226 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/09(日) 00:13:34 [ Ivg.jqkg ]
 ・・・・エルビヌメイン防衛線から40キロメートル・・・
『マート06からエルビヌメイン基地!敵軍団を確認!!数は不明!』
 高度2000メートルから見下ろす地上は、霞がかかっていてはっきりとは見えない。しかし、その中を動く軍勢は十分に見ることができる。
『敵飛竜およびペガサスは確認できず・・・』
『騎長!下方よりペガサス2!接近中!!!』
『ちっ。高度を4000まで上げろ。速度は最大。」
 素晴らしい勢いで上昇してきたペガサスは、高度1500メートルで減速して2000メートルを超えたあたりで、マート06の追尾を諦めて降下していった。
『航法士、通信士。敵は振り切ったか?』
『はい!』
『振り切りました!』
 帝国の飛竜とペガサスは、相変わらず高い高度に逃げる敵を撃破できていない。
『通信士!司令部に通信。「我に追いつくペガサスなし」だ。』
『了解!』

227 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/09(日) 00:14:12 [ Ivg.jqkg ]
 ・・・。
「・・・というのが偵察の結果だ。」
 エルビヌメイン司令部の参謀が、現状での敵軍の動向を詳細に説明している。聞いているのはナイトロス空軍の部隊指揮官や派遣軍の司令官などだ。
 ここから40キロの距離までなぜ放置したんだ!という無粋な質問なぞするはずない。向こうだってこっち無視で前進してきたし。
「敵の誘い込みには成功した。ここまで来れば引き返していくはずもないし、我々はさせない。」
 どーも上層部は敵を完全に潰す気のようだ。ここまで来ると補給は受けれないし、引き返しても雪山で遭難死か餓死か疫病死だろう。早いうちから迎撃して追い返すよりも性質が悪い。
 思ったよりナイトロスもエグいことするぜ。
「帝国軍先鋒は強行軍を続け、今日中には防衛線から20キロ程度まで近づくだろう。アスター空軍の夜襲部隊以外は、常時警戒を続けていく。」
「「了解。」」

228 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/09(日) 00:14:51 [ Ivg.jqkg ]
「ここから先は、我がアスター連邦軍が説明する。」
 次に説明し始めたのは、アスターの司令官だ。中尉は彼の脇に控えて、資料などを手渡している。司令官の腰巾着とは、アイツも存外に処世術に長けてるな。
「基本的に帝国軍は夜間移動はせず、夜間は天幕などを張って休憩している。そこを我が赤軍飛竜部隊が奇襲する!」
「・・・。具体的な作戦はいかがなものでしょうか?」
 隊長のツッコミだ。
「参加するのはイリューシン2と10の選抜部隊30と夜間戦闘飛竜ペトリヤコフの3型bisと3型Mを護衛として少数出す。」
 イリューシン10に乗る中尉はこの作戦に参加するんだな。
「襲撃時間は30分未満を予定している。テルミット焼夷爆弾の投下と、超低空からのブレス攻撃を実施する。」
「敵への損害と見方の損害の見積もりは?」
「敵は数百から千前後の被害が出るが、味方の被害は現状は評価しようがない。敵の迎撃力と運次第だ。」
 政治将校が同席していないせいか、妙に口が軽い。普段なら「被害など出ない!」に近いんだけどな。

229 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/09(日) 00:15:58 [ Ivg.jqkg ]
 そして夜。飛竜発着場。
「同志大尉。行って参ります。」
「おう。がんばってこいよ。明日は一緒に戦おうぜ。」
「勿論であります!」
 テルミット焼夷爆弾を抱えた彼の愛機イリューシン10・145−28に跨って、自身満々に返事を返してくる。
「あんたが怪我して帰ってくるに100シリング。」
 少尉は手厳しい。
「少尉。そういう言い方は良くない。ルームメイトだろ。」
「二人とも落ち着いて。小官は帰ってきます。二人も私も子供の顔を見ていないのですから。この戦争が終わったら、休暇を取って子供の顔を見るんです!」
「おう。俺たちにも見せてくれよ。」
『離陸準備!』
「では行ってまいります!楽しみにしていてください!」

230 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/09(日) 00:16:31 [ Ivg.jqkg ]
 ・・・。
「ほっほっほ。道中いろいろあったが、神の思し召しによりここまで到達できたのです。神の天佑に感謝しましょう・・・。」
 もう帰れないけどね。
「エーテルガルド殿。明日は雌雄を決する戦いとなるでしょう。晩餐はいかがですかな?」
「いえ。参謀や支配下の部隊の指揮官との詰めの協議がありますので、これで引き上げさせていただきます。」
「ほっほっ・・・。それは残念です。では、明朝お会いしましょう。」
 最後の晩餐状態の本営が置かれた天幕から足早に去り、近衛天馬騎士団本営の天幕に向かう。副団長を連れて。
「いいのですか?受諾しても良かったのではないでしょうか?」
「救世主は最後にご馳走を食べ、その後処刑されたと言うわ。」
「団長閣下が亡くなるなんて考えられません!」
 ちょっと心配させすぎちゃったかしら。

231 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/09(日) 00:17:04 [ Ivg.jqkg ]
「予感がするのよ。」
「予感?」
「敵は私たちをなんで攻撃してこないと思う?」
「参謀たちと討論しましたが、詳しい理由は分からずじまいでした。」
 私だって向こうがどういうつもりなのか、図りかねてる。
「敵の飛竜が来てるということは、私たちの位置なんてばればれね。」
 これは間違いない。伝わってないなんて馬鹿な話は無いわ。
「敵は弓を極限まで引き絞っているの。私たちが近づいてきたら、一網打尽にしてくるんじゃないかしら?」
「私は敵が正面から出撃できるだけの戦力を持っていないのではないかと・・・」
「とにかく!魔術師と弓兵は交代で寝ずの番!私たちもいつでも起きれるようにしておくつもりよ。」
 予感、当たんなきゃいいな。



247 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/11(火) 23:56:00 [ Ivg.jqkg ]
 木の上を這うような高度で飛んでいるうちに、前方に複数の光・・・焚き火の光が見えてきた。
『目標到着。攻撃用意。』
 ごく単純な命令が魔法通信に乗って届く。我が国の魔法通信技術はそうは高くない。大尉が普通に会話するのを聞くと羨ましく感じる。
『突撃!』
 攻撃する場所は人の居そうな場所でよい。幸い、それらしい迎撃を受けなかった。
 カッ! ドドーン!
 閃光と爆音があちこちから届いてくる。自分も急がなくては!
「投下!」
 切り離したテルミット焼夷爆弾が地面へと吸い込まれていった。

248 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/11(火) 23:56:42 [ Ivg.jqkg ]
 ズズーーン・・・
 国教会軍が陣を張っている辺りから、また激しい閃光と爆発音が響いてきた。
「団長!出撃しましょう!」
「出撃許可を!!」
 周囲の天馬騎士たちは早くも鞍にまたがっている。
「駄目!」
 非難の目線が集まってくるけど、そんなのは気にしてらんないのよ!
「今から出撃しても、飛び上がる前に落とされるのがオチよ!敵が来る前に天馬騎士と竜騎士は目立たない場所に退避!火はきっちり消す!魔術師たちを集めて!」
 尚も非難の目を向けてくる。
「近衛騎士団長命令に逆らうというなら今すぐ出撃しなさい!」
 そこまで言って、ようやく指示を聞いてくれた。

249 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/11(火) 23:57:19 [ Ivg.jqkg ]
「団長!」
 副団長がやって来た。
「今のは聞いたわね!?」
「ハイ!」
「伝令を配下の騎士団に出して!今すぐに!!」
「了解!!・・・配下の騎士団だけですか!?」
 一瞬、逡巡する。
「他のところは勝手にやらせといて!いちいち構ってられないわ!」
「了解!伝令を出します!」
 副団長も駆けていく。この辺りにもすぐに敵は来るわ。どれぐらい迎撃できるかしら?

