844  名前:  てさりすと  03/02/11  23:21  ID:???  

書き直し版です。まだ間違いがあるかも・・・  

その光は一時付近一帯が明るく照らし出し最後の一発が爆発した時には全てが終わっていた。  
建物の奥深くにいた人間と高密度な防御魔法で守られた場所以外に立っている生物は見当たらない  
LANTIRNで確認すると中心から少し離れたところにある塔の見張り台の兵士が余りの事に呆けているのが見える。  
後ろにいた二機はそれを確認すると照準を要塞の生き残っている主要部分に合わせた。  
『行くぞメビウス1!!次は俺達の番だ!!』『了解』  
小隊長のルーデルが無線で呼びかけてくる。川口はそれに答え爆撃体制に入った。  
「悪い!!これは戦争なんだ!!」  
そう叫びながらすでに動くもののいなくなった要塞の中心にBLU-109の照準を合わせていく。  
先にばら撒いたクラスター爆弾は予定通り対空陣地を沈黙させた。もはや彼らを止める物は無い。  
先に照準をあわせたルーデルが急速に高度を下げつつMK84爆弾2発を塔に、あまった2発を別の目標に向かって投下した。  
メビウスもそれに続き爆弾を投下してルーデルと共に上昇した。  
表面で大きな爆発が手前から順に4発起きる。その爆発は塔どころか付近の建物を完全に倒潰させる。  
もう一つの目標も粉砕し城壁も吹き飛ばしていた。  
それから数秒後、要塞の中心で見た目には小さな爆発が幾つも起きた。だがそれは見た目だけだった。  
要塞内部に突入したトリニトル製の爆弾は生き残っていた兵士を、ただそこに存在した物全てを焼き尽くした。  
神は不平等かも知れないが少なくとも死神は全てに平等だった。  




896  名前:  てさりすと  03/02/14  17:11  ID:???  

潜水艦出す事に決定しました。通商破壊するのと敵船や怪物と戦ってもらいます。  
怪物の種類についてはお楽しみに。  
そういや九州にF-2いましたっけ?いるのならわがままですが基地ごと教えて欲しいです。  

とりあえず続き生きます。  

『交戦中の全機に告ぐ。全目標の沈黙を確認。作戦は成功せり  繰り返す  作戦は成功せり』  
各攻撃部隊からの報告を聞いたE-767の管制官が作戦終了が成功した事を全機に告げる。  
数秒間  無線がノイズだけになる。数秒後それを聞いていたほとんどの航空機から一斉に歓声が上がった。  
エルフィールやシークプレストの仮設管制塔で食い入るように無線に耳を傾けていた地上部隊でもまるでお祭り騒ぎのようになっていた。  
「いえーーーーーーーーぃ!!」  
「誰か!!祝杯だ!!酒もってこーーーーーーい!!」  
「ばーか酒なんかあるわけ無いだろ!」  
初勝利に沸く自衛隊の余りの馬鹿騒ぎに対し状況を理解出来ていないエルフィール軍の関係者が少々引くということも会ったが、  
のちにこの勝利がエルフィール軍によって確認されると国を上げての大パレードがあちこちで行なわれている。  
勝利に沸いたのはそれだけでは無い。  
作戦が成功したと通常電波を使って地上部隊の間で交わされた無線を盗み聞いていた旧軍の老人達も一升瓶を片手に宴会騒ぎをしていた。  
ちなみにその後ろでは自衛隊に賭けて一人勝ちした武山君がオーラン軍の勝利に賭けていたドワーフ達から大金を巻き上げていた。  



898  名前:  てさりすと  03/02/14  17:12  ID:???  

だがそんな馬鹿騒ぎに付き合っていない者達もいた。  
一つは重傷者を一名出したF-4EJの小隊。後部座席のパイロットが何とかエルフィール基地までたどり着いたがすぐに  
病院に担ぎ込まれ現在治療中であった  
もう一つは今もって戦闘中の航空部隊であった。特にワルキューレ隊は酷い事になっていた。  
黄色の隊長騎が撤退しようとする部下を守りながらゆっくりと撤退したのはよかったが  
足の速い援軍のドラゴンたちが次々と戦闘空域に入りつつあった。  
『隊長!!ミサイルも弾も全弾撃ち尽くして仕舞いました!!』『自分もであります!!』  
『よし!!撤退を開始する。ワルキューレよりエアキング!!支援してくれ!!』  
すぐにE-767から手の空いた部隊に支援命令が出される。  
『了解。エアキングからルデールおよびファルコン隊へ  ドラグーン達に向かって残っているミサイルを撃て。』『了解!』  
直ぐにルデール隊が旋回してドラグーン達に照準を合わせ安全装置を解除する。だが直ぐには撃たない。  
ziziziziziZIZIZIZIZIZIZI  
両方の翼にぶら下げている赤外線誘導ミサイルのシーカー音がだんだんと大きくなってくる。  
それをたしかめたルデールは部下とおまけに発射命令を出した。  
『よーし諸君!!ガラガラ蛇が獲物を求めて鳴いているぞ!!解き放ってやれ!!』  
『了解!!』2秒後にミサイルが一斉に発射される。  
『メビウス1『ルデール(1、2、3)  フォックス2!!フォックス2』』  
すでに明るくなりつつあった空に薄い青色の痕跡を残しながら猛毒を持った鋼鉄の蛇の群れがが獲物にむかって時々向きを変えながら突入していく。  
彼らには見えていないがはるか後方からもF-16たちによってアムラームが放たれていた。  
(よーしいい子だ。そのままこっちに気づくなよ)  
彼の脳裏にだんだんとなにかの映画の中で聞いた音楽が響いてくる。  
そうたしか馬鹿でかい宇宙船にむかって大統領自ら戦闘機に乗り込んで攻撃する映画だったはずだ。  
『行け行け行け行け!!』  
誰かが無線機で叫んでいる。自然とそれを聞いたミサイルを放ったパイロット達も同じように呟き始めた。  
もうミサイルはドラゴンたちまで数百メートルに接近していた。  




11  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/16  00:30  ID:???  

さてさて続き生かせて貰います〜  

部下の放った魔術を何とか回避しながら逃げまわっているF-15jを見つめながら増援にやってきた部隊の指揮官は一人呟いた。  
「ふん!!黄色はこんな奴らに撤退させられたのか?」  
鉄の鳥達は最初はすさまじい魔術を放ったが魔力が尽きたのか先ほどから味方の攻撃を避けてばかりいた。  
おまけに鉄の鳥からは魔力が全く感じられなかった。  
おそらく実戦経験の無い敵の魔術師か騎士が後先考えずに強力な魔術を打ちまくったのであろう。  
援護が来る様子もないしこのまま行けば勝利は間違い無い。  
魔術に追い詰められた鉄の鳥が炎を吐きながら急上昇を行い何とか魔術を振り切る。  
「被害報告!!味方4騎が撃墜されました。しかし現在我々が有利に戦闘を進めております。」  
一人の士官が分かりきった戦況を報告に来る。指揮官はそれにうるさげに答え  
「分かっておる。・・・それよりこのうるさいのは何とかならんのか?」  
指揮官が耳を抑えながら呟いた。それに部下が笑いながら答えた。  
「あの鉄の鳥の悲鳴です。直ぐに聞こえなくしてみせます。では!!」  
「うむ。直ぐに頼むぞ。このままでは耳がやられてしまう。」  
士官が剣を正面に構えて礼をしてから戦場に突入していく。  
その背中を少しの間見つめたあと何事も無かったかのように戦場に視線を戻した。  
ちょうどそのときだった。魔術が命中したらしく逃げ出した鉄の鳥の右翼で爆発がおきて翼がもげる。  
そのまま鉄の鳥はゆっくりと黒煙を曳きつつ回転しながら落下していった。  
「よし。まずは一匹だな。」  
彼がそう呟いた時、残りの鉄の鳥を追いかけていたドラゴンたちは遠方から飛来した  何か  によって次々と撃墜されていった。  


12  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/16  00:30  ID:???  

DOM!!DOGAGAGAGAGAGAGA・・・  
バランスを失った機体が回転しながら頭から落下していく。  
『くそ!!やられた!!落ちる!!』  
『諦めるな!!姿勢を保て!!』  
ワルキューレ1が僚機の惨状を確認して急旋回で機体の向きを変えながら叫ぶ。  
自らが囮になって何とかニ尉が脱出するまでの時間を稼ぐつもりだった。だが彼の行動は無駄になりつつあった。  
味方によって放たれたミサイルがドラゴンの編隊に突入していき次々と目標を撃破していく。  
おそらくほとんどの兵士が何が起きたのかも分からず死んだだろう  しかし幸せかもしれない。  
運悪く生きたまま空中に投げ出された者も少なくなかった。その中には女の竜騎士もいた。  
だが味方が落ちかけている今そんな事を気にしているパイロットは一人もいない。  
『上がれ上がれ上がれ!!!!!』  
警告ランプの明かりが点滅し警報が鳴り響く中でニ尉が必死になって操縦桿を操作して姿勢を保とうとする。  
それにあわせ機体がわずかずつであるが上昇を始めた  だが地面が迫ってきている。  
二尉が右翼に目を向けるとまるで昔見た片方の翼をやられたイスラエルのF-15の写真の様になっていた。  
『もういい!!無理だ!脱出しろ!!』  
もちろん脱出した所で地上は敵支配圏だ。すぐに救助が来る訳ではないが墜落するよりは見込みがある。  
しかしニ尉には聞こえていない。すでに彼の頭の中には操縦桿を引き続けることしかなかった。  
地面が近づいた事で上昇警告の警報とランプも点滅しだした。それでも彼は諦めずに高度計を睨みつけながら上昇しようとする。  
神に彼の意思が届いたのか地上数メートルの地点で何とか上昇する事に成功した。  
しかし死神は諦めない。徐々に高度を上げつつあった彼の機体に追いすがろうとする勇気ある2機の竜騎士たちがいた。  
『やらせるか!!』  
それに気づいたワルキューレ1がフルスロットルで急降下しながらトリガーを引く。  
もともと残り少ない残弾は曵光弾が先頭のドラゴンに命中するのと同時に弾が切れてしまった。  
無防備な真上から直撃を食らったドラゴンと竜騎士ははまるで止まる気配を見せずに土煙を上げながら地面を削っていく。  
だが生き残った竜騎士が脇目も振らずに魔術を放とうと手を振り上げた。  
瞬間、上空から飛んできた弾丸が彼とドラゴンの意識を奪った。  


13  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/16  00:42  ID:???  

