706 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/25(火) 00:18:12 [ XitU55gg ]
「大規模な演習をする気が無い?!それは一体どういった理由なのですか!北方方面軍軍団長の考えをお聞きしたく存じます!」
「ナイトロス・南大陸の蛮族共に、我等の軍勢を止められるはずが無かろうて。そのような事にまわす物資は、南部国境地帯に運んでおくべきだろう。」
士気と錬度を保つ演習が、『そのような事』ですって?!
「確かに、北方方面軍と東方方面軍は、八月前には領地を出発している必要がありますが、一ヶ月間も余裕があると・・・」
「騎士団の騎士は忙しいのだ。」
「エーデルガルド殿。西方方面軍も北方方面軍の意見に賛成だ。君は貴重な物資を浪費させる気かね?」
貴方が懐に納めている分は何なの?
「南方方面軍は、常にナイトロスと国境を接しており、今更演習する必要も無い。」
最もらしくて、何を間抜けな事を言っているのかしら。
「東方方面軍は、距離が離れているのでその様な事をしている暇は無い。」
一番船を所有している軍団の発言とは思えないわね。
「血気盛んなのは結構ですが、国教会も神の軍隊を易々と動かすわけにはいきませんな。」
このボンクラ司祭!・・・ではなくてボンクラ枢機卿!
「近衛兵団団長殿の意見は・・・?」
皇帝の長子、つまり一番上の兄様なら・・・。
「四方面軍団全ての団長と国教会の枢機卿殿が反対しているのだ。近衛天馬騎士団団長でしかない、お前の意見を押し通すことは出来ない。」
・・・。
707 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/25(火) 00:21:14 [ XitU55gg ]
「貴女は、既に他の天馬騎士団と演習をしたではありませんか。それだけでは不満ですか?」
「地上部隊と合同でしたほうが良いに決まっています。」
「ほう?まぁその願いを聞き届けるのは無理だが、辺境地域の竜騎士団と天馬騎士団をお前の配下にすることはできるぞ。」
「なるほど、良い意見だ。」
「近衛兵団長殿がそう言うならば・・・」
「敢えて反対することも無い意見だ。」
辺境地域とは、連合帝国が征服して日の浅い地域。そこにあった国の軍隊は、帝国軍の配下という扱いになっている。でも、戦争の際には帝国の尖兵として、真っ先に敵へ突撃してその戦力を減らしている。つまり、捨て駒ね。
「私を前線部隊に配属していただける上に、配下の勢力を増やして頂けるとは光栄です。」
うるさい小娘(帝位継承者)を厄介払い、あわよくば消すつもりね。まぁ、自己保身しか能の無い連中の思惑通り動くつもりも、全く無いけれど。
「最終的な判断は皇帝陛下と教皇睨下の御裁可が必要だが、私も意見を具申する。恐らく認められるだろう。」
「有難き幸せ。第一皇女として恥の無い行いをする所存です。」
皇帝候補第一位だからって、いい気になってもらっては困るわ!
708 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/25(火) 00:24:24 [ XitU55gg ]
・・・・・。
「団長、あのような大見得を切ってしまって良いのですか?彼らは、確実に団長を消すか追い落とすつもりですよ。」
「その簡単に消されてたまるもんですか。副団長、女だからと馬鹿にされないように、と今まで鍛錬を重ねてきたのよ。ナイトロスとやり合ったって、そんな簡単に死にはしないわ。」
「団長がそう言われるのならば、私も騎士団員達も、最後まで付き合わさせてもらいます。」
「ありがとう。・・・頼んでおいたナイトロスの偵察結果は入手できたかしら?」
南方方面軍の偵察情報に、私も真っ先に触れらるようになった。正しくは情報を「買っている」ね。自費で出すしかないけど、安い買い物よ!
「相変わらず、竜騎士達はすぐにナイトロスの飛竜に追い払われています。地上を偵察した斥候は・・・半分は死んでしまったようです。幸い、ナイトロスに捕まった者は確認できなかったそうです。」
「結果は?」
「ナイトロス半島西部は、山地と湿地で大規模な軍勢は展開できそうも無い、とのことです。」
竜騎士や天馬騎士ならあんまり関係ないけど、近くで補給できないのは厳しいわね。
「ナイトロス東部は・・・地上にはジライホウセンカ、テッポウユリ、ガスキンツリー、パンツァートータス、各種ドラゴン。空にはアラモバード、グリフォン、ロック、やはり各種ワイバーン。動物に関しては、警戒心の強い生き物なので向こうから逃げていくでしょうが、植物は危険極まりないです。」
攻撃予定は晩秋ぐらいになりそうだから、植物もそんなに危険ではないはずだけど、やっぱり地上部隊には危険なのよね・・・。
「つまり、中央部でしか安全に侵攻できないと言ってきいます。艦船もナイトロス半島南部までは、ほぼ無補給で進出するしかなさそうです。」
「随分と厳しいじゃいない。天然の要塞ってところかしら。」
なかなか面白い事になってきたわ!
「副団長、本部に帰ったら参謀達を集めて、詳細を詰めるわよ!」
712 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/28(金) 01:58:00 [ XitU55gg ]
「ようこそ、ナイトロス王国へ!我々は皆さんの来訪を心より感謝いたします。本日は・・・」
基地司令官の長い話が始まったが、もちろんそんな話を聞いている奴なんていない。飛竜の発進場には、各国の飛竜が居並んでいる。近々行われる大演習の為に、各国からやって来たのだ。見慣れている飛竜から始めてみるような飛竜まで、とにかく多種多様だ。本当に飛竜もいろいろいるんだな。
(大尉。コバルタのスピットやランカスターとか、アスターのミコヤン、ツポレフなんかは分かるんですが、私が全然知らない飛竜も結構いるんですけど・・・)
なるほど。リサの言う通り識別表でしか見たことの無い飛竜も結構いるみたいだ。まさに飛竜の見本市だな。
(俺も良く分からないのが結構いる。教えてやるが、夕飯を奢れ。出来れば俺の友人も一緒に奢ってくれるとうれしいなぁ!)
「それはちょっと・・・!」
「リサ?どうかしたかね?」
「隊長!なんでもありません・・・」
(・・・・・・・・・・・・・・・教えて下さい・・・。)
素直な女性は良いな!
(じゃぁ教えてやろう。俺達から見て右前方はコバルタ、左前方はアスターの飛竜だ。)
(はい、それは分かります。)
(アスターの後ろの奴らは・・・サマリムの飛竜だ。新旧の飛竜が入り混じっている感じだ。)
ベルトロ型飛竜はウチの新鋭飛竜とも互角にやりあえるとは聞くが、なんでその隣に、いかにも旧式そうなファルコ型飛竜がいるんだ?サマリムは何考えてんだか。
713 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/28(金) 02:03:21 [ XitU55gg ]
(サマリムですか。陽気な人達が多いって聞きますよね。じゃぁ、その隣は・・・)
サマリムの隣は・・・、随分マニアックな飛竜じゃないか。殆ど見たこと無い飛竜だ。
(あれは、南大陸中央部のウェッセンラント大公国、フィラーデ王国、マルグラント公国、ノステル王国、テザック公国の五カ国で採用している飛竜だな。間近で見るのは初めてだ。)
多分、J21とかJ22という飛竜だと思うんだが、あんまり分からないや。
(エルフやドワーフの国ですね。飛竜よりは鉱山とかのほうが有名な国だから、イメージが湧かないです。)
(リサもか。俺もだ。)
種族ごとに住み分けしていて、住人の行き来は案外少ないんだよな。ナイトロスの人間の構成比率がずっと高いのもそのためかもしれない。
(後方中央部は、払い下げの飛竜が多いみたいだ。国は・・・南アルエス共和国、赤道アルエス、パジャリクス連邦、ワデナジア共和国、シェデル人民共和国、ファエトメオネ王国、ネーブル自由国、アルドン民主共和国、ポートテセナール・・・あとは分からん!)
