752  名前:陸士長  投稿日:  2006/05/17(水)  02:23:16  [  ly5x.5XM  ]
そして無神経に宴会をやりながらエーテルガイドと辺境軍の騎士隊長に対して会見するのがムッター流。
まぁ、自衛隊と愉快な南大陸連合軍に惨敗したら後方で【神頼み】の儀式でも始めるんじゃないですかね?

それを目撃した某騎士団長(25歳)の証言

「私たちは壊乱状態の友軍を助ける為に前線と野営地を往復通してるもんだから。
夜も寝てないし、  莫迦な友軍が悪戯に食料消費したんで腹に何も入ってない。
そんな時に聞こえた変な祈り声が体にこたえちゃってねぇ。最初は、どこの大麻キメた莫迦司祭だ、  
こんな朝早くから呻き声のような聖言唱えやがってと怒ってたら、国教会軍の将軍だったのよ。  
撤退戦時の混乱期にあんな神頼みをはじめたというので、この侵攻はいよいよダメだと思ったわ……。
…………本当は、随分前からそう思っていたけどねぇ。  



759  名前:陸士長  投稿日:  2006/05/18(木)  23:36:27  [  cAW0iPZE  ]

神頼みが通じてしまいますた。



「ほっほっほ、このような時こそ、我が教団の守護神獣たる黒き豹が現れ、神敵に罰を下すのですよ!」

ボコボコにされて潰走中の最中、訳解らない妄言ほざきながら祈りを捧げるムッター将軍達。
その願いが通じたのか、彼等の祭壇の前にそれは現れた。

「…………これは」
「豹じゃ、ありませんね……将軍」
「……ほほ、何だか、前線で我が軍を蹂躙した鉄の車に似ている気がするのは気の所為でしょうか?」

確かに、それは黒い豹だった。
ダークイエローとダークグリーンの帯状迷彩を施されたX号戦車"パンテル"。
そして車体には黒い剣を握りしめた拳のマーク。確かに彼等は黒い豹だった。
もっとも、彼等の望んだものとはかなりかけ離れているようだが。


車内

「くそ、どうなっているんだ。何だあの揺れは。クルツ、表を確認しろ!」
「了解……なんだか、赤い服着た怪しげな連中が車外を取り巻いています!」
「何だと、イワンの政治将校は何時魔女狩りを始めやがった!?」
「中隊長殿、無線が通じません。師団司令部との連絡どころか、黒騎士2との連絡すら取れません!」
「何だと、魔女の洞でも這入り込んだって言うのか、それとも知らない間にヴァルハラに迷い込んだか!?」
「た、大尉殿。奴ら、剣を此方に向けて騒いでます!」
「魔女の婆さんのくそったれめ!  一発かまして突っ切るぞ!!」
「し、しかし相手が敵かどうかも!」
「情け無用、フォイア!!」

解りきった結末を書く必要は無い。
彼等を助けるべく現れた筈の豹は、災厄と砲弾を撒き散らして去っていったのであった。
残されたのは、壊滅的打撃を受けた国教会軍本陣と、キャタピラの帯に挟まれるようにして震え上がっているムッター将軍。
後で駆けつけた某騎士団長曰く「天罰を下された愚者」そのものだったという。

