506 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/05(月) 00:08:01 [ XitU55gg ]
 フランシア市郊外、広大な敷地を有する国立フランシア大学の一角にある講堂の大ホールでは、日本の学者等を特別招待した講義が始まろうとしていた。
「今日は、古代〜近代における世界史全般についての特別講義を開始します。」
 学者風情の教授が壇上に立った。普段は空席の多いホールは、今日は生徒の他に日本の学者が陣取っているので空席は少ない。
「まず、古代世界についてから始めましょう。今から2500年ほど前、北大陸中西部で誕生した古代ハフニー王国は貴族と民衆達との抗争を経て、2300年ほど前にコンスル(統領)を代表者とするハフニー共和国へと姿を変えたと伝えられています。ハフニー共和国は自由な貿易と強力な軍事力を率いて周囲の小国を吸収しながら巨大化していったのです。」
「やがて2100年ほど前、コンスルの座を巡って戦争が起こり、この内戦の勝利者は自らを『皇帝』と名乗りハフニー共和国も古代ハフニー帝国に変貌しました。この後200年間は帝国は膨張を続け、最盛期には北大陸北部のツンドラ・永久凍土地帯を除く全ての地域を支配しました。この頃には魔法や科学の分野は大きく発展し、文化は爛熟していました。」
「しかし、発展と共に帝国の臣民は労働を嫌い、享楽的で怠惰な生活を送るようになります。労働力不足に陥った帝国は、当時は未開文明の地であった南大陸の獣人や亜人を労働力や下級兵士として受け入れ始めました。最初の頃はごく少数でしたが、年を追うごとにそういった獣人たちは増加していきました。いつのまにか、帝国は獣人達無しには成り立たない文明になっていったのです。」
「1900年前から1800年前、アスター地方に住み着いていた竜人族が周囲への侵略を行い、それによってそれまで以上に獣人が帝国に流入するようになりました。これによって帝国の政情は不安定化し、地方の総督が度々反乱を起こすようになり古代ハフニー帝国は急速に崩壊への道を歩み始めました。」
「そして1700年前、遂に古代ハフニー帝国は東西に分裂しました。東ハフニー帝国は数十年で歴史から姿を消しますが、西ハフニー帝国は200年間生き長らえた後に、コバルタ=ハン国の侵入によって崩壊していきました。しかし、この200年の間に北大陸の歴史を決める出来事が起こったのです。」
「1600年前、西ハフニー帝国の帝都から数十キロ離れた田舎町で、一人の男が『自分は神の使徒である』と伝道を始め、相次ぐ戦乱で疲弊した人々に救世主(メシア)として敬われ始めたのです。彼は、権力が揺らぐのを恐れた西ハフニー帝国の暗愚な皇帝によって磔にされたとされています。しかし、彼の開いた宗教は瞬く間に北大陸中の人間に広まり、それまでの宗教は殆ど駆逐されました。」
「その後、その宗教は急速に権力をつけ始めました。また、崩壊した西ハフニー帝国には新たな国家が誕生しました。最初は地方貴族の建てた国と言われていますが国教に救世主の宗教を指定したので、かの宗教の支援を受けて、西ハフニー帝国の残滓を残した国が消滅する1500年前には西ハフニー帝国の領土のほぼ全てと東ハフニー帝国の一部を有する、北大陸随一の国家へと成長したのです。」
「この国は、救世主の宗教をオスミア国教会と名付け、救世主が伝道を始めた都市を聖都として保護しました。同時に、オスミア国教会はその国をかつての北大陸の覇権国家と同じ『ハフニー帝国』と名付けました。この時から、時代は古代から中世になったとされています。」

507 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/05(月) 00:13:42 [ XitU55gg ]
「また、貴族・騎士・高位魔術師が市民・農民を支配する封建体制が整い、古代ハフニー帝国時代から育まれていた多くの知識が『国教会の教えに背く』として、闇に葬られていきました。1500年前から600年前まではいわゆる『暗黒時代』として知られています。」
「帝国やそれ以外の北大陸国家の国力が増強した1400年程前から、北大陸南部に居座っていた南大陸の獣人国家を追い出すという『国土回復運動(レコンキスタ)』が始まり、北大陸の南部三分の一の支配していた獣人達を放逐する運動として1100年ほど前まで続きました。この時点で南大陸と北大陸の文明的交流は、ナイトロスの南大陸進出まで途絶えたことになっています。」
「北大陸を追い出された獣人・亜人は北大陸で手に入れた知識と技術を使って、部族間抗争で荒れ果てていた南大陸を再興して、1000年前には現在の有力国家であるコバルタ、アスターといった国の原型が出来上がっていきました。彼ら獣人の国々も600年前までは封建的な制度を敷いていましたが、宗教の戒律が薄かったので魔法、科学や文化の進歩は若干ながらありました。」
「封建的な時代は長く続き、この間の世界は殆ど進歩を遂げませんでした。しかし、約650年前に大規模な伝染病が北大陸で蔓延し、当時の北大陸人口の四分の一が息絶えたと言われています。多くの農民を失い、北大陸の封建制は崩壊の危機に瀕しました。また、従来のオスミア国教会の教えに反発する人々が生まれ、国教会の威厳も揺らいでいました。」
「この流れは、いわゆる『ルネッサンス』と呼ばれ、古代ハフニー帝国の頃の自由な風潮の再現や新しい学問の創造といった活動が興りました。」
「残念なことに、帝国や他の国々はそれらの運動を激しく弾圧してルネッサンスの芽を摘んでしまいました。それらの運動を推し進めていた『革新的貴族』、『学者』、『錬金術師』、『新教徒』、『魔術師』、『芸術家』などは、国土回復運動の終了後に無人化していたナイトロス半島に逃げ込み、新たに『ナイトロス共和国』を建国しました。今から580年前のことです。この共和政は約180年続きました。」
「本来ならば討伐軍が派遣されるはずでしたが、北大陸ではハフニー帝国とそれ以外の国の間で不和が生じ、それどころでは無くなっていました。550年ほど前からハフニー帝国はオスミア国教会と連合政権を組んで、国号を『オスミア=ハフニー連合帝国』と変え、現在まで続く覇権主義国家へと変貌しました。これは、ルネッサンス勃興直前の帝国による飛竜の騎乗技術の発明説が有力です。このゴタゴタによってナイトロスが生き長らえることができたと言うのは、皮肉以外の何者でもないでしょう。」
「何とか生き残れたナイトロス共和国は、建国当時から南大陸への接触をしていました。南大陸でも北大陸とは全く別にルネッサンスが起きており、南大陸とナイトロスはルネッサンスによって大きく発展していくことになったのです。」
 ここで、休憩を告げる鐘が鳴った。
「いったん休憩して、後半は大航海時代、帝国主義時代、それ以降の現代についての講義を行います。」