掲げている国旗で所属国が分かるんだけど、知らない国旗もある。意味無く国が多いのは、帝国主義時代の負の遺産だよな。
(学校でしか聞いた事の無い国ばっかりですね。飛竜もアスターのイ15にコバルタのグラディエーター、ナイトロスのNC飛竜までいますよ・・・)
いくらなんでも帝国の飛竜にも負けちまうかも知れネェよ、こんな飛竜じゃぁ!マスケット銃が主力のような国々は、お呼びじゃないってこった。
714 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/28(金) 02:08:02 [ XitU55gg ]
(とりあえず、残りの飛竜を見ようか。)
(ハイ。・・・どこの国の飛竜でしょうね。)
見たこと無い飛竜だ。国は・・・ケビシニア共和国、リバティア王国、メリダ帝国の三か国か。南大陸南部では有力国らしいが、全然知らない!こんな時は・・・
(隊長、隊長!)
隣にいる隊長に話し掛ける。
(アレックス、どうした?)
(あそこの飛竜は始めて見るんですが、何ていう飛竜ですか?)
(アレか?アレは・・・・・・)
隊長が悩んでいる。相当な代物なのか?
(アレはたぶんW6W型飛竜、SW29型大型飛竜、W51型飛竜だ。私も見るのは初めてだ。性能は空戦で確かめるしかないだろう。)
なんだかんだで、どの国も飛竜に一応の力を入れていたわけか。
(リサ、そういう訳だ。分かったか?)
(はい。大尉も隊長もありがとうございます。)
(じゃぁ、後でよろしく頼む。)
(分かりました・・・。)
「・・・ということでありまして、ジエイタイの方々も地上部隊を派遣して頂いた事に感謝の意を述べるとともに、以上をもって締めくくりの言葉とさせていただきます。」
「総員、基地司令官に敬礼!」
やっと終わったか。
715 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/28(金) 02:12:49 [ XitU55gg ]
その夜・・・。
「リサ!今日はやたらと気前が良いな!」
フランシア市内で中の上くらいの評判の店に招待された。流石に人を連れて来る事は出来なかったが。昼間の程度の事だから、食堂の不味い飯を奢ってもらえれば御の字だと思っていた。これは嬉しい誤算というやつか?
「大尉!よく考えて食べてくださいね。」
「そうだったな。お前の金だしな。ちゃんと考えるよ。」
「私のお金じゃないですよ?」
「悪い冗談はよせ。じゃぁ誰の金だ?」
「大尉のです。預かっていたお金を取り崩してきました。」
投資していた金か!
「お、お、おま・・・」
「私は別に、自分のお金で清算しろとは言われていませんよ。それに、投資で出た利潤はまだ残っていますよ。」
なんだ、この既視感は・・・?
「もう、怒る気もしない。だが、明日からたっぷりしごかせてもらうから、覚悟しておけ!」
「了解!大尉はお金の貯まるタイプの人間ではないんですよ!」
そうなのかもな。やな人生だ。
721 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/30(日) 19:25:04 [ XitU55gg ]
まずは、物語の舞台となる惑星の情報である。単位は地球単位に統一している。
(惑星系データ)
恒星(主星)は一つ。誕生からおよそ49億年。直径8万光年の渦巻銀河の中心から35000光年の所にある。恒星はG型で、太陽よりほんの少し小さい。
惑星系は七つの惑星で構成されており、地球より二つ少ない。約2億年前に他の惑星系と軌道が交錯し、その結果幾つかの惑星がはじき出され、また受け入れた。
【第一惑星】
恒星からの距離は約8000万km、赤道半径は7000km、公転周期は約150日。地球より大きい惑星で、分厚い大気が存在するが灼熱の惑星。金星と同じ立場にある。
【第二惑星】
恒星からの距離は約1.5億km。赤道半径は6000km。公転周期は約360日。地球よりやや小さい惑星で、物語の舞台となる。月より小振りな衛星を一つ持つ。2億年前から、生物の進化が急速に進む。
【第三・第四惑星】
恒星からの距離は、約1.9億km。公転周期は約1.5年。二つの惑星は連星の形で、同じ公転軌道を回っている。
第三惑星は、赤道半径が5000km。大量の水を蓄えるが、完全に凍結している。全体を氷河が覆っているので、白く輝く。
第四惑星は、赤道半径が3000km。大気を持っておらず、クレーターに覆われている。別惑星系の置き土産。
【第五惑星】
恒星からの距離は約10億km。赤道半径が11万km。公転周期は約20年。木星を遥かに上回る巨大惑星。環は目立たない。半径2000km以上の衛星を五つ持つ。
【第六惑星】
恒星からの距離は25億km。赤道半径が3万km。公転周期は約80年。土星には劣るが美しい環を持つ。
【第七惑星】
恒星からの距離は50億km。赤道半径は1万km。公転周期は約200年。他惑星系の置き土産。小規模なガス惑星。
以上の通り、極めて特異な惑星系の中に、かの惑星は存在するのである。
722 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/30(日) 19:28:01 [ XitU55gg ]
続いて惑星の地図である(map1およびmap2)。メルカトル図法であるので、両極に近づくほど面積は引き伸ばされる。大雑把な地図につき、距離・面積などはいいかげんさには目を瞑ってもらう。
北極大陸は、地球の南極大陸より広大で、大陸中央部には3000メートル級の山々が連なる。
北大陸は北部をツンドラ、中部は針葉樹林、南部には広葉樹が広がる。ツンドラ地帯は連合帝国の支配が及ばず、これが帝国支配地の北限に当たる。
南大陸は広葉樹の広がる北部、砂漠・サバナ(雨季・乾季のある熱帯草原/サバンナ)・山脈の広がる中・北部に分かれる。開発が進んでおり、この地図通りの環境では無くなっている。
東大陸はこの惑星最大の大陸で、面積はユーラシア大陸を上回る。中央部の山脈は標高9000メートルを超える峰が連なっている。火山活動も盛んで、東大陸のほぼ全域が居住に適さない。そんな東大陸西部の半島部分に、人間達は殖民している。
惑星全体では大陸の侵食が進んでいて、急峻な山地は東大陸以外では少ない。北・南・北極大陸は、長期間に渡って大陸同士の衝突を経験していないからである。
地球に比べると気候の多様性は少なく、広範囲に渡って同じような環境が続く傾向にある。地球より湿潤で、砂漠地帯は山脈の風下や大陸中央部にしかない。
この惑星は、地球に比べるとなだらか(東大陸以外)で気候も穏やかである。地球上に存在しない生物がいることを除けば、住みやすい惑星である。
723 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/30(日) 19:29:46 [ XitU55gg ]
続いてこの惑星の歴史である。恒星と惑星は同じ時期に誕生したものとみなす。
0年 惑星の誕生
800000000年 生命の誕生
2000000000年 光合成生物の誕生
2100000000年 大陸の形成が始まる
4100000000年 多細胞生物の誕生
4300000000年 魚類誕生
4400000000年 植物が地上に進出
4450000000年 両生類の誕生・昆虫の地上進出・繁栄
4500000000年 巨大大陸大陸形成
4550000000年 爬虫類・哺乳類の誕生
4600000000年 鳥類の誕生・巨大大陸が分裂を始める。北極・南・北大陸の基礎が出来る。
この惑星は、銀河系の辺境に位置することや巨大なガス惑星が存在することにより、隕石衝突などの環境を激変させる出来事の発生が少なかった。生物の進化も遅れがちとなるが、この後にこの世界を形作る出来事が起こる。
724 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/30(日) 19:34:31 [ XitU55gg ]
この惑星は、銀河系の辺境に位置することや巨大なガス惑星が存在することにより、隕石衝突などの環境を激変させる出来事の発生が少なかった。生物の進化も遅れがちとなるが、この後にこの世界を形作る出来事が起こる。
4700000000年 恒星が惑星系に接近。外側の惑星がはじき出され、新たな惑星が加わる。大量の隕石が惑星に降り注ぐ。生物の大量絶滅
4710000000年 惑星系の軌道安定。この惑星は軌道が若干外側に広がる・気候の寒冷化
4720000000年 「魔法」能力を備えた生物の誕生