『やった!!間に合った!!』水城三尉が歓声を上げる。  
『メビウス1?!間に合ったのか?!』  
傷ついたF-15jを助けることに集中していた寺井はメビウス1が突入してきていた事に気づいていなかった。  
『そうみたいですね!!話はまた後で!!』  
そういいながら曲芸の如く、五十数メートルしかないワルキューレ1と地面の間を通りぬけた後、逃げ出したドラゴン達に機首を向け  
近すぎて取っておいたAIM-120アムラームの照準を逃げていく一番大きくて派手な装飾をしたドラゴンと傍のドラゴンに合わせた。  
『メビウス1・・・フォックス1フォックス1!!』  
二発のミサイルが逃げ出したドラゴンに向かって突っ込んでいく。  
すでにルデール隊は全ミサイルを放っていた。数キロしか離れていなかった為すぐにミサイルが覚醒する。  
ミサイルが”覚醒”したのを確認すると彼らは中距離から飛んでくるスパローの誘導を始めた。  
すさまじい数のミサイルの追撃に気づいた騎士や魔術師達が一斉にファイアーボールをばら撒いた。  
数発のミサイルが外れた。だがすでに覚醒状態に入ったアムラームから逃れるすべはない。  
彼らが放った6発はなんとか生き残っていた残りの21匹の生存数をミサイルの数だけ減らし、  
さらに飛んできた6発のスパローとメビウス1が放った2発のアムラームが指揮官と士官を含む上層部を全て叩き落した。  
それをE-767のレーダーで確認した管制官達が次々とレーダーから消えていく敵を確認して撤退命令を出した。  


14  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/16  00:56  ID:???  

傷を負いつつも何とか適当な高度まで上昇したF-15jにあわせワルキューレ隊が編隊を組みなおした。  
その編隊の一番端に一機だけ微妙に形が違う機体F-15Eがいた。  
『ようメビウス1!さっきは天使が助けに来た様に見えたぜ。休暇になったら2人に酒でもおごってやるぜ。』  
右翼の無いF-15jのパイロットの二尉がメビウス1の二人のパイロットに遠まわしに感謝の言葉を告げた。  
残りのパイロットからも2人に対し賛辞の言葉が送られた。  
そこにAWACSのクレアから撃墜したドラゴンの姿を確認する通信が入った。  
どんな敵を落としたか確認する事によって、エルフィールが掴んでいる情報と照らし合わし何処の敵部隊か確認する為だった。  
レーダーではサイズが分かってもどんな装備をしているかまではわからないし、  
クレアの魔力探知も魔力の種類と場所がわかるだけで相手の姿までは分からなかった。  
だからワルキューレ隊がしたドッグファイトの様に最接近した部隊から敵の特徴を聞くしかなかった。  
『え〜と、たしか・・中型ドラゴン3匹とえらく派手な大型ドラゴンと同じサイズをもう一匹・・・』  
川口が後ろに乗っていた水城に確認をとりながらクレアに報告する。  
『おれは8機だ。中型が6  旗を引いていたのを2匹だ。』  
次々とワルキューレ隊のパイロット達が報告した。それを聞き終わったクレアが川口に再び尋ねる。  
『川口さん。さっき大きくて派手なドラゴン撃墜したって言いましたよね?もしかして金製の装飾が付いてませんでした?』  
『ああ。確かに金属製の装飾が付いてたけど・・それがどうかしたのかい?』  
『それ・・・たぶんこの辺で一番えらい竜騎士たちの指揮官ですね。私たちの国なら騎士にしてもらえるぐらいの手柄ですよ。』  
信じられないというような声でクレアが川口の質問に答えた。それを聞いた別の隊員がひやかす様に叫ぶ。  
『おお騎士  川口様と水城様の誕生だ!!基地帰ったら宴会だ!!』  
『おめでとうメビウス1!お前のような仲間を持って俺は幸せだぞ!!』  
彼らは馬鹿騒ぎを続けながらエルフィール空港に着陸し  
エルフィール空港で補給を受けてから新田原に向かって飛んだ。  
なお補給を受けている間に二尉が何処かから調達してきたワインで祝杯をあげたことは彼らだけの秘密であった。  




31  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/17  23:34  ID:???  

上の書き込みは自分でした。(名まえ直すの忘れてました。ごめん。  
フラッシュは面白かったので是非暇な方は見てください。  
とりあえず自分の続き〜  

密林に囲まれた細い山道を十数名の兵士達が2列になって登っていた。その中には年のころ十四、五の少女も混じっている。  
「うえ〜〜つかれた〜〜。死ぬ〜」  
そう言った小さな少年兵の頭を隣にいた兵士が軽く叩いて言った。  
「泣き言を言うんじゃない。日本軍とやらの戦果を確認したらすぐに帰れるさ」  
実際の所、日本だけでなくいろんな国が参加していたが  
すでに偵察機によって戦果を確認された事も伝わっていない、彼らにはそんな情報まで入って来る訳が無かった。  
彼らの直属の上官はその大戦果を信じきれず、念のための確認として彼らに出撃命令が下っていた。  
彼らはエルフィールのとある軍師の命令で森の中に設営してあった偵察陣地から丸一日歩き続けここまでやって来ていた。  
口には出さないが指揮官を除き体力的にも精神的にも皆がばて始めている。  
もちろん馬やガウ(サイみたいな動物)で移動すれば楽だったのだが、  
馬を装備した部隊は遠方の敵陣地の偵察に出撃し、ガウを装備した部隊は交通の要所に威力偵察に向かっていた。  
一人カンガルーラットに乗ったままの新任女性指揮官が一人無責任なぐらい元気に全員を激励している。  
「みなさーん。山頂までもう少しですよ〜。がんばってくださーい。」  
「「うーい。」」「ぐえ〜」兵士達が気だるそうな声で返事する。女性を担いでいるカンガルーラッドも気だるそうに鳴いた。  
そのカンガルーラッド。見た目には羽根の生えていないダチョウとカンガルーを2で割ったような生き物であった  
名前は一番前と一番後ろを繋げただけのカードという安直なもので、彼自身不満に思っていた。  
砂漠に住むカンガルーラットは生息数が限りなく少なく逃げ足が速いため数を揃えるのは難しいが  
その脚力と体力はすさまじく一部の上級騎士の間で大人気なり高値で取引されていた。  
そんな彼がなぜこんな辺境の偵察部隊にいるのかと言うと    



32  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/17  23:42  ID:???  

エルフィールでは士官以上の階級の乗り物・・つまり馬やガウなどは個人装備で有り士官以上は自前でそろえる必要があった。  
そのため彼女がここに異動される際に馬が手に入らなかったため、自宅でペットとして飼っていたカードをつれて来たのだった。  
そこに斥候として先行していた兵士が表情を変えて走って戻ってくる。  
「フィ隊長!!敵の要塞が壊滅しています!!すぐに来て下さい!!」  
それを聞いた兵士達が茶化したように言った。  
「あのアルク要塞がたった一度の攻撃で・・?おおげさな・・」  
「まあまあ、私は先に見て来るから皆はゆっくりとついて来てね〜。じゃあマイト君。行きましょう」「は!こちらです。」  
そう言ってマイトが先に全力で走り出す。指揮官がカードの手綱を思いっきり引いて後を追いかけさせた。  

「うわ〜本当に壊滅してますねえ。」  
頂上にたどりついたフィが余り驚いたようには聞こえない声で感想をのべる。  
その後ろでは坂道を駆け上ってばてて倒れこんだマイトの額をカードがタオルを嘴ではさんで器用に拭いてやっていた。  
彼女が私物の望遠鏡を取り出してアルク要塞を観察する。所々にまだ火がかすかに見えるがもうすぐ自然鎮火しそうだった。  



33  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/17  23:44  ID:???  

少し手前の城門付近に望遠鏡を向けると近くの村から駆けつけた住民だろうか  棒立ちになって呆然とその姿を眺めている。  
そこに残りの兵士達が駆けつけてきた。彼らも要塞の姿を見て驚きの声をあげる。  
「すげえ・・・2日前の夜中にドカドカなってたのは雷じゃなかったんだ・・」  
棒立ちになっていた彼らにその様子を見ていた古参兵士が指示を出す。  
「おい!何をしている。1班はすぐに付近の偵察に向かえ!!ジルと改はすぐに城の様子を書き写せ!ほれほれ!!」  
そう言って彼は棒立ちになっていた兵士達の背中を押して任務に向かわせる。  
それから背嚢の中から画板を出そうとしている美術兵を手伝って座るところまで作って上げた。  
そこに望遠鏡を見るのを止めたフィがもどって来て彼に望遠鏡を渡して木陰に座り込んだ。  
「隊長?どうかしましたか?」彼は望遠鏡を受け取った体勢のまま彼女に尋ねる。  
「・・・城壁の所を見ていたら気分が悪くなっちゃいました。少し休ませてください。」  
そういって帽子を目深に被ったまま木にもたれかかった。古参兵は何を見たのか気になって望遠鏡を要塞に向けた。  
村人か盗賊かは分からないが子供までもが使えそうな兵士の鎧や武器を盗んだり死んだ兵士の死体を蹴りまわしたりしていた。  
それを止めようとした生き残りの兵士が逆に殺され鎧を剥がされていく。そこまで見たところで彼は望遠鏡から目を離した。  
「・・下衆どもめ・・」  
そう呟いて彼は望遠鏡をカードに載せてある隊長の私物入れの中に片付けると  
城の状態と付近の様子を描いた絵に今起きた事の説明をつけて伝書バトを偵察陣地に向けて放した。  




45  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/18  22:02  ID:???  

絶対的な制空権を楯に電撃的に進攻した陸上自衛隊はさしたる反抗も受けず  
当初の作戦通り爆撃によって灰燼と化した敵要塞を次々と占領し6つの占領されていた都市を開放していた。  
しかし出撃中に陣地や要塞を焼き払われた残党が町や村に駐屯していた部隊と結束し頑強なバリケードを築いて立てこもっていた  
そのうちの一つである人口数千人ぐらいの町をエルフィール軍傭兵たちと共に包囲した自衛隊は突入の準備を整えた後、  
立てこもるオーラン軍に降伏勧告を行なおうとしていた。  
「おい違うだろ。その配線はこっちの接続に・・」「こうか?」  
スピーカーのメモリを最小限にしてスイッチを入れる。  
『戦ーい、忘れた〜人々の代わりならば〜勝利の〜・・・・』  
「・・OK。中隊長にマイク届けて来い。」前に宴会をしたときから入ったままだったCDを抜きながら一士が二士に命令する。  
「了〜解と。」  
そう言って彼は近くで戦車長たちと地図を見つめながら作戦会議をしていた中隊長の下に向かった。  
「会議中失礼します!中隊長。準備が整いました!!」  
「おう!ちょっと待っとけ!!・・・先ほどの手順の通り頼みます。」「了解しました。合図を待ちます。」  
そう言って戦車長が各々の戦車に走って戻っていく。地図をぱぱっとたたんだ後中隊長も先ほど自分を呼んだ部下の下に向かった。  
トラックに載せてきた大型スピーカの配線を繋げていた一士がマイクを持ってくる。  
「どうぞ。もうスイッチ入れときました。」「ん。わかった。」  
三尉が二士からマイクを受け取り、近くに町を見下ろせる位置に展開していた装甲車の上に登った。  
彼は一度大きく深呼吸した後、用意してあった紙を見ながら立てこもる敵に向かって語りかけた。  
「町に立てこもっているオーラン軍の兵士諸君に告ぐ!こちらは陸上自衛隊東部方面軍の前田敦一等陸尉だ!!」  
スピーカーの音より彼の声のほうが大きく響く。慌てて一士が音量をMaxにして三尉に指をたてて合図を送る。  
「コホン!!あ〜町に立てこもっているオーラン軍の兵士諸君に告ぐ!こちらは陸上自衛隊東部方面軍の前田敦一等陸尉だ!!」  
今度は余りのうるささに全員が耳を抑えた。全員が操作していた一士を睨みつける。一士が慌てて音を少し下げた。  


46  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/18  22:03  ID:???  