尚、彼等は無事(?)に時空を超えて元の東部戦線に戻ったとも、元枢軸の日本と合流したとも言われているが、真偽は定かではない。





悪乗りして書いた。あんまり反省はしていない。




289  名前:陸士長  投稿日:  2006/10/13(金)  02:55:10  [  T6SLJH3A  ]
投下乙でした。
と、気が乗ったので軽く。


意気揚々とフランシアへと向かう大・中・少尉。
その三頭の飛竜を距離をとって追う一機のCH−47Jチヌーク。
その中には、30名の自衛隊員が乗っていた。
彼等の目的とは……と言うより、基地に無断でヘリ飛ばしていいのだろうか。(答え:良くありません
「同志中尉と猫少尉の報告によれば、本日、われらがリサタンとあのぼんくら大尉が結ばれる可能性が大らしい」
彼等を率いる三佐(おっ●い星人)の言葉に、怒りと動揺と号泣が洩れる。
ああ、あの聖なる乳が野卑なエロ野郎の手で揉み犯されるのかと思うと怒りで股間が張り裂けそうだ。
畜生、1回俺に揉ませろ。いや、寧ろ挟んで。
「しかし、あの2人はツンデレな両思い。リサタンの幸せを願えばこそ我等は、断腸の思いで祝福せねばならぬのだ……」
号泣と嗚咽がカーゴ内を埋め尽くす。しかし、三佐の眼は死んでいなかった。
いや、寧ろ生き生きとしている。
「となればこそ、我等がリサタンが『幸せに』なる瞬間を見届けねばなるまい!」
号泣と嗚咽がぴたりと止まり、総員が眼を見開く。
「同志中尉と猫の誘導が成功すれば、●●ホテルの●●号室にて彼等は結ばれる。そこで!」
拳を広げ、掌をやわやわと動かす。丁度、リサのバストサイズとぴったし。
流石師団戦闘射撃競技会優勝経験者。鋭い鷹の目だ。
「我等は●●号室に潜入、リサタンが幸せになるのを視姦……もとい、見届けるのだ!」
全員の表情がサンシャイン。三佐はまるで平壌放送のキャスターのような笑顔で吼えた。
フランシア到着丁度一分前。全員が時計の時刻を合わせる。

「状況、開始!」

続くかも。(エロパロだったりして  



337  名前:陸士長  投稿日:  2006/10/18(水)  02:07:53  [  jisySzYU  ]
>>325
ちょっと煮詰まってますのでお時間を。
その間、以下のショートと少尉のリロードをお楽しみください。

「にゃはははは、私のリロードはレボリューションだっ!!」(猛スピードで何故かシングルアーミーにリロード中

※注意:このお話は171氏の正式な設定に基づいていません。

―――『サマリム共和国』
 人口500万人のファッショ支配の共和国。ナイトロスの南にある。
 エルフ族主体だが、他地域のエルフ族と文化や人間性がかなり異なる。石油輸出が主な産業。
 『水を使い過ぎて訓練で遭難』『軍の訓練は美味しい料理を作るために費やされる』と揶揄(事実)されるが、決して軍は脆弱ではなく、特殊部隊や空軍の飛竜は強い。
 海がないが海軍はある。河川砲艦や湖沼警備艇が所属している。
日本国とは友好条約を締結、野戦研修の為自衛隊数個中隊が定期的に駐留し現地特殊部隊と合同訓練を行う時期もある。

『日本異世界見聞録』より


「……」
「なぁ、木下」
「なんだ、伊藤?」
「俺、始めて異世界来て良かったと思ってる」
「んだよなぁ。やっぱり、竜人族よりも、猫人族よりも、他の亜人種達よりも」

2人の前を人影が過ぎり、それを見送った2人の声がはもる。

「「エルフだよなぁ〜」」

2人の自衛官は、ずっと鼻の下を伸ばしきっていた。
目の前では森のちょっとした空き地が広がっている。
そこでは、百数十人の普通科連隊の自衛官と数十人のエルフレンジャー兵が集い、作戦を立てている。
今回の課題は、山間部や森林地帯に逃走した敵兵を如何に効率よく掃討するか。
実際、エルフレンジャーの索敵力と精密な地理感覚、自衛隊の強力な火力が組み合わせれば正しく脅威である。

が、その事に意識を集中している自衛官達が何人いるだろうか。
現に、簡易机に地図を広げてレンジャー兵の指揮官と話をしている佐官達の眼は落ち着かず。
後ろに控えている自衛官は眼をかっぴらいているか、口の端を緩ませている。