4730000000年 爬虫類が巨大化。ドラゴン族の先祖の誕生
4735000000年 鳥類が巨大化。グリフォン・ロック等の先祖が誕生
4740000000年 頭足類(イカ・タコ)の巨大化。クラーケン等の先祖の誕生
4750000000年 ドラゴン族が海(シーサーペントなど)と空(ワイバーン:飛竜)に進出
4780000000年 魚類・甲殻類が進化。現在の危険海洋生物に進化する
4800000000年 魔法能力のある植物・昆虫の誕生
4820000000年 哺乳類の本格的な進化が始まる
4850000000年 東大陸の誕生。造山運動が盛んになる。巨大なドラゴンは衰退。一部は空に活路を求める(古竜への進化)
4860000000年 大規模な氷河期が到来
4880000000年 小型ドラゴンが二足歩行を始める
4885000000年 哺乳類が繁栄を迎える。猿類の誕生・空への進出(ペガサス・ユニコーンなど)
4890000000年 大型鳥類の一部が小型化。二足歩行を始める
4892000000年 二足歩行ドラゴンは竜人族に進化
4894000000年 二足歩行鳥類が鳥類人に進化
4895000000年 猿類は人類(人間族)とエルフ族・ドワーフ族に進化。東大陸でオーク・ゴブリン・トロールなどの先祖が誕生
4896000000年 各種獣人・亜人類の誕生。これ以降、各種族の知的生命体への進化と文明の形成が起こる
4900000000年 現在
この世界の生物達は、最初から魔法に関する能力を持っていたわけではなく、三億年前までは地球と代わり映えしない生物達だった。
地球のあった世界とこの世界の差は、魔法の存在の有無程度である。
728 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/02(水) 00:15:02 [ XitU55gg ]
講義を開始する。今回は南大陸についてである。短いのは仕様だ。
資料は
ttp://www.rupan.org/uploader/download/1130857675094769.iH8AMX
である。パスは「continent」
>>726
惑星の各生物が受けた淘汰圧は
@二億年前の環境激変
A魔力を持っているか、あるいは魔力に対応できるだけの力か
B魔力を持った生物の巨大化→他生物生息圏への圧迫
C火山活動の活発化による寒冷化・氷河期
この四つの大きな淘汰圧が働き、対応できなかった生物は既に滅んでいます。
文明を持つ種族は・・・
文明を有する種族は2000万年前に竜人族の先祖が最も早く発生しています。
南大陸南東部の乾燥化によって食料の確保が難しくなったために、高度な生物に進化する必要があったためです。
彼らは周辺地域に生息域を広げますが、まず地上生活をしていた鳥類が彼らの進出によって数を減らし、1000万年前に二足歩行生物へと進化して竜人族(先祖)と対抗するようになります。
哺乳類は彼らの生存競争に巻き込まれ、生息域が各地で分断される種族が続出します。
淘汰圧の高まりで、彼らのほとんどは絶滅するか知的生命体への進化を止めるかしましたが、一部のものは高度な生命体に進化し、更なる進化の準備をはじめます。
800〜600万年前に相次いで竜人族と鳥類人が誕生し、これが他種族に多大な影響を与えました。
猿類は、誕生した場所によって人間・エルフ・ドワーフへと拡散進化し、その地域で強固な縄張を作っていきます。
そして、猿類以外の哺乳類も相次いで進化を遂げ、亜人・獣人となります。
しばらくは各種族が一進一退の生存競争を繰り広げますが、徐々に竜人族は南大陸東部に、鳥類人は西部に、エルフやドワーフは中央部、人間は北部と北大陸、それ以外の種族は南部・・・と言うように棲み分けが進み、その地域で文明が誕生していきます。
棲み分けが進んだことで淘汰圧が弱くなり、各々が文明を持つことに成功したのです。地球では人類の祖先が瞬く間に地球上を席巻してしまったので、他生物が進化する余裕がありませんでした。もともとそんな生物はいませんが・・・
魔法は肉体というか、遺伝子に組み込まれているという感じです。巨大生物が空を飛ぶ、火を吐くというのは元々備わった能力です。遺伝子の羅列はどう見ても呪文ですよね。
人間などは道具の使用でそういった力が衰えましたが(本来の魔力は持っている)、言葉や文字の発明で自然現象以外の魔法を再現することに成功しました。
要するに後者です。呪文・魔方陣・魔法回路は魔力を流すことで魔法を発現できます。
729 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/02(水) 00:18:25 [ XitU55gg ]
資料は、北大陸及び南大陸の拡大地図である。
まず、国家についてである。番号はナイトロス、コバルタ、アスターと七ヶ国を含めた人口上位十ヶ国である。
人口順位は
@ナイトロス 2000万人
Aコバルタ 1500万人
Bアスター 1100万人
C中央アルエス 1000万人
Dシェデル 1000万人
Eメリダ 900万人
Fウェッセンラント 700万人
Gサマリム 500万人
Hノステル 500万人
Iネーブル 400万人
帝国を除いた人口総計は1億2000万弱である。更に種族構成は
@エルフ族 3500万人 主に大陸中央部
Aドワーフ族 3000万人 主に大陸中央部
B人間族 2000万人 主に大陸北部
C鳥人族 1500万人 主に大陸西部
D竜人族 1000万人 主に大陸東部
E猫人族 200万人 大陸南部
F犬人族 100万人 大陸南部
Gその他 約700万人 主に大陸南部
次に資源の開発状況である。
資源開発は、主要三ヶ国主導で行われている。鉄道などの配置も進んでいるが、大陸全土を網羅するには至っていない。
鉄・石炭の鉱床開発が最も進んでおり、次いで銅や金・銀等の貴金属・宝石、更にアルミニウム・鉛・錫・亜鉛・石灰石など、そして灯火の燃料として需要の高まってきている石油の開発が遅れており、資源探査が続けられている。
地図上の鉱山には、全く開発の進んでいない物も多数あり、国家・企業が整備を進めている。
732 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/06(日) 01:02:45 [ XitU55gg ]
投下!異文化との遭遇
例によって自衛隊登場と活躍は無し。うまく資料が集まらなくて・・・
733 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/06(日) 01:04:50 [ XitU55gg ]
今日は、なぜか士官クラスの兵士ばかりが基地司令の訓示を受けている。士官だけと言うのが引っかかる。嫌な予感がする。
「士官の諸君には悪いが、暫くは三人部屋になる。」
なんですと!そっちのほうか・・・何故なんだ!
「他国からの兵員は、将校以上の階級は市内の宿泊施設に陣取り、一般兵や下級士官は基地内にテントを張るなり市内のどこかに場所を取っているのだが、士官クラスは場所取りがうまくいかなくてな。諸君らの士官用宿舎に泊めてもらうこととなった。国家間友好のために我慢してくれ。」
各国の兵士だもんなぁ。同じ飛竜乗りなら話が通じるよな・・・というか言葉は問題なく通じるが。
「しばらくすれば上官から詳細が報告されるはずなのでそれまでは待機だ!」
帝国の前に異文化コミュニケーションという試練か。ニホンジンくらい物分りのいい人間なら万々歳だ。
・・・・・。
「大尉お帰りなさい!」
「リサか。今日は空戦の練習開始時間が遅れるかもしれない。」
「どうしてですか?何かあったんですか?」
「あったと言えばあるし、無いかもしれないと言えば無いかもしれない。」
「???」
734 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/06(日) 01:08:38 [ XitU55gg ]
「君の部屋にはこの二人だ。アスター軍の中尉とケビシニア軍の少尉だ。当分の間、仲良くやってくれ。」
「仲良くやろうではありませんか。同志大尉殿!」
「しばらくの間宜しく。」
蜥蜴と猫か。組み合わせは・・・良いのだろうか。比べる基準が無いから困る。
「私がアレックス大尉です。どうぞよろしく」
「なかなかこぢんまりした部屋ですな!」
「素敵な調度品が結構ありますね。」
悪く無い人達のようだ。
「あぁー、では個人の荷物を持ってきてください。」
この部屋には俺の荷物は少ないし問題無いだろ・・・!!?
