359  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/27  19:14  ID:???  

「で、この件は貴官に一任するよ、小笠原三佐?」  

防衛庁の本庁に出頭した、小笠原一等空尉にそう言ったのは、内局のお偉方だった。  
その言葉で、小笠原は自分が三佐に昇進した事を知る。  

だが、人事異動の時期でもないのに昇進したのは、ある組織を新設する為らしい。  
その実働部隊の指揮を取れという事なのだった。  

「そういう事であるのなら、引き受けますが・・・・。なぜ小官なのですか?」  
「なぜって?それは貴官が、彼らと親しいからに決まっておろう?それに、何かと彼らに  
頼られているらしいじゃないか」  

本庁に出頭する為、着慣れない背広に窮屈さを感じつつ、小笠原三佐はぼやく。  

彼らと関わってから、俺の環境も変わったよな。  

お偉方は内心、そんな事を小笠原三佐が思っているとも知らず、書類に目を落としたまま、  
続ける。  

「断っておくが、首相も設立に同意しているからな。なんと言っても、日本の若者の血が  
流れないという事だけでも、責任が軽くなるのだよ」  


360  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/27  19:25  ID:???  

「警察庁の方は、我々に敵意を抱いているが、その彼らにしても、日本人の血を  
流す必要がないという事で妥協しているよ。つまりはそういう事さ」  

全く、なんていい事ばかりなんだ。日本人の血が流れないだけで、ここまで冷血  
になれるなんて!  

三佐は、思わず毒づきそうになるが、お偉方は三佐の表情に、口の端に皺を作っ  
て、苦笑いした。  

「他人の血が流れない事で、よくここまで冷淡になれるな、とでも思っているのだ  
ろう?いや、言わんでいいよ。自分もそう思っているからな。だが、新しい組織に  
人を出せるほど、我々も人が余っているわけではないという事だ」  

そう言って、お偉方はやおらに立ち上がって辞令を言い渡した。  

「辞令、小笠原三佐は、7月19日付を持って、警察庁との合同組織設立に関し、  
実働部隊の指揮官として、編成にあたるべし。なお、組織の名は、『特別機動捜  
査局』とする」  


361  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/27  19:36  ID:???  

「三尉、話は終わったのですか?」  
お偉方との話が終わるまで、廊下で待っていたらしい若者が、扉を開けて出てきた  
小笠原三佐に声をかける。  

「三尉じゃない。三佐。つまり三等空佐」  

そう言いいながら廊下を歩く。  
若者も既になれているのか、立ち上がるのを待とうとせずに、歩を進める三佐に、追  
いついてみせる。  

「それでなんと?」  
「新しい組織を作るから、その指揮を取れということらしい」  
「つまり?」  
「ああ、最前線で行動する部隊の指揮を取るという事さ。組織の長自体は別の人間が  
取るのさ」  

そう言って、苦笑する。  

「それからな、部隊の人員だが・・・・これはアクスタ、君の仲間が中心になる。と言って  
も志願者だけだがな」  

あの森での一件以来、小笠原に懐いてしまったアクスタに、半分顔を向けて伝えた。  


362  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/27  19:46  ID:???  

特別機動捜査局の設立は、順調そのものだった。  

防衛庁を目の敵にしているはずの警察庁も、金と装備だけは出してくれた。  

新しい犯罪に対処しなければいけないのは判っているが、それに対処するだけの  
人がいないからだった。  
それに、増え続ける犯罪に歯止めを掛けるためにも、人は出せないらしい。  

そこで、目に付いたのが、新世界人という事なのだ。  

エルフだのドワーフだの、はたまた、オークだのと言うのは、差別にあたるなどと訳  
の判らない理屈によって、一律に新世界人と呼ぶようになったのだ。  

「訓練についてですが、後は実戦でどうなるかと言う事です」  

特別機動捜査局長官に、部隊の仕上がり具合を報告したのは、辞令が会って数ヶ月  
後だった。  

何もかも試行錯誤の連続だった。  


363  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/27  19:56  ID:???  

まず、やったのは基礎体力を作る事、そして、新しい犯罪に対応するための  
装備の開発だった。  

いくら、体力の面で、現代日本人よりもあるとは言っても、それなりに過酷な  
任務を果たす部隊である以上、体力は必要だった。  

装備については当面、既存の装備を流用した。  

特別機動捜査局にも捜査権限はあったが、それは新犯罪に対してのもので、  
既存の犯罪についての捜査権はない。  
それに警察庁や所轄の警察署からの通報があって、初めて行動できるという制  
約がある為、情報経路の効率化にも重点を置いた。  

人員の大半は警察でもなければ、自衛隊でもない為、これらの事を小笠原三  
佐と警察庁から出向してきた長官とで、やらなければいけないと言う所に、無理  
があった。  

その為、三佐と長官とで、手当たりしだいに人材をスカウトしてきたのだ。  


364  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/27  20:03  ID:???  

警察と自衛隊の双方から、人は出せないと言われていた為、その多く  
は民間からの採用なのだ。  

小笠原三佐も、こんな状況に思わず泣きたくなる。  


何が悲しくて、地べたを這いずり回らなきゃならんのだ。  
俺はイーグルファイターだぞ。  
そりゃあ、不運な事に乗機が撃墜されたとは言え、それでも、機体があ  
れば、飛べるのに!  


そう泣き言を内心言いつつも、組織を整えていったのだ。  
その成果が、この訓練状況なのだった。  



590  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/29  20:39  ID:???  

「井倉一曹、任務ご苦労です」  
「自分らはただ単に技術者と一緒に戻っただけですから・・・・。それこそ、三尉の方こそ、お疲れ様です」  

互いに敬礼しあい、2人は互いの顔をまじまじと見る。  

「いや、もっと自分に力があれば、2人も死なせずにすんだんだ」  
「それを言うのはよしましょう。危ない状況で2人だけで済んだんです。三尉のせいではありません。2人の遺族には、  
自分も付き合いますよ」  

そう言って、井倉一曹は三尉を元気付けた。  


591  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/29  20:40  ID:???  

自衛隊と「アムデス」が交戦したと言う報告は、護衛艦「ゆうばり」より無線でいくつかの場所を経て、首相官邸へ  
と送られた。  
もちろん、新たなエネルギー源となるかもしれない鉱石の存在も併せて、である。  

大迫総理は、一つ息を吐いた。  
大迫総理に取って、新たなエネルギー源になるかもしれない物質については、大歓迎だが、その採掘地点が戦争状態  
なのでは、手の打ちようがない。  
また、自衛官から戦死者が出たというのも厄介だった。  

国内世論と言うより、各報道機関の政府に対しての批判的な論調が激しくなる事請け合いだからだった。  

第一、戦争という事自体、誰もが想像し得なかったのだ。  




722  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/31  22:56  ID:???  

「日本異邦戦記」  

<<591の続き  


 さて、時間はここで少し戻る。  
 王都に留まった調査団の活動の一つに、農作物を日本に輸入できるかそれを調べる事も目的として有している。  
まず、経産官僚と農水官僚らは、シュレジエン側と農産物の収穫高や、人口などの資料があるかを聞いたのだった。  
調査団との折衝に当たったのは、シュレジエンの内務省と財務省である。  
 農水省や総務省にあたる組織がシュレジエン側にないため、機能的に近い組織との折衝となったのである。  
総務官僚が、国勢調査のようなものを毎年行っているかどうか聞くとシュレジエン側の内務省の人間は否定したのだっ  
た。  


723  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/31  22:57  ID:???  

 その言い分というのが、貴族の領地などに調査を行った場合、国権の濫用にあたると見做されるらしいのだ。  
それによると、貴族というものは、シュレジエンに忠誠を誓う代わりに領地で何をしようと、それについて、国権が介  
入すべき事ではないらしいのだった。  
 言うなれば、シュレジエンの国益を害さない限り、政府が立ち入る事はできないのだった。  
また、貴族の領地でなくとも、国勢調査のような事は全くやっていないらしい。  

 そう説明を受けた日本側は、共に顔を見合わせ、一様にため息をつく。  
国勢調査のような資料があれば、様々の数字を通して、色々な情報が手に入るからだ。  
それがないのだから、ため息をつくというものである。  

 そこで農水官僚が総務官僚に代わって、シュレジエン側に尋ねる。  
「では、農地の調査は行っているのですか?例えば、どこそこの土地ではどのぐらい収穫できるか、または、あそこの  
土地は何の栽培が盛んかなどといった様な調査です」  


724  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/31  22:58  ID:???  

 その言葉に、エルベス財務卿が応じる。  
「それならば、毎年検地をしているよ。ただ、領主の土地に関してはその検地の資料はないがな、それ以外の土地に関し  
ては保管している」  
 そう言って、財務卿の言葉に色めきたった農水官僚に視線を向ける。  
「ただ、以前ならば、検地は租税の基本として行っていたが、昨今の改革によって、最近は金納に変わったからな、今で  
は単に、どのぐらいの収穫が見込めるかというものにすぎんがね」  
「金納という事は、商品作物の栽培が盛んになっているというのですか?」  
「商品作物?なんだ、それは?」  
「そうですね・・・・。嗜好品のつよい作物ですね。例えば、茶などがそうです」  

 なるほどと、財務卿が呟く。  
商品作物という概念自体がなかったからだ。  
主食となるような作物の生産に比して、それ以外の作物の生産が増えている事にかねてより疑念を抱いていたが、日本  
側の説明によってようやく氷解したようだった。  


725  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/31  22:59  ID:???  