傍にいた二士が耳栓をしながら何事も無かったかのように望遠鏡で町を眺めていると次々と大通りに人間が飛び出してくるのが見えた。  
どうやら音源を捜しているらしい。  
「現在君達は完全に包囲されている。速やかに降伏し武装解除せよ。」  
一尉の言葉に兵士達がこちらに気づいたようだ。  
一人がこちらを指差し何事か叫んでいる。それが終わらぬうちに全員が親指を下に向け口々に叫んでいるのが見えた。  
「・・・どうやら君達は我々の実力が分かっていないようだ。君達の後方に有る壊れかけた時計台が見えるかね?」  
兵士達が一斉に睨むように振り返えった。そこには比較的大きな公園の中心に古い時計塔が鎮座していた。  
「よく見ておきたまえ。・・よし!やってくれ!!」  
それを合図に自衛隊の隊員達が一斉に耳を覆う。少し間をおいて離れた位置に待機していた74式戦車の戦車砲が一斉に火を噴いた。  
DOM!DDOM!!      
次の瞬間105m戦車砲から飛び出したAPが次々に時計塔に命中し時計塔を倒潰させた。  
オーラン軍の兵士達は男も女も大きく口を開けたまま倒潰した時計塔を見つめている。  
貫通した砲弾が地面に突き刺さる。  
「今のは前座だ。君達が抵抗する場合、我々は容赦なく今以上の攻撃をおこなう所存である。」  
兵士達が一斉に振り返る。表に出てきていた民間人が自宅に飛び帰る。  
「恐らく君達はアルク要塞やケイオス砦からの援軍を待ち望んでいるのだろう。だがすでにその二つの陣地は壊滅した。  
要塞跡地は我々が占領した。すでにこの付近で交戦を続けようとしているのは君達だけだ。」  
本当の所はまだ抵抗する部隊も多々あり今のところ自衛隊には死人こそ出ていないが重体患者も数人出している。  
だが町に立てこもっている彼らにはそれを知る方法は無い。  
オーラン軍の兵士達の中に諦めたように武器を落とし膝をつくものがあちこちに見られる。  
「残りの部隊は全滅するか降伏した。君達は如何するかね?」  
そこで少し間を置いた。兵士達の心を揺さぶる為だ。  


47  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/18  22:07  ID:???  

「もちろん我々の指示に従い降伏するなら、君達の身の安全は保障するし暖かい食事に寝床も用意しよう。  
しかし・・もし抵抗するのなら、大変不本意だが君達にはその時計塔と同じ運命を辿って貰わなければならない。」  
兵士達が騒然として騒ぎ出したようだ。指揮官らしき人物に詰め寄っていく。  
「何もすぐに返答せよとは言わない。この太陽が沈む時までの猶予を与えよう。・・それではいい返事を期待している。以上だ。」  
そう言って彼は戦車から降り一番近くで望遠鏡を見つめていた隊員に尋ねる。  
「連中の様子はどうだ?」隊員が望遠鏡を手渡しながら返答する。  
「相当混乱している様子です。少なくとも一部は降伏に応じるとは思いますが・・・」  
「応じてもらわなければ困る。出来るだけ市民に犠牲を出すなとの上層部からの命令だ。」  
一尉が望遠鏡を覗き込みながら返答した。混乱は混乱を呼び今にも殴り合いが起きそうだった。  

///////////////////////  
以上です。少し話しは進んでいます。  
おかしな所があったら教えてください訂正します。  

1だお〜氏。  
自分は40氏とは違いますが見てみたいです。  




75  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/19  23:11  ID:???  

とりあえず続き生きますね。  

周辺警備部隊。  
「そういやエルフィールの酒場にいたリリーちゃん  可愛かったなあ・・休暇になったらまた行こうぜ。」  
即席塹壕の上に腰かけながら警戒にあたっていた隊員が砂袋に62式機関銃をのせ煙草を吸っていた隊員に話しかける。  
隊員が吸い終わった煙草を砂袋に押し付けて火を消しながら答える。  
「そうかあ?それより前の村の警備に当たっていた自警団の猫耳少女の方がよくなかったか?」  
「け!このコスプレ趣味のロリコン野郎には、あのナイスバディのリリーちゃんの良さがわからないらしい・・」  
「ふん。すでに虫つきに興味はないね。男が来たらすぐにそっちに行っちまったじゃねえか・・・・ん?」  
少し手前からやってきた人間の集団の接近に気づいた隊員が  目を閉じていかにその女性が良かったかを熱く語っていた隊員に注意を促す。  
「おい。どういうつもりかは知らんが連中がやってきたぞ。班長に連絡しろ。」  
「お?おお!!分かった!」  塹壕に飛び込んだ隊員が機関銃を構えた兵士の無線機を取り出し班長に連絡を取る。  
近くで警備に当たっていた隊員たちも各々の塹壕に飛び込んで行く。行く場所を無くした隊員が彼らの塹壕に飛び込んできた。  
『班長!!奴さんが出てきました。剣や槍を持ったままです。』  
その後も報告の無線が次々と飛び交う。内容は似たようなものだった。しばらくすると小隊長から無線が入った。  
『各員につぐ。あらゆる状況においても命令がない場合の発砲を堅く禁じる。指示があるまで現状で待機せよ。』  
それを聞きながら無線機を砂袋に立て掛けるとアモカンから弾薬を取り出して砂袋に積み重ねていく。  
もう一人の兵士も部品が欠落しないようにテープを巻いた64小銃の二脚をたてて射撃体勢に入っていた。  
「たのむぜ  おい。いつもみたいに弾詰まりを起こしてくれるなよ?」  
そう言って62式機関銃の安全装置をはずす。人差し指は万が一の際にそなえ外しておく。  
大げさな話だが運が悪いと引き金を引いたその瞬間から弾ずまりを起こしてくれるという迷銃だ。  
ミニミは未だにこの部隊に配備されずやむなくこの銃を持ってきていた。  


76  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/19  23:13  ID:???  

「まあ、九州の町工場でMINIMIも生産されだしたようだしすぐにここにも届くさ。」  
そう言って弾薬を出し終わった隊員が拳銃を取り出して塹壕の上に置きながら言った。  
兵士達が立ち止まらずに歩いてくる。すでに数十mしか距離が空いていなかった。  
小隊長が立ち上がって大声で兵士達に警告する。  
「そこでたちどまれ!!それ以上前進すると攻撃する!」  
兵士達が一斉に立ち止まり指揮官らしき人物が一番前に出てくる。  
「待ってくれ!!俺達は降伏しに来たんだ!!攻撃する意思はない!!」  
小隊長がそれに応じる。  
「よしわかった!!すこしまってくれ!!上官に連絡する!!」  
そういって中隊本部に連絡をとる。すぐに返答がある。  
『降伏をみとめる。まず武器を回収し、魔術師と一般兵を別け、別々に連行せよ。』  
それを聞いた小隊長が降伏してきた兵士達に告げた。ちょうど増援の装甲車も視界に入った。  
「諸君らの降伏をみとめる!!我々の指示に従い行動せよ!!まずは武装解除を行なってもらう!!」  

・・・・・・・・・・・・・・・  
本日はここまでっす。たいした内容はないですけど・・  



107  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/20  23:16  ID:???  

とりあえず続き生きます。  

「お?向こうの陣地に敵部隊が投降しだしたようだぞ。」  
無線機から聞こえてくる音声を聞きながら望遠鏡で其方の方向を確認していた隊員が別の隊員に声をかけた。  
兵士達が次々と地面に伏せさせられ武器を隠し持っていないか身体検査されているのが見える。  
「・・おい、坂本。こっちにも来たみたいだぞ。」  
隣にいた二士が話しかける。呼ばれた隊員が望遠鏡の向きを村の方向に向けた。確かに数百人の兵士達と騎兵たちが歩いてくる。  
途中  一度不思議な止まり方をしたがしばらくすると再びこちらに向かってきていた。  
「おーい分隊長!!こっちにも連中が来ました!!」  
分隊長がすぐ近くの塹壕から手を出して応じる  
分隊長が小隊長や中隊本部と無線で連絡をとった後、塹壕から這い出てきて兵士達に叫んだ。  
「よ〜し。そこででとまれ。すぐに君達を受け入れる準備をする。」  
だが聞こえていないのか彼らは立ち止まらない。分隊長が数メートル前に出て  さらに大きな声を上げて彼らに指示しようとした。  
そのときだった。誰かの号令の元に兵士達の先頭にいた弓兵たちが一斉に弓をかまえ、後ろにいた兵士達が横に大きく広がる。  
「!!分隊長すぐに引き返してください!!敵の攻撃部隊です!!」  
それに気づいた坂本が叫び終わらないうちに敵の矢が放たれる。彼らはすぐに第二射を放つ準備に入った。  
分隊長がそれを見て一瞬たじろいだが一目散に自分が出てきた塹壕に向かって走り出した。  
敵騎兵も投槍を片手に弓兵たちのすぐの隣から飛び出てきて突入を開始する。  
歩兵も対魔法用戦闘隊形  判りやすく言うと横隊で一人一人の感覚を大きく開いた隊形でそれに続く。  
そして長弓射手たちが第二射を放った時高く打ち上げられた第一射の矢が分隊長の肩と足を貫いた。  


108  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/20  23:17  ID:???  

「隊長・・・本当に大丈夫ですかね・・・」  
兵士達のほぼ真ん中で後ろでにくくられた曹長が同じく後ろでにくくられている指揮官のライに尋ねた。  
そのまわりでも数人の兵士達も同じように縛られていた。  
「しるか・・・こいつらが勝手に突入するんだ。俺達はここで止まってりゃいいさ。ぐっ!!」  
ぶっきらぼうにそう言った指揮官の腹を槍の柄で突いて副指揮官のカレンが黙らせる。  
腹を突かれたライが膝から崩れ落ちる。  
「立って下さい。隊長・・いえ  われわれ第124部隊の栄光ある歴史に泥を塗ろうとした  ライ・オング中尉。」  
そう言ってから部下に命じ元指揮官を無理やり立たせる。    
「ふん。カレンか・・俺から指揮権を奪い取ってこれから何も分からない部下を皆殺しにするんだ。さぞや満足だろうな。」  
ライが嫌みったらしく話しかける。それにカレンが叫ぶように返答する。  
「我々は負けません!!いつものように敵の包囲を打ち破ってアレク要塞に凱旋するんです!!」  
「ばかな・・・アレク要塞はすでに壊滅したんだ。一週間前の夜の連続した爆音と光が見えてなかったのか!!  
その証拠に包囲される前に援軍が欲しいとアレク要塞に送ったグリフォンの伝令も帰ってこないじゃないか!!」  
「そんなことはありません!!あれは味方が敵を迎撃した爆発音です!!  
その証拠にたった一日しか爆発音はしなかったじゃないですか!!もう援軍はそこまで来てます!!」  
どこからその自信が出てくるのだろうか  周りの兵士も次々に頷く。  
呆れ顔の彼の所へカレンが歩み寄ってすがる様に話しかけてくる。  



110  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/20  23:19  ID:???  