「中尉・・・その箱は・・・」
「アスター名物、工業用エタノールに香料を混ぜた酒「ノーメン・クラトゥーラ(特権階級)」が入っているのであります!大尉もいかがですか?戦いの前に飲むと戦闘中の恐怖が吹っ飛びますよ!」
いや、工業用エタノールはありえないだろ。多分死ぬ。酔っ払ったら、恐怖も麻痺するだろうさ。
「少尉、袋の中が生臭いような・・・何が」
ガサガサ・・・
「サンバーンフィッシュの干物です。これがないと我々の一日は始まらないのです。」
サンバーンフィッシュを喰うのか。鱗が異常に堅そうだ。
「二人とも、個人の荷物は紛失しても責任は取れないから、各自でちゃんと管理してくれ。問題があったら憲兵にでも訴えてくれ。」
どうにかなるかな。ちょっと不安だ。
735 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/06(日) 01:10:41 [ XitU55gg ]
で、その夜。調子っぱずれの革命歌だか軍歌らしき歌が、基地内に響き渡る。
『♪我ら〜革命の〜〜戦士が〜』
『♪偉大なる社会主義の〜〜守護者〜〜〜』
「ハハハハ!大尉も飲まないかね?」
「グッ・・・」
竜人族達の宴会に巻き込まれてしまった。こういう日に限って晴天だったりするんだな。下級兵士に混じって政治将校まで酒、というよりはエタノールを飲み交わしている。ジーク隊の面々も半分くらいが捕まってしまった。
「大尉、酒が進んでいないな?さぁ、飲みたまえ!」
覚悟を決めるしかないな。後は野となれ山となれだ!
「では、・・・。」
??!?!!!!?
「ガハ・・・」
のどが焼ける・・・!
「コイツをまともに飲めるのは、私達ぐらいのものだ。コップ一杯でも結構来るだろう?」
人間の飲めるもんじゃない!
「ちょっと失礼しま・・・ぅ!?」
リサはどこ行くんだ?ふらつきながらも木陰の方に向かって・・・これ以上見るのは可哀相だ。俺と一緒にいなければ、この修羅場に巻き込まれずに済んだのに。
「隊長!・・・隊長?」
隊長は燃え尽きていた。眠っている。
「大尉殿!もっと飲みましょう!さぁ!」
「ジエイタイの連中は宿舎から出てきてくれなかったしなぁ!とんだ堅物だ!大尉が彼らの代わりに飲んでくれたまえ!諸君、次は山脈鉄道凱歌を歌うぞ!」
現世のみなさん、さようなら。目から星が・・・
736 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/06(日) 01:11:40 [ XitU55gg ]
・・・。
「そのだな、リサ。言いにくいが、今日は・・・」
「私も、言いにくいんですが・・・」
「今日は訓練は止めよう」「今日の訓練は止めましょう」
凄まじい頭痛と吐気が襲ってきている。無理な動きをしたら、よろしくない事態になりそうだ。今日は海峡で臨検もするんだが、大丈夫だろうか。
「アスターの連中はアレを飲んでおきながら、今日の朝には爽やかな挨拶だもんな。たまらないよ。おまけに今日の朝は、相部屋の猫人が干し魚をかじる音で目が開いた。」
そういえばケビシニア出身の少尉は、雲隠れしてたな。いつの間に消えていたんだ?
「大変そうですね。ジエイタイの人から貰ったんですけど、飲みますか?楽になるらしいですよ?」
そう言って何かを渡された。何か粉薬のようなものの入った袋みたいだが、書いてある字は読めない。ニホン語かな。
「二日酔いを軽減する薬らしいです。いかがですか?」
「おお!心の友よ!早く・・・」
「1000シリングです。」
普通、貰い物に値段を付けるか!
「何をバカなことを・・・」
「じゃぁ大尉は勝手にして下さい。私はこれを後で飲みますから。」
「400シリングだな。」
「800シリング。」
「600だ!」
「もっと勉強したほうがいいですよ?」
「700。」
「ハイ、どうぞ。」
気立ても面倒見もいいのに、金が絡むとなんでこうもがめつくなるんだろう?いい娘なのになぁ。
745 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/08(火) 00:44:38 [ XitU55gg ]
フランシア市北方・陸軍演習場
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
「凄い!これが陸上ジエイタイか!」
「おぉっ!」
「だが、数が思ったより少ないな。種類もバラバラだ。」
ナイトロス三軍と政府の高官を集めた、陸上自衛隊閲兵式は順調に進んでいた。ただし、陸上自衛隊の派遣した戦力はそれ程多くない。
「輸送艦の搭載限界、国内の反応、この国の輸送交通網、燃料等を考えると、現状ではこの戦力を派遣するのが限界です。国民向けには『未知の土地での兵器の影響調査』名目で、我々はこの土地に立っているのです。」
陸上自衛隊の幕僚はそう言った。フランシア港の荷揚げ地点から、建設会社の企業連合と自衛隊の施設科が突貫工事で整備した道路を使って、苦労しつつ兵器群を運んできたのだ。
「ジエイタイは努力したと思いますよ。この演習場まで続くでこぼこのあぜ道を、砂利道にしたんですから・・・。我々の整備した鉄道は役立たずでした。」
ナイトロスにはあり得ない速度で、北部の防衛線に向けての道路整備が進んでいる。鉄道もあることはあるが、兵士や一部の火器以外は運べそうに無い。
「ニホンの機械化技術には、目を見張るものがある!」
「いつかはあのような機械を作りたいものだ。」
技術将校や技術関係の省庁に所属する役人は、関心しきりである。
746 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/08(火) 00:51:05 [ XitU55gg ]
「幕僚殿。現状で派遣されてきた戦闘用の戦力は・・・先遣隊も含めますと
歩兵:約300人+α(支援人員)、降下歩兵:約100人
戦車が・・・
タイプ74:2両、タイプ90:1両
自走砲が・・・
タイプ74:2両、タイプ75:2両、タイプ99:1両、203ミリ自走砲:1両
装甲車が・・・
タイプ87:4両、タイプ89:3両、タイプ96:6両、その他約15両
対空兵器が・・・
タイプ81:3両、タイプ87:2両、タイプ93:3両
航空機が・・・
UH−1、AH−1が各三機、UH−60、CH−47、OH−1が各二機
・・・という事になっていますが、宜しいでしょうか? 航空ジエイタイと海上ジエイタイは別途にしてます。」
海上自衛隊は輸送艦・補給艦とその護衛艦、航空自衛隊は輸送機だけが派遣されているだけである。
747 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/08(火) 00:53:41 [ XitU55gg ]
「もう少し連れてきていますが、一応そういう事になっています。」
他にも幾つかの装備が運び込まれている。例えば、L90である。
「ジエイタイの戦術は良く分からないのですが、兵器というのはある程度の数を投入しないと、意味が無いように思えるのですが・・・」
ナイトロス陸軍の高級参謀が質問する。
「ナイトロスの方々がそう思われるのは痛いほど分かりますが、先程も言った通り、装備がきちんと動くかどうかの確認と先遣隊警護を主目的として派遣されているので、あまり戦闘車両を積み込んでくると、国民世論を今以上に刺激しかねません。」
日本国内は、南大陸諸国の要請に応じて自衛隊を派遣するか、あくまで憲法を遵守するかで意見が割れている。最初は自衛隊派遣に否定的な国民が多かったが、最近は「生活に必要な物資を輸出してくれるなら」という妥協の元に、自衛隊派遣賛成派が増えてきている。事実上の超法規的判断である。
「そういう世論を受け入れられない平和主義団体や市民活動家が過激化して、西日本と北海道の自衛隊は治安維持で手一杯なんですよ。」
「そうなのですか。貴国の燃料事情が芳しくない状況下の中での派遣に感謝します。」
ナイトロスなり他の国なら、そういった人間は戦時体制中には問答無用で刑務所にぶち込めるのだが、ニホン政府はそんな手段は使えないのか。
748 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/08(火) 00:56:21 [ XitU55gg ]
「当分は、この演習場とフランシア基地の2ヶ所で各国との演習をする予定ですが・・・」
幕僚はある提案をした。
「あなたがたの言う降下歩兵、つまり第一空挺団ですね。彼らの一部をを国境地帯での警備に組み込んでいただけないでしょうか?」
国境付近およびエルビヌメイン防衛線以北は、国境警備隊が警戒に当たっている。
「我々は問題無いですが、このところ、巡回中の部隊と越境してきた帝国兵の間で、散発的な戦闘が何件も発生しています。ジエイタイは我が軍より人命を非常に尊重すると聞いたのですが、派遣した兵士の命の保証は全く出来ませんよ?」
「彼らには帝国の戦い方を学んでもらいます。いかにローテク文明と言えど安心は出来ません。情報は、命を張らなければ手に入れられない時もあるのです!」
「専守防衛の国の参謀の発言とは思えませんが、その部分は聞かなかったことにします。・・・ここに居るナイトロス軍の将官では部隊の転属を勝手に決められないので、国軍省に出向いてもらい、相応の担当者に申請する必要があります。よろしいですね?」
「問題ありません。式典が終了したら、早速フランシア市に出向かせてもらいます。」
編隊飛行を終えたヘリコプターが、早々に臨時ヘリポートに着陸していった。
775 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/13(日) 00:41:39 [ XitU55gg ]
「守りに徹するのは悪くは無いが・・・」
「戦艦と飛竜母艦が・・・」
「次世代飛竜の開発が・・・」
閣僚、及び高級財務官僚の同席する会議で、陸軍参謀総長、海軍司令長官、空軍司令長官の三軍トップは、それぞれ違った無念さを顔に浮かべていた。
「無い袖は振れません!国軍大臣及び三軍の代表がなんと言おうと、財務省はこれで精一杯です!」
財務大臣は簡単に一蹴した。戦時予算を組むに当たって、三軍の要求した予算の一部が却下されたのだ。
まず、陸軍は基本的に攻撃には出ず、侵攻してきた連合帝国軍を迎え撃って兵力を削り、最後はジエイタイが粉砕する。もしくはジエイタイとと協力して帝国軍を粉砕する。
「攻撃は最大の防御なのだが・・・。」
続いて、海軍は建造中の二隻の戦艦は建造を一時中止し、小型艦艇の建造にまわす。場合によっては解体もやむを得ないとする。それ以後の戦艦・飛竜母艦の建艦計画は全て白紙となった。
「ロングゲート級戦艦と、クレイン級飛竜母艦は海軍の至宝になるはずだったが、建造中のヘブンキャッスル級戦艦二隻が残されただけマシとするか・・・」
空軍は、今まで認められていた次世代飛竜の開発予算を凍結され、現有の飛竜と竜騎兵でどうにかすることになった。
「トリダイヤモンド、ウェストリバー、空軍開発局はともかく、センターアイランドの社長はどんな言いがかりを言ってくることやら・・・」
「三人とも仕様が無い。軍隊は金食い虫だからな。物資購入と戦時体制移行に伴う維持コストの上昇、予想される補償金、遺族年金・・・。挙げたらきりが無い。ここは引き下がるしかないだろう。」
国軍大臣が諭すことで、三人は沈黙した。
「ここは穏便に済ましてだな・・・」
バタン!