何故か?
それは、エルフ達が褌だからである。  


338  名前:陸士長  投稿日:  2006/10/18(水)  02:34:54  [  jisySzYU  ]
何というか、目の前に居るレンジャーのエルフ兵。
その総員が褌姿なのである。しかも、大多数が女性。(男も若干居たが、自衛官の網膜には映らなかった)
胸にはサラシを巻き付け、腰には六尺褌と酷似したものを巻き付けている。
白地ではなく季節に合わせた迷彩柄であり、その下の肌にもボディペイントが塗りたくられていた。
別に変な意図は無い。真面目な野戦スタイルなのである。
余分な装備を一切外したおかげで消音性は普通のレンジャーよりも上。
装備に動きが阻害されないので、動きも極めて俊敏かつ滑らか。
ボディーペイントには無香性の虫除けが混ぜてあるので害虫の心配も無し。
実際、普通科連隊程度の自衛官では、最初の数撃は一方的に貰うしかない位のワンサイドな展開となった。

……それでも、何というか、年嵩の自衛官達は非常に目のやり場に困り。
後ろにいる若き自衛官達は眼をギラギラさせていた。
中には「ディードリット……」「違うだろ、露出高いからピロテースだよ!」
「てめぇ、俺の嫁を呼び捨てにすんな、様付けろ!」
等という濃ゆいささやき声までヒソヒソ聞こえて来る。
それを知ってか知らずか、彼等の直ぐ側を恥じる様子も無く通ったり屈んだりするのでもう大変。
全員、座ったまま中々動けなかった。回れ右する時もやや前屈みだった。

もし、この時エルフと自衛官で戦いが始まったら、エルフの圧勝だったろう。

だが、この国の脅威はまだまだ終わらなかったのである。
訓練終了後、着替え終えたらしいエルフ兵達と美味くてやや遅い夕食(パスタだった)を食べた後。

「皆さん、数日後にこの近くの街で秋祭りがあるんです。お暇でしたら参加してみませんか?」
「ええ、良いですね。丁度良い交流会になるでしょう……なんて言うお祭りなんです?」

微笑みながらエルフの淹れてくれたエスプレッソを啜りつつ、何気なく聞いた一佐。
彼は後に安請け合いしてしまった事に死ぬほど後悔する羽目になる。
エルフ隊長は笑顔で答えた。

「やだなぁ〜秋祭りですよ?『豊年ムキムキ祭り』に決まってるじゃありませんか!」

こうして。
褌と肉体美と食欲のカーニバルに自衛官達は地獄だか天国だか判別つかない祭りを経験する事になる。
それはまた、別のお話。  

 

742  名前:陸士長  投稿日:  2006/11/29(水)  03:47:36  [  AfPLkSZE  ]
投下乙。リサもあれですな。単身出張でしかも帝国ホテル住まいとは。
この状態ですと、東京の町並みも転移前と同じレベルまで復旧したみたいで。(そりゃ、月まで手が出せる余裕が有る訳だし

自分もちょいと小話を


南大陸には、多種の亜人種達が居る。
アスターの竜人、ケシビニアの猫人、アルエスのエルフ、鳥人間、等々。
さて、その多数に渡る亜種の中に、兎人族という少数民族が居る。
背丈が低いものの、俊敏で高度な知性を誇る為、少数民族ながらもそれなりに存在感があった。

そんな彼等の中に、ナイトロスの市民権を得た者が少数居た。
そして、その中の若者の何割かは軍に入隊している。(背丈の為、主に事務。ナイトロス軍には、ほんの少数だが亜人が入隊している。

