344 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/02(土) 00:08:33 [ tR.ESYHI ]
------王国上院議会------
「ニホン国の要求は食料品と戦略資源です。詳しい内容はお手元の資料をご覧になって下さい。ナイトロスの見返りは、金の支払いの他、ニホン国資本の国内投下、資源の共同開発、技術の提供などです。なお、条約締結に関しては相互安全保障条約の同時締結は見送られました。ニホン国内の法整備が整えられてから、締結する予定です。今回は、ニホン国のジエイタイが海外研修名義で、派遣されてきます。また、ニホン政府は引き続き南大陸諸国との交渉を続けるため、わが国の外交団をオブザーバーに指定してきました。」
首相が決定事項を述べていく。外交交渉の開始から一週間というスピードで、友好条約の締結に成功した。
「質問としては、ニホン政府は破綻した帝国との再交渉は行うのでしょうか。また、ニホン政府はこちらの要求する資金を用意できるのでしょうか?」
最大野党の党首が意気揚揚と質問する。昨今の下院での首相とのやり取りが大人気ないと、新聞で批判されたことを気にしているのかもしれない。
「ニホンの「円」とナイトロスの「シリング」は通貨としての互換性がまだありません。よって、ニホン政府は支払いを貴金属のインゴット、主に金での支払いをするそうです。概算では、金一グラムはおよそ1500円、6000シリングですので、1円は4シリング程度の価値があるといえます。政府・財務省は妥当な取引であると判断しました。次に帝国に関してですが、ニホン政府は交渉の続行は不可能と判断したようです。『主権国家として、帝国の要求は飲めない』との談話が発表されています。」
帝国の要求は、ニホン政府を憤慨させるのに充分な内容だったらしく、交渉は続行されないらしい。最悪の事態である「ニホン国の敵対国家化」は避けられたのだ。ナイトロスも譲歩を余儀なくされたが、ニホン政府との友好条約締結には成功した。これは帝国に対して大きなアドバンテージとなるだろう。
「では、食料品や資源の高騰が予想されますが、それにはどのようにして対応しますか?ニホンは食料自給率がかなり低いと聞いておりますが。」
「こちら側が飢餓に陥るほど食料品を輸出するわけではありませんが、我が国の農鉱業生産能力を最大限生かして影響を最低限に抑え、問題が起きれば備蓄資源を放出する予定です。また全く机上の計画段階ですが、東大陸にニホン国民を移民させて農業生産に当たらせることも考えています。危険を承知で行く人がどの程度移民するのか、という問題はありますが。」
「最後に、最新の帝国の情勢はいかがなのでしょうか。」
345 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/02(土) 00:10:34 [ tR.ESYHI ]
「帝国は、北部都市国家同盟の最終防衛ラインまで到達しています。同盟軍は山岳地帯に篭って最後の抵抗をしているようですが、もって半月でしょう。また、帝国軍は損傷した部隊と予備部隊が南下を始めているようです。いったん帝都に戻り、部隊の再編成を行うと考えられています。空中部隊は四ないし五個竜騎士団、二個重装竜騎士団、その他に皇帝直属の近衛竜騎士団、近衛天馬騎士団、オスミア国教会直属の三個竜騎士団が帝都に向かったようです。枢機卿会議で聖戦が発動されるのは間もなくと思われるので、準備が整えば我が国に向かってくると思われます。」
「帝国が今すぐ向かってくる可能性は?」
「伝統的に、帝国軍は飛竜などの空中部隊だけでは攻めてきません。陸上部隊が揃った上で侵攻してくると思われるので、半年程度の余裕はあると思います。」
その後は、問題なく審議は進んだ。そして上院議長が採決を取る。
「これより採決を行います。内容は、ニホンに対する友好条約締結に関する政令第103号、戦時体制移行に対する政令第104号、緊急予算に関する財務省令第97号、最後に帝国に対しての非難決議です。」
合わせて120議席の上院議員達が投票をしていく。下院で案の修正と根回しは既に行われていたので、これといった問題は起らなかった。
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・
・
「採決の結果、全ての法案は賛成多数により可決されました。」
346 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/02(土) 00:13:06 [ tR.ESYHI ]
----フランシア基地----
「航空ジエイタイの受け入れですか?!いや、イヤではないですが・・・」
「航空ジエイタイの先遣隊をこの基地に派遣してくるそうだ。フランシア市周辺で一番でかい飛竜用の基地はここだからな。陸上ジエイタイは対空部隊が派遣されて来るそうだ。」
いやね、そんな事は分かってますって、隊長。
「いきなり来るわけじゃないですよね?」
「もちろんそうだよ大尉。一週間もすれば、ジエイタイの工兵部隊が基地造成のために派遣されてくる。本隊が来るのはその後だな。」
そうだよなぁ。こっちの受け入れ準備が出来る前に来るはず無いよな。でも・・・
「ここに来るのはいいのですが、ここに来るよりは国境近くの防衛線付近に展開してもらったほうがうれしいです。」
首都の基地に来るのは構わないが、宣伝の役に立っても実戦で使えなくちゃ意味が無い。首都近辺が戦場になった時は、この国が北大陸と首都を放棄するときだ。
「法律の問題があるらしいからな。『まずは安全な場所に派遣』ということだろう。それに、いきなり前線に立たれても連携が取れなくてはこっちも困る。」
そうなのかな。連携を取れるようになってから、前線に来てもらったほうがいいもんな。法律の問題のほうが曲者っぽいぞ。往々にして法律問題は解決に時間がかかる。戦争が始まる前に来て欲しいもんだ。
「先遣隊はここに住むんですか?この基地は宿舎はたいして大きくないですよ。」
347 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/02(土) 00:14:12 [ tR.ESYHI ]
「しばらくは、どこかのホテルに仮司令部でも置くのだろう。この基地をどのくらい拡張するかは・・・」
ここまで言い終えたところで、伝令が来た。
「お二人とも司令に呼ばれていますよ。飛竜部隊の配置転換と、ニホン軍の事で会議を開くそうです。早めに来てください。」
肩をすくめてしまう。昨日の上院議会の終了後に、ナイトロス全軍は平時から戦時体制に移行した。この基地には南大陸に配備されていた多くの飛竜部隊がやってくるはずだ。それに、この基地の飛竜部隊も場合によっては配置転換になるかもしれない。
「ジーク隊は首都で惰眠を貪るんですかねぇ。ウチの部隊は、他の部隊に胸を張れるだけの実力の持ち主ばかりなんですよ!」
「その辺は正直分からないな。上がこの隊の力をどう見てるかによるな。それに、首都防空もジーク隊に課せられた誇れる任務だ。」
戦争は確かに怖いが、自分達の力が通じるのかは、軍人・・・というより一人の竜騎兵として知りたい。でも・・・
「航空ジエイタイが参戦したら、飛竜部隊には仕事は来ないかもしれな・・・」
「アレックス大尉。それは言うな。私達は私達なのだ。さぁ、会議に行くぞ。」
・・・・・・。
366 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/10(日) 14:09:49 [ IJVfbMOQ ]
『後ろにつかれてるぞ!旋回して回避しろ!!』
『ハイッ!!』
リサは言われた通りに急旋回し、追尾していた飛竜を回避する。追尾していたほうの飛竜は、勢い余って前に飛び出してしまう。俺はそいつの後ろにつく。慌てて旋回を始めるが、遅い!!
