25 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/09/28(木) 22:53:57 [ vfr.33Fk ]
 @三大国
 『ナイトロス王国』
 人口2000万人の立憲君主制国家。北大陸北部のナイトロス半島と南大陸北部を領有する。
 人間がほとんどだが、南大陸には獣人や亜人も居住している。製鉄業、造船業、海洋貿易などが盛ん。
 軍事力は極めて大きい。高度な魔法技術を利用した魔法兵器や、高性能の軍艦は他国の羨望の的である。
 その代わり、上の二軍に予算を取られ、空軍は飛竜の配備数が少ない。

 『コバルタ連邦』
 人口1500万人の議会制民主主義国家。南大陸西部を領有する。
 鳥人族と、アルエスから併合した東部地域原住のエルフ族が主な住民。紡績業が盛んだが、景気は停滞している。
 軍事力はそれなりに大きい。航空騎兵隊の数の多さは、少数精鋭主義だったナイトロスの脅威である。
 陸軍の数は多いが大したことはない。海軍はようやく近代的な軍艦の建造・配備が始まっている。
 首脳部の権力闘争によって政治的・経済的・軍事的に混乱しつつあり、周辺国は警戒している。

 『アスター社会主義連邦共和国』
 人口1100万人の、書記長が最高責任者の集団指導体制社会主義国家。南大陸南東部を領有する。
 ほとんどが竜人族。五ヵ年計画に基づき、重工業と鉱業の開発を推し進めている。
 陸軍は驚異的に強い。それは歩兵一人一人の戦闘力と戦竜の存在が極めて大きい。
 空軍の飛竜も、ナイトロスやコバルタに遜色ないレベルで、地上襲撃飛竜など特異な飛竜も所持している。
 海軍は旧式。ナイトロスの除籍された装甲艦を購入して間に合わせている状態。
 大祖国戦争の傷は癒えておらず、勢力を失っている。

26 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/09/28(木) 22:55:43 [ vfr.33Fk ]
 Aそれ以外の国
 『サマリム共和国』
 人口500万人のファッショ支配の共和国。ナイトロスの南にある。
 エルフ族主体だが、他地域のエルフ族と文化や人間性がかなり異なる。石油輸出が主な産業。
 『水を使い過ぎて訓練で遭難』『軍の訓練は美味しい料理を作るために費やされる』と揶揄(事実)されるが、決して軍は脆弱ではなく、特殊部隊や空軍の飛竜は強い。
 海がないが海軍はある。河川砲艦や湖沼警備艇が所属している。

 『ノステル王国』『ウェッセンラント大公国』『シェデル人民共和国』
 エルフ族、ドワーフ族の国。南大陸中央部の高原地帯にある。豊富な鉱物資源の採掘が主な産業。
 ウェッセンラントはかつての大国だったが、今は見る影もない。
 シェデルはアスター連邦最大の衛星国。

 『中央アルエス』
 エルフ族の国。大陸南部にある。鉱業と農業以外にこれといった産業はない。
 古代〜中世にかけてはエルフ諸族を統括する大国だったが、時とともに弱体化。
 アスターの内戦の影響をもろに受けて、現在では南大陸最後進地域の汚名を賜っている。

 『メリダ帝国』『ケビシニア』
 犬人族・猫人族そして数々の少数民族が居住する、南大陸南部の国。
 漁業の他、商品作物の国外資本プランテーションが盛ん。産業革命が起こりつつある地域。
 メリダはかなり高性能な飛竜を開発し、それを輸出しようと策動している。

49 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/09/30(土) 23:02:47 [ vfr.33Fk ]
アイヤー!忘れてた
>>27追加
『日本国』
 人口1億2000万人の象徴君主制な議会制民主主義国家。南北大陸西部に出現。
 人間しかいないが人種は多様。原料の輸入と加工品の輸出が国家の基幹。
 軍事力は世界最大。物資不足で稼働率は低下気味。
 一時期は北海道、四国、九州はソドムとゴモラ手前で、本州の大都市圏はヨハネスブルグを笑えない状況だった。
 冬が到来し、飢饉の進行で犯罪をする気力も無くなって、現在の日本国内は危険な小康状態。

27 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/09/28(木) 22:57:24 [ vfr.33Fk ]

 B連合帝国と軍組織
『オスミア=ハフニー連合帝国』
 人口6000万人の専制国家。人間しかいない。北大陸のほとんどを領有。
 皇帝と、国教会の教皇の権力の綱引きで国を統治。今のところ、教皇の権力のほうが大きい。
 町の中は絶望するほど汚れてはいない。

「帝国騎士団/国教会騎士団」
 帝国騎士団は皇帝や諸侯、貴族に仕える戦士。大規模な騎士団だと領地を持っていることも多い。
 歴戦の勇者もいるが、貴族の子息やコネで入団した者も多数いて、全体の実力を下げる原因となっている。
 国教会騎士団は教皇直属の実力行使部隊。領地などは持たず、教会からの支援で活動。
 国教会の腐敗が進むにつれて、騎士団の腐敗も深刻になっている。
 幸い、どちらも醜態を見せる前に壊滅した。

「竜騎士団」
 飛竜に乗った騎士たちの集まり。地上の騎士に比べると実力が重視される。
 南大陸・日本の高性能な飛竜・戦闘機や強力な対空兵器と戦って、数多くの竜騎士が戦死した。
 
「天馬騎士団」「近衛天馬騎士団」
 竜騎士の女性版。飛竜ではなくペガサスに乗る。
 志願制で完全実力主義。近衛天馬騎士団は特に選りすぐりの猛者が集まる。
 構成員は10代から30代前半の下級貴族の子女や平民の娘が主体。
 ペガサスに乗れない構成員は、通常の騎士となる。それでも並の男性騎士より強い。
 領地を持たず、騎士は完全な給与所得者。戦争準備に伴う財政の悪化で、遅配や現物支給が常態化。
 全ての天馬騎士団は、第一皇女で近衛天馬騎士団長のエーテルガルドが指揮権を握っている。

「魔術師」
 魔法学校や魔術師ギルドに所属している。
 顧客からの要請に応じて、戦争などに従事する。
 派遣される魔術師の能力は、顧客の支払う金額に正比例。

28 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/09/28(木) 22:59:19 [ vfr.33Fk ]
 C人物紹介・その一
『アレックス』
 ナイトロス空軍の大尉。ジーク飛行中隊の副隊長。
 技量は飛びぬけているが、隊長には人間的にも竜騎兵としても敵わない。
 部下からは慕われているが、からかわれることも多い。
 日本の仁侠映画にはまっている。

『隊長』
 ナイトロス空軍の少佐。名称未設定。ジーク飛行中隊の隊長。
 精鋭の集まりであるジーク隊を束ねるだけあって、技量は神。
 最近の戦争の姿に悩みつつも、部隊の指揮を執っている。

『リサ』
 ナイトロス空軍の一等飛行兵。ジーク飛行中隊所属。
 技量は充分だが、ジーク隊内では未熟扱い。
 趣味は「お金の増える過程を楽しむ」こと。親しい人から資金を募って投資を始めている。
 上官のアレックスに惚れているようだ。
 現在、負傷により後送されて治療中。病床では大尉を落とすための研究を積み重ねている。

『少尉』
 ケビシニア空軍の少尉の猫人族。名称未設定。
 女性が好きだが、故郷には相思相愛の許婚(幼馴染)がいる。
 髭が自慢だが、戦いで焦げて縮れてしまった。
 数年後には、某夫婦に日本製の夜の道具で*を掘られる。

『中尉』
 アスター空軍の中尉。コジェドフ。
 世渡りが上手な竜人族。故郷には妻とまだ見ぬ雛がいる。
 飛竜を戦闘で喪失したが、帝国軍先鋒をアスターに降伏させるという行動により賞賛される。
 遠い未来には書記長に就任。