今日は、そんな若者達の一人「ホジャス君」にスポットライトを当ててみよう。

その日、ナイトロスに駐在している日本自衛隊基地に彼は居た。
かの北大陸との戦役が終わり、この地に居た自衛隊の大半は北大陸へと移動していった。
だが、この地に大幅に進出・展開している日本企業や日本人達を護るため。
また、ナイトロスとの安全保障条約の為、数個大隊の戦力は残されていた。
彼は事務系の典型として、そんな残留部隊との折衝役に当たっていたのだが。
何度か訪れている内に、一般隊員達とそれなりに仲良くなっていた。
と、そんな折、隊員達にある頼み事をされたのである。
「コスプレをしてみないか?」と。
詳しく聞いてみると、コスプレとは『漫画などの登場人物のキャラクターに扮する行為』らしい。
ホジャス自身もジャパニーズアニメにかなり毒されており、自衛官と仲良くなったきっかけは街で売られてた漫画を自衛隊基地で読んでいたからだ。
「ああ、良いけどどんなのだい?  日本のアニメなら、エルフ族や人間の方が適してるんじゃないかな?」
「いやいや、大丈夫だって。ちゃーんとホジャスに合うのがあるんだよ。君も知っていると思うけど」
と言いつつ、袋から衣装をゴソゴソと取り出す自衛官達。
それを見たホジャスはピンと来た。その戦争漫画は、ホジャスも大好きだったからだ。
「あ―――、あれか!  あれなら僕にぴったりだね!」
「だろ、だろ!  それ着て74式の車長ハッチに入って見てくれないか?  バリバリ行けると思うぜ!」
「そだよねー。W号戦車かパンテルじゃないのが残念だけどさ」
言いつつも、素早く着替えるホジャス。
フィルドグレイ戦車服に着替え、右目に眼帯を付ける。
戦車帽を被り、ピョンと跳ねて74式の車長ハッチに飛び乗ったホジャスは意気揚々と決め台詞を叫んだ。
彼が大好きな、あのキャラクターの台詞を。
「バカヤロー、俺のケツを舐めろ!」  



742  :陸士長:2006/11/29(水)  03:47:36  ID:AfPLkSZE
投下乙。リサもあれですな。単身出張でしかも帝国ホテル住まいとは。
この状態ですと、東京の町並みも転移前と同じレベルまで復旧したみたいで。(そりゃ、月まで手が出せる余裕が有る訳だし

自分もちょいと小話を


南大陸には、多種の亜人種達が居る。
アスターの竜人、ケシビニアの猫人、アルエスのエルフ、鳥人間、等々。
さて、その多数に渡る亜種の中に、兎人族という少数民族が居る。
背丈が低いものの、俊敏で高度な知性を誇る為、少数民族ながらもそれなりに存在感があった。

そんな彼等の中に、ナイトロスの市民権を得た者が少数居た。
そして、その中の若者の何割かは軍に入隊している。(背丈の為、主に事務。ナイトロス軍には、ほんの少数だが亜人が入隊している。

今日は、そんな若者達の一人「ホジャス君」にスポットライトを当ててみよう。

その日、ナイトロスに駐在している日本自衛隊基地に彼は居た。
かの北大陸との戦役が終わり、この地に居た自衛隊の大半は北大陸へと移動していった。
だが、この地に大幅に進出・展開している日本企業や日本人達を護るため。
また、ナイトロスとの安全保障条約の為、数個大隊の戦力は残されていた。
彼は事務系の典型として、そんな残留部隊との折衝役に当たっていたのだが。
何度か訪れている内に、一般隊員達とそれなりに仲良くなっていた。
と、そんな折、隊員達にある頼み事をされたのである。
「コスプレをしてみないか?」と。
詳しく聞いてみると、コスプレとは『漫画などの登場人物のキャラクターに扮する行為』らしい。
ホジャス自身もジャパニーズアニメにかなり毒されており、自衛官と仲良くなったきっかけは街で売られてた漫画を自衛隊基地で読んでいたからだ。
「ああ、良いけどどんなのだい?  日本のアニメなら、エルフ族や人間の方が適してるんじゃないかな?」
「いやいや、大丈夫だって。ちゃーんとホジャスに合うのがあるんだよ。君も知っていると思うけど」
と言いつつ、袋から衣装をゴソゴソと取り出す自衛官達。
それを見たホジャスはピンと来た。その戦争漫画は、ホジャスも大好きだったからだ。
「あ―――、あれか!  あれなら僕にぴったりだね!」
「だろ、だろ!  それ着て74式の車長ハッチに入って見てくれないか?  バリバリ行けると思うぜ!」
「そだよねー。W号戦車かパンテルじゃないのが残念だけどさ」
言いつつも、素早く着替えるホジャス。
フィルドグレイ戦車服に着替え、右目に眼帯を付ける。
戦車帽を被り、ピョンと跳ねて74式の車長ハッチに飛び乗ったホジャスは意気揚々と決め台詞を叫んだ。
彼が大好きな、あのキャラクターの台詞を。
「バカヤロー、俺のケツを舐めろ!」  