250 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/11(火) 23:58:03 [ Ivg.jqkg ]
 ボン!ボン!
 ブレスを再び天幕らしい建物に叩き込む。あっという間に通り過ぎて、命中は確認できなかった。
「飛竜はどこだ・・・?」
 天幕や荷物の集積所のような場所に多数の火球と魔法を叩き込んでいたが、飛竜はまだ一体も撃破していない。
 ヒュン!
「チッ」
 すぐ脇を火炎魔法が通過した。徐々に迎撃が激しくなってきている。
「・・・よし!」
 一瞬だが、今の魔法を撃った魔術師の近くに大きな生き物・・・竜か馬だろう・・・がいた。運が向いてきたか?
「ウラーーッッ」

251 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/11(火) 23:58:43 [ Ivg.jqkg ]
「魔術師ギルドの魔術師、全員揃いました!」
 それなりの金額で雇った老人と新人の魔術師だけど、頑張ってもらわなくっちゃ!
「状況は説明する必要はないと思う。諸君らは私の命令に合わせて魔法を撃てばいい。」
「それは一体・・・」
 まとめ役の魔術師が何か文句を言いたそう。魔法を撃つのを私に任せるのが嫌みたい。
「緊急事態につき、近衛騎士団長の私が指揮を執る!それだけだ!」
 契約とは少し逸脱するけど、まぁ良いわよね?ね?
『敵飛竜接近!』
 来た!曇って漆黒の空に、地上の火炎の光を浴びた飛竜がおぼろげに見える。
「用意!」

252 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/11(火) 23:59:20 [ Ivg.jqkg ]
『撤収!撤収!』
 指揮官から通信が入った。これぐらいが潮時か。飛竜も何騎か地上撃破できたから、合格点だろう。
 基地に帰ったならば、まずは戦果確認か。これなら大尉とあの猫人少尉をぎゃふんと言わせられるだろう!
『各自基地へ帰還せよ!』
 布陣している地域は満遍なく攻撃したはず。何か牙に引っかかるな・・・。
 もう一度攻撃漏れがないか確認しておこう。基地からは遠くない。航続距離の短いイリューシン10でも、もう暫く滞空できるだろう。
「!」
 当たりだ!森の中にいる!息を潜めてやり過ごすつもりか・・・そうはいかない!
 攻撃を仕掛けるために高度を落とし・・・

 その瞬間、凄まじい衝撃と閃光が周囲を包んで、自分は意識を手放した。

253 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/12(水) 00:00:08 [ Ivg.jqkg ]
「まだまだ・・・」
「まだ・・・」
 もう少し近づいて・・・来た!
「撃て!」
 複数の魔法が空に向かって放たれ、こちらに向かってきた一騎に命中。そして
「団長!やりました!墜落です!」
 こんなに嬉しそうな声を上げる副団長を、久しぶりにみた。今まで苦労させてきたから・・・。
『敵が去っていきます!』
 歩哨の言うとおり、我が物顔で飛んでいた飛竜はあっという間に姿を消していった。
「伝令は本陣と連絡を取って!それと近衛天馬騎士は陸戦準備!」
「なぜ陸戦の用意を?」
「今落ちた敵を探すわよ!生きていたらいろいろ情報を聞き出せるでしょ!!」
「あれで生きていたら人間ではないと思いますが・・・」



263 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/13(木) 21:22:27 [ Ivg.jqkg ]
「ぐ・・・ごほっ・・・」
 全身を走る苦痛で意識を取り戻した。木がクッションになってどうやら死なずに済んだらしい。
 騎乗していた戦友は・・・?
「戦友・・・畜生!」
 戦友は自分のすぐ脇で息絶えていた。自分が生き残って飛竜が死ぬなんて、竜騎兵として失格だ!
 だが、今は自分が生き残ることを考えなければならない。戦友の弔いは生き残ってからだ。
 きしむ身体を持ち上げ立ち上がる。致命傷となるような怪我は、していない。
 利き腕の左腕から強い痛みが走った。動かせるが護衛用の剣がうまく持てない。剣は鞘に戻し、この場から離れるために歩き始めた。
『この辺りに落ちたぞ!』
『探せ!』
 ただでは通してくれなさそうだ。

264 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/13(木) 21:23:20 [ Ivg.jqkg ]
 木陰に隠れ、こちらに向かってくる敵の姿を確認する。
「人間族の女か・・・」
 人数は二人。二人とも片手剣を装備している。天馬騎士は槍装備だから、警備兵の類だろう。
 利き腕がやられている以上、一撃必殺は難しい。それに剣戟の音を立てたら敵が寄ってくる。
 拳で無力化させよう。
「確かにこのあたりに・・・」
「血のにおいがするわね・・・」
 自分の存在に気づいていない。が、気づかれるかもしれない。
 ガサッ ザッザッザッ ドム!
「な!?・・・ぅ」
 一気に駆け出し、女騎士の腹にパンチを見舞った。振り返りざま、固まっているもう一人のわき腹にも一撃を与える。
「竜・・・ぁ」
 ドサ・・・

265 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/13(木) 21:23:51 [ Ivg.jqkg ]
「発見の報告はまだ?」
「いえ。発見した場合には合図を出すようにしているので、未発見ではないかと・・・」
 森の中から松明が複数見えている。大規模な山狩りだから、すぐに見つかるはずなのに。
「先ほどから本陣が救援を寄越せと言って来ています。」
「放っておきなさい。こっちは捕虜の確保に忙しいって伝え」
『キャァァ!』
『いた!こっちに・・』
『うわぁぁ!』
 唐突に森の中から悲鳴が上がった。本陣のことは一度隅に置いておく。
「行くわよ!」