『もらった!』
発射した光弾は、寸分の狂い無く飛竜に叩き込まれていく。
『サム18被弾。大破、撃墜と判定。』
これで三騎目だ。演習とはいえ、中々いい成績だ。通算三騎撃墜、四騎撃破。相手が新人中心で構成されているせいかな。
『リサは何騎殺った?』
周りにはほとんど”敵”飛竜はいない。あらかたやられてしまったようだ。落ち着いて通信できる。
『えぇと、一騎撃墜。一騎撃破です。副隊長には敵いません・・・』
『そんなこと無い。相手は新配備の飛竜なんだ。誇っていいんだぞ。』
『ハイッ!』
あれから三日ほど。今日は飛竜母艦「クラウドドラゴン」に配備予定の竜騎兵達と模擬空戦をしている。する必要も無かったが、外交団に随伴していたジエイタイの関係者が来るということで、前倒しで行われたのだ。
『クラウドドラゴン所属の飛竜隊はほぼ撃墜された。模擬空戦は終了し、総員基地に戻れ!』
367 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/10(日) 14:11:17 [ IJVfbMOQ ]
「ジーク隊は、合わせて二十九騎撃墜、十六騎撃破、三騎が被撃墜、二騎被撃破。オスカー隊が二十騎撃墜、十騎撃破、四騎被撃墜、三騎被撃破だから、こっちの方が上だ。みなよくやった。」
隊長がねぎらってくれた。今回の模擬空戦は、首都防空隊のオスカー、ジークの二部隊が、戦闘/制空飛竜隊のサム、攻撃/爆撃飛竜隊のジル、ジュディ、多目的攻撃飛竜隊のグレースの四部隊が戦い、こちらが相手を圧倒した。再編成中のニック隊を参加させるまでもなかった。
「アレックス大尉、今回の空戦の感想は?」
それは・・・。
「サム隊も他の部隊も、飛竜の性能はこちらより一段上でしたが、空戦技術の未熟な竜騎兵がほとんどでした。サム隊は三十近くいて、ほとんど同じ数の我々に完敗ですからちょっと深刻です。」
攻撃や爆撃を主任務にする飛竜部隊は、総じて空戦向きでは無い。基本的に二人乗り(大型の飛竜では三人乗り)であることからも当然だ。だからこそ空戦を主任務にした飛竜部隊は頑張らなきゃいけないんだが。
「もっと訓練させないとダメです。全滅寸前まで追い込まれるようでは実戦では話になりません。ごく一部の竜騎兵はかなり強敵でしたが。食い付かれたら振り切るのは無理でした。」
「強敵は、他の部隊から転属してきた奴らだろう。残りの新兵達が問題という訳だ。ジエイタイの観戦武官に情けないところを見せてしまったな。」
ブルードラゴンより搭載飛竜が一部隊分増えたというのに、不甲斐ない。ブルードラゴンの連中は、旧式飛竜ながらも善戦していたんだが。
「空戦はまだまだだが、地上攻撃はどうかな?」
頭上では、休憩を終えた攻撃飛竜隊が再び飛び上がり、地上の攻撃目標に近づいて来ていた。
368 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/10(日) 14:12:06 [ IJVfbMOQ ]
『ジル隊、急降下開始。』
『ジュディ隊、急降下開始。』
『グレース隊、急降下開始。』
魔法通信は状況を伝えてくる。どの部隊も45度から50度くらいの角度で突っ込んでいく。
『ジル隊、発砲開始。』
『ジュディ隊、発砲開始。』
『グレース隊、発砲開始。』
高度が1000を切った位のところで、相次いでブレスを発射していく。一騎あたり二、三発打ち込むと、高度を一気に上げていく。
「アレは、ダメだ。突入する角度が浅い。」
近くにいた、ヴァル隊の隊長が言った。ヴァル隊は命中率90パーセントを誇る、攻撃/爆撃飛竜隊随一の部隊だ。彼らはクラウドドラゴンの攻撃飛竜隊の訓練を監督しているのだ。
「外れたな。」
火球は地上の目標付近で炸裂するが、なかなか命中しない。それでも何発かは命中したようだ。
『ジル隊、命中9、至近10、近12、遠16。』
『ジュディ隊、命中7、至近15、近11、遠15。』
『グレース隊、命中12、至近18、近6、遠5。』
命中率は一割〜三割か。
369 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/10(日) 14:13:54 [ IJVfbMOQ ]
「水平攻撃でも無いのに、不動の目標に対して何たる命中率の低さだ!たっぷりしごかなくては!!』
ヴァル隊隊長は御冠だ。
地上攻撃に関しては門外漢なので、その場を離れる。基地司令部の方に向かうか。ジエイタイの人間は一連の訓練をどう思っただろうか。
・
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「ご苦労、楽にして良いぞ。」
基地司令だ。その顔はうれしさ半分、困惑半分といったところかな。自基地の飛竜隊の善戦というか圧勝は嬉しいんだろうが、上層部ご期待の新設飛竜隊が、一世代前の飛竜部隊に脆くも敗れ去ったは予想外だったんだろう。
「で、彼らの技術はどうかね?」
「飛竜は高速で高機動でしたが、搭乗している竜騎兵はそれを生かしきれていませんでした。訓練時間の不足は否めず、状況判断などの遅さが・・・」
報告する隊長を尻目に、俺は少し離れたところにいるジエイタイの観戦武官数人の会話を盗み聞きしていた。
『・・・スツーカのよう・・・・・』
『・・は、ロッテを組んでい・・・』
『・・・機銃の役割を魔法・・・』
『最大・・・・は出ていたから・・』
『・・・式高射・・・撃ち落せ・・』
少し物騒な話をしているようにも聞こえるが、ほとんどの言葉は聞き取りができなかった。周囲は人が一杯で騒々しい。
本当に味方になったのか怪しいが、敵対的な発言は聞こえなかったから大丈夫か。四日後にはジエイタイの工兵部隊が来るんだが、いまいち実感が湧いてこない。
394 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/14(木) 21:37:45 [ IJVfbMOQ ]
ナイトロス王国南大陸領土最大の港、オキシゼ港には数多くの日本の船が寄港していた。
「でかい!!」
「こんなに大きなフネがあったのか!!」
「海軍サンのフネよりでけぇ!」
港湾施設の労働者たちは騒ぎ立てていた。ほとんどの船は数千トン、中には一万トンを軽く超えるような船まであるのだ。軍艦を除いたらそんな船はこの世界には存在しない。
「穀物類は検疫官に検査してもらって、安全が確認されれば積み込みを開始します。」
穀物や一般の食料品を積み上げた倉庫郡の入り口で、日本の経済産業省、農林水産省の役人たちが港の責任者と話し合っていた。その周りを検疫官がせわしなく走り回って様々な検査をしている。
「鉱石類の積み込みは開始しております。しかし、ニホンの皆様が望むほど早くは積み込みは終わらないと思います。何しろ、一度にこれだけの量の積み込み作業をするのは初めてなものでして・・・」
港の中には日本から運び込んできたフォークリフトやトラック類が走り回って、貨物船に荷積みしている。はじめてみる自動車に現地の人間は驚いていたが、「線路が無くても走る汽車の一種だろう」と(勝手に)納得してすぐに各自の仕事に戻っていった。
「しかし、この港のクレーン施設が役に立たないとは・・・。この世界でもっとも進んだ港湾施設を持っているのに!あんだけの量の貨物を運ぶには力が足りないそうだ。」
オキシゼ港の所長は現場主任の愚痴を聞いていた。その耳にはニホンの貨物船自前のクレーンが貨物を吊り上げる音が聞こえる。
「技術の差というやつだ。彼らの船についてるクレーンの方がよほど高性能だよ。」
オープンハッチバルカー船、ロールンオンロールンオフ貨物船、多目的貨物船などの船が日本にとって貴重な鉄鉱石や銅鉱石、石炭などをを積み込んでいく。本来、これらの運搬に適した鉱石運搬船や鉱炭兼用船は、港に適切な設備が無いので連れてくることができなかった。タンカーは大きすぎて停泊する場所が無いし、そもそもコンテナなどないのでコンテナ船も同様に来ることができなかった。
395 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/14(木) 21:38:40 [ IJVfbMOQ ]
同時刻、フランシア市中心部大使館街・サマリム共和国大使館
「わが共和国はニホン政府より提案された国内の油田拡張と、パイプラインの設置の提案を受け入れることになりました。総統閣下もお喜びのようです。」
「・・・。」
日本政府がナイトロス王国との条約締結の翌日から行っていた、サマリム政府との友好条約締結と石油資源の共同開発の提案は受け入れられた。が、日本にとってはあまりうれしい結果にはならなかった。
"中堅国家"サマリム共和国は「総統」による事実上の独裁ファシズム国家であることである。軍国主義者ではないとナイトロスからは教えられていたのだが、かつての大戦のイタリアとドイツのことを考えれば気が気ではなかった。日本国内では「独裁者に手を貸した」と非難されるに違いない。だが、独裁国家だからこそとんとん拍子で石油開発が決まった。
「ニホン国民は石油を欲しているそうですので、現在オキシゼ港に出荷している原油は貴国に優先して輸出しましょう。我々にとっては石油はランプの燃料ぐらいの価値しかないので、問題ないですよ!」
今のところの石油出荷量は、日本国内の消費量に比べれば雀の涙程度だ。それでも無いよりはましだし、他に交渉中の石油産出国(南大陸内陸部の国が多いので、石油の手配には時間がかかりそうだ)からの分を合わせれば、太平洋戦争中よりは石油が手に入るだろう。日本が生きていくためには石油が必要だ。そのためには悪魔に魂を売る必要だってあるのだ。