「えぇと、検地をしているとの事ですが、できれば、見せていただけないでしょうか。食料となる農作物を輸入したい  
ですから」  
「まあ、それは構わんが、こちらから輸出するとして、代金となるものはあるのかな?」  
「そうですね、量にもよりますが、輸入する量が多ければ、代金ではなく、灌漑設備などの提供になってもよろしいで  
すか?」  
「灌漑設備だと?それなら、こちらでもやっているから、別にいらんと思うが?」  
「多分、あなた方が考えているよりは遥かに効果的なものになると思います」  
「どのようなものなのかは想像できんが・・・。だが、鉄でできていて帆がないのに、水の上を走るような船を持って  
いる君たちの事だ。多分、君らが言うように、確かに優れているのだろうが・・・・。まあ、いい。だが保険として、  
設備以外の金目のもの、例えば、地質などというものを調べるために君らが支払った純金でもお願いしたいが、よろし  
いな?」  
「構いませんとも。その辺はまた、輸入する事を決めてからになりますが」  
「当然の事だな。よかろう、・・・おい君」  


726  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/31  23:00  ID:???  

エルベス財務卿は、傍らに控える職員に声を掛ける。  

「検地の結果を記した資料を彼らに見せてあげなさい」  

 その言葉に、財務卿の傍らに控えていた職員が頷き、農水官僚を案内したのだった。  
それを横目で見つつ、経産官僚が財務卿とさらに折衝を行った。  

 まず行ったのは、日本-シュレジエン間における貨幣交換比率についてである。  
ここでもまた、問題が浮上したのだった。  
 それは何かというと、シュレジエン側は基本的に金兌換貨幣を採用しているからなのだ。  
金本位制によって運営されているからである。  
それに対し、日本は、不換貨幣である。  
つまり管理通貨制度である。  
 この異なる二国において交易を行う場合、問題が起きない訳はなかった。  
そこで、当面の間、バーター取引を採用する事とした。  
要するに、物々交換という事である。  


727  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/31  23:01  ID:???  

 こういう、煩雑だが必要な折衝を調査団の面々はこなしていったのだ。  

 さて、財務省に保管してあった検地の資料を手に取りながら、それを逐一日本側に協力するようことづかった財務省  
の職員の助言を参考にしつつ、農作物の生産高を計算し、ある程度のおおまかな概算を弾き出したのは、地質探査の為  
に技術者がシュレジエンに到着して5日目の事だった。  
 さらに、財務省の職員らからの話なども総合して出した結論は、シュレジエン一国で、日本が今まで輸入していた農  
作物の4割を賄う事ができるのではないかと言うものだった。  
 そして、シュレジエン南部は、グルナール河流域に沿って肥沃な平野が広がるという情報も得られた。  
このグルナール河は東部諸国のいくつかを流れる国際河川でもあるらしい。  

 ただこれらの結論は机上での計算であるため、実地調査が必要なのは変わらないが、それでも希望の持てる数字である  
のは確かである。  

 そして、実地調査を行おうとした矢先に帝国が、シュレジエンに対し侵攻を開始したのだった。  



728  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/31  23:03  ID:???  

 こういった情報が纏められて首相官邸へと報告があがった。  
そこで、大迫総理は今後の対応について如何様に処理すべきか、すぐさま首相補佐官を招集し、策を練る事としたので  
ある。  

 日が落ちるのが遅くなった夏の夕暮れの中、総理からの呼び出しに応じた首相補佐官らが、官邸へと足を運び入れる。  
これから、夏本番だと言うのに、手放しで喜べるような雰囲気など、今の日本のどこを探してもなかった。  
 それらの事で頭を悩ます首相補佐官らとしても、今回の件で頭が痛くなる。  

 会議室の一室に通された補佐官らは、ぼそぼそと隣通しで、今回の件について意見交換を行いつつ、総理の入室を待  
つ。  

 ややあって、総理が会議室へと姿を現す。  
ダークグレイの背広に腕を通していた総理は、椅子に座っている補佐官らに軽く会釈をしつつ、自分の椅子へと向かっ  
て腰掛ける。  
 椅子を軽くきしませつつ座ると、大迫総理は全員の顔を見渡す。  


729  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/31  23:04  ID:???  

「既に連絡していると思うが」  
 大迫総理は、そう前置きして、補佐官らを順繰りに視線を向ける。  
「かの地に派遣した調査団に、随伴していた陸自派遣中隊が、地質調査として派遣した技術者らの警備に当たっていた  
所、かの地で別の国家との交戦に巻き込まれたと報告があった」  
 そう言って一区切りつける。  

「確か、派遣した調査団は「シュレジエン」と名乗る国と交渉していたのですね?」  
「その通りだ。かの国とは、かなり友好的に交渉が出来ていたみたいなのだ」  
「その技術者らは何をやっていたのですか?」  


730  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/03/31  23:05  ID:???  

 補佐官らの中で、まだ若い人間が口を開く。  
まだ40歳と若く、怜悧な思考の持ち主として知られる人物である。  
いわば、首相の懐刀とも呼ばれている。  
その彼は最近所々、白い物が混じっている事を気にしていた。  

 大迫総理は、一つ頷いて続ける。  
「エネルギー問題を打開してくれるかも知れない物質の探査である。報告によると、爆発したように激しく燃えるとか。  
詳しい事は持ち帰って調べなければならないが」  

 とそう断りつつ、事実を述べた。  
その言葉に座がひとしきり、ざわめきで満たされた。  
「ただ、その物質が発見された場所が、技術者の警備についていた部隊が「アムデス」と名乗る国の軍隊と交戦した場  
所なのだよ」  
 ざわめきが静まるのを待って、総理はそう切り出す。  
「とすると、エネルギー問題を打開するかもしれないその物質は採掘できない。という事ですな?  




815  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/03  22:08  ID:???  

それでは投下開始します。  


>>730の続き  


 首席補佐官の言葉に総理は頷く。  

「つまり、その物質は我々の手に入らないという事ですか」  
「いや、サンプルとなる物は既に確保しているという報告を受けている。万難を排して持ち帰るよう命じている。」  

 主席補佐官は、ふむと呟いた。  
「全てはそのサンプルを調べてからの事になりますな」  
「その通りなのだが、調査団のもう一つの目的が食料の確保なのだ。生憎と、調査期間と調査範囲が短いが、シ  
ュレジエンとその周辺諸国で、必要量がまかなえるかもしれないらしい」  
「その裏づけは?」  


816  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/03  22:09  ID:???  

 総理に尋ねたのは、更に別の補佐官だった。  

「どうも、シュレジエンでの資料を計算した結果らしい。と言うのは、シュレジエンの財務省の資料などを見せてもら  
ったらしく、かなりの収穫高があるようなのだ」  

 大迫総理は、そう言って少しばかり水を含んで続ける。  

「ただシュレジエンが交戦状態に入った事により、調査が事実上中断の止むなきに至ったのが残念で仕方ないが、な」  

「で、我々に何をせよと言われるのですかな?」  

 首席補佐官は隙なく目を光らせて、総理に問いかけた。  
その言葉に、大迫総理は慎重に切り出した。  



817  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/03  22:10  ID:???  

「諸君らも知っての通り、農作物の生産が思うようにいってない事、そしてエネルギー問題に対し、それほど時間が  
ある訳ではない。否、日本は破滅への道をひた走っているとしか言えないのだ。そうすると、何が起きるか。それは国  
が滅びるという事だ。大量の餓死者とそして、暴動が頻発するだろう。犯罪率さえ上がるはずだ」  

 そう言うと、全員の顔を見る。  
「国政を預かる者として、それだけはしたくない。東ドイツがなぜ崩壊したか。それは、国民を食べさせる事が出来な  
くなったからだ。そうであるなら、我々は実行できる手段があるのならば、躊躇せずにやるべきだと思う」  

 怜悧な40代の補佐官がそれに応じた。  

「当然ですな。私も家族を抱えている身ですからね。飢え死にさせたくはないです。それで、その手段というのは?」  
「シュレジエンは今「アムデス」の侵攻を受けている。ならば、我々はシュレジエンを支援すべきだと思う。なぜなら、  
シュレジエンは穀倉地帯の一部である可能性が高いからだ。そして、エネルギー問題を打開してくれるかもしれない物が  
眠っているからだ。・・・・・自分としては、自衛隊の派遣も含めた手段をとる」  



818  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/03  22:10  ID:???  

 その言葉に座が一瞬静まり返る。  
それはそうだろう。  
 確かに最近でこそ、自衛隊の海外派遣は既成事実と化してはいるが、それでもそれは復興支援などであって、戦闘を  
目的とはしていないのだ。  
 派遣するとなれば、それは、戦後初の武力行使になる。  
その重みは、想像を絶するほどなのである。  
 そして、その武力行使をも手段とすると総理が言っているのだから、静まり返るというものだろう。  

「諸君らの懸念も尤もである。だが、「アムデス」が支配すればどうなるか。この世界の人間からの情報だと、彼らは異  
教徒を認めていないのだ。故に、異教徒は人語を話す事のできる動物として扱われるらしい。この世界には亜人もいるら  
しく、その亜人らは、種族浄化の対象となるのだ。第二次大戦のナチスと同等の存在と言っていいのだよ、「アムデス」  
という国は」  


819  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/03  22:11  ID:???  

