203 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/06(木) 01:06:57 [ Pusv3SwY ]
F世界で鳴らした俺たち魔導学院生は、卒業後纏めて魔導砲兵訓練施設に放り込まれたが、訓練所を脱出し統合魔導兵練兵場へ潜った。しかし、そこでくすぶってるような俺たちじゃあない。筋さえ通りゃ金次第でなんでもやってのける命知らず、不可能を可能にし、巨大な悪を粉砕する、俺たち魔導学院生Aチーム!

俺たちは、道理の通らぬ世の中に敢えて挑戦する、頼りになる神出鬼没の 特攻野郎Aチーム!
助けを借りたい時は、いつでも言ってくれ!

進め! SF(すごく ふしぎ)研究所 3 外伝 FMJ! act.3

五月某日+1日 FMJF訓練兵舎 第一教室 12:29

 授業開始一分前。
 もはや誰も遅れようとは思わないらしく、開始3分前には全員着席、今では昼休み前に渡されていたテキストの準備も完了。
 気の早いヤツはすでに目を通している。
 時間が押して昼飯もろくに食えなかったヤツでさえ、いや、だからこそか、必死に目を通している。
 そして教官が姿を現した。
 
「よし、豚娘共、聞け!
 これよりこの時間は軍事教練を行う。
 今日はお前らの女を紹介する。
 02式自動小銃。
 6.5mm 02年式小銃弾使用。30式を改良したものだ。装弾数20/50着脱式ボックスマガジン。
 クロムメッキで銃身寿命を延ばした優れものだ。
 これを持った熟練兵二人で30人を超える軽騎兵を殲滅できる。
 どうだ、いい女だろう?
 これから貴様らが遊べるマ○コはこれだけだ。
 各自、銃を女名前で呼べ!
 貴様らの女房は鉄と木で出来た武器だ! 浮気は許さん!
 よし、では名前を呼ばれた者から取りに来い! 」

204 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/06(木) 01:07:32 [ Pusv3SwY ]
 02式自動小銃。
 38式小銃の後に作られた後継銃らしい。
 何でも99式というのが間にあったが不評ですぐ廃れたとか。
 戦訓と兵の希望とある天才の合作だと言う話だが、良いものなら文句はない。
 おっと俺の番だ。
 
「泥人形!」

「はい! 教官殿!」

受け取った銃は、帝国以外では見ることができないくらい綺麗で、軽かった。

「全員受け取ったな! ではこれより後について唱和しろ!」
「はい! 教官殿!」

「捧げ!筒!
 これぞ我が銃! 銃は数あれど我が物はただ一つ。 これぞ我が最良の友!」
 
「これぞ我が銃! 銃は数あれど我が物はただ一つ。 これぞ我が最良の友!」
 
「我なくて銃は役立たず、銃なくして我役立たず! 我は的確に銃を撃つ、我を殺さんとする敵よりも勇猛に撃つなり、撃たれる前に必ず撃つなり!」
 
「我なくて銃は役立たず、銃なくして我役立たず! 我は的確に銃を撃つ、我を殺さんとする敵よりも勇猛に撃つなり、撃たれる前に必ず撃つなり!」

205 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/06(木) 01:08:06 [ Pusv3SwY ]
「我と我が銃は祖国を守護する物なり、我が敵には征服者、我と我が友には救世主! 敵が滅び、平和がくるその日まで!」

「我と我が銃は祖国を守護する物なり、我が敵には征服者、我と我が友には救世主! 敵が滅び、平和がくるその日まで!」

「よし! それではお嬢様がた、恋人のお手入れを!」

「はい! 教官殿!」

「それでは分解に入る、手元の作業書の通り進めろ。
 まずは箱弾倉を抜き、ボルトを引き、薬室内に弾丸が入っていないことを確認する。
 次に銃身覆いを外し、ガスシリンダーとピストンを外す。
 安全装置の前のレバーを引き機関部から銃身をずらし、抜く。
 それから……」
 
 何言ってるのかさっぱりわからん。
 何かの呪文か?
 言われたとおりにしていたつもりだがすぐに分からなくなった。
 手引きを見ると何となく分かるけど……
 
「マット、 こっちを見ろ」

 袖を引っ張られてそちらを見ると横永が詳しく教えてくれた。
 弾倉は分かる、ボルトがこのレバーと言うことも。中も確認した。
 銃身覆いはこれだろ? でこれどうやって外すの?
 
 ああ、こうか、なるほど……
 
「分解ができしだい、次は組み立てだ!
 分解組み立ては目をつぶっていてもできるようにしろ!

206 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/06(木) 01:09:07 [ Pusv3SwY ]
以下素案のみ
1400-1530
新上位古代語勉強
案)
グラフを口述できるような表現の幅の広い上位古代語を再編し、
簡略化したものの勉強。魔導師組は上位古代語は知っていてもこれは詳しくない。
魔法基本

魔法の総合レベル/術者の総合レベル=魔法難度
魔法総合レベル=(魔法基礎難度)x(R〈実距離〉/基本距離〈定数〉)x(D〈実威力〉/基本威力〈定数〉)(基本範囲拡大度)x(精度)
術者総合レベル={(術者基本レベル)+(補助具レベル)}x(儀式レベル)x(術者人数)x(熟練度)

例)大火球:火球を45mまで飛ばし、威力拡大6、精度+1
術者レベル5、A級補助具使用、基本儀式(身振り手振り詠唱短縮無し)一人。

魔法総合レベル=レベル3x(45/15m)x(32/16点)x(3)x2=108Lv
術者総合レベル=(5Lv+2Lv)x3x1x1=21Lv
魔法難度=108/21=36/7≒5
また魔法難度が1でないとき、消費魔力は{基本消費/(修得レベル/自レベル+1)}x難度で、
16/2x5=40P
普通の魔導師(20〜30P)だと足らないから貯蔵魔力使用だな。

1530-1600
休憩

1600-1730
下位魔法実習

ここまで抜け

207 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/06(木) 01:09:46 [ Pusv3SwY ]
五月某日+1日 FMJF第二射撃訓練場前 17:25

 昼過ぎに銃を撃った射撃場とは違う、屋根付き壁付きの屋内射撃場、第二射撃訓練場。
今までまともに使ったことはなかったが、この構造は単なる銃の訓練場にしては妙に手がかかりすぎている。
よく考えてみると手前の射撃ブースは変に壁が厚いし前は当然として後ろと上が開いている。
その上、ブースごとに奥まで天井にレールが引いてあって最大100mから5mまで的が動かせるようになっている。
ボースがしっかり区切られて、しかも逃げ道を考えて作られているということは、もし暴発したら前後と上に抜けて被害は左右の訓練者に被害が出ないようになっていると言うことだ。
 そして的が5mまで寄るのは、いくら拳銃でも近すぎる距離だ。
だが魔法なら? 魔法は種類にもよるが基本的に『的が遠くなればなるほど制御が難しくなり、魔力消費も大きくなる』
半自動追尾の魔法の矢なら20m、範囲魔法の火球なら15m程度、遠距離を狙いやすい雷光でも50mはキツイ。
もちろん今では機杖があるし、他の補助手段も有る。 それでも射程距離と言うことに関して言えば銃に比べて短いのが歴然だ。
つまりここは『機杖訓練を主目的とした射撃場』なのか……

そんなことを考えていると教官殿が大股で歩いてきた。
一斉に整然とした縦隊を作る。 もう慣れたものだ。
教官はじろりと周りをねめつけ、右横に回る。

「右向け!右!」

縦隊全員が一斉に右足を引き、左足を軸に90度回転、右足を寄せる。
教官は僅かに頷いたように見えた。 

「さぁ、雌豚共、これより機杖実習を行う。呼ばれた者から鍵を受け取り、その番号の保管庫から機杖を持ってこい。
 スキン野郎!、マラ頭!……」

「はい! 教官殿!」

208 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/06(木) 01:10:46 [ Pusv3SwY ]
 次々に鍵を受け取り保管庫へ駆け込む。
 
「……泥人形! 」

「はい! 教官殿!」

横の助手の持つ盆から並べられた鍵を順に取り、俺に渡した。
番号0014、確認すると射撃場横の保管庫に駆け込んだ。
左右に同じ鍵付きロッカーが上下二段にずらりと並ぶ。
みぎは1から左は26から、とすると右手の真ん中よりチョイ奥か。
2,3,4,……14、これだ。
鍵を差し込んですぐしたのレバーを回し、開く。
オイルのにおいが鼻につく。
120cmほどの真新しい機杖が斜に立てかけてあり、ロッカーサイドのポケットには「増幅」、「発火」の詠唱筒と「簡易制御」の術式符がベルトに差し込まれて入っていた。床には充電済みらしいバッテリーが2つ。 結構重い。
ズボンのベルトの上からさらに詠唱筒ベルトを巻き、機杖のスリングに手をかけ背負う。左手にはバッテリーを2つ抱え、ロッカーをしめる。鍵を抜き、扉が開かないか確認してから、小走りで皆を避けながら保管庫を出た。

 皆が機杖を手に取り、間をおいて並んだ所で教官が怒鳴った。

「お嬢様がた! それがお前達の使う専用機杖、正式名は02式統合魔導兵用軽量機杖、通称02ライトだ!
 取り回してみろ、どうだ重いか!? 」

「はい! いいえ!教官殿! 」

209 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/06(木) 01:11:25 [ Pusv3SwY ]
 これは本当だった。
 今の俺には軽いとは言えない。
 だが重いとは絶対に言えなかった。
 なぜなら、『学院』でつかったことのある高性能機杖に比べて半分以下の重さだったからだ。
 当時とは言っても一昨年のことだが、機杖は重くかさばり、しかも壊れやすいものだった。
 使うときは杖をまっすぐ立ててバランスを取り、重量がこちらにかかってこないようにしたものだ。
 それでも使いたいという者が後を絶たなかったのは、そのデメリットを補って余りある性能だった。
 
「……その性能は、詠唱筒6基、術式符12枚、電池式、全長128cm、全備重量8kg、半自動接続式……」
 
 
 今の教官の説明している通りなら、これは詠唱筒が一機、術式符が2つ少ないだけで他の性能は軒並み上、
 何より重量はたった8kg、バッテリー込みでだ。 肩掛け紐とベルト金具を使えば体感重量も軽く感じる。
 これは凄い。しかも型番から察するに開発時期は『学院』と大差ない。
 
