255 名前: 辞(ryの人 2006/09/13(水) 21:54:16 ID:???
ある薩摩武士がミロのヴィーナスを見てこういったという
『手の無い女に用は無い』と
『軍医・・・医療品が尽きました!あとは補給が来るまで麻酔なしで施術しなければなりません!止血剤も、包帯も!』
全体的にはなんでもない偶発的な戦闘だった、しかし大陸に手を広げ過ぎて、隊ごとの医薬品のストックが少なくなり過ぎていたのだ、そして・・・
『エルフの治癒魔法だ、捕虜を使っても構わん!やらせるんだ!』
エルフ(白闇どちらでも)のもつこの能力の為、医薬品のストックが減らされていたのもこの現状を引き起こした原因の一つだった
『ダメです・・・なまじ相手方の使った銃が貫通力が低い為、銃弾が体内に留まったまま治癒してしまい、鉛が身体にまわって結局死に至ります!弓矢でしたら、毒に気をつければ、抜くだけで済みますのに・・・!』
少数ではあるが、敵側が使用したのは我々からろ獲した兵器の超劣化コピーだった
『万策、尽きたか!』
出来得るかぎりの治療は施してきた、しかしもはやここまでだ、残された患者は医薬品無しには・・・あとは患者の気力に頼るしか無い、だが、あがき続けるのが医者の勤めだ
『周辺にいる女、患者分、誰でもいい!かき集めてこい!』
256 名前: 辞(ryの人 2006/09/13(水) 21:59:05 ID:???
『君!看護婦だろ!れっきとした指示だ、急げ!』
『は、はいぃっ!』
一瞬ぽかんとした助手の看護婦(看護婦免許を持つのも彼女しかいない)を一喝して走らせる
二日後、輸送とともに薬と増派の軍医が来た事で休息を頂き、病院裏で車座になってタバコをくゆらせる
『あ!軍医〜』
『おう、君か』
彼女も休みを貰ったはずなのにどうしたのだろう
『絶望的だった20人の患者さんのうち6人が助かりそうだとの事です!凄いです!女性を集めてこいって言ったときはホントどうしようかと』
ああ、患者達が気になっていたんだな
『マザーハンドヒーリングを知っているかね?』
『?』
彼女が首を傾げる
『小さい頃、風邪でもひいて寝込んだ時、親御さん、特に母親の手で撫でてもらうと何故か苦しさが和らいだ経験は無いか?』
彼女があるあると頷いている
『マザーハンドヒーリングとはそれだ。人間、いや種別を問わず、母親、女性というものの持つ、医学の及ばない不思議な力だ、だから患者の手を握らせたり、頭を撫でてやることで、生きる力を少しでも回復させたかったんだ』
『それで・・・ありがとうって見も知らない女性に告げて、笑って亡くなった患者さんも居ました』
『そうか』
257 名前: 辞(ryの人 2006/09/13(水) 22:03:33 ID:???
その言葉に視線を彼女から外す
『うれしく・・・無いんですか?軍医?』
しばしの沈黙
『私はね、出来得る事ならば・・・全員救いたかったよ・・・望んでも、出来ることでは無いことはわかっていたがね』
そしてまた沈黙
不意に頭にやわらかく、そして暖かいものが置かれた、彼女の手だ。ゆっくりと強くでも無く、弱くでも無く撫でられる。何故か払う気は起きなかった
『・・・いつもより、軍医が小さく見えました。そうしたら撫でたいなー・・・なんて』
恥ずかしそうに笑う彼女、なるほど白衣の天使とはこういう事か・・・
『ふっ・・・タバコが・・・目にしみるな』
手を目元に当てる、彼女の手は、何故かわからないが、とめどもなく涙があふれてくるほど・・・暖かかった
485 名前: 辞(ryの人 2006/10/24(火) 15:35:35 ID:???
極北の地にそれは居た
《ちくしょう!戦艦だ!戦艦が居やがる!!》
極北、敵バーバリアンの武器供給の元を断つ為派遣された北海道第七師団、その精強をもって鳴る戦車部隊が吹雪のなか出会ったのは、規格外の化け物だった。
極北の世界ではお互いの航空支援は無いに等しい、であるからこそ陸自最強の戦車隊を送ったというのに!偵察車からの無線が、豆の爆ぜるような音とともに沈黙した。車体上面から対空機銃で打ち抜かれたに違いない
ドドドドド!!!
《彩1が撃破された!敵斉射!!!散開!散開!》
ペアだった偵察車の残りが絶叫する。いまさらこの距離でどうしろというのだ。距離五千、戦艦にとっちゃ、ゼロ距離じゃないか。
《90式が空中に吹き飛んだぞ!?》
《だ、ダメだ、氷に足を取られた!動けない!助けてくれ!!》
後退するにも射程外までに、何度あの主砲を撃たれる事だろうか?しかも、天候はこちらが奇襲をかけやすいように、と、回復していく予定の日を選んだのだ。もうどうにもなるものか!