29 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/09/28(木) 23:00:51 [ vfr.33Fk ]
 D人物紹介・その二
『首相』
 政治的妥協で誕生したナイトロス首相。影が薄い。
 挙国一致内閣で政治生命は保証されているが、やはり影が薄い。

『国王』
 ナイトロスを対外的に象徴する存在。権力は大してない。
 二人の息子がいる。
 王室予算が少ないのを悲しんでいるようだ。

『書記長』
 アスターの代表。大祖国戦争の反省で、権力が集中しないようになっている。
 それでも裁量の権限は大きい。

『エーテルガルド』
 連合帝国皇帝の第一皇女。かなり愚痴っぽい。
 言われたことは、嫌々ながらもこなすタイプ。戦士としての素質は非常に優れている。
 自己の状況を達観し、どこか世界を諦念の感で見つめている。
 身体の風通しが少し良くなった(本人談)

 航空自衛隊が帝都を爆撃した時点で責任を取らされ、縛り首or斬首になり
 南大陸陣営の「敵ながら惜しい人材を亡くした」な役割の予定だったのは秘密である。

『副騎士団長』
 近衛天馬騎士団の副団長。名称未設定。
 上官であるエーテルガルドに危ないくらい陶酔している。
 副官として、様々な根回しや意見の調節などをしている。
 団長の愚痴を最後まで聞ける数少ない人間のうちの一人。

30 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/09/28(木) 23:03:49 [ vfr.33Fk ]
 E人物紹介・その三
『皇帝』
 連合帝国の皇帝。
 指導力は平凡で、その為に国教会の跳梁を招いてしまった。
 ニホンとの戦いで重傷を負い、帝位の禅譲を宣言。

『教皇』
 国教会の最高指導者。生臭の腐れ坊主。
 麻薬の吸いすぎで、ヤク中である。

『ムッター将軍』
 突撃しか知らない筋肉馬鹿。しかし、なぜか死なない。

『皇太子』
 帝位継承権を持った、エーテルガルドの兄達。
 彼女を貶めようと、数々の無理難題を押し付けた。
 陸上自衛隊の攻勢で、殆どが戦死した模様。

『貴族』
 無能者の代名詞。

『内閣総理大臣』
 日本の首相。物語は2005年末なので、ライオンヘアのあの人。
 心労で髪は真っ白。


43 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/09/30(土) 22:41:46 [ vfr.33Fk ]
投下しましょう

>>32
この世界に本来いなかった勢力ですから・・・
>>37
乙です
エウ○ュリー作品を買おうと出かかけて、スタジオ・○ゴとソフトハウス○ャラの二作品を買った私が登場ですよ
戦騎も隷姫も高すぎだよママン・・・
最近は、純ファンタジー世界を舞台にした作品が減ってきましたね
>>39
モデルがモデルですから!
>>40
 『特撮映画「大メイド怒る」・あらすじ』

「自衛隊に協力しなかった者はこうなる!良く見ておくのだ!!」
 館を自衛隊に焼き払われ、見せしめのために磔にされたうら若き乙女。
 このまま銃殺されようかという時、奇跡が起こった!!

 突如として自衛隊の前に現れた無表情なメイド。
 それは屋敷の中で焼け死んだはずの潔癖症なメイドだった。
 そして、自衛隊が射殺しようとすると・・・
「うわー!メイドが巨大化したぁぁ!?」
 人々の目の前で巨大化するメイド。
 両腕を交差させると、無表情だった顔は魔神も慄くほどの憤怒の形相になった。
「撃て!撃て!!」
 自衛隊は、展開していた戦車や戦闘機で猛攻撃を加える。
 それを毛ほども気にせず、「気」を溜めていく。
「暗黒翡翠拳!!!」
 メイドから放たれた紫の波動は、自衛隊をこの世から完全に消し去った・・・。

 閃光が消えると、メイドの姿は掻き消えていた。
 村人と救出された乙女は懸命にメイドを探したが、遂に見つかることはなかった。
 しかし、悪しき者どもが世にはびこる限り、料理は下手だが掃除好きの赤髪メイドは再び現れるだろう・・・(終)

 …2021年 ナイトロスシネマ、インペリアルアミューズメント、アスター国営通信共同制作作品…

44 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/09/30(土) 22:43:02 [ vfr.33Fk ]
 2005年度最後の日、各国の意見のぶつかり合いと妥協の末、連合帝国と南大陸・日本政府との間で条約が締結された。
 条約の名前は「東京条約」。オキシゼ条約となるはずだったが、ナイトロスと日本政府が東京で結んだ秘密協定がウェッセンラント・デイリータイムスにすっぱ抜かれ(各国は秘密協定を承知していた)、この名前になったのだ。
 年末に締結されたので、日本式の年末の名称「大晦日条約」とも世間では呼ばれるようになる。
 内容は敗北した連合帝国の賠償が主体だが、抱き合わせで複数の付帯事項も付いている。

 「東京条約」概要(各国の連合帝国への賠償要求など)

 ・ナイトロス王国
 グリューネブルグ市と隣接地域のナイトロス王国への半永久的併合
 東海岸各地の港湾施設の優先利用権
 フランシア―リューベン間直通道路の建造
 東海岸での漁業の権限を10年間ナイトロスに移行する
 沿岸・海底資源開発は、必ずナイトロス資本を参加させる

 ・コバルタ連邦
 賠償金1500億シリング
 コバルタ産綿布の優先輸入権

 ・アスター社会主義連邦共和国
 賠償金1900億シリング
 D26、BD5戦竜各200ずつを100億シリングで購入

45 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/09/30(土) 22:44:30 [ vfr.33Fk ]
 ・ウェッセンラント大公国・ノステル王国・サマリム共和国
 賠償金各700億シリング

 ・メリダ帝国
 賠償金200億シリング
 SW10爆撃飛竜30騎を40億シリング、W35戦闘飛竜50騎を10億シリングで購入

 ・サマリム共和国
 賠償金400億シリング

 ・フィラーデ王国、マルグラント公国、テザック公国、中央アルエス、南アルエス共和国、赤道アルエス、パジャリクス連邦、ワデナジア共和国、シェデル人民共和国、ファエトメオネ王国、ネーブル自由国、アルドン民主共和国、ケビシニア、ポートテセナール、リバティア王国・・・
 賠償金1000億シリングを、各国協議の上で分割する

46 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/09/30(土) 22:46:14 [ vfr.33Fk ]
 ・日本国
 北大陸西岸海域の資源・海運を管轄
 連合帝国西部の支配権を一時的に日本国に委譲する。五年ごとに帰属を帝国と協議する
 帝国領北限以北地域の北大陸は日本に編入
 帝国産出/生産物資は、日本国が適正な価格で生産者から優先的に購入できる

 ※共通事項
 国交の回復、貿易の再開

47 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/09/30(土) 22:47:48 [ vfr.33Fk ]
 以上のような内容と幾つかの付帯規約が設けられている。

 ・連合帝国第一皇女の皇帝即位をもって、この条約は正式に発効する
 ・即位時までに、第一皇女関連の負債は南大陸各国と日本国が弁済する
 ・日本国は北極大陸の優先資源開発権限を有する。北極大陸は帰属なしの大陸とする
 ・日本国は、東大陸の未開発地域を領土として加える
 ・共通年号は修正明石標準暦を正式採用する
 (以下略)

 この条約が締結された後、各国の記者団の前で帝国の第一皇女とナイトロス王国第二王子の婚約が正式に発表された。
 晩餐会の席の二人のなんとも言えない笑顔とともに、2005年最後の日は終わろうとしていた。