「ニホンの皆様方?顔色が良くありませんが、如何いたしましたか?我々が人間でないことを気にかけておいでですか?」
「い、いえ・・・」
日本国外交団はいくつかに分かれて南大陸諸国と交渉(交渉予定)している。その中には共産主義国家や絶対君主制国家など様々な政体の国がある。サマリム共和国との交渉はうまくいったが、他の国とうまくいく保証は無い。外交交渉の前には暗雲が立ち込めていた。
396 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/14(木) 21:40:07 [ IJVfbMOQ ]
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・
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「・・・同志諸君!戦竜の引渡しは、今日から始まるのだ!これによってナイトロス王国とアスター社会主義連邦共和国はより深い関係となるのだ!」
アスター連邦の軍港では、連邦独自の兵器「戦竜」がナイトロスに向けて輸出されようとしている。その記念式典に二ヶ国の軍人達が集まっていた。アスター赤軍将校の長たらしい演説もようやく終わった。
「しかし、王国はもう少し高性能な戦竜を望んでいたのですが。内戦中、あなた方穏健派に対する援助と戦後の『人員派遣』の見返りとしては少なすぎるように感じます。さらに・・・」
ナイトロスのアスター駐在武官が言った。数年前に集結した内戦の際、王国は軍事支援は行わなかった代わりに大量の食料や武器の支援を行い、穏健派が強硬・粛清派を打ち負かすのを援助したのだ。
「ムム、書記長閣下もその点を気になさっていましたが、我が国も、新鋭の戦竜D72と最新鋭のD80は各地で配備待ちなのです。コバルタ向けがD34/85とD54で、貴国向けにはD62、D64を輸出するのですからお許しください。さらに訓練教官と対空戦竜ZD57もつけるのですから・・・」
「そうですね。内戦の傷が癒えない中で無理して輸出してもらうのですから、文句を言う筋合いはありませんでしたな。アスター連邦の独自兵器と戦術を知ることが出来るようになり、我が国はとても感謝しております。」
「いえいえ、貴国から受け入れた人民同志は国家再建に役に立っておりますから、感謝するのは我々のほうです。・・・ところで、ニホンはどうですか?」
それまで、媚売りしか能の無さそうだった赤軍将校の顔が、急に真剣になった。ぎくりとした駐在武官だが、平静を装って
「早速ニホンからの貨物船が来て、大量の物品を船に積み込んでいるそうです。私はまだニホン軍・・・ジエイタイの実物を見たことが無いのですが、かなり強力だと報告書が本国から届いています。もうしばらくすれば、ニホンの外交団がこの国にやってきますよ。」
「そうですか。ジエイタイのことを少し知りたかったのですが。ナイトロスの大使館からはあまり有用な情報が入ってこなかったものでして。万が一、彼らが共産主義を嫌っていたとしたら、再び戦争が起る可能性があるので、注意深く状況を判断しなければならないのです。今の連邦は、戦争を遂行できるほどの国力がありません・・・。」
「大丈夫ですよ。彼らは基本的に友好条約を結ぼうとするらしいので、無茶な要求さえしなければ問題ないはずです。なんでしたら、本国からニホンを知る外交官を早めに連れてきますが。」
「素晴らしい!書記長閣下は情報を欲しているのです!貴国の最新情報を知ることができて書記長閣下もお喜びになるでしょう!」
輸送船への戦竜の積み込みが始まった。
426 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/20(水) 00:49:39 [ XitU55gg ]
『ダイナ06よりジーク隊へ。軍港に進入する海上ジエイタイ艦隊を引き続き監視せよ。』
一週間きっかりでジエイタイの艦隊がやって来た。種別は良く分からないが、外交団を連れてきた艦隊の旗艦と思しき船を先頭に、輸送艦らしき船二隻を四隻の軍艦が取り囲んでいる。輸送艦はドック内に係留中の飛竜母艦クラウドドラゴンとほとんど同じ大きさだ。甲板の広さはそれほどでもないか・・・
『こちら地上管制塔。ジエイタイ艦隊は輸送艦の接岸作業に入る。上空警備はオスカー隊に引継ぎ、基地に帰還せよ!』
『了解!』
つまらない任務だな。最初のうちは驚いていたジエイタイの船の大きさにもすっかり慣れてしまって、今ではなんとも思わなくなった。ジエイタイの船の凄さはなんとなくは分かるのだが、目にしたことも無いしハイテクそうな外見が中身までともなっているとは・・・
『大尉・・・?どうした?上の空だぞ?』
『ハッ、申し訳ありません、隊長。』
いかんいかん。変なことを考えていたな。実際には興味津々なのに。なかなか手の内を見せてくれないな、ジエイタイは。超高速の飛行機も一回来ただけだ。
『隊長?』
『どうした?』
『基地に帰った後何か仕事はありましたっけ?』
『今日は特に無いが。ジエイタイの歓迎レセプションは基地高官と飛竜隊の隊長が参加すればいいだけだから、お前は特に予定は無いぞ。』
『分かりました。』
『ジーク01より各騎へ。着陸態勢に入る。基地の飛竜の数が増えているから注意せよ!』
427 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/20(水) 00:52:35 [ XitU55gg ]
・
・
・
「大尉!どこに行くんですか?」
リサか。そのまわりにいる女子兵たちは見かけない顔が半分くらいいる。知っているのは、サム隊その他のクラウドドラゴン搭乗組と地上勤務の兵士だろうが、他のは・・・
「あっ、昨日来たトニー隊とアーヴィン隊の子たちですよ。ほら!これが噂のアレックス大尉、ジーク隊の副隊長よ!格好いいでしょ!」
そう言うとまわりに寄って来た。俺はそんなに有名人だったか?「サインください」とか「一緒に飛んでください」とか言ってくれるのは悪くないが、何か不気味なものを感じる。
「ええとな、俺はジエイタイの軍事パレードを見に行ってくる。」
「じゃぁ連れてってくださいよー!」
「俺はジエイタイの戦力分析しに行くんだ。物見遊山でついてくる気なら追い払うぞ。行くならお前達だけで行け!」
「「はーい・・・」」
ようやく離れていってくれた。「きついんだねー」「やっぱりカッコイイ!」「大尉ってああなの?」とか言ってる。女性しか分からない世界がこの世にはあるのか。恐ろしい、知りたくも無い・・・って、無駄に時間を消費してしまった!とっとと港の方に行かなくては!
・・・・・
「フランシア中心部と港湾地区へのバスの乗り入れは、今日は中止されてますよ。馬車や機関車も同じはずですが。軍人さんなのにご存知無かったんですか?」
蒸気バス停留所の職員が無情にも告げる。ジエイタイが来る関係で交通機関が規制されてるのを忘れていた!!自転車は持ってないし、走るしかないか。
428 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/20(水) 00:54:48 [ XitU55gg ]
20分後・・・フランシア市中央通り
「ぜーはーぜーはー・・・」
港まではたどり着けなかった。飛竜に乗ったらあっという間なのになぁ。通りの脇にはたくさんの人がいる。ジエイタイを一目見ようという人間だろう。
「ちょっと!そこの人!そこに立ち止まらないで・・・は・・・!失礼いたしました!!」
声をかけてきた警官が姿勢を正して立ち去っていった。そういえば軍服のままだった。私服のほうが良かったか。少し恥ずかしい。幸い、俺のことを気にしてる人間は全くいない。良かった。
にしても、ここに来るジエイタイは工兵部隊とその護衛だよな。わざわざ軍事パレードして基地に来る意味はあるのか?・・・あ。ジエイタイの装備のことを聞くのを忘れた・・・。
「来たぞ!!」
誰かが言った。確かに港のほうから音、どちらかと言うと機械音のような音が聞こえてくる。皆そっちの方に首を向けた。俺もそれに倣って首をめぐらせる。
ガガガと遠雷のような音はどんどん近づいてくる。建物が邪魔で音しか聞こえてこないぞ!ビルに文句言ってもしょうがないが。
「見えた!何だコレは?!」
「自動車のおばけだーー!」
周囲の人たちは好き勝手言ってるが、俺も正直似たような感想だ。ジエイタイ工兵部隊は完全な「クルマ」の部隊だ!自動車なんて大金持ちの壊れやすい玩具か蒸気バス程度の物だと思っていたが、ジエイタイのそれはそんなもの感じさせない力強さに満ち溢れている!
よく見ると、車輪の形が違うな。ベルトコンベヤーらしきものが延々と回っている。車輪を普通に回せば良いのに。
ジエイタイの「自動車」はヒトやモノを運ぶためらしき物と、銃器を搭載した警備用らしき物、何に使うか良く分からない物もあった。どれも人が走るより少し速い速度で走り去っていく。全部で30台ぐらいかな。工兵部隊という割には随分豪勢だよな。だから、わざわざパレードなんてしたのか。
ジエイタイのパレードが過ぎ去ったので、周囲の人々は帰路についている。一様に驚いた顔をしているな。俺もだ。ジエイタイの航空戦力や海上戦力も凄いと感じたが、陸上戦力も相当凄そうだ。
俺も帰ろうか。帰りも歩きか・・・。疲れるなぁ。まぁ、ジエイタイを生で見れたし、基地に帰ればまた見れる・・・!わざわざ見に来なくても基地にいれば嫌でも見れるんだったな。まぁ、暇つぶしになったし結果オーライだ!