 補佐官らの顔は一様に、総理の言葉で厳しくなった。  
そして、誰もいちごも口を利かず、思考する。  
もし、「アムデス」がシュレジエンを支配するようになればどういう事態になるか、それを考えて。  
 しばらく間をおいて、首席補佐官が沈黙を破るようにして、意見を出す。  

「そうであるなら、「アムデス」との交渉は難しいですな。・・・・ならば、総理の言葉どおり、我々はシュレジエン  
を交渉相手とするしかない訳だ。そして、我々はシュレジエンが敗れるのを、手をこまねいて見るわけにはいかないと  
いう事ですね」  
「同意してくれて有難いよ」  
「ならば、自衛隊を出すにしてもです。大義名分、もしくは法律の裏づけが必要です」  
「そして、国会でそこを突かれても問題ないようにしなければならんですね」  
「法律は何を援用すべきかな?」  


820  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/03  22:11  ID:???  

 総理が首席補佐官に尋ねる。  
すると首席補佐官に代わって、弁護士出の補佐官が、いくつかの法案をめくる。  

「『武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律』、これの第二十五条、  
そして憲法二十五条を援用可能と思います」  

 その言葉に誰もが、憲法などをめくった。  
「後はまあ、反論がくれば憲法前文を持ち出すのもいいでしょうな。それと後は、証人として、国会にこの世界のもの  
を召喚すればいいでしょう。後は質疑応答に関する想定をすべきと思います」  

 その言葉に大迫総理は満足し、臨時国会を召集する事としたのだった。  



898  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  09:58  ID:???  

では、朝っぱらから投下致します。  

>>820の続き  
 大迫総理は、更に調査団に対しては引き続き、シュレジエンに対し軍事支援を打診し、その見返りとして農作物を  
輸出するよう働きかける方向で折衝を命じる。  
ついで陸自中隊の一部を、派遣に伴う事前調査の意味も含めてシュレジエン側に同行し、観戦するようにも求める。  

 と同時に、戦死した二人の隊員を、昇進させる事も伝えた。  
普通に考えると2階級特進になるはずである。  
しかしそうではなく、警察などは殉職すれば二階級特進となるが、「前例」にないとの理由で他省庁からの反対があ  
ったからだった。  

 大迫総理はこの件に関して自衛隊のモラルの為、2階級特進を認めるよう他の国会議員らに運動を始めた。  
でなければ、「人道支援」の名目で、シュレジエンに派遣した自衛隊の士気が低下する事は間違いない。  


899  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  10:00  ID:???  

 臨時国会の召集を決めた後、自衛隊をどの程度の派遣規模にするか、統合幕僚会議を招集する。  
全員が着席した後、海自出身の統合幕僚会議議長が発言する。  
「まず、総理にあらかじめ言っておかなければなりませんが、自衛隊とて燃料事情に制約を掛けられている事を伝えて  
おかなければなりません。派遣期間が長くなるようであれば、かなり難しいと言っておきます。そして、燃料事情ゆえ  
に航空自衛隊の投入は断念していただきたいのです」  

 その言葉を受け、空自幕僚長が後を続ける。  
「その通りであります。厳しい燃料事情の中、日常業務を維持するのもままならないのです。この日常業務には、訓練  
の為に飛ぶ事も含まれています。否、訓練飛行ですら、現状においてその時間を切り詰めているのです。空自から派遣  
するとなると、燃料の手当てもないのに、送り出さざるを得ず、そして、この世界には我々の作戦機が着陸する場所も  
ありません。そもそも、舗装された飛行場すらないのですから」  


900  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  10:00  ID:???  

さらに陸自幕僚長も続ける。  
「陸自としての意見を言わせてもらうならば、派遣する場合、どの程度の期間とそして、どの程度の介入を考えられて  
いるか教えて欲しいのです。空自の派遣が難しい以上、派遣の主力は陸自にならざるを得ますまい。海自も可能ですが、  
役割が違いますから」  
   
 海自幕僚長は陸自幕僚長に顔を向けて頷きつつも口は開かなかった。  
自分の出番は違うとでも言いたげに。  
陸自幕僚長も、頷き返しながらも続ける。  
「陸自と致しましては、派遣する規模に関しましても、大規模な派遣━━例えば、1個師団よりも大規模な派遣は難しい  
と申し上げておきます。この一個師団と言う数に関しましても、現在の防衛体制に大きく穴を開ける形での数字ですか  
ら、もし派遣せよと申されるなら派遣致しますが、その責任を取る事はできないと申し上げます」  


901  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  10:02  ID:???  

 その言葉に大迫総理は表情を厳しくする。  
揃いも揃って派遣する事は難しいと言っているからだった。  
「専門家である君らが言っているのだろうから、そうなのだろうが、それで派遣する事を中止する事はできん。シュレ  
ジエンと言うこの世界の国の名前については、諸君らも知っていようし、この国が戦争状態にある事も報告で知ってい  
る筈だな」  
 そう言って、総理は、反応を伺う。  
全員が同意したのを受け、満足そうに頷く。  
「よろしい。なぜ派遣するか、その理由から言おう。政治的な判断によるものだ。シュレジエンが勝てばよし、負けれ  
ば我々が期待している農作物の輸入ができなくなる。それもあるが、今苦境に立たされているシュレジエンに対し、手  
を差し伸べる事で、彼らの日本に対する態度を友好的なものに醸成したいのだ」  


902  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  10:03  ID:???  

 大迫総理は片腕をテーブルに置き、資料をめくる。  
「確か、このあたりのページにあった筈だが、・・・・ああ、これだ。シュレジエンは他民族国家ならぬ多種族国家だ  
という報告があってな。その大多数は、我々と同じ人間らしいが、それ以外マイノリティーとして、エルフ・ドワーフ  
と言う種族も存在しているらしい。シュレジエンが「アムデス」との交戦状態に入ったのも、この種族問題が原因なの  
だ」  
「それは、元の世界における民族問題と同じものですか?」  

 海自幕僚長の言葉に、総理は顔を向ける。  
「まったく同じものだ。シュレジエンは、彼ら異種族と共存する事でやってきたのだ。これに対し「アムデス」という  
帝国は彼ら異種族を、自分らが信仰する宗教━━彼らは「聖教」と呼んでいるらしいがな━━に反する存在であり、神  
の敵として民族浄化ならぬ種族浄化を行う事で勢力を拡大しているらしい」  

 幕僚長らは、一様に顔を厳しくする。  
なぜなら、元の世界においても、民族問題に端を発する衝突は、激化しているからだった。  
スペインのバスク問題しかり、イスラエルのパレスチナ問題しかり。  
 同じ人間同士でさえこうなのだから、種族が違えばどうなるか、それは想像するまでもなかった。  


903  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  10:05  ID:???  

「ゆえに、「アムデス」は、シュレジエンから異種族を一掃するまで、その行動をやめないだろう。そして、わが国に  
は既に難民として、少数だがエルフがいるのだ。もし、「アムデス」がこれを知ればどうなるか。恐らく、「アムデス」  
に差し出せ、と言って来るだろうよ。日本の国益を考えれば、彼らエルフを差し出すのがいいのかも知れんな。だが、  
それはできん。なぜか」  
   
 皆の視線を受けつつ、総理が続ける。  
「簡単な事だ。それでは、日本は「アムデス」に対し、ひざを屈するも同然だからだ。日本は独立国なのだよ。彼らの  
恫喝に従うという事は、彼らの属国になるという事と同義なのだ」  
「その理屈は理解できますが、がしかし、そうであっても、派遣は難しいと言わせていただきたい」  
「君らも判断は尊重しよう。だが、それは認められん。例え、シュレジエンが敗れ、「アムデス」が日本に向けて侵攻  
するとしても、時間的余裕は必要なのだ」  


904  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  10:06  ID:???  

議長の意見を総理は却下した。  
その強い意志に議長らは、総理の意を汲む。  
「総理がそう仰られるなら、派遣の方向で纏めましょう。が、その規模は1個師団よりは大きくならなくともよろしいで  
すね」  
 陸自幕僚長が、確認を取ると、総理は注文をつける。  
「1個師団よりは大きくなければならんが、2個師団よりは小さくてよい。きみら専門家の意見と状況を鑑みれば、この  
規模は欲しい。防衛体制に穴が開くというのであれば、予算を都合するよう財務省に要求する。それでやってくれ」  
「予算ばかりではありません。燃料に関しましても、融通して欲しいのです。戦車や装甲車を送るなら、これらが食う  
燃料も馬鹿になりませんから」  
   
 議長の言葉に、大迫総理はそれも行う事を確約したのだった。  



915  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  19:39  ID:???  

「日本異邦戦記」  


>>904の続き  


「判りました。では、派遣するにしても、どこまで進出したら、手を引くかそれを教えてください」  
 眼鏡を一旦掛けなおした海自幕僚長は、その手を再び机の下にやると、総理に尋ねる。  
「それに関してはだ、シュレジエンの元の領土を回復するまでである。進出する距離はそこまでだ。派遣する自衛隊の  
能力からしても、そこまでが限度ではないのか?」  
「そうですね、我々の体制自体、1個師団以上の戦力を送り込み、長期間にわたって活動するようには出来ておりませ  
ん。兵站能力からしても、シュレジエンの国境までが関の山です。否、国境線まで進出するだけで、限界点に達するの  
では、と考えられます。そのあたりについは、部内でもう少し煮詰める必要がありますが」  

 総理の言に陸自幕僚長が答える。  
「もし、「アムデス」の国境内にまで侵攻せよと言われるならば、それは無理であると言っておきます。自衛隊の能力  
が追いつかなくなるからです」  


916  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  19:42  ID:???  

 総理はその言葉に、考えを纏めた。  
防衛体制に穴があくと言うのを、無理に派遣するよう求めたのだ。  
ここは譲歩すべき所だった。  
総理としても、専門家の言には耳を傾ける必要はあったからでもある。  

「では、その方向で、準備に取り掛かって欲しい」  
 ここに自衛隊に対する準備行動が発令したのだった。  


917  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  19:43  ID:???  