68 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/02(月) 22:38:31 [ vfr.33Fk ]
 新年の祝賀行事を終えて、割り当てられた部屋に帰ってきた第一皇女と第二王子。顔には疲労の色が濃く出ている。
「ばれてなかった・・・わね。」
「うん。ばれてなかった。」
 二人は、国王や参加者達が普通に、いや、気前良く接してきたのに安心していた。
 二人の婚約を祝福したり、記念の品を贈られたり・・・
 『ヤッてしまった』のを前提にして、全てが進んでいた。
「ばれたら、父上は怒るだろうなぁ・・・」
「その時はその時でしょ?」
 二人は数日前のことを思い出していた

69 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/02(月) 22:39:34 [ vfr.33Fk ]
 ・・・。
「どうしたのよ・・・早くしなさいよ・・・」
 第二王子の目の前には、生まれたままの姿の麗人が羞恥に顔を赤くしながら佇んでいた。
 鍛えられてしなやかでありながら、女性特有の丸みを失っていない肢体。
 すぐにでも抱いて自分のモノにしたい!
 邪な考えは、実行に移す寸前に理性によって押さえつけられた。
「こんなのはやっぱり駄目だ!」
「駄目って・・・私は武骨だから性の対象にはならないの?」
「そうじゃなくって、成り行きで関係を持とうなんて駄目だってことだよ!」
「じゃぁどうすればいいの?私とあなたがくっつくのは決定してるのよ?」
「そうかれしれないけど。まずは服を着て・・・」

70 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/02(月) 22:40:19 [ vfr.33Fk ]
 ・・・。
「このまま君として、子供ができたら偉い人たちは喜ぶだろうけど、私と君はどうする?」
「でも、私達に拒否することはできないわよ。」
「そうだけど、すぐに何もなしに抱くことなんて、私はできないよ。」
「・・・・・。」
「エーテルガルド殿が、私を伴侶として相応しいと認めてくれれば、その時は・・・今は駄目だよ。」
 その後、良く話し合って関係を持つのはお互いを認めてから・・・ということになった。
 そのままでは周囲は黙っていないだろうから、いろいろと「工作」することになった。

71 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/02(月) 22:41:15 [ vfr.33Fk ]
 まず、シーツや掛け布団をヨレヨレのクシャクシャに、そして水でわずかに湿らせた。
 更に、赤ワインを少しだけシーツに垂らした。
 一時間ほど、断続的にベッドを軋ませた。
 極めつけは、早朝に湯浴みのために(二人で)浴場に向かった。当然同時に、全裸で。
 朝の食事の際には、国王はかなりの笑みで(使用人から色々聞いたのだろう)二人を出迎えている。
 会議が始まると、ニホン特使からめでたい時に出される「赤飯」というご飯と、強壮剤らしい「うなぎパイ」が贈られた。
 他の大使たちも次々に「おめでとうございます」と二人に声をかけた。
 そして新年までばれずに済んだ。二人はほっとして同じベッドの同じ枕で眠りにつくのであった。

72 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/02(月) 22:42:54 [ vfr.33Fk ]
 ・・・。
「隊長・・・結局新年を書類整備で迎えちゃいましたね・・・。リサを一回は見舞いたかったなぁ。」
「ああ。綺麗な雪だ。リサは大丈夫だろう。」
 窓の外は雪が降り積もっている。これだけ沢山の雪を近くで見るのは初めてだな。フランシアではあまり雪が降らない。
「アレックス。あの二人はどうした?確か書類のチェックを頼んでたはずだが。」
 二人。いつの間にか腐れ縁の間柄になった猫人の少尉と竜人の中尉か。
「朝っぱらに、はしゃぎながら出掛けて行ったような・・・」
 『雪を見るのは始めて!』と言う少尉と、『中央山脈の雪以外を見るのは始めて』な中尉は子供のように部屋から出て行った・・・気がする。
「元気だな。我々は暖炉無しにはやってけないというのに。」
 今日は特に冷え込みが激しくて、暖炉をガンガン焚いている。

73 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/02(月) 22:43:54 [ vfr.33Fk ]
「あの二人は今頃、雪合戦でも・・・中尉は竜人族だよなぁ。手加減しないと少尉の頭が弾けちま・・・」
 ばたん!
「アレックス。噂をすれば何とやらだな。二人ともお帰り・・・?」
「どうしたんですか隊長・・・て・・・何だ貴様ら!?」
 開け放たれた扉の向こうには、雪まみれな物体が大小二つ並んでいた。
「同志大尉・・・寒い・・・」
「温かいものを・・・」
 アホだこいつら。厚着も何もせずに遊んでたのか?おまけにお前達は南国の南大陸南部出身だろうが!
「楽しかったか?コーヒーと紅茶のどっちを飲む?」
「自分は・・・ウジ産の抹茶であります。同志大尉・・・」
「隣に同じ・・・」
「それは無理だよ、二人とも。」
「もういっぺん外で遊んで来い!!」

74 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/02(月) 22:44:33 [ vfr.33Fk ]
 ・・・。
「副団長閣下。あの話は聞きましたか?」
 近衛天馬騎士の一人が、小川で水汲みをしている副団長に話しかけた。
 天馬騎士や近衛天馬騎士は、捕虜になってから食事の準備や片付けなどをやらされている。
 雪の降るような寒い日だが、もともと雪ばかりの場所で同じようなことをしていたので、どうと言うことはない。
「何の話?」
 水汲みに来ていた天馬騎士たちは水桶をペガサスに括り付けていて、副団長は一人で最後の水汲みをしていた。
 騎士団員は、副団長の後姿に話しかけている。
「エーテルガルド団長閣下が婚約なされたという話ですよ。」
 副団長の水を汲む動きが止まった。

75 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/02(月) 22:45:47 [ vfr.33Fk ]
「私も聞きました。ナイトロスの第二王子と婚約したと・・・」
「ナイトロスの兵士が話してました。副団長はどう思って・・・」
 ブルルルッ
 急にペガサスが怯えだした。
「どうしたの?ほら落ち着いて!副団長!ペガサスが急に・・・ヒィッ!?」
 後姿の副団長からは、猛烈な負のオーラが噴出していた。
「あぁぁ・・・」
 その場にいた天馬騎士たちは恐怖で足がすくみ、副団長から目が離せなくなっていた。
 副団長が振り返る。その時には周囲を包んでいたプレッシャーは雲散霧消していた。
「さぁ、水汲みが終わったから帰りましょう。」
 以後、近衛天馬騎士団副団長の前では婚約の話はタブーとなった。

76 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/02(月) 22:46:40 [ vfr.33Fk ]
 ・・・。
『魔探室から艦橋へ!魔探に感あり!数10!こちらに接近中!』
「了解。今日はクラウドドラゴンが迎撃担当だったな。サム隊の離陸を急がせろ!」
「今日は数が少し多いようです。見習い竜騎士が従竜騎士になったのかもしれませんね。」
「うむ。」
 グリューネブルグ沖に停泊するナイトロス王国艦隊は、新年早々にルーチンワークとなっていた帝国飛竜の迎撃準備を始めた。
 占領直後こそ大規模な竜騎士団の襲撃があったものの、自衛隊護衛艦の活躍もあって、ことごとく排除した。
 敵も戦力が払底したのか、一日一回の少数による襲撃が常態化していた。
 それでさえ、すぐに適当に空戦をして追い払う、という儀式的な物になった。
 今ではすっかり、艦隊所属の飛竜の腕が落ちない訓練として利用されている感がある。
 敵も諦めたのか、従竜騎士に実戦を兼ねた訓練として毎日飛び立たせているようだ。
 と言うことで、海上自衛隊はやることが少なくなり、グリューネブルグ港に来る貿易船の臨検に参加している。