512 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/07(水) 00:56:53 [ XitU55gg ]
「さて、ルネッサンスの浸透によって、いくつかの重要な発明がありました。一つは火薬。今から500年前に発明されたもので、剣、弓、投石器、魔法などに頼っていた戦場が大きく変化しました。もう一つが活版印刷。大量の書物を印刷できるようになったので、識字率が大きく向上して後々の産業革命へと繋がりました。最後に羅針盤。これの発明は、南大陸・北大陸・北極大陸しか知らなかった我々の先祖を大航海時代へと導きました。」
「大航海時代は100年弱で終わりを告げ、東大陸といくつかの諸島を見つけることしか出来ませんでしたが、航海技術の進歩によって南大陸各国およびナイトロスは、陸路以外にも海路による貿易が増加しました。しかし大幅な国土拡張を望んでいた国々は、危険生物の多い東大陸の発見では領土拡張欲を抑えられなかったのです。」
「大航海時代が終わる頃、火薬技術の進歩がもたらした軍事力によって、南大陸とナイトロスでは戦乱が起きました。いち早く銃器を軍隊に持ち込んだナイトロスは南大陸北部を獲得しましたが、度重なる戦争によって疲弊し、共和政から君主制に移行して国家の再建を行いました。南大陸北部を失ったコバルタはナイトロスに対しての対決姿勢を解き、以降は極端な敵対姿勢を取らなくなりました。アスターは周囲からの侵略を完全に防ぎきりましたが、竜人族族長が『ツァーリ』を名乗って帝政国家となり、アスター帝国は共産革命が勃発するまで存続したのです。」
「ナイトロス共和国がナイトロス王国に変わった約400年前、王国の魔術師達は、一部の訓練された者以外も使えるような魔法の研究を始め、魔法を使いやすく手軽なものへと変えていきました。これはいわゆる『魔法革命』と呼ばれ、『産業革命』と並んで近代ナイトロスを作り上げた出来事です。機械に魔法回路を組み込んで、魔力を注ぐだけで良いという現在の魔法兵器や許可さえあれば使える魔法通信は、この革命の成果です。」
「戦乱後、ナイトロス、コバルタの支配する南大陸中・北部と、アスターの支配する南東部は見かけの上では長く平和が続きました。一方、それ以外の地域ではエルフ族・ドワーフ族が多くの小国に別れて戦乱が長引き、200年前までの200年間も続きました。この間に、少数民族の国は多く産まれていたのですが、多数派民族であった二種族の国々は三ヶ国の有形無形の圧力で大国への道を摘まれ、あるいは衛星国になるなどして民族としての発言力を失っていきました。」
「この、三ヶ国の戦乱が終了した約400年前から150年前までは、ナイトロス、コバルタ、アスターの三ヶ国の帝国主義による代理戦争の時代となりました。大陸から戦火は絶えませんでしたが、政情の安定していた三つの国では近代へ向けての準備が整っていきました。」
「200年前からは三ヶ国間の貿易によって、ナイトロスとコバルタでは織物の需要が増加し、また木炭の消費量増加によって森林が減少したことにより新たな燃料が求められていました。」

513 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/07(水) 00:59:07 [ XitU55gg ]
「150年前からは、木炭の替わりに石炭が使われるようになってきました。特に南大陸への進出をコバルタによって塞がれていたナイトロスは、いち早く炭鉱の開発に乗り出しました。一歩出遅れたコバルタは効率の良い炭鉱の開発を急ぎ、結果として最初に蒸気機関を発明したのです。この頃から『近代』の始まりと言えます。蒸気機関の発明は、紡績機やその後の蒸気船や蒸気機関車の開発につながっています。」
「この時期には製鉄技術も進歩し、建物や船に鉄が使われるようになって重工業発展の礎になりました。一連の産業革命の流れは、100年前から特に顕著なものになっています。」
「しかしこの流れに乗り遅れたアスター帝国は、安い輸入品によって国内産業が荒廃して失業者で町は溢れ返りました。今から120年前、アスター連邦の二人の経済学者が社会主義に関する本を出版し、社会主義運動が急速にアスター内で広がっていきました。ツァーリはこの運動を弾圧しようとして失敗し、110年前、共産革命の勃発と共に皇帝一族は処刑されて、アスターは世界初の社会主義国家となりました。」
「この流れを恐れたナイトロス、コバルタでは労働者に対する福祉保証や参政権の付与、議会制民主主義の導入によって自国の社会主義化を防ごうとしました。現在の我が国は社会主義国家ではないので、この対処は正しかったと言えるでしょう。」
「一方のアスター社会主義共和国では指導者層の間で権力闘争が起こり、100年前に書記長が暗殺されたことによって、強硬派と穏健派に分かれた激しい内戦が発生しました。コバルタは兵を派遣して内乱の鎮圧を行おうとし、ナイトロスは武器の援助などで穏健派を支援しました。なお、コバルタはこの時の派兵で大きな損害を受け、国力でナイトロスに差を開けらてしまいました。」
「話はやや逸れますが、この内乱の最中に、アスター内ではそれまで帝国と同じような運用法をしていた飛竜を画期的な方法で運用し、初期の制空戦闘で圧倒的有利となりました。この飛竜の操作技術は瞬く間に大陸中に広まって、現在の竜騎兵の下地となっています。更に80年前には、現在アスター社会主義連邦共和国の副書記長を務めているコーチン氏が、空を飛べないドラゴンを使って『戦竜』という新しい兵器を完成させました。戦竜は長い間、輸出も他国の養殖飼育もできませんでしたが、つい最近輸出許可が下りたそうです。」
「話を戻します。これらの新兵器、新戦術の登場は内戦をいっそう悲惨なものとしましたが、最終的には人民の支持を得た穏健派が勝利しました。今から40年前のことです。今でも復興作業を続けている地域があるほど、国土は荒廃しました。」
「この内戦の間に力をつけたナイトロスは、率先して新技術を開発するようになりました。石炭蒸気機関に替わる石油内燃機関の発明や、第二次魔法革命ともされる魔法をエネルギー資源として使う技術などの発明は、他国では殆ど行われていないユニークなもので、今後のナイトロスを大きく変えていくかも知れません。そして、現在は帝国との緊張が高まっています。我々の歴史は・・・」
 鐘の音。講義が終わる時間のようだ。
「では、本日の講義を終了します。」




518 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/13(火) 22:49:11 [ XitU55gg ]
 ここは隊長の個室。隊長と個人的な話をする時に、よく立ち寄る。
「ニホンの総理大臣が来る?!」
 声が大きかったな。どうせすぐにみんな知る事だろうし。そりゃまた急な話だ。ナイトロスとニホンが接触してまだ一ヶ月ちょいだぞ。
「何でもニホンの首相のサプライズなんとかで急に決まったらしい。派遣されたジエイタイ隊員の激励が目的ということだ。」
「隊長、ニホンは議会が解散して選挙の準備中ですよね?・・・あ、というと」
「国民へのゴマすりだろうな。今のニホンは南大陸とナイトロスからの輸入で、辛うじて首の皮一枚繋がっている状況だ。そんな国を訪問して、自分の存在感をアピールするのが狙いかな。」
「やっぱり!ここ数日、航空ジエイタイの偵察機や戦闘機が頻繁に来るようになりましたよね!」
「リサ!いつの間に?!」
 ノックぐらいしろ!
「リサ一等兵か。地獄耳だな。」
 そこは感心するところだろうか?
「本当に急な話で、政府は相当困っているらしい。一週間で一国の代表者受け入れの準備をしろっていうんだから。」
「給料分の働きをさせるいい機会です。」
「隊長・・・。そういう時って私達も・・・」

519 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/13(火) 22:53:21 [ XitU55gg ]
「休日に当たっているが、当然休みの人間は休みを返上してもらう。アレックス大尉は休みではなかったから、それほど関係ない話だ。」
「ハァ・・・。久しぶりに友達に会おうと思ったのに・・・」
「リサの友人は逃げやしないさ!で、我々は?」
「まぁ、上空の警備は間違いないな。ニホン〜ナイトロス間の海洋は爆撃飛竜か偵察飛竜が担当してくれるだろう。空の上から・・・」
「ニホンの『ライオン』総理大臣の顔を拝むとしますか!」
「多分、上空からじゃ顔はわかりませんよ?」
「夢の無い女性だ。お前の心はそんなに煤けていたのか。」
「大尉は一体何を言ってるんですか!私の心は使われていない聖書と同じくらい綺麗ですよ!」
「駄目じゃないか・・・。新教徒なんだから聖書くらい読め!」
「大尉は、教会のミサで一回も居眠りしたこと無いんですね!」
「目を開けながら寝れば、目が節穴の聖職者には分かるはずない。」
 こんな会話が出来るんだから、まだナイトロスは平和だ。