266 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/13(木) 21:24:21 [ Ivg.jqkg ]
 ドン!
「ごはぁ!」
 天馬騎士をまた一人タックルで吹き飛ばす。吹き飛ばされた女騎士は木の幹に頭をしたたかに打ち付けて気絶した。
「はぁ、はぁ・・・きりがない・・・」
 既に数人の敵を無力化しているが、体力をかなり消耗している。剣をうまく使えないのが痛い。
「おい!止ま・・・!?」
 後ろからまた敵だ。幸いなことに、こちらの姿を認めると敵は動きを一瞬止める。竜人族を見るのが始めてのようだ。
 ブン! ガス!
 勢いをつけて尾を叩きつける。
「ぐっっうぅ」
 槍で防御されたが、衝撃は全身に伝わったようで膝をついて悶えている。いまのうちに・・・
「!!!」

267 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/13(木) 21:25:08 [ Ivg.jqkg ]
『ごはぁ!』
 すぐ近くで悲鳴が上がる。
「近くにいるわよ!警戒して!」
 槍を握る手が汗ばんでいる。天馬騎士は空中で戦うけど、地上での戦いだってちゃんとできる。
 それに、近衛天馬騎士は天馬騎士のエリートなのに・・・
「団長。近衛天馬騎士がこれほど簡単にやられるはずがありません!」
「でも聞こえてるでしょう!あれは演技じゃなくて本物の悲鳴よ!」
『ぐっ』
 今度はうめき声・・・近い!
 ガサガサ
「え・・・」
 森から出てきた”敵”は、人間ではなかった。



274 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/15(土) 22:46:42 [ I3HkQ/Bs ]
投下!

>>269
さすがお目が高い!もっとすごい修羅場の予定だったんですけどね・・・
>>270
どうなんでしょう?それなりにあると思います
>>271 (>>259)
『エーテルガルドハード』

 事情聴取の為に中尉を尋問するエーテルガルド
 だが、それはアスターの巧妙な罠だった。

「あなたの帝国は、共産革命される為に築いてきたんですものね」
「ちゃんとした国家運営ができてれば・・・こんな話に・・・!」
「良かったじゃないですか、戦争のせいにできて」
「んんんんんんんっ」
「ははは さあ、共産闘争宣言を用意しました。みんなで朗読しましょう」
(耐えなきゃ・・・!!今は耐えるしかない・・・!!)
「エーテルガルドの革命精神ゲ〜ット」
(いけない・・・!思想に共鳴しそうなのを悟られたら・・・!)
「生皇女様の革命宣言を拝聴してもよろしいでしょうか?」
「こんな竜人族に・・・くやしい・・・! でも・・・共感しちゃう!」(ビクッビクッ
「おっと、共産主義の素晴らしさに気づきましたか。甘い痺れがいつまでもとれないでしょう?」

 共産闘争宣言:この世界の「資本論」みたいな書物

>>272
本当はもっとすごいことになって、エーテルガルドが
一夜にしてSAN値が0、つまり発狂して廃人になる予定でした
内容がやばすぎたので、修正してソフト(?)な表現に変えました
>>273
私たちの戦いはこれからだ!

275 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/15(土) 22:48:08 [ I3HkQ/Bs ]
 人間より一回りも二回りも大きく、逞しい全身を覆う鱗、尻尾、牙。北大陸でははるか昔に姿を消した・・・
「竜人族・・・」
 歴史や物語の中でしか知らない生き物が、目の前に現れた。
 こちらの出現に驚いているのか、動きを止めている。
「私を近衛天馬騎士団長エーテルガルドと知っての狼藉か!?」
 やっちゃった!訳もわからない敵に名乗っちゃうなんて!でも、通じてないよね?
 ダッ
 通じちゃったみたい。一気に距離を詰めてくる!

276 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/15(土) 22:48:56 [ I3HkQ/Bs ]
「団長閣下を守れ!」
 副団長の号令で護衛の天馬騎士が槍を構えて迎え撃つ。これなら・・・
「あうっ」
「きゃぁっ」
「かふっ」
 あっという間にやられちゃった。素手で投げ飛ばされ、尻尾で弾かれる。始めて見る竜人族に反応が一瞬遅れ
 ガキィッ
「団長!他の者が来るまでお下がりください!」
 あまりのことに固まっていた私を、副団長が竜人族の剣(抜刀していたのにも気づかなかったなんて!)を槍で受け止める音が現実に呼び戻した。
 ぎりぎり・・・
「早くお逃げ・・・!」
 副団長は圧倒的に不利だ。どんどん押し込まれて、長くは持たない!

277 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/15(土) 22:49:35 [ I3HkQ/Bs ]
「勝負だ!!」
 私は駆け出していた。槍の切っ先を竜人族の喉元に向けて。
 ギィィィン!
 ありえない!重装騎士の鎧も貫く私の一撃が、相手の片手一本の剣で止められちゃうなんて!
「せいっ やぁっ」
 力技では敵わない!私が持つ槍術の限りを尽くして連続攻撃を仕掛けていく。
 周囲を副団長や近衛天馬騎士たちが取り囲んでいた。ちょっと助けてよ!
『駄目だ!団長閣下は一騎打ちの最中だ!手を出すことはまかりならん!!」
 イヤアアァァァァァッーーーー!!

278 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/15(土) 22:50:09 [ I3HkQ/Bs ]
 ・・・。
 何回か連続攻撃するうちに、竜人族の動きが鈍ってきた。私も息が上がってきた。
「はぁはぁっ・・・覚悟!」
 何度目かの渾身の一撃が敵を捉え・・・!
 なかったけど、避けようとして竜人族は転んだ。起き上がる前に、槍を突きつける。
「殺せ!」
「団長閣下を殺めようとした賊だ!!」
「待ちなさい!」
 殺気立って駆け寄る兵士たちを止める。
「はぁ・・・竜人族、言葉が解るのだろう?名はなんと言うのだ?」
『・・・。』
 無言だ。これは理解していて黙ってる。
「話はゆっくり聞こう。・・・この竜人族を厳重に拘束して連行しなさい!!」



294 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/17(月) 23:34:30 [ I3HkQ/Bs ]
「いろいろと話を聞かせてもらおうか?」
 一番偉そうな近衛天馬騎士・・・『団長』と呼ばれているから、近衛天馬騎士団長のエーテルガルドだろう。
「何か言わないか!」
「貴様らの目的はなんだ!?」
 取り巻きがいろいろとうるさい。
「黙れ」
 その一言だけ吐いた。
 がすっ ぼかっ
 足蹴にされた。短気な連中め。
「みんな止めて。やっぱり言葉が通じる。貴方の名前は?」
 さっきとは違ってやさしい口調で話しかけてきた。やり辛い相手だ。

295 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/17(月) 23:35:05 [ I3HkQ/Bs ]
「鎖で巻きつけられた翼を開放しろ。翼は我が竜人族の誇りだ。」
「そう言って隙を突いて逃げ出すの?」
「さあ?」
「そう。・・・衛兵、気をつけて翼を出してあげなさい。」
 本当に翼を出させてくれるとは。とは言っても翼は衛兵に押さえつけられたままだ。
「もう一度聞くわよ?名前は?」
 しょうがない。
「アレクサンドル。アレクサンドル イワノビッチ コジェドフ。アスターの空軍所属だ」
 少し言い過ぎたか?