433 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/24(日) 13:25:59 [ XitU55gg ]
フランシア市内にある、とある高級ホテルの会場では国王主宰の晩餐会が開かれていた。主賓はもちろんニホンの軍隊・・・ジエイタイとその付き添いで来ている政府関係者、先に来ていた外交団員たちである。また、出席者はナイトロス政府高官や軍人、南大陸主要国の大使などが出席している。会場は立食パーティーの形を取っているので、そこかしこで会話が進んでいる。
「フランシア基地での歓迎に続きこのような場を設けていただき、感謝の言葉もありません。」
「いえいえ、新たな友好国を歓迎するのに、これくらい当然のことです。」
「ジエイタイは追加兵力を派遣する気はありますか?」
「現在、本格的な軍事援助のための法整備が、連日国会で繰り返されています。準備が整えば増派すると思います。」
「なるほど、もう少し先ですね・・・」
自衛隊ナイトロス派遣部隊の隊長は、ナイトロス首相と談話している。ただ、会話しつつもまわりを伺っている。やはり、いわゆる「人間」でない人間が多い。隊長の知識では、日本で言う獣人とか亜人とかに当てはまる姿をしている。事前知識で教わってはいたが、小説の中から出てきたような姿をしているのを見ると、やはり驚く。更に彼らは近代的な服装をしているのだ。かなりの違和感を覚える。勿論、そんなのを声に出したら外交問題に発展しかねない。この世界(というより北大陸以外)では全て「人間」で一纏めにされているのだ。
「それでは、私はこれで・・・。今度会話するときは、大規模な兵力を引き連れているのを期待してますよ。」
「はっ・・・」
ナイトロス首相は、新たな会話相手を求めて席を立った。隊長もその場を離れていく。まさか自分が一国の首相と会話するとは。日本から出発するときに総理大臣の訓示は受けていたが、自国と他国の指導者の違いは大きい。
434 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/24(日) 13:27:04 [ XitU55gg ]
「耳の長い長身の人間がエルフ族、主要民族で南大陸全域に居住しています。小柄なのがドワーフ族、こちらも主要民族で主に大陸内部に居住していますが、各地の鉱山や工場で働いていることが多いですね。我が国でも優秀な鉱山技師はドワーフが多いですよ!」
「はぁ・・・」
日本の駐ナイトロス大使は、秘書官などと一緒にナイトロス外交省の高官から、南大陸の人間の説明を受けていた。
「竜のような格好をしているのが、竜人。アスター連邦に多く住んでいます。かつての内戦で各地に難民が溢れました。我が国も難民を受け入れています。そして人間としての戦闘能力は彼らが最も高いでしょう。素手で戦いを挑んでは駄目ですよ。・・・鳥のような羽を生やしているのが鳥人。ハーピーと呼ばれることもあります。コバルタ人といったら彼らのことです。この二種族は、翼がありますが空は飛べません。それをあまり貶しては駄目ですよ。翼は彼らの種族の誇りなのです。・・・だいたいこれぐらいでしょうか。他にも沢山の種族がいるので・・・?いっぺんに言い過ぎましたか・・・」
「そんなことはありません。有益な情報をありがとうございます。」
「お役に嬉しいです。引き続き晩餐会を楽しんでいってください。」
・・・・・。
「これは、生物学者がぶったまげて気絶するな。」
「写真や資料は送ってあるので、既に気絶してますよ。」
「マスコミにはどのくらい伝えるのだろうか・・・」
「内閣府あたりが決めるんでしょうが、若い世代は伝えられても対して驚かないでしょう。」
「・・・?」
「メディアを通じてこういったものに慣れてますから」
435 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/24(日) 13:28:13 [ XitU55gg ]
「油田開発に、一兆シリング以上つぎ込むらしいですね。」
「それはそれは・・・。石油のある国が羨ましいですな。」
「その他の鉱工業にもかなりの投資と開発を行うらしいですぞ。」
「主要な農作物も大量に買い込んでいるようです。おかげで、去年から続いていた穀物市場の値崩れも解消されました。」
「むしろ、不足気味で市場が値上がりを始めているという。」
南大陸各国の大使達は、持っている情報の交換をしている。ニホンに関する情報を交換するのだ。
「結局、ニホンは各国の農作物と資源の輸入と、産業設備への投資を優先したようですな。」
「軍事同盟に関しては締結を先延ばしされたが、ナイトロスが粘り強く交渉しているようだ。最終的には対帝国同盟に参加してくれるはずだ。ニホンと帝国の交渉は早期に破綻しているというから、帝国側に寝返ることも無いだろう。」
「ただ、ニホン国内は騒乱状態だとも聞く。現在の政権の寿命は長くは無いらしい。」
「どちらにしろ、我々と敵対したら輸出を止めればいい。最終的にはニホンが折れるだろう。」
「そこまで行くことも無かろうて。そんなことをしたら後々の禍根になるだけだ。穏便に済ますほうが良いだろう。」
話は込み入ったものになり始めた。
436 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/24(日) 13:30:06 [ XitU55gg ]
「・・・?なんだかメシの値段が高くないか?」
おかしい。一週間前より何割か値上がりしている・・・。
「すいません!この値段は間違いでは無いですよね!」
「お客様。品薄で仕入れ値が値上がりしておりまして、やむを得ず当店も値上げをせざるを得ませんでした。ご了承ください・・・」
そんな!安い店だからジーク隊と他の隊の、手の開いている連中を誘ってきたのに!仕方ない。他の士官達に目配せする。
「済まないが、士官だけでは無くて、下士官と一般兵も割り勘にしようか。」
「大尉!大尉は『士官がおごってやるから、他の奴らはタダでメシを食って良いぞ!』と言ったじゃないですか!嘘をつくなんてひどいです!!」
リサ・・・。人聞きの悪いことを。値上がりは想定の範囲外だったんだよ。だが、彼女の意見に賛同する奴らが多すぎる。ここで意見を通したらリンチされるかもしれない。・・・すまない!士官のみんな!
「わかったわかった!おごってやるよ!遠慮せずに頼め!」
もうやけくそだ。士官仲間の目線が痛いが、何ともないz・・・
「おい、アレックス・・・。会計が終わったら店の裏に来い。話がある・・・。」
今日は気持ち良く寝れるかな・・・。
「明日・・・早朝勤務の奴もいるから酒は禁止だ・・・。」
437 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/24(日) 13:32:23 [ XitU55gg ]
「ジエイタイの人って見たか?」
「ちょっとだけ見たぞ。普通の人間だった。」
「カッコイイ人は?」
「知らねーよ!」
思い思いに注文しながら楽しそうにみんな食事している。俺はそんな連中を見ながら財布の中が気になってしょうがない。・・・おい、本当に遠慮せずに頼みやがって!
「俺の給料・・・。俺の金・・・。」
「大尉?元気が無いな。しけっているぞ。」
「あぁ、隊長・・・。」
隊長もなぜかついてきてくれた。基地の歓迎式典で忙しかったはずなんだけど。・・・そうだ!!
「隊長も割り勘・・・」
「私は少佐で将校だ。割り勘は士官でするのだろう?私も君に奢って貰えてとても嬉しいよ。」
そ、そんな・・・
438 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/24(日) 13:33:33 [ XitU55gg ]
・
・
・
「御会計は20万9880シリングになります。」
おかしい。前に同じくらいの人数できたときは10万シリングぐらいだったんだが。
「えぇと、士官は八人だから一人26235シリングだ。」
半月分の食費と同じくらいだ。値上がりしたのに、みんな頼み過ぎだぜ・・・。
「「ごちそうになりました!」」
「そうか・・・。」
会計を済ましてみんな基地に帰っていく・・・はずなんだが
「アレックス。さっきのは覚えてるな?キミにお礼したくてたまらないんだ。」
士官仲間が俺の周りを囲んでいる。満面の笑みなのが怖い。あぁ、飛竜がいたら飛んでいけるというn・・・
バキッ!! ガスッ!! ドガッ!! ドンッ!! ・・・・・。
456 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/29(金) 00:36:32 [ XitU55gg ]
「大尉!おはようございます!」
「あぁ、リサ。おはよう・・・。」
「・・・大尉?元気ないですね?ちゃんと寝たんですか?あと・・・なんだかクサいような・・・」
コイツは相変わらず鋭いな・・・
「しっかり(ゴミ捨て場で)睡眠(気絶)してきたから、気のせいだ。」
「そうですか?う〜ん・・・」
そうだ、気のせいだ。気のせいにしてくれ・・・。話題を別の方向に・・・
「それにしても、なんで昨日はあんなに頼んだ?」
「大尉が遠慮せずに頼めと言ったからですよ?」
「だからといって単品ばかり頼む事は無いだろう・・・セットで頼めよ・・・」
「私一人に言われたって困りますよーー」
「それに5割近く値上がりしてるのに・・・」
そこまで言って、リサから新聞を手渡された。今朝の新聞だ。一面の記事は・・・
『狂乱する物価』、『製造業で大増産』、『金が値崩れ』などなど・・・
「ニホン向けの輸出が増えるのを見越して国内向けの出荷を取りやめたせいで、急に値上がりしたらしいですよ」
「それと、昨日の20万シリングがどうした?」
「つまり、自然現象だから諦めてくださいってことです!」