その時、90式の正面装甲に斜め上から命中した30センチ口径弾は、その質量で90式の構造そのものを破壊し、思考停止に陥っていた車長の存在を無へと変えた
658 辞(ryの人(適当に思いついたの投下) sage 2007/03/02(金) 22:12:22 ID:???
『うん?自衛隊さんから?』
某大学の一学芸員に過ぎない私に声がかかったのはある晴れた日の事だった
『教授達は基本的にお年を召していらっしゃいますし、中堅所の方々は所帯持ちがほとんどですからね、いいでしょう』
転移と呼ばれる怪現象とその後の混乱は長いのではぶく。なにやら自衛隊がどんぱちやらかした、というのはニュースで知っていた
危険な場所にホイホイ行くのもどうかと思ったが、まぁなんだ、好奇心が無くて学芸員等やって居られない。という訳で、四日かかって現場へ送り込まれた訳ですが
『学芸員さんはゲームはお好きで?』
引率に付けられた隊員が聞いてきた
『大好きさ〜』
『ス◯ルトンTは』
『お茶ぁーっ!』
『ああ、わかってらっしゃるならありがたい。骨が勝手に動き出した。そう考えてもらいたいのです・・・こちらへ』
へ・・・?一瞬何を言われたのかわからなかった。ぼけっとしてると近くにあったテントへと引きずりこまれた
『・・・ばらばら、ですな』
『足止めに退却する敵軍がアンデッドの魔法を使いまして。こちらに損害は無かったのですが、排除には隊員がもつ小火器よりも爆圧で吹き飛ばした方がよかろうと、海自さんに御足労いただきました』
659 辞(ryの人 sage 2007/03/02(金) 22:15:04 ID:???
大きなクレーターにばらばらの破片になった骨が霧吹きで吹いたように散乱している。
『この骨はどういったものなのだろう、という事になったのです』
地中から無限大に骸骨が現れては困る。そう自衛隊さんは考えたのだろう。最悪、術師が生きていたら何度でも何度でも立ち塞がるのではないか、と。そこに行き着いて念入りに爆砕したのがこれだ
『そうですね・・・』
私はどう伝えたらいいか考えた
『例えば本土の工事現場で人骨が発掘されたとします。大抵の場合、欠損を恐れて土を被せて埋め戻すことが多いのですが開棺によって外気に触れた人骨は急速に腐敗が進行します。まして埋め戻しては土の質の差はありますが二・三ヶ月で消滅してしまうのです。意外でしょ?』
化石やらで頑丈なイメージがあるかもしれないが、骨といえど状態の変化にもろく、デリケートなのだ
『ですから、これほど破砕してしまえば、埋め戻して水でも撒いとけば、すぐに分解消滅するでしょうから。脅威はありません。また、スケ◯トンTを実際に使っていたとしても風化してしまい、二度目の使用はほぼ不可能です。安心してください』
多分欲しいであろう情報はこれ、かな?
『そうですか、それはありがたい話です』
660 辞(ryの人 sage 2007/03/02(金) 22:18:12 ID:???
『ま、ものの本を見れば書いてある程度の事ですが、お役に立てたなら幸いです』
『しかし我々としては、ここに何故これだけの骨があったのか。この骨が何者なのか、知りたい』
埋葬者によっては部族間交渉に利用できるだろう
『完全な遺骨が欲しいですね』
『人をお貸ししましょうか?』
『なに、人の骨で一番大きいのは大腿骨の約四十センチ、梱包すると五十五センチ。頭蓋骨は梱包すると三十センチ立方程度。ダンボールの三箱あれば事足りますから一人でなんとかなりますよ』
三箱、四肢骨に一箱、骨盤・肩甲骨・脊椎用に一箱、頭蓋骨用一箱の合計三箱だ、状態が悪ければ一箱でも余るもんだ
『詳しく連隊長にも話していただきます』
『出来得る限りはお話ししますし、努力します・・・最終的には本土に送らなければならないと思います。私程度に出来ることはたかが知れてますから・・・早く送り出す準備がしたいので、いまから作業に入りますね』
『は、よろしくおねがいします』
正直、どんなのが出てくるか楽しみで仕方が無い、一番最初にいろいろ見ることが出来るのだ、学芸員冥利に尽きる
『さて、作業開始といきますか♪』
691 辞(ryの人 sage 2007/03/03(土) 22:21:10 ID:???
『たったーた、たーたーた、ほねっほねっほねっほねほね(魔◯村BGM調)』
まずはそこここに開いている砲弾穴に降り、合掌して作業に取り掛かる。目的はとりあえず骸骨の歯だ。埋葬者が何者であるか知るのに、歯は重要な証言者となる
『顎の骨つきであると楽なんだけどねぇ』
見事に粉砕してくれちゃっている。何の歯から調べないとならない
『おっ・・・?』
わっかりやすい形をしてる奥歯が転がっている。親知らずであってくれるとありがたい。日本人の平均として、親知らずが生えてくるのは19〜20歳にかけて。
これがあるって事は埋葬者は20歳以上の人間であるわけだ。ちなみに一番奥の奥歯の生え変わり時期が11〜12歳頃、これには12歳臼歯なんて名前が付けられている
『まぁこれだけじゃ何とも言えないから、歯をもっと探さなきゃな〜』
腰痛いんだよね、これ。屈んだまま少しずつ見落としが無いように探す。鑑識班が事故後に破片探すのと同じだ。こっちはもう少し余裕あるけど
二時間経過
『ふぃ〜・・・集めた集めた、と』
とりあえず歯を百本ほど。重複はあろうが六十人分はある、かな?