77 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/02(月) 22:47:18 [ vfr.33Fk ]
 飛行甲板に降り積もった雪を整備兵が海に掃き捨て、空いたスペースから戦闘飛竜が飛び立っていく。
 艦艇群は抜錨し、対空兵器要員が氷を叩き割るハンマー片手に配置につく。
 グリューネブルグ市内各所に設けられた対空魔法陣地では、魔力のチャージが開始されている。
 復興に忙しい市民は接近を知っても逃げない。すっかり慣れてしまっていた。頭上に気をつけるだけである。
 帝立グリューネブルグ魔法学校では、「王国の魔法技術を見る」臨時講義が早速開講している。
『サム01よりサム隊全騎へ!年の初めだ。落とさない程度に遊んでやれ!』
『『了解!』』

78 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/02(月) 22:48:15 [ vfr.33Fk ]
 ・・・。
『茄子1、目標確認!』
『茄子2、目標確認!』
『鷹1、目標確認!』
『鷹2、目標確認!』
 北大陸西部では、航空自衛隊による空爆が継続して続けられている。
 燃料の関係で大規模ではないが、ピンポイントで攻撃が続けられていた。今は主に敵兵力に対してである。
『茄子1、お年玉投下!』
『茄子2、お年玉投下!』
『鷹1、お年玉投下!』
『鷹2、お年玉投下!』
 お年玉こと250キロ爆弾は、集結していた騎士団のど真ん中に落下して、そのほとんどをなぎ倒した。



93 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/04(水) 23:15:15 [ vfr.33Fk ]
 アスター連邦派遣軍の空軍司令官に呼ばれた時、最初は理由が分からなかった。
「同志コジェドフ中尉。君を呼んだのは他でもない。」
 ナイトロス王国のエルビヌメイン基地施設の一角に設けられた司令室には、司令官と政治将校の二人しかいなかった。
 書記すらいない。いったいどういうことなのだ?
 私は時間の空いている時は、司令の傍にいて色々と補佐をしている。人の召喚の情報も掴んでいたつもりであったが、自分自身の召喚は掴んでいなかった。
「同志司令閣下。なぜ小官が呼ばれたのでありますか?」
 こういう場合、婉曲に聞いて政治将校の疑心を買うよりは、率直に聞いたほうが良い。
「同志コジェドフは、夜間襲撃で乗騎を喪失しているな?」

94 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/04(水) 23:17:03 [ vfr.33Fk ]
「はい。連合帝国第一皇女エーテルガルドの雇った魔術師部隊の集中砲火を浴びてです。」
 おかしい。この点についての責任は、既に帳消しとなっていたはず。本国で何かあったのだろうか・・・?
「あれは本当に不幸な出来事だった。改めて君の戦友の死を悼むよ。」
「同志司令官。本題に移りましょう。」
 脇に控えていた政治将校が、本題に移ることを要求してきた。
「ふむ。同志コジェドフ。君は本国からやってくる新型飛竜のテストパイロットになってくれ。実地訓練を兼ねてだ。」
 新型飛竜。始めて聞く。イリューシンかミコヤン・グレビッチかヤコブレフか・・・
「ツポレフが開発した仮称"ツポレフ4"。航続距離は2000キロに迫る次世代の爆撃飛竜・・・いや、戦略爆撃飛竜だ!」
「なぜ小官にそのような飛竜が渡されるのでありますか?」
「本来ならヤコブレフ17の予定だったのだが、航続距離が短すぎて話にならず、ミグ15やラボーチキン15は君が不得意な戦闘飛竜且つまだ実戦に出せる代物ではなくてなぁ・・・」
 話が見えてきた。同時に妻と雛の顔が遠ざかる。代わりに司令の顔が近づく。
「君は騎長として頑張ってもらいたいのだ。データを集めるよう、是非とも同志に頑張って欲しい!」

95 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/04(水) 23:18:27 [ vfr.33Fk ]
 ・・・。
 トボトボと尻尾を垂らして、同志大尉とジーク隊の隊長殿が執務室として使っている部屋に帰った。
「お帰り中尉!外は寒かっただろう?」
 同志大尉は書類やインクと睨めっこしつつ、声をかけてくれた。
「へへへ・・・おかえりー中尉〜!・・・スーハースーハー・・・」
 同志少尉はサンバーンフィッシュの干物を暖炉であぶるのを見ながら、麻袋に口を当てて・・・
「同志少尉・・・悪いことは言わないから、マタタビは控えたほうがいい。」
 最近、麻袋にマタタビを入れてそれを熱源近くで加熱し、その芳香を吸うというアブナイ遊びが猫人族で流行らしい。
 マタタビは猫に対して恍惚感を与えるらしいが、猫人族に対しては麻薬か何かにしか見えない。
「本国じゃぁマタタビを・・・スーハー・・・規制してるんですよ・・・合法的に吸えるのは・・・・スーハー・・・イイ・・・イイにゃぁ!!」
「・・・。」
 相談しようと帰ってきてはみたものの、大尉と隊長は仕事中、少尉は・・・イッてしまっている。
 あの愚痴っぽい皇女様がいれば、間違いなく彼女に愚痴っているのに。本当に残念だ。



107 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/06(金) 23:44:54 [ vfr.33Fk ]
「エーテルガルド殿!起きてください!」
「んん・・・?」
 何よ・・・折角気持ちよく寝ていたのに!
「目が開きましたか?はい、これに着替えて!」
 第二王子だ。何と聞き返す前に服を手渡された。
「うぅん?まだ夜中じゃない。」
「だからですよ!ほら急いでください!!」
 何が起きているのか分からないうちに、着替えさせられちゃった。

108 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/06(金) 23:45:29 [ vfr.33Fk ]
「ここから降りますよ!」
「ここからって・・・脱走?」
 二人で使っている部屋の窓から出ようと言ってる。
「だ・か・ら!一体・・・」
「しーっ!静かに!」
 声のボリュームを下げて、もう一遍第二王子を問い詰める。
「脱走するの?」
「脱走?言い方が悪いよ。市井の見学だよ!」
「無許可のね。面白い所に連れてってくれるなら、一緒に行くわ!」

109 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/06(金) 23:46:07 [ vfr.33Fk ]
 それから警備の目を掻い潜り、あちこち歩いているうちに離宮から出ていた。
「随分手馴れてるわね?初めてじゃないの?」
「兄と良く二人で、離宮やフランシアの王宮を抜け出し、夜の繁華街で遊んだものです。」
 今となっては恥ずかしい若気の至りですよと、恥ずかしそうに言う。
「そんなのに私を誘うのは何で?」
「偶には街の様子を見るのも悪くは無いですよ。それに、言葉と文字だけでは文化の理解は難しいですから。」
 私は南大陸の事を色々教わっている最中だけど、それって私を誘う口実なんじゃぁ・・・
「随分遠回りな逢引のお誘いね。でも、もう来ちゃったし・・・どこに行くの?」

110 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/06(金) 23:46:40 [ vfr.33Fk ]
 真夜中のオキシゼ市内は、明るい!昼みたいに明るい!!(陸地は見えないけど)海峡の対岸の方は真っ暗なのに。
「ここは灯火管制が敷かれていないから、繁華街はとても明るいんだよ。」
「ふーーん」
 第二王子に道行く人はだーれも気付かない。私も彼も、変装の服は道行く人と大差ない服だからかも。
「ここですエーテルガルド殿。」
「ここ?」
 周りの店と比べると、何だか小さい感じの店ね・・・しょぼい?
「そんな目で見ないで下さい・・・私の所持金なんてダイブスパローの涙ですから、王室の状況を察してください・・・」
 私も文句を言える立場じゃないわ。彼に恥は掻かせられない。私だって似たような経験は何度もある。
「ごめんなさい。お店・・・入りましょう。」