「貴様ら、良く聞けよ。 この握りについた菊の御紋、これは畏れおおくも天皇陛下のご配慮であるあかし。
 このことを忘れず大事に、そして自分の一部として熟達せよ」
 
「はい! 教官殿!」

「まだまだはるか先になるだろうが、成績優秀者は選抜の上、特殊作戦部隊を結成することになっている。
 その暁には03式特殊機杖や新たに開発中の新式も配備されよう。 貴様らも全力を尽くして励め! 」
 
これが使えるだけでもここに入隊した甲斐はあった。
それに新式? 確かに年式は一年以上前だが――欲しい――魔導師として、兵として、なんとしても。

210 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/06(木) 01:12:06 [ Pusv3SwY ]
「さぁ、前置きは終わりだ、これから機杖の分解整備、組み立てを行う。 時間内にきちんと整備し、バディと両方合格が出れば、
 時間まで中の射撃場で『火炎』の射撃訓練とする。
 まずは電池、詠唱筒弾倉、術式符を外し、この後ろにある握りの中から工具を出す。
 それを使ってまず、一脚を外す、するとこのカバーが回るようになるから、反時計回りに回すと前カバーが外れる。」

皆一斉に座り込んで銃と同じように整備を始める。
まず、後ろの電池箱を開きボタンをしっかり押しながら電池を引き抜く。
次に逆凹形の詠唱筒弾倉を外し、弾倉前の櫛のように並んだ術式符を台座ごと抜く。
そのあと後ろのハンドル下の留め具を外し左側を前にずらす、すると工具が出てくるから……

「そのあと、安全装置がかかっている状態で、前のグリップ根本のレバー下にをずらすと左右のカバーが外れる。
 するとギアボックスが完全にむき出しになるから工具を使ってピンを抜くとギアボックスが外れる。
 僅かに前にずらして抜くと、モーターが出てくる。そこでいったんモーターはおいておいて、自由な空間が出来た所で詠唱筒-術式符連絡回路箱を左右のねじを外して後ろに引く、これで前はフレームだけになったからモーターへ戻って……」
 
モノポッドを外して、前カバーを外して、安全装置を確認してハンドル近くのレバーをってどっちよ?
小さい方か? これを押し下げて……おお外れた。 で、カバーを前に引くと、よし、外れた。
で? えーと、ギアボックスを……ピンてどこよ左右から眺めて下から覗いて……ここか! フレームの外じゃねーか!
つぎは、モーターかな? って外れねぇ! なんでだ!……って、手前の魔導回路と干渉してるのか、じゃこっちが先だ。
えーと押しても引いても動かないって事はどっかピン留めか? この六角の頭のヤツか? 両側からピンを抜いて、よしとれた。
で、後はどうやんだっけ?

211 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/06(木) 01:12:56 [ Pusv3SwY ]
「さて、オフェラ豚ども、当然出来てないな。 俺が貴様らに望むのはこのレベルだ。 本来よりゆっくり分かり易くばらしたが、この時間で分解、そして同じ時間で組んでもらう。 出来なければ出来るまで居残りだ。 幸いこの後は飯と、自習時間だ、時間はまだまだあるんだ、食ったり休みたかったりしたくないヤツはゆっくりやれ!
 では組み立てだ! よく見てどこをどうしたか覚えろ!」

ワザとかよ! クソ! むかつくぜ。
 最初はトリガー周りか、次がセレクタ組み付け、細かい部品が多くて良くわからん。 次がモーターボックス組み付け、レバーピンで締めて、魔導回路取り付け……おっ、判る所に来たぞ……ギアボックス、左カバー押し込んで右カバー押し込んで、押さえてレバーを上げる。 ああ、そうかさっき魔導回路のセレクタレバーを上げといたのは組み立てやすいからか。 で、前カバー付けて、モノポッド付けて、術式符の台座をひっくり返して差し込んで、詠唱筒弾倉を被せてセット、電池を入れて、完成!
 違うのか? 微調整? 安全装置を「ア」から「シ」にして、電源入れて……
 
 シャーっと言う音がして詠唱筒が回る。
 セレクタをカチカチ合わせるだけで選んだ所にアクセスしている様だ、僅かに調整ねじらしき所を触っただけで終わった。
 トリガを引くと僅かに音が高まり、実用回転数に達したことを知らせる。

「よし、これでいつでも使える。 今日は組み立てまでだウジ虫共、お前らにはまだ調整は出来ないからな。 今日の所は分解と組み立てで合わせて10分以内だ。 簡単すぎてあくびが出るか? さて、最後にこの機杖の取り扱い説明書を渡す。各自順に取りに来い。 スキン野郎!……」

そんな物があるなら最初から渡せ!
頭にカッと血が上って、次の瞬間、上がった以上の血が引いた。
『初めてみた機杖を、説明書もなく、ただ他の人がバラシているのを見て、それで半分以上きちんと分解できた』ってのは普通ではあり得ない。 機杖ってのは機械部品が詰まった重量物で、何カ所も稼働する部分があり、面倒な魔導技術を内蔵したモノだ。 実際に『学院』卒業前にできた新式の機杖はレンチとねじ回しと結束ひもと、何より説明書がないと組み立てできなかった。
 これは最初思っていたよりもっと凄い物なんじゃないだろうか?

212 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/06(木) 01:13:53 [ Pusv3SwY ]
「……泥人形! 」

「はい! 教官殿!」

反射的に答え、小走りで教官まで向かう。

「受け取れ! 無くすなよ!」

「はい! 教官殿!」

説明書は10ページもないモノだった。
受け取る手がふるえる。

「どうした! 驚いたか!」

「はい! 教官殿! 帝国は……凄いです!」

教官は僅かに笑ったように見えたが、次の瞬間には凄い顔で怒り出し言った。

「貴様はまだ帝国を嘗めていたのか!? 貴様はやはり頭に泥が詰まっているらしい! 『ほほえみデブ』貴様がバディだったな! 二人ともこちらに来て腕立て20回だ! さっさとやれ! 」

213 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/06(木) 01:15:13 [ Pusv3SwY ]
「「はい! 教官殿!」」

腕立てのために横に置いた説明書が風で開いた。
さっきやった事が大きな絵で説明されていた。
帝国は本気で凄い。
腕立てでクリアになっていく頭でそれだけが残った。

結局、合格が出たのはほとんど終了時間間際、調整のしかたを聞きながらいじってる所で時間になった。
期待の専用機杖で実射ができたヤツはいなかった。 大きく遅れたヤツもな。

214 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/06(木) 01:17:59 [ Pusv3SwY ]
投下終了〜
余計な小ネタ。
TRPGを知ってる人は分かり易いけど、魔法の難度について
メモ書きとは言え落としてみたり。
基本的には自分の中で魔法と言えばあんな感じ。

この機杖はカタチは機関銃を輸送カバー付けたまま+ハンドルのようなカタチです。
つまり、重機関銃より短くて太い。 ショルダーハーネス+サスペンダーつきベルトで二点保持、
さらにM60みたいに(右利きなら)左手でハンドルを掴み、右手でセレクタ+トリガをコントロール。
腰だめ状態ならかなり自由度高め(重いけど)、その上一脚で立つ形になれば体感重量は結構軽減されます。

使い方は腰だめ状態になったら、左手で電源オン、右手のセレクタで詠唱等をセレクト、セレクタは自転車のギアセレクタ、レバーとスプリングでやるヤツと同じ機構。術式符は詠唱筒一基につき2枚、詠唱筒ごとに自動的に二択になる。そこまでいったら左手で選択ハンドル近くにコッキングレバーみたいなのがあるからそれで選択。


301 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/19(水) 00:18:20 [ Pusv3SwY ]
自分は統合魔導兵団で生まれ変わり、そしてそのおかげで今生きています。
戦場では「まさか」と思う心が命取りになります。
もしあの時、自分に統合兵団の鋼鉄の心がなければ、心の隙をつかれて殺されていました。
あらゆる事を想定し、そしてその想定外の事が起きた時、とっさに対応できたのは日頃の訓練のたまものです。

――統合魔導兵 第二分隊所属 主水 米理 上等兵――

問1. もしもあなたが夜道を歩いている際に、凍ったバナナを振りかざして男が襲いかかって来た時には
答. 武器の有無を確認し、できれば距離を置いて対処する。それができない場合、短刀で襲われた場合(前項を見よ)と同様に押さえつけます。

問2. もしもあなたが夜道を歩いている際に、凍ったミカンを振りかざして男が襲いかかって来た時には
答. 鈍器で襲われた場合(前項を見よ)と同様に対処する。 なお、投擲に適した形状なので多少離れても油断しないこと。

――やさしい護身術 統合魔導兵団編 実践編 コラム:嘘のようなホントの話より抜粋――

302 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/19(水) 00:19:19 [ Pusv3SwY ]
進め! SF(すごく ふしぎ)研究所 3 外伝 FMJ! act.4

五月某日+1日 FMJF訓練兵舎食堂 19:15

「飯だ! そして風呂だ! 更にはお待ちかねの自由時間だ! 今日はこれで終わりかと思うと顔がゆるむのを止められないぜ!」

機杖をしまい込み、身軽になった俺は横永と食堂にはいると共に叫んだ。

「まあな、実質的に初日とは言えきつかったからな。 明日に備えて英気を養わないとな? 」

「おいおい、訓練が終わったばっかだってのに嫌なこと言うなよ。 あと三時間はそう言うことを考えないようにしようぜ。
気が滅入ってしょうがねぇ」

「ほう! 貴様は余裕だな。」

いきなりの声に体が凍り付く、教官の声だ。
全速で振り向き、敬礼。

「はい! いいえ、教官殿! 自分は明日のために心機一転、心を入れ替え、全力を持って訓練にあたりたいと思っております。
そしてそのため、十二分に休養し、英気を養おうと相棒と話していた所であります!」

「まあ良いだろう。 俺が来たのは言い忘れていたことがあったからだ。皆聞け!
 明日は『今日の訓練を完全にものにしている』という前提で進める。
 詳しい内容はそこの掲示板に張ったが、できないヤツは休憩も食事も睡眠も削ってできるまでやってもらう。
 不安があるものはこの後の自由時間中に対処するように。 」

言いたいことだけ言って教官は食堂を出た。
さっきまでの喧噪が嘘のように静まった食堂、そろそろと振り返ると『劇的! ビフォー、アフター』という文字が頭をよぎった。
横永の方を向くとヤツもこちらを見ていた。 無言で頷く。 俺たちに言葉はいらなかった。

303 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/19(水) 00:21:05 [ Pusv3SwY ]
 食堂の飯は旨かったはずだが全く記憶にない。
ただ、最大戦速で飯を食い、ここで覚えた新たな快楽――風呂――もあっという間に切り上げた。