『ま、拾い集めてる最中も見てた訳だけれども・・・まぁなんだ』
特徴的な事があった
692 辞(ryの人 sage 2007/03/03(土) 22:24:05 ID:???
『全部20歳以上だね。しかも被支配者階級。もしくは狩猟生活をしていた頃の人間だ』
年代測定は俺には出来ないから、そこら辺は言えないが、おおまかに見た歯の特徴として摩耗が激しい。
食生活が粗末な証拠だ。砂まじりだったり、骨をかじったりする生活をするとこうなる。加えてカロリーが低いとその食事を多量に摂る訳で、歯への負担はさらに大きな物になる。それが歯に現れるのだ
支配者階級はあれだ、調味料その他加熱やらなにやらを使える立場にあり、やわらかく、かつカロリーが高い物が食べられる。歯に優しい生活が出来る訳だ
『という事は・・・埋葬形態が埋葬者の姿を浮き彫りにする訳だけれども』
周り一面クレーターだらけである。なんというか気力が失せる
『そのアンデッドの魔法って、全部が全部の骨動かせたのかなぁ?』
稼働率と言うべきなのか、もし術者が動かせないで地中に存在したままの骨があれば。もっともっと埋葬者に近づける
『艦砲射撃って結構穴と穴の間隔開いてるもんじゃね〜の〜?はぁ・・・』
速射砲で連続的に撃ち込んだせいだ。これだから現代戦は
『まぁ思ってたよりは穴が浅い(五インチ砲だし)から、もしかすると・・・!』
いい感じに残ってるかも!
446 辞(ryの人 sage 2007/05/21(月) 23:35:03 ID:???
『うーん・・・』
その主計一尉は困っていた。この世界に日本が放りだされてあれこれ、めんどいので省略しまして、ただいま難民保護を自衛隊はしております
『みんな脱水と飢餓症状か・・・』
自衛隊イチ押しのレーション類はやめておいた方が良かろう。腹持ちがいいのは良いが、難民さん達の弱った胃にはちとキツい。しかし何を出したものか
『うーん』
調理器具は持ち歩いていない。難民さん達が、深目の中華鍋っぽいものは持ってるが
『ふっふっふ』
主計一尉の目が光った、これだ!
『総員大休止〜各自昼食〜』
タイミング良くそんな命令が伝わって来た
『ちょっと貸して〜』
そばに居た娘御さんの担いでいた中華鍋っぽいそれを平頭して借りる。その鍋に水をなみなみと注いで煮沸
『よっと!材料はこれ』
そう、野菜ドレッシングの束だ
『ちょっと面倒だけど』
一つ一つ引き裂いて鍋の中に。あとは味見しつつ、塩をごろうじろ・・・即席のスープの完成ってわけだ。日本のドレッシングは栄養たっぷり
『さぁ召し上がれ〜♪』
ちなみにこの後、嫁入り道具かつ、唯一の金属器の財産である鍋を使って、彼女の一族に料理を振る舞ってしまった彼が、面倒な事になったのは言うまでもない
226 名前: 辞(ryの人 [sage] 投稿日: 2007/09/15(土) 20:48:55 ID:???
転移した護衛艦隊は、呆然とする時間さえ与えられなかった。異常事態を体に認識させる衝撃・・・隊を包み込むように水柱が林立したからである
『っ!?』
特に、はるなで指揮をとっていた高木一佐には、突然の事態に対処を求められることになったのである
『CIC!状況知らせっ!』
水柱が林立する状況に変わりは無い。間違いなく我々は砲撃を受けている
『はっ・・・!は!周辺海域に艦船多数!少なくとも・・・四十以上!嘘だろこんな』
慌てた様子でCICから報告があがってくる
『衛星からの回線途絶!まわりの艦艇以外とのリンク切れています!横須賀、呉、在日米軍、全てダメです!』
『一般回線も探れ!』
日本本土は電波の飛び交う雑多な場所だ、何か捕まるはずだ・・・正直この状況で捕まえられるとは、もはや高木も思わなかったが
『ヘリ格納庫!UAVを出せっ!』
しかし指揮官は次善の策を打たねばならない。はるなは《いざなみ》観測の為に行われた改造で、小型のUAVを四機搭載していた
『上からの映像を出してくれ、今すぐだ!』
この砲撃を受けているこの状況を、精密に認識しなければ
『私はCICに降りる!音無艦長!』
『わかってます!回避して見せます!』
227 名前: 辞(ryの人 [sage] 投稿日: 2007/09/15(土) 20:52:47 ID:???