「どうしたんですか!?いつもの勇敢な隊長は何処に行ったんですか!!敵の流した偽の情報に踊らされてこんな町に逃げ込んだ上に  
ただが壊れかけた時計台を少々高度な遠距離魔法で壊された程度でけがわらしい傭兵どもと一緒に降伏しようなんて・・」  
それを聞いていたライがわざとらしく驚いた振りをして軽口を叩く。  
「へえ。ベットの上じゃあんなに大人しいのに戦場に出れば勇敢なもんだ。」  
次の瞬間顔を真っ赤にしてカレンがライの顔を思いっきりひっぱたいた。綺麗に鳴った音にすぐ傍にいた曹長が顔を引きつらせる。  
「自分が今何をしようとしているのか理解しているのか?勇気と無謀は違うんだぞ!!」  
ライがの横顔に綺麗にもみじが浮き上がってくる。ひりひりする痛みに耐えながら彼は続けた。  
彼女が何か言おうと口を開けたがそのまま口を閉じ、そこで一息をついてから悲しそうにだが決意したように続ける。  
「みていてください。あなたの変わりに私がこの包囲網を突破してみせます。それを見れば貴方も目覚めるはずです。」  
「ふん。好きにするがいいさ。後で墓ぐらいは掘ってやるよ。」  
そういう彼を一瞥するとカレンは強行派の部下達と共に再び進み始めた。  
百数歩進むと敵の下士官らしき人物が立ち止まるように警告してきた。カレンの指揮のもと部隊は止まらずに歩き続ける。  
向こうの下士官が再度立ち止まるよう警告してくる。それを待っていたかの様にカレンが指示を出した。  
「弓兵〜前へ!!各隊対魔法隊形!!」  
カレンが指示を出す。長弓射手が前面に出て弓を構える。それに続いて歩兵達が部隊ごとに横に長く陣取る  
「放て!!」  
長弓が一斉に弦をならし独特の音を立てながら矢が敵のいる付近に落下するように放たれた  
それに従い  よく訓練された狂信的に自分達の勝利を信じている兵たちは次々と突入を開始し出した。  



135  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/22  20:54  ID:???  

続き〜行きます。  

「ウラーーーーーーーーーーーーー!!」「進めーーーーーーーー!!」  
騎兵たちが楯も構えずにブロードソードを引き抜き突入してくる。突入してくる馬の足音が重なり地響きを立てていた。  
隊員たちは飛んできた弓や投槍を運良く回避し反撃を開始した。  
「来るぞ!!撃て!撃てー!!」  
そう叫んだ陸士長が64小銃の安全装置を素早く動かして『ア』から『レ』に変えて引き金を引く。  
彼が狙いをつけた通り銃口から飛び出した7.62mm弾は先頭の騎兵の胴に次々と命中し先頭を走っていた兵士を馬上から叩き落した。  
落馬した兵士は運の悪く後ろからやって来た味方の騎兵に踏み潰され元の造詣が判らなくなるまで踏み砕かれていく。  
陸士長が次なる目標に照準を合わせた時、残りの隊員たちも次々に発砲を開始しだした。  
次々と発射された弾丸が戦場に風切音を響かせその発射音は小太鼓のように辺りに響きわたっていく。  
それは火器と悲鳴が奏でるオーケストラの始まりであった。  
放たれた弾丸が馬に命中し、馬ごと地面に倒れこみ馬の下敷きになって悲鳴を上げる騎兵に其れを踏み潰し前進する騎兵  
その騎兵も隣の兵士に命中したはずの弾丸が鎧に弾かれ跳弾し、それによって悲鳴を上げる間も無く頭部を吹き飛ばされ落馬した。  
すぐ横を同じく胸と頭部を貫かれた兵士が馬の上で前のめりになりながら前進していく。  
隊員たちの射撃が何発か命中するが落ちる様子は無かった。  
しかしついに馬が障害物を飛び越えた時その反動で滑り落ちるように落馬した。  
だが中には運良く弾丸を鎧ではじきそのまま突入してくる騎兵達も存在した。  
彼らは目を血走らせどれだけ息が続くのかと思うほど叫びながら突入を続けた。  
「馬だ!!馬を狙え!!」誰かがそう叫んだ。  
しかし銃声の所為で耳をほとんどやられている隊員達にはほとんど届いておらず、近くにいた兵士達が辛うじて聞き取っただけだった。  
その彼らも打ち尽くしたマガジンを変えなければ鳴らず  すぐに発砲出来なかった。  
そこに五騎の騎兵がなだれ込んできた。後方からの支援射撃によって三騎が打ち倒されるが残された二騎が  
一番手前で弾倉を交換していた隊員達にブロードソードを肩の上から振り下ろすように叩きつけた。  


136  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/22  21:42  ID:???  

片方の隊員が袈裟切りに切り倒されて腕を切り落とされ悲鳴にならない悲鳴をあげる。    
もう一人いた隊員は咄嗟に小銃で受け止めたが続いてやってきた主無き馬に主人の敵とばかり跳ね飛ばされ動かなくなった。  
騎兵達は立ち止まらず同じく弾倉を取り替えていた後方の塹壕に突き進んだ。  
(拳銃を抜いている暇は無い)そう考えた坂本が咄嗟に小銃を持ち替え騎兵の突入に対し構えた。  
すぐ手前にいた隊員がパニックを起こし小銃を放り捨て後方に向かって走り出した。いや・・逃げ出した。  
しかし仕方無いのかも知れない。彼にとって初めての戦闘であったこともあるが、  
歩兵にとって正面から剣を振り上げてすさまじい速度で迫り来る騎兵は恐怖以外の何者でもなかった。  
18世紀の戦闘で騎兵突入に対し方陣を引いた理由のは騎兵の突破を防ぐだけでなく  
さらに兵士と兵士を密着させて逃げ出せなくさせるだけで無く、密着させる事によって士気を保つ為でもあった。  
だが、戦場にすむ死神や騎兵にそんな理屈は通用しない。  
この騎兵らもまた銃弾によって築かれた死の壁を突破してやってきたのだ。  
確かに彼らは銃弾を知らない為、銃に対する恐怖は無いと言ってもいい。  
しかし訳の分からない物で味方が次々とやられ、いつ自分もその中に仲間入りするかわからない所を走ってきたのだ。  
敵に対する同情心など皆無と言ってもいい。それどころか逃げ出した兵士に後ろから切りかかるのを心から楽しんでいた。  
再び騎兵が剣を振り上げ逃げ出してきていた隊員を背後から切り裂いた。  
しかし其方に集中していてくれたお陰で坂本は騎兵に対し圧倒的に有利な体制になった。  
「いける!!」そう短く叫んで騎兵に向かって彼の方から突っ込んでいく。騎兵も其れに気づいて急いで剣を戻そうとする。  
だが坂本の方が早い。野球のフルスイングのように64小銃のストックを騎兵の胴体に叩き付けた。  
騎兵が振り上げようとしたソードを手放し落馬する。その衝撃で坂本の手がしびれ64小銃もはじき飛ばされてしまう。  
坂本は彼が放り出したブロードソードを地面から引き抜き落馬して地面の上で  
もがき苦しんでいた持ち主を奇声を上げながら何度も何度もつきさして動かなくさせた。  



141  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/23  00:57  ID:???  

23日分  
先ほどの続きです。  

すぐに味方がやられたのを見た最後の騎兵が仇とばかり突入してくる。  
坂本はすでに動かなくなった騎兵からソードを引き抜くと突入してくる騎兵に対して上段で構えた。  
だが幸いな事にその坂本の行動は弾丸を補充した同僚達の射撃によって無駄になってしまった。  
坂本が逃げ出した隊員が置いていった小銃を拾うとその場で弾薬を交換し再び飛び出してきた塹壕に戻った。  

『本部!!すぐに敵の第二波が来ます!!戦車を回してください!!』  
『本部了解。だが戦車は回せない。背後に現れた敵ゴーレムと戦っている。  
変わりに歩兵2個分隊と装甲車が向かっている。すぐに到着するはずだ。それまでその場を死守せよ。』  
『了解!!全力で現在地点を死守します!!』  
そう言ってから一曹は部下に向き直って言った。  
「すぐに迎撃にうつれ!!負傷者の回収も忘れるな!!」  
「了解!!」そう言って倒れた隊員達の下に数人の隊員が走っていった。  
しばらくすると大きなエンジン音を響かせながら96式装輪装甲車があらわれ  
車載されていた12.7mm重機関銃や40mm自動てき弾銃が発射し敵隊列を乱していく。  
だが敵兵たちは立ち止まらずに前進し続ける。どうやら優秀な指揮官がついているらしい。隊列もなかなか崩れない。  
時々飛んできた魔法が地面に小さな穴を作っていく。そのうちの一発が運悪く弾を込め終えて塹壕から顔を出した隊員を直撃する。  
悲鳴もあげずにのけぞるように後ろに倒れこんだ。すぐ隣にいた隊員が抱き起こすが生命に異常はないようだ。  
すぐに地面に寝かせると魔法を撃ったと思われる魔術師を血祭りに上げようと64小銃で連射するが  
運悪く手前の兵士に当り魔術師に致命傷を負わせることは出来なかった。  


142  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/23  00:58  ID:???  