その後、『楽しい楽しい自由時間』を期待していた魔導師組は、テンションが一度上がった分落差がでかくなりまるで通夜のようだったらしい。 兵士組は『月月火水木金金』が意識にあった分まだマシだったが、多少の期待があったことと、周りの空気の重さにつられてこちらも酷いものだったらしい。
 なんで自分のことなのに『らしい』なんて事になるかというと、そこいら辺の記憶が定かでないのだ……いや、もう忘れよう。
その時やったことは体が覚えてるっぽいし……

五月某日+1日 FMJF訓練兵舎 21:45

消灯時間ぎりぎりまで、教官曰く『自由時間』を予習復習に励んだわけだが、のろのろと寝具の支度を始めた所でその教官が姿を見せた。

「傾注! 豚娘共、楽しい訓練生活一日目だというのにずいぶんとおとなしいようだな! それでは元気になるような話をしよう! 」

304 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/19(水) 00:22:09 [ Pusv3SwY ]
シーツと毛布を整えていた訓練生が一斉に二段寝台の左右に直立不動で並ぶ。
俺たちを見回してから教官はゆっくり歩きながら話し始めた。

「天皇陛下は畏れおおくも我ら国民のことを『赤子』と呼ばれ、我ら国民も陛下を父とし、日本国民全てを家族とと思い尽くしておる。 だがその点、今の貴様らは飯を糞に変える以上のことはしておらん! 今の貴様らは歩くクソ袋だ! その貴様らを養い、装備を調える者らがいる。 国民だ。

 食糧自給率の低い我が国にとって食料は重要な戦略物資である! また貴様らの装備には残り少ない備蓄の稀少金属も多く使われている。 貴様らのために他の国民に無理を強いた。 つまり、貴様らウジ虫は命を救われたに等しい『恩』をうけたのだ。 その恩を返すまで貴様らクソ袋は死ぬことは許されない! 」

教官はそこで言葉を切った。
そして俺たちをゆっくり見回し続けた。

「だがこれは俺たちが欲だけで動く私兵集団とは違うと言うことも意味する。
『恩』を国に返すため励むのなら『忠』だ。
『恩』を家族らを含む国民に返すなら『孝』だ。
そして国民を守る戦いは『義』だ。
 人間なんだ欲もあるだろう。 それでも俺たちは『恩』と『忠』と『孝』と『義』で戦う防人だ。
これは誇って良い。 貴様らもこの誇りを得られるよう励め! 以上だ! 」

教官はそれだけ言うと早足で入り口に向かった。
扉の前でくるりと振り向くと、また普段と変わらない様子であっけにとられている俺たちを怒鳴った。

「何をしている! もう就寝時間だぞ!さっさと寝台に入れ! 」

怒鳴られた効果は覿面で、木の寝台をきしらせながら全員が飛び込む。
全員が寝具に入り、寝台のきしみが止まった所で本日最後の教官の号令がかかった。

「よし! それでは消灯する! お休みなさい だ。 ウジ虫共。」

明かりが消され、ドアの閉まる音が聞こえた。
防人か……格好良いな……

305 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/19(水) 00:22:47 [ Pusv3SwY ]
結局、この日は興奮して2220時くらいまで寝台内でごろごろ転がっていた。
後で聞くと横永は『義兵』という言葉に興奮が冷めやらず、叫びたいのをこらえて半時以上起きていたらしい。

五月某日+2日 FMJF訓練兵舎 06:00

ががががががががががん!!
バケツを叩く音で目を覚めた。
身を起こして……体が重い……辺りを見回す。
なんだ?

「おはよう! クソ袋共! さあ今日も楽しい楽しい訓練の始まりだ! 0630までに全員顔を洗い、身支度をすませて宿舎前に集合! 朝飯前の体操だ! 遅れたものは朝飯抜きだぞ! 」

教官はそれだけ言うと大股でバケツと警棒を持って部屋から出た。
朝から元気な人だなぁ。
 そしてその元気が伝播したかのように朝の兵舎が一気に活気付く。

「おい、マット! 早くしないと混み合ってやばいぞ! 」

横永が洗面所へ誘った。

――ああ今日は良い一日になりそうだ――

このときの思いはわずか30分後に、早くも撤回された。

フハハハァー、全くここは地獄だぜ!!(AA略)


307 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/19(水) 00:25:17 [ Pusv3SwY ]
今回の小ネタ
話が長くなるので削った部分に手を入れただけ〜

「恩」とは絶対に返しきれない負債の様なモノです。
自分では困難、あるいは不可能なことを為してくれる。 その行為をした人に抱く日本人の一般的感情が「恩」です。
「貸し借り」の概念と近く、一部内包されていますが、事実に加え、自らの内的感情で構成されていることが大きな違いです。
また、「恩」は「貸し借り」と違い、返済はほぼ不可能です。 借りたものは返すだけですみますが、恩は恩で返さなければならないため、通常は溜まる一方です。

例)
Aが砂漠で死にかけた時、B君から1lの水(日本国内の販売価格158円)をもらった。
そのため命を取り留め、日本に帰れた。<命の恩>

 これを返すことはまず不可能です。
B君は出費として158円しか出していませんが、その時A君は自分の全てを投げ出してもB君がいなければその水は手に入れることができませんでした。 つまり、自分の全財産を超える価値を与えられたことになります。

 同時に、自分の命の価値について考えた時、「158円の命」と言うことはとうてい耐え難いことです。
 自分の財産の私的価値観における比重と言うべきものからすれば、「あの時の158円」>「今の自分の158円」であり、数万倍に匹敵することもあるでしょう。
 
 さらに利子とも言うべきものが累積します。
自分がそれより後に成し遂げたことがあれば、「今自分が成功できたのはあの時Bが助けたからだ」という判断が付随するからです。
 この恩をA、B共に返したと判断できるのは、おそらく、逆にB君をAが助けた時だけです。
  
 また、「恩」は「忠」、「孝」の基本構成素です。
「忠」は主人(組織)から受けた恩(給料、名誉、仕事その物)を返すために、主人に奉仕することであり、またそれを示すことです。
「孝」は親が子を産み育て技術などを伝えた恩を、子が親に返すことを言います。

308 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/19(水) 00:29:30 [ Pusv3SwY ]
と言うわけで NAM! で戦う意味が見いだせなくてフルメタルジャケットになってしまったので、戦う意味を持たせました。
以降まともに戦ってくれるはず……という希望。
「小国が大国の侵略に対抗するのは正義の戦い」らしいので問題ないでしょう。
あとは別の意味でファンタジー分多め。


343 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/23(日) 00:12:54 [ Pusv3SwY ]
進め! SF(すごく ふしぎ)研究所 3 外伝 FMJ! act.5

――体力錬成――

朝から元気に長距離走。
隊列組んで、かけ声かけて。
だんだん変なテンションになってくる。

「行動迅速、精強無比!」
「行動迅速、精強無比!」

「俺達、統合魔導兵!」
「俺達、統合魔導兵!」

「撃ってよし!」
「撃ってよし!」

「唱えてよし!」
「唱えてよし!」

「空挺、上陸、山岳戦!」
「空挺、上陸、山岳戦!」

「呼ばれりゃどこでも駆けつける!」
「呼ばれりゃどこでも駆けつける!」

344 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/23(日) 00:13:31 [ Pusv3SwY ]
どうしたんだ教官? こんなお上品な歌なんて、なんか悪いものでも食ったのか?

「おら! どうした遅れているぞ『廃屋』! 気合い入れて走れ!」

普通通り……かな?

――空挺降下訓練――

「落下傘は装備したか!? 今回は落下傘は予備だ! 魔導力降下を行う! 
 機杖を起動させろ! 詠唱筒を『落下制御』、術式符は『飛行制御』に合わせろ!」
 
機杖を抱え直し起動、セレクタを合わせる。
詠唱筒の回転音が高まっていき、俺は手前のレバーを引く。
がちゃんという音と共に術式符がセットされた。 準備よし。

「2列になってバディと共に出ろ! 良いか? もうすぐ降下地点だ。
発煙筒と染料で場所を指定している。 そこへ降りろ!」

教官が輸送機のドアを開くと凄い風音がする。

「降下用意! 3,2,1,行け!!」

次々に飛び出していく。
もう次だ。

345 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/23(日) 00:14:14 [ Pusv3SwY ]
「行け!!」

 機体から飛び出すと風音に負けないように大声で『落下制御』の詠唱をする。 全く聞こえないが。
 異常に長く感じられた30秒の後、落下速度がゆるむ――成功だ――
 次に横永を探す。 いた、二時の方向、距離20チョイ上、ヤツも成功したらしい。 よかった。
 ぐるりと周りを見回し、発煙筒の煙を確認。ヤツとは反対側の八時の方向、距離120。
 僅かに落下速度を落としつつ横永に近づいていく。 おっ!気がついた。
 魔法制御で余り余裕はないようだが、こわばった顔をこちらに向けて口をゆがめて見せた。
 もしかして笑って見せたのか?
 横永と合わせながら目標に向かって進み始めた時、下の方で真っ白い落下傘が開いた。
 誰だ? ミスったのは?
 落下傘はゆっくり目標から外れていく……っと急に方向を変えた。
 バディが引っ張ってるな。
 教官が魔法発動に失敗したかのようなものすごい勢いで落下傘に向かっていく。
 あーあ、降りるまでめちゃくちゃに罵られるぞアイツ。
 さて、俺達も行くか。
 
「松永! 目標地点まで急速降下、 高度百で緩降下に切り替えでいくぞ!」

無事目標地点に降りた俺達はトラックに乗って基地に帰った。
落下傘降下したヤツは『廃屋』一人、落下傘の点検、折り畳みをした後、バディと共に走って帰ったそうだ。

346 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/23(日) 00:15:07 [ Pusv3SwY ]
――検査、そして制裁――

兵舎で向かい合って2列に並ぶ俺達を教官は次々に調べていく。
荷物を入れたトランクの上で、『小さく前へならえ』状態でじっと待つ。

「爪を切れ!」
「足が臭い!」
「靴擦れを直せ!」

だんだん声が近づいてくる。
俺は大丈夫なはずだ。 爪も切ったし、水虫でもない、靴擦れは横永に聞いてならないように注意したし、俺は大丈夫、大丈夫さ。

「おいこれはなんだ!」

また例の所、ルーク――教官曰く『廃屋』――の所で声が聞こえる。
いい加減気を付ければいいのに、ヤツは変に意固地になってろくにバディの言うことも聞いていないようだ。
名門魔導師一家出身というのがここでは意味がないと気づくのはいつになるやら。

「これはなんだ?」
「判りません、教官殿!」
「俺がこの世でただ一つ我慢できんのは鍵をかけ忘れたトランクだ!
 貴様のようなマラ頭のせいで泥棒がはびこる! 降りろ!!」

「はい、教官殿!」

347 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/23(日) 00:15:58 [ Pusv3SwY ]
視界の隅に『廃屋』が姿を見せた。

「何か無くなっていないか調べてやる!」

教官の声と共にぶちまけられる『廃屋』の私物。
怖い! 何やってんだアイツ! また俺達まで何か言われたらどうする気だ!