音無二佐が、無理ににっと笑って見せると、艦に対して命令を下した
『総員!第一種戦闘配置!繰り返す!総員!第一種戦闘配置!これは演習にあらず!締まっていけ!』
これで一応、はるなは軍艦として全力発揮が可能となる。高木が安心してCICに降りようとしたその時だった。海上自衛隊が創設以来、ついぞ経験したことの無かった実戦での対艦戦闘、その最初の被害が発生したのは
『ありあけ被弾!!!』
高木の顔が、そう叫んだ見張りの方に振り向き、青ざめる、そしてまた向き直して艦橋を出るハッチへと急いだ
『統一指揮を、今すぐとらなければ・・・!』
このままでは、いずれ全艦が沈められてしまう。早くこの場を離脱しなければ!
高木は人目をはばからず駆け出した。もう、一刻の猶予も無いのだ
一方CICでは、ソナー員が最初に受けた砲撃のダメージ(砲弾の爆発音をまともに聞いた)から回復し、彼等に更なる混乱をもたらすことになる情報を、その耳にキャッチしようとしていた
シャッシャッシャッシャッ
海面に落下して爆発する砲弾に紛れて近づいてくるスクリュー音
『これは』
ソナー員の額から冷汗が流れおちた。間違いない
『魚雷接近!向かってきますっ!』
228 名前: 辞(ryの人 [sage] 投稿日: 2007/09/15(土) 20:58:06 ID:???
彼は驚いてはいても、やるべき仕事を欠かさなかった。この音紋をデータとして取り込ませ、同じスクリュー音を立てるものを、レーダーによって映し出される画面の状況に付け加えさせたのだ
『扇状雷撃・・・!』
これは我々に向けて放たれた物だろうか?違う、我々の隊列を挟んで向こう側の相手・・・我々はどこともわからぬ世界の、砲撃戦の真っ只中に放り出されているのだ
『避けられない!』
完全に我々は絡めとられている
『CIC!状況をモニターに・・・っ!』
高木一佐も、映し出された光点を見て一瞬怯んだが、そんな場合ではなかった
『これは何か!?』
『ぎょ、魚雷です!おそらく無誘導の、です!』
魚雷、魚雷か・・・しかも無誘導となればデコイ、マスカー、妨害手段のその両方とも効果が無い。アスロック・・・駄目だ、打ち上げてパラから落とすのに時間がかかり過ぎる
『短魚雷用意!CIWSは起動できるか!?』
海面下の魚雷を撃ち抜けるか未知数だが、やってみる価値はある
『各艦にも通達!ありあけには艦の保全と状況を知らせと伝えよ、急げ!』
この段階になって、ようやく護衛艦隊は統制を取り戻そうとしていた
『無誘導でも、シクヴァルでなくて良かったな』
229 名前: 辞(ryの人 [sage] 投稿日: 2007/09/15(土) 21:01:21 ID:???
あれだったらこうして考える時間も与えられなかった
『隊司令、砲弾もどうにかしませんと』
魚雷がストレートパンチなら、砲弾はジャブ・・・いや、装甲なぞ無いに等しい、あるいは薄い現代艦艇では、いつ命中して自分達を吹き飛ばすかわかった物では無い
『状況は』
高木はもう一度画像上の状況を見る。典型的な同航戦、大まかに反応の大きさが出ているが、自分達を撃っている。いや、我々が射線に入り込んだ相手は一番近い六隻六隻の二つのグループに八隻八隻の二グループ
『先頭艦をハープーンなりで撃てば・・・逃げられるか?』
四隻、一隻二発で八発。いやいや、先頭艦が指揮艦というのはケースバイケースだ・・・六隻のグループは三・三、八隻のグループは四・四その先頭艦十六発・・・戦闘任務でなかったから、発射器には、十六発しか入れていない。なんとか間に合うな
『短魚雷発射準備完了!司令!』
いや、まだやるべきは自衛の範囲だ
『発射しろ!』
『発射!』
砲雷長が発射コックを捻る
シュポン!シュポン!シュポン!
シャンパンの栓が勢い良く飛ぶような発射音が、外では鳴っているはずだ
『っ!?うみぎり!何故魚雷を発射しない!このままでは命中するぞ!』
230 名前: 辞(ryの人 [sage] 投稿日: 2007/09/15(土) 21:07:54 ID:???
うみぎりの光点から、迎撃の為の魚雷が出ていない
『富竹艦長!』
うみぎりの艦長を呼び出す
『畜生!蓋を取り忘れたなんて!CIWSを起動させろ!カバーを早く外すんだ!』
向こうの混乱ぶりが良くわかる
『富竹艦長!』
高木はもう一度彼の名前を呼んだ。魚雷を示す光点がうみぎりへと重なる
『CIWS起動いけるか?いけっ!いけぇっ!俺達なら出来る!逆転ホームランだぁあああっ!!!』
富竹艦長の絶叫と同時に、光点はうみぎりと完全に重なった
ズバァアアン!!!