 報道各社及び各党に対し、臨時国会を召集する旨が伝わると、俄然その召集理由を巡って憶測が飛ぶ。  
政府や内閣の閣僚らに取材を取っても、誰もが沈黙を保ったからだった。  
与党ですら、その状況は同じだった。およそ、緘口令が厳しく敷かれている事を思わせるものだ。  
食糧問題やエネルギー問題に関しての審議を目的とする臨時国会は、既に開催した後でもあるから、この沈黙は不気味  
ですらあったのだ。  

 この時期、報道機関の手によって、日本が異邦へと転移した事、そして、その現象が発生した理由などが判らず、専  
門家らが必死で調査している事などが、国民に伝えられていた。  
 ここ最近、各種犯罪率がわずかながら上昇しているが、それが、この転移と関係あるかどうかははっきりとは判って  
はいない。  
 自暴自棄になった者がいるからだとも、元の世界に戻れない事で絶望したからだとも、この先餓死するしかないと強く  
思い込んだ者の仕業だとも、言われてはいるが、それらが理由なのかもしれないが、そうではないのかも知れなかった。  
要は、何も判っていないと言っているのも同じだった。  


918  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  19:45  ID:???  

 だから、今回の国会開催は、この問題について行われるのではとの観測もされはしたのだ。  
それにしては、この沈黙に対する理由としては弱くすぐ立ち消えになる。  
そうこうしつつ、様々な憶測が飛びつつ、その日を迎える事となった。  

 臨時国会開催当日、天皇陛下が開催を宣言した後、静かに退席する。  
その間、全ての国会議員は起立し、開催宣言を拝聴した。  
 その後、議長は大迫総理に対し、発言するよう求める。  
それを受けて、大迫総理はひな壇に立つ。  



919  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  19:46  ID:???  

「皆さん」  
 総理は国会会議場を見渡しつつ、話し始める。  
「今日のわが国は、未曾有の危機にある事は良くご存知だと思われます。この危機を回避すべく。国民の皆様の力を借  
りつつ対処しておりますが、休耕田の復旧思わしくなく、石油の備蓄もぎりぎりまでその使用を詰めつつも、それもも  
って数ヶ月であります。耐えがたきを耐えておられる国民の皆様の生活を思うと、国政を預かる者として遺憾といたす  
ところであります」  

 その言葉に会議場より野次が飛ぶ。  
そう思っているなら、辞めろ。という野次もとんだ。  

 その野次が静まるのを待ち、総理は再開した。  
「かような状況下におきまして、先般シュレジエンに向け調査団が向かった事は、既にお聞きの事と存じます。シュレ  
ジエンとは、この世界━━そう呼ぶ以外にありませんが━━における国の一つであります。このシュレジエン政府との  
折衝において、資料を調べた結果ではありますが、食料の供給が可能であるかもしれないとの報告を受けております」  


920  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  19:47  ID:???  

 途端、議場がざわめき始める。  
なぜなら、この報告について一切、野党らは受けていないからだった。  
 総理の言葉が本当ならば、国民の餓死という未来を避ける事ができるかもしれない。  
それもあってか、野次が大きくなり、慌てて議長が、静粛に!と叫ぶ。  

「既に政府と致しましては、シュレジエン政府に対しまして、食料を輸出するよう交渉を行う事を代表団に伝えており  
ますから、近日中にその成果が上がる事と期待しているところであります」  

 一旦顔をあげた総理は、わずかに息を吸い込む。  
「しかしながら、その交渉を行う少し前にシュレジエンに対し、「アムデス」という国━━帝国と称しているとの事で  
すが━━侵攻を開始したとの報告を受けました所であります。既にシュレジエン側は防戦しているものの、苦境に立た  
されているとの事です。この事態におきまして、政府として、あらゆる支援を行う事をシュレジエン側に申し入れてお  
ります」  


921  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  19:48  ID:???  

 再び顔を上げ、総理は強い語調でもって続ける。  
「シュレジエンとアムデスとの開戦事由は何か。それは異種族問題を含む様々な要因が、重なった結果であります。そ  
して、アムデスは政教一致の国家であり、そして信仰の求める所によって、各地において民族浄化、種族浄化を行って  
いると伝え聞いておりますし、またかの地に送った調査団からの報告もまた、これを裏付けております。  
 今まで日本は平和を希求してきました。それは今後も変わらないであろうと確信致しておりますし、また憲法の精神  
は護持されなければなりません。  
 されど今、シュレジエンは侵略に晒されており、罪のない人々がアムデスの手によって、消し去られようとしており  
ます。  
 憲法前文にもあります通り、わが国は平和を維持し,専制と隷従,圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めて  
おり、そして、全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利を有することを求めて止  
まないのです。  
 されど今、日本はこの異邦の地におり、そして、この世界の国々と付き合っていかなければなりません。シュレジエ  
ンという国が侵略に晒されている今、黙って、アムデスによるこれら虐殺行為を見逃す事は、この憲法の精神に反する  
と考えてます。  
 よってわが国は、この精神に鑑み、救いの手をシュレジエンに差し伸べる必要があります。  
また、先ほど述べたとおり、シュレジエンが滅亡するならば、わが国の食料事情が危機的なものになりますれば、やはり  
支援する必要があるものであります」  


922  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  19:50  ID:???  

 話し終えた総理が一礼するや否や、誰もが議場が大きく叫びで揺れたように感じた。  
報道各社も一斉に、この演説を解説つきで報じる。  
新聞記者もまた、キーを叩いて、記事の骨子をすぐに纏めた。  

 言外で、自衛隊を派遣すると言っているようなものだからだった。  
すぐさま、議員の一人が発言を求める。  
 その議員は野党の長老である。  
議長は議員に対し、発言を認めると、長老は足早に歩きひな壇へと立った。  
「それは自衛隊の派遣も行うという事でよろしいか?」  


923  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/06  19:51  ID:???  

「大迫総理大臣」  
 議長が質問に答えるよう促す。  
総理はそれに答えて立ち上がった。  
「そのとおりであります。必要な支援の中には、自衛隊のシュレジエン派遣も含まれております」  

 長老が再び手を上げた。  

「鹿島議員」  

「それこそ、憲法の精神に反していませんか!?憲法9条は戦争の放棄を謳っておりますぞ!」  
「それでは憲法9条の内容を言えるのでしょうな?」  

 その言葉に鹿島議員が声を荒げる。  
馬鹿にしていると思ったのだろう。  
「今、それをやってどうなるというのですか!?本格的な自衛隊の派遣は、軍国主義への第一歩ではないか!」  



20  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/07  22:05  ID:???  

よって、次のようになります。  

「そうすると鹿島議員は9条の内容を言えないと言うのですな?よろしいでしょう。第9条の内容は、こうですよ。  
『日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の  
行使は、国際紛争の解決手段としては、永久にこれを放棄する』  
 しかしながら現在、アムデスは民族浄化、種族浄化を行う宗教を国教としています。  
このような国と付き合えるか、という事です。  
 付き合えると言うならば、その方法を教えていただきたいものです。  
 9条で標榜されているその平和が破られておるのです。  
黙って指をくわえて見ていよ、とでも言われるのですかな?  
降りかかる火の粉は、払うべきではありませんかな?  
 われらの考える国際平和と彼らの考える物が違う以上、どのように付き合えばよいか、その答えがあれば教えて頂き  
たいものです」  




21  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/07  22:06  ID:???  

 その言葉に、鹿島議員は気圧されそうになりながらも反論を行う。  
「我が方が誠実に、アムデスに対し、兵を引くよう間に立って、交渉すればよいではないか!?」  
「誠実に交渉するというのは、無能のする事であります。そもそも外交とは、国益追求の為に行うものでありますれば、  
如何に自国の国益を拡大するか、そこに力点が置かれるものであります。そして、そのような中にあって、国益を最大  
にしつつ、相手との落とし所を見つけるのが真の外交というものです。  
 確かに、相手が、自分達と同じ価値観を有するのであれば、誠実な交渉もできますでしょう。  
が、同じ人間であっても、異教徒は人語の解する動物として扱うか、または虐殺の対象としてしか見ていない以上、付  
き合えるものではありますまい」  


23  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/07  22:07  ID:???  

 鹿島議員は、まるで自分が無能だと名指しで呼ばれたような気がして、激高し謝罪するよう求めたが、総理は軽く一  
蹴した。  
なぜなら、鹿島議員を詰ったわけではないし、鹿島議員の人格を貶めたわけでもないからだ。  
このやり取りに、野党の誰もが、気まずげに顔を顰める。  
 当然だった。  
このままでは、政府の思惑通り、派遣されそうだったからだ。  

 劣勢にある情勢を覆すべく、別の議員が発言を求め、立ち上がった。  




206  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/12  21:38  ID:???  

「日本異邦戦記」  

>>23の続き  

「岡野議員」  

 岡野篤。当選5回目の衆議院議員であり、日本における組合を基盤とする政党の代表だった。  
まだ髪は黒く、そして50すぎでありながらも、彼の体からバイタリティー溢れるものがにじみ出ていた。  

「総理にお尋ねします。先ほど総理は、様々な支援をシュレジエンに対して行うと申されました。何ゆえ、その支援に  
自衛隊が含まれるのでしょうか。  
 シュレジエンにおいて、苦しむ人々を救うのにむしろ、自衛隊はいらない筈ですが?  
お答えいただきたい」  


207  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/12  21:39  ID:???  