「相沢三曹。ここから敵指揮官を狙撃できるか?」  
一曹が隣で64小銃につけたスコープで騎兵を狙撃した隊員に声をかける  
。すぐ傍では他の隊員達が黙々と敵目標を射ち倒していた。  
弾倉を撃ち尽くすと足元に落とし砂袋の上に積んであった弾倉を差し込み再び射撃体勢に入った。  
その傍らには旧日本軍の野戦指揮官のような形をした精霊が小さな望遠鏡で敵陣地を観察していた。  
「下士官らしき人物なら狙撃できます。撃ちますか?!」  
スコープの中の目標を見つめながら隊員が訊ねてくる。隣にいた精霊も呟く。  
「残念ながら指揮官らしき女性はここからでは敵兵が邪魔になって狙撃できませんな。もう少し高い所・・そうあの岩の上からなら」  
そう言って現在地点から数十メートル後ろの5メートルほど地面から飛び出した岩を指差す。  
「よし  相沢あの岩の上から敵指揮官を狙撃しろ。それが終わったら階級の高そうな兵士から順に狙撃するんだ。」  
「了解しました!敵指揮官を狙撃。成功後は階級の順に狙撃いたします!・・軍曹殿行きましょう!!」「うむ。」  
彼がそう言うと軍曹と呼ばれた精霊が相沢の肩によじ登る。それを確認した相沢は小銃を担ぎ上げると荷物を置いたまま  
岩に向かって走り出した。  

その岩のすぐ手前に相沢が辿り着くと銃を背中に担ぎなおして三点保持をきっちりと守りながら  
十数秒で急な壁をのぼりきり二脚を立てて狙撃体制に入った。  
その横で軍曹が双眼鏡を覗き込み敵の位置を確認しながら言った。  
「距離195m。三時から九時の方向に風速三。これなら照準を直す必要は無い。そのまま狙え。」  
「了解。しかし200mの間違いでは?」  
相沢が相手の指揮官・・カレンの胸に照準を合わせながら訊ねた。  
「ロープを狙撃するんじゃないんだ。それぐらいの誤差なら何とかなる。早く撃て。」  
軍曹が相沢の問いに答えて言った。本当のところ軍曹の方が正しかったが、議論していても始まらない為そう流した。  
「了解。」  


143  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/23  00:59  ID:???  

相沢がそう言って深呼吸を始めた。呼吸にあわせ照準が上下していた。三度目の呼吸の時ゆっくりと呼吸を吐き息を止めた。  
照準がぴたりとカレンの胸で固定される。それを確認すると相沢はゆっくりと引き金に力をかける。  
すぐに引き金を引かないのはガク引きを避けるためだ。引き金を引く振動でせっかくつけた照準がずれてしまっては意味が無い。  
(南無。)撃鉄が落ちると同時に彼がそう思った。  
TAN!  
1秒に満たない時間のあとその弾丸はカレンの肩を貫いた。カレンが肩を抑えながら前のめりに倒れた。  
それを確認した軍曹がすぐに次の目標の位置を告げる。すぐにわかる簡単な目標だった。  
「よし。つぎは付近の兵士を残らず打ち倒せ。」  
相沢が返事をせずに照準をカレンに駆け寄ろうとした兵士に合わせる。集まった人数は8人であった。  
TAN!・・・TAN!・・・TAN!・・・TAN!  
4人が頭を破壊されてカレンの上に次々と折り重なった。周りの兵士達も何が起きたのか理解できずその場に立ち尽くしていた。  
相沢が一度軽く呼吸をすると再び照準を合わした。手前に居たマッチョな男のあたまに照準をあわせ撃つ。  
その男が崩れ落ちる前に次の目標に照準を合わせた。今度の兵士は兜を被っていた為首を打ちぬかれてもがき苦しんでいる。  
(これで六。後2つ)  
残りの目標は犬の耳を生やした女性兵と長い耳をもった女の弓兵だった。どちらも  
相沢はいちど犬耳の顔に照準をあわした。放心したように目の前の惨状を眺めていた。  


144  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/23  01:00  ID:???  

呼吸を止めて射撃体勢に入る。だがその幼い表情に負け照準を顔から肩に変え発砲した。  
弾き倒されるように後方に倒れた。だがあの位置なら死にはしないだろう。そう考えて最後に残されたエルフに照準を合わそうとした。  
残されたエルフが弾かれたように走り出した。周りにいた兵士達が残らず打ち倒され次に狙われるのが自分だと気づいたからだ。  
だが多少走ったところで弾丸から逃れられる訳は無かった。  
「最後だ。はずすなよ?」  
軍曹がそう話し掛けてきた。相沢が発砲した直後にそれに答える。  
「見ての通りはずしてませんよ。」  
エルフも肩を打ち抜かれこちらに背を向けたまま苦しんでいた。  
「ふん。まだまだ甘いな・・女だからといって助けるとは・・」  
軍曹が望遠鏡をおろし振り返りながら言った。相沢がとぼけたようにそれに答えた。  
「いやぁ・・指揮官は本気で狙ったんですがね。運悪く動かれちゃいましたよ。」  
そういって次の目標に照準を合わせた。次の兵士は男だった。それだけで彼の運命は決定した。  
後頭部から脳漿を撒き散らし大きくのけぞって倒れた。その一人が最後の下士官だった。  
残りの下士官達は他の隊員達によって撃ち倒されていた。  
それでも一部の兵が反撃に出ようとしたが相沢と軍曹によってすぐに沈黙させられた。  
これを最後に第124部隊は降伏した。自衛隊側死者6名、負傷者25名  オーラン軍の死傷者は320人に登った。  



154  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/23  22:54  ID:???  

続き生きます  

薄暗くなった平野をいくつものライトが照らし出していた。  
「よーし!!一列にならんで俺について来い!!わかったな?!」  
増援に来た分隊の隊長が捕らえた捕虜から武器を取り上げ連行していく。  
そのすぐ横では倒れている兵士達の生存を確かめる為に隊員達が丁寧に脈を診たり足で強くゆすってみたりしていた。  
兵士が暴れた時の為に全員が銃剣をつけての作業だった。  
運良く生きているのが発見されると助かりそうなら軍医の下へ、助かりそうに無い場合は楽にしてやっていた。  
ヒーラー(法術使い)さえ入ればそこに連れて行くのだがこの近くには居なかった。  
「み・・水を・・・み・・」  
腹部から内蔵を露出させた明らかに助かりそうに無い兵士が末期の水を隊員に願った。  
その傍らに膝をつき坂本が自分の水筒を取り出して言った。  
「死力を尽くして戦ったものは俺の水筒の水を飲む権利がある。」  
そう言って蓋をはずし兵士の口に水を流し込んでやった。  
口の中にまだ水を残したまま兵士が息絶えた。傷口を抑えていた手が滑り落ちる。  
腹部を負傷した際に水を飲むと急な刺激でショック死する可能性が高い。  
本来なら腹部に傷を負った場合水を飲ませてはいけないのは彼も知っていたが、  
もはや助からない兵士の願いを聞いて最後に水を飲ませてやる事にしたのだった。  
彼は息絶えた兵士の手を胸の前で重ね瞼を閉じると次の生存者確認に向かった。  
すぐ横で一番最初の戦死者である分隊長の遺体が丁寧に黒い袋に収められタンカで運ばれていった。  
「おーい!!衛生班ー!!三人生きてるぞーー!!」  
そう陸士長が死体を除けながら衛生班を呼んだ。よく見ると手足を縛られたままオーラン軍の兵士達もその傍で見守っていた。  
付近に倒れている兵士達が生きていないのを確認すると坂本も手伝う為に其方に向かった。  


155  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/23  22:55  ID:???  


「木元陸士長、手伝いましょう。」  
「ん?なんだ坂本一士か。頼む。まずはこの遺体をどけてくれ」  
陸士長が死体の下から気を失った金髪の女性を引きずり出しながら坂本に指示した。  
「了解。それと  この兵士達は?」  
坂本がその上に載っていた死体を除けながら訊ねた。その問いに後ろでに縛られたままのライが答えた。  
「俺はオーラン軍124部隊の元指揮官のライ中尉だ。後ろにいるは俺の部下達だ。」  
「・・だそうだ。縛られてるしすぐに迎えがくるからそこで待っててもらっている。」  
そこにタンカを抱えた隊員達が走ってきて怪我人の応急処置を始めた。  
女性を引きずり出した陸士長が少し離れた位置に倒れていたエルフを担ぐようにつれて来てタンカに載せた。  
それを見た衛生兵が首を横に振った。狙撃者の意思に反し予想外に傷が深かったようだ。  
「助からないのか?」坂本がカレンの治療を手伝いながら訊ねた。オーランの兵士達も心配そうに見守っていた。  
「弾は貫通していますが出血が多すぎます。輸血しないと助かりません。  
しかし人間用の輸血パックすら数が足りてないんです。それにエルフに人間の血が輸血できるのかもわかりません。  
その上今から連れて行っても恐らく人間用の輸血パックすら残っていないと思います。残念ながら・・・・」  
衛生班の隊員が悲しそうにエルフの顔を見つめながら言った。それを聞いていた魔術師の一人が衛生兵に話し掛けた。  
「自分の縄を外して下さい。自分は修行中ですが簡単な回復魔法を使えます。」  
それを聞いた陸士長が彼に小銃を向けながら言った。  
「坂本一士、縄をはずしてやれ。・・わかっていると思うが怪しい真似をしたら即座に撃つぞ。」  
「わかってます。治療が終わったら縛ってくれてかまいません。」  
縄の呪縛から解き放たれた彼はタンカを中心に大きな魔方陣を描いてたどたどしく呪文を唱え始める。  


156  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/02/23  23:19  ID:???  

しばらくすると今にも死にそうなエルフの傷に光が集まりしばらくすると傷が完全にふさがり出血が止まった。  
そこで魔術師が呪文を止める。その顔に玉のような汗を浮かべ息を切れさせていた。それでも何とか喋ろうとする。  
「自分に、できる、のは、これだけ、です、あとは、おまかせ、しま、す」  
そういって腰から座り込んでしまった。完全な法術なら術者がここまで疲弊する事は無いが不完全な呪文であったため  
治療効率が悪く肩の傷を防いだだけで魔力が尽きてしまったのだった。  
しばらくそれを呆けた用に見つめていた衛生班の隊員だったが出血が止まったのを確認すると隣にいた隊員に声をかけて  
急いで点滴を打つ為に救護テントに運んで行った。残りの隊員達も応急処置を済ましその後を追っていく。  
入れ替わりに来た小隊長がライに敬礼をして一言二言話すとライ以外の兵士を隊員達に連行させた。  
「ところで町に残っている兵力はどのくらいですか?わかる範囲でよろしいので教えていただけませんか?」  
「あんた達には敵でありながら部下を助けてもらった。・・わかった。教えよう。  
 町に残っているのは山賊まがいの傭兵共が50人ぐらいのはずだ。連中は町の連中を人質にして立てこもるつもりだ。」  
この世界の戦争で負傷した敵兵の治療をする事など皆無だった。それどころか見せしめの為に皆殺しにするのが普通だった。  
「そうですか。わかりました。中隊長が貴方をお待ちです。ついて来てください。」  
「わかった。何処にでも連れて行ってくれ。」  
小隊長はしばらくして迎えに来たジープに彼をのせ中隊本部に向かって走っていった。  
それを見送った後その場に残っていた陸士長が坂本に言った。  
「次は市街戦か・・辛い戦いになりそうだな。」「はい・・・」  
陸士長にそう答えながら坂本は次なる戦場になるであろう町を見つめた  


208  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/03  17:45  ID:???  