「……こいつはたまげた。 これはなんだ!? このクソはなんだ! 答えろ『廃屋』! 」
「はい、教官殿! 甘食であります!」
「甘食……?」
「はい、教官殿!」

おい、ちょっと、まずいぞ。 誰か止めてくれ!
多分、教官とヤツ以外のみなの心は一つだったと思う。

「どこで手に入れた?」
「食堂であります!」
「兵舎内で飲食が許されているか『廃屋』?」
「はい、いいえ! 許されておりません!」

教官の気持ち悪い猫なで声がだんだん高まっていく

348 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/23(日) 00:16:36 [ Pusv3SwY ]
「貴様だけ甘食を食って良いのか?」
「はい、いいえ! 教官殿!」
「なぜイカン? 『廃屋』?」
「はい、規則に定められているからです、教官殿!」
「貴様がやるべき事もできないクズだからだ! 」
「はい、教官殿!」
「なぜ甘食を隠した?」
「はい、腹が減るからであります、教官殿!」
「腹が減るから? そうか」

「『廃屋』二等兵は自分の名誉を汚し、小隊の名誉を汚した。ヤツ自身の言っていた名門の名誉は嘘だった。
 俺の努力は全て無駄だった」
 
僅かの沈黙の後、教官の声はゆっくりと遠ざかっていった。

「貴様らが助けなかったからだ。 『廃屋』が性根を入れ替えるために貴様らは何かしたか!?」

今度は教官の声が近づく。 ああ歩いて回ってるんだ。 どうでも良いようなことが頭をよぎる。
このまま現実逃避できたらどれだけ良いだろう。

349 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/23(日) 00:17:32 [ Pusv3SwY ]
「これからは『廃屋』が馬鹿をやってもヤツに罰は与えない! 貴様ら全員を罰する!
 ということはお嬢様方、甘食の罰は貴様らだ! 腕立て用意!」
 
トランクから降りて床に手をつく。
冗談じゃないぞ!

「口を開け!」

教官の声が上から聞こえる。 俺達か?

「奴らに感謝してじっくり味わえ!」

アイツか! あの野郎!!

「用意! 始め!」

「1,2,3,4,最、高、統合、兵」

かけ声と共に腕立てを始める。
ちらっと横を見るとヤツは立ったまま、菓子を食っていた。
ヤツはいつかブッ殺す。


365 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/26(水) 00:44:48 [ Pusv3SwY ]
進め! SF(すごく ふしぎ)研究所 3 外伝 FMJ! act.6

――私刑、復讐するは我にあり――

消灯後、ゆっくりと起き出し、石けんをタオルでくるむ。 即席のブラックジャックだ。
周りの皆も同じように無言で用意している。
ヤツのバディの『道化』がゆっくりと起きあがり、ヤツが眠っているのを確認、親指を立てるのをじっと見守った。
部屋中の奴らが手にタオルを持ちゆっくりと、静かに、だが確実にヤツの寝台へ向かう。
横永ら拘束係に任じられたやつらが毛布を被せ動きを封じ、口にタオルをかませると、俺達は無音でヤツを殴って寝台へ駆け戻っていく。
最後に残ったのは『道化』、横永達は手がふさがっている。

「やれ!」

横長の言葉に『道化』はおそるおそる近づいて一回殴る。
一瞬の目配せの後、横永が俺達の分もだと言うようにあごで促すとさらに人数分の打撃を叩き込んだ。
それを確認した横永は毛布を押さえていた奴らを下がらせ、最後に押し殺した声でヤツに言った。

「覚えとけよ、これは悪い夢だ」

ヤツの嗚咽が聞こえる。 ざまぁみやがれ。
今日はいい気分で眠れそうだ。

366 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/26(水) 00:45:24 [ Pusv3SwY ]
――訓話――

教官が訓練場の隅に俺達を集めて話を始めた。

「新撰組を知っているか? どの阿呆もしらんのか? 『ほほえみデブ』」
「はい、教官殿! 維新前の京都で幕府側に付き、たくさんの維新の奴らを殺しました」
「その通り! 池田屋などで幹部を殺し、大打撃を受けた」

「2,26は知っているな? 『道化』」
「はい、皇道派がおこしたクーデターです、教官殿」
「そう、警視庁や首相官邸を襲い占拠した。 どれくらい知ってるか?」
「連隊以下の人数でスゲエたくさん襲い、占拠しました。」

もう少しちゃんと言えよ。 僅かな笑いが広がる。

「笑うな。 1483人の兵を率い、襲撃。 警視庁には500ほどで攻め入り、あっという間に占拠した。
 凄い! 目的を持ち訓練を積んだ軍集団が何をできるか証明したのだ。 軍を止められるのは軍だけだ。
 それ以外のものには武装した軍集団を止めることはできない。
 そして同時に民衆を味方にできなかった軍集団がどうなったかも歴史が示すとおりだ。
 貴様らはここを出るまでに恐るべき戦闘技術を身につけるだろう!
 頼られもすれば、恐れられもする。
 その使い道を間違えるな!」

367 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/26(水) 00:46:31 [ Pusv3SwY ]
教官はそこで言葉を切ると、俺達に背を向けぽつぽつと話しだした。

「俺がシベリアに行ったのは18、いや19年前か。
 あそこは地獄だった。 冬は氷に閉ざされて死に、僅かな夏は全てが腐った。
 敵なんてろくに見なかったよ。見ても補給がある限り楽勝だった。 ただあったのは無慈悲な自然だけだった。
 軍の暴走はロクな事にならん。 国民の助けと意志が必要だ。 俺はあそこで心底それを思い知ったよ」

静かに話し終えた教官が振り返った時はもう既にいつもの教官だった。

「良いか! 国民全てを納得させ、一致できる理由などそうはない!
 だが一つ確実に国民が我々軍を頼り、協力する事態がある。 それは侵略を受け、危機に立たされた時だ。
 国を守り、家族を守り、友を守る。 それは常に正しい事だ。 その時に軍は本分を果たすことができる。
 しかし我ら軍は、忠犬たらねばならん! 主を危険にさらすなど有ってはならん! 心せよ!
 以上だ! 解散。」

教官にも色々あったのか。

――革命――

「よし、三組と変われ!」

教官の声に立射姿勢での2弾倉分射撃を終了して、第三組と変わる。
100mで60cm円内、少しばらけたか? 立射だから仕方ないか。 それでも俺達の知っていた銃とは次元の違う命中率だがな。
そんなことを考えながら待機位置に戻ると横永が手招きをしている。
呼ばれるままに寄っていくと妙に緊張した顔つきで話しかけてきた。

「さっき『道化』が言っていたんだが……『廃屋』の様子がおかしいらしい」
「この間からぼーっとしておかしかったじゃないか」
「そうじゃない、銃に向かって話しかけたり、誰もいない所に一人で何かを罵ったりしていたらしい」
「偶々じゃないのか? ほら今だって教官が寄っていくぞ」

368 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/26(水) 00:47:04 [ Pusv3SwY ]
教官は『廃屋』のそばでじっと射撃を見ている。
『廃屋』は気にせず射撃を続けている。 いや、空になった弾倉をベルトのホルダーに押し込み、素早く弾倉交換を終えて射撃を続ける。 巧くないか? アイツ。

「見事だ! 貴様の取り柄をついに見つけた!」
「はい、ありがとうございます、教官殿!」

「よし次は一組、膝射だ!」

呼ばれた横永は『廃屋』と入れ替わりに射撃位置に入る。
横永が射撃位置に着くだけなのに急に心細くなった。
 こちらに戻ってきた『廃屋』を誰もが遠巻きにして近づこうとしない。

結局、ヤツは立射、膝射、伏射全てにおいて異常なまでの好成績をマーク、訓練直後の小銃整備の際も銃に話しかけながら完璧にやってのけた。 教官は再び『廃屋』に付きじっと作業を見守る。

「『廃屋』今や貴様は強靱に生まれ変わった! 我が愛する統合兵団の狙撃手に選んでもよい。」
「ありがとうございます、教官殿!」

404 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/28(金) 23:42:38 [ Pusv3SwY ]
進め! SF(すごく ふしぎ)研究所 3 外伝 FMJ! act.7

――願望――

俺達が02式自動小銃に慣れ、96式軽機やベ式短機関銃に手を出し始めた時、『廃屋』は教官に呼ばれた。
トランクほどのデカイ箱を指さし、『廃屋』に開けるように命じた。

「『廃屋』今日は貴様にこれを使ってもらう! 帝国で増加試作中の大口径狙撃銃、『03式 対物自動銃』だ。
 口径20ミリ、装弾数5+1発、射程距離4000m以上、 有効射程は相手によるが一般戦竜なら2000m程度で撃破可能。
 歩兵、竜、騎兵、飛竜、何でも有りだ。 我が軍の戦車――鉄竜――以外の全てを撃破できる。 これを使っての報告書を出せ」

「ありがとうございます教官殿。……教官、これがあれば他の奴らに馬鹿にされませんか?」
「無論だ」
「これがあれば、他の奴らに頼らなくても良いんですね!?」
「優秀な狙撃手ならば、やりようによって だな」
「了解いたしました。自分の全能力をかけて使いこなして見せます、教官殿!!」

あいつらデカイ声で丸聞こえだっつーの!
恨み辛みはもう少し相手に聞こえないように言えよ!
それにしても変に歪んだっぽい。 それでも鬱々とドツボスパイラルにはまらなくてよかったけどな。

ルーク=トルゴン、通称『廃屋』科学に対する魔法の不信感、ひ弱な体の劣等感不信感、そして自らの狙撃の才能が彼の魔導師への道を閉ざした。 この後、彼はスナイパーへの道を歩き始める。
 魔法を併用しての高速の位置取り、脱出。 訓練で叩き込まれた偽装の技。単独潜入を好み、それでいて成果を上げる彼に人々は畏れを込めてこう呼んだ。名門魔導家出身にして戦場を支配する王――ゴールド13――と………………ウソだがな。