「大迫総理」  

「岡野議員のご指摘も、ごもっともでございます。確かに、派遣すべき土地で治安が保たれているなら、自衛隊でなく  
とも可能でしょう。  
しかしながら、今現在シュレジエンは戦争を行っております。  
 そして、アムデスの占領下にある異種族は、アムデスの国教たる『聖教』によって、種族浄化が成されておるのです。  
そのような所に、徒手空拳の者が人道支援に行った所で、逆に浄化の対象となるのが落ちでありましょう」  

 岡野議員は反論の為、挙手を行い、そして議長はそれを認める。  

「ならばこそ、ならばこそです。自衛隊の派遣を認める訳にはいかないのです!武装した自衛隊員によって、アムデス  
の人々を傷つけてはいけないではありませんか!」  


208  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/12  21:43  ID:???  

 その発言に大迫総理は途端に顔を顰める。  
「それでは、岡野議員にお聞きしましょう。  
 これは例えばの話ですが。  
暴力行為を受けている者を見ても、議員は何もせずに見ているつもりですか?」  

「なぜ、そんな事を聞く必要があるのですか?」  
「いいですから、議員の考えを答えてください」  
「よろしいでしょう。自分なら、暴力をやめるように言いますよ」  
「それでも、相手が暴力行為をやめようとしなかったら?」  
「やめないのなら、警察を呼ぶまでですね」  
「では、暴力行為を行っている者を、議員は庇いますか?」  
「なんで、そんな事をしなければならない?」  


209  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/12  21:44  ID:???  

 その言葉に満足したのか、大迫総理は大きく頷いた。  

「大迫総理」  
議長の許可により、総理が発言した。  
「先ほど、岡野議員は、暴力行為を行っているものを庇わないと仰りました。  
アムデスにおいても、これは当てはまります。  
よって、シュレジエンに住まう者を救おうとするのに、どうしてアムデスの人間を庇わなければならないのか?  
 つまりは、そういう事であります」  



210  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/12  21:44  ID:???  

 このままでは不利だと悟り、岡野議員は攻撃の矛先を変える。  
「自衛隊の派遣を行うという事は、集団的自衛権にも抵触するはずですが?」  
「全く抵触しないと判断しております」  

 その言葉に議場のざわめきが大きくなる。  
常識で考えるなら、自衛隊派遣となれば、現地勢力と行動を共にする事は確実だからだ。  
 内閣の見解においても、  憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国自身を防衛するため、必  
要最小限度の範囲にとどまるべきものと解されており、政府としては、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超  
えるものであるとしているからだった。  

 だからこそ、抵触しないと言う総理の発言に、議場がどよめくのは当然の結果だった。  
今までの政府見解を覆すものだからだ。  


211  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/12  21:45  ID:???  

 岡野議員の口調もまた、大きくなった。  
「それはどう言った判断に拠るものでしょうか!?」  
「集団的自衛権とは、そもそも国連憲章下において、自国が攻撃を受けていないにも関わらず、その国が攻撃を受けて  
いる際、安全の維持及び平和の回復の為に認められている権利であります。  
 しかしながら、今回の自衛隊派遣の主たる目的はシュレジエンの治安回復にあり、これは集団的自衛権の行使には当  
てはまりません」  
「それは詭弁ではありますまいか!?治安回復が主たる目的と言うなら、自衛隊でなくとも構わないはずですが?」  


212  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/12  21:47  ID:???  

 岡野議員は、腕を大きく振り、舌鋒鋭く切り込む。  
ここが攻める好機であると思ったからだった。  
「確かに、シュレジエンにおいて、政治の混乱や暴動の発生に関しては自衛隊でなくともいいでしょう。  
 ですが、今のシュレジエンの治安を回復しようとするなら、それは警察では無理というものであります。  
自衛隊でなければ、治安の回復は達成できないからであります」  

「それこそ、詭弁だ!」  
 野党から、怒号が瞬時にして沸き起こり、議長の制止も効かない状態となったのだった。  
直ちに議長は休憩を宣言したが、火に油をそそく結果となる。  
 もはや、警備員らに守られて議場を出ようとする総理らを止めるかのように野党議員らが押し寄せ、せめぎ合った。  


213  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/12  21:49  ID:???  

 全国のテレビ番組は、この国会の結末を受け、討論が画面に映し出された。  
街頭では、組合などが自衛隊派遣の中止を求めて署名活動する姿が見受けられる。  
 そのような中、混乱した国会を正常に戻すべく、各党の国対委員らに対し、与党側が接触を図ったが、いい感触をつ  
かむ事が出来ないままに終わり、投票の日を迎えた。  

 かなり古い国会戦術が議場で復活した。  
それは懐かしいと言っても、過言ではない牛歩戦術だった。  
大きく腕を振り、大きく足を上げて、いかにも歩いているように見れるが、その実、蝸牛のようにあまり進まないのだ。  
 これで時間切れを狙おうというのだ。  
だが、今までとは違う事が一つあった。  

 それは戦前より存在する、とある政党だった。  
その名を社会革新党という。  
 日本における共産主義を党理とし、民主国家において唯一、それなりの議席を有する政党である。  
その党が今回の国会審議において、政府の方針を支持した。  
 この突然の方針転換ともいえる自衛隊派遣の支持に、国会はおろか世論ですら、大きく揺れた。  
だが、社会革新党にしてみれば、この派遣支持は当然の結論だった。  


214  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/12  21:50  ID:???  

 社会革新党は派遣に関する見解において、  
『平和の維持こそ共産主義の目指すものである。今やシュレジエンが隣国である以上、隣国の窮状を見てみぬ振りをす  
る事は、共産主義の考えから逸脱するものであり、そうであるなら、かれらの窮状を救うべきである』  
と述べたのだ。  

 野党からすると、社会革新党の派遣支持は裏切りにも思え、野党は、声高にその姿勢を非難したのだった。  
そして、野党の牛歩戦術はその効力を充分に発揮できぬまま、投票結果が示される。  
 自衛隊の派遣はここに決定したのだった。  




395  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/15  22:17  ID:???  

>>214の続き  
 国会にて、投票が行われる数日前の事。  
永田町のとある一角にて、2人の男がテーブルを挟んで向かい合わせに座っていた。  
一人は、自分達の要望を飲ませる為に。  
もう一人は、その要望をいかに捌くか。  

 部屋には空調が聞いているのか、室外よりも涼しかった。  
電気に関しては、完全に原子力発電に頼っているからでもある。  
初夏から盛夏へと、季節が変わろうとする中、人々の服装にも変化が見られる。  
半そでで行きかう姿が多かった。  
 行きかう人々の人いきれが充満する歩道に対して、車道は公共機関に属する車以外に走らない為、その空きようは皮  
肉なほどだ。  


396  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/15  22:19  ID:???  

 その車道に、自衛隊派遣を叫ぶデモ隊が我が物顔に練り歩き、その一部は、ここ与党本部の建物にも押しかけている。  

 そんな道路の光景を見下ろす位置にある部屋に、2人の男はいたのだった。  

「わが党としては、自衛隊に党員を派遣したい」  
 招き入れた部屋の主に、男は何から話そうかとしばし黙考していたが、ようやく口を開いた。  
「それは、自衛隊の行動を監視しよう、という事なのか?」  
「監視すると言えばそうだ。だが、自衛隊の行動に対しての、それではないのだ」  
 部屋の主の疑問を、男は半分だけ否定した。  

「わが党は、自衛隊の派遣はシュレジエンの治安回復に繋がるから、支持したのだ。この点についてはいいだろうか?」  
「それは勿論だ」  
 党としての声明は、この部屋の主も見知っていたからだった。  
「つまり、シュレジエンの領土を回復する分には、その回復に必要であるなら、どのような行動を取ろうと反対はしな  
いし、制約するつもりもない。なぜなら、それは、地域の平和を回復し、安全を維持する事だからだ」  



397  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/15  22:19  ID:???  

 その言葉に、部屋の主は頷く。  
「それはいい。だが、シュレジエンの領土から1ミリと言えど、自衛隊が出るのはいかん、と言う事だ。  
それは侵略に当たると、我々は解釈している」  
「確かに、私は国会にて、治安回復の為に自衛隊を派遣すると言ったが・・・」  
「大迫総理。我々が危惧しているのも、そこなのだ。確かに、総理は派遣するとは言ったが、どこまで進出するか、そ  
の範囲を言及していないではないか」  

 その男の言葉に、大迫総理は、内心はっとした。  
確かに、男の言うとおりだった。どこまで進出するか、その範囲を言っていなかったからだった。  
まさか、そこをついてくるとは。  
 そう言う思いで、忸怩たる感覚を覚えたが、平然とした顔つきを、大迫総理は努力して保つ。  


398  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/15  22:20  ID:???  

「もし、自衛隊とシュレジエンが、アムデスとやらの領土に1ミリでも入ったならば、おそらく行く所まで行く事となる  
はずだ。アムデスの首都まで行くべきだ、との声も上がるだろう。  
 そうなれば、どうなるか。乾いた砂に水が吸い込まれるようにして、自衛隊もまた、アムデスの奥深くまで進むにつ  
れ、先細るのは目に見えている。  
 それに、首都に攻め込めるだけの国力が、今の日本にあるかという事だよ。  
だからだ。だから、自衛隊に国境を1ミリでもでないよう、党員に監視させたいのだ」  

 それではまるで、旧ソ連の政治委員のようではないか。  
その男の言葉を聞いて、大迫総理はそのような感想をもつ。  
「今、旧ソ連の政治委員のようではないのか?などと思っているのではないか?だとすれば、それは間違いだ」  

 総理は、片方の眉を器用にしかめた。  
「違うと言うなら、何だというのだ」  
「先ほども言ったように、自衛隊がかの地で何をしようが、興味はない。  
 政治委員のように自衛隊の行動に口出しする事はないと確約する」  


399  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/15  22:21  ID:???  