前に出し損ねた続き〜  
しょぼいけど気にしないでください。  

同日23:45  

「さて。諸君らに集まってもらったのは他でもない。」  
そう言って中隊長の前田一尉が集まった隊員達を見回した。その中には相沢三曹と坂本一士の姿もあった。  
「諸君らもわかっているだろうが、未だに抵抗を続けるつもりの馬鹿どもが50人前後いる。諸君らにはこれを排除してもらう。」  
そう言って机の上に広げた地図の中央をコンコンと指揮棒の先で叩いた。その地図を覗き込みながら隊員達が手をあげて質問する。  
「質問があります。よろしいでしょうか?」  
「なんだ?」  
「その程度の人数が相手なら攻撃ならわざわざ夜襲する必要があるのでしょうか?  
 昼のほうがエルフィール軍とも協力しやすいですし敵の補足識別も楽になると思うのですが?」  
「その点については後に説明する。そっちの君の質問は?」  
もう一人手をあげていた相沢三曹が頭の上に精霊を載せたまま発言する。  
「は。前に小隊長に聞いた話ではアレク要塞では、民間人が在存兵を襲撃し略奪を行なったとのことですが  
こちらでは民間人が蜂起していないのは何故でしょうか?」  
「うむ。それは彼らの戦闘能力は未だに維持され続けているからに他ならない。  
 敵戦力は傭兵が40人前後・・まあそれはどうでもいい。問題は優秀な魔術士が10名いることだ。  
 彼らはストーンゴーレムを5体  ウッドゴーレムを30体所有している。  
 ウッドゴーレムの方は小銃でも撃破できる上に頭も悪いが問題はストーンゴーレムだ。  
 撃破するには12ミリ以上の重機関銃で頭部を集中的に射撃して破壊するか84を叩き込むしかない。  
 しかも倒しても魔術師が傍にいればすぐに修復してしまうのでキリが無いのだ。」  
エルフィールから来た魔術顧問の魔術士が続ける。  
「その通りです。ゴーレムだけでなく魔術師も無力化させなければなりません。  
 しかしながら彼らは二人一組で片方が防御魔法をもう片方がゴーレムを操るという体勢を取ります。」  
その後を再び前田一尉が続ける。  




209  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/03  17:48  ID:???  

その後を再び前田一尉が続ける。  
「確かに砲撃や爆撃を行なえば防御魔法ごと撃破出来ない事もないが付近の民間人に大きな被害が出るだろう。  
 それに正直に言うと民間人のことより我々の弾薬の方が心配だ。  
 電撃的に進撃したため補給が滞っている。解決するまで少々時間がかかるらしい。  
 今ある弾薬を出来る限り残しておきたいのが本音なのだ。」  

中隊長が苦虫を噛み潰した風に言った。此処だけでなく各戦線において弾薬が不足気味であった。  
原因の一つが補給線に対する山賊やゲリラ、モンスターの仕業であった。モンスターは止むをえずと考えても  
山賊、ゲリラは許し難い。そう判断した防衛省(防衛庁から昇格した)はその殲滅の為に西部方面普通科連隊を派遣していた。  
彼らは順にゲリラの拠点や山賊たちの村などを襲撃して効率よく敵対勢力を殲滅してはいたが  
何分その数が余りに多すぎるためと土地に不慣れな為  効果を上げるに至っていなかった。  

「ゴーレムが動き出す前に魔術師達を殲滅すればゴーレムはただの石と木の人形に出来る。  
 そうすればわざわざ砲弾や爆弾を使う必要は無くなる。  
 しかも此処に居る魔術師は太陽が出ていないと碌な魔法が使えない人種らしい。  
 ならば夜襲をしないわけには行くまい?」  
少々悪質な笑みを浮かべながら続けた。小さな子供が見たら確実に泣くような・・  
一番最初に質問した兵士がなんとなく納得したという風に頷いた。  
「それでは作戦の説明に入る。・・」  


と提出してみました。これから交信の回数増やしていけると思いますのでよろしく  




214  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/04  20:21  ID:???  

続き〜  

寂れた町の中を巡回しながら一人の兵士が欠伸をしていた。  
「ふああ・・・ねむい・・・」  
眠い。これと言うのも連日無理やり町の女と仲間たちが順番を彼に押し付けて夜毎に楽しんで居たからだった。  
彼女らは正規軍が降伏したり全滅したりして不足した兵力を補う為に傭兵団が勝手に徴兵した  
市民軍いや町民軍が逃げ出さないように人質として捕らえられていた。  
それだけなら彼女達が酷い目に会う事も無いのだがその警備に当たっていた傭兵が最悪であった。  
暇を持て余した山賊上がりや盗賊上がりなどの素晴らしい人生の履歴を持っている兵士達に目をつけられ毎日のように襲われている。  
さきほど彼が人質を収容した屋敷の前を通った時もそう言った夜の遊びの音が聞こえていた。  
「毎晩毎晩元気なこった・・・・大体どういう状況なのかわかっていらっしゃるのかねえ・・・」  
そう言って目を擦る。いつ襲ってくるかも判らない町民軍を除いてしまうと  
すでに50数名しかいないのに碌な緊張感すら持っていない仲間達にかすかに怒りを覚えていた。  
「ゴーレムが動かない夜こそやばいって言うのに・・脱走しようかなあ・・」  
彼がそう呟きながら彼が道を右に曲がろうとした瞬間だった。  



221  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/06  18:22  ID:???  

書き直し版です。>>614の続き〜  

真っ暗な町の中を赤い1つ目の列が駆け抜けて行く。先頭にいた二人が後ろにいた一つ目達に手のひらを進行方向に向かって振った。  
それを合図に今度は別の二人組みが数十メートル先の交差点の手前の壁にへばり付く。  
交差点の向こうから段々明かりが近づいて来るのを感じたからだ。  
手前にいた1つ目の目から光が消える。隊員が電源を切ったからだった。  
彼はそれをヘルメットに固定すると壁に手をついてゆっくりと角の向こうを確認する。そのすぐ下から別の隊員が顔を覗かせる。  
その姿だけを見ると、まるで女子学生達が憧れの先輩を物陰から熱く見つめるように見えるかもしれない。  
が、現実は時として悲しいものである。  
角の向こうを確認しているのはフル装備で小銃を構えた上に顔面にカネボウ製の迷彩を塗りたくったマッチョな兄ちゃん達だった。  
こんな物に見つめられていると知ったら慌てて逃げ出すだろうが先輩・・じゃなかった兵士は気づかずに真っ直ぐ歩いてきた。  
(まて。)彼が後ろの1つ目に対して手のひらを向ける。ついてこようとしていた後ろの一つ目達が一斉にその場に立ち止まる。  
(敵確認  1人。始末します)親指を下に向けたあと人差し指を立てる。その後首の前で親指を横に引いた。  
後ろにいた隊員が頷くとさらに後ろに伝言ゲームのように伝えていく。  
途中誰も間違わずに通じたのか真ん中にいた分隊長が親指を立てた後ひっくり返して地面に向ける。攻撃の許可が下りた。  
(了解)そう親指を上げると小銃をすぐ後ろの隊員に手渡し腰に吊っていた64式銃剣を引き抜いた。  
この銃剣は元の世界でもっとも長く41センチもあり元になったM6バヨネットよりもかなり長かった。  
この長さを決めるに当っては当時銃剣無用論者と銃剣信奉者の間で一悶着あり、一時決闘で決めようとまで話は進んだが  
30年式銃剣とM1カービン用の間を取ろうということで和解を見たようであった。  
そのダガーどころの長さではない銃剣を胸の前で握り直す。そして深呼吸する。  
足元の明かりが段々と光度を増していく。暗視スコープを掛けたままなら眩しくて何も見えなかったかもしれない。  



223  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/06  18:35  ID:???  

「脱走しようかなあ・・・・」  
そういいながら若い兵士が角を曲がってきた。すぐに隊員が物影から飛び出す。  
松明を持っていない側に回りこみながら相手のあごを右手で固定する。  
兵士が咄嗟に訳も分からず振り払おうとするがそのまま背後から左手に持ったナイフを首筋に当てそのまま引いた。  
首筋から噴水のように血が噴出し兵士の人生の終わりを告げた。隊員がそのままゆっくりと兵士の体で落ちた松明の火を消し物影に引きずっていった。  
その吹き出した血が壁とすぐ傍で小銃を受け取った隊員に降りかかっていた。  
血で真っ赤に染め上げられた運の悪い隊員が文句をぶちまける。だが恐怖というより驚きの方が強すぎて声にはならなかった。  
しばらく彼は声にならない声で死体を隠しに行った隊員に怒鳴りつけていたが  
しばらくするとふと任務を思い出し後方で状況をうかがっていた1つ目に合図を送り前進させた。  
死体を物陰に隠してきた隊員が手を合わして謝りながら帰ってくる。  
そんな彼に対し血まみれにされた隊員は小銃を投げ渡すと彼を軽く睨みながら首の前で親指を横に引いて前進した味方に続いた.  

///////////////////////////  
以上です。。  
イメージは古き良き時代の女学生が誰かを待ち伏せるという感じです。  

ふと曲がり角から好きな先輩の姿を確認した女学生がどうしようと友達に尋ねたところ  
頑張れと励まされて思いっきって前から用意しておいたプレゼントを取り出して不意打ちで差し出す。・・・て感じです。  

まあその後拉致してしまいましたがw  



274  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/07  16:17  ID:???  

自分の奴の交信行きます〜  

バクパイプの音楽が聞こえる市街地の一角を2人の隊員が全力で駆け抜けていった。  
これだけうるさければさすがに寝れずにうろついている町の人も居るらしくたまに人通りもある  
運悪く彼らを見つけた青年が何か叫ぶ前に背後から現れた別の隊員に首を決められて路地の隅で熟睡させられていた。  
「班長。全員配置につきました。指示を願います。」  
町役場を取り囲んだ分隊を指揮する三尉に坂本が少し呼吸を乱しながら背後から話し掛けた。  
先ほどから町役場の背後に回った隊員達の無線の調子がおかしかった為に彼が伝令に行ってきたばかりであった。  
「よし。1〜3は裏口から進入せよ。4〜6は俺に続け。残りの連中は飛び出てきた間抜け野郎どもとを戯れておけ。  
 突入時間は一分後だ。間違っても味方は撃つんじゃねえぞ?」  
「「了解。」」  
そう言って裏口から突入するメンバー達が移動を開始しだした。闇の中できらめく暗視スコープの光がまるで人魂のように見受けられた。  
「・・他の連中は無事なんですかねえ・・」  
小銃の安全装置を弄りながら訊ねてきた隊員に三尉が笑いながら答えた。  
「な〜に、便りが無いのは無事の証って奴だ。銃声も響いて無いし大成功ってことだな。おっと。そんなことより時間だ。4〜6は俺に続け。」  
そう言って九ミリ機関拳銃のア、タ、レと書かれた安全装置を解除して立ち上がった。無駄玉を撃ち過ぎない様にレでは無くタに合わせていた。  
それに坂本と先ほどまともに血の雨を被った陸士長が続いた。彼らは銃剣を穂先につけもし相手が突入してきた場合に備えていた。  
ちなみに陸士長を血まみれにさせた3曹も裏口から回り込んでいるはずだ。彼の方も両手が血で真っ赤に染まっており迫力満点であった。  
それはさておき  
堂々と闇の中から現れた三人を発見した見張りの兵士は当初警戒したが味方と見間違え普通に声を掛けた。  
「よう。ジーブス班の連中かい?あんたらの隊長が奥で楽しんでるぜ。」  
そう言って一度は向けた槍を引き上げた。敵ならこんな所まで普通に歩いてこられる訳が無いと考えたからだ。  
それに分隊長の3尉が役者に慣れそうなぐらいに堂々と普通に返答した。  



275  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/07  16:17  ID:???  