405 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/28(金) 23:43:20 [ Pusv3SwY ]
――格闘――

相撲や柔道に慣れ、打撃も学び始めた頃に練兵場隅の芝地に集められた。
教官に事前の走り込みもせずに集められたのは久しぶりだ。

「本日は徒手格闘訓練を行う。 
ルールは簡単だ。 後に響かん程度にやれ。

1.打撃は重傷にならない程度に部位を選ぶこと。
2.関節技は折らないこと。
3.絞め技は落ちた時点で放すこと。
4.魔法を使う際は加減して、威力を落とすこと。
5.相手の衣服は武器として使っても徒手と考えること。
6.途中での降参は「まいった」というか、声が出せない時は相手の体を軽く二回以上叩き、審判と相手に降伏の意志を表すこと。
7.一勝負3分とすること。

以上だ。 ではまず……そうだな『ほほえみデブ』!」

「はい、教官殿!」

横永が呼び出され一歩前に出た。

「模範演武をするぞ! 貴様らどういったことをするかよく見ておけ!」

うらやましいぞ 横永!! 合法的に教官を殴れるなんて! 俺と替われよ。

「審判役は『道化』!貴様だ! では始めるぞ」

教官と横永は向かい合って頭を下げ、3歩ほど距離を置いて対峙した。

406 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/28(金) 23:44:03 [ Pusv3SwY ]
「では、始め!」

『道化』の合図と同時に、横永は一気に踏み込み体ごと半身になって打ち込む直突き。
教官は左足を半歩引いて身を横永の前に出て右手を顔の前に差し――閃光――気がついたら横永が押さえ込まれていた。

「そ、それまで!」

『道化』の宣言……なんだアレ?
教官は裸締めを解き、立ち上がった。

「体力勝負では厳しい所もあるからな、ちょっと裏技を使わせてもらった。
 今のは詠唱を短くする替わりに光量を絞って、余計に魔力を掛けた『閃光』だ。
 覚えておくと役に立つ。 では次『泥人形』」

俺!? あんなのやるの?

「はい、教官殿!」

距離をおいて小技で逃げ切るしかねぇ!
向かい合って、礼。 用〜意……

「始め!」

ドン! 引いて『旋風』を……
教官は大きく震脚で踏み込み、俺が逃げた方向を見定めて飛び込んで。
くるな! 手を? あごに触れた教官の手のひらが俺の頭を揺さぶった。

うわっ

407 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/28(金) 23:44:35 [ Pusv3SwY ]
気がつくと草むらに座った状態で背に足を押しつけた教官がって俺どうなったんだ?

「おう、気がついたか? 加減はしたんだがな。
 まあ良い、今のは魔法使いに対して有効な手だ。 初手で飛び込む、あるいは初手で脅かして次手で追撃。
 相手が対処しきれないように先手先手を取るのが有効だ。
 今のは震脚で脅かして、逃げる方向が見えた所で踏み込み、相手の手を取って空いた手で掌打。
 相手に合わせて自分の持っている手札を切るのが良い。
 そして相手の持ち札が判らない時は、自分の最高の一手を狙う。
 兵士として武器が何もない時は本当にヤバイ時だ、時間を掛けるな。状況を見誤るな」

李教官が本当にムカツクのはどんな訓練も一応は模範を見せることだよな。
ただ指示だけ出すなら、言うだけならまだ文句も言えるのに。
あのクソ親父いつか訓練の時にボコボコにしてやる。

「よし、では訓練を開始する。 次は『道化』と『種馬』出ろ! 
それからさっき使った短縮『閃光』知りたいヤツは訓練後聞きに来い。 では始め!」

408 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/28(金) 23:45:09 [ Pusv3SwY ]
――卒業――

「本日をもって貴様らはウジ虫を卒業する!
 本日から貴様らは統合魔導兵だ!!
 兄弟の絆に結ばれる 。
貴様らのくたばるその日までどこにいようと統合魔導兵隊員は貴様らの兄弟だ。
多くは戦場へ向かう
ある者は二度と戻らない
だが肝に銘じておけ
兵は死ぬ
死ぬために我々は存在する
だが兵は永遠である
つまり―――貴様らも永遠である!」

そう言って教官は手元のリストに目を落とした。

「『種馬』 111小隊」
「はい、教官殿!」
「『金ぴか』 111小隊」
「はい、教官殿!」

次々と名前と所属が呼ばれていく。

「『泥人形』 111小隊」
「はい、教官殿!」
「『廃屋』 111小隊」
「はい、教官殿!」

409 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/07/28(金) 23:46:20 [ Pusv3SwY ]
「以上60名 第一期 統合魔導兵 訓練卒業とする。
訓練教官 李 安明 特務曹長」

教官は手に持ったリストを折り畳みポケットに入れると、胸を張り大声で怒鳴った
 
「これより貴様らは統合魔導兵として部隊の基幹小隊となる。
 第一大隊第一中隊第一小隊(111小隊)と第二小隊(112小隊)だ。
 もう一つの訓練施設で錬成中の2小隊と合わせ一個中隊が実働兵力となる。
 これから順次、最終的には連隊規模まで拡大される予定だが、第一期としての誇りと意識を忘れるな!!」

「はい、教官殿!!」

どう見てもFull Metal Jacket 、「FMJ」じゃなくて、
Facin New Gay 、「FNG」です。ありがとうございました。

しかしもう1エピソード分だけ続く。

439 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/01(火) 01:01:17 [ Pusv3SwY ]
進め! SF(すごく ふしぎ)研究所 3 外伝 FMJ! act.8

敵性地帯のさほど離れていない所、新たに割譲された地帯にはダークエルフや獣人の集落をあえて設けている。
理由は簡単、彼らの事を知ってもらい、受け入れてもらうためだ。
 敵性国家のあるいはその近隣地域の住人は帝国を批判する勢力の教育、文化思想を持っている。 それは獣人やダークエルフを蔑み、差別する文化であると言っていい。 しかしそれは少なくとも今の帝国では受け入れられない。 まして彼らが帝国中枢に近づこうとするならば、絶対に気付かなければならない事がある。 彼らにとって被差別民である獣人達は帝国にとって重要な情報網、労働力を提供するパートナーだと言うこと。そして彼ら自身を振り返る時、自分自身はごく普通の人間で、ありふれた存在であり、そして、『外様』だということに。
 結果として彼らは大きく三分させることになる。
 一つは融合派、進んで帝国を受け入れ、あるいは帝国に進出せんとする一派。
 一つは保守派、今までの生活をできる限り守り、相容れないことは黙認する。時間をかけることで伝統は変容し帝国支配を受け入れることになる。
 一つは分離派、帝国支配に反対し、地域を離れる、あるいは地域に留まり反帝国運動を行う。
 大多数は保守派に流れ、少数が融合派、分離派に分かれることとなるが、その反応が促進されることは帝国にとっても都合の良いことだったのだ。
 
 さらにもう一つ裏の理由がある。
 あえて危険な場所に、重要なパートナーたる獣人、ダークエルフを配置すること、それは彼らを帝国側に留めおくためだ。
第一世代と言うべき者は流民時代、被差別民としての記憶を有するが故に『帝国に反することはすべきでない』という意識がある。 しかし、第2世代――物心ついた時より帝国領内で育った者達――はそうではない。 帝国の庇護の内で『市民』として育った彼らは自由と権利を持つことを当然のことと考える。 無論、知識としては差別の事実を知ってはいる。 だが実感が伴わない彼らはこれが帝国支配圏内のこととの認識が薄いのだ。 特に個人的な理由から反帝国活動を行った者らが居たという事実は獣人、ダークエルフの長老達を卒倒させた。 故に彼らはあえて血を流す決断をした。

 第2世代と第一世代を交流集落に送り込み、第一世代には宣撫と敵性地域への工作、施設の拡充を行わせた上で、第2世代にはまず帝国外の実情を知る事を第一とした。

440 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/01(火) 01:01:50 [ Pusv3SwY ]
――初陣――

「本部より指令が下った。
ただ今より獣人、Dエルフ、交流集落が避難完了するまで、遅滞戦闘を行う。
我が部隊は敵前衛部隊後方に回り込み、連絡線を遮断、撹乱を行い速やかに離脱する。
敵前衛部隊撃破はこの後到着予定の第8師団と航空部隊に任せる。
僕たちの仕事は時間稼ぎだ、無理してさっさと楽になろうなんて思わないように!」

統合魔導兵 112小隊 発足したばかりの統合魔導兵団の実働部隊の半数、2個小隊が投入された。
事実上、運用最終試験と言えるだろう。 これでデカイ失敗でもしようものなら、良くて規模縮小、悪くてどこぞの魔導兵団か歩兵師団に吸収されるかもしれない。 全く嫌になってくるぜ。

芝村隊長の説明を聞いた時は楽な仕事だと思ったのになぁ……
彼は普段の行動からは想像もできないほど優秀だ。 俺たちの部隊で射撃でも格闘でも彼に勝てるヤツはいない。 俺が思いつく限り確実に勝てそうなのはよく彼を電話で怒鳴りつけている彼の奥さんだけだろう。
そんな芝村隊長が敵後方への侵入に使ったのがグライダーだった。

「いきなり空挺降下ですか!? 初陣ですよ! 」
「だってこれが一番早いでしょ? 空挺降下だって訓練で嫌と言うほどやったし、大丈夫、大丈夫♪ 」

俺たちの抗議もどこ吹く風、にこやかな笑顔で言い切られた。
畜生、機杖やら何やらに加えて落下傘? 普通の初陣のヤツはもう少しマシなんじゃないか?