「失礼します!緊急の連絡であります!」
「会議中だ!それ程重要なことか?」
「ハッ!それが・・・」
776 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/13(日) 00:43:52 [ XitU55gg ]
…フランシア市・フランシア商業港…
パパパパパパパ!
「撃ってきたぞ!退避!退避!」
「二名負傷!病院へ連れて行け!」
「警察官と騎馬警官では手に負えません!早く軍隊を・・・」
パパパ!
「ジエイタイも連れて来い!!」
商業港の一角、使用されていなかった建物の一つを、ニホンから来たと思しき人間が突然占拠したのだ。直ちに港を警備していた警官たちが赴いたが、強力な火器を装備していて手に負えなかった。
「ニホンの貨物船がなんであんな凄いのを乗せてきてんだ!!」
タン!タン!
警官たちは、物陰に隠れながら射撃や魔法攻撃を繰り返すが、あまり効果が無い。
「こんな豆鉄砲やヘナチョコ魔法じゃ奴らを黙らせられないぞ!」
「なんかの垂れ幕を掲げていやがるが、なんてかいてあるん・・・」
ターーン!
「クソッ!顔も上げられねぇ!なんで軍人より俺達が先に戦争しなくちゃならねーんだ!」
777 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/13(日) 00:48:03 [ XitU55gg ]
日本の大使館員と自衛隊の幹部が、しばらくして到着した。現場指揮官らしい警察官が彼らに対してまくし立てる。
「あいつらは何者ですか?!貨物船から出てきたと思ったら、警備員の制止を振り切り、施設を占拠したと思ったらあの通り!多数の銃火器で我々を寄せ付けません!警察では鎮圧不可能です!現在、軍に派遣要塞をしたので、間もなく陸軍が到着するはずです!・・・一体奴らは何者ですか?!」
「あの垂れ幕は・・・『自衛隊の軍隊化を阻止し、平和を維持する』に『この世界の人間達に戦争の恐怖を与えるな!』・『圧制国家ニッポンを開放せよ!」・・・。市民団体のようですね。」
「市民?!ニホンの国民はあんなに武装しているのですか?!」
「いや、転移後の日本ではあのての団体が急に過激化して、どこからか流出した武器でああやって事件を起こすようになったのです。」
「武器は・・・」
『伏せろ!』
パパパパ!
ドドーーン!!
『負傷者多数!とっとと搬出しろ!』
「自動小銃に手榴弾、携帯式のロケット砲・・・。本国でもここまで武装した過激派は珍しい。出入国管理局と貨物船関係者に内通者がいたようだな。それともSITの職務怠慢かな。」
日本から国外へは、自衛隊員と指定された貨物船員・建設作業員・金融・貿易・鉱業・学術関係者以外は出ることが出来ない。
「彼らの主義思想に興味はありません!出来ればジエイタイが・・・」
「基本的にああいった輩の排除は警察やSATが行っていて、自衛隊にはその権限が与えられていません。ここはナイトロス領土ですので、彼らの確保なり排除はナイトロスで行うべきでしょう。」
「私には高度な判断が出来ませんので、間もなく到着する軍の関係者と協議してください!」
778 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/13(日) 00:52:12 [ XitU55gg ]
間もなくして、陸軍の歩兵部隊・騎兵隊と海軍の海軍歩兵隊が到着して警官隊と入れ替わった。その頃には、周囲を警察と憲兵隊が封鎖し、海上には哨戒艇や海防艦が集まっていた。
「官邸と連絡が取れました。フランシア商業港の施設を占拠した『テロリスト』・つまりゲリラは、ナイトロスがどうにかして下さい。」
「つまり、彼らの生死は問わないと?」
「そういう事になりますか。残念な事ですが、今の日本国内はほぼ麻痺状態です。日本政府は平和を愛する国民を守ることで精一杯なのです。」
「分かりました。ならば我々が実力行使します。」
急遽駆けつけた国軍大臣と駐ナイトロス大使が話をつけたようだ。大使がその場を離れると、国軍大臣は海軍歩兵隊と陸軍歩兵隊のそれぞれの指揮官を呼び寄せた。
「本来ならば飛竜のブレス攻撃か、艦艇の艦砲射撃で木端微塵にすれば事足りることだ。だが、敢えて君たちにゲリラ部隊を排除してもらう。」
「了解しました!」
「イエッサー!」
「最終目標は生死を問わずに敵を沈黙させる事!もう一つは、彼らの使用している火器を無傷で手に入れる事!こちらの方が重要だ!魔法兵部隊と合流後、作戦を協議し、直ちに実行せよ!!」
804 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/18(金) 01:29:46 [ XitU55gg ]
「これより陽動攻撃を開始する!」
建物の外側を包囲する魔法兵達が魔法を唱え始める。ただし、注意をひきつけるだけなので威力ゼロの魔法を唱える。
「ッテェェ!!」
ドン!ドドン!
建物の正面付近で閃光が走る。中にいる人間たちが、驚いて魔法兵のいる方向へ向けて攻撃を始めた。
パパパパ!
パンパン!
「今だ!総員裏口に向かって突っ走れ!!」
その隙に突入部隊が建物の裏口に向かって走り始めた。窓際にいた人間の一部がそれに向けて銃弾を浴びせ掛けようとするが
「突入部隊を守れ!撃ちまくれ!!」
包囲していた部隊が、一斉に銃撃と本物の魔法攻撃を始める。ガトリング砲も加わった制圧射撃によって、占拠していた人間達はその場に釘付けにされてしまった。突入部隊を迎撃する余裕など無くしてしまっている。
「A班欠員無し!」
「B班欠員無し!」
「C班欠員無し!」
「海兵α班欠員無し!」
「海兵β班欠員無し!」
どうにか脱落者無しで建物内に侵入できたようだ。
「この建物は三階建てだ!一階はA班、二階はB班、三階はC班と陸戦隊が制圧する!行け!!」
805 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/18(金) 01:31:15 [ XitU55gg ]
・・・一階・・・
(ゲリラのいる部屋に突入します。人数は6名、うち2名は既に倒れています)
(閃光魔法、射撃用意・・・)
「撃て!」
バン!