 大迫総理には、目の前の男がなぜそんな事を言っているのか、その言葉の意味を測り損ねた。  
「横永書記長」  
 目の前の男にそう呼びかけ、言葉を続ける。  
「党員を自衛隊に派遣するとして、我々に何を求めている?」  

 その言葉に書記長と呼ばれた男は、ふむと頷く。  
「簡単な事だ。いわゆる政治取引と言う奴なのだ。・・・いや、違うな。  
 我々を選んだ有権者に対して、名分が欲しい。そういう事だ」  
「なるほど」  
「確かに、我々は君らが言うように、主義者だ。だが、主義者であると同時に日本人であって、政治家なのだ」  

 その言葉に大迫総理は、やおらに立ち上がり、窓辺へと歩み、屋外を見下ろした。  
窓辺からは、与党本部へと詰め掛けたデモ隊を、与党本部を守る警察隊が、視線も厳しく何時何が起きてもすぐ対応  
できるよう、慎重に警備する姿が見られる。  


400  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/15  22:22  ID:???  

「・・・・ここで、デモを繰り広げる彼らに対する名分という事か」  
 横永書記長もまた、立ち上がり、総理の傍らにたった。  
「彼らもまた、有権者という事だ」  
「そう言う事か」  

 つまりはそういう事だった。  
政治批判を自由に行える事こそ、そしてそれを行動に移せるのが、民主国家だからだった。  
 批判する自由がある国は、政治批判を自由に出来ない国より強靭なのであって、それを保証するのが民主国家の政治  
家というものなのだ。  

「社会革新党が我々の支持に回る為の条件という事と受け取るが、それで構わないな」  
「構わんよ。ただ、もう一つ条件がある」  
「収容所を作って欲しい。そこに我々の関係者を管理の為に回したい」  



401  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/15  22:23  ID:???  

 大迫総理は怪訝そうに、横永書記長の顔を見やり、その視線を書記長は受け止めた。  
「我々に取っての脅威とは何か。それは、アムデスが信仰する宗教だ。これに揺さぶりをかけん限り、彼らは何度でも、  
我々の前に立つはずだ」  
「その脅威を共産主義の思想でもって、塗り替えようというのか?」  
「別に、共産主義でなくとも構わん。要は、彼らの精神的支柱に揺さぶりを掛ければいい」  
「いいだろう。だが、収容所を作るにしても、君らの関係者で固めるわけにはいかんな」  
「ああ、全部が全部、我々だけで教育できるとは思っていない」  

 大迫総理は、再び椅子に座りなおすと、書記長の条件を飲んだのだった。  



776  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/19  22:19  ID:???  

 それでは、投下。  

「日本異邦戦記」  

>>401の続き  
 さて、臨時国会が開会しようとする時、一隻の貨物船が「新島」港へと到着し、そこで輸送機へと積み替えられたも  
のが羽田空港へと到着した。  
 貨物の中身は、今の日本に取って救世主となるかもしれない鉱石だった。  
文部科学省研究振興局と資源エネルギー庁資源・燃料部の職員ら、そして企業と大学の研究チームらが見守る中、  
牽引車によって、ゆっくりとコンテナが輸送機から姿を現す。  
 夏の日差しがコンテナへと当たって、光を反射する。  
 ややあって、コンテナが完全に輸送機から離れると、「新島」から飛来したその輸送機は、整備のために移動を始め  
る。  
だが、そんな輸送機に目を留める者など誰もいない。  
皆、そのコンテナへと視線を注いでいた。  
コンテナの蓋が開かれるや、もどかしそうにして、誰もが早足で近寄る。  


777  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/19  22:20  ID:???  

 中から、姿を現したのは、そのコンテナの大きさに関わらず、以外に小さい、とはいうものの、それでも大人が3人  
がかりで抱えなければならないぐらいには、大きい鉱物だった。  
「これがそうか」  
「そうらしい・・・」  
 文部科学省の職員の独白に、資源・燃料部の職員が応じる。  
その鉱物の塊は、4つ確認できた。  
光を浴びて、青く光る鉱物に、皆の視線が注がれる。  
研究チームらも同じだった。  

 その4つの鉱物は、基礎研究用に一つ、応用研究に一つ、残る2つを今緊急に必要な石油の代わりになるかどうか、そ  
の利用法の調査にわけられた。  
 文部科学省と資源エネルギー庁の所管が、それぞれ一個という事だった。  
すぐさま、輸送する為のトラックに積み替えられると、それぞれの研究室へと運び込まれたのだった。  


778  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/19  22:22  ID:???  

 このプロジェクトには、日本の頭脳とも言えるべき人間が集められていた。  
既に一度、この世界の言語を翻訳し体系化する為に、様々な分野の人間を集めた事があるため、政府はスムーズに  
このプロジェクトの為に、人材を招集する事ができたのだった。  

 まず、おこなったのは、この鉱物の融点と沸点を調べる事であり、そして、どの程度の圧力をかければ液状化するか  
というものだった。  
基礎研究チームはと言うと、この鉱物の電気特性の調査である。  
 ここで沸点と融点について、少し述べる。  
小学校の理科で習う事でもあるが、皆の認識の為、我慢してほしい。  
 沸点とは、液体が気体になる温度の事、融点とは固体が液体になる温度の事である。  

 この融点と沸点を調べる際、この鉱物の特性、すなわち爆発したように燃焼する事から、安全対策を施した上で実  
施された。  


779  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/19  22:24  ID:???  

 国会審議が紛糾し、投票が行われてその結果が出た頃、ある程度の成果が得られた。  
融点についてはかなり高い事と、ある程度低い圧力で液状化する事などが判ったのだった。  
 そして、一旦液状化したならば、固まりにくい性質も見つかる。  
とは言うものの、長期間放っておくと固まるのだが。  
そこで、様々な物資を使い、どうすれば、液体のままで存在し続けるか、その研究に焦点が絞られる事となった。  
 そして、ここで研究チームは壁にぶつかった。  
どの物質を触媒にすれば、液体のままで存在するか。  
その解決策が見つからないままに、自衛隊が派遣される日を迎えたのだった。  


780  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/19  22:25  ID:???  

 自衛隊派遣部隊であるが、海田市第13旅団を中核として、これに東千歳第7師団隷下の第71戦車連隊そして、習志野  
第一空挺団ならびに、木更津第一ヘリコプター団の一部をもって編成が完了した。  

 さて、肝心のシュレジエンだったが、状況は更に悪化の兆しをみせていた。  
まず、シュレジエン側としては不本意な事に国境警備の任につく、各騎士団が緒戦において、その任をまっとうでき  
ずに潰走したのは手痛い誤算だった。  

 シュレジエンにおいて、近衛騎士団というものは存在したが、これは戦力としては数える事は出来ない代物だった。  
何故なら、儀杖部隊であるからだった。  

 本来なら、各騎士団が粘り強く継戦しつつ後退し、近衛兵団が戦場に姿を現すその時間を稼ぎ、更に近衛兵団でもっ  
て、敵の突撃衝力をくじく。  
 そして、最後に近衛兵団が戦闘準備に入ると同時に、領主勢らと後退してきた各騎士団の残存兵力でもって、軍勢を  
編成し、突撃衝力をくじかれた敵を駆逐するというのが、その基本戦略だった。  
 近衛竜騎兵団も、決戦兵力として、近衛兵団と行動を共にする。  


781  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/19  22:29  ID:???  

 だが、アムデスの攻勢は、そのシュレジエンの基本戦略を前提から崩壊させたのだ。  
遅滞防御行動を取りつつ後退できないと言う時点で、基本戦略に狂いが生じている。  
この事態に、シュレジエン軍はやってはいけない事を犯してしまう。  
 それは戦力の逐次投入だった。  
とは言え、シュレジエン軍としては止むを得ないものではあったし、兵は拙速を尊ぶ事からも判断としては間違って  
はいないが。  
 結果として、逐次投入になったのであって、その判断を後付けで批判するのは容易い。  
現場としては、もっともベストな選択だと言えたのだから。  

 そしてこれは、基本戦略が崩壊した事による、シュレジエンの焦りでもあった。  
草兎平原において、シュレジエンは、集結できた近衛兵団の半数を勇将ロゴルディン伯ナキル卿に預け、アムデスと対  
峙したのだった。  


782  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/19  22:32  ID:???  

 だが、近衛兵団の全力を投入できなかった事は、近衛兵団の壊滅へと繋がった。  
更に、草兎平原において、ナキル卿を失った事も近衛兵団にとって手痛い損失だった。  
ナキル卿の最後は、敵が放った矢を何本もその身に受けながらも、敵兵を幾人も道連れにしたと伝えられた。  

 事ここに至って、決戦兵力たる近衛竜騎兵団をも投入して、防戦に努めるのが一杯とかす。  
 王都から46里(およそ138キロ)の地点において、半減した近衛兵団が竜騎兵団とともに、必死の抗戦を続ける有  
様となった。  
ここには、エステルス城砦という要塞が築かれていた。  
 ここを抜かれると、王都まで後はない。  
 状況が変わったのは、それからまもなくの事だった。  
アムデスはなんと、エステルス城砦に篭る近衛兵団を拘束する為に必要な戦力のみを残し、その戦力の過半を迂回  
させたのだった。  
これを知るや、近衛兵団将兵は驚愕した。  
自分達を置いて、迂回するなど信じられなかったのだ。  
 アムデスの聖将カディス・ジルバのなせる業だった。  


783  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/19  22:43  ID:???  