441 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/01(火) 01:02:49 [ Pusv3SwY ]
某潜在性敵性国家 かの国は一つの政策を打ち出している。
「死刑囚、終身刑に匹敵する重罪人らを我が国との国境に放ち、近隣の夜盗と合同させた上で、その夜盗群を我が国に追いやる」と言う政策だ。 しかもこれはあくまでも通説。 かの国の表向きの言い分は、「我が国は重罪人とはいえ命を尊重する。 我が国からの追放に処し、我が国に入国しない限り以前の罪は問わない。 新天地での再出発を期待する」だそうだ。 ずいぶん耳障りの良い言葉だがそれなら他の国境でも同じようにしろよ。
 そして裏の、実体はと言えばさらに問題だ。
要は死刑廃止のイメージアップと手間暇予算削減に加え、もう二つ理由がある。
 一つは我が国が治安維持に予算も人員も取られることで弱体化――嫌がらせと言うべきかもしれないが――することを狙い、同時にそのことで他の列強との外交でプラスにすること。
 そしてもう一つが開発した新兵器――もしくは失敗作――を投入し、効果の確認や処分をすることだ。
間諜を紛れ込ませて夜盗を誘導し、それに対応した軍が側面から痛撃されて思わぬ被害を被ったこともある。 軍として運用できない暴走魔獣や大量の生け贄を必要とする禁呪に等しい魔法まで使われるのだ、コストパフォーマンスで言えば大量の捨て札で相手の切り札を使わせられるのだから分のいい勝負と言うことになるだろう。

 そして、もう一つ付随する問題が『夜盗を牽制するため』という名目で送り込まれてくる、自称『警備部隊』。
『夜盗群』の後ろに完全充足の砲兵を含む混成軍団、つまりこちらが大損害を受け、引いたならいつでも『治安維持』名目で踏み込めるように侵攻部隊が用意されていると言うわけだ。 大量の補給物資を持って『夜盗群』を『強行偵察』する『偵察隊』もよく確認されている。

442 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/01(火) 01:04:06 [ Pusv3SwY ]
想定状況
河川による自然国境を敵前衛部隊が越境。
前衛に統一された指揮系統を持たない増強一個連隊――20個中隊と言うべきか――約4000
本隊、自称『警備部隊』一個師団約1万人。
国境の町までは国境から約40km、貧弱な道路は通っているがWW2のロシア以下、
地形は街から順に開拓済み農地>未開拓の平地>森林>湿地>国境の順になる。
この付近以外は湿地と森で覆われ、軍の侵攻に適さないため、大部分の敵はこの平地(40x80kmの楕円状)に集中すると思われる。
幸い、国中から夜盗共を集めるため、侵攻時期は特定しやすかったが、日付まではハッキリしなかったため住人の避難と迎撃部隊主力が到着していない。 おそらくは半日程度で街へ到着、後、逆撃に移ると想定されている。
 少数の守備隊は前進防御陣地(壕+土盛り+一部柵)を構築、街への被害を局限する構えで待つ。
 迎撃部隊主力(第八師団)は街道を急行中、航空部隊は侵攻に備えての大規模整備中ですぐには動けない。
 
 統合魔導兵は敵後方で補給、情報を遮断、敵の一部を誘致撃滅、あるいは遊兵化して守備隊への圧力を殺ぎ、迎撃部隊主力到着までの時間を稼ぐ。



447 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/01(火) 23:43:09 [ Pusv3SwY ]
進め! SF(すごく ふしぎ)研究所 3 外伝 FMJ! act.8の続き

――錯綜する情報――

四台目の『偵察隊』を攻撃、撃破した後入った無線で芝村隊長は顔をしかめた。

「避難も打撃部隊の到着も予定より大幅に遅れている。まいったね。
この森の端で野外築城だ、塹壕を掘って、偽装陣地を作るよ。
時間を稼ぐぞ! 敵さんは数は多いが元は夜盗共だ、まとまりが無い上、戦闘群としての規模自体は小さい、各個撃破で数を減らす。第二小隊もいる分、多少は敵も分散されるだろう。 『適当』にやるぞ。

いいかい! 我々がここで踏ん張らねば、市民が死ぬ。
獣人? ダークエルフ? それにくみする邪悪な人間? 奴らがなんというか知らないけど彼らは守るべき国民(くにたみ)!
自分たちの家族に置換えてみなよ、そんなことが我慢できるかい?
そのためにも、総員ことごとく盾となって死ね!
 戦闘準備!」

448 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/01(火) 23:43:48 [ Pusv3SwY ]
合図と共に壕から僅かに銃と顔を出し斉射、そしてもう一発。
壕内に座り込む。 

「よし、やっと引いたよ。 ずいぶん粘ったね」

芝村隊長はいつもと変わりない様子であっさりと言ってのける。
この人実はものすごい人なんじゃないだろうか。

「ふう、やっと引いてくれたか。」

大きなため息と共に隠しきれない胸の内がぽろりとこぼれた。 そう、やっとだ。

 先ほどまでの戦闘は最悪だった。 おそらくは『強化薬』と呼ばれる物の試作品を与えられた部隊だったのだろう。
 思考能力が鈍る替わりに、痛みを忘れ、肉体の限界まで酷使できるようになる麻薬のような物だ。
 後先を考えなければ非常に有効と言える。
 何しろ恐怖を知らず、命令に服従し、魔法も使わないで並の人間を遙かに越えた力をふるう集団だ、懐に踏み込まれたら大損害は確実だ。 唯一の救いはその力を格闘戦にしか生かせないことか。
 ぼやけた頭で砲は扱えないし、体に染みつくほどの訓練をしなければそんな状態で銃器を扱えない――ただ装填済みの銃を乱射するだけ――からだ。
 しかし、こちらはそのため百もいない集団の半数を殺害、残り三割を動けないほどの重傷に、そしてその残り2割が潰走するまで弾薬を消耗した。 通常は3割死傷で『壊滅』と見なすから通常の倍以上、さらに『強化』の影響で戦闘不能にするまで通常よりもかなり多くの命中弾が必要だった。
 つまり、通常の5倍以上の弾薬を消費した計算になる。 これは携行弾数がごく限られた俺達には厳しい。
 もう既に残弾は三割以下だろう。 一人当たりつまり150発以下、もう一当たりできるかどうかだ。

「参ったな、弾薬も少なくなってきた。
どうします、隊長? このままこもって時間ぎりぎりまで粘り、場合によっては全滅するまで戦うか?
 それとも逆撃をしかけて離脱を狙いますか?」

449 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/01(火) 23:44:43 [ Pusv3SwY ]
隊長は俺をみて軽くうなずくと言った。

「良い質問だねマット上等兵。 当然、攻撃だよ。 僕らは敵前衛集団を引きつけ、その前面を突破して後方へ離脱する。」

「それは普通、正面突破と言わないか?」

「イヤだなぁ、そんなワケ無いじゃないか。 これは帝国陸軍の得意技、浸透突破だよ?」

「浸透突破というのはもう少し静かなモノと思ってましたよ」

「では認識を改める良い機会に恵まれたわけだ。 良かったね」

いくらイヤミを言っても隊長の笑顔は崩れない。
仕方ないか。 どちらにしろやばそうな目しかねえんだ、隊長に賭けてみるか。

「ふん! 今日は生きるにはちょいと辛いが、死ぬには良い日だ!」

「そうかい? 僕の勘では後80年ぐらい後に、舞を看取った後でってなってるけど?」

思わず隊長の顔を見直し、そして吹き出した。
ああこの人なら確かにそれくらいやりそうだ。

「さてと、合戦準備だ。 まずは部隊の弾薬を確認後再配分するぞ」

結局一人頭の段数は142発。 今はめてある弾倉以外は2本弱、最後の一本は8割しか入っていない。

 機杖と銃、予備弾倉と予備バッテリ1個、一日分の携行食、必要最低限度以外は全てここに隠せ!」

「応!」

450 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/01(火) 23:45:18 [ Pusv3SwY ]
「敵視認と同時に『肉体強化』! 『火球』と『幻覚』を仕掛け次第、突破を仕掛ける。 バディの命を助ける時のみ前進以外の行動を許可する。」

「俺たち死ぬかもな」

横永に向かってぽつりとつぶやいた。

「へっ! 何言ってんだマット。 しおらしい振りしてこないだの借金でも無しにしてくれとか言うんだろ?
 その手には乗らねぇよ。 俺達は生き残るに決まってるんだ。 大体、俺達は国に借りがあるんだ、返済するまで放すワケ無いだろ? これだから戦闘処女は……」

おどけたように横永が言った。

その時、通信員から声がかかった。
「芝村隊長! 援軍です! 騎兵隊です! 今こちらに近接支援を送るそうです。
 それに第八師団も既に到着済み。 まもなく進撃を開始するそうです!」

最初にため息のような笑い、そして次々と連鎖する笑いの渦。
最後は全員の馬鹿笑いに発展した。

芝村隊長が両手を前につきだし、『押さえて』というような仕草をすると笑いはやっとやんだ。

「さぁてと、他に何か言ってたかい?」
「いえ、今の通信では特に。」
「それじゃあ、砲撃の観測やら言いつけられる前にさっさと逃げようか」

そう言っているそばから索敵機がついでとばかりに落とす焼夷弾の炎が上がったようだ。
黒い煙が一筋、また一筋と上がっていく。

451 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/01(火) 23:45:48 [ Pusv3SwY ]
味方の手で人造地獄にたたき落とされていく『夜盗群』、そして急に仕事を思い出したらしい『警備部隊』。
そして前面に展開する第八師団。

俺達は戦場を迂回して、街へと戻る。
装備を回収して、それでいて足取り軽く。
あの歌を歌いながら。

「……えむあいしーけーいーわい、えむおーゆーえすいー♪」

以降、統合魔導兵は上層部の本来の予想とは別な方向に進んでいく。
あっという間に駆けつける紛争の火消し部隊、戦場よりも、戦場にならんとする所に現れる帝国の守り神として知られるようになる。

470 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/05(土) 00:06:00 [ Pusv3SwY ]
あなたはSF研に出向してきた魔法技術者です。
あなたは所長に言われて重要技術に関する講義を是非とも聴くよう言われて会場に来ています。

進め! SF(すごく ふしぎ)研究所 3と1/2 act01

あなたが席に着くと、既に大会議室に研究員達が集まり、魔法学園出張講師が講義を開始するのを今か今かと待っていた。
机は撤去され、簡易講義室と化した室内にはイスがずらりと並べられ、そしてそのイスはほとんどが埋まっていた。
お題は「魔力貯蔵とその歴史 」技術の根幹に関わる物だけに以上に出席率が高いようです。
 あなたが知る限りほぼ全ての手すきの研究員が集結していた。
これも研究心のあらわ……

「聞いたか? かなりの美人らしいぞ。」
「ああ、美人で講義をこなせるくらい優秀となれば是非ともお近づきに……」
「バカ! メガネできつめの美人らしいから、是非とも叱って欲しい所だな」
「いや! むしろ踏んでくれ!」