520 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/13(火) 23:00:11 [ XitU55gg ]
 -----ナイトロス・北大陸領内、陸軍秘密基地-----
「これが戦竜D62とD64か・・・」
 陸軍の上級士官の前には、アスターより引き渡された戦竜がずらっと並んでいる。数は三桁に近い。
「これらは大祖国戦争・・・いや、アスター内戦の終結後、戦後第二世代の戦竜だ。アスター内では陳腐化しているが、まだまだ使える。それに訓練も良く出来ている。ナイトロスの兵士にも使いこなせるはずだ。」
 アスターの将校が言う通り、慣れない手つきで引っ張る兵士達にも戦竜は大人しくしている。
「我々アスターは、西アスター戦竜軍団から精鋭の戦竜乗りを教官として連れてきている。戦竜の飼育技術や操作技術は、彼らが伝授することになっている。彼らの手にかかれば、田舎の農民も一週間で戦竜乗りなれる。その代わり非常に厳しいが。」
「重々承知のことです。我らとて、陸軍騎兵部隊の精鋭を抜擢してきました。帝国が攻めてくる前までには、立派な戦竜乗りにして見せましょう!」
「そうですか。書記長同志も喜んでくれるでしょう」
 そう言って、基地施設内にナイトロス上級士官は帰っていった。兵士達に訓示でもするのだろう。アスター軍将校は、尾を小刻みに地面に着けながらそれを見送った。竜人族での『貧乏揺すり』のようなものだ。悩む時や考え事をする時に出やすい。
(・・・・・戦竜はともかく、戦争への準備が殆ど整っていないではないか!・・・・・)
「しかし、我がアスターも同じようなものだ。書記長同志は今度の戦争にどの程度関わるのだろうか?」
「何か言いましたか?」
「いや、何でもない。」

521 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/13(火) 23:05:26 [ XitU55gg ]
 -----オスミア=ハフニー連合帝国『聖都』オスミア市-----
「枢機卿の諸君!遠路はるばる御苦労!ここに枢機卿会議の開催を宣言する!!」
 巨大なホールには、帝国各地より馳せ参じた枢機卿が大テーブルに座っている。
「神を畏れぬ農民どもの反乱のせいで半月以上開催が遅れたが、それは些細な出来事だ!」
 国教会の教皇が高らかに宣言した。芝居がかった言葉は、若干狂気を含んでいる。このホールには香として大麻が焚かれているのだ。今の教皇と枢機卿達には、神に対する信仰心などあるはずが無い。
「我らの神聖なる軍隊は、偉大なる帝国軍と共に北大陸のほぼ全てを掌握した!邪教徒を浄化し、国土に神の栄光をもたらしたのだ!だが、邪教徒どもはまだ息を潜めている!」
 壁に描かれている世界地図・・・もといTO図を指差す。
「ナイトロス!南大陸の蛮族!ヒトのような姿をした悪魔どもは、こそこそと今でも生き長らえている!今こそ奴らを浄化し、神の力を思い知らさなければならない!」
「その通りである!」
「邪教徒に死の安息を!」
「神の軍団に神の加護を!」
 こうして帝国の更なる南進は決まっていった。後は皇帝の裁可を受けるだけである。




530 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/21(水) 00:56:21 [ XitU55gg ]
『管制塔、管制塔。こちらベティ14。帝国との国境から40キロメートル付近を飛行中。特に異常なし。引き続き警戒に当たる。』
『管制塔了解。』
 国境付近は、昼間は常に何騎かの飛竜が飛んでいて、帝国の動きを監視している。ここ数十年、帝国の侵犯など無いが。
『騎長〜、暇ですよ。ニホンの首相が来るのに、何でこんな辺境に居なきゃならんのですか。正直、首都の奴ら羨ましいです!』
『よくは知らないが、帝国に何か動きがあったようだ。件の首相が来た後は、エルビヌメインのオンボロ基地は大幅な改装工事をするらしい。そうなれば、少しは楽しくなるだろ?人もだいぶ増えるはずだ。』
『ならいいんですが。・・・航法士、現在位置は?』
『・・・・・東経149度20分、北緯49度50分。約30キロで西海岸に到達します。』
『Uターンして半島中央部まで戻り、その後帰還する。』
『了解!』
『了解・・・』
『よし、帰投する・・・』

531 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/21(水) 00:57:52 [ XitU55gg ]
『騎長!!五時方向に未確認飛竜接近!数は2!こちらに向かってきます!!』
『なにぃ?!』
 ゴバァ!
 紙一重で、相手の放ったブレスを回避する。鈍重なベティとしては、良い動きだろう。
『分かった!もういいから管制塔に緊急通信を後れ!!最大速力で帰還する!航法士は光弾を発射しろ!!』
『通信送ります!』
『光弾発射!進路は南南東を取ってください!』
 タタタタタタ!

532 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/21(水) 00:59:14 [ XitU55gg ]
 緩慢な動きで、帝国の飛竜は光弾を回避する。体勢を整えて追撃にかかるが、なかなか追いつけない。
『向こうは少し遅いな!振り切るぞ!』

 ・・・・・・・・・
『ベティ14より緊急通信!帝国のものと思われる飛竜に発見され、追尾される!速力に勝るもその差は僅か、振り切るのは困難とのこと!!』
 エルビヌメイン基地管制塔は一気に緊張が走る。
『管制塔より、ベティ14へ!兎に角回避しろ!今、飛竜をスクランブル発進させる!それまで我慢してくれ!!』
『司令部に連絡急げ!!』
『半鐘鳴らせ!!』
『くそ!よりによってこんな時に!』
『フランク隊三騎スクランブル!』
『飛行中のバブス06に途中まで誘導させる!』

533 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/21(水) 01:00:40 [ XitU55gg ]
 ・・・・・・・・・・
『ジーク02、異常なし。上空には航空ジエイタイのF15戦闘機編隊のみ。ニホン首相は無事にナイトロスの地を踏んだ。』
『ジーク01よりジーク隊員へ。このままフランシア軍港上空4000を哨戒飛行し、一時間後にアーヴィン隊と交代する。』
『『了解!!!』』
 張り合いの無い仕事だ。仕事じゃなきゃ、ニホンの首相の顔を拝むところなんだがな。
『ジーク13よりジーク01へ。軍港より西方向から、新たなジエイタイ艦隊。情報にあった、ジエイタイ追加派遣部隊と建設資材を満載した輸送艦隊と思われます。』
 防衛線の建設を他国に任せるってのは、どうなのかねぇ。『建設を助けてくれなければ、食料輸出は中止』とでも言ったのか?ニホンは断れないよな・・・『死ぬか作るか』って言われれば・・・。かわいそうに。今のニホンにはそれを断る力が無いのか。
『持たざる国の悲哀か・・・」
『ジーク01よりジーク02へ。大尉?何か言ったか?』
『何でもありません。引き続き任務を遂行します!』
 別のことでも考えようかな。
 ・・・ニホンの首相は、かなりの行動派らしい。風貌はライオンそっくりだそうだ。俺はこの目でライオンを見たことは無い。アスター出身の奴らが郷土料理で使う「雲海獅子」や「ステップライオン」の干し肉でその姿を想像することは、俺にはちょっと無理だ。
『うっ・・・』
 あの味を思い出す。干し肉の味は最低だった。竜人族の舌はどうかしてるんじゃないか。そもそも味覚というものがあるのだろうか?元狩猟民族、恐るべし・・・
 そんな話ではない!ともかく、周囲を引っ張るカリスマ的資質を備えてるリーダー、らしい。ゴシップ紙の記事なんであてにもならん!「反対派を粛清」なんて記事もあったし、信用ならん独裁者の可能性もある。まったく、ナイトロスはわけわからん国と手ェ組んだよな・・・