フッ・・・払ってしまった金は戻っては来ない。愚痴をこぼしてもいいじゃないか。
457 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/29(金) 00:38:40 [ XitU55gg ]
「ところで、ジエイタイの人間は?この時間ならもう来ていてもいいはずだが・・・」
と、機械の音らしきものが聞こえてきた。かなり重々しく聞こえる。
「あっ、始まりましたね!大尉も見に行きませんか?」
「見に行くって?」
「ジエイタイ用施設の建設現場ですよ!ジエイタイの姿を見に行くんですよ!」
そうだったか。・・・まだ8時か。俺の勤務は今日の10時からだから、2時間弱は見学できるかな
「わかった。飯を食い終わったら見に行こうか。」
「朝食の後ですか・・・。いいですけど・・・」
・
・
・
「なんでこんなに混んでいる?!」
「大尉がのんびり食事をしていたからですよ!」
手の開いている奴のほとんどが、ジエイタイのいる一角に集まっている。警備兵や飛竜の飼育係までいやがる。
ジエイタイの持ち込んだ機械は、人力とは比べ物にならないくらい手際よく木を切り、整地していく。
「圧倒的じゃないか、ジエイタイの機械は!」
「あれはですねー、石油で動くらしいですよー!だからニホンは石油をたくさん要求したらしいですよー!」
「よく知っているな。隊長の受け売りか?」
「うっ・・・」
図星か。隊長ならそのくらいの説明を、昨日の式典で聞いていてもおかしくないよな。
458 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/29(金) 00:39:49 [ XitU55gg ]
「皆さん!危険ですし作業の邪魔になりますので下がっていてください!!」
相当に邪魔だったのか、ジエイタイの兵士、というよりニホン兵が何人かやって来た。どっからどう見ても人間だ。軍服が森林にカモフラージュすると思しき絵柄になっている。そういえば、ゴシップ紙ではニホン人はとんでもない化け物みたいな絵が描かれていた。
「ジエイタイの活動を観察しているだけですが、何か?」
今、この場にいる奴らの最上級階級は俺らしいので、俺が受け答えする。
「あなたは?」
「私はナイトロス王国空軍第一航空師団首都防空隊所属、ジーク飛竜中隊副隊長アレックス・・・大尉です。」
俺の役職はそういうものらしい。ジーク隊で通じるが、長たらしいほうがえらく聞こえるってもんだ。
「どうする?俺達一等陸士までしかいないし・・・」「階級が上の人を追い払ったら問題だよなぁ」「一等陸佐殿を呼ぶか?」
なにやら相談している。まとまってはいないようだ。
「皆様の安全を守る必要があるので・・・」
「充分離れてるじゃないか」
「機密保持のためにも・・・」
「それならこんな場所に宿舎を建てるはずが無いだろうに」
「・・・・・。」
459 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/07/29(金) 00:41:11 [ XitU55gg ]
「こら!大尉!!ジエイタイの人を困らせるな!周りの君達もこんなところで油を売っていないで仕事に戻るんだ!!」
あちゃー、隊長だ。いい線まで行ったんだけどなぁ。
「了解です!」
「了解!」
蜘蛛の子を散らすようにみんな仕事(?)に戻っていく。
「大尉。ジエイタイのほうから、積極的な接触はしばらくは避けてくれと言われているのだ。」
「そうでしたか。すいません。」
カルチャーショックを和らげるためらしい。別段、そういった素振りは見えなかったけど。
「隊長!ジエイタイは何を作ってるんですか?」
リサだ。それは宿舎とかだと思うが・・・
「居住用の兵舎と、武器弾薬貯蔵庫、後は『レーダーサイト』と『無線通信塔』、『ヘリポートと飛行場』などを二週間程度で作り上げるらしい。」
後半四つは訳分からんが、二週間でそれだけのものを作るのか。あの機械を見れば納得できる。
「開戦までに、ジエイタイは装備を整えてくれますかねぇ。」
「まぁ、どうにかなるだろう。」
なんだか頼りない言葉だ。
「大尉。一介の将校にそれ以上のものを求めるのは期待しすぎだ。ところで、昨日の殴られた傷は大丈夫かね?」
なんだ。隊長は知ってた・・・なら助けてくれても良かったのに。
「大丈夫です。見えている部分は無傷ですから。それ以外はそれ以外は手酷く殴られましたが。」
「ふむ。では午前中の市内哨戒後はトニー隊、アーヴィン隊との模擬空戦、その後は、夕方来る予定のジャック隊とジョージ隊、ネル隊の出迎えだ。」
「ちょっと待って・・・」
「どうした?首都防空の四翼が揃うのが嬉しいか?それにクラウドドラゴン搭載組とは今日はやらないぞ。臨検も実施しないし・・・」
いや、そうではなくて・・・。寝込んでいたほうが良かったかな・・・
464 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/08/05(金) 23:25:15 [ XitU55gg ]
「主計局としては、現在の戦争計画の実行は不可能であるとの結論に達しました。」
「馬鹿な!」
「ありえない!」
ナイトロス王国軍作戦司令部の作戦会議は紛糾していた。場には陸海空軍トップと、各部署の責任者などが一同に会している。
「今まで練られていた作戦は、大部隊を国境線近くに展開し、帝国軍が国境線を超えた時点で攻勢に出て押し返し、そのまま帝都と聖都の両方を制圧して我々に有利な条件で講和する、です。しかしその前提である補給の維持が極めて困難になると予測されます。」
そう言って机に紙を広げる。
「『補給物資の未来予測』?」
紙にはそう書いてあり、グラフが何本か描かれている。
「ご覧の通り最近までは、後方から物資の供給は現場での消費量を大幅に上回っています。しかしこの二週間ほどで情勢が急激に変わり、ご覧のように・・・現行のままの計画では作戦開始から一ヶ月で補給物資が底を尽くと予想しています。」
「以前の予測では半年は充分に持つと聞かされていたぞ!!」
参謀の一人が主計局責任者を責める。
「それは・・・ニホンです。ニホンに多くの物資を輸出しているために、こちらには以前ほど物資が回ってきていません。他国でも同じような状態でしょう。かといって輸出を断れば我々の条約違反となるので、輸出を止めるわけにはいきません。」
「どの位の軍勢なら半年間行動できるかね?」
最も物資を消費する陸軍のトップ、陸軍参謀総長が言った。
「陸軍は当初の人員である正面勢力8万、予備戦力4万、後方支援3万をを想定していましたが、この半分の戦力でもかなり厳しいでしょう。大規模な戦闘は数会戦しか行えないとおもいます。もちろん、現地徴収ならば・・・」
「主計局長。言葉の文(あや)でなくてもわかる。つまりは、占領地で略奪しなければ現在の作戦の実行は不可能ということか」
「そうです・・・」
465 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/08/05(金) 23:27:13 [ XitU55gg ]
「貴様!ナイトロス陸軍がそのような不名誉な真似をすると思っているのか!!」
先程の参謀が声を荒げて主計局長に掴みかかった。それによって会議は乱闘状態になってしまった。数十分後、ようやく混乱が収まり会議が再開される。
「海軍・空軍に関しては、大規模な作戦行動をとらなければ問題ないですが、攻勢に出るには不足すると思われます。」
乱れた服装と顔に青あざを作って、主計局長が答える。
「帝国と戦うとすると攻勢ではなく、守勢に回って帝国軍を退けるしかないと思われます。」
「これに関しては、建設局より提案があります。」
軍施設建設を行う建設局の局長が、主計局長に代わって話を始めた。
「建設省と合同で行っている防衛線の構築は、三つのうちの首都から100キロ、国境から300キロにある「エルビヌメイン」防衛線が竣工率50%になっています。エルビヌメイン丘陵を背にしているので、防御しやすい地形です。他の二つはほとんど建設が進んでいません。ニホンに資材の原料を大量に輸出しているので、完成は数年先になると思います。」
「到底間に合わない!ということは陸軍主力はエルビヌメイン防衛線に振り向けるしかないか。それなら充分に戦えるか?」
「補給は一年程度問題なく行えると思います。」
「ぐぬぅ・・・不本意ながら、陸軍は主計局・建設局の提案を受け入れて、エルビヌメイン防衛線での帝国軍迎撃計画に変更する。海空軍のご意見は?」
「海軍は海上行動に支障が無ければ計画の変更に賛成する。」
「空軍は、エルビヌメインでの飛竜基地が設営されるなら、異論は無いですが、フランシアとエルビヌメインは近すぎるので、敵竜騎士に首都を奇襲される可能性がありま・・・」
「やはり反対だ!そんな消極的戦闘では帝国に出し抜かれてしまう!!」
「武器弾薬と食料が無いのにどうやって戦う気だ!」
「ナイトロス魂で戦え!」
若い参謀や士官達が言い争いを始めて、またしても乱闘が始まる。
466 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/08/05(金) 23:31:36 [ XitU55gg ]
「兵器運営局の試算では、第二・第三・第四・第五・第六・第七歩兵師団、それぞれに砲兵大隊と自動化魔道大隊を一ずつ、ガトリング砲中隊を2つ程度配備、騎兵隊は二個師団、現在アスター連邦より輸送中の戦竜は一個大隊程度・・・あわせて8万弱を配備・運営可能です。後方支援部隊は、護衛込みで2万前後を見込んでいます。攻勢を前提とする作戦とほぼ同じ人員を派遣可能です。」
「こんなものかな。・・・怪我は大丈夫かね?」
「大丈夫です。」
部屋の中は竜巻に巻き込まれたかのごとく荒れ果てている。