814  :陸士長:2006/12/15(金)  08:06:30  ID:M37m/9AQ

日本から持ち込まされた野菜の数々。
これらは気候、土壌の調査が行われた後、各地で栽培された。
充分な調査と計画、国家規模の農業計画のお陰で、数年後には南大陸の多くで日本原産の野菜が多くの農場で生産栽培されていた。

のだが、ここは異世界である。
時には、有り得ない事も起こりえる。
これは、有り得ないことが起きてしまった場合である。

「……んー、これって本当にキャベツの千切りですか?」

事務係のホジャス准尉は首を傾げていた。
ここはナイトロス軍の食堂で丁度夕食の時間である。
多くの軍人がごった返しており、厨房から定食を受け取っていた。
本日の料理は『海竜のカツレツ定食』である。
実際、ホジャスのトレイには揚げて間もない海竜カツレツとロールパン、ホワイトシチューが載っていた。
「准尉殿、どこがおかしいのですか。量もメニューもそれが普通ですよ?」
「それは解ってるよ。僕がおかしいと言っているのはこれさ」
と言いながら、ホジャスは海竜カツレツがもたれ掛かっている野菜を指さす。
「……日本キャベツの千切りですけど」
「……これの何処がキャベツなんだよ?  僕が自衛隊基地で食事をご馳走になった時は全然違うものだったぞ」
確かに、それはキャベツの千切りとは言い難かった。
緑色の大根を千切りにしたような、そんな感じ。
自衛隊基地でのキャベツの千切りとは似ても似つかない。
そんなホジャスの憤慨に対し、不満げに炊事兵は厨房の奥を指さす。
「失礼ですね。ほら、観てください。ちゃんとキャベツを刻んでるでしょ?」
確かに、奥では2人のエプロンを付けた少女が球状の物体を豪快に刻んでいる。
しかし、それはどう見てもキャベツと言うよりは丸っこいハネージュメロン。
加えてドウでも良いが、2人の顔はデッサンが狂っているような気がする。
「あの子達、キャベツ以前に顔が崩れ」
「もう、いい加減にしてください准尉殿。後がつかえてますからほらほらほら!」
結局、そのまま押し切られ、ホジャスの追究は免れられてしまった。

尚、その刻みモノは、外見は兎も角として味はしっかりとキャベツだったという。
この世界に存在する特有の物質が野菜の外観や品質を変動させてしまう場合があるという農業大臣の報告の出る1年前の事であった。

完  




868  :陸士長:2006/12/31(日)  17:36:40  ID:R7eobpzg
171氏、長編完結おめでとうございます。
これからも楽しいお話を書いてくださると有り難いですねぇ。