111 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/06(金) 23:47:16 [ vfr.33Fk ]
『いらっしゃいませ!お二人様ですね。こちらへどうぞ』
 愛想の良い猫人族の給仕に案内されて、席に座った。第二王子は給仕に何かを注文している。
「いかがわしい店に行くのかと思ってたわ。」
「殿下がいるのにそのような店には」
「私が居なければ行くの?」
「(ギクギクッ)」
「安心して。私は性欲は否定しないから。今私に向けられると困っちゃうんだけどね。」

112 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/06(金) 23:48:03 [ vfr.33Fk ]
 話しこんでいるうちに、食事が運ばれてきた。いい香り!
「私の奢りですから、気にせず食べてください。」
 ワインで乾杯をして、食事を始めた。
「おいしい!」
「王国南部の庶民料理ですよ。喜んでくれて有難いです!」
 離宮の料理と違って、食べ易い。私が普段食べてたのも庶民の料理だったわね。
「本当ならニホンの恋愛映画を鑑賞したいところですが、今日はこれで我慢してください。」
「エイガ?・・・絵が動くという物ね。楽しみにしてるわ!」

113 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/06(金) 23:48:33 [ vfr.33Fk ]
 けど、思ったより楽しかった第二王子との食事は暫くして終わった。
『お客様、店内で暴れられては・・・キャーー!』
「黙れや猫娘!文明人にいつから歯向かうようになったぁ!?」
 給仕の娘の悲鳴が店内に響き渡った。
「あの客達・・・何者?」
「あれはニホンの輸送船の船員ですね。・・・時々暴れて困った連中です。」
 第二王子は目尻を下げた。私は好き勝手し放題のニホン人に・・・
「ちょっと連中を懲らしめてくるわ!!!」
「ぇえ!?危ないですよ殿・・・エーテ!」

114 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/06(金) 23:49:28 [ vfr.33Fk ]
 私は狼狽した王子を放っておいて、不貞なニホン人たちの前に立った。
「この酔っ払いバカ!暴れたいなら船の上で暴れればいいじゃない!」
「何だテメェ!?」「ババァの出てくる幕じゃねぇぞ!」
 ぶち
「誰がババァですってぇぇぇ!!!?」
「アンタだよ、年増姉さ・・・ブギャ!?」
 一人を思いっきり殴り倒した。ピクピク痙攣して泡を吹いている。・・・死んでない、良かった!
「貴様ぁ!」
 数人の体格のいい男が襲ってきたけど、素人に負けるはずがない。
 数分後には、全員床でのびていた。・・・やっぱり死んでない!私って手加減上手だわ!!
「ふふん!ザマ見なさい!分不相応なことをするもんじゃないわよ・・・!?」
 王子に止められた。それに野次馬も沢山集まっている。
「ほら・・・帰るよエーテ!」

115 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/06(金) 23:50:06 [ vfr.33Fk ]
 ・・・。
 第二王子に手を引っ張られ、人気のない通りまで連れてこられた。しっかりと代金は支払ったみたい。
「何を考えてるんですか殿下は!危ないですよ!」
 王子に怒られた。
「私は竜人族を条件付だけど倒したのよ。あんな酔っ払いは素手で充分!」
「・・・『竜人族に接近戦を挑む』という諺は『自殺する』という意味があるんです・・・殿下はとんでもない勇者ですよ。」
 褒められるというよりは呆れられてる。酷いわ。
「今日はこの位で帰りましょう。楽しかったですか?」
「もちろん!」
 それから、私は第二王子に連れられて、数日に一回離宮を抜けるようになった。


140 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/08(日) 23:58:01 [ PUcEzn0s ]
 遂に、遂に・・・!
「書類が終わったーーーー!!」
「うるさい。」
 口を閉じた。隊長には敵わねぇな。
「アレックス、主計には私が直接届けておこう。そうだな。君は久しぶりにフランシアに帰ったらどうだ?」
 マジで!?二ヶ月ぶりか?
「喜んで!」
「今日は準備で行けないだろうから、休暇は明日から三日間だ。・・・そうそう、リサにも伝えておこうか。彼女はだいぶ回復したそうだ。」
 そうか。一月弱で回復っていうのもすげえ。
「言っておくが、体調は万全ではないから無茶なことはするなよ?」
 分かってますとも。

142 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/08(日) 23:58:51 [ PUcEzn0s ]
 ルンルン気分で掘っ立ての寄宿舎に戻り、荷物をまとめていく。
「あれ大尉?どこかかれるのですか?」
 今日はマタタビを吸っていない少尉だ。彼も何か荷物をまとめている。
「これですか?ケビシニア空軍派遣部隊の兵士達の手紙です。コードロン445でフランシアまで運んでたんですが、寒さで体調を崩してしまっていて・・・」
 それで、少尉のポテーズが手紙を運ぶことになったそうだ。本人は街に出れるとはしゃいでるが。
「俺はリサに会いに行こうかと思っている。」
「・・・。」
 尻尾と耳をパタパタさせている。貴様は犬か?
「ついてくるなよ?」
 残念。と言って、少尉は手紙をまとめる作業に戻った。

143 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/08(日) 23:59:40 [ PUcEzn0s ]
「中尉は留守番だn」
「いえ同志大尉。小官もフランシアに行き、新しい飛竜を受領しに行きます。」
 部屋の隅で静かにしていた中尉にも声をかけた。
「良かったじゃないか!新しい相棒と仲良くしろよ!」
 中尉はあまり喜んでいないようだ。「イリューシン28は速い」とか「ツポレフ4は遠く」とか唸っている。
 聞かない名前の飛竜だ。情報の漏洩に当たる気もするが、そこは俺と悩める蜥蜴の間柄。聞かなかったことにする。
「結局、三人とも同じ日にフランシア行きか。全くイヤな偶然だ!」
「同志大尉と同志少尉と小官の仲の良さに、古竜が応えてくれたのでしょう。」
 嫌だい。そんな報われ方・・・
「妙に変な空気になりなりましたね。お二方とも、マタタビを吸って元気に・・・」
「結構だ」「謹んでお断り申し上げる」

144 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/09(月) 00:00:58 [ PUcEzn0s ]
>>141
正直、スマンかった。で、オマケ>>123-124

「エーテルガルド殿下・・・」
 日本人を張り倒した翌日、青い顔をした日本大使がエーテルガルドの元に出向いてきた。
「ふぅ〜ふぅ〜ずずず?」
 エーテルガルドはホットミルクセーキ・・・牛乳・砂糖・卵をよく混ぜた飲み物・・・を口にしている。
「何か?」
 第二王子が、代わりに質問をした。
「昨日は・・・・・王子と殿下に失礼をしてしまいました!申し訳ございません!!!」
 そう言うなり、地面に額をこすりつけて土下座した。
「!?」
「ブフッ!?・・・きゃーー熱い熱い!!」
 昨日の所業がばれていたエーテルガルドは、盛大にセーキを噴き出し、口の周りと胸元が汚れてしまった。

145 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/09(月) 00:01:59 [ PUcEzn0s ]
「さて?何のことですか?」
 第二王子は驚いた表情をすぐに隠し、素知らぬ顔で大使に返事をした。
「私とエーテ・・・いえ、エーテルガルド皇女殿は自室におりましたが?」
「しかし、昨夜・・・」
「知らないものは知りません。人違いでしょう。我々が謝られる理由はありませんよ!」
 不満そうな顔をしつつも、日本の大使は帰っていった。
「は〜びっくりした・・・あんな言い方でいいの?」
 セーキを拭き取りながら、エーテルガルドは第二王子に聞いていた。
「ナイトロスの王家の外出は『公然の秘密』なんだ。犯罪じゃない限りは突っ込まないのが王国のしきたりさ!」
「へ〜。私が殴り倒したのは犯罪じゃないの?」
「・・・・・・・・・・正当防衛かな?」