はるなのCICにもはっきりと水中爆発音が伝わってきた
『各魚雷迎撃・・・うみぎり、海上に停止しました。反応減っていきます』
270キロの爆薬がもたらす水中爆発の直撃をまともに喰らったのだ。魚雷を迎撃するのに使った短魚雷が45.4キロの爆薬しか封入されていない事からしても、その威力が押し計れる
『うみぎり、沈没していきます』
『各艦・・・対艦戦闘用意』
高木は決断した。今を生き延びねば、明日の査問も裁判も無い!
『司令!それは・・・!』
『左舷Aグループ先頭艦に二発、同四番艦に二発。Bグループも同様に、右舷αグループも先頭艦に二発、同五番艦に二発、βグループにもだ』
231 名前: 辞(ryの人 [sage] 投稿日: 2007/09/15(土) 21:11:03 ID:???
『司令、うみぎりの誘導弾は・・・さわぎり、ありあけ、すずなみの三艦、12発しかありません』
そうか、うみぎりは・・・畜生。いつまで俺は呆けているのか!
『では、ワンショットワンキルだ、それぞれ一発ずつにロックを変更!まだ動くようであれば、急転舵してからさらに一発!』
『アイ』
高木はうみぎりと繋がっていた回線を震える手を抑えながら切ると、すずなみ艦長へと呼びかけた
『滝川艦長』
『随分と面白い事になりましたね』
あっちの艦長の、にかっと笑った顔が目に浮かぶ。たしか隊では最年少の艦長のはず
『対艦戦闘はお任せ下さい』
考遅より拙速を好む滝川艦長は、高木が何をしようと誘っているのか理解していた
『頼む、ゴッドスピード』
『神速の滝川ならともかく、そっちの方は縁起悪いですよ』
ちなみに滝川、若いだけにゲーマーであったりもする。無論そんな事高木が知るはずが無い
『そうなのか』
『そうなんですよ』
はるなとすずなみは127o砲を持つ。対艦戦闘なら、ありあけとさわぎりの二艦より戦える
『松の奮戦こそが護衛艦の鏡と聞かされた世代に付き合わせて悪いな』
『好きですよ、私もそういうの・・・しかしまずは』
そう。撃たなければならない
232 名前: 辞(ryの人 [sage] 投稿日: 2007/09/15(土) 21:15:54 ID:???
異常事態下とはいえ、八発の誘導弾を生身の目標へ放つのだ
『司令、各艦の誘導弾の発射キー、こちらに回してもらいました』
砲雷長が逡巡している。私が直接スイッチを入れねばなるまい
『・・・あちら側からなにか連絡や確認は入っていないか?』
『回線は開いてあるのですが、ありません』
実際は敵味方識別で青色灯や赤色灯を明滅させていたのであるが、返しの信号がわからぬ以上、どうしようも無い
『・・・是非も無し、か』
高木は自らの手で、ミサイル発射のボタンを押した。それはひどく軽く押し込めるものだった
第一護衛隊群、第五護衛隊、及び第六護衛隊の苦難はまだ始まったばかりである
872 :辞(ryの人:2007/12/30(日) 22:16:12 ID:???
んじゃ、戦うだけの保守作品をば。ある意味ファンタジーってことでm(__)m
ある日、某グロ〇ローという出来損ないの神は考えた。暇つぶしに、別々の世界の軍組織を呼び出して戦わせてみよう、と
彼等は戦わざるを得ない。でなければ元の世界には戻れないのだから・・・呼び出されたのは
日本国国土(戦力以外は静止状態)
海上自衛隊・自衛艦隊、及び地方隊はつゆき型12隻+あたご
航空自衛隊、全航空隊
陸上自衛隊、地対艦ミサイル連隊
某世界の王立イタリア海軍、本来はアドリアとチィレニアに別れているが、同一海域に出現
BB
V・ムッソリーニ・リットリオ・ローマ・インペロ
CV
アクィラU・スパルウ゛ィエロU
GCA
ゴリツィア・ボルツァーノ
GCL
ルイジ(省略)アブルッチ・ジュゼッペガリバルディ・エマヌエレ(省略)ダオスタ・エウジェニオディサウ゛ォイア
CLA(アイギスシステム艦)
ジュッサーノ級×四・カルドナ×二・モンテクッコリ級×二
DD
アウダーチェ級×24
勝敗条件
自衛隊(戦闘能力の喪失)
イタリア(BB・CV・GCAの戦闘能力喪失)
873 :辞(ryの人:2007/12/30(日) 22:23:49 ID:???
【接触〜approaching〜】
衛星と地上設置のレーダーが使えなくなった自衛隊側は、偵察機を敵艦隊に送り込もうと考えた。艦隊の存在そのものは、Eー767AWACSによって把握していたが、その内訳を知ることが出来ていなかったからである
その任に附いたのは、RFー4EJ17機を保持する第501飛行隊のそれである。ただ、保有機数全てを飛ばした訳ではなく、半数の8機、それを二隊に分け、高空と低空(加えて各四方向)から侵入させるプランを彼等は立てた
『空母が二隻か、簡単に言ってくれちゃって・・・』
AWACSのタコは、航空機が発着艦している艦が二艦である事から、そうパイロットに告げていた
しかし、何艦か発艦させてない艦がいるかもしれない(空自は飛行場を察知されないために、何箇所か飛行を差し押さえた)と、確実性を求めたのだ
しかし、空母がいる艦隊に強行偵察を行うなんて、無茶にもほどがある
《ピーピング3、敵の戦闘機が向かった!接触は避けろ!》
『避けろっつったってなぁ!』
AWACSからそんな通信があってすぐに、敵ミサイルのアラートが機内に鳴り響く。距離は・・・畜生め!フェニックス相当を持ってんのかよ!