「ついで海軍は、戦艦2、魔探戦艦2、飛竜母艦2、重巡洋艦4、軽巡洋艦7、駆逐艦18が運用・もしくは運用可能になります。この中に、旧式の装甲艦や帆走戦艦は含んでいません。空軍は全飛竜隊を運営可能です。」
「他国が派遣してくる部隊は決まっているかね?」
兵器運営局責任者が下がり、渉外局責任者が発言を始めた。
「多くの国では、国力の不足により派兵は難しいと考えています。装備兵器の水準の差から、陸軍と海軍も合同した活動は不可能と思いますので、他国からの派遣は断るしかないと思われますが、アスター連邦の戦竜部隊は受け入れます。飛竜部隊・竜騎兵はコバルタ、アスター、サマリムのものを受け入れます。他国の飛竜は、以上の三国と我が国の輸出・退役した飛竜を多く使用しているので、残念ながら戦力になるとは思えません。」
「空軍は問題なく受け入れられるが、どの程度受け入れるのだ。」
「暫定的ですが、コバルタはスピットファイアMKTとスピットファイアMkU、スピットファイアMkXをそれぞれ20騎、スターリング、ランカスター、ハリファックス、ブレニム、バラクーダは10騎ずつ派遣、アスターはミコヤン・グレゴビッチT型とイリューシンU型を30騎ずつ、ヤコブレフV型・Z型・\型を15騎ずつ、ラボーチキンX型・Z型を20騎ずつ、サマリムはファルゴーレ・アリエテT・アリエテUを10騎ずつ、サエッタ、ベルトロ、チェンタウロ、サジタリオ、スパルビエロ、アルチオネを5騎ずつ派遣したいと言ってきています。」
「コバルタは、さすがに我が国と国力を争うだけのことはある。アスターは数で勝負か。『空飛ぶ戦竜』シュトルモビクも派遣されるのか。サマリムは・・・種類は多いが数が少ないじゃないか。チキンスパゲッティ野郎は何考えているんだ。・・・書記官!チキンスパゲッティ野郎以降のくだりは記録しなくていい。」
書記官は空軍司令長官の発言に横線を引いて削除した。
467 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/08/05(金) 23:34:07 [ XitU55gg ]
「最後に、帝国とニホンの動向だが。」
議長役の国軍大臣が言う。議長役のはずなのだが、これが怒号以外での初めての発言である。
「外交省と情報局の合同調査では、北部都市国家同盟は事実上瓦解しました。守備隊を残して侵攻軍は引き上げを開始したようです。オスミア国教会の枢機卿会議は当初よりも遅れ、あと数日で開催されて我が国への聖戦を宣言するとともに、皇帝の勅命が降りると考えられます。実際に侵攻するのは、早くて四ヶ月、遅くとも帝国領のほとんどが雪に覆われる半年以内と想定している所です。」
「防衛線の構築と物資の備蓄、住民の避難準備は早急に進めなければならないか。では、ニホンは?」
「大都市ではデモが頻発しており、治安が極度に悪化、国家としての機能がマヒしつつあるようで、戒厳令が敷かれているのと同じ状態です。現在の政権に不信任案が提出されているので、まもなくニホンの総理大臣は辞任するものと思われます。ジエイタイは、デモの鎮圧と燃料不足で活動が大幅に縮小しており、たとえ軍事同盟を締結してもどの程度我が国に協力してくれるか・・・。」
「ジエイタイの戦力は・・・?」
「戦力はおよそ25万人、うち15万人が陸上ジエイタイで残りは予備役と海上・航空ジエイタイの人員のようです。艦船や火砲、航空機の稼動数は減少しつづけているらしく、正確な数は教えてくれませんでした。」
「こちらにまわしてくれる戦力は不確定なのか。軍艦や"戦闘機"を見る限りでは相当の力になってくれそうだが、まぁしょうがないか。渉外局は外交省と協力して協議を継続してくれ。」
「本日の会議は終了だ。書記官は記録を保存して置くように。」
・・・・・
『本日の会議の負傷者17名、病院送致7名、謹慎処置3名』
477 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/08/18(木) 23:33:51 [ XitU55gg ]
「広いな・・・」
目の前には、長さ1500メートルはある『滑走路』なるものが広がっている。たった二週間で作業完了とは・・・。ジエイタイの能力は素晴らしい!ジエイタイの連中はつれない奴らばかりだが、土建屋としては一級じゃないか!
「このスペースを用いて、追加派遣されてくる部隊を受けれいれることが出来ます!臨時滑走路とヘリポートを併設したので、輸送機やヘリコプターを発着できるようになりました。」
ジエイタイナイトロス派遣部隊仮司令部完成式典には、軍のお偉方とニホンからやって来たジエイタイの高官の他にも、この基地の士官や将校が招かれている。俺も大尉だから当然出席している。
「明日より輸送機に搭乗された追加派遣部隊が運ばれてきます。これからも、ナイトロス王国軍および周辺国の皆様と良好な関係を築けるように努力いたします。」
ジエイタイの一等陸佐もとい大佐殿はしゃべるのがうまいなぁ。だから先遣隊の隊長に選ばれたのかな・・・
上空には、久しぶりにジエイタイの戦闘機が飛び交っている。というよりは曲芸飛行というやつか。燃料不足らしいのに良くやってられるなぁ・・・
「では、これにて私の祝辞を終了いたします!」
一等陸佐殿の演説が終わった。ナイトロスや他の国に対する美辞麗句ばかりの臭すぎる演説だった。こりゃぁ、ニホンにいるジエイタイの背広組が考えた演説に違いない。
『解散!!仕事のある者は戻れ!それ以外は自由にしてよし!ただし、ジエイタイに貸し出した敷地内には勝手に入るな!侵入したら憲兵に引き渡す!以上!!』
・・・・・。
478 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/08/18(木) 23:36:16 [ XitU55gg ]
「大尉!夕食ありがとうございます!」
「そーか、リサ。クソッ!食堂が混雑してなきゃこんな場所にはいないのに!」
フランシア基地は南大陸から来た飛竜、竜騎兵とジエイタイで満杯状態だ。食堂は完全にパンクしていて、めっきり食べる回数が減った。当然メシを抜くわけにもいかないので、外食ということになる。
「うぅ〜〜!高い!これで安い店なのか?!この前行った店よりは安いが・・・。リサを信用して来たんだぞ。本当に・・・」
「このあたり店の中では相当安いですよ。以前より2割だけしか値上がりしていないんですから!店によっては5割も値上がりしてるんですよ!!そ・れ・に!今日は割り勘ですから。二人だけなんでそんなに食べはしませんよ。」
女性とはそういう時に限ってよく食べるという話を良く聞くけど・・・。
「大尉?私の顔に何かついてますか?」
「いいや!財布と自分の体重とよく相談して食べてくれ」
メキッ
「店員さーんすいませーん!フォークが曲がっちゃったんで代わりのをお願いします!」
嫌な空気が流れてくる・・・
「・・・あと、注文はこれとこれ。あ、”シェフのお勧め”もお願いします。大尉は?」
「これとこれでいい。」
「なんか安いのですね。もっとパ〜ッと頼んだほうがいいですよ?」
「そうだな!リサ一等飛行兵殿が高いものばかり頼んでいなければ、もっと高いのを頼めるんだけどな!!」
「・・・お客様。ご注文は以上で宜しいでしょうか?」
「「はい」」
479 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/08/18(木) 23:38:27 [ XitU55gg ]
「ひょれで、ヒホンのかいひゃに・・・」
「リサ!食べながら喋るんじゃない!」
「・・・・・・・・。ニホン企業の株式をナイトロス証券取引所で扱い始めたんで、私は株式投資したいんです。ナイトロスに進出するニホン企業が中心らしいんですけど・・・」
「俺にどうしろと?」
「隊の人の何人かとは話をつけてあるんですが、その・・・みんなで一緒に運用したいんで、お金を出してくれないでしょうか?」
「そんな唐突に・・・いくら欲しいんだ?」
「大尉は500万シリング・・・」
銀行に預けている金ほとんどかよ・・・
「最近のお前は随分ケチになったと思ったら、株式投資を始めるつもりだったのか。」
「本当は普通に投資運用するつもりだったんですけど、ニホンが来たんで投資先を変えただけです。私も努力して400万シリング貯めて投資するんです。どうかお金を出資してください!それともダイブスパローの涙の軍人年金で大尉は我慢できるんですか?!」
ダイブスパローは急降下して餌を捉える小鳥だ。「ダイブスパローの涙」といったらほんの少ししかないことの例えだが、軍人年金は本当に少ししか払われないことで悪名高い。
「老後の糧にするには少なすぎるが、お前の投資話のリスクよりはマシだと思う。一体どこに投資しようってんだ?」
480 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/08/18(木) 23:40:41 [ XitU55gg ]
「ノムラかニッコーっていうニホンの有名な証券会社に運用を任せようと思ってるんです。」
どっちも知らん。いつの間に調べてきたんだろう?
「運用株式はニホンの資源開発会社、海運会社、建設会社、貿易会社にしようかなって思ってますけど、絶対値上がりするはずですから問題ないです!」
「今のニホンは議会の解散と首相の罷免に、失業と飢餓とエネルギー危機で混乱してるっていうのに、値下がり間違いなしの株に投資できるかっっ」
「そんなこと無いです!オキシゼ港とフランシア商業港は連日ニホンの海運会社の商船でいっぱいですし、油田開発にすごい金額がつぎ込まれるという話だってありますし、エルビヌメイン防衛線構築にジエイタイの他に、ニホンの建設会社が参加するって言う話・・・ムグゥ?!!」
慌ててリサの口を塞ぐ。
「そこはまだ軍機だ。憲兵に営倉へぶち込まれるぞ?」
「ふぅ。とにかく!大尉ならこの話に乗って・・・くれます・・よね・・・」
うわっ?!潤んだ瞳でこっちを見るな!