534 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/21(水) 01:02:00 [ XitU55gg ]
『司令部より緊急通信!緊急通信!』
 ・・・?司令部からの直通魔法通信が来るなんて珍しいな。
『北部国境地帯で、友軍飛竜が帝国竜騎士の飛竜と接触!地上待機の竜騎兵隊は全騎スクランブル準備!ニホン国首相の警護に当たっている竜騎兵は、そのまま任務を続行するがいつでも北に向かえる準備をせよ!繰り返す!!』
 こんな日に限って国境を侵犯してくるとは!タイミングが最悪だぜ!
『ジーク01よりジーク隊隊員へ!聞いての通りだ!このまま警備を続行するが、命令の変更に備えておけ!』
 ニホンの首相はどうするんだろう?この情報に触れたはずだし、そもそも彼らの長距離探査能力は凄い。既に知っていたのかも知れない。
 キィィィィン!!
 それまではるか上空を旋回していた航空ジエイタイのF15戦闘機が、旋回して北のほうに向かっていく。彼らの速度なら数分で到着できても不思議ではない。
 今のニホンの首相の顔が見てみたいな。ライオンのように勇ましいのか、家猫のように震え上がっているのか。
 世界が動き始めたようだな。




540 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/27(火) 23:27:14 [ XitU55gg ]
-----ナイトロス王国・作戦司令部-----

「結果的には、ニホン政府は我々に協力してくれるようです。防衛線の建設作業に参加してくれます。建設局の作業と合わせていけば、今年の秋口には防衛線を構築できるでしょう。」
 作戦司令部の会議は、前回ほどの混乱もなく粛々と進んでいた。
「情報局の総論として、今回訪問したニホン国首相は帝国に対して、敵対的感情を持ったようです。ニホン国民の意向は不明ですが、最終的に帝国迎撃に参加してくれるはずです。どの程度の参加かは、ニホンの選挙後に決まっていくでしょう。」
「戦略備蓄は徐々に減少しています。正直に言って、ニホン向けに取り崩している分をこっちにまわして欲しいです。」
「防衛線構築に向けての道筋は整ったが、それ以外はさっぱりか。ニホン関係の話題は後回しにして、行動を起こし始めた帝国について協議しよう。」
 陸軍参謀総長の言葉で、議題が切り替わる。
「空軍の分析では、先日領空侵犯してベティ型飛竜を追跡した帝国の飛竜は、帝国南部地域で使用されているごく一般的な飛竜のようです。およそ50キロ追尾した後、エルビヌメイン基地からスクランブル発進した飛竜を確認して退却したそうです。」
「国境警備隊から、帝国軍の斥候が残したと思われる痕跡をいくつか発見したとの報告が上がってきています。工作活動ではなく、進軍路の確認をする目的と思われます。」
「沿岸警備隊および海軍の哨戒艇が、海上境界線近くで演習している帝国海軍の大型ガレアス船を数回確認しています。東海岸と西海岸で、頻度はどちらも同じくらいです。」

541 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/27(火) 23:28:56 [ XitU55gg ]
「三軍からの報告から考えると、帝国は我が国と南大陸への侵攻を前提とした行動を始めたようです。しかし、帝国全体には軍の召集がかかっていないようですので、侵攻軍編成に向けての準備を始めている・・・以上が、情報局の見解です。」
「帝国軍の最新の動きは?」
 国軍大臣だ。挙国一致内閣成立で、戦時中の国軍最高責任者になった。
「先に述べた以外に、軍の活発な動きはありません。北部都市国家同盟で傷ついた部隊の補充をしているようです。有力諸侯と軍団や騎士団の長、枢機卿に教皇が帝都に集まって協議は始めているようです。あとは、近衛天馬騎士団と第一天馬騎士団の二個騎士団のみが、演習などの準備を始めたくらいでしょうか。」
「皇帝に教皇、各地の諸侯の間での話し合いはどうだ?」
「密偵の報告はまだ来ていません。ロクな話し合いはしてないことは、間違いないでしょう。」
「ハハハハハ!」
「その通りだ!」
 会議室には、若干乾いた笑い声が響いた。

542 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/27(火) 23:32:01 [ XitU55gg ]
------帝都近郊・近衛天馬騎士団本部------

「エーデルガルト騎士団長!失礼いたします!伝令からの伝言が二通届きました!」
「副団長?内容は何かしら?」
「一通は団長の父上・・・いえ、皇帝陛下のものです。『なぜ、会議に参加しない? そしていつになったら身を落ち着かせるのか?』です。」
 父上は心配性で困ってしまう。政(まつりごと)にもそれ位の気持ちで望んで欲しいものだけれど・・・
「騎士団の演習を始めるので、会議には参加できない・・・と伝えておきなさい。」
 会議とは名ばかりに、勝ったつもりで南大陸の領土分割の話し合いでもしてるんでしょうね。
「はっ・・・。結婚の話のほうはいかがしますか?」
「私はまだ25よ?それに、あんな変態ハゲと結婚させられるくらいならナイトロスに降伏した方がましよ!!」
 変態ハゲとは、とある有力諸侯である。良くない噂が常に立っている。
「団長、めったな事を言うものではありません!」
「あいつが私の夫になったら、間違いなくこの騎士団の騎士たちに手を出してくるわ!副団長はあんな男に言い寄られたい?」
「それは・・・イヤです。誇りある近衛天馬騎士団が卑しい人間の者になるのは。」
「そういう訳で結婚は今、考えていないと伝えておきなさい。それで、もう一つの伝言のほうは?」

543 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/27(火) 23:34:40 [ XitU55gg ]
「南方方面軍所属の竜騎士が、ナイトロス半島に入り込んだそうです。」
「ちょっと!その伝言のほうが重要じゃないの!で、内容は?」
 ナイトロスや南大陸の事なんて、ここ数百年の間全く伝わってきていない。
「途中でナイトロスのものと思しき飛竜を見つけて攻撃するも失敗。最終的には増援にきた飛竜に追い払われてしまったようです。」
「南方方面軍の飛竜と竜騎士は腕が低くはないわよね?」
「並以上のはずです。報告では、『こちらより速く、動きがよい。また、魔術師が乗っているらしく魔法攻撃を受けた。更に上空には何かがいた』とも伝えています。」
 魔術師?魔術師は飛竜に乗るものなのかしら?何かって何?古竜かしら?それとも謁見に来たというニホンの飛竜?
「こっちより速い・・・。天馬騎士団のペガサスなら、それよりも速いはずね。」
 ペガサスは、飛竜より速い。それは常識。確かに細かい動きは出来ないし、ブレスを吐くことも出来ない。私達の槍術と速さが取り柄なんだから!
「そのはずですよ。団長、ナイトロスは上が考えているほど野蛮人や逆賊ではないようです。先の北部都市国家同盟との戦いで、我が騎士団は少なくない被害を受けました。新人がだいぶ増えたのが気になります。」

544 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/27(火) 23:36:36 [ XitU55gg ]
 ここ一年で、従騎士からの繰上げで騎士団に入団した騎士が全体の二割くらいになるかしら。そして各天馬騎士団の伝統に倣って女性のみを叙任している。色々制約があって、戦力を整えるのに時間がかかってしまう。だからこそ・・・
「そんな新人を鍛えるために父上・・・皇帝陛下の召集を蹴って、第一天馬騎士団と共同で演習を始めるのでしょう?第二天馬騎士団も参加してくれるのかしら?」
「三日後には参加してくれます。『エーデルガルト騎士団長の呼びかけならば、喜んで参加させていただきます!』とのことです。」
「それは良い報せね。副団長、準備をお願いするわ。」
「御意のままに。」
 他の騎士団や軍団はこれといった行動を起こす気は無いらしいわ。近衛天馬騎士団と二つの騎士団は準備をして開戦に臨む。そして戦果を残して、私を貶した人間を見返して・・・!
「私は女帝になる!」
(また、団長の『出世病』が始まった・・・陛下のお子様の中で、ただ一人の女子であることがそんなに負い目なのかしら?そんなに気負いしなくても、団長には皇帝を継承する権利は充分にありますよ・・・)