タン!タン!タン!タン!
「突入!突入!」
「動くな!動くと撃つ!」
「武器を捨てろ!」
兵士達が部屋に乱入するが、目立った反撃は無かった。突入の段階で、動ける人間がほとんどいなくなっていたからだ。
「ゲリラの身柄確保!1名投降、2名負傷、3名死亡!」
「一階の制圧は完了!」
806 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/18(金) 01:34:47 [ XitU55gg ]
・・・2階・・・
パパパパパパ!
「くたばれ!軍国主義者!ファシスト!」
部屋の中から盛んに銃撃を繰り返して、突入部隊を中に入れさせていない。
タン!タン!
「バリケードがあって中の様子がよく見えません!銃撃による効果は不明・・・」
「地獄に落ちろ!!この〇×■〆∈!!」
カラン・・・
「これは・・手榴弾!逃げろ!」
ドドーーン!
辺り一帯が煙に包まれる。それでも部屋の中からは盛んに銃声が響いている。
「5名が負傷!うち2名は重傷です!」
「仕方ない!ダイナマイトと光弾魔法準備!」
「準備完了!」
「ダイナマイト投入!光弾魔法発射!」
パパパパパ!・・・ズン!!
「室内からの銃声、止みました。」
「突入!」
・・・。
「室内にいたおよそ10名のゲリラを確保。生存者は4名、6人分と思われる死体を確認。」
807 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/18(金) 01:37:16 [ XitU55gg ]
…3階…
パン!パン!
「グッ・・・」
バタン!
「階段にいたゲリラ2名を排除!3階の制圧を始める!」
パパパパパ!
「死ね!死ね!」
タン!ドサッ
「更に1名排除。」
「ゲリラたちを追い込みました!数は15名前後!」
ここまで来たが、突入部隊の被害は深刻ではない。相手は遥かに時代が進んだ兵器を所持しているが、素人ではその差を生かしきれなかったようだ。
「今すぐ投降しなさい。投降すれば・・・」
「黙れ!右翼の軍国主義者の手先め!」
パパパパパ!
「聞く耳を持ちません・・・」
「武器類を出来るだけ無傷で手に入れろとの命令だ。下の階の奴らは派手にやったようだから、同じ手は使えない。・・・竜人族の陸戦隊を盾に、強行突入する!!」
「了解!!」
808 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/18(金) 01:43:52 [ XitU55gg ]
・・・同日・夜、フランシア基地・・・
「で、続きはどうした?リサ?当事者とかから話は聞いてきたんだろ?」
リサはどうして顔が広いのだろうか?だからこそ、こうやってメディアには出てきそうもない話題まで聞けるのか。
「結局強行突入して、最後のゲリラを鎮圧したそうですよ!」
「どんな感じだったか分かるか?」
「分かることは分かりますが・・・」
何をためらってるんだ?
「話の続きを聞かせてくれ。食べている赤キャベツ入りトマトスープが冷めるじゃないか!」
「そうなんですけど・・・今はあまり言いたくないです・・・」
「言え!言うんだ!」
「・・・・・竜人族の怪力で潰されたり吹き飛ばされたゲリラの頭部の血や脳漿で、一面真っ赤になったそうです。その・・・今、大尉の食べているスープみたいに・・・」
そう言われるとトマトスープは血みたいに、赤キャベツは潰れた脳味噌・・・・・・
「・・・すまない。聞かなくてもよかった。」
「その・・・食べれますか?」
「何とかな。で、戦果は?」
「ゲリラのうち、4名が投降、10名が負傷して逮捕、約20名が死体になって、こっちが警官隊を含めて重傷者47名、軽傷者100名以上ですから、・・・う〜ん、どうなんでしょうか?」
『約』20人という表現が気になるが、聞くのはやめておこう。トマトスープが逆流してきそうだ。
「死者は出なかっただけでも奇跡だよ。何よりこれからの交渉の席では、この問題をニホンに突きつけることが出来るようになった事がプラスになったんじゃないかな。」
政治家っていうのはこういうのも相手を揺するタネにしたがるというからな。軍人としては腹立たしいが、仕方の無いことだ。
841 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/23(水) 01:31:30 [ XitU55gg ]
「猫人族のいるホテルか喫茶店?レストランでもいい?ジエイタイの仕事と何か関係があるのか?」
「そのような事はありませんが、ようやっと外出が認められるのです!そういう情報を知っておいたほうが・・・」
一般のジエイタイ隊員が、基地内か一定の場所に閉じ込められていて不自由していたのは知っていたが、それが
「何でそういう情報を知りたがる?」
ウェイトレスやメイドに何の用があるのか、見当がつかない。
「それは・・・」
ジエイタイ兵士の考えることはさっぱり分からん。そもそも港の占拠事件から大して日数も経っていないのに、よく外出の許可が出たよなぁ。わけ分からん。
「教えてやらない義理もないしな。市内の東部地区の海沿いはそういう施設が多いから、散策してみるといいんじゃないか?」
「大尉殿!ありがとうございます!」
「いってらっしゃい。門限と進入禁止地域には注意しろよ。」
完全に観光気分でいるよな、アレは。
「さて、遅い朝食を取るか・・・」
842 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/23(水) 01:32:24 [ XitU55gg ]
・・・食堂・・・
「・・・駄目ですって!」
「・・があって・・・のは・・・」
何だ?騒がしいな。食堂の一角で人だかりが出来ている。
「魔法を教えていただきたく・・・」
「そういったことは、もっと上層部の人間と話さなくてはいけないんで・・・」
またか、最近多いんだよな。いきなり俺たちに魔法の使い方や原理を聞いてくるジエイタイ隊員が。
「あー、大尉!どうしてもこの人が引いてくれないんです!大尉が多分この場で一番偉いんですから、何とかして下さい!」
リサか。腐れ縁だな。大尉以上の人間は・・・いないな。他国の兵士の階級は分からない、もとよりここはナイトロスだ。
「政府の通達で、そういうことは今は駄目なんですよ。今のニホン人は撮影できるような機械の持ち込みや、魔道書の類の購入が禁じられているのはご存知でしょう?」
「それはそうですが!ばらさないから、どうしても教えて欲しいのであります!」
しつこいな。ケイム隊に引き渡すか。
843 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/23(水) 01:34:29 [ XitU55gg ]
「第一、君は魔法の恐ろしさを知っているのか?まさか何でも出来る夢の道具と勘違いしていないか?魔法っていうは、開放されたエネルギーより発動するために使われるエネルギーがのほうが、うーーんとデカイんだ。何も知らない人間が魔法を唱えたら、星一個吹き飛ぶだけの力が出てくるかもしれないのだ!」
半分はでまかせだ。呪文を唱えれば、魔力さえあれば魔法は発動する。寝言では駄目らしいが。ただ、見た目はしょぼい魔法でも、発動する時には非常識なほどエネルギーを使用しているのは事実らしい。
「魔法の原理は教えてやってもいいが・・・」
周りに目配せする。俺の意図に何人気づいてくれるか。
「魔法というのはだなぁ、粒子と反粒子の対消滅によって発生する高純度な真空のエネルギーを、場の統一性の不可逆的変化としてもたらされているわけで・・・」
「大尉!嘘を言っちゃだめですよ!魔法っていうのは、折り重なった膜宇宙同士の空間干渉で発生した歪みが、トンネル効果で私たちの世界に魔法っていうかたちで開放しているだけなんですよーー!」
「二人は大嘘つきだ!魔法は、様々な可能性を持った現在が一つの未来に収束する時に、選択されなかった未来の残滓が魔法として現れて・・・」
「違う!世界の持つカオス状態が、新たなカオスに相転移する際のエネルギーマトリクスが・・・」
「アスターでは、微小世界の弦が振動する時に共振する、閉じ込められた高次元世界からのエネルギー開放と縮退を魔法と・・・」
「理論魔法学の権威は、『意志の力』が普段見ることの出来ない多重世界の現象を、この世界の物理現象に似せた擬似的エントロピーの極限に向かう発散だと・・・」
「故郷では、ダイブスパローの風切り音が精霊に働きかけて、音を多重共鳴させて魔法へと変換すると・・・」