「分かった分かった!投資してやるが、損したら弁済してもらうからな!」
「ありがとうございます!さすが太っ腹な大尉!!」
「明日、お金を下ろしてくるから首を洗って待ってろな?・・・食い終わったら勘定を払うぞ。」
481 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/08/18(木) 23:44:25 [ XitU55gg ]
「会計は1万2200シリングになります!」
「リサと二人で、・・一人6100シリングだ!」
「え゛、大尉がおごってくれるんじゃ・・・」
「馬鹿言え!お前の苦労話聞いたって割り勘をやめるわけないだろう?それに”シェフのお勧め”は1万シリングだ。お前は得しているぞ!」
「そうですよねーーー。・・・・・・・・チッ」
「何か言ったか?」
「何でもないですよ?会計を済まして早く帰りましょ!」
・・・・・・・・・・
「またあのチョコレートとラムネが欲しいなぁ。」
帰り道。気の利くジエイタイ隊員からもらった二品の味を唐突に思い出した。既製品とは比べものにならないくらい美味だった。
「アレですかぁ。アレは凄く美味しかったですね!また食べたいですねぇ。」
「そうだよな。ところで、チョコとかをもらう時に言う言葉ってなんだったかな。忘れちまったよ。」
「えっと、確か特にチョコをもらうときに使う言葉だって、ジエイタイの人が言ってましたよね。えーっと・・・ぎぶ?何でしたっけ」
「ぎぶ、ぎぶ・・・!!・・・思い出した!」
「私もですよ!」
「「ギブ ミー チョコレート!」」
485 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/08/27(土) 20:36:51 [ XitU55gg ]
「よーし!貴様等が兵学校の訓練生であろうと、俺達は一切手抜きをしない!やられたくなかったから全力で戦え!!」
今、俺はフランシアから少し西に離れたところにある、空軍兵学校竜騎兵科の訓練場に来ている。隊長の『素敵な計らい』で、訓練中の生徒達の空戦相手をさせられることになった。出張費用を軍のほうで持ってくれるから、預金がスッカラカンで財布の中も寂しい身分としてはありがたい。月末の給料日まであと一週間の辛抱だ。
「「わかりました!!」」
まだ頬の赤みのとれない十代後半くらいの生徒ばかりだ。二年生か三年生だろうか。義務教育が終わった後、軍に入るには一般の兵士・下士官を養成する各軍の兵学校(四年制)、現場勤務の士官・下級将校を養成する士官学校(五年制)、デスクワーク中心の高級将官を養成する国防大学(四年+実地訓練一年制)の三つの手段がある。俺は学校から推薦状をもらえたので、士官学校に入ることが出来た。国防大学は、義務教育を終えた程度では入れない。高等教育を受けた奴だけが入れる高嶺の花だ。
彼らを見ていると、勉強と訓練に明け暮れた青春の日々が思い出される・・・とそんなことしている場合ではない。ジーク隊の名代として、訓練生に恥ずかしいところを見せるわけにはいかない。
「アレックス大尉殿!ウィロー二騎!パイン二騎!スプルース二騎!シーダー二騎!全騎発進準備整いました!!」
とんでもない骨董品クラスの飛竜ばかりだ。俺が士官候補生だった時は、一世代は新しいアイーダやヒッコリー型飛竜を訓練に使っていたぞ。だが、某国防大学を訪問した時、大学の連中はサイプレスやらオーク型飛竜を乗り回していやがった。軍に入ったらロクに飛竜には乗らないクセに!
「全員訓練教官と綿密に連絡を取りあうように!今回の敵は、フランシア基地に駐屯する竜騎兵の中でもエースクラスの奴ら三人!俺を含めて四人だ!それぞれジーク、ジョージ、オスカー、ジャック隊に所属している!首都防空の四翼に数で勝っていると考えていたら、地面に叩き落されるぞ!前にも言った通り、一切の手抜きをしない!実戦と考えて俺達に挑んで来い!!」
自分で「エース」と言うのはかなり恥ずかしい。他の三人からたらい回しされて俺が言うことになったわけだ。
「「了解!!」」
「よし!発進準備!」
486 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/08/27(土) 20:38:36 [ XitU55gg ]
・・・・・・。
『ジーク02へ、ジョージ04、オスカー03、ジャック03はそれぞれ配備についた。高度2000を維持して訓練生の飛竜が到着するのを待つ。』
『ジーク02了解』
訓練場上空は小さな綿雲がいくつか浮いている程度の晴天だ。他の三人はその綿雲の中に隠れて奇襲の機会を窺っている。俺は周囲に雲が無い場所にいる「囮」だ。訓練生達が使う飛竜が旧式なので、飛竜の性能が発揮できるであろう場所に高度を落としている。
『ジーク02より・・・!敵騎確認!11時方向!高度はおよそ1000!数は10!先頭にA2N型飛竜二騎確認、教官の飛竜と思われる。現在、教官騎を先頭に編隊を分断中!俺が先制攻撃して注意を引くので、各自の判断で攻撃を仕掛けてくれ!』
『オスカー03了解!』
『ジャック03了解!』
『ジョージ04了解!油断するなよ!』
俺は訓練だからって手抜きはしないよ。一度高度を上げて、彼ら(訓練生の編隊)から見て太陽が重なる場所に移動する。地上の魔探と連動されると効果が薄いが、奇襲の基本だな。訓練生達は気付かなかったようだが、さすがに教官には勘付かれたようだ。二分された編隊のうちの一つがこっちに向けて高度を上げてきた。もう一つの編隊は高度こそ変えていないものの、相当警戒しているはずだ。こっちに来る編隊から料理するか!彼らに向けて一気に高度を下げる。
急降下速度いっぱいの400ノットすれすれのスピードで突っ込む。そして模擬光弾を数連射、編隊の中心部分に叩き込む。訓練生達は光弾を避けようとして、あるいは迎撃しようと編隊を崩してばらばらに行動を取り始めた。経験の乏しい彼らではこの後の攻撃を避けられないだろう。
パパパパ!
俺が急降下から急上昇に移った所で、俺に追いすがろうとしていた訓練生に向けて模擬光弾が打ち込まれた。雲に隠れていた三人のうちの一人の攻撃だろう。他の二人は居ないようだが、もう一つの編隊の方を攻撃しているのだろう。
487 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/08/27(土) 20:40:21 [ XitU55gg ]
『オスカー03、一騎撃破!』
『ジーク02、教官騎とウィロー一騎に食いつかれた!片付けたらそっちに向かう!』
『了解!無理するな!』
急上昇している俺の後ろに二騎の飛竜が追いすがっている。時折光弾が飛んでくるが簡単に回避。飛竜の性能から言えば、このまま上昇して簡単に振り切れるが、それでは訓練の意味が薄い。久しぶりに「アレ」をやってみるか!
相棒を急激に失速させ、自由落下に任せる。後ろにいた二騎が追い抜いたところで再び急加速、後ろにぴったりと張り付く。教官騎のほうは回避行動を取りつつあるが、訓練生はうまく回避行動が取れていない。
今のは、身軽なジーク型飛竜などの軽戦闘飛竜が得意とする「リーフ」という空戦技術だ。場合によっては錐揉み落下することがあってかなり高度な技なので、ジーク隊では隊長と俺、他に三〜四人しか使えない。他の隊ではほとんどいないということだ。俺は自由落下そのものだが、隊長はまさに木の葉のように降下できる。技術では、まだ足元にも及ばない。
パパパパパパ!
『ジーク02二騎撃破!』
狙っていた編隊は残り二騎。指揮を執っていた教官無しでは、鼻歌混じりでも落とせるだろう。
488 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/08/27(土) 20:44:19 [ XitU55gg ]
「今日の訓練は終了する!全般的に言わせてもらえば、不利な状況になった時に狼狽してとっさに行動を起こせなかった者が多数いたようだ。今後も訓練を続けていけば、そういったことも減るはずだ。今回は、実際に行われている模擬空戦を実感してもらうために行ったものだ。結果そのものはあまり気にしなくていいぞ。以上!」
あー、終わった終わった。夕飯を食うか!学校関係者と話を交わしつつ、三人と一緒に食堂に向かった。
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「すいません。マフラー・・・見せてもらってもいいですか?」
「はい、どうぞ。汚しちゃ駄目だぞ。」
「リーフのやり方を教えてくれませんか?」
「教えてもいいが、卒業した後に配備される部隊の飛竜は軽戦闘飛竜とは限らないぞ。重戦闘飛竜であんな動きしたら、地面に真っ逆さまだ。」
「ジーク隊って、どんなところですか?」
「すごい隊長に率いられたすごい部隊だ。センターアイランド産業社長のZ飛竜計画くらいすごい。」
「ニホン人は怪物ですか?」
「普通の人間だ。俺が見てきたニホン人は真面目なのが多かったな。」
「ジエイタイの武器はどんなでしたか?」
「洗練された機械だ。無駄らしいものが無かった。」
どういう訳か俺にばっかり生徒達が話を聞きにやってくる。他の三人が生徒を体良く追い払っているからだな。俺だって追い払ってもいいんだが、目を輝かせて、あるいは尻尾や羽をぱたつかせている純朴な少年少女を邪険にするような鬼畜ではない。
美味しいものを持ってきてくれるので、結構嬉しいんだがな。南大陸出身の生徒が持ってくる郷土料理も、なかなかいける・・・
「アレックス大尉、ちょっといいですか」
学校の・・・校長か。階級は大佐なので敬礼する。生徒たちもそれに倣って敬礼した。
「明日、対空戦竜の運用試験があるのですが、是非参加していただけないでしょうか?急なことですので無理強いはしません。ただ、陸上ジエイタイの高射砲科の担当者が来るので、こちらも優秀な竜騎兵を出したかったのですが。」
「構いません。お役に立てるなら力になります!他の三人は・・・」
『問題無い』というジェスチャーを送ってきた。なかなか面白いことが出来そうじゃないか。
493 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/02(金) 00:44:02 [ XitU55gg ]
『こちら地上観測班!これより対空魔法陣地からの攻撃を開始する!』
『ジーク02、了解!!』
翌日、ジエイタイの人間が見守る中、対空射撃訓練に参加することとなり四人で編隊を組んで飛行している。
『高度2500!北北西!速力150ノット!陣地1、2は火炎魔法!3、4は雷撃魔法を使用!』
地上でのやり取りは聞こえるようにしている。陣地四つでは大した弾幕は張れないだろ・・・
ドン! ドン! ドン! ドン!