と言うわけで、完結祝いにショートSSをば。


〜リピートアフター再生帝〜

かの戦役から少し時間が経た頃、再生帝エーテルガルドは天馬騎士団の面子を集めていた。

「西部を日本に占有され、貿易の主要がかの国に対する輸出入に依存している以上、文化、軍事問わず日本への理解は深めておきたいわ」
『はい』

彼女の言葉に、集まった主要幹部が頷く。
同意を得たのを確認し、再生帝は言葉を続ける。

「日本の新語などは常に把握しておかなければならないは故に……リピート・アフターミー」

こうして、皇帝主宰の日本新語教室が始まったのだった。

「萌え〜」
『も、え〜』
「ツンデレ」
『ツ・ン・デ・レ』
「GO  TO  DMC!」
『ごぅ、とぅ、でぃーえむしー』
「ショタコン」
『ショタコン』

そこで、幹部達の首が一斉に左側に向く。
そこに居たのは……。

「え、え、え?」

皇都動乱で親族が殆ど戦死した為、消去法的にレプスブルグ領主になったあの少年領主(既婚)が偶然通りかかっていた。
あの天馬騎士団長と結婚したとは言え、その外観はまだまだ幼さを残したままだ。

じゅるり。ごくり。
獲物を前にした肉食獣のような仕草で、彼女達は領主の方に向き直り―――

「ショタコン!」「ショタコン!」「ショタコン!」「ショタコン!」「ショタコン!」
「ショタコン!」「ショタコン!」「ショタコン!」「ショタコン!」「ショタコン!」
「ショタコン!」「ショタコン!」「ショタコン!」「ショタコン!」「ショタコン!」
「ぼ、僕はもう15歳過ぎたんだぞ〜!!」

両手の親指を人差し指と中指に挟んで前に突き出し、満面の笑顔で領主を追い掛け始める騎士団長達。
必死に逃げる領主と騎士団長達が廊下の果てに消えた後、呆れ果てた顔で再生帝はぼやいた。

「……コジェドフが洩らしていたけど、爛れた国なのね」


その後、当代のレプスブルグ領主がどうなったかと言うと。
何故なのか不明ではあるが、その年の内に側室が十数人出来たらしい。
加えて、天馬騎士団の騎士団長達の半数近くがお腹を大きくして寿退職し、管理職の再配置の為再生帝はかなーり頭を痛めたそうな。

やおい  






887  :陸士長:2007/01/12(金)  21:19:38  ID:jTIozAi2
完結乙。
完結で寂しくなったと言うわけで、ちょっくら外伝SSを。

■少年領主の憂鬱■

レプスブルグの市街地の片隅に、一軒の小さな屋台がある。
その屋台で出されてる料理は日本料理の「おでん」。
ちなみに、この屋台は日本の占有区域以外で唯一営業している日本料理の屋台である。
ここはまだ、中世すら抜けきっていない国家なのである。
迂闊に深夜になってまで営業―――しかも日本から来たとなればぶっちゃけ自殺行為なのだ。
だが、危険を知ってか知らずか、この屋台は冬の間営業を続けている。
それは何故か?  理由は誰にも解らない。

「だからぁ、僕は頑張ってるんだぞ。解るか!?」
「はいはい、解りますよ。ところで竹輪麩如何です?」
「あぁ、くれ。それと熱燗コップで追加、がんもどきとウインナー巻き、芥子たっぷりで」
「はいはい、あんまり飲み過ぎては駄目ですよ。奥方様方も久し振りにお城の方に勢揃いしているんでしょ?」
「ふん、別に構わん。殆ど同窓会のノリで夜明けまで話し合ってるだろう。僕が居ても弄られるだけだ」
「大変ですねぇ……奥方が数十人も居るとなれば、殆どハーレムじゃないですか」

ホカホカと湯気を立てているおでんと、熱い日本酒が差し出される。
芥子を塗りたくってから口に放り込み、数回咀嚼してから熱燗を喉に注ぎ込む。

「ハーレムと言ってもだな。実質囲んだと言うよりも囲まされたと言った方が正解だ」
「はぁ、そうなんですか」
「そうだよ。僕だって、2〜3年前までは18を迎える前に自分がこの地方全ての領主になって、おまけに妻と子供を両方とも十人以上抱えるなんて想像も付かなかったよ」