296 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/17(月) 23:35:40 [ I3HkQ/Bs ]
「アスター?神聖アスター王国か?ナイトロスではないのか?」
 神聖アスター王国・・・帝政アスターよりずっと昔、竜人族が北大陸に居住していた頃の国の名だ。
「神聖アスター王国は、竜人族が北大陸を追い出された1100年前に滅亡している。」
「そんなに前に!?」
 本当に情報が断絶していたのだな。
「・・・では、なぜアスターの貴方がナイトロス領土に?」
「それぐらい、自分で考えていただきたい。」
 エーテルガルド(おそらく)は、それ以上聞いてこなかった。いや、聞きたくても聞けない状況になっていた。

297 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/17(月) 23:36:32 [ I3HkQ/Bs ]
「団長閣下・・・」
 兵士の一人がエーテルガルドに何か耳打ちをしている。途端に顔をしかめた。
「あの筋肉馬鹿の言うことなんて放っておきなさい。私たちの"戦利品”でしょ?」
 自分を戦利品扱いか。
「救助と片付けのための兵員は出来るだけ貸すと言っておきなさい。」
「私は捕虜の尋問で忙しい!それだけよ!」
「徴用歩兵を全部出しなさい!火消しは彼らだってできるでしょ!?」
 報告書通りだ。上官とうまくいっていないようだ。
「何を見てるの?」
「指揮官はなかなか忙しいようだな。」
「ありがとう。おかげでこんな辺境まで来たのよ。」

311 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/21(金) 00:22:22 [ I3HkQ/Bs ]
「中尉、帰って来ませんね・・・」
「あぁ・・・」
 アスターの攻撃隊帰還から二時間。中尉と彼の飛竜が帰ってこない。
「彼の搭乗騎は墜落した。残念だが、生還は諦めたほうが良い。」
 中尉の上官はあっけらかんと言うが、ここ数ヶ月で仲良くなった友人なんだぞ。
「しかし、アスター連邦軍は行方不明から戦死と判定されるまで、一週間猶予がある。それまでに見つかると良いな。」
「・・・分かりました。」
 アスターはこの辺シビアだからな。変に食い下がってもややこしくなる。引き下がろう。
「帰ろうか少尉。」
「納得できませんが・・・仕方ないですね。」

312 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/21(金) 00:23:30 [ I3HkQ/Bs ]
 掘っ立て小屋の相部屋に戻り、出撃前最後の仮眠の準備を始めた。
「中尉の荷物、どうしましょうか?」
「そのままにしておこう。」
「中尉の奥さんと子供には何て伝えましょうか?」
「それはアスター政府の仕事だろ。・・・しつこいぞ少尉!」
「では大尉は悲しくないんですか!?」
 そりゃぁ死んでいたら悲しい。
「あの頑丈な中尉が死ぬとは思えない。ひょこっと帰ってくるさ。妻と子を残した父親は強いんだよ。しかし、思ったより中尉を気にするな?」
「ケビシニアでアスターを良く思っている人間はごく一部ですし、私もそうです。」
 アスター周辺の国々は、かつてのアスター内戦で散々な目にあっているから、衛星国以外で好意的な目でアスターを見るはずが無い。 
「ですがね、中尉は竜人族としての友人として付き合ってます。心配するのは当然でしょう!」
 こいつはニヒルな猫野郎かと思ったが、いつの間にか変わったな。

313 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/21(金) 00:24:10 [ I3HkQ/Bs ]
 ・・・。
 結果として捕虜のような扱いを自分を受ける破目になってしまった。
 木に鎖で縛られ、行動の自由を制限されたのは仕方ない。天馬騎士や警備兵を数人襲ってしまったから。
 周囲は先ほどの襲撃の後片付けがほぼ終わり、一部の兵士を除いてみな睡眠をとっているようだ。
 自分も身体を休めたい。縛られていても眠るぐらいは出来る。が、事情によりそれが出来ていない。
「おい、聞いているのか?」
『・・・聞いている。筋肉馬鹿で無能なムッター将軍の話をしていたんだったな。』
 混乱からひと段落してから、副官と共にどこかへ行っていたエーテルガルド近衛天馬騎士団長は、帰ってくるなり、自分に愚痴り始めた。
「そうだ。あの馬鹿は脳味噌まで筋肉なっていて、そのくせ、責任のなすりつけや媚売りは一級品で・・・』
 愚痴の内容は、彼女の兄や同僚、聖職者に国家そのもの。いくつ不満があるのか数えていたが、そのうち数えるのをやめた。

314 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/21(金) 00:25:29 [ I3HkQ/Bs ]
「私は自分でできることはやってきた!なのにその結果が負け戦の先頭に立たされて、道化のように死ぬのを実の兄たちに期待されているのよ!」
『わかった。わかったから・・・。』
「借金ばかりで騎士団の財政は破綻しちゃうし、大商人や魔術師ギルドには頭が上がらない!なんだっていうのよ!私が何か悪いことした!?」
 相当鬱積していたようだ。聞いていて不憫になってきた。
「ちょっと女帝もいいかも知れないなんて考えた自分が馬鹿みたい!深窓の姫君だったらどれだけ楽だったか・・・」
 少なくとも、帝国の人材の中では有能な部類に入り良識的な人物、というナイトロス情報局のデータは間違いではない。
 愚痴っぽいというのも、今度から付け足す必要があるようだ。
「私の話してることわかってるんでしょ!?最後まで聞きなさい!・・・その商人ときたら担保にあろうことか団員を・・・」
 果てしなく愚痴が続いている。このまま、日の出まで愚痴を聞かされるのだろうか?
「よそ見しないで聞きなさいよ!帝都で破壊された橋の修繕費まで要求されたのよ!いったいどういう因縁で・・・」



335 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/22(土) 23:03:55 [ jINIH5bE ]
「起きろ」
 エーテルガルド近衛天馬騎士団長の愚痴から開放されて数時間、東の空が白み始めた頃に叩き起こされた。彼女は副団長だな。
「貴様、団長閣下の話を最後まで聞いていたのか?」
「そうだ。一通り話した後、すっきりした顔で帰っていった。」
「そうか。・・・済まなかった。」
 謝られた。副団長も苦労しているのか。あれだけの愚痴を話せる相手というのも限られるだろう。
「気にするな。・・・日の出前から何のようだ?」
 理由は大体わかるが。
「本陣を更に前線に近づける。貴様にも同行してもらう。」

336 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/22(土) 23:04:25 [ jINIH5bE ]
 更に近づく?
「移動を中攻撃されるかもしれないぞ?」
「そんなことは承知の上だ。」
 副団長の顔が渋くなる。
「ここから往復する余裕は、もう無い。」
「それは・・・」
「衛兵!慎重に鎖を解け!竜人族、妙なことをしたら問答無用で斬る!」
 それとなく内部事情を聞こうとしたが、愚痴っている団長よりずっと口が堅い。
「暴れはしない。それより食事をよこせ。」
「我々は朝食抜きだが?」
「・・・。」

