqL1ys ]
今度の砲撃には、迫撃砲も加わりアーリア帝國軍は、悲惨なことになった。155mm榴弾砲の砲弾は、着弾と共にまとめて騎士を数十人吹き飛ばし地面に大穴を開けた。迫撃砲は、砲弾で地面を耕すかのようにアーリア帝國軍に降り注いだ。

 結局、砲撃だけで地上軍は片が付いてしまった。ワイバーン約五十騎も待ち構えていた一撃必中の米軍対空部隊の防空網により片っ端から撃ち落されて全滅した。

 シャステッド城を陥落させた米軍は、アーリア帝國本国へと本格的な進軍を始める。

 今回の勝利の裏には、ダークエルフの協力があった。砲撃が正確で甚大な損害をアーリア帝國軍に与えられたのは、ダークエルフの事前偵察と着弾観測の御蔭である。この他にも米軍の上陸作戦の時に現地の正確な情報を伝えて米軍を誘導したりしている。このようにダークエルフは、陰ながらも米軍を強力にサポートしていた。さらに彼等の国の建国も行われた。国名は、シュナイザー帝國である。人口は、約二千人以上のダークエルフと少しの米国人で構成されている。まだまだダークエルフは、世界中のおり、建国の噂を聞きつけて続々と集まって来ている。彼等は、自分達の国が出来たことに感動を覚えていた。今までのような見つかれば死が待っているといった生活から解放されたからだ。さらに自分達の苦境を救ってくれた米国に深い感謝もした。ダークエルフは、自分達の安全を保証してくれる米国に出来ることなら何でも力になるつもりだ。

 ドワーフも同様に建国を行った。こちらの国名は、クスカット王国である。人口は、約二十万以上。米国には、ダークエルフ程ではないが感謝している。見返りとして魔法関係の事柄を全面的に引き受けている。他にもこの世界の通貨の製造や資源の発見と採掘を行ってもらっている。

 この二国は、ベルトリア王国から割譲した領土に建国された。

637 名前:中将 投稿日: 2006/12/26(火) 21:54:49 [ Qmn8L0Rg ]
現代合衆国召喚12

 シャステッド城陥落の報は、瞬く間にアーリア帝國軍に伝わった。無敵と信じていたシャステッド城の陥落という事実は、司令官の思惑通りアーリア帝國軍の士気低下を招いた。さらにシャステッド城防衛部隊の撤退を許さなかったということに異議を唱える者も出てきて、軍内部の混乱を助長した。実は、シャステッド城の陥落をアーリア帝國軍上層部は、必死に秘匿しようとしたのだが、あれだけの出来事を秘匿するのは不可能に近い上にダークエルフの手によって素っ破抜かれてしまったためにあっと言う間に広まってしまった。これらの御蔭で米軍侵攻部隊は、大した攻撃を受けることなく皇都に進軍した。

 この皇都の攻略方法は、砲撃と空爆で宮殿以外の場所を全て吹き飛ばそうという考えと普通に地上軍を進めて占拠するという二つの考え方があったが、前者は非人道的だとして後者が選択された。

 皇都は、円のように丸くなっておりその中央に皇帝の居る宮殿がある。中心以外は、市街地が広がっている。米軍としては、困ったことに重車輛の通れる道が無い為に歩兵を中心とした部隊で攻略しなくてはならなかった。車輛は、小回りのきくハンビー程度である。航空支援としては、アパッチが出撃した。ヘリでダイレクトに宮殿に降下して制圧する等の案が出たが包囲殲滅される危険から拒否された。

 しかし、皇都を守っているのは精鋭の皇帝親衛隊である。彼等は、皇都中に分散されて配置されて米軍を待ち構えていた。この部隊は、多数の戦竜を保有していた。他にもワイバーンを保有している。

638 名前:中将 投稿日: 2006/12/26(火) 21:55:25 [ Qmn8L0Rg ]
米軍は、突然路地から現れる騎士の不意打ちに苦戦した。ハンビーは、敵の戦竜のブレス攻撃の前に撃破される始末だった。さらにワイバーンまで飛来するとブレス攻撃を米軍に浴びせた。辺り一面、怒号と銃声が響く激しい戦場になった。とは言え剣による攻撃は、兵士の顔等の急所に当たらない限り致命傷にならなかった。戦竜もハンビー搭載のTOW(対戦車ミサイル)やカールグスタフに撃破された。ワイバーンもアパッチやスティンガーに撃墜された。特にアパッチの火力は、強力で騎士や戦竜を多数葬り去った。最初は、互角だったが火力の差が物を言い始めると親衛隊は、次々に撃退されてしまった。こうして、宮殿まで親衛隊は、後退していった。