「いや、楽しみに来たのは間違いないが俺達はジーブス班とやらじゃないぞ」  
「じゃあ・・マリアの班か?それとも魔術士さん達かい?」  
そう言って見張りの若い兵士は考え込むようにあごに手を当てた。  
「それも違うね。俺達は陸上自衛隊特別編成班の者だ。」  
分隊長が機関拳銃を両手で保持して発砲する。それに続く坂本達も安全装置をはずして身構えていた。  
TAN!  
何も言わずに見張りが崩れ落ちて近くにおいてあったバケツに頭から突っ込んで大きな音を立てた。      
だが中の連中は外の出来事には気づかなかったようだ。音楽が鳴り止む様子も無い。  
たった今一人殺害したばかりだというのに表情すら変えない分隊長を先頭に西部劇に出てきそうな両開きの小さな扉を押しのけて町役場に入場した。  

カランコラン〜♪  
喫茶店の入り口についているような呑気な鐘の音が鳴るが振り向いた兵士はほとんど居なかった。  
本来なら公務の為に使われているだろうぼろ机の上には酒やつまみが所狭しと散乱しており書類は丸められてあたりに転がされていた。  
まるでゴミ箱の中のようだが兵士達は全く気にしていない。  
すでに出来上がっている彼らは隣に座らされた猫耳の女の子を抱き寄せて無理やり酌をさせていた。  
分隊長がパンパンと機関拳銃を脇にはさんで拍手した。  
さすがにその音に気づいたのかバグパイプの音が止み兵士達も何事かと振り返る。  
「やあ諸君!!私は陸上自衛隊特別編成班の松本だ!楽しんでいる所で悪いが日本国陸上自衛隊の名において諸君らを武装解除する!!」  
そう言うと脇にはさんで置いた機関拳銃を構えなおした。脇にたたずんでいる二人も胸をはって直立不動の体勢で彼らをにらみつけた。  
「大人しく武装解除してもらえるとこちらも楽でとても嬉しいんだが抵抗したければしてもいいぞ?それはそれで楽だからな。」  
だが彼の二度目の発言は最後まで聞いては貰えなかった。  
血まみれの陸士長を見た兵士達が近くに居た女性を突き飛ばし我先にと裏口に走り窓際に居た兵士達は武器も持たずに窓から飛び出した  



276  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/07  16:19  ID:???  

TATATAN!  TANTANTAN!TATATATA・・・・  BOM!  
「おや?窓から飛び出した兵士諸君は部下達が歓迎しているようだね」  
「そうみたいですね。・・あ、この酒美味しいですよ」そういいながら坂本が近くに転がっていた酒のビンを振って中身を確かめてから口をつけて言った  
「ん?そうか。・・お、確かに。」血まみれの陸士長が受け取った酒に口をつけて感想を述べた。  
そのすぐ目の前ではどうしたらいいのかわからず女性達がしゃがみこんでキャアキャアと悲鳴をあげ続けていた。  

裏口に全力で走って行った兵士達も両腕が血まみれの男とほか二名のお迎えに驚いて慌てて立ち止まろうとするが  
後ろから押してくる仲間に押し出されて足の速かった兵士が両腕血まみれの男の前に突き出される。  
銃剣を突きつけられた金髪の兄ちゃんが恐る恐る目線を胸の前の銃剣から隊員の顔に向ける。隊員が嫌味なほど嬉しそうな笑顔で話し掛ける。  
「やあ。何処に行くのかな?此処を通る気なら残念な事に死んでもらわないと行けないんだ。」  
そう言って数歩後ろに引き下がると彼らの足元とめがけて4発撃ちこんだあと照準を彼らに合わせた。  
「うわ!!逃げろ!!逃げろ!!」「何処へだ!!」「いいから戻れってんだよ!!」  
ドタドタドタ  
そう言って再びホールめがけて走っていく。先ほど押し出された金髪の兵士が先ほど彼を押していた兵士達を逆に押し返してホールに急いでいた。  

「やあ。また会ったね。戻ってくるところを来る所を見ると抵抗する気かね?」  
その分隊長が銃を向けながら言い放った言葉に兵士達が再び裏口に向かって走る。  

「ほらほら、こっち来ると撃っちゃうよ。」  
そう言って笑顔で再び金髪の足元めがけて威嚇射撃する。あわてて兵士達がホールに向かう。  


277  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/07  16:21  ID:???  

「だから諸君!!そろそろはっきりしてくれないか?私は気が短いんだ!!」  
すでに椅子の上でつまみの骨付き肉をかじりろうとしていた分隊長が怒鳴りつける。再び兵士達が裏口に向かって走り出した。  
先ほどまで悲鳴をあげ続けていた女性達はもうさすがに静かになっていたが  
こんどは何が起きているのか理解できずに呆けた顔でその場に座り込んだままだった。  
足音がドタドタドタと再び大きくなってきた。また追い返されてきたらしい。  
「ちくしょう!!」  
ついに自棄を起こしたのか一人の兵士が素手で飛び掛ってくるが坂本にストックで側頭部を殴りつけられ地面に転がされた。  
それを見た数人の兵士が窓から飛び出した。しかし直に外に居た隊員達が彼らを歓迎する。  
TATATAN!  TANTANTAN!TATATATA・・・・    
再び銃声が鳴り響く。またしても彼らは裏口に向かって走ろうとしたが三人の隊員達がすぐ後ろに居た為戻るに戻れなかった。  
数回漫才のように前を向いて後ろを向いてを繰り返していたがやっと諦めたのか両手を挙げて立ち止まった。  
「やっと降伏する気になった?」裏口からやって来た隊員が嬉しそうな声で話し掛けた。  

/////////////////////  
以上です。  




279  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/08  00:51  ID:???  

前の続き交信します。  

同時刻町の反対側にて  
ワオーーーーーーーーーン  ヮォーーー…  
犬の遠吠えが何処からともなく繰り返し響いてくる。その数秒後、町の中心部の方から断続的な銃声が響いてきていた。  
恐らく第一分隊が戦闘状態に入ったのだろう。  
(よし!!やれ!!)  
それを合図にした訳ではなかったが各班長が別々の場所で一斉に合図を出した。  
片方の隊員がストックで窓をぶち破り空間をつくりもう片方の隊員がピンを引っこ抜いてその隙間から催涙弾を放り込んだ。  
室内に飛び込んだ手榴弾が不規則に跳ね回った後一斉に催涙ガスを噴出し始める。  
ガスが十分に噴出したのを確認すると別の分隊が正面玄関を見張りにたっていた兵士達ごととカールグスタフでぶち破り突入を開始した。  
「急げ!!魔術士を無力化するんだ!!慎重にな!!」たった今ぶち破った玄関でシグを構えた分隊長が突入していく隊員達に叫んだ。  
防護マスク4型を装備した隊員達が次々と突入し、手前のドアを蹴破った。  
二人の隊員が室内になだれ込んで寝巻き姿のまま涙と鼻水を流しまくっている男を引きずり出してくる。  
別の部屋からも半裸のエルフの男女が引きずってこられて正面ホールに転がされた。  
そのすぐ横を3班の隊員達が二階にむかって階段を踏み抜きそうな勢いで駆け上っていった。  
ちょうどそのとき一人の隊員が仲間に支えられて奥から下がってきた。  
「どうした!!何があった!!」分隊長を含む数人の隊員達が彼のもとに駆け寄って介抱しながら尋ねた。  
「大丈夫です!!たいしたことありません!この大馬鹿野郎がフィルターをきっちり閉めてなかっただけです!!」  
彼を引きずってきた班長が大声で彼らに伝えて表に彼を引きずっていった。  
しばらくそのあほらしさに介抱に来た隊員がその場で凍り付いていたが分隊長に怒鳴られて各々の任務に戻っていった。  
分隊長が帰ってきた  
そのとき銃声が二階から連続して聞こえ重たい物が何度も落ちるような音が聞こえてきた。  
『寺村班より分隊長!!ゴーレムが!!銃弾が効きません!!増援をお願いします!!』  
続けて派手な爆発音が聞こえる。恐らく手榴弾でも投げつけたのだろう連続した大きな爆発音が響いた。  



281  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/08  00:53  ID:???  

「畜生!!撃て!!撃ちまくれ!!」ガスマスクを付けた隊員が二つ目の手榴弾をゴーレムの足元めがけて投げつけた。  
BON!!  
だが全く効く様子は無い。銃弾と同じく表面に傷をつけただけに終わってしまう。  
「くそ!!くそ!!畜生!!!!」  
そう言いながら部隊の後ろに下がって最後の手榴弾を取り出そうとした。  
だが最後尾に下がった時彼は先ほどまで無かった壁にぶつかってしまい手榴弾を落としそうになる。  
彼が慌てて振り向くと頭を天井に擦り付けた状態で立ちふさがっていたストーンゴーレムと目があってしまった。  
ストーンゴーレムが感情の無い目で足元にいた彼らを見つめると彼に対しその石で出来た腕で張り手をするようになぎ払った。  

ガッシャーン!!  
玄関のところで部隊に指示を出していた分隊長の目の前に窓をぶち破って一人の隊員が落下してくる。  
「どうした!!大丈夫か!!」  
彼が落下する際に落とした手榴弾が彼のすぐ傍で爆発し、彼の救助にむかった衛生科の隊員を巻き込んで爆発する。  
「対ゴーレム班はどうした!!部隊が全滅するぞ!!」  
彼はそう叫ぶが屋敷の周りに突如現れたゴーレムの大軍に対抗するには彼らだけでは数が足りなかった。  
其処に上の階に上がった第3班を全滅させたストーンゴーレムが壁をぶち破って飛び降りてきた。  
BOGONN!!  
砲弾が近くに着弾したような土煙と振動を当りに撒き散らしストーンゴーレムが着陸する。  
さすがに銃弾をその表面で弾くだけあって頑丈らしく無表情のまま地面に数十センチ食い込んだ足を引き抜こうとしていた。  
BOGONN!!今度はホールに二階から飛び降りてくる。それに続けてウッドゴーレムが数体階段を降りてきていた。  


282  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/08  00:54  ID:???  