337 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/22(土) 23:06:09 [ jINIH5bE ]
 結局何も口に出来ないまま、連中の行軍に参加させられてしまった。
 強行軍なのか、かなり急いでいる。
 夜の間は気づかなかったが、周囲を小走りで歩く兵士はみな表情が重い。恐らく、栄養失調の類だろう。
 だが、出発時に姿を見せていた別騎士団の兵士はこんなでは無かった。何か差でもあるのだろうか?
「おい、竜人族。」
 エーテルガルド団長だ。すぐ近くをペガサスに騎乗して移動している。
「自分には立派な名がある。」
「コジェドフ。貴方たちの友軍はどんな備えをして私たちを待っているの?」
「・・・秘密だ。教えることは出来ない。」
「話題を変えよう。停戦や降伏の意思はどうやって伝えるのだ?」

338 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/22(土) 23:06:51 [ jINIH5bE ]
 その方向に話を持っていくとは思っていなかったので、思わずエーテルガルドのほうを向いてしまった。
 言った本人は、前方を何気なく見ているだけだ。
「・・・・・南大陸では、戦闘を放棄して目立つ場所に白旗を揚げるのが降伏の意思があるとみなされる行為だ。他にもあるが、南大陸とつながりの無い連合帝国では無理だろう。」
「そうか・・・」
 それだけ言って沈黙し、話は終わりになった。くどくど話していたときとは全く別人だ。
 再び周囲を見回す。
 昨日の襲撃で焼かれたのか、運ばれている荷物が極端に少ない。
 組み立て式の天幕などを除いた物資があまり無いようだ。
 もう少し話をしようかと思ったが、よく考えると愚痴られた内容で彼女と先鋒軍全体の状況がつかめる。
 ・・・間が持たない。黙々と歩みを進めることにした。

339 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/22(土) 23:07:24 [ jINIH5bE ]
 ・・・。
『全員起床!』
 ガバッ
「おい少尉。起きろ!」
 窓から日が差し込んでいる。夜明けの時間になったようだ。
「中尉・・・嫁自慢と国自慢はもう結構で・・・、・・・大尉?」
「寝ぼけてないで起きろ!実戦だぞ!」
 実戦。の一言で少尉も慌てて起きだし、俺と一緒に着替えを始めた。
「早いとこ軽食を腹に入れとこう。今日はもう食事が出来ないかもしれないからな。」
「気をつけないと一生食事が出来なくなりますよ。」
「朝から毒舌だな。」
 少尉の調子も少しは戻ったようだ。

340 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/22(土) 23:08:08 [ jINIH5bE ]
「大尉とは一緒の集団でしょうか?」
「俺は最前線の第一波攻撃・迎撃隊に参加するんだ。」
「じゃぁ違いますね。私は混成爆撃飛竜部隊の護衛ですから。」
「ほぉ。じゃぁお前の仕事は少ないかもな!」
「大尉が凄腕だからって、全部は防げないでしょう。私たちにだって仕事は来ますよ。」
「爆撃飛竜は命に代えても守れよ。」
「もちろんです!大尉、準備できましたか?」
「できたと言うか、着替えは終わった。じゃぁ行こうか。」
 この後はジーク隊の面子と最終ミーティングだ。そして、命令があれば出撃・・・だ。

357 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/25(火) 22:26:29 [ jINIH5bE ]
「連合帝国の聖なる戦士達よ!戦いの時は来たり!!邪悪で野蛮なる南大陸の南夷を打ち払うのだ!!!」
 少なくともムッター将軍の言葉は、私に一切の感慨を与えなかった。熱狂する国教会騎士の姿がどこか遠く世界の出来事に感じる。
「グリューネブルグを占拠した不埒な輩である!一人残らず抹殺せよ!これは教皇睨下のお言葉だ!!」
 抹殺・・・私と私の部下は、例え勝利したとしても抹殺されちゃうんだろうな。部下までは巻き込みたくない。
「団長閣下?」
「え?」
 副団長の言葉で、物思いの世界から現実世界に戻ってきた。
「ムッター将軍の激励は終わりました。後は各騎士団で簡潔な打ち合わせを行って出撃します。」
 そう。これで出撃ね。
「分かったわ。将軍達と話してから戻りましょう。」

358 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/25(火) 22:27:07 [ jINIH5bE ]
 ・・・。
「エーテルガルド殿。貴公の天馬騎士団と近衛天馬騎士団が活躍することを期待している。」
「ありがとうございます。」
「辺境から徴収した兵が妙な行動を起こさないよう、よく言い聞かせておいてほしい。」
「優秀な部下が指揮を執っています。問題ありません。」
 若干の事務的会話が終わると、念押しみたいなことをいっぱい言われた。信用してないのかしら?
 こんな連中の信用なんてこっちから願い下げだけどね!
「ほっほっほっ。我等地上軍が動くためには、空の兵隊たる天馬騎士団と竜騎士団が必要なのです。エーテルガルド殿に神の加護があらんことを」
 生臭坊主のムッター将軍に祝福されてもちっとも嬉しくない。酒臭い口から吐く言葉じゃないわね。
 腹立たしい!とっとと切り上げよう!

359 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/25(火) 22:27:48 [ jINIH5bE ]
 私達の仮設陣地に、配下の空中騎士団や地上兵力の高級軍人が集合した。本陣そのものはもっと後方に置いてきている。
「全員集まった?」
「ハイ!団長閣下の言いつけ通りに連れて参りました!」
 他の将軍支配下の連中はいないわね。いると面倒な事態になるのは間違いない。
「集まってもらったのは他でもない。空中騎士団はかなり行動の自由を認められている。その説明を今から行う。出来るだけ従ってほしい。いや、従わばければ命の保障はできない。」
 空気が少し重くなっちゃったけど、構わず話を続ける。
「空中戦に結果は不明だが、勝敗に問わず必ず我々の陣地に帰還せよ。それ以外は認めない。地上軍も同じだ。」
 何か言おうとする人間が数人いるけど、口を開かせる前に話を続けた。
「そこで私もしくは副団長が、その後の行動を話すはずだ。それにも従え。」
「団長閣下!?いったい何を・・・」
 これは私一人で考えた。副団長にも相談していなかったわ。最後には彼女だって理解してくれるはず。
「それを含めた作戦を、最初から説明する。まず・・・」