 近衛兵団々長を努めるガシュタス候リキアルト卿は、人望に優れ戦略眼を有する人物である。  
齢は49。働き盛りにあると言ってもいい。  
シュレジエン宰相であるドルカルフ公ナイラーク・エンドルン卿とは3歳違いだった。  
リキアルト卿の頭には、白いものが一筋流れており、細身だが引き締まった体躯を有する。  
美形という訳ではなく、むしろ不細工とすら言えるが、却って武人としての貫禄を醸し出しているとも言えた。  

 その近衛兵団団長ガシュタス侯リキアルト卿は、打って出る事を決意した。  
血路に道を開き、王都に帰還し、篭城する為である。  
 竜騎兵団団長ノビクスもまた、同意見だった。  

 観戦武官として、葛重三尉も同行していた。  
第二小隊の指揮は、井倉(いのくら)一曹に任せている。  
そして、三尉の通訳として、ディーンが随伴していた。  
調査団の通訳は既に別の人間が行っている為、ディーンも本来の身分、自衛隊嘱託へと戻っていた。  




981  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/23  00:01  ID:???  

残りわずかなので、単発SSでも、投下(´▽`)  


「特別機動捜査局」  


 特別機動捜査局、略して特機はその下に警備部、調査部、需品部、総務部の4部を有する。  
警備部とはその名のとおり実働部隊であり、調査部とは新犯罪を防ぐ為に、警察庁や警視庁  
及び公安調査庁との連絡、並び新犯罪組織における内偵などを担当する。  
 需品部とは、隊員への物資の支給、各種装備の整備、及び犯罪に対応する為の装備の開  
発研究にあたる部局である。  
 総務部とはその名のとおり、予算配分、人材配置、広報活動などの細々とした職務を行う  
部局だった。  

 小笠原三佐は、この警備部部長という事になる。  
本来なら、特別機動捜査局副長官という事になるのだろうが、三佐という事と自分はその柄で  
はないと言い張った為、警備部部長という肩書きを有する事となった。  



982  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/23  00:24  ID:???  

 警備部は。新犯罪が発生した場合において現行犯逮捕を行う1課と、調査部の内  
偵や、捜査によって発生する確率が高い場合において、未然に防ぐ為に行動する  
2課があった。  

 特に2課の装備は重装備な事で知られる事となるが、彼ら1課の警備行動にあた  
る時の服装は異様ですらあった。  
なにせ、体全体を覆い隠すようなその作業衣は威圧感を醸し出してさえいる。  
 顔には面当てをつけ、頭には軍用ヘルメットを着けている。胴と脚部は、これまた  
火炎から身を守れる耐火性のあるもので、更に盾を有している。  
 全体的に青灰色で統一されていた。    


983  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/23  00:41  ID:???  

 この1課の元に現在1つの大隊が配備されているが、この大隊の隊員を元に全国各地に実働部  
隊を新設する事が決まっていた。  
いわば教導大隊と言う訳なのだ。  
 最終的には全国各地に8個の連隊を配備し、東京23区には1個の教導隊と12個の大隊を配備す  
る事が決まっている。  
 ただ、これは現在の計画であり、実際にはこんなにも志願者がくるはずはないだろうとは、小笠  
原警備部部長も思ってはいる。  

 さて、1課の作業衣は、特機では甲種作業衣と呼ばれる。  
甲種作業衣があるなら、当然乙種作業衣も存在する。  
乙種作業衣は、いわば通常勤務時の作業を行うときに着用する。  
 この乙種作業衣は、上下とも灰色で動きやすくデザインされたものだった。  
何せ、甲種作業衣は対魔法効果を施され、なおかつ通常の攻撃にも堪えられるようにと考慮されて  
いた。  


984  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/23  01:01  ID:???  

 営内をランニングする隊員らの姿を見おらす位置にある部屋には小笠原警備部部長の姿が  
あった。  
 部長に面談しているのは、永山需品部部長だった。  
「所で、あの件ですが、どうなりました?」  
「ああ、内局を通じて、まわして貰うようには言ったがな。果たして陸自が回してくれるかという  
訳だ。なにせ、陸自でもようやく装備が決まった奴だしな」  
「でも、ようやく決まったと言って、既存のモノに手を加えただけでしょうに?」  
 永山需品部長の言に、小笠原警備部長は腕を組んだ。  
「実際、大陸で手酷い目にあってるからな。喉から手が出るほどに必要という訳だ。それを横  
から、俺にもくれって言ってるようなモンだ。いい気はしないと言うものさな」  
 そう言いつつ、肩をひそめると案の定、永山需品部長は苦いものを噛み潰したかのような表  
情になった。  
「そんな事を言って・・・。それでは、1課の人間を丸裸で送り出すつもりですか?」  
「そんな事をするつもりはないが?ただ、代わりと言っては何だが、設計資料ならその複写をく  
れてもいいと言っていたから、有り難く頂戴してきた」  
 その言葉に需品部長は、やや片目を大きくする  
「すると・・・・、自分らで作るなら構わないと、陸自はそう言いたい訳ですか」  
「そういう事だな」  


985  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/23  01:17  ID:???  

 協力する気はないが、邪魔をする気もないという態度が見え見えだった陸自の幹部を、小笠原三佐は  
思い出した。  
これは警察も同じだった。  
 そんな事を思っていると、需品部長は苦い顔をする。  
「設計図をくれても・・・・。大体設計図からして軍機でしょうが。それに、自分らの施設じゃあ、一から作る  
なんて、そんな能力もなければ技術もないですよ」  
 その言葉に、それまで黙っていた大廣総務部長が口を開く。  
「そんな施設を作る金なんか、ありませんぞ。組織の立ち上げから、人員の配置に至るまで、予算配分  
を行いましたしね。それに、作業衣やらなんやらで、予算を大分食ってるんですよ?」  
 そう釘を刺された事で、小笠原三佐は眉を思わずしかめたのだった。  
「臨時予算を組んでもらえるよう、頭を下げるしかないかな」  
「臨時予算を組む事に、財務省が首を縦に振るかという事ですよ」  
 需品部長が否定的な言葉を出すと、警備部長は降参したように息を掃く。  
「自分と長官とで、財務省を説得してみるよ。それでいいだろう?」  
 そう言うしかなかったのだった。  

                                           続く?  





542  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/28  00:54  ID:???  

「日本異邦戦記」  

>>../1081/1081338122.html#783の続き  
「明朝黎明をもって、我々はエステルス城砦を放棄し、以後王都の防備につく。貴官らは我々と行動を共にする必要は  
ないし、ここに残った方が、生き残るかも知れん」  

 リキアルト卿は異邦人たる葛重三尉に対し、そう説明する。  
恐らく団長の言うように、ここに残った方が生き残るかもしれないし、捕虜となって、奴隷のように扱われるかも知  
れなかった。  
 葛重三尉は、その言葉に謝意を示しながらも、共に行動する事を表明した。  
「それに、彼女の事もありますし」  
 葛重三尉はディーンに視線を向けつつ、近衛兵団々長に対しディーンの安全について、言及した。  
その事に団長は、片方の目を心もち細め、ふむと同意する。  
「相判った。そういう事なら、何も言うまい。だが、我々から離れるでないぞ」  
「勿論ですわ」  
 ディーンも強く頷く。  



543  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/28  00:56  ID:???  

 葛重三尉は城砦放棄後の行動について、質問を行った。  
「脱出する際、どのように行動するのですか?」  
「うむ。まず、近衛兵団は全力をもって、突撃を行う。  
その際、敵は防御柵をもって突撃を防ぐであろうから、魔道士団による正規魔法により、敵の行動を阻止する。  
 この魔術支援は、近衛兵団の突撃を隠す必要もあるから、事前にいくつかの組に分け、順に支援を行う。  
魔術支援は、城砦から打って出る以前より、行う必要があるのは言うまでもないな。  
 その支援をどこまで行うかだが、これは防御柵に近づくその直前までであり、その後、魔道士団は待機させた竜に伴  
乗し、脱出する。  
ただし敵もまた、魔法使いによって魔術支援を阻止するだろうから、その効果はおそらく半減する。  
が、敵を魔法によって、殲滅するのが目的ではないから、問題はない。  
 竜騎兵団だが、近衛兵団が防御柵に達すると同時に同時攻撃を掛ける為、間合いを計る必要がある。遅すぎてもい  
けないし、早すぎてもいけない。  
それ故、竜騎兵団の攻撃を隠す為にも、魔術支援が必要となる。  
 何か質問は?」  


544  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/28  00:57  ID:???  

 リキアルト卿に視線を向けたまま、尋ねた。  
「正規魔法とは何でしょうか?」  
「魔法というものが、君らにはないのだったな。なら、説明しなくてはならんな」  
 その言葉に三尉が申し訳なさそうに、頭を下げる。  
「普通、魔法と言うものは、簡単に発動する事はできんのだよ。  
簡単なものならすぐに使えるが、効果はあまりないといっていい。まともに使うならば、儀式を必要とする。これは  
全てに当てはまるのだ。  
 それで、正規魔法だったな。  
魔法の術式を床などに描き、執り行う類を指す。  
それだけに、魔法を発動するのに結構な時間がかかる。  
 これで説明になったかな?」  


545  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/28  00:57  ID:???  