「宇宙に満ちている感応性エーテルが、量子力学的働きかけによって状態変化しているだけでは・・・」
「モジュラー的四次元世界の位相幾何学的アプローチが、三次元世界へのトポロジー型囲い込みの結果として・・・」
844 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/23(水) 01:37:24 [ XitU55gg ]
「あ、その・・・。ありがとうございました!」
帰っていきやがった。成功だ。
「みんなありがとうな!」
「大尉が意味不明な事を言い出すまで、一体何を目配せしたのか分かりませんでしたよ!」
「しかし、ぱっと出の言葉でも、なんとなく意味のありそうな言葉の羅列だったな。俺も皆も。」
自分で何を言っているのか、正直分からなかった。思い返しても、自分で理解できる単語は殆どない。
「この世界で魔法理論を完全に理解している人間が、どの程度いると思っているんですか?全然いないですよ?」
俺達だって魔法の使い方は習ったが、原理なんてさっぱり習っていない。難解すぎて、理論全体を把握している偉大な賢人は、片手で充分過ぎる人数しかいないだろう。
「安全に使えればそれでいいんだよ!その辺は科学も魔法も差は無いしな!」
最近勢力を増しているテクノクラート(技術主義者)やマジノクラート(魔法主義者)には悪いが、現場では理論の素晴らしさより利便性とかのほうが、よっぽど大事なんだ。
850 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/28(月) 22:57:59 [ XitU55gg ]
・・・ナイトロス〜連合帝国国境より約150キロ、エルビヌメイン防衛線より約100キロ・・・
ガサガサ・・・
深い森の中を10名ほどの人間が歩いている。半分はナイトロス陸軍国境警備隊の服装、もう半分は自衛隊特有の緑がかった迷彩服である。
「飛竜以外の乗り物ははじめて見たが、ヘリコプターというものはかなり便利そうだったな。いつか乗せてほしいよ。」
「燃料が少ないんでね。石油がもっと取れるようになったら考えてみるさ。」
場違いなほど和んだ空気が流れている。この近辺では、既に帝国の偵察部隊と度々小競り合いが起きている。
「こういう場所で訓練はしたから、たいしたこと無いですよ。こういう場所は富士のレンジャー部隊のほうが得意なはずですが。」
第一空挺団の隊員たちは、交流の一環ということで国境の警備に参加するため、フランシア市から国境各所にある前哨基地に配備されたのだ。
「この付近は森が深くて素早い移動には向いていない。だが、この森の両側には3000メートル級の山脈が海岸近くまで連なっているから、このあたりの地理に疎い帝国軍はここを通るしかないんだ。」
「国境警備隊は、この森と付近の草原地帯を幾つかのブロックに分けて監視している。今我々は・・・エリア・ビヤーキーを北進して、エリア・クトゥグアに向かっている。まだ、森の入り口付近だ。」
「入り口のエリア・アザトースが一番安全で、国境のエリア・ヨグ=ソトースが一番危険なんだよ。」
「質問ですが、エリアの名前の由来は・・・?」
「由来?何だったかな・・・。ナイトロス国教会の普及前に、北大陸で一大勢力を誇っていた古代宗教の神や眷属の名前が由来だったはずだが・・・。詳しくは分からない。」
「なるほど・・・」
851 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/28(月) 23:00:36 [ XitU55gg ]
「この辺りまでは帝国軍も飛竜以外は、あまり来ることは無い・・・!!」
ここまで話して、国境警備隊員たちはライフル銃などに手を取り、戦闘の準備を始めた。
(どうやらお客さんを接待しなくてはならないようだ。)
警備隊のリーダーは声を潜めて空挺団員達に武器を取るように促す。一歩出遅れた空挺団の面々も、すぐに準備を始めた。『気配』を感じたのだ。
(人数は14人、結構な人数です。普通の兵士が8人、射手が4人、魔法使いと騎兵が一人ずつです。こちらに向かってきます。まだ気づかれていません)
先行していた兵士が帰って来た。
(ジエイタイの諸君は覚悟は出来ているとは思うが、敵を逃げ出すまで殲滅する)
団員たちのほうは89式小銃、この班の指揮官は機関拳銃を構える。
(それぐらいの覚悟は出来ています)
(来ました!)
(合図したら、全員一斉に撃て!)
森の奥から足音が複数聞こえてきた。背の低い木々によって姿は見ることは出来ない。
(構え・・・)
距離は100メートルぐらいだろうか。
「撃て!」
852 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/28(月) 23:04:01 [ XitU55gg ]
タタタタタタタ!
パン!パン!
一斉に銃撃が始まり、急に辺りが騒がしくなる。銃声に混じって悲鳴や怒声が聞こえてくる。
「距離を詰めろ!」
「行け行け!!」
銃を撃ちながら、巧みに距離を詰めていく。
「伏せろ!」
体勢を低くすると、前方から矢が飛んできて木の幹に突き刺さった。帝国兵も混乱から立ち直りつつあるようだ。
「もっと土地が開けていたら攻撃魔法も使えるんだがなぁ!」
木の間から、剣や弓を持った帝国兵が続々と姿を現してきた。こっちの姿を確認したようだ。人数は10人を切っている。
「あいつが指揮官だな。」
馬に乗った騎士が、兵士達に何か指示を出しているようだ。敵の魔術師が魔法の詠唱を始めた。
「敵は銃が怖くないのか?」
空挺団員達の銃の射線上に次々と身体を晒しては、あっという間に蜂の巣になっていく。帝国では銃は珍しい。南大陸の人間は銃の恐ろしさを知っているので、同じ場面なら遮蔽物を使いながら攻撃してくることだろう。
「チッ!上手く当たらない!」
魔法を唱えている魔術師と騎兵には、低木や幹が邪魔して銃弾が命中しない。
タン!タン!
銃声が響き、魔術師が倒れた。いつの間にか警備隊員が、視界の開けた場所に移動して狙撃したようだ。
「敵騎士、逃げました!」
「撃ち方、止め!追跡もするな!」
853 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/28(月) 23:06:37 [ XitU55gg ]
「ハードなピクニックだったろう?」
後始末をしながら、会話を進める。
「流れ弾や弓矢で、警備隊員3人とジエイタイ1人が軽傷です。」
「弾薬の残量が不足しています。補充する必要があります。」
「長距離魔法通信で連絡を入れて、所定の場所まで補給物資を空輸してもらおう。」
「空輸?」
「小型の飛竜でも多少の荷物なら運べるんですよ。重傷者が出た時には、大型飛竜で基地まで緊急搬送します。所定の場所まで持てば、の話ですが」
「飛竜はヘリの役目もしているんですか・・・」
「北西に15キロ進んだ場所で補給を受ける。楽しいピクニックの続きを始めるぞ。」
こういった巡回は、場合によっては半月を超えることがある。
854 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/11/28(月) 23:08:57 [ XitU55gg ]
…連合帝国帝都・王城…
「・・・というわけで陸からの斥候部隊は殆ど戻らず、竜騎士の乗る飛竜ではナイトロスの飛竜についていけず、国境付近より先の情報が殆ど入らぬ。軍船や主力軍団の準備が途上である以上、エーテルガルド、御主の配下の天馬騎士団は既に準備が整っておるし、ペガサスの俊足ならばナイトロス深部への強行偵察も可能なはずだ。受けてはくれんかの?」
父・・・皇帝陛下の直接の要請とは、本当に光栄なこと。ただ、後ろに控えている兄皇太子達や大臣の様子を見る限り、早いうちに前線へ飛ばして、とっと戦死すればいい!ていうオーラが出まくりだわ!
「陛下のご要望に応えられるよう、最大限の努力をいたします。」
「そうか。よきに計らえ。」
「エーテルガルド近衛天馬騎士団長。先日、卿に指揮権を移した辺境の騎士団はどうするかね?」
受け取った騎士団は、第三天馬騎士団と二つの竜騎士団に再編成して訓練をさせているけど、実戦で使えるようにするにはもう少し時間が必要。それに、元々指揮下の天馬騎士団を全部連れて行っても、今はとても養うことが出来ないわよ!
「近衛天馬騎士団のみを前線へ派遣します。第一・第二天馬騎士団は本格的な進軍を始めるまで、この地で新参兵を訓練させておきます。」
本当に、いちいち五月蝿い大臣ね!偵察にそんな人数は要らないのよ!