360 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/25(火) 22:29:13 [ jINIH5bE ]
「何か食い物を寄越せ。腹と背中の鱗がくっつきそうだ。」
「うるさいっ少しは静かにしろっ」
 しつこく要求しすぎた所為で、警備兵は怒り出してどこかへ行ってしまった。食事は諦めるしかないか・・・。
 ここは、昨日の襲撃地点から恐らくもう少しエルビヌメイン防衛線に近い場所にある、連合帝国近衛天馬騎士団の本陣。
 ・・・とは言っても、主だった団員や兵士はさらに前進していて、ここにいるのは留守番の兵と前線では使えない雇われ魔術師程度しかいない。
 他の騎士団はもっと見晴らしの良い場所に陣取っているのに、彼らは上空からは見つかりにくい森林や沢にいる。彼らは「できる」敵だ。
 同志大尉や少尉はどうしているだろうか?今頃、出撃準備中だろう。自分は木にくくられて戦いを見ることになりそうだ。
「おい!竜人族!飯だ!ありがたく食え!」
 さっきの警備兵が自分の前に、何かを放ってきた。
「ニンジン・・・」
「さっさと食え!」

361 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/25(火) 22:29:46 [ jINIH5bE ]
 ・・・。
「ッックシュン!」
「大尉?こんな時に風邪ですか?」
「いーやリサ。これは誰かが噂をしている時のくしゃみだって、ジエイタイ兵が言ってた。」
「ふーん」
 いまいち関心がなさそうにリサが頷いた。少し寂しげな表情も見せたが、それもすぐに消えてしまう。
 ただ、やっぱり寒い。12月初頭でフランシアよりも北なんだ。雪が降ってなくてもクソ寒い。
 そしてそんな屋外にずっと立たされている。

362 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/25(火) 22:30:45 [ jINIH5bE ]
「司令官の話、長いですね。」
 リサの言葉に同意だ。長すぎる話は士気に関わるんだぞ。それを将校達はまるで分かってない。
 耳が痛くなるほど聞かされた、この戦争の意義やら連合軍の強さと絆の深さやらジエイタイの位置づけやらを延々と話している。
「大尉。よろしくお願いします」
 いきなりお願いされた。
「何がだ?」
「空中戦のですよ。精一杯戦うんで、大尉の足を引っ張らないように頑張ります。」
 そうだ。ロッテ戦法でリサは俺のパートナーだ。
「今日までの訓練と模擬空戦の経験を活かせば、大抵の敵には負けないさ。それに・・・」
「それに?」
「俺が守ってやるさ。部下として戦友してな!」
「・・・・・。」

396 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/28(金) 22:49:02 [ jINIH5bE ]
『ジーク隊離陸準備!』
『『了解!!』』
 俺たちのジーク隊の他には、フランク隊やジョージ隊などフランシア空軍の誇る飛竜部隊が、同じく離陸の準備をしている。
『管制塔より離陸準備中の部隊へ!直ちに離陸せよ。爆撃飛竜と護衛飛竜が詰まっている!』
 全部で数百の飛竜が勢揃いしている。ジエイタイ工兵が仕上げたはずの設備でもかなり手狭だ。
『ジーク01よりジーク隊各騎へ。そういうわけだ。離陸する!』
 何の感慨もない離陸になっちまった。声援に囲まれて出撃したかったな。
 相棒が羽ばたき、高度が上がっていく。空は霞がかって視界は悪いが、日は昇ってきている。すぐ晴れ上がるだろう。

397 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/28(金) 22:49:35 [ jINIH5bE ]
『ダイナ01より先制攻撃隊各騎へ。編隊を組み目標まで飛行する。速度は200ノット、高度3000!』
『了解。』
 エルビヌメイン航空基地から防衛線までは十数キロだ。ジエイタイからの最新偵察情報では、帝国軍の最先鋒はそこから10キロ未満の場所にいる。
 基地上空で旋回を繰り返して全竜騎兵が集結するのを待っても、あっという間の距離だ。
 気をつけないと、あちらさんもあっという間にこっちにやってくる。いくら対空兵器を備えていても、空からの攻撃は地上部隊にとって脅威だ。
『エルビヌメイン管制塔より離陸済み部隊へ。帝国軍が飛竜およびペガサスを離陸させた模様。警戒せよ!』
『ダイナ01より各騎へ。臨戦態勢を維持!』
 手綱を握る手が汗をかき始めている。・・・何やってるんだ!俺たちの戦いはこれからだ!!

398 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/28(金) 22:50:05 [ jINIH5bE ]
 ・・・。
「団長閣下。配下の天馬騎士団、近衛天馬騎士団、竜騎士団は全て準備が整いました。」
「分かったわ・・・」
 いよいよ、ね。
「他の竜騎士団は既に飛び上がり始めていますが?」
「連中はもう帰ってこないわ。放っておきなさい。もう、呼び戻すなんてできないし、歩調を合わせようというのが間違いなのよ。」
「そうですか。」
 参謀や副団長はこれ以上問いかけてこなかった。
「さ、200以上の飛竜とペガサスが戦いを待っているわ。早く出撃するわよ。」

399 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/28(金) 22:50:51 [ jINIH5bE ]
 騎士団分隊ごとに飛竜や天馬が飛び立っていく。お世辞にも綺麗とは言えない。人数を増やしたぶん、質が悪くなってる。
「近衛天馬騎士団、出撃!」
 掛け声一声で、よく訓練された近衛天馬騎士たちが整然と飛び立っていく。手塩に育てた部下たちはやはり裏切らないわ!
 私も遅れずにペガサスを飛び立たせ、近衛天馬騎士団伝統の指揮官先頭に倣って、騎士団の先頭を飛ぶ。
 視界は・・・朝方より大分良いわね。雲も少なくなってるし、敵を見落とす心配も無さそう。
 地上の土煙・・・国教会騎士団ね。歩兵を置いてきぼりで突撃する気かしら?今までの戦場なら敵を粉砕できたけど、今度は駄目かもしれない。
 限界に近い高さで飛んでいるけど、敵の飛竜はずっと高い所からやって来た。周囲を警戒を怠ってはいけないわ。


426 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/31(月) 00:12:16 [ 3I4sCF.E ]
『管制塔より攻撃隊!前方に敵騎!!数は・・・20・・・50・・・100以上!数十騎単位の複数集団だ!高度800!!』
 エルビヌメイン基地から上ずった魔法通信が届いた。・・・なるほど、ごま粒のような敵が北から続々と沸いてくる。
『ジーク01より各騎!先制攻撃はジャック隊やフランク隊の仕事だ。我々は敵編隊が乱れた後で格闘戦に持ち込む。隊形を組みなおしておけ。」
『『了解!!』』
『ジーク02よりジーク13へ。そういうわけだ。これからは何があっても俺から離れるなよ!』
『ジーク13了解。協力していきましょう!』
 リサは大丈夫なようだ。
『ジーク隊、最大速度で突入する!!』
『『了解!!』』