早速、炸裂し始めた。まだやや下方で魔法は炸裂している。対空魔法は時限式なので、炸裂するまでの時間を調節することで高度を指定できる。今の攻撃はやや時間を短くしすぎたようだ。
『高度修正2700!北北西!速力140ノット!攻撃用意!ッテェェェ!!!』
ドン! ドン! ドン! ドン!
今度はかなり近いところで炸裂した。実際は射撃指揮官の修正指示を待たずに対空魔法兵は攻撃するので、普段体験しているものより幾分間の長い射撃間隔だ。
『高度修正2600!北西!速力150ノット!攻撃用意!ッテェェェ!!!』
ドン! ドン! ドン! バガァ!
至近で魔法の炸裂する音と光が響き渡る。使っている魔法は、演劇などで使う見掛けだおしの魔法だ。
『一発が編隊右付近で炸裂。オスカー03大破、墜落。ジーク02中破、搭乗員死亡。ジャック03小破。ジョージ04小破。』
150ノット程度で同じ高度を飛んでれば、そりゃ当たるだろう。帝国の竜騎士だってもっと早く飛べるって話だし。
494 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/02(金) 00:46:43 [ XitU55gg ]
『続いて高射魔導砲四門による攻撃を始める!』
『ジーク02、了解!!』
『高度3000!速力200ノット!南東!発射用意!撃て!!』
スピードと高度を上げて対処する。そうでもしないと・・・
ドン! ドガ! ドン! ドン!
いきなり相当近いところで炸裂した。高射魔導砲は一定レベル以上の生物に反応して炸裂する魔法が仕込まれているそうだ。製造に使う資源が貴重品らしくて、ほとんど配備されていないのが難点・・・
バガァ! ドン! ドガ! ドガ!
『一発が編隊後方で炸裂。ジャック03大破、墜落。ジョージ04大破、墜落。オスカー03中破、搭乗員死亡。ジーク02中破。』
数の少なさを補う威力の高さが売りではある。
495 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/02(金) 00:50:51 [ XitU55gg ]
『対空戦竜ZD57三騎による攻撃を行う!高度を500まで落としてから、攻撃を始める!なお、生き物につき、飛んでくる火球は威力をだいぶ落としてあるが本物だ。注意するように!』
向こうは攻撃に晒されないからって、とんでもない事をサラリと言いやがって!
『了解!こちらも全力で回避する!』
訓練で怪我するのは当然イヤだ。
『南南西方向!撃て!』
適当な指示が地上で飛ばされたかと思うと、大量の火球が飛んできた。
『ジーク02!全騎最大速度で上昇せよ!』
『『了解!!!』』
一気に高度を上げる。事前の説明では、ZD57の火球は一分間に30発は撃てる代わりに、射程は1500メートルまで届くかどうかだと言っていた。
・・・・・ここで、重大なことに気付く。四騎の上昇力は相棒-----ジーク型飛竜が最も遅い。似たり寄ったりでジョージ。身軽なオスカーと馬力重視のジャックは結構早い。・・・ということは・・・。
バン! バン! バン! バン!
地上から狙い撃ちされる事になったのだ・・・。
496 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/02(金) 00:55:08 [ XitU55gg ]
・・・・・。
「酷い目に遭った・・・」
地上に戻って治療してもらう。結果は、勿論墜落と判定された。同じく対空砲火に捕まったジョージ隊の奴も治療している。二人とも軽い火傷が出来た程度で済んだが、事前に説明してもらいたかった。
「お二方は、オスカー隊とジャック隊の二人の様子を地上から見てもらいましょう。」
兵学校の校長が言った。オスカー隊、ジャック隊の二人は特大の吹流しを着けて飛び立った。一体何しようってんだ?
「・・・ジエイタイは何を?」
斑緑色の軍服を着込んだジエイタイ隊員十数人が何やら準備している。いつのまにか「トラック」が搬入されていて、周囲には数両のクルマが何か準備している。そして、それらから出ている電線らしきものを目で追うと・・・
「でかいガトリング砲か?!」
そうとしか言えない禍々しさを醸しだす兵器が準備されている。
「あれは、陸上ジエイタイの『L90二連装高射機関砲』というんだそうです。」
治療してくれたこの学校の生徒が教えてくれた。まさに禍々しい名前だ!
497 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/02(金) 00:57:53 [ XitU55gg ]
そうこうしているうちにジエイタイの準備が終わったらしく、隊員は配備につく。L90という対空兵器にも数人の隊員がとりついている。対空用銃火器というと、海軍の使う対空ガトリング砲は命中率が恐ろしく低いらしいけど。考えていてもしょうがない。魔法通信を傍受しよう。
『こちら地上観測班!これよりジエイタイ兵器の射撃訓練を開始する!高度2000、速力200ノットをか・な・ら・ず!維持せよ!ジエイタイの都合により、使用する銃弾は実弾だ!以上!』
『ジャック03了解・・・えぇ?!』
『地上観測班交信終了!武運を祈る!』
そう言うや否や、ジエイタイのL90は火を吹いた!
ドドドドドドドドドドド!!
信じられない速度で銃弾が撃ちだされていく!銃弾は・・・先頭の飛竜の吹流しに寸分の狂い無く吸い込まれていく・・・!
『ジャック03、吹流しに大量に被弾!吹流しを切り離して帰還する!』
続いて
『オスカー03、吹流しが破壊された!吹き流しは切り離す!以上!』
初弾命中は軍人の誉れとは言うが、圧倒的ではないか、ジエイタイは!
498 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/02(金) 01:01:13 [ XitU55gg ]
二人が帰ってきた。しかし・・・
「貴様等!俺達を殺す気か!!」
地上に降り立つと同時に、交信していた観測班の奴らに殴りかかっていった。ジエイタイに殴りかからなくて良かった。外交問題だ、それは。
正直、今は負傷したことを感謝している。全くジエイタイは侮れない!対空戦竜の弾幕も凄いと思ったが、L90の比ではなかった。まともに喰らったら、バラバラどころか挽肉にされるだろう。
喧騒の声を無視して、ジエイタイの人に話し掛けてみよう。
「あんな物騒なものをいつの間に持ち込んだのでありますか!派遣隊の一等陸佐殿は『ナイトロスは安全である』と繰り返しておりましたが?」
一番偉そう(階級章で判断した)なジエイタイ隊員にかなり意地悪な質問をした。一等陸佐は、法律上ナイトロスは安全な地域で、国際協力の為に必要以上の武器は必要ない云々言っていた。今のは「安全な地域」には過剰すぎる兵器だ。・・・いずれナイトロスは危険地域になるだろうが。
「これは、フランシアの仮設空港に到着したC−1輸送機から苦労して運び込んだもので・・・」
論点はそこじゃない!だが、はぐらかされて結局答えてくれなかった。
499 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2005/09/02(金) 01:05:14 [ XitU55gg ]
・・・・・。
「全く、二人とも災難だったな!まさか実弾を使ってくるとはな!」
「ジエイタイは冗談がきつすぎるぜ!」
「冗談をこんなところで発揮しなくてもなァ・・・」
と、とりとめも無く話していた。夜もだいぶ更けてきて、食堂は四人以外はいない。ロウソクとランプの明かり以外は、夜明かりしかない。そろそろ寝ようかという時
「おや、こいつはアレックスんところのリサ・・・一等飛行兵か?」
新聞を渡される。一面には『経済交流の一環!ニホンの証券会社の客第一号は軍人!』とのタイトルと記事が書かれている。記事の内容からするに、確かにリサのようだ。あいつは張り切り過ぎだ。俺の500万シリング、返って来るかな・・・。
「おい、アレックス。お前はリサの教官役をやっていたよな?彼女は戦闘服を着込んでると分からんが、結構いい体してる!・・・出来ているのか?・・・やったのか?」
そんなダイレクトに聞くな!
「出来てないし、やってないな。上官と部下の間柄以上ではないと思う。うん。」
「じゃぁ、投資した金が返ってこなかったら、『金が払えないなら、体で払ってもらおう』って言えば、上官命令に背けないリサ一等飛行兵は、顔を赤らめながらその服に手を・・・」
「どんな妄想だ!場末の劇場の三シリング芝居の見過ぎだ。俺は紳士なんだよ。っていうか、俺がリサに金を預けたのを何で知っている?!」
「有名な話だ。」
「2000万シリングは集めたって話だぜ。」
「女子兵から一口5万シリングで金を集めていたとか。彼女はフランシア基地女子兵の元締だしな!」
俺は百口分か、配当がとても楽しみだ・・・・・・・・・・。
「もう寝よう。疲れた・・・」