610 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/04(火) 22:33:50 [ XitU55gg ]
 ナイトロス国旗を掲げた鋼鉄の船が、大洋を突き進んでいている。
「戦艦ダイヤモンドとエメラルド、配備につきました!いつでも発砲できます!」
「水雷戦隊も準備整いました!」
「ダイヤモンドは目標『アリエス』!エメラルドは目標『タウロス』!水雷戦隊は直進して統一雷撃を実施せよ!海上ジエイタイに恥ずかしい所を見せるわけにはいかない!」
 ニホン国オガサワラ諸島近海・・・燃料事情の厳しい海上ジエイタイも参加した、大規模な演習が始まろうとしている。ジエイタイは演習そのものには参加しない。
「僚艦のクラウドドラゴンに通達!搭載飛竜の発艦準備始め!」
 ナイトロス海軍の力と破壊力を示すべく作られた、第一飛竜機動艦隊が遂に揃い踏みしたのだ・・・!艦隊司令官は感極まっていた。艦隊決戦の第一艦隊・航空決戦の第一飛竜機動艦隊、海軍の保有艦船数を減らしてまで実現した計画なのだから当然だ。
『ダイヤモンド、魔探射撃開始します』
『エメラルド、魔探射撃開始します』
『水雷戦隊、重巡を護衛に突撃開始する!』
 飛竜母艦ブルードラゴンは、かつて無いほどの喧騒に包まれていた。艦橋の窓からは発艦準備中の飛竜の並ぶ甲板と護衛艦、前方には戦艦二隻、陣形の外側にジエイタイの艦船が数隻が見える。

611 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/04(火) 22:35:04 [ XitU55gg ]
 ドン!ドドン!
「エメラルド発砲開始」
「ダイヤモンド発砲開始」
 閃光と共に重い砲声が響く。目標としている廃船までは戦艦から約十海里、普通の船なら全くの無駄弾・・・それどころか、殆どの国の軍艦は主砲の射程が十海里も無い・・・が。
「着弾観測飛竜より報告!エメラルド、近、近、遠!ダイヤモンド、近、遠、遠!悪くない精度です!」
『ダイヤモンド、第二射!』
『エメラルド、第二射!』
 ドン!ドドン!
 ・・・・・。
「だんちゃーく!」
「エメラルド、近、近、至近!ダイヤモンド、近、至近、至近!散布界が狭まっています!」
『ダイヤモンド、第三射!』
『エメラルド、第三射!』
 ドン!ドドン!
 ・・・・・。
「だんちゃーく!」
『ダイヤモンド、狹叉!』
『エメラルド、狹叉!』

612 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/04(火) 22:35:50 [ XitU55gg ]
「たった三回の射撃で、狹叉するとは!何回も斉射していた頃とは大違いだな。両艦に通信!斉射開始!」
『エメラルド、了解!』
『ダイヤモンド、了解!』
 通信が終わって数十秒後には二つの戦艦の主砲は火を噴き、少しして目標からも爆炎が飛び散った。
「命中!!」
『水雷戦隊、目標から2000メートル!統一雷撃開始!』
 ほどなく、スクラップ同然の二つの船に数本の水柱が上がり、あっという間に海へ沈んでいった。
 ・・・。
「司令!ダイヤモンドは二発、エメラルドは一発を命中させました。水雷戦隊も、魚雷を二本ずつ命中させています!第一艦隊の連中も驚くでしょう!」
「ふむ、魔探の力とはいえ中々のスコアだ。だが、我々の本業は飛竜による打撃だ!飛竜部隊を発進させろ!目標『レオ』にはクラウドドラゴン飛竜隊、目標『キャンサー』にはブルードラゴン飛竜隊をあてる!」
「了解!」

613 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/04(火) 22:36:53 [ XitU55gg ]
 旗艦・ブルードラゴンの竜騎兵達は手際よく発艦していくが、クラウドドラゴンの竜騎兵達はやや手間取っているようだ。
「訓練時間が短いからしょうがない。本来ならば一年近く訓練する必要があるのだ。帝国との開戦がそう遠くない未来にある以上、頑張ってもらうほかない。攻撃隊はエミリー隊の誘導で目標に迎え!」
 ・・・。
「随伴のエミリー隊より報告!これより攻撃を開始する!」
 標的艦は50海里近く離れているので直接見ることが出来ない。
『「レオ」艦上構造物大破!』
『「キャンサー」左舷傾斜!』
 通信の内容を聞く限り、攻撃に関しての問題点は無いようだ。
「目標の沈没後、帰還せよ!」
「思ったほど悪くない戦果ですな!ジュディ、グレース、ジルの三隊は、ヴァル隊にしごかせた甲斐があったというわけです。」
「命中率はブルードラゴン飛竜隊で約八割、クラウドドラゴン飛竜隊で七割です。実戦にも使えるレベルになっています。」
「ダイヤモンド及びエメラルドより報告!『魔探の威力は絶大なり』です!」
 海上ジエイタイにも充分見せつけることが出来ただろう!

614 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/04(火) 22:39:37 [ XitU55gg ]
「司令!海上ジエイタイ『キリシマ』より連絡がありました。ジエイタイ艦艇も実弾射撃を行うとの事です!」
「キリシマ?あぁ、ヨコスカ所属の艦隊旗艦か。了解と伝えろ。」
「ジエイタイ艦艇、目標『オフィユカス』に砲門向けました!」
「な?!ジエイタイの船にそんな長射程の大砲が積んであるのか?!」
 目標からは10海里以上20000メートルくらい離れている!豆鉄砲のようなアレで撃つのか!せいぜい軽巡の主砲くらいの大きさしかないというのに!
「ジエイタイ艦艇発砲!」
 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
「な、なな・・・」
 ガトリング砲よろしく連射している!あんなに連射して砲身が焼きつかないのか?!
「ほぼ全弾が『オフィユカス』に命中している模様!」
 標的艦のほうを見ると、なるほど既に黒煙を上げて沈没しようとしているようだ。
「これがジエイタイの力か。ゴシップ紙のヨタ話も、あながちホラではなかったのだな。」
 技術力の差と言うやつか。海軍上層部に伝えるべきことがまた一つ増えたようだ。
「キリシマに御苦労と伝えてくれ。これより我が艦隊は進路を北にとり、ヨコスカ港に向かう!ニホン政府との友好の掛け橋という重大任務だ!」
「よーそろー!おもかーじいっぱーい!」
「機関、第三戦速!よーそろー!」



621 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/08(土) 01:53:17 [ XitU55gg ]
『ジーク02より各騎、及び同行するダイナ07へ。高度を4000から500まで落とす!覚悟しろよ!』
 今年も雨の続く季節がやって来た。眼下には真っ白な雲が広がっている。この雲が綺麗さっぱり無くなると夏になるわけだが。まったくこの時期は雨でびしょ濡れになるし、視界が悪くなる。ニホンが来て少しは天気も変わると思っていたが、そんなこと無かったか。
『突入!』
 降下をはじめる。当然あっという間に辺りは霧に包まれたようになり、四方八方から水が降りかかってくる。
 ザー・・・
 視界が少しは良くなり、降りかかる雨が後方からだけになる。雲からは抜けたが、やはり視界が悪い。灰色の海がもやのかかったように見える。
『ジーク02より各騎へ。降下速度を100ノットに落とす!』
 スピードを落として慎重に高度を確認する。高度を誤認して海に突っ込んだら、とんだ笑い者だ。
『降下やめ!現在の高度を維持する!』
 だいたい高度500か。航行する船舶も、とりあえず見えるな・・・。
『海峡西出口の監視を始める。』