……がんばれ、がんばれ俺! 
あなたがそんなことを考えていると周りで歓声が上がった。
扉の方を向くとかなりの美人が立っている。
彼女は扉を開けてすぐの異様な歓声に驚いて一瞬固まっていたが、すぐに教壇に向かって歩いていく。
きびきびとした歩き方はアップにした髪とメガネとの相乗効果でいかにも『デキル』風に、
ローブでなくタイト気味のスカートは『女教師』という風な雰囲気を漂わせる。
ざわめきをよそにテキストを教卓におき、手を前で組む。

471 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/05(土) 00:06:34 [ Pusv3SwY ]
「お静かにお願いします」

ハスキーな声にざわめきがぴたりと収ま……イスが倒れる音が。
あなたが振り返るとイスから転げ落ち隣の所員F(仮)に抱き起こされる所員E(仮)

所員E(仮):「お、俺はもう限界だ……俺のことは置いておけ」
所員F(仮):「バカ野郎! まだ始まったばかりだろ! ここで倒れてどうする!?」

「こら!真面目に聞け!」

所長の声に「ちっ」 とどこからか舌打ちが聞こえる、渋々と言った様子で席に座る所員E、F(仮)

「ありがとうございます、 所長さん」

「いえ、こちらこそお恥ずかしい」

彼女は所長と二三言葉を交わして室内を見回す。

「それでは改めて自己紹介を。
 『学園』から参りました、アリッサ=リンデンバウムです。
 皆さんの研究成果は幾つか拝見させていただきました、皆さんの研究に役立てるなら光栄です。」

「先生! お幾つですか?」
「レディに年を聞くなんて失礼ですわ。」

「おつきあいされている方はいますか?」
「残念ながら」

そんなしまりのないやりとりがかわされる。
あなたはそれを聞き流しながら手帳を開いた。
講義が始まる。

472 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/05(土) 00:07:20 [ Pusv3SwY ]
――講義開始――

機杖と使用者の関係はガソリンエンジンに例えられます。
ガソリンエンジンはガソリンを空気(酸素)と混合し、ピストン内で着火、爆発、得られた力を回転力に転化する機関。
機杖を使った魔術行使をはその例で言えばガソリンは術者魔力、空気は大気内マナ、点火プラグと潤滑オイルが機杖、術者の意志がプラグの電気スパークになります。
あくまで主役はマナと魔力、機杖は補助に過ぎません。
 しかし、故にこそ大きな壁にぶつかる。 術に使う魔力量の問題です。 機杖を使うことで効率よく自分の魔力を使い、術を為す。
けれど、術者の魔力は一人では限界があり、多人数ではその術の熟練度や同期の問題が避けられません。
では機杖ができる前や、古代魔法文明の時代はどうしていたのでしょうか?

古代魔法文明は余り解決の役に立ちません。
なぜならかれらはその最盛期に魔力供給塔を建造し、市民(魔術師)に膨大な魔力を与えていたからです。
今で考えるなら、有線の電力供給に近いでしょう。 必要に応じて、必要十分な量の魔力を受け取り、必要ない時は逆に余剰魔力を塔へ送ったりしたと記録にあります。
 使用した実感や効果に関しては記録に残されていますが、魔力供給塔自体に関する記述は残っておらず、また文明崩壊があったことから、何らかの問題があった可能性が研究者達から指摘されています。
 
 また塔の効果範囲内に居ない時に使用されていた『魔晶石』は電池のように魔力を貯蔵するもので大変便利ですが、
現代においてその製法は失われているため、発掘による採取か、少量の市場流通の他に入手方法はないと言っていいでしょう(エルフが製造法を知っているという説もあり)。しかしながら、使用条件と相まって大魔力保持の魔晶石は非常に貴重で、国家の贈答時くらいにしか表に出て来ません。 そのため、実際に手に入る物としては1〜5ポイント。 頑張っても一桁後半ポイントの小粒の物でしかありません。 
普通レベルのの中級魔術師のMPは20〜30Pなので、5Pの物としても1〜2割増しの魔力が使用できることになります。

473 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/05(土) 00:07:52 [ Pusv3SwY ]
そして機杖普及以前魔力の不足があった場合はと言うと、基本的には時間と手間暇かけて儀式魔術を行う事が多かったとされています。
そして近年、危険なためなかなか普及しなかった技術が、軍や社会の近代化に伴いほぼ実用化されました。『血晶石』です。
 血晶石は魔晶石に比べ制限が多い。 また魔晶石と違い長くても数十年で劣化し使用不能となります。 ですがそれでも魔晶石と比べて二つの大きな利点が有りました。 『現代(F世界)技術で生成可能』 またそれ故もう一つの利点が生まれます。 安いのです。
 むろん安いと言っても魔晶石と比べての話で一般人には厳しい値段です。 しかしこの世界で魔法使いであると言うことは高給取りを意味します。 『学院』入学から卒業まで多額の資金がかかり、ごく僅かにある奨学金制度も事実上、才能ある者を見つけた派閥の有力者が一時資金を貸し出す以上のものではありません。 資金を用立てられるのは有力貴族をはじめとする上流層の人間のみでしょう。
 無事卒業したなら、軍、学院、民間魔導具工廠など引く手あまた、例え借金があろうとも返済は決して難しくはありません(派閥には入らざるを得ませんが)、それゆえ自らの技能を高め、価値を上げるための出費として購入する者が多数を占めます。 感覚としてはあなた方が新車を購入するようなモノと思っていただければ分かり易いのでは無いでしょうか。
 

実際に使える手段として『魔晶石』と『血晶石』を大まかに比較しますと

魔晶石……1〜5P程度(国家財産レベルなら数十Pのものも)。製造法消失のため、発掘か譲渡のみ
     魔力P^2 x50万円が目安だが、高魔力のモノは希少性から高くなりがち。
     内蔵魔力は減っていれば0.3P/日くらいで自然回復する。

血晶石……1〜20(死ぬ気で作れば)P程度。 使用者の血液と宝石を加工する。 値段は以下の式で大まかに出せます。
      魔力P^2 x10万円(現代価値換算)ほど。つまり1Pなら10万、5Pなら250万となります。
      高品質なモノなら魔力+1Pされ値段は3倍。
      伝説級(人間国宝クラスの術者)のモノなら+2Pで値は5倍以上。
      内蔵魔力は減っていれば術者が身につけていれば1P/週程度で自然回復。ただし、健康で十分気力体力がある状態でな      ければ身につけていても回復しません。 また、魔力x10を使うことで充電(?)できます。

474 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/05(土) 00:09:01 [ Pusv3SwY ]
製法は魔術学院の秘伝のため詳細は明らかには出来ませんが、用意するモノは
1.使用者の血液……込めたい魔力x100mlほど必要。 抜きすぎると死にます。
2.宝石……ランクや使用期限に関わるものです。ルビーなど自分に合ったものを。
3.エリクサ……これもランクなどに関わるものです。学院内で精製、管理しています。
4.儀式に適した土地……学院が保持しています。というより「作れる所にこちらから出向く」形式になります。
5.時間……通常一月ほど待つが、本当にそれだけの時間が必要なのかは時と場合と術者によります。

最速精製ペースとしては20P/年程になりますが、個人差があり、たいてい魔法使いはひ弱なのでこれより低い数値になります。
(献血を参考にして欲しい)

近年、『衛生』の概念が広まり、感染症が少なくなりました。

それから――講義終了――



480 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/06(日) 01:41:15 [ Pusv3SwY ]
進め! SF(すごく ふしぎ)研究所 3と1/2 act02

講義も終わり一息ついたあなたはせっかく美人の講師が来ているのだからお近づきになろうとします。

◇ここでコイントスをしてください◇
1.表なら……あなたが専攻していた魔法分野は「厭魅厭勝(えんみえんしょう)」です。 >>481 Aへ
2.裏なら……あなたが専攻していたのはそれ以外の分野です。  >>482 Bへ
3.立ったなら……あなたは天才故「厭魅厭勝」を含めた複数分野を学び修得しています。 >>483 Cへ

481 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/06(日) 01:42:31 [ Pusv3SwY ]
1.のあなたは講義終了後、講師の「アリッサ=リンデンバウム」嬢に質問をし、
だんだんと白熱した議論の応酬を行うようになりました。

「なかなかやるわね。 こんなアプローチのしかたがあったなんて気づかなかったわ」

これがきっかけであなたはアリッサ嬢と仲良くなりました。 A ルート

482 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/06(日) 01:43:17 [ Pusv3SwY ]
2.のあなたは残念ながら講義に付いていくことで精一杯です。
自分と関わりの薄い分野で避けていたことが裏目に出ました。
もちろんアリッサ嬢に手を出す余裕など有りません。
と、そこに通りがかった所員に声を掛け、教えてもらうことにしました。 B ルート

483 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/06(日) 01:43:55 [ Pusv3SwY ]
3.のあなたはアリッサ嬢の講義から自分の研究分野によく似た理論があることに気づきます。
またそれを相対する関係の別理論の存在をアリッサ嬢に話します。
最初は不審な様子で聞いていたアリッサ嬢はあなたの手元の手帳への書き込みが増えるたびに真剣な顔になっていきます。
「学園に帰って報告します。 あなたの名前は? 」
あなたはアリッサ嬢に一目置かれる存在になりました。 C ルート

484 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/06(日) 01:46:10 [ Pusv3SwY ]
さてここでさらに分岐です。
あなたが転移してくる前の時代は?

1.AルートでWW2前後から転移してきたなら>>485 を
2.Aルートで現代から転移してきたなら>>486 を
3.Aルートで近未来から転移してきたなら>>487 を
4.CルートでWW2前後から転移してきたなら>>488 を
5.Cルート現代から転移してきたなら>>489 を
6.Cルート近未来から転移してきたなら>>490 を
7.Bルートを通ってきたなら>>491 を選んでください.