彼は数人いた兄弟の中で、下から数えた方が早かった方だ。
しかし、親と自分より上の兄達が皇都で全滅し、そこから運命が急変して今に至る。
彼と同じように運良く生き延びた弟は既に此処には居ない。
彼にも野心はあったみたいだが、自分の嫁達を見て直ぐさま田舎の館に引っ込んでしまった。
実際、この地方で少年領主―――と言うよりも嫁達に逆らう存在などいはしない。
教会と有力貴族の政治力が完全崩壊してからというもの、再生帝とその側近の威光はこの国で最強の存在なのだから。
そして、その恩恵を受ける形で、少年領主はレプスブルグとその周辺の地方を治めている。
彼自身も、妻達に対する複雑な感情と彼自身の貴族としての矜恃(驚く事に、妻達に高貴な出自の者は一人として居ない)の為に必死に為政者としての修行と研鑽を積んだ。
実際、彼自身の努力と備え持った政治的才覚もあってレプスブルグとその周辺はいち早く混乱から復旧し、旧帝国時代よりも繁栄を享受している。
しかし、やりきれない気持ちもある。今の所、どんなに頑張ろうが、彼が妻達の影響を抜けれる事は無いのだから。

「なぁ亭主、僕は無力なのかな?  名前だけの領主なのかな?」

浴びるほど日本酒を飲んで、やがてカウンターに突っ伏し、寝言を呟く少年領主。

「いえいえ、そんな事はありませんよ。貴方の努力の結果が出るのはまだ先でしょうけどね……」

そっと彼の肩に背広を掛けて、提灯の灯りを消す店主。
深々と冷える冬の空は少年領主の悩みと苦悩を包み込んでいった。
少年領主の未来に、幸あらん事を。

やおい  




890  :陸士長:2007/01/20(土)  07:55:29  ID:81syFin6
誰も居なくなったのでまたこっそり投弾。

『日本に交わればヲタくなる』

あの『俺のケツが舐められた事件』から数ヶ月。
ホジャスの心因的な損傷もようやく癒え、クリスティーナ・ウェーバーもナイトロスと自衛隊基地を忙しく往復していた。
尤も、プライベートな時間は結構自衛隊基地の方に行っているらしい。
口さがない連中はあれやこれや姦しく噂していたが、結局は噂の域を出なかった。

「なぁ、今夜カラオケやらないかホジャス。新しい曲がまた入ったみたいだしさ」
「お、良いねぇ。DMCの新曲入ったかなぁ?」

主計課の自衛官の誘いにホジャスは応じた。
彼はプライベートの時はノリが良いので、自衛官達も気さくに誘える。
だから、声を掛けられる事も多いので、いつもの事だとばかり応じたのだ。

が、カラオケボックスの中に入ってホジャスはちょっぴり後悔する事になる。
自衛隊員やナイトロス士官が数人いる居る中、クリスティーナ・ウェーバーが端にちょこんと座っていたからだ。
思わずズボンを押さえるホジャス。周りにいる事情を知る者達が嘆息した。

尤も、カラオケ自体はつつがなく進んだ。
各々飲み物とつまみを口にしながら、次々と選曲しマシンにぶち込んでいく。
その大半がアニメ曲で、何故かウェーバーもマリ見ての「Pastel  Pure」とお願い先生の『Shooting  Star』を張りのある美声で歌っていた。

(い、何時の間に……)

彼女の汚染っぷりに唖然とするホジャスだが、負けていられないとばかりに自分も曲をぶち込む。
これは結構ディープな曲だ。自衛隊基地でアニメを囓った程度の素人に解る筈も無いと。