622 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/08(土) 01:56:07 [ XitU55gg ]
 視界がすこぶる悪いが、とりあえず確認していくか。
『ジーク02よりダイナ07へ。三時方向、大型艦船複数確認。海軍のものと思われるが、確認してくれ。』
『こちら、ダイナ07。あれは第一艦隊だ。補給の為にフランシア軍港に向かっている。』
 第一艦隊か。第一飛竜機動艦隊が留守にしている間は、この海峡の守護神なわけだ。
『了解!誤認を防ぐため、第一艦隊に連絡を入れておけ。』
『ジーク05よりダイナ07へ。九時方向、大型船舶。確認してくれ』
『こちら、ダイナ07。ニホン国籍の民間輸送船だ。オキシゼ港から鉄鉱石を運搬中。』
 ニホンとの貿易が活発になったせいか。近頃はニホンの大型輸送船をたくさん見かける。
『ジーク09よりダイナ07へ。一時方向、大型軍艦確認。』
『こちら、ダイナ07。コバルタ海軍の戦艦チーターと確認。南大陸東海岸でのアスターとの共同演習に向かっている。』
 ダイナ隊の隊員は化け物か?矢継ぎ早に言われても、慌てず司令部に連絡して俺達に返事する。どこにそんな処理能力があるんだろうか。

623 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/08(土) 01:58:50 [ XitU55gg ]
『ジーク02より、各騎へ。もう少し西に向かう!』
『『了解!!』』
 ・・・。
 本当の海峡の出口だ。これより先には海しかない・・・のだが、現在はニホンのオガサワラやイズという諸島がある。らしい。
『ジーク02よりダイナ07へ。12時方向、小型艦。』
『ダイナ07。沿岸警備隊の哨戒艇と確認。』
 ザー・・・。
 雨が強くなってきたな。ほんとに視界が悪い。高度500でも厳しいな。
『ジーク02より各騎へ。高度を200まで落とす!』
『『了解!』』
 索敵範囲が狭まるが、まぁ仕方ないさ。
『もう少し哨戒飛行したら帰還するぞ。』

624 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/08(土) 02:01:09 [ XitU55gg ]
 ・・・。
『ジーク02より各騎へ、そろそろ帰還するぞ!』
 晴天ならもっと長時間飛べるんだけどなぁ。相棒も体力を消耗しているし、俺自身も寒くてしょうがない。
『『了解!』』 『あっ!!!』
『何だ?!』
『ジーク13よりジーク02!哨戒艇の右方向2000付近に何かが・・・あれ?』
『別に何もないぞ?』
 勘の鋭いリサにしては珍しい見間違いか?灰色の海と波しか見えない。
『いえ、確かに何か棒のようなものが出ていたように見えたんですが・・・』
『誰か見たか?』
『いえ』 『見ていません』
『ダイナ07。沿岸警備隊に問い合わせて、あの哨戒艇に聞いて見てくれ』
『了解。』
 ・・・。
『あの哨戒艇は、異常は無いと言っています。』
『リサ、お前はゴミを見間違えたんじゃないか?幻かもしれないぞ?』
『そんなこと無いですが・・・確かに・・・』
『もういい。帰るぞ。ジーク02より、各騎へ。フランシア基地に帰還する!』
『了解!』
『了解・・・。』

625 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/08(土) 02:05:09 [ XitU55gg ]
 ---同日夕方・海峡東側、新造駆逐艦「ウィンタームーン」---
「おい、魔探担当班!取り付けた海上魔探に異常があるぞ!」
「どれどれ、・・・確かに。魔法回路に異常があるのかな。」
 魔探は、ほぼ真下に金属製の何かがいる事を示している。
「深度が約300メートル。全長は70ないし80。金属製で生命反応あり、およそ15ノットで東進中、か。」
「大物のクラーケンか?金属反応は出ないはずだが・・・」
「サンバーンフィッシュかスティックスシャークの群れなら生物でも強い金属反応が出るが、そいつらは低緯度地帯にしか生息してないしなぁ。魔探はどうだ?」
「やはり魔探には特に異常は見られない。機関や舵にも異常なし。」
「仕方ない。基地に通信を入れろ。一度ドックに戻って魔探の精密検査をする、と。」
「よーそろー!」

626 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/08(土) 02:07:39 [ XitU55gg ]
 ・・・フランシア基地・共同食堂
「寒い・・・」
 哨戒飛行してきた連中と、仲良く暖炉の前を占拠している。着替えたと言ったって、そうすぐに体温は上がらん。
「隊長に指揮してもらえば良かった。」
 隊長は「帝国の動向を想定するため、しばらく現場から離れる」とか言ってたが、本当は職務忌避をしたんじゃないか。いや、隊長に限ってそんなことはないよな。
「おばちゃん!熱いコーヒーを!砂糖多めで!」
 食堂のおばちゃんに飲み物を頼む。疲れている時には砂糖も入れると・・・
「250シリングだよ。砂糖抜きなら200シリングだね。」
 足元を見られているな、これは。物価は高止まりで一向に下がる気配が無い。というより、これ以上下がらない状態だからか・・・。
「砂糖抜きで・・・。」
 ぼったくりババァ・・・ではなくて食堂の職員からは目を離そう。胸糞悪くなる!
「アレはゴミじゃないし、見間違いでもない。でも・・・」
 リサは、何か独り言を言っている。風邪を引いたのかもしれないな。軍医に見せて明日は休息させておこう。
「空軍気象局の予報なんて当たったためしがない!長雨は一週間後から始まるんじゃなかったのか?!」
 いや、全くだ。相棒の体調の変化を観察しているほうが、よっぽど天気があたる。

627 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/08(土) 02:10:55 [ XitU55gg ]
 そういえば、今日は少し人が少ないな。夕食前とは言っても、もっと人が多くてもいいはずなんだけど。その原因を考えてみると・・・
「ジエイタイの奴等の姿が見えないな。」
 以前の領空侵犯事件、以降ジエイタイの動きはピリピリしていたが、食堂には日中必ずジエイタイ隊員が何人かいたはず。
「ジエイタイの人?あぁ選挙の結果が出るからそれを見る、とか言っていたね。アレックス大尉!ハイ、コーヒー砂糖抜き。」
 金は払ってコーヒーを受け取る。
「選挙!二大政党の一騎打ちとかいう選挙か。」
 ニホンのメディアはそう言ってるらしい。ジエイタイ隊員は呆れた口調で言ってたな。ま、ニホン国民でない俺が口をはさむ問題ではないか!
「あちっ、このコーヒー熱すぎるぞ!」




642 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/11(火) 01:12:27 [ XitU55gg ]
「抜錨!」
「よーそろー!」
「ニホンはすごい国だな。是非とも転移前の姿を見たかった。」
 朝方、ジエイタイとの合同訓練を終えた第一飛竜機動艦隊は、母国に向けて動き始めた。
「司令官殿、基地から外出できなかった事を兵士達は酷く残念がっていました。」
「参謀、それは仕方の無いことだ。今のニホンは治安がだいぶ不安定らしい。ジエイタイの他にアメリカとかいう国の駐屯兵まで使ってトーキョー首都圏の秩序を辛うじて守っている・・・と警察の人間が言っていたではないか。」
「我々と一般人を接触させたくなかったのかもしれません。」
「ニホン人は、戦争に対するアレルギーがあるみたいだからな。基地の外の抗議活動には、うんざりしてしまったよ。」
「エメラルドの空砲一発で逃げ出すような連中ですがね!」
「人間とは、高邁な思想より一個のパンを選ぶものなのだよ。」