『チャフ!ECM!』
874 :辞(ryの人:2007/12/30(日) 22:28:55 ID:???
『グギギギ・・・!』
フェニックス相当だったとして、鈍重で避けられると言っても、チャフ・ECMだけでなく、回避行動をする事は避けられない
彼はGに耐えつつ、回避行動に移る。アラームは暫くすると消えた。向こうを三つの白煙が空に消えていく
『チィッ!』
安堵する暇もなく、咄嗟に機体を横に滑らせる
彼のファントムが居た空間を、機銃の曳航弾が通り過ぎる。回避行動によって運動エネルギーを失った俺を、上からはたき落としにきやがった
《ピーピング3!まだだ!残り二機居る!》
『わかってらぁよ!言うのが遅いっつの!』
一難去ったらと思ったら、もう後ろに二機付いてやがる!淡い灰色の垂直尾翼が四つ、ちらりと見えた感じがした。ヤバイ、いくら振り回しても振り切れねぇ!
《ピーピング3!振り切れん!戦い方は猫に近いが、敵戦闘機の機動自体はイーグルに似てる!他の奴らに伝えてやってくれ!》
ビィーッ!ビィーッ!ビィーッ!
またアラームだ、今度は赤外線ミサイルの
『フレア!』
バラバラと火の玉が振り撒かれるが、アラームは消えない。面感知する奴かよ!
《ピーピング3!》
AWACSのタコが叫んだ。限界だ
《イジェークト!イジェークト!》
875 :辞(ryの人:2007/12/30(日) 22:33:33 ID:???
彼は空中に放り出された。そんな彼を遠巻きに、三叉槍のマークがついたミグ29とイーグルの合いの子のような機体がバンクした。安心しろ、とでも言うように
『ソルティイーグルって、出来てりゃあんな風になったんかな?』
撃墜されてしまったパイロットには、そんな事を言う事しか出来なかった。願わくば、機動がイーグル似という俺の情報から、他の連中が迎撃をかい潜ってくれるといいのだが・・・
着水した彼は、しばらくのちに、ダオスタ系統らしいヘリによって回収された
この偵察行で、空自は保有するRFー4EJの半数と、パイロット二名を失いつつも、伊艦隊の全貌を掴むことに成功したのである
この情報は、直ちに空幕から各地の飛行隊、そして、横須賀の護衛艦隊司令部に届けられるのであった
『戦艦、か・・・まずは築城と三沢に出ばってもらうとしようか』
第三飛行隊と、第六飛行隊を示す電光表示盤を幕僚の一人は見つめながら言った
しかし、事態はそう簡単に回らなかったのである
次回【第一波〜primo piatto〜】
894 :辞(ryの人:2007/12/31(月) 22:43:02 ID:???
【第一波〜primo piatto〜】
『次に来るのは攻撃隊、だな』
奴らの偵察隊は思ったよりも練度が高く、日本相手という事で手を抜いてしまっていたとはいえ、艦隊上空まで抑え切れなかった
『世界が違えども、あの日本人がする事だ。仮借のない攻撃隊を送り込んで来るに違いない』
それこそ、全力で・・・こうしちゃいられない!
『全戦闘飛行隊を上げるぞ!急げ!』
アクィラUら空母二隻が保有する麗風Refined・Rの戦闘飛行隊は七つずつ、一個飛行隊は9機だから、一隻あたり63機
先程第501飛行隊を迎撃した直援の二個戦闘飛行隊を除く、108機を上げようとしているのだ
『蒸気圧を保て!機体を動かすときにぶつけるなよ!』
空母が持つ四基のカタパルトを有効活用すべく、甲板員がおおわらわで作業を続ける
キュオオオ!!!
遮風板にジェットの噴射を打ち付けつつ、カタパルトで麗風は空へと駆け登っていく
一方、機体の吐き出されたカタパルトからは、使われた蒸気の白い靄が後ろに流れる。日の光に照らされて、キラキラと幻想的な光景だ。低下する作業効率と騒音を無視すればの話だが
『今度は食い止めてくれよ・・・』
可愛いあの娘とのベッドに戻らにゃならんのだからな
895 :辞(ryの人:2007/12/31(月) 22:47:04 ID:???