 宮殿に突入した米軍と必死で応戦する親衛隊との間で激しい戦闘が展開されたが、火力で勝る米軍が勝利した。所詮、銃と剣では勝負にならない。米軍は、宮殿内に居た皇帝を始めとする重臣達を捕縛すると無理やり交渉の席につかせた。米軍が要求したことは、以下の通りである。当然、この要求を呑む以外に選択肢は無かった。

1、現政権の完全交代を行うこと。
2、今回の戦争の賠償金を支払うこと。
3、米軍の駐留を認めること。
4、一部の領土の割譲と資源の無償供給を米国に行うこと。
5、ダークエルフ及びドワーフへの迫害を止めること。
6、米国の指定した範囲内の戦力しか持たないこと。

 こうして、対アーリア帝國戦争は終わりを告げた。今回の戦闘で米軍は、ハンビー三輛を完全に破壊された。戦死者五名と負傷者十六名も出した。

 アーリア帝國が米国に負けたというニュースは、世界を駆け巡った。一級の国が全力で戦って勝てなかった米国の強さにどの国も驚いた。さまざまな国が、米国に興味を持った。中には、不埒な考えを持つ国もあったが。



657 名前:中将 投稿日: 2006/12/28(木) 23:05:18 [ vld5T8sE ]
現代合衆国召喚外伝 ダークエルフ特殊部隊01

 転移後に出会ったダークエルフの諜報能力に目をつけた米軍は、彼等に現代の装備を持たせてさまざまな任務を行ってもらう計画を立案した。そして、それは実行に移された。選ばれたダークエルフは、米陸軍特殊作戦群(グリーンベレー)からの訓練を受けた。教官が驚くほどダークエルフの能力は、高かった。あっと言う間に特殊戦教程を修了してしまった。武器やハイテク機器の取り扱いもすぐに覚えた。こうして、ダークエルフで編成された分隊が一つつくられた。

 一番最初の任務は、ベルトリア王国での情報収集だった。現地のダークエルフによる情報収集が限界だと判断されたために彼等が投入されるこになった。真夜中にUH-60ブラックホークで輸送された。

 指揮官のケネス・カットルは、分隊全員が降りて集合したのを確認すると命令を出す。

「既に潜入している仲間からの情報で、どうもベルトリア王国は、ワイバーンによる米国への空襲を計画しているらしい。その詳しい内容を知るためにこれから、敵のワイバーン飛行場に向かう。」

 返答の代わりに素早く移動を始める。飛行場は、結構広く、簡易発着場とワイバーンの格納庫に竜騎士の宿舎兼司令部がある。飛行場に着くと新たな命令を出す。

「一斑は、周囲警戒を行え。何かあったら無線で知らせろ。二班は、俺と一緒に敵司令部へ潜入する。」

658 名前:中将 投稿日: 2006/12/28(木) 23:05:51 [ vld5T8sE ]
ケネスは、先頭に立って進むと司令部の近くの藪に隠れる。自分の武器のコルトM4A1カービンに取り付けた暗視装置を覗いて様子を見る。

「入り口に歩哨が二人だ。始末する。」

 ダークエルフの一人が建物の周りを巡回している騎士の後ろから気配を消して接近すると口を手で押さえ込みコンバットナイフで喉を掻っ切る。もう一人は、特別にサイレンサーの取り付けられたベレッタから発射された9ミリパラベラム弾を頭に受けた。死体を隠すと司令部へと入る。一階は、司令部で二階は、宿舎になっている筈だ。一階の各部屋を調べていくと三人の騎士が談笑している部屋を見つけた。

「いよいよ、明後日だな。米国とやらの前進基地を襲うのは。」

「敵には、ワイバーンねえんだよな。余裕じゃねえか。」

「しかし、機械飛竜を見たって奴がいるぞ。対空型魔道砲を持ってるかもしれない。」

 大体話しを聞き終えるとケネスは、やれと言う。隊員の持っていたサイレンサー付きのMP5がささやくような音をたてて騎士を撃ち倒した。その部屋を調べると机の上に置かれていた作戦計画書を発見した。

「よし、長居は無用だ。撤退するぞ。」

 分隊は、死体を外へ運び出して隠した。室内の血までていねいに処理した。それを終えるとそのまま闇に消えていった。

 その飛行場では、五名が行方不明になったことに大騒ぎが起きたが迫り来る大作戦のせいでうやむやになった。

 回収された作戦計画書は、米国の手に渡りワイバーンによる米軍前進基地への空襲の全てを知った米空軍は、迅速な戦力の集結を行った。分隊は、その後も現地に留まりワイバーン三百騎が向かったことを知らせると撤退した。

 こうして、準備万端の米空軍にワイバーン三百騎は、全滅させられることとなった。