427 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/31(月) 00:12:52 [ 3I4sCF.E ]
 ボッ バガ!
 唐突に飛竜が爆発した。連合帝国と国教会の竜騎士はそう感じた。
 すぐに奇襲攻撃されたことを理解したが、その時には編隊の合間を縫って、敵飛竜が編隊の下へ飛びぬけていた。
 自分たちより高いところに敵がいるはずないという先入観が全てを決めてしまった。敵が各竜騎士団に急降下しながらブレス攻撃を仕掛けて、下方に飛び出すという一撃離脱戦法を複数行った。
 たちどころに陣形は乱れ、一部の竜騎士は敵の飛竜・竜騎士に戦いを挑んでいく。
「速い!?」
 だが、どんなに速度を上げてもまるで追いつかない。それどころか、追い掛け回すうちに別の敵に撃墜される竜騎士が相次いだ。
 しかし数が多い。近衛天馬騎士団長エーテルガルド隷下の天馬騎士や寄せ集めの竜騎士を除いても、400は下らない。
 縦横無尽に駆け回る敵に悩まされつつ、前進を進めていた。

428 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/31(月) 00:14:06 [ 3I4sCF.E ]
『ジーク13!リサ!行くぞ!』
『了解!』
 恐ろしい数の飛竜だ。ジャックやフランク他の連中は良くやってるみたいだが、数はあまり減ってねぇな。
 これは撃ち漏らしが相当出る。少尉との約束の履行はきっつい・・・
『大尉!来ます!』
 敵を吊り上げる為に高度を下げた。リサは俺より高い高度でサポートだ。
『何騎か引っかかりました!大尉に向かってきます!』
『分かった』
 数は8くらい?多いぞ。いや、他のジーク隊ペアが割り込んで何騎かを引き受けてくれた。
 そいつらに通信で礼を入れておき、まだこちらに向かってくる敵の前に飛び出した。

429 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/31(月) 00:14:41 [ 3I4sCF.E ]
 射程外だというのに、ブレスを乱射してやがる。このまま真正面から突っ込んだら、丸焼けだ。
『リサ!攻撃準備だ!』
『了解!』
 ある程度近づいたところで旋回する。敵も旋回し始めたが旋回性能は随一のジーク飛竜だ。
 すぐに後ろへと回り込む。
 ボン! ボン! ボン!
 なかなかの竜騎兵みたいだ。左右に飛竜を振ってブレスを避けている。だが、これで終わりだ!
 パパパパパパ!
 光弾の掃射が、飛竜と竜騎兵を薙いだ。同時にブレスも着弾し、あっという間に炎上して落下していく。
『大尉!四時方向に敵二!』

430 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/31(月) 00:15:17 [ 3I4sCF.E ]
 のんびりと撃墜確認も・・・
 ヒュバ!
 ブレス!?接近されすぎた!リサの連絡が遅・・・違う!一騎に気をとられ過ぎだ!!
 ドンドン! バガッ
『すみません!通信が遅れました!!』
 一騎がブレスを食らって墜落した。リサが攻撃したものだ。一対一の戦いなら負けない。
『気にするな。いや、ありがとう。』
 片付けてから、リサに感謝を言う。のっけから部下に救われるとは、副隊長の名が泣いちまうぜ。
『ハイ!・・・もう三騎が九時方向!こっちに来ます!』
 見える範囲では俺たちが圧倒的に優位だ。だが、果たしてそれだけ数を削れるかな・・・

431 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/31(月) 00:15:59 [ 3I4sCF.E ]
 ・・・。
『爆撃隊10時方向に進路変更』
 先ほどから進路変更の連絡が多い。最初のコースよりかなり西寄りのようだ。
 各国の爆撃飛竜がのんびりと進路を変えていく。
 ナイトロスのフランシスやアスターのペトリヤコフ2から近代飛竜時代の遺産ともいえるゴータWやカプロニ4まで参加している。
 歩調を出来るだけ合わせるために、これらの飛竜が遅れ過ぎないように飛んでいる。本当にゆっくりだ。
 もっとも、ケビシニア軍の爆撃飛竜ファルマン86もお世辞にも高性能と言えないけれども。
 ナイトロス・コバルタ・アスターの三大国の爆撃飛竜と、南大陸各国爆撃飛竜が200、その護衛戦闘飛竜350を含めたものが私たちの攻撃隊だ。
 本当に壮観だ。この部隊で敵を叩くと考えると、髭が震える。

432 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/07/31(月) 00:17:09 [ 3I4sCF.E ]
 同時に、戦いになった時にしっかりと戦えるのか不安になる。
 私のポテーズ630C1は戦えるのだろうか?大尉のジークは仕方ないが、同程度だと思っていたサマリムの飛竜に圧倒された時は、正直尾が萎えた。
 とにかく上と下の飛竜の差が激しすぎる。大部隊だが、ただの寄せ集めだ。
『全騎防空戦闘用意!』
 敵が近くに来たようだ。大尉との賭けは私の勝ちだ。
 魔法通信と発光信号で内容が伝わり、爆撃飛竜は密集陣形・・・ジエイタイが教えてくれたコンバットボックスなる隊形だ。
『護衛戦闘飛竜、戦闘準備!』
 不平不満をこぼしても仕方がない。ケビシニアが南大陸南方の2.5流国家などでないことを戦いで証明しなくてはならないのだ!!

455 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/08/03(木) 23:51:48 [ 3I4sCF.E ]
 前方ではかなり激しい戦いが始まってる。味方は数の力でねじ込んでるだけみたい。
 私が直接率いる近衛点天馬騎士と他の天馬騎士はあの場所に突撃ね。
 その向こうの敵陣には残りの竜騎士と徴集天馬騎士に行ってもらおう。
 私たちが敵の迎撃を引き受けているうちに突破できると思うわ。
 生き残っていれば、私たちもそっちへ行かなくちゃ。
 ・・・以上のことを素早く手信号で簡潔に周囲に伝える。
 受け取った伝令兵が各自の編隊に戻り、命令を伝えていく。
 地獄の門が目の前に近付いてきたわ・・・。

456 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/08/03(木) 23:52:29 [ 3I4sCF.E ]
『北東から新たな敵!数は200以上!!ペガサスもいる!手の空いているやつは向かってくれ!!』
 パパパパパ! ドウン!
 さらに一騎を撃墜している最中にとんでもない通信が入ってきた。そっちまで面倒見切れねぇよ!!
『大尉!救援に向かいますか!?』
『馬鹿野郎!この辺にいる敵を倒すのが先だ!』
『・・了解!』
 少しだけリサは黙ったが、すぐに返事をしてきた。
『余裕があったら進路の妨害!こっちにやってきたのだけ相手にするぞ!分かったな!?』
『ハイ!』
 おいおいおい、言ってるそばから速度に任せてペガサスが腐るほどやって来やがる。
『前言撤回。全力で阻止する!』
『了解!』

457 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/08/03(木) 23:53:04 [ 3I4sCF.E ]
 ヒィイィイン! ドウッ
 数回目のブレスで、敵の飛竜は遂に沈黙して墜落していった。ようやく撃墜一騎目だ。大尉なら4か5くらい落としているかもしれない。
 ガガガガガガ!
 やや離れた場所では密集隊形の爆撃飛竜が、(主にナイトロスの飛竜だが)猛烈な魔法攻撃を接近する敵に浴びせ掛けている。
 そして高度も上げ始めているので、被害らしい被害は爆撃飛竜にはでていない。が、攻撃する時には高度を下げないといけない。
 まだまだ安心はできないし、いや、攻撃を引き受けている我々はかなりまずい。
 小国が持ち込んだ骨董品並みの飛竜は、数に負けて次々と落ちている。
 敵を圧倒しているのはナイトロス、アスター、コバルタとメリダの飛竜ぐらい。ほかの国の飛竜は軒並み苦戦している。ケビシニアも例外ではない。 
 ドウン!
 私の前方数百メートルのところで同朋のコードロン714が火達磨になって地面に落ちていく。