イタリア艦隊の過剰反応ともいえるこの事で、混乱状態になったのは空自の方だった
おおよそ空母というものは、攻撃機や対潜ヘリコプター、そして郵便機の搭載で、戦闘機は40〜50機程度
先の迎撃で18機が出ていた事はAWACSで捉らえていたのだから、迎撃機は最高でも80機程度と踏んでいた
これならば、第3第6飛行隊の護衛に築城第304飛行隊、新田原第301飛行隊、そして百里第305飛行隊と小松第306飛行隊に三沢第8飛行隊の100機を投入すれば
(一飛行隊が、四機編隊四つに隊長機二機の18機だから、実際は90機)
十分Fー2の対艦ミサイル160発をおいしくデリバリー出来るはずだった
『だが、100機だと!?』
そう、アクィラUとスパルウ゛ィエロUが捻り出した迎撃機は100機余り、ソルティイーグル相当が100機、空自側は90機の護衛の内、半分近い36機はFー4EJである
機体自体はいい機体だけれども、性能的に互角とはとても言えない
最低10機程は逃してしまうだろう。それが放つフェニックス相当でFー2が5機、近距離戦闘で10機は喰われると考えれば、敵艦隊にデリバリー出来るミサイル数は100を切ってしまう
『ミサイルのデリバリーが100を切っては、対艦攻撃の用を為さん・・・!』
896 :辞(ryの人:2007/12/31(月) 22:51:31 ID:???
考えてみればいい、イタリア艦隊の総数は42隻、一隻につき二発のミサイルを迎撃できればいいのだ
艦の姿勢から迎撃に参加できない艦が半数あると考えても一艦につき四発。まだ何とかなる。対空ミサイルで二発、砲で一発、CIWSで一発迎撃できればミッションコンプリートなのだから
艦の迎撃力を飽和出来なくては意味が無いのだ。ただでさえ空母や戦艦という大型艦が存在するというのに
『どうする・・・?』
このまま突っ込ませても無意味だ。空幕に伝えて中止させるしか・・・
《ヘッドキャップ2(AWACSのコールサイン)行かせてくれ、やりようはあるぜ》
《アシレス1?》
三沢のファントム飛行隊の隊長だ
《空母の弱点を突く、Fー2を一時下がらせて再突入させるんだ。俺達はこのまま行く》
つまりこうだ、敵は空母機を一斉に上げすぎた、時間をずらしてやれば、燃料切れで戦えなくなる
そこにもう一度Fー2を送るのだ、合わせてここに出て来た俺達と戦えば、やれる!
《だがそれでは貴様達は・・・!》
《第304飛行隊、乗ったぜ》
《こちら301、置いてけ堀は無しですよ》
《百里305飛行隊、俺達みたいな馬鹿は死ななきゃ直らねぇよ》
《ハハハッこちら306、仕方ねぇなぁ》
897 :辞(ryの人:2007/12/31(月) 22:55:23 ID:???
《せっかくの大規模空中戦だぜ?これを逃すファイターパイロットがどこの世界に居るかよ》
《アシレス1・・・》
一応俺達が抜かれて、Fー2の奴らに追い縋ろうとしやがった時の為に、小松と百里に残してきた303と204の飛行隊にバックアップしてもらうよう手を回してもらう
《よし、手は回したな》
《ああ》
全ての手回しが終わったのは、接敵の直前だった
《ヘッドキャップ2、戦闘管制もよろしく頼むぜ。死ぬつもりなんてこれっぽっちも無いんだからな》
《・・・勝てよ》
《当然!》
空自五個飛行隊、90機それぞれが空戦での運動エネルギーを確保する為、アフターバーナーを焚いて戦闘空域に侵入していく
『一発ぶちかましたらぁっっ!!!』
次回【剣舞〜sword dance〜】
935 :辞(ryの人:2008/01/02(水) 13:17:27 ID:???
ちょっと文を分割して投下してみます
【剣舞〜sword dance〜】
せまりくる空自の攻撃隊に備えて、麗風は陣形を維持して空中待機している
《日本には108の煩悩があるそうだ》
《煩悩?》
空自が空域に入って来るのを、イタリア海軍の戦闘機部隊は早期警戒機のP.258から知らされた
《聞いた話だと、エロい妄想の事らしい》
《隊長が時々言ってる、うおっはぁ!巫女さん萌えって奴ですか?》
列機が茶化す
《・・・お前、今度来た同人、二度と見せてやらんぞ。ともかく、だ!俺達も108機存在する》
煩悩と同じ数、これを年越しの時に鐘を鳴らして打ち払うのが、彼等の慣習だと聞いた
正に俺達を落として、鐘の代わりにしようとでもしてるみたいじゃないか
936 :辞(ryの人:2008/01/02(水) 13:19:40 ID:???
《だがな、煩悩、いわゆるエロい妄想が世の男ども、つまりは俺やてめぇら、そしてあいつらが、簡単に打ち払えると思うか?》
《絶対に不可能であります!》
つまりは、だ
《あいつらは絶対、煩悩の塊みたいな俺達には勝てない、わかったな?落とされるのは奴らだ》
彼は麗風を一回転させた
《堕天させてやろうぜ、俺達のテクニックと槍でな》
《我々の槍は長いですからな》
レーダースクリーンに、彼の編隊が映り始めた。もう、射程内だ
《さぁ、ベッドインだ!》
937 :辞(ryの人:2008/01/02(水) 13:25:15 ID:???