155 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/09(月) 18:48:31 [ PUcEzn0s ]
 オキシゼの離宮に外務省と自衛隊関係者が出向き、王国軍・政府関係者と国王にある協力を要請していた。
「貴国の輸送船団を貸していただきたい。」
 自衛隊関係者の要求は一つだった。連合帝国西海岸に上陸する自衛隊を運ぶ手段が乏しいとの理由で。
 民間の輸送船の多くは南大陸との貿易で出払っていて、石油タンカーで自衛隊員を運ぶのは憚られるし、そもそも重火器や車両が運べない。
 結果として、南大陸最大の海運国であるナイトロスに船の融通を依頼してきたのだ。
 自衛隊が用意できたのはおおすみ型輸送艦三隻とゆら型輸送艦と旧式や小型の輸送艦に民間の中型貨物船が十数隻。
 それと在日米軍の強襲揚陸艦エセックス、ドック型揚陸艦ジュノー、ハパーズ・フェリー、フォート・マクヘンリーと高速輸送船だ。
 いずれも莫大な石油を消費するので、初回の上陸には参加するものの追加派兵時には参加させられないと言う。

156 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/09(月) 18:49:27 [ PUcEzn0s ]
「帝国西部の管轄はニホン国で対処すべき問題ですが・・・三軍の長はどう思っている?」
 国軍大臣は、出席している陸海空の司令官に意見を求めた。
 東京条約には、ナイトロスが帝国西部のことまで面倒見なければいけないという条文はない。
「海軍は都合できる範囲では構いませんが、対価は?」
 王国海軍の司令長官は、要求には応じられるが対価を求めた。
「補給路維持が難しくなる!ニホンは石油の備蓄を取り崩して内燃機関船を動かせばいい!」
 陸軍参謀総長は断固として反対した。
「空軍は管轄圏外ですので、政府の決定に従います。」
 空軍はセクト主義で面倒事を全てたらい回しにした。
 結果として、賛成一、反対一、中立一で軍の意見は見事に割れてしまった。

157 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/09(月) 18:50:10 [ PUcEzn0s ]
「国軍大臣の個人意見としましては、ジエイタイの提案は受けて損は無いと思われますが、首相閣下と国王陛下はどのように?」
 大臣は、戦時で権限が大きく与えられた首相と、権限は無くとも国家の象徴として君臨する国王に話をふった。
「輸送船を頼むなら、民間の商船会社や海運会社と契約すれば宜しいのでは?」
「それは、我が国が頼むより貴国名義で発注すればより信頼度が高くなるのではと・・・」
「ナイトロスに契約の丸投げを?またまたご冗談を!」
 首相は笑って言い返したが、中間マージンが国に入るなら悪くないとも考えていたりする。
「しかしながら、海軍の輸送部隊の過半はナイトロス―グリューネブルグの輸送任務に就いているので、貴国の要求する協力は難しいですよ?」
「それでも協力していただければ!」

158 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/09(月) 18:50:52 [ PUcEzn0s ]
「私は構わないと思っているが、『お願い』の形ではあるが少し条件を飲んで頂きたい。」
 国王は全員の意見を聞いてから言った。
「その前に、エーテルガルドを呼んできてくれ。」
 離宮の一室で南大陸の各種学問を詰め込んでいた連合帝国の第一皇女は、何が起きたのか分からない内に会議室へ連れてこられてしまった。
「あの、一体何なのでしょうか国王陛下?」
「国王陛下では無く、お義父さまで構わないのだよ?そういう間柄ではないかい?」
 押し黙った皇女を好意的な物と勝手に解釈して、国王は話を進める。
「連合帝国の捕虜をタダでまとめて送り返す手段が見つかったよ。」
「はぁ?」
「君の部下を、旧支配者回廊を歩かせずに済むのだ。」
「???」


243 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/11(水) 23:00:14 [ d4sfLyik ]
『同志大尉!ジークが言うことを聞いてくれません!』
『ジーク02より羽蜥蜴へ。貴様が乗っている飛竜は、リサの乗騎だ!間違っても変なことするなよ!』
『ダー!同志・・・』
 俺と少尉は自分の飛竜だが、中尉は、リサの飛竜に乗せて移動している。
 どうせ、中尉は母国から飛竜を受領するし、リサが飛竜に乗って帰れる。
 随分前に、臨検の為に後部に竜人族を乗せていた?エルビヌメインからフランシアまで何百キロあると思ってるんだ!?
 少尉はケビシニア宛ての手紙なんかを乗せているから、元から無理だった。
『こちらフランシア航空基地管制塔。接近中の飛竜三体は所属を述べよ!』
『こちらジーク隊のジーク02。ケビシニア空軍騎とアスター連邦竜騎兵騎乗の王国騎を先導中。どうぞ。』
『・・・飛行計画を確認した。着地を許可する。』
 エルビヌメインと違い、雪の無い基地へと着地の準備を始めた。

244 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/11(水) 23:01:33 [ d4sfLyik ]
 ・・・基地に到着し、一通りの仕事を終えたときには正午を過ぎていた。朝一番で到着したのに。
 いつも使っていた士官用宿舎の自室に帰ると、鍵を渡していた二人がくつろいでいた。
「『親愛なる我が妻へ。君と離れて幾月も過ぎたが、君の顔を一度たりとも忘れてはいない。私達の愛の結晶の雛は・・・』」
 中尉は家族宛ての手紙を書いている。何度も書き直しているのか、彼の周りには丸めた紙くずが何個か転がっている。
「大尉、帰って来ましたか。これからリサさんに会いに行くと思いますが、その時の為の私達二人からの餞別です。」
 少尉からは・・・包装紙に包まれた薄っぺらな物を渡された。
 リサに渡せというのか?
「あー同志大尉、それは同志と同志リサの「間」が持たなくなった時に出すといいと思うのであります。」
 何か良く分からんな。でも二人の好意だ。ありがたく受け取っておく。
「結構な金額だったんですから、無駄にしないでくださいよ。」
「了解した。では、行ってくるぞ。」
「色々頑張って下さいね!」「いってらっしゃい同志」

245 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/11(水) 23:02:35 [ d4sfLyik ]
 リサは市内の病院の精神科隔離病棟にいるんだったな。
 それを他人に言うたびに、いらぬ心配をされて困っちまう。
 何か買っていこうとしたが、財布が非常に軽い。諦めて病院に直行しよう。
「リサ様ですね。奥の個室にいます。」
 病院に着いて看護婦にリサの場所を聞き、その部屋の扉を開けた。
「あ、大尉・・・。お久しぶりです。」
「一時退院のお祝いに来たぞ。別れてもう一月近く経つのか。体調はどうだ?」
「まだ血が足りなくて時々フラフラするんですけど、普通に生活する分には問題ないです。」
「そいつは良かった。軍にはいつ復帰できそうだ?相方のお前がいないとしっくり来ないんだ。」
「頑張れば二月中に・・・大尉とまた一緒に飛べます。」

246 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/11(水) 23:03:53 [ d4sfLyik ]
 病院に書類を提出して、リサを病院から連れ出した。
「私、あの部屋に入れられて本当に発狂しそうだったんですよ!娑婆の空気って最高ですね!」
 外に出られたのが、相当嬉しかったようだ。
「そうだ。お前の飛竜も基地に連れてきておいたぞ。帰るときには乗って来い。」
「はい。あれ?誰か乗ったんですか?それとも」
「中尉が乗ったよ。アイツはここで新しい飛竜をうけとるらしいからな。」
「えー!?勝手に?私のジーク、ちょっと怒ってませんでしたか?」
「中尉を振り落とそうとしてたな。降りてからもすこぶる機嫌が悪かった。」
「やっぱり!あの子、少しでも重くなるとすぐ拗ねちゃうんですよ!」
 顔の覇気に欠けてるが、充分元気そうだ。あの時の青白い表情とは比べるべくも無い。

247 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/11(水) 23:04:52 [ d4sfLyik ]
 そのまま人通りの少ないフランシア市内を歩き回り(食事等は全部リサが持ってくれた)、久々の首都行楽を楽しんだ。
 リサは色々と買い物を(自腹で)していた。女性の買い物は、何故長いんだ?
「大尉。今日は楽しかったです。」
 街が夜の帳に包まれた頃、ようやくリサの買出し(らしい)が終わった。小袋一つに時間をかけ過ぎだ!
「大尉・・・」
「何だ?」
 基地に通じる道を通っていた。ガス灯が点いてなくてほの暗く、俺達以外に人もいなかった。
「好きです!大尉のことが苦しくなるくらい好きなんです!!」
 いきなり過ぎて驚く前に、リサが抱きついてきた。買い物袋が道路に投げ出される。
「お、おい・・・」
 服越しに伝わるリサの胸の感触が、妙な気持ちにさせる。これはヤバイ!!?