458 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/08/03(木) 23:53:41 [ 3I4sCF.E ]
 私の元にも二騎の飛竜が向かってくる。敵は是が非でも戦果を立てたいらしい。
「来るなら来い!叩き落してやる!」
 聞こえるはずもなかろうが、叫んでやった。
 私の飛竜は運動性能はそこそこだが、速度は遅い。速さをアドバンテージにした戦いは不可能だ。
 火力も決して良くないので、一騎ずつ丁寧に倒していかないといけない。
 ギリギリまで敵を引きつける。ブレスが命中しないよう神に祈りながら。
 二頭分のブレスが私のすぐ近くを通り過ぎていく。技量が良くないのだろうか?
 そして急減速。失速する寸前まで速度を落とした。
 ゴウ! ドーン・・・
 すれ違い、追い抜かれざまにブレスを一騎に当てる。

459 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/08/03(木) 23:54:14 [ 3I4sCF.E ]
 一騎は吹き飛ばしたが、もう一騎残っている。急いで加速するがじれったいくらい遅い。
 大尉が時々見せる技を真似してみたけれど、私のポテは性に合わなかったらしい。
 もう一騎に引き離される。が、その敵はメリダの飛竜に捕まってあっという間に撃墜されてしまった。
 安心していられない。爆撃飛竜に近づけない敵は、まだたくさんいる。普通の飛竜と爆撃飛竜の差が分からない連中は、嬉々としてこちらにやってくるだろう。
 こちらは国ごとの編隊はとうに崩れ、独自戦闘をする羽目になっている。
 魔法通信は混線しすぎで役に立っていない。何か伝えているように聞こえているが、内容がまるで聞こえない。
 ・・・。殺気が急に増している。これは更に敵が来るのか・・・。

460 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/08/03(木) 23:56:26 [ 3I4sCF.E ]
 周囲では敵味方入り乱れての乱戦になってる。けど、ここにいる敵は本当の敵じゃない!直感がそう言っている。
 ・・・! この戦場のひとつ向こうに大きさが倍以上の飛竜がたくさんいるのが見える!
 ここで味方を複数くぎ付けにしているのはこのためね。
 最後の手信号を出し、各部隊をそれぞれの場所に向かわせる。
 何騎かが、私たちの進路を阻むように飛んできた。何が何でも近寄らせないつもりね。
 近衛天馬騎士数人に、私と一緒に向かってきた敵の相手をするように命令。編隊を離れた。
 長槍を構える。強行偵察の時はいいことなんて何にもなかった。それどころか優秀な部下を何人も失ってしまった。
 でも、今度は目に物を見せてやるわ!そのための訓練も積んできたのよ!


494 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/08/06(日) 23:03:45 [ SKeh42tc ]
『目標確認!』
 爆撃飛竜の編隊が目指していた第一の目標、連合帝国軍の地上部隊が見えてきた。
『エミリー01より爆撃(パパパ・・・)!予定を変更し、部隊ごとに(パパパ・・・)』
 本来なら低高度での絨毯ブレス攻撃を予定していたが、敵が食いついていて編隊が大きく乱れている。統一した行動を取るなど不可能だった。
『ネル隊、高度700まで・・・』
『ベティ隊、高度1000から・・・』
『ヴァル隊、各個目標を確認し突入!』
 攻撃するためには高度を下げなければならない。数多くの敵が待受ける低空に、次々と爆撃/攻撃飛竜が降下していく。

495 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/08/06(日) 23:04:19 [ SKeh42tc ]
 最も最初に敵に攻撃を加えたのは、ナイトロス軍快速爆撃飛竜のフランシスだった。
『高度1200!急降下!!』
 次々とフランシス飛竜が急降下していく。
『高度1000、800、600!・・・敵!接近中!』
 その只中に数騎の天馬騎士がなだれ込んだ。彼女らの戦果はゼロだったが、それ以上の効果を上げていた。
 ドウッ ドッ  ガガーーーン!
 吐き出された火球ブレスが多数着弾したが、その多くは意味もなく地面を焼いただけで終わった。
『フランシス01より各騎!邪魔が入ったせいで攻撃は失敗だ。もう一度・・・』
『隊長!先ほどのペガサスが向かってきます!』
『各騎、個別に退避運動を行って高度2500まで上昇しろ!

496 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/08/06(日) 23:04:54 [ SKeh42tc ]
 以後も急降下攻撃や爆弾の投下が行われたが、どの部隊もろくな戦果を残せなかった。
 とにかく、ペガサスや一部の飛竜が攻撃を邪魔してくるのだ。護衛戦闘飛竜は排除しようと必死なのだが、高速のペガサスの捕捉にてこずり、なすがままにされている。
『サリー隊、最終攻撃コースに突入』
『ヘレン隊、最終攻撃コースに突入』
 そこへ、ナイトロスの大型爆撃飛竜を先頭とした本隊が到着した。彼らのコースに合わせて、他国の爆撃飛竜が攻撃を行う。
 ただしノウハウの豊富なコバルタとアスターの爆撃飛竜は、独自空路で爆撃を行う為に編隊を離脱した。
 高度を落とした彼らにこれまで以上に敵が殺到するが、防御魔法で応戦し激しい空中戦となった。
 連合帝国軍上空に到達し、次々と火球ブレスを発射していく。地面に猛烈な閃光が走る。
 本来ならもう一度攻撃を行うはずだったが、妨害に時間を食って、敵が友軍陣地に接近して不可能となってしまった。
 残存戦力は、先鋒軍本陣へと進路を変えた。

497 名前:171 ◆XksB4AwhxU 投稿日: 2006/08/06(日) 23:05:35 [ SKeh42tc ]
 ・・・。
 やられた!地上軍のいるあたりから土煙が上がっている。攻撃されちゃったんだ!
 近衛天馬騎士と天馬騎士で徹底的に敵の行動を妨害していたけど、もう限界みたい。
 バン! バン!
 後ろを追尾してきた飛竜数騎が我先に火球を発射してくる。速度を最大にしてかわす。
 私が戦っている飛竜乗りはかなりの使い手ね。少しでも油断したら、間違いなく落とされるわ!
 でも、ここで逃げたら近衛天馬騎士団長と連合帝国皇女の名が無く。そして、彼らを引き付けている間は他の味方は自由に行動できる。
 手綱をこれまで以上に強く握った。とにかく、味方が動いているうちは縦横無尽に動き回らなくっちゃ!