485 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/06(日) 01:47:04 [ Pusv3SwY ]
1.AルートでWW2前後から転移してきた

あなたの想定する日本、大日本帝国から転移してきた場合、残念ながら技術の進歩がありません。
信教、派閥、利権、その他諸々が魔法の発展を妨げ、既存の元の世界より受け継がれた秘術は独立して命脈を守り、
『F世界の技術を系統立てて使う』事までしかしません。

よって軍、産業には高級『血晶石』が多く流通することになります。
不便ではあるが、それはそう言う物と割り切って、献血のように採集するシステムが組み立てられました。

あなたとアリッサ嬢はつき合ってはいてもお互いの領域に口を出さない関係です。
お互いの技術を尊重しても心の中では『自分の技術の方が優れているのだからこちらに鞍替えすればいいのに』と思っています。
それを除けばラブラブです。 幸せといえるのではないでしょうか

486 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/06(日) 01:48:08 [ Pusv3SwY ]
2.Aルートで現代から転移してきた

戦後の混乱、宗教意識の薄まり、幻想の衰退による、既存の、元の世界より受け継がれた秘術は統合整理され、『仙術』として統合された(SF研6の予定)。 新たな、別アプローチからの技術体系からの理論の補強を受け魔力貯蔵の新技術が結晶した。

『血晶石』に替わる魔力貯蔵手段、『蓄魔筒』である。
不特定多数の血液を少量混ぜ結晶化、のち『厭魅・厭勝』の技を用いて『人』に擬す。
魔力を放出し、魔力を回復する『業』を持つ『蓄魔筒』は不特定の者が使える物として『血晶石』を席巻した。

その基礎になったのがアリッサ嬢とあなたの共同研究です。
魔導学史に暗記させられる名前の一つとしてあなた達の名前が記されました。
時にぶつかり合い、時に認め合い、研究も恋愛も進めてきたあなた達はシステムの洗練を目指して研究を続けています。
研究よりの人生ですが充実した人生ともいえます。

487 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/06(日) 01:49:44 [ Pusv3SwY ]
3.Aルートで近未来から転移してきた

元の世界の魔法、またはそれに類する技術は文献に残るだけになっていました。
技術復活には多くの年月と何より天賦の才を持つ人間が多数必要です。

結果、科学偏重が進み、魔法は弾圧に近い扱いを受けるようになります。
学ぶ者は変人扱いされ、秘匿化が進み、最終的には伝統芸能に!

アリッサ嬢はあなたを理論倒れ、あなたはアリッサ嬢を時代遅れと考えてすぐ別れました。
あなたは経験を生かして『対魔法技術の研究』を進めています。
人生においてはともかく恋愛面においてはクリティカル失敗です。それだけあきらめれば十分幸せでしょう

488 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/06(日) 01:51:08 [ Pusv3SwY ]
4.CルートでWW2前後から転移してきた

うーそーつーきー! それはさておき。
あなたの想定する日本、大日本帝国から転移してきた場合、残念ながら技術の進歩がありません。
信教、派閥、利権、その他諸々が魔法の発展を妨げ、既存の元の世界より受け継がれた秘術は独立して命脈を守り、
『F世界の技術を系統立てて使う』事までしかしません。

しかしながら参考にして、「符」に魔力を込めておき、発動時に僅かな魔力消費ですむシステムの運用を始めました。

あなたとアリッサ嬢はつき合っていて、後にこちらの流派も学ぶようになりました。
そのせいか浮気(?)がばれるたびに目に付く所に「呪いグッズ」が!
もしかしたらあなたが良心の痛みと思っていたのは呪いだったかも……
恋愛勝者のはずなのにこの痛みは何? イタイ人だった?

489 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/06(日) 01:53:42 [ Pusv3SwY ]
5.Cルート現代から転移してきた

嘘だ!! まぁ良いけどね。
戦後の混乱、宗教意識の薄まり、幻想の衰退による、既存の、元の世界より受け継がれた秘術は統合整理され、『仙術』として統合された(SF研6の予定)。 新たな、別アプローチからの技術体系からの理論の補強を受け魔力貯蔵の新技術が結晶した。

『血晶石』に替わる魔力貯蔵手段、『蓄魔筒』である。
しかしながら運用に際して、『血晶石』よりも大きくなると言う欠点があった。
あなたはさらに発展させた技術をアリッサと共に完成させた。
『理力石』である。 魔力量が同量で有れば『蓄魔筒』よりも小さく、頑丈で、魔晶石と同じく最大魔力量が20Pを大きく越えるモノが製造できるようになり、生活や軍事により深く魔法を浸透させる結果となった。まぁぶっちゃけ別アプローチの魔晶石なんだが。幸せだがプライベートの時間が無くなった。 あなたは公人としての自分しか持てなくなりました。

490 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/06(日) 01:54:37 [ Pusv3SwY ]
6.Cルート近未来から転移してきたなら>> を

本当のことを言いな? それはこっちにおいといて。
元の世界の魔法、またはそれに類する技術は文献に残るだけになっていました。

あなたはそれを僅かながら復活させることに成功しました。
しかしながらアリッサ嬢はそれを待たず、あなたを理論倒れの詐欺師呼ばわりして去りました。
科学主体の世の中ですがあなたは科学と魔法を両立させ、F世界の魔法使い機関を乗っ取りトップとして支配しています。
アリッサ嬢がどうなったかは……あなたの想像次第と言うことで。

491 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/06(日) 01:56:02 [ Pusv3SwY ]
7.Bルートを通ってきた

魔法に置いて一定の功績を得ることが出来ました。
が、その人生において「女っ気」というものはほとんどありませんでした。

あの時の講義の際に教えてもらった所員はホモだったのです。
尻を狙われる毎日、そして、「その時歴史が動いた」 
……うほっ! やらないか?
有る意味充実して、恋愛でも幸せを掴んだルート(?)……納得できれば……ね?

492 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/06(日) 01:59:11 [ Pusv3SwY ]
本日の投下終了〜
掲示板占領してスマン! この形式だとどうしても小分けになる分流してしまうのだ。
一応そのために二日に分けたんだけどあんまり意味無かった。

小ネタ
『厭魅・厭勝』
人形や対象に関わる物を対象に見立てて術を行い、対象に影響を与える技術(厭魅)。ぶっちゃけ呪いのわら人形とか丑の刻参りとかはこれ。 対して
対象に対する影響を対象と縁のあるモノや人形などに移して逃れる技術(厭勝)。 流し雛とか身代わり地蔵とかそう言ったモノ。
どちらも人を対象とすることが多いため、『人形(ひとがた)』は重要なよりしろとなる。
また特徴として、どちらも映す対象に近ければ近いほど効果が高まり、同時に成功率も上がる。
例えば丑の刻参りで言うと対象の人形だけでなく、髪の毛や名前を書いた紙を入れるのはこのため。
端的に言うと『世界を騙して効果対象をずらす技』

今回はちょっと替わった形式、二人称を使ってみました。 また、この形式でしか使えない懐かしのゲームブック風仕立て。
投稿する時ミスったらマジかっこわるい。>大丈夫でした

560 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/16(水) 00:32:02 [ Pusv3SwY ]
胸甲騎兵の哀歌(仮)

銃声、うめき、怒号、金属のぶつかり合う音、それらが混ざり合い渾然一体となったものを戦場音楽と人は言う。
それが流れる場所は戦場。 いつの時代も人の側にあった場所。
やられたからやり返した、やられそうになったから先にやった、騙されたからやった、騙そうとしたからやった。
その理由はいくらでもある。 全く最低だぜ。

 俺は騎士の家系に生まれた。 
 大貴族とは比べものにならないが、それでも領民よりは上の暮らしをしていた。
逞しく自慢だった父、穏和だった母、優しかった兄、そして俺達家族を慕ってくれていた領民。
時に戦になっても大けがをすることなく帰ってきたあの時代は帰ってこない。
全ては『大転移』のせいだ。

 かつて――とは言っても5年も経っていないが――戦争とは騎士が主役だった。
マスケット銃を抱える銃士と槍と大盾を抱えた歩兵、そして戦場を動かす騎士。
攻撃の主役は移り変わっても、隊列を崩し敵を蹴散らす衝撃力と機動力を備えた騎士こそが決定的な瞬間を作り出したのだ。
そしてその中で最も誉れ高く強靱だったのが俺達『胸甲騎兵』だった。
胴には銃弾をも弾く胸甲、頭に鉄兜。馬にすら胴当てを付けた俺達は銃弾のさなかを駆け、存分に働いた。
敵の横を通りざま短銃で撃ち抜き、大盾を持つ兵を押しつぶし、銃士は槍にかけた。
だがその栄光の時代は唐突に幕を閉じた。
日本帝国が転移してきたのだ。

561 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/16(水) 00:32:45 [ Pusv3SwY ]
 日本帝国は当初拡大方針をとっているように見えた。
事実幾つかの国家は瞬く間に滅ぼされ併合されていった。
僅か3年、たったの3年で列強国に成り上がった日本は突然拡大を停止した。
そしてそれと同時にその生産物が世界にあふれてきたのだ。
 鉄と同等の強度で半分近い軽さの『白銀鉄』、撃ってもほとんど煙のでない火薬、何より従来の胸甲騎兵の胸甲を楽々貫通する新式銃。
どれもが目が飛び出るほどの高額で、しかしながらそれに釣り合うだけの効果をもたらした……何処よりも戦場で。

俺達はうち倒され地に這った。
新式銃に耐えうる胸甲を求め、試行錯誤した。
新式胸甲が出来るまでに世界中の全ての胸甲騎兵の半分が死に、完成してからさらに半分が死んだ。
出来上がった胸甲は真正面から新式銃の弾丸を弾いた。目の前で撃ってさえ凹んだだけだった。
しかし、それ以外の脇も背中も手足も馬も、正面の胸甲と鉢金以外はがら空きだったのだ。
俺達に胸甲騎兵に残された道は前進あるのみ。

そして今、俺達はここにいる。
戦場で突撃を仕掛ける胸甲騎兵に真正面から立ち向かえるのは、同じ胸甲騎兵か新式銃の弾雨のみ。
新式銃の弾丸も火薬も銃自体も総て日本帝国から輸入したモノだ。
だから俺達が突撃をするたびに敵さんは財布に大ダメージを受けることになる。
俺達の獲物は敵の財布だ。 まったく、冗談きついぜ。
いまでは最低にまで落ちぶれた騎士とまで言われている。

562 名前: 所員F(仮) 投稿日: 2006/08/16(水) 00:33:54 [ Pusv3SwY ]
ああ、出番だ。
進軍ラッパが聞こえる。
行くぞ我が愛馬よ!
自軍を迂回して側面から駆け抜ける。
ああ、新式銃の音に変わった。 
共に走っていた一騎がもんどり打って倒れ、馬から転げ落ちる。
頭に直撃か、運がなかったな。
それでも今死ねたなら騎士として死ねる最後の機会になるのかもしれな……

薄暗い曇り空が一瞬だけ見えて。
そして何も見えなくなった。

消耗率の異常に高い胸甲騎兵は質が急落し、これ以上ない所で安定した。
『馬に乗れるだけ』それ以外の全てを問わない。
この布告がでて以来、胸甲騎兵はある別名で呼ばれることとなった。
――ボトムズ(最低野郎共)――と

胸甲騎兵の哀歌(仮)改め「胸甲騎兵ボトムズ」をお送りしました。