「それでは早速、近衛天馬騎士団約70騎を率いて南方方面軍本部へ推参するため、失礼させていただきます!」
860 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/12/02(金) 00:26:14 [ XitU55gg ]
「大尉には8万シリングです。」
「リサありがとう・・・じゃない!俺は500万も預けて、戻ってきたのは200万シリング預けていたやつと同じじゃないか!残りはどうした!!」
リサが、株で生まれた利ざやの一部をみんなに返してくれた。俺は20万シリング貰えてもいいはずなのに!
「私が立て替えた食事代とかを天引きしただけです。」
冗談じゃなかったのか、鬼め。
「みんなに言っておくけど、ニホン株取引をやめて、次からは新しくできる鉱山開発関連の会社に出資するから。嫌な人は?」
鉱山ねぇ。ニホンがあちこちの国の鉱山に手を出し始めてるからな。
「俺は、元本割れしなければいいや。」
儲けも欲しいが、変なのに投資して丸損するのも困る。
「異議なし!」
「賛成!」
「じゃぁ、決まりですね。サマリムで設立される油田運営会社に投資しようかなー。それともナイトロス南部の金鉱山か鉄鉱山かなー。やっぱりノステルかネーブルみたいな国の希少金属の鉱山なんかも・・・」
軍人というよりは投資家だな、こいつは。この後の合同訓練でしごいておくか。
861 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/12/02(金) 00:28:04 [ XitU55gg ]
『ジーク01より各騎へ。散開しろ!各自の判断でペアを組め!』
ジーク型飛竜は一対一の格闘戦ではかなり強い。俺もそういう戦い方のほうが得意だが、最近は敵(他国)の飛竜が挑発に乗らずに、複数で戦いを挑んでくるようになった。それに対処するために、二騎一組で戦闘をするようにしている。リサとペアを組んで訓練していたから、そんな戦い方も苦痛じゃない。
『ジーク13よりジーク02へ。一時方向、敵飛竜。数は3!』
早速来た。コバルタのスピットファイアMkXか。ブレスの威力と速度・耐久性はこちらより上だが、それ以外はこっちが上回っている。格闘戦に持ち込めれば勝てる相手だ。
『ジーク02よりジーク13。俺が突っ込む!援護を頼んだ!』
『了解!』
リサの飛竜が俺の後方の少し上に移動した。航空ジエイタイの人間が言うには、これはロッテという古典的な空戦技術らしい。死角が減るから安心して戦える。
『9時方向、さらに別の飛竜!数は4!』
何!?いくらなんでも、2騎で7騎は無理だ。あれはアスター飛竜か?近くのジーク隊は空戦に突入しているようだ、援護は当てにできな・・・
『ジャック05よりジーク隊飛竜へ。アスターの飛竜4騎は我々が引き受けた!』
まさに天佑!ジャック隊にはおごらなくちゃならないな。
862 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/12/02(金) 00:30:25 [ XitU55gg ]
『アスターの飛竜は放っておけ!目の前のスピットだ!』
『りょ、了解!』
距離が狭まってきた。光弾で歓迎するか!そうしないと、向こうのブレスに圧倒される。
パッパッパッ!
スピットのほうに向けて光弾を飛ばす。有効射程の遥か外側から撃ったので、当然命中などしない。その代わり、3騎の編隊は崩れた。
バン!ドン!
編隊を崩しながらも、敵スピットはブレスと攻撃魔法を撃ってくる。そんな攻撃に俺が食われるわけないだろう!
ヒィィィィン!
急激な旋回をしてスピットの後ろに喰いつく。旋回性能はこっちが断然上だ。普段なら敵はここで急上昇や急降下をして逃げようとするが逃げない。今日の奴らは腕に覚えのある竜騎兵のようだ。
一騎の後ろに取り付いた。
『喰らえ!!』
パパパパ!バン!バン!
ブレス攻撃は外れたが、光弾はかなり命中した。
『敵一騎を撃破!』
『大尉!三時方向から2騎来ます!』
863 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/12/02(金) 00:31:53 [ XitU55gg ]
まずいな。
『リサ、上から光弾をぶつけろ!』
『分かりました!!』
リサは高度を更に上げているだろう。暫くは敵から逃げるしかないか。
バン!ヒュン!ドン!
こっちが逃げているからって好き勝手に撃ちやがって!だが、後ろに2騎もいる状態では逃げるのはやっとだ。しかもドンドン追いつかれている。
『リサ、早くしろ!』
バガァ!!
パッパッパッパッパ!!
俺が被弾するのと、スピット2騎に高空から奇襲したリサの光弾・ブレスが包まれるのとがほとんど同時だった。
『遅いぞ・・・』
今ので俺も撃墜だ。今日は一騎撃墜、シケた成績だ。リサは今の攻撃で一騎屠ったようだが、最後の一騎は逃したようだ。彼女単独の技量を見せてもらおうか。
『大尉!後ろにつかれて振り切れません!』
『知るか。リーフをやったらどうだ?』
『私にはそんな技術は・・・あ』
バン!
『・・・やられました』
864 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/12/02(金) 00:34:50 [ XitU55gg ]
…地上・対空兵器陣地…
「高射魔導砲、全門発砲用意完了!!」
「対空魔法準備完了!!」
「対空ガトリング砲、模擬弾装填完了!」
「魔探班より報告!敵飛竜高度は1500から3000!」
「予定通りの方法で砲撃用意・・・」
「テェェッ!!」
ドドン!ズーン!
対空砲陣地を通過していた飛竜の周囲で、次々と閃光が広がる。この陣地を超えてから地上攻撃を行うはずだった、各国の飛竜は猛烈な弾幕の中に侵入したのだ。
「コバルタのランカスター2騎、ハリファックス1騎、アスターのツポレフ2を1騎を撃破」
「敵飛竜高度、1000および3500!二手に分かれました!」
これまでの訓練に基づいて、個々の飛竜に合わせて対空魔法の照準を変えるのではなく、砲門ごとに発射する方向を予め決める方法に変更したのだ。
「編隊を組んだ相手にはかなり効果があります!」
キイィィィィ!
「イリューシン2が急降下攻撃!」
「LN411とSM85が来ます!」
「スピットファイアMkTとミコヤンVが降下してきます!」
急降下攻撃できる飛竜と護衛の戦闘飛竜がこの陣地を潰しにかかってきた。
865 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/12/02(金) 00:36:33 [ XitU55gg ]
「対空ガトリング砲発射!」
ダダダダダダダ!!!
バン!ズガーン!
発射速度の速いガトリング砲と生物に反応して炸裂する高射魔導砲は、続々と飛竜を捕捉していく。
「駄目です!突破されます!」
ドム!ドン!
「高射砲1、4、5、6は破損判定!対空魔法3、4、8、10、11は詠唱不可能!ガトリング砲1から8が破損!魔探が機能停止判定!」
「命中率が著しく低下!!」
ドーン!ドーン!
「敵残存飛竜は地上攻撃目標への攻撃を始めました」
「作戦中止。被害の集計をせよ!」
866 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/12/02(金) 00:41:54 [ XitU55gg ]
「同志大尉殿!ナイトロスの防空能力は想像以上です!高射魔導砲で小官のイリューシン10は一発で撃墜判定でした・・・。」
「私が搭乗したポテーズ630C1は、ナイトロスのニック型飛竜にあっさり撃墜されてしまいました。」
同室の二人も中々良い経験を得ているようだ。成績は良くないようだが。そんな俺も今日の戦果は1騎のみだ。
「アレックス、今日はうちの隊はかなりやられた。お前を含めて15騎中7騎が撃墜され、9騎を返り討ちにした。」
「隊長!今日はコバルタのスピットファイアにやられました。」
一昨日は爆撃飛竜の護衛訓練中にウェッセンラントのJ21にやられ、その前はサマリムのサジタリオと激しい空中戦の末、撃墜判定されてしまった。
「他国の飛竜は思っていた以上に強いです。ジーク型飛竜は急降下と急上昇に制限があるせいで、そこにつけこまれることが増えました。」
「ふむ。私達の使っているジークは既に旧式飛竜に入りつつあるようだ。現行のタイプ52以上の改良型はもう出ないだろう。頑張って使ってくれ。」
「帝国の飛竜相手には問題無いでしょうが、もう少し戦い方を検討したほうがいいと思います。」
「そうするか。アレックス、後で隊員を全員集めてくれ。」
「了解しました!」