「nowhere」。知る人ぞ知る名曲である。
ナイトロス士官は「ナニコレ?」と当惑し、自衛官達は「エルダタルータ」と呟き、大皿に盛ってあったパスタを猛然と食い始める。
ノリの良い自衛官達に満足げに笑みを浮かべ、ノリノリで歌い始めるホジャス。
ウェーバーの方を見るとポカンとした表情でこちらを見ている。

(何とたわいのない。鎧袖一触とはこのことか)

勝ち誇り、声を張り上げて熱唱するホジャス。
ウェーバーが立ち上がる。微かに「トイレに」と聞こえた。
泣き叫べ。敗北を噛み締めろ小娘。ホジャスは歌う。ずっと俺のターン。

「すべてーをみーせるほーしぃーの……おぉ!?」

ホジャスは硬直した。
彼は見てしまった。
彼等の個室の入り口で振り返ったクリスティーナ・ウェーバーが。

右手にSIG-P210を持ち。左手に『人形』を持ち。
何ともオサレな、無敵モードに入ってそうなポーズを決めていた。
いや、彼女はまさに無敵だった。

ウェーバーの唇が動く。

「私は悪い子です」

ホジャスの完敗であった。  





932  :陸士長:2007/04/01(日)  21:17:45  ID:rYnjAwqw0

その日、ホジャスと暇な自衛隊員数名はナイトロスに存在する『日本人街』の寺に居た。

「ここがお寺なのか……」

きっかけは数日前に遡る。

「もう、ホジャスったら部屋の中散らかし過ぎよ」
「うう、ごめんよアンリ。気がついたらこうなってたんだ」

休日のとある日。ここはホジャスの実家のホジャスの部屋。
プンプンと怒りながら箒を掛ける兎人族の女性…ホジャスの恋人であるアンリの前には日本産の漫画やら同人誌が山積みになっていた。
日本のアニヲタなら常識であろうとも、ここはナイトロスである。
部屋の中に本が詰まってるなんて図書館か学者の書斎ぐらいでしかあり得ない。
加えて、堅物のアンリは日本のアニメにあまり理解を示さなかったので尚更だった。

「日本の文化を取り入れるのは結構だけど、ちょっと偏り過ぎよ」
「う、うん」
「この間も私に黙って日本に行っちゃうし。折角の夏期休日なのに」
「ご、ゴメンナサイ……」

『ビックサイト上陸大作戦』の事を小突かれてホジャスはますます背中を丸めつつ本を整理する。
確かに恋人を差し置いて自衛官・クリスティーナ・同僚・竜人達と共に夏コミに突撃したのは言い訳のしようがない。
なので、アンリの言葉にもいちいち謝罪するしかないホジャスであった。

「だから、ちょっとは別の日本文化を取り入れたらどう?」

掃除が終わった後、紅茶を飲んでいたホジャスにアンリがチラシを差し出してきた。
そのチラシには、こう書いてあった。『座禅会  〜禅一心にして心と姿勢を正しませんか〜』

恋人の勧めもあり、彼は暇な自衛官を誘ってやってきたのが『日本人街』の寺であった。
のだが、

「「「「「………」」」」」
「皆さん、はじめまして。私、このお寺の住職見習をしております」

境内に通されたホジャスと自衛官は、俯いて必死に何かを堪えていた。
しかし、その住職見習にはホジャス達の努力は通じなかったらしい。
彼らの忍耐に、あっさり止めを刺した。

「ジュウ・シ・マーツと申します」

次の瞬間、ホジャス達は大爆笑した。
痺れた足の所為で転げ回り、現住職に「喝」を入れられるまで止まらなかったという。

尚、鳥人族のジュウ・シ・マーツがこの寺の五代目住職になるのは、随分先のお話である。  


933  :名無し三等陸士@F世界:2007/05/12(土)  00:27:13  ID:WAY6dnWI0
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         \  /  く  l      ヽ._.ノ      ',  ゝ  \              <ジュウ・シ・マーツと申します>
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