248 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/11(水) 23:07:16 [ d4sfLyik ]
「私、お金の事と胸しかない能無しですけど、やっぱり駄目ですか?」
 何て言い方をしやがる・・・『駄目』なんて否定できないよ・・・。
「駄目じゃないさ。とても魅力的だよ。でも、部下とは・・・」
「部下としてじゃなく、一人の女性としてなら?」
 やばい・・・これはやばい。答えたらおしまいだあぁ!!・・・あ。
「そ、そうだ!これを渡そうと思ってたんだ。受け取ってくれるかな。」
 二人の言葉、信じるぞ!リサは俺から離れて、包みを開け始めた。
「こんな有名なホテルの予約・・・大尉(惚)」
 包みの中は、フランシアでは名の通ったホテルの宿泊予約券だった・・・・・あいつら・・・・。
 ええい!もう・・・もう、後は野となれ山となれだ!!
「リサ・・・分かった。添い遂げよう。」
「はい。私、すごく嬉しい・・・」

249 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/11(水) 23:08:20 [ d4sfLyik ]
 その有名なホテルのバルコニーに、一人(一匹?)の怪しい影。
 少尉だった。猫人族の身体能力を駆使して、ホテルの壁をよじ登ってきたのだ。
(お二人はそろそろいい感じの時間かな?)
 時間は夜半に差し掛かっている。
 少尉は、音を立てないように室内の様子を慎重に覗いた。最初の「事」は終えた後のようだった。

(しゃぶってる!?飲んだ!?)

(挟む!?かけた!?)

(足!?ふともも!?)

(ああ大尉!そんなに首を絞めたらリサさん死んじゃいますよ!?)

 その後の全ては、少尉にとって未知の世界であった・・・。

250 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/11(水) 23:10:13 [ d4sfLyik ]
 世が明けた頃、少尉は大尉から間借りしていた部屋に帰ってきた。食材を幾つか持って。
「遅かったじゃないかい同志、大尉はどうだった?そのクズ肉や野菜の切れ端っぽいのは?」
 中尉は家族宛ての手紙を書き終えて、仮眠を取っていた所だった。
「頑張った大尉がそのうち帰ってくるんですが、その為にね。これはレストランの知り合いのウェイトレスから、余ったのをもらったんですよ。」
「ふん。毒牙にかけた同族の娘か。事情は何となく分かったから、料理を作るのを手伝おう。」
 部屋備え付けの小さな調理場で、余り物食材のスープが出来上がった頃、大尉は静かに帰ってきた。
「・・・ただいま・・・」
 大尉を見た二人は絶句してしまった。
 目の下に隈が浮かび、頬が若干痩せこけたように見える。
 雰囲気は40過ぎのおじさんになっていた。幽鬼の如く、足取りがおぼつかない。
「同志・・・サキュバスに襲われましたか?」
「・・・・・休ませてくれ・・・」
「寝る前に、栄養がつく物を作っておきましたから食べましょうよ。」
 休暇二日目、大尉は望まぬ完全休養となった。


281 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/13(金) 00:11:10 [ fbDvRTXo ]
 フランシア基地に始めて見る姿形の飛竜が二体。一匹はとても大きく、もう一匹はそれよりは小さいが自分が乗っていたイリューシン10より一回り大きい。
「同志コジェドフ殿。イリューシン飛竜局のイリューシン28とツポレフ飛竜局のツポレフ4です。どうでありますか?」
 空軍の技術者は、自分に嬉しそうに話しかけてきた。二匹を見比べる。
「ツポレフ4がメリダのSW29に似ているのは気のせいか?」
「いえ、メリダの爆撃飛竜の情報は掴んでいましたが、それとは無関係であります!」
 そうなのか。資料を見た限りでは、ツポレフ4は敵地深くに侵攻するために航続距離を大幅に増やした飛竜のようだ。
 乗組員は、騎長と魔法通信士と航法士。大型の爆撃飛竜としては標準的か。
 もう一匹、イリューシン28を見る。
「これは早いです。緊急時には400ノット(時速約750キロ)まで出せる優れものであります!」
 それをすると、航続距離が著しく低下するとも言われる。しかしながら、巡航速度ですら300ノットを出せる。
 格闘戦は考えていないとの事だったが、多分、同志大尉のジーク型飛竜なら引き離せるだろう。
 ・・・乗組員は「一人も可」?

282 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/13(金) 00:12:21 [ fbDvRTXo ]
「ああ。魔法通信士を兼ねる騎長が、航法士を兼任すれば一人でも飛べるのであります。」
 そうなのか。自分は出来れば一人で飛びたい。と言うことは・・・
「自分は、イリューシン28のテストパイロットになります。」
「ダー!ありがとうございます!書類等は後で送りますので、ちょっと、乗ってみては如何ですか?」
 気が利くな。これから暫くの付き合いになるのだから、今の内に慣れておくのもいいかもしれない。
「では、少し騎乗させてもらうぞ。」
 大人しく待機しているイリューシン28に手をかけた。
「新しい戦友よ、宜しく頼む。」
 少し嫌がる素振りを見せたが、自分を新しい主人と判断したのか、鐙に足をかけた時にはなすがままにされていた。
 いい乗り心地だ。早速、性能を試してみよう!

283 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/13(金) 00:13:36 [ fbDvRTXo ]
 ・・・。
『イリューシン28、離陸する!』
『フランシア基地管制塔、了解。』
 離陸すると、素晴らしい勢いで加速しながら上昇していく。
(ほら、加速だ)
 並の戦闘飛竜を上回る速度で天空を翔ける。
 ブレス攻撃は・・・禁止されている。そこまでナイトロスに手の内を見せることもないだろう。
 飛び立つ前に聞いた説明では、高高度からのブレスも可能だと言う。素晴らしい!
『同…コジ…ド…帰還せよ』
 今日はこのぐらいか。部屋で寝込んでいる同志大尉に見てもらいたかったなあ。



298 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/13(金) 23:05:43 [ fbDvRTXo ]
>>289

「やはり来てしまったか・・・」
 三佐率いる30人の自衛隊員は、ホテルへと至る道への途中、何者かに呼び止められた。
「誰だ」
 静かに声の主を探す三佐。おっ●い星人の目から、軍人の目へと変わっている。
 声の主は進路前方から現れた。
「お前はッッ!!」
「救いようのない馬鹿なエコノミックアニマルだ。本当に・・・」
「同志中尉!裏切ったのか!!」
 それは彼らに情報を漏らしたコジェドフ中尉だった。
「裏切る?私は同志大尉と同志リサの恋路を邪魔する者を事前に排除するだけだ。少尉は無害だから構わん」
「おのれぇ!!」
 各々の火器を構える自衛隊員たち。それでも中尉は揺るがない。
「自分は早く妻宛ての手紙を書かなければいけないのだ。手短に終わらせよう。」
 そう言うなり、手に持っていたスタングレネード(どこで手に入れた?)を爆発させた。
 閃光と音が消えると黒地の服で片手にM134ミニガン、片手にM79グレネードランチャー(だからどこで手に入れた?)を装着した中尉がいた。
「エージェント・●ミス?」「●−800?」
「楽しい戦争の始まりだよ。同志諸兄!!!」
 銃撃音が夜の街を切り裂いた。