643 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/11(火) 01:17:02 [ XitU55gg ]
「タグボート、我々を切り離します!」
「海上保安庁の巡視艇の誘導に従い、ボウソウ半島南端まで現在の速度を維持!」
「ふむ・・・上空の航空機はどうだ?」
「ジエイタイからの情報では、P3CとRF4、AWACSの三機種と思われます。我々の情報を収集しようとしていると思われるのですが・・・」
「魔探室!こちらからは何か掴めたか?その他の探査は?」
『こちら魔探室!航空機の材質等以外は特に探知できません!また、11時方向14000メートル、海底に軍艦と思しき反応あり。沈没船に非ず、生命反応と微弱な水中推進音を確認。』
「海底の軍艦は、『潜水艦』のことでしょう。隠れているつもりなのでしょうか?」
「ちょっかいは出すな。もう少し様子を見よう。」
「彼らのレーダーと我々の魔探は、干渉しあわないようです。」
「そうか、詳しいことは学者達が何とかしてくれるだろう。」
「司令!航空母艦が見えます!」
「アレがキティホークか。ジエイタイのものではないらしいな。動けない状態では、陸に打ち上げられたクジラのようなものだ。」
 キティホークは、横須賀で燃料不足により身動きできていない。艦載機は近くの基地に移管されている。
「細かい議論は後にしよう。ブルードラゴンとクラウドドラゴンに通信!直援騎を上げろ!」
「よーそろー!」

644 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/11(火) 01:22:11 [ XitU55gg ]
・・・・・
「ニホンの選挙の結果はどうなんだ?」
 手近にいたジエイタイ隊員に聞いてみた。新聞ではタイムラグがあって、結果が何日後に出るか分かったもんじゃない。
「選挙結果は、与党が辛うじて過半数を取ったのであります!」
「過半数か。そうか、ありがとう。」
 過半数か。実際、どうなんだろう。
「大尉どのに言われてとても光栄です!」
 ・・・やっぱりジエイタイの奴等は生真面目一本だ。よく管理された軍隊ではあるようだ。うちの軍とは大違いだな。
「大尉。」
「隊長!・・・大丈夫ですか?」
 隊長の目の下にはクマが出来ている。姿が見えなかったのは、本当に忙しかったからなのか。一瞬でも隊長を疑った私は駄目な軍人です・・・。
「これ位なら、な。それよりちょっと耳よりな話がある。耳を貸せ。」
「耳?」
 何だろう?
「それはな、・・・・・・・。」
 ・・・!
「もちろん、喜んで!!」


667 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/16(日) 17:42:40 [ XitU55gg ]
「どうしても駄目なのですか?」
「国からの通達です。魔法関連技術は、輸出もレンタルも基本的に不可能です。」
「もういい!君では話にならない!国軍大臣閣下に取り合っていただく!!」
 コバルタ連邦の駐ナイトロス大使は、声を荒げてナイトロス軍将校の居る部屋から退出していく。
「結果は同じだと思いますよ?」
「・・・・・。」
「今度のアレを、我が軍一同は楽しみにしています。」
 ・・・・・
「・・・大使。仕方の無いことです。」
「しかしだ。こちらの提案は破格だったのだ!新型戦艦を二隻は建造できる金額を提示したのだぞ?!」
「金で動くことは無いでしょう。自前で作り上げろ、という事です。」
「上からは激しく突かれているのだ。光弾魔法なり長距離魔法通信なり魔探を開発し終わる前に、私の首が飛ぶ!」
 高度な魔法関連の技術は、ナイトロスの独占に近い形になっている。ナイトロスは、これらの技術の国外への流出を厳しく規制している。

668 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/16(日) 17:47:44 [ XitU55gg ]
「このところ、陸海空全ての分野でナイトロスに差をつけられつつある事に、指導者達は酷く苛立っているのだ。」
「竜騎兵の数は、こちらの方がずっと多いと記憶していますが?」
「君は観戦武官として、何度もナイトロス空軍飛竜を見ているはずだ。フランク型飛竜やジョージ型飛竜に、我が国で対抗できる飛竜はどの位いると思う?」
「主力のスピットファイアならMk\以降なら大丈夫でしょうか。タイフーンもかろうじて可。ハリケーンは完全に駄目です。他の飛竜もあてには出来ませんね。」
 スピットファイアはMk]Uまで配備されているが、その数は少なくてほとんどがMkT、MkU、MkXになっている。
「それを考えれば、大した優位ではない。数だけならアスターはもっと多い。おまけにナイトロスには、自慢の対空兵器群がある。最もマシな空軍でこれだ。陸軍や海軍では目も当てられんよ。」
「海軍は、まともに戦えるのはチーター級戦艦二隻のみ。旧式戦艦や帆走戦艦をいくら集めたところで、ヘブンキャッスル級戦艦とダイヤモンド級戦艦には歯が立たん。陸軍は・・・購入したD34とD54戦竜なしには、ナイトロス国境を突破できないだろう。」
 ナイトロス・コバルタ国境は、北大陸への動員が始まりつつあり幾分手薄になっている。だが、コバルタにはナイトロスを侵略する理由は無いし、する価値も無いと判断されている。
「そのD54より一世代進んだ戦竜をナイトロスは導入したのです。」
「つまり、コバルタはナイトロスに先手を取られ、差をつけられている。やはり、かつての『内戦』に手を出したのが間違いだったのだ!」
 約100年前・アスターで勃発した内戦の初期、コバルタは多数の兵力を治安維持目的でアスター内に派遣し、多くの被害を出して撤退した。この時までナイトロスとの国力の差は殆ど無かったが、この損失によってコバルタの成長が大きく鈍り、ナイトロスに突き放される結果になった。
「過去の歴史を嘆いても仕方ない。後で本国と連絡を取ろう。そして今度来る彼らには、せめて頑張ってもらいたいものだ。」

669 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/16(日) 17:48:42 [ XitU55gg ]
 ---アスター連邦・某設計局---
「全く駄目だな。」
「今度は空気中の埃にも反応している。さっきは近くの山すら探知できないくらい鈍かったというのに。」
「魔力の流れには問題無いし、術式にも異常は無い。」
「設計図通り作っているんだが・・・。」
 その設計局では、(ナイトロスから非合法に調達した)設計図から魔探システムのプロトタイプを製作していた。
「ナイトロスは、よくこんなものを作り上げられたよなぁ。」
「だが、上はどうにかして作り上げろと言ってきているし・・・。」
「政治将校への報告書には、『魔探の模倣は困難。購入したほうが早い』と書いておくべきだ。」
「一から作っていたら、何年かかるんだろう?砲発射魔法の開発チームに所属しておけば良かった!」
「こんなポンコツを実戦で使うなら、ペトリヤコフ2で強行偵察してきた方が、よほど有益な情報を得られるに違いない。」
 ちなみに、魔探の探知能力を制御する部分は、魔探システムの完成後に別途で取り付けられる。
「昼食を取ってから、もう一度検討しなおすぞ。」

670 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/16(日) 17:49:41 [ XitU55gg ]
「こんな悠長にしていたら、昔ならとっくに辺境でラーゲリ生活だ。時代は変わったなぁ。」
 寿命が100年を超える竜人族にとっては、かつての内戦はそれ程遠い出来事ではない。
「政治将校も、昔のように威張るだけの無能はほとんどいなくなった。何より、こんな会話をしてチェーカーが来なくなったのが一番だな。」
「全くだ。・・・ところで整備兵をしている友人から聞いたんだが、何日か前に西アスター戦竜軍団の一部が船に乗ってどっかに行ったらしい。一部の飛竜も北に向かって行ったとか。」
「あの精鋭が?ナイトロスに売った戦竜に同行したのもいるって聞いたが、今度は何をすんだろう?」
「海軍はコバルタと演習を始めるって言うし、そろそろ戦争が近いのかもな。」
「戦争か。大祖国戦争みたいな悲惨な戦いにならなきゃいいんだが。」
「相手は時代遅れの、というより中世の帝国だし、負けるはず無いだろう。ナイトロスが北大陸を失ったって、南大陸までは喪失を許すか?」
「ここまで来たら、昔のようミハイル戦竜に乗って帝国兵を吹き飛ばしてくれる!」
「MR戦竜シリーズは、もう旧式だ。若くは無いのに無茶な事を言わないでくれ。」
「そうだったな。今、書記長同志が我々に求めているのは、前線で戦う事ではなくて兵器の開発だ。まぁ午後も頑張っていくか・・・。」
「ウラー・・・」
 共産主義の宿命である労働意欲の低下は、内戦終結後も改善はしたが無くなってはいない。