「Dポイントまで後退しろ!!体勢を立て直すんだ!!」  
分隊長がそう叫んだ。すぐ傍にグスタフを抱えた隊員がいたがこんなに近いと自分達までやられてしまう。そう考えて彼は後退命令を出した。  
すぐ傍にいた通信機を担いだ隊員が全部隊に交代命令を出した。  
『各部隊に告ぐ!!Dポイントまで後退せよ!!繰り返す!!Dポイントまで後退せよ。』  
そう言って彼は後退してきた隊員達とともに後方に向かって走り出した。  
ストーンゴーレムに7.62mm弾を叩き込みながら一人の隊員が同じくゴーレムに銃弾を叩き込んでいた分隊長のすぐ傍に走り寄ってくる  
「分隊長!!負傷者は全員回収しました!!捕虜はどうしますか?!」  
ガスマスクを脱ぎ捨ててマガジンを変えながら耳元で怒鳴るように話し掛けてくる。  
「連れ出せるのなら連れ出せ!!無理ならその場で射殺しろ!!」  
「了解しました分隊長殿!!よし!!続けえ!!」「おう!!」  
そう言って自分の班を引き連れて玄関の中に突入していく。  
「撃て!!敵を彼らに近づけさせるな!!」  
そう言って自ら64小銃を細かく刻むように引いて撃ちまくる。  
さすがにダメージが蓄積されてきたのかもともと遅いストーンゴーレムの動きがさらに緩慢になって来ている。  
「支援の第三分隊は何処だ!!」  
その彼の問いに第二班の無線を担いだ隊員が無線機と何事か叫びあった後大声で答えた。  
「後方三百メートル!!すぐに到着します!!」  


283  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/08  00:55  ID:???  

そう言って後ろの大通りを指差した。彼らよりさらに三十M後ろで彼の分隊員が体制を立て直し反撃の準備に移っていた。  
爆発や銃声がなるたびにあたりが明るく照らし出されかすかにその姿を確認する事が出来た。  
「分隊長!!増援の戦車小隊は敵の対戦車濠に阻まれて前進不可!!装甲車も同じく!!  
 小隊長の第四分隊は中央公園付近でマジックトラップにはまって全身不可!!  
 中本小隊は教会の付近から全力でこちらに向かってきていますがあと10分は掛かりそうです!!」  
「何かいい情報はないのか!!」  
分隊長が無線主に怒鳴りつけるように尋ねる。こんな余りに自分達に不利な情報ばかりだったからだ。  
「江川達が捕虜を連れて帰ってきました!!」そう言って玄関を指差した。  
付近にいた全員の視線が彼が指差した方向にむかった。  
一番手前の隊員が女エルフを肩に引っ掛けて次の二人はデブの両肩を抱えて最後の一人がエルフの男を引きずっていた。  
その殿を江川3曹が引き受けて撃ちまくりながらなんとか帰還しようとしていた。  
「走れーーーーーーー!!江川3曹!!」「山口ー!!女の一人や二人でへばってるんじゃねえ!!さっさと帰って来い!!」  
最前線にいる隊員達が一斉に彼らに声援を送った。中には彼らを待ちきれずに救出する為に其方に向かって走り出す隊員達もいた。  




291  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/08  20:38  ID:???  

番外編  ある日の閣議にて  

「・・とのことで帰還の方法について未だ不明な点も多くなお調査の必要があります。  
 ただ先ほども申しましたが唯一判明している点は召還および帰還に関してはある種の触媒のような物が必要だという事です。」  
「そうか。ご苦労だった、引き続き調査に励んでいただきたい。」  
そう労いの言葉をかけた首相に対し内閣情報調査室長の大阪が深く一礼をしてから椅子を引いて着席した。  
内閣情報調査室とは日本政府の保有する諜報機関の一種で国内外のあらゆる情報を得るために誕生した組織である。  
今現在彼らの最優先目的はエルフィールが黙秘を続けている『元の世界に返る方法』を手に入れることであった。  
たとえオーランを排除したとしても彼らが元の世界に帰れる方法を本当に教えるかどうかは信用できない。  
『元の世界に返る方法を教えない』と言ってそのあとも都合よく利用される可能性すらある。  
もちろん開き直ってこの世界で生きていくつもりならそんな言葉で利用されたりはしないだろうが  
九州出身の者を除けば皆が家族や友人の待つ元の世界に帰りたがっていた。  
臨時政府とて馬鹿ではない。もしかすると働かない官僚や政治家が減った分、元の世界に居た時の政府より優秀かもしれない。  
そういった事体に対処するために独自に元の世界に返る方法を模索していた。  
「続きましては夜間外出禁止問題についてですが・・」  
そう言って今度は二階堂という名の眼鏡を掛けたインテリ系の閣僚が立ち上がった。  
「現在政府に対し282団体から夜間外出禁止令への抗議の声があがって来ております。  
 NHKの電話調査によりますと国民の6割が夜間外出禁止令の解除に賛成です。残りの四割の内三割がわからない。一割が元の世界に返れるまでこのまま続けるべきとのことです。  
 現在  夜間外出禁止令の即時解除を求める声が10代20代30代を中心に段々と大きくなってきております。」  


292  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/08  20:38  ID:???  

話を続けながら詳細が書かれたコピーの厚い束を時計回りに渡し、受け取った順に大臣がパラパラと書類をめくっていく。  
「最近魔術テロ組織、犯罪組織は自衛隊及び警察の努力のお陰で大打撃を受けたらしく大きな事件は起きなくなって来ております。    
 さらに鹿児島、宮崎などを代表にこちらの世界に来てからの方が治安がいい場所も急速に増えつつあります。  
 これらの事が夜間外出禁止令の解除を求める声を後押ししているものと思われます。  
 なお私個人の意見と致しましてはこのまま夜間外出禁止令を続けるのは難しく段階的に緩和し最終的に解除に向かうのがよろしいかと思います。」  
閣僚がその場に立ったまま意見を求める。  
「うーむ・・難しい問題ですなあ・・」  
誰かがそう呟く。それに誰かが返答を返した。  
「確かに・・・国民の意見を無視するわけにもいかない。かといって即刻解除した場合なにか問題が起きたら我々の責任にされてしまう・・・」  
しばらく周りの意見を聞いていたが話がまとまってきた所で宮井首相が結論をだした。  
「では二階堂君の意見を採用しよう。その方向で話を進めてくれないか?」  
「は、では後ほど計画書を作成し提出に参ります。」  
「よろしく頼む。では次の議題はなんだったかね?」宮井首相が目の前に置かれた玉露をすすりながら訊ねた。  
「では自分のほうからいくつか報告があります。」  
そう言って柘植防衛省長官が立ち上がった。  
「まず一つ目の報告です。思い出していただきたいのはこの世界の状況を確認する為に3つの調査隊を九州を中心に派遣したということです。  
 第二調査隊から送られてきた情報を元に他の省庁の協力し  
 新たな調査隊500名を派遣してここから西南西の方向約800キロの地点の諸島とそこから200キロ離れた地点で大陸を調査しました。  
 現在も彼らはその場で調査し続けておりますが定期の補給に向かったおおすみが持ち帰った報告によりますと  
 諸島の方は無数の島で構成されておりその大きさは詳しい数値は出ていませんが一番大きいものは本州と同サイズと見られ小さいものは沖の鳥島サイズでした。  
 その大きさから本州島と名付けられた島で金と鉄が確認されさらに別の島では硫黄が大量に発見されています。」  


293  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/08  21:10  ID:???  

柘植防衛省長官が一息ついたとき東郷経済産業大臣が無表情のまま口を開いた。  
「そんな未開の地を一から開発する予算と労働力が何処にあるのかと小一時間・・」  
「まあまあ・・それは全部聞いてからにしましょう。続けてくれるかね」  
宮井首相が席を立って詰め寄ろうとした東郷を制しながら言った。  
「はい。ともかく現在我が国では将来に渡り慢性的な資源不足が懸念されておりますがこの島国を開発することができれば相当な資源を確保できるものと考えます。  
 次に・・現在我が国はオーランとの戦争中ですが前線の各部隊で武器弾薬が激しく消費される為に将来に渡って武器弾薬の不足が考えられます。  
 そのためにできるだけ早い時期から現在保有する各種武器弾薬及び兵器の交換部品などの生産に出来るだけ多くの予算を回して    
 早い段階で揃えておくべきであると報告させていただきます。」  
「ちょっと待った。確かに武器弾薬の補充は必要かもしれないが、現在の日本の経済力を考えてみてくれ。  
 元の世界の日本ならともかく九州だけになっている。しかも貿易収入が全く無いんだ。たいした予算は回せない。」閣僚の一人が意見を述べる。  
「しかし武器弾薬が無ければ戦争は出来ないぞ?」「まさか隊員達に槍や弓を持たすわけにも行かないし・・・」  
「この前作ったばかりの予算計画だけでも防衛費が4パーセントを超えています。これ以上は無理です。・・・」  
閣僚達が意見を戦わせる。予算は無い。しかし無ければ戦争は出来ない。  
「うむ・・柘植君。後で最低限必要な予算を提出してくれ。議論はそれからだ。」  
東郷が柘植に向かって言った。「すでに用意してきました。どうぞ。」  
そう言ってビルマ封筒を取り出して東郷に差し出す。受け取った東郷が紐製の封止めを開けて中身を確認していく。  



294  名前:  てさりすと  ◆ZnBI2EKkq.  03/03/08  21:42  ID:???  

「・・ジェット機のエンジンのコピーに戦車のコピー・・ふむ。次の閣議までに出来る範囲を確かめておこう。次の議題に進んでほしい。」  
「判りました。では最後に・・・これも戦争の遂行に関してですが、降伏した大量の捕虜についてです。  
 これをどうにかしないことには戦闘どころではありません  
 現在我々の元には約2万人の捕虜がおりますが、これは東部方面軍の三分の一にあたりまず彼らを収容する設備がたりません。  
 だからといってエルフィールに引き渡すのは捕虜虐待どころか捕虜を奴隷として売りさばく危険性があるため引き渡せません。  
 もし引き渡したの兵士が脱走してマスコミにすがりついた場合  戦争遂行が難しくなります。  
 そのため収容所の建築予算をまわしていただきたい。  
 さらに彼らを養う食糧にエルフィールから受け入れた食糧とそれを運搬する車両を多めにまわしていただきたいのです。  
 こちらはさらに切実な問題であり彼らのところに食糧やそれ運ぶ車両を取られ前線に補給物資を運ぶ妨げになっております。  
 しかしそれも付け焼刃に過ぎず捕虜は増え続ける一方で恐らくこのまま捕虜が増え続ければ敵が戦闘不能になる前に我々が戦闘不能になるのは間違いありません。」  
「捕虜をこれ以上取らなければ良いのでは?降伏してきたら武装解除させてオーランに送り返すとか・・」  
閣僚の一人が自分の考えを述べる。  
「それは無駄だと思います。再び編成しなおされて直に戦闘に復帰してくるでしょう。」  
「捕虜に補給線を食いつぶされる前にエルフィールの軍とともに一気に突き進んでは?」  
「エルフィール軍の平均戦闘能力はオーラン軍の半分以下です。まともな戦闘能力がある部隊など指で数えるぐらいしかありません。  
 その部隊にしても移動速度は一日30キロ前後が限界です。しかも制空権をえる為には新たに空港も作らねばなりません。」