299 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/13(金) 23:08:06 [ fbDvRTXo ]
>>290-297

(突撃!)
 その合図とともに、ジエイタイの車列へ攻撃を始めた。
 攻撃といっても、火をつけた爆薬(ダイナマイト)を落とすだけだけど。
 超低空を飛んでいたおかげで、ジエイタイは気付くのが遅れた。
 兵士が飛び出したところで爆薬が爆発し、十数人が吹き飛ばされた。
 天馬騎士にできるのはここまで。随伴していた竜騎士達のブレスが追い討ちをかける。
 これも攻撃は一回のみ。鉄車の何台かが火を噴くのを確認して、その場から全速で逃走した。

「団長、戦果はどうでしたか?」
「燃料を積んでいたらしいのを何台か破壊したわ。今日は戦死者なしなんて、運がいいわね!」
 秘密の基地には天馬騎士と近衛天馬騎士、各地で敗走した竜騎士や一般の騎士が集結していた。
 連合帝国を瓦解させたニホンに一矢報いるために。
「でも副団長、すぐにここから移るわよ。偵察機なり斥候が来るかもしれない。」
「御意。ナイトロスの連絡員にもその旨を連絡しておきます。」
「お願いね。補給物資がここに届けられたら話しにならないわよ。と言うわけで、総員小休止後に移動開始!!」
 今日の襲撃はジエイタイに対空兵器がなかったおかげで被害は無かったけど、次はどうなることやら・・・。
 でも、生きているうちに、ニホンに出来るだけ嫌がらせしてやろうじゃない!



318 名前:陸士長 投稿日: 2006/10/15(日) 02:34:36 [ gxdaA/nQ ]
>>298 への返信

フランシア警察署
「どうした。何が起きている!? 街の只中で銃撃戦とは!!」
「げ、現場からの報告によりますと……メイド服を着て伊達眼鏡を掛けた竜人族が、ニホン製と思われる火器を乱射して暴れています!」
「「「な、なんだってー!!」」」

サラエボ並に荒廃した街中

「くそ、このままでは近づけん!」
凄まじい発射音と共に銃撃が路面を抉り、自衛隊員達は遮蔽物の影で身を竦ませる。
強烈無比な火力によって、自衛隊小隊の前進は完全に阻まれていた。
このままでは、リサタンの初体験が見れない……そう判断した三佐は懐を漁り。
「致し方ない……肉眼で見たかったが、ビデオ画像で我慢するか」
決意したかのように、無線機を取り出す。
「ああ、私だ。我々は妨害勢力によりホテルへ到達出来ない。予定を繰り上げてのミッション遂行を願う。送れ」
「解った。これよりミッションを遂行する」
「了解。ミッションとリサタンの初体験の無事遂行を願う」

その会話を合図にしたかのように。
フランシア市へと超低空で迫る一機のMC130特殊作戦機。
それは丁度ホテルの真上を横切るように飛んでいく。
通過の瞬間―――。
『投下』
何かが、MC130から飛び降りる。
ゴソッガタゴトと間抜けな音と共に、それは屋上の端から端まで転がってようやく止まった。
「ふぅ……日本人も無茶な事考えやがる」
渋い声でぼやきつつも、それは立ち上がった。

前面と後面に『愛媛』。側面に『蜜柑』と書かれた四方形の物体。
この世界ではまだ発明されていない画期的な運搬具。その名をダンボールと言う。
そのダンボールは下の方からシティ・カモ柄とコンバットブーツに包まれた両脚を動かして屋上の隅に移動し、蹲った。

「こちら(ノイズ音)ネーク。●●ホテルに潜入した。指示をくれ三佐」

続くかも。



322 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/16(月) 00:08:11 [ yED6NQag ]
 三日目、大中小の士官トリオは帰還の準備をしていた。
 幾分回復したものの、未だに本調子ではない大尉。
 妻への手紙を届けて、返事が楽しみな中尉。
 フランシアで買い込んだ商品の数々を、乗騎に括り付ける少尉。
 三者三様の姿で前線に帰ろうとしていた。
「おー中尉、昨日言っていた新しい飛竜か〜。」
 二日目は寝込んでいた大尉は、アスター連邦期待の新型爆撃飛竜を至近で始めて見たのだった。
「いい飛竜だな。ちょっと借りるぞ」
「駄目であります同志大尉!それは引き渡されたばかりで、他国人は乗せられません!」
「けち」
「けちでも蜥蜴とでも何とでも言ってください。」
「ちびドラゴン」
 少尉のジト目を尻目に、二人は漫才じみた問答を続けた。

323 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/16(月) 00:09:00 [ yED6NQag ]
「もう良いですか?」
 遂に待ちくたびれた少尉が二人の間に分け入った。目が釣りあがっている。
 鞍の取り合いをしていた二人は、目を見合わせて沈黙した。
 女性のこと以外では静かな少尉が怒ると、普段は隠している爪で引っかいてくることがあるのだ。
「まぁ行こうか。」
「ダー」
「リサさんは見送りに来ないんですか?」
「昨日は朝帰りしてしまったし、当分は外出許可は出ないんじゃないかな。」
 可哀相なリサさん。でも、あの奉仕は凄かったと内心ドキドキな少尉であった。

324 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/16(月) 00:09:37 [ yED6NQag ]
『ジーク02よりフランシア航空基地管制塔。出発する!』
『了解。離陸を許可する。』
「二人とも行くぞ!」
「冷えますが帰りましょうか」
「寒いのはヤダなぁ」
 南国出身の二人は文句を垂れつつ、離陸していく。それに合わせて大尉も離陸する。
『待て中尉!何でそんなに速いんだ!?』
『これ・・・新…です…ら!』
『アスターの魔法通信は遠くまで届かないだろ。速度を落とすか戻って来い。』
 中尉は迷子になるのは嫌だったので、速度を少尉と大尉の速度に合わせた。
『少尉、大丈夫か?』
『どうにか』
 やや質の悪い音声で連絡が入った。
『おし、一気に行くぞ』
 フライトは一時間程度と予想された。

325 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/10/16(月) 00:11:05 [ yED6NQag ]
終了。

>>318-320

「待て!そこの怪しい箱!」
 呼び止められ、箱の動きが止まった。中の人は何故ばれたのか必死に考えていた。
「ここは異世界。ニホン製の箱で炉辺の小石効果なんて狙えない。目立つだけです。」
『どうした(ザーッ)ク!?応答(タタタタタ!)ぐわーー!』
 そのまま自衛隊小隊との連絡は途絶した。銃撃戦は続いているので、通信兵か機械がやられたのだろう。
「そちらからは仕掛けてきませんか。ならば・・・!」
『●ーンクリスタルパワァァァ!メェェイイィィクアアアアッップ!!』
 声の主は光に包まれ・・・変身した。
「大尉に代わってお仕置きです!」
 バルコニーから異変を感じ取ってやって来た少尉・・・もとい猫人クラリックは、場違いな決めポーズを取る。
 そして、おもむろにベレッタM92を二挺構える。
「さぁ箱!覗き見したいなら攻撃力が140%アップした私を倒してから進め!」
 激戦は必須であった。

 一方、大尉は部下を美味しくいただいていた。