 リキアルト卿は、はいと頷く三尉を見つつ、他に質問はないか尋ねる。  
何もない事を告げ、三尉は気づいたように済まなそうな表情をする。  
「自分は馬に乗れないのですよ」  
「なんと!?馬に乗れないのか?」  
「そのとおりです」  
 リキアルト卿とノビクス団長は互いの顔をみやった。  
「貴官は士官であろう?それなのに馬に乗った事がないのか?」  
 その言葉にどう説明していいか悩みつつ、三尉が説明する。  
「自分らの世界では、馬に乗れる人は少ないのですよ」  
「それはまたどうして?」  
「車には勝てないからですね」  
 ノビクス団長の疑問に答えると、団長は更に訳が判らず質問を重ねたのだった。  
「馬車とは違って、馬を付けなくてもとても早く走る事の出来る物の事です」  
 その説明に、団長はまだ訝しそうに納得していかない表情をするが、当面の楽しみができたと自分を納得させていた。  
ここから無事に帰還できたら、見せてもらうぞ。  
 その言葉に、三尉は断る事ができなかった。  
何せ、物凄い迫力で見つめていたのだから。  




708  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/28  23:32  ID:???  

「特別機動捜査局」  

 財務省との折衝の結果、専用工場新設の為の予算を確保する事ができた。  
専用工場と言うと大層な名前だが、実の所は既存装備の改造や、補修を行う  
設備である。  
 ここの管理を需品部需品3課が行うと事となった。  

 一から建設するのが勿体無いとの理由で、元からある工場をそのまま特機  
で買い取った。  


721  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/28  23:45  ID:???  

 さて、何を改造するのかというと、陸自の96式装輪装甲車(96WAPC)を特機仕様に変更するのだ。  
その為の設計図と言う訳である。  

 特機では、新犯罪をテロリズムと同義として見なしている為、12.7mm重機はそのまま載せてあった。  
更に陸自の大陸での経験から、得られた戦訓が取り入れられた改設計である。  
車体そのものは、製造メーカーからそのまま受け取った。  

 これを一個分隊毎に配備するから、一個小隊で3台ある事になる。  
ちなみに、特機での部隊編成は、一個大隊は2個中隊で、1個中隊は4個小隊、一個小隊は3個分隊  
で編成されるという変則的なものだった。  
 この編成は、人員不足から来ていた。  



724  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/28  23:57  ID:???  

 ちなみに分隊は10名が定員とされていたが、特機の人材供給源が限られている為、  
実際にはその半分程度でしかない。  

 これら実戦部隊を指揮運営するのが、警備1課なのである。  
いわば、軍令機関である。  
ではその上位である警備部はと言うと、これはもう軍政機関だった。  
軍政というからには、部隊の配備や隊員の教育などを受け持つ。  

 まず新犯罪が発生した場合、所轄警察署などからの連絡を受け、警備部から出動  
命令がでる。  
この出動命令を受け、警備1課が部隊を動かす事になる。  

 そして、新犯罪が発生した後、その犯人を捕まえるべく調査6課が動く事となる。  
なお警備2課は内偵を受け持つ為、新犯罪が発生したとしても直接動く事はなかった。  


725  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/29  00:14  ID:???  

 さて、調査部調査6課が出てきたが、6課があるからには1課や2課がある訳である。  
1課は警察庁及び各都道府県警察との連絡、2課は警視庁および警視庁管内の所轄警察  
との連絡、3課は陸自と、4課が海自、5課が海保との連絡に当たっている。  

 なお7課はと言うと厚生労働省医薬食品局との連絡を行う組織である。  

これらの組織の原型となるものを小笠原警備部々長らが苦労して作っていかなければなら  
なかった訳である。  


726  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/29  00:22  ID:???  

 訓練方法にしても、まずは基礎体力を手始めとして、警備における対応などの座学、  
また屋外や室内における模擬演習なども行いつつ、練成していったのだった。  

 そうこうする内、不穏な動きがある事を警備2課が掴んだ。  
どうも、日本に入国してきた異邦人らの間に、日本の対応を不満とする者が集まり、  
幾つかの組織を作りつつあるらしい。  
 そして、何らかの動きを起こす気らしかった。  

 が、そうは言っても実際にはまだ何もやってはないのだから、灰色には近かったし、  
それで特機が動くなど、警察庁が黙認するはずもない。  


727  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/29  00:31  ID:???  

 緊張がゆっくりと充満する中、一人の異邦人が小笠原部長を尋ねてくる。  
その異邦人は女性だった。  

 異邦人を見慣れているはずの部長ですら、思わず見とれてしまった。  
淡い小麦色の髪をさらりと伸ばし、深い知識を湛えたかのような瞳を宿しなが  
らも、それでいて好奇心の強そうな光を放っている。  

 その女性は自らを陸自嘱託だと名乗った。  
長い耳がまるで前髪を分けるかのように、その存在を主張している。  
「それで、ディーンさん。なぜ、貴女がここに?」  


728  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/29  00:43  ID:???  

「陸自の大陸での活動の一つに、敵性者の日本への入国を阻止する事があるのは、  
ご存知でしょうか?」  
 ディーンの言葉に、今更何を聞いているのだというような顔になりながらも頷いた。  
「知っていますよ。陸自の活動でその敵性者の大半の入国が阻止されている事で、  
我々の負担が軽減されているのを感謝しているぐらいですよ」  

 ディーンは軽く笑んだが、すぐに表情を引き締めた。  
「つい先日の事です。大陸で活動している警務隊が敵性者の幾人かを取り逃がして  
しまったのです。警務隊は何人かの殉職者を出してしまいました。なんとか無事な  
隊員からの証言では、彼らはかなりの手練だったようです」  
 思わず、小笠原部長は顔を厳しくする。  
「すると、かれらが上陸してくるというのですな?」  
「まず間違いなく。既に海自や海保もすぐに追跡に乗り出したのですが、見つける事  
ができなかったと言う報告を受けましたから」  


729  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/29  00:54  ID:???  

「済んだ事はとやかく言うますまい」  
 そう言って部長は腕を組んだ。  
「しかしそうなると、困ったな。何せ、訓練未了の状態だ。この状態で敵性者と対峙  
するとなると・・・・厳しいな」  
「特機の状況を鑑みて、我々陸自にも彼らを取り逃がした事に極めて重く受け止め  
ているのです。ですから、これは提案なのですが」  

 ディーンは部長の目を見て、提案を受け入れるかどうか表情で尋ね、それに部長  
が応える。  
「聞いてからだな」  
 小笠原部長は組んだ腕をほぐして苦笑した。  
「一個中隊を特機に臨時に編入するのです。対魔法戦闘にもなれた部隊ですわ」  
「対魔法戦闘?」  
「はい。おそらくはあなた方、特機にも参考になるのではと思います」  

 その言葉に、部長はしばし思惟したが他にいい案もないため、陸自からの申し出  
を受け取ったのだった。  




954  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/30  22:25  ID:???  

「日本異邦戦記」  


>>545の続き  

 王都バスムには、様々な感情が入り混じった空気で入り乱れていた。  
不安、絶望、またはアムデスに対する猛烈な敵対心。  
そう言ったものが充満していた。  
 王都に住まう貴族の中には王都を逃げ出そうとするも、逃げ遅れた事で、逆に政府や宰相エンドルン卿に対する全く  
場違いな批判を主張するものすらいた。  
もっとも、エンドルン卿らはそういった者たちをまともに相手をしようとはしなかったが。  




959  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/30  22:26  ID:???  

 エステルス城砦を迂回した敵の軍勢は今や、王都バスムの城壁から目の良い者ならばはっきりと視認できる距離に達  
しており、総攻撃の準備の為に一時進撃を休止しているようだった。  
そう時間が経たない内に、攻め寄せてくる事は明らかだった。  
 その様は市民らの目にもあからさまに飛び込んでくる。  

 シュレジエン調査団は交渉団と名を変えて活動していたが、彼らもまた自分達がどうしようもない状況にある事を悟  
って、諦観を持って受け入れる者もいた。  
しかしながら、園山女史らは本国からの訓令、すなわちシュレジエンの危機であるこの時に、彼らに恩を売りつける事  
で、日本が有利になるように事が運ぶよう、活動を再開する。  



960  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/30  22:28  ID:???  

 近衛兵団がエステルス城砦においてほぼ無力化されてしまった今、西部や南部の領主勢らは政府の呼びかけ━━軍勢  
を王都の救援に差し向けるようにとの命を、言を左右にして拒絶した。  
領主らは言質を全く与えようとしなかったのだった。  
 その返答にエンドルン卿らは思わず、彼らは状況が読めているのかと口に出したのだった。  
王都が、そして王家が滅びれば、それはシュレジエンの消滅に繋がる。  
そしてアムデス以外の国であれば、シュレジエンを滅ぼした王家に従う事を約したならば領主らはその命脈を保てるが、  
アムデスはそうではなく、彼らに歯向かう者は皆敵であると言う事を受け入れてないようだった。  
 その一方で、政府の言に応じて、兵とともに王都の防備につく領主らもいたが、それはごく少数だった。  
 かような状況は交渉団の面々にも推測できた。  
自分達の地球における史実などから類推すれば可能だった。  


961  名前:  政府広報課  ◆F2.iwy/iJk  04/04/30  22:28  ID:???  

 園山女史らは、ぴりぴりとした王城の雰囲気が、まるで肌に刺すかのように感じながらも宰相との折衝に向かってい  
た。  
宰相の執務室の前に着き、軽く扉を叩く。  
すると中から、どうぞとの声が園山女史らの耳に入り、ゆっくりと扉を開ける。  
 前もって面談したいと告げていた為、室内にはエンドルン卿を始めとする数人が待ち構えていた。  
室内には簡素だが、品の良さを感じさせられる調度品が飾られていた。  
 エンドルン卿の進められるままに、ソファへと座る。  
ソファが自分にかかった体重を受け止め、ゆっくりと沈みこんだ。  
女史らに、かなり高級そうなソファだという感触を与える。