676 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/17(月) 22:30:37 [ XitU55gg ]
>>673
スペック厨になりそうだったので、あえて表現をぼかしてたんですが・・・。正直、すみませんでした。以下のものは参考程度に。

飛竜:名前は現実世界の航空機と対応。ただし、当該機種からの性能の劣化は、ナイトロス<コバルタ<アスター=その他
そして高性能/高速機種に対応する飛竜になるほど、その機種からの性能の低下は激しい。

制空戦闘飛竜(全長5メートル前後)
オスカー、ジークなど 敵飛竜と戦う。本格的な地上攻撃は苦手。
攻撃飛竜(全長5メートル前後)
ジーン、ジルなど 二人乗りで地上攻撃が主任務。急降下攻撃も出来なくは無い。飛竜との戦闘は苦手。
爆撃飛竜(全長5メートル前後)
ヴァル、ジュディなど 二人乗りで地上攻撃が主任務。急降下攻撃を得意とする。飛竜との戦闘は苦手。
多目的攻撃飛竜(全長5メートル)
グレース 二人乗りで攻撃飛竜と爆撃飛竜の両方を取り合わせた飛竜。飛竜との戦闘も一応可能。
大型爆撃飛竜(全長10メートル前後)
ベティ、ネルなど 三人乗りで地上攻撃を行う。航続距離が長いので偵察なども行う。動きが鈍く飛竜との戦闘は非常に苦手。
偵察飛竜(全長5〜10メートル)
ダイナ、エミリーなど 二人乗りか三人乗りで偵察が主任務。必ず、長距離の魔法通信が出来る兵士が乗り込んでいる。飛竜との戦闘は苦手。地上攻撃・対艦攻撃を出来るタイプも存在する。
地上襲撃飛竜
イリューシン2、10 アスター独特の飛竜。低空からの地上攻撃を行う。この点はかつての竜騎士の攻撃法に近い。非常に頑丈で、中途半端な攻撃では撃破できないとされる。

677 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/17(月) 22:37:25 [ XitU55gg ]
軍艦:ナイトロス海軍の基準。現実のド級戦艦・同時代の軍艦より、性能が低い。

ヘブンキャッスル級戦艦
ヘブンキャッスルとレッドキャッスルの二隻。排水量17000トン、全長155メートル、速力14ノット、レシプロ蒸気機関18000馬力。30センチ連装砲×4(射程22Km)、10センチ単装砲×14、対空ガトリング砲×6
それまでの戦艦を完全に旧式化した画期的な戦艦。水上戦闘艦としては最高の攻撃力と防御力がある。空からの攻撃に対処する能力に劣るが、撃破できる飛竜は存在しない。
ダイヤモンド級戦艦
ダイヤモンドとエメラルドの二隻。排水量18000トン、全長160メートル、速力16ノット、魔法推進機関24000馬力。長砲身28センチ連装砲×3(射程20Km)、10センチ単装砲×20、対空ガトリング砲×6、高角魔導砲×6、両用魔導砲×4
防空能力を高めた戦艦。高性能魔探搭載。飛竜母艦や輸送艦の護衛が出来るようになっている。その分打撃力は低下した。新開発の機関を使用し、速力が増加。
ブルードラゴン級飛竜母艦
ブルードラゴンとクラウドドラゴンの二隻。ブルードラゴンは排水量10000トン、全長170メートル、速力15ノット、魔法推進機関16000馬力。8センチ単装砲×2、対空ガトリング砲×4、高角魔導砲×2。クラウドドラゴンは排水量11000トン、魔法推進機関18000馬力。
世界初の飛竜離着艦専用艦。ブルードラゴンの運用実績から学んで研究・調整し、クラウドドラゴンの方が船体が大きくて重いが速力は同じで、搭載できる飛竜が多い。艦自体の攻撃力は無い等しい。
重巡洋艦
排水量が5000から7000トンの軍艦。水雷戦隊の突入援護などを行う。主砲は15センチ連装砲が主流。
軽巡洋艦
排水量が3000トン前後の軍艦。水雷戦隊の旗艦などを務める。主砲は10センチ連装砲が主流。
駆逐艦
排水量が1000トン前後の軍艦。駆逐艦の用途に合わせて、魚雷発射管、8センチ単装砲、各種対空火器の設置数が異なる。
装甲艦、フリゲート、コルベット、スループ、ガレオンなど
かつては海軍の主力。完全鋼鉄製の軍艦が増えた為、ナイトロスでは特に整理が進む。その他の国では、未だに主戦力であることも多い。

678 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/17(月) 22:42:45 [ XitU55gg ]
戦竜:騎兵の攻撃力不足を補うべく投入された。大きさは5〜10メートル。時速10キロぐらいと低速。

D34/85
中型戦竜。飼育の手間がそれ程かからないので、多数配備された。
D54
D34/85に代わる主力戦竜。ブレスの威力を高めた他、強靭な生命力を持つ。
D62
D54から発展した主力戦竜。
D64
走攻守全てに優れる主力戦竜。
D72、D80
騎兵、歩兵、大砲、戦竜、トーチカなど、あらゆる地上目標を破壊できる能力を持つ。ブレス発射/移動時の姿勢維持が特に優れている。アスターからは輸出されていない。
ミハイル・ロマノフ(MR)T〜V
敵戦竜撃破を主目的に投入された重戦竜。ひたすら重装甲で高い攻撃力。内戦中に投入された戦竜は全て撃破できた。当時の戦竜乗りの間では、乗り心地が最も悪いと評される。現在では退役が進んでいる。
ZD57
戦竜が総じて空からの攻撃に脆かったために配備された対空戦竜。空に向けてブレスを撃つ以外にも、緊急時には地上に向けて攻撃する。射程が短いので、新型対空戦竜の開発が急がれている。

679 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/17(月) 22:49:17 [ XitU55gg ]
対空魔法・高射(高角)魔導砲、魔導カノン砲

対空魔法は、魔法陣型。地上に配備。他二つは普通の高射砲やカノン砲と外見の差は殆ど無い。この世界は、通常の高射砲は未開発。

こんなところですか。




688 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/10/22(土) 00:54:32 [ XitU55gg ]
>>686-687

日本人技官A「知っているか?今度来る魔術技官は女性らしい。それも『若い』、だ」
日本人技官B「何だってェェ?!!」
日本人技官C「この世界の事だ。人間でなくても、エルフや猫耳、兎耳の獣人かもしれない!」
A&B「・・・ゴクリ。」
ナイトロス技術将校「失礼する!今日より当『ローレライプロジェクト』の、魔法機械担当技官となる新任を紹介する!」
A&B&C「・・・・・。」
???「失礼します!」
 若さ溢れる声と共に入室したのは、艶やかな肌と羽、尻尾、高い身長・・・・・・・・鱗を持つ・・・
竜人族女性技官(新人)「今日付けで着任致しました!魔法回路に携わってまだ日は浅いですが、何卒よろしくお願いします!!」
日本人技官A「おのれぇ!!アスターめ!!!」
日本人技官B「失礼ですが、お年は幾つですか?」
竜人族女性技官「今年で32(成人年齢は40)になります。」
日本人技官B「お若いですね(棒読み)」
日本人技官C「フッ・・・」

※この物語はフィクションです。物語の進行とは関係がありません。

こんな感じですか?頑張ってみましたが
どう見ても爬虫類です。
本当にありがとうございました。