『ちぃっ!』
DJのMISP機に乗っているコパイは舌打ちした。こちらで長距離射程のミサイルが使えるのは、俺達を含めて一個飛行隊分18機
あっちはフェニックス相当だが全機、あまり多数の同時発射は出来ないよう(二発・砕風であれば四発)で、二発撃ってやがるから216発
こっちは同時発射数が大きい(六発)ので、AAM-4を108発送り込んだ
『頼む、避けてくれ!』
まず出だしのミサイルによる槍合わせ、これが終わらなければまともな空戦自体が始まらない。こんな所でやられたら、大敵を相手に空戦をしたなんて自慢もできない
938 :辞(ryの人:2008/01/02(水) 13:26:39 ID:???
空自側のミサイル命中率35%、イタリア側の命中率20%、37発の命中弾と43発の被命中弾が発生したのは、そのすぐ後であった
イタリア海軍側の麗風Refined・R71機と空自側F15J/DJとF4EJの47機からなる死闘は、ここから始まるのである
ギュイイイイッ!!!
『イカ臭ぇデッドウェイト付きの癖に、やるじゃねぇか!』
麗風がミサイルを受けて四散する。麗風は長距離ミサイル二発に、短距離ミサイル四発装備
空自のイーグルはAAM-4八発を積んできたMISP機以外は、短距離ミサイル八発。格闘戦での撃墜効率は、こちらが勝る
ブォオッ!
『がはっ!』
939 :辞(ryの人:2008/01/02(水) 13:30:42 ID:???
麗風を撃墜したイーグルを、また別の麗風が放つ25mm機銃弾が貫いて爆発させる。数が違う分、勇戦しながらも空自側が追われる事が多くなっていく
そんな中で、一機の麗風と、一機のイーグルが爆煙と飛行機雲の溢れる空で出会った
『艦載機の癖に・・・!タイマンの格闘戦に持ち込めば、イーグルは絶対負けねぇ!』
『寝技じゃまけらんねぇんだよ!日本人!来やがれ!』
ヘッドオンの状態から捻りこんで、後ろを取るべく高機動を始める
940 :辞(ryの人:2008/01/02(水) 13:31:59 ID:???
『ぐぅううっ』
やはり機動の俊敏性では、艦載機の麗風の方が厳しいのか、イーグルが後ろを取る
『貰った!』
麗風をミサイルのシーカーに捕らえようとするイーグル
『まだまだぁっ!』
麗風がフラップを目一杯広げる。凧が風を受けて舞い上がるように減速して後退する。艦載機である以上、減速性能はかなりの物がある
『あ、あぶねっ!』
ただ、空中衝突も引き起こしかねないし、着艦並に危険な行動だ。しかしそれを麗風はやってのけた
『伊達に俺達は、艦載機乗りやってるわけじゃねぇんだよ!』
攻守が逆転し、今度は麗風がイーグルを追う
『ちぃっ!くそったれが・・・!』
イーグルは最大出力で引き離しにかかる。しかし、パワーは麗風も負けない
941 :長崎県人:2008/01/02(水) 13:36:30 ID:???
その頃、早期警戒機であるP.258に乗っているタコは、首を捻っていた
『攻撃機が存在しない?』
撃墜報告を聞く限り、攻撃機を撃墜したという報告は無い
『ファイタースイープでは?』
こちらの世界では、艦隊航空戦自体がファイタースイープそのものなのだから、他のタコは疑問を持たなかったようだ
『普通は勝てる数、あるいは纏まった数を波状多方向に送り出してくるのが当然だ』
攻撃機は、一塊になって共にやってくるか、波の中に紛れ込ませるのがスタンダードだ
942 :長崎県人:2008/01/02(水) 13:37:25 ID:???
『どちらにしても中途半端過ぎる』
仮に攻撃機を一時後退させたとして、それが意味するのは、まだ迎撃隊が居るかもしれない艦隊に、丸裸の攻撃隊を送ることと同意なのだ
『ただ、戦闘機が足りないだけなのでは?』
そのタコは唇を噛んだ。イタリア海軍は近海海軍だ。警戒機はともかく、管制、AWACSは空軍と共用で事が足りるから、EWAC性能は多少落ちる
それが今は歯痒かった。あれがあれば確認が取れるのに・・・!
『空母に降りた二個戦闘飛行隊を上げてもらうよう、交渉してみる』
胸騒ぎが、止まらなかった
次回【対価〜spende〜】
954 :辞(ryの人:2008/01/03(木) 21:12:21 ID:???
【対価〜spende〜】
空中待機を続けている第3及び第6航空隊は、今か今かとその時を待ち続けていた
《ヘッドキャップ2、空域はどうなっている》
そして何より、先に行った戦闘機隊の仲間達がどうなっているか気になって仕方がなかった
《40を切っているが持ちこたえてくれている。もう少し待て》
悔しげな口調で、AWACSのヘッドキャップ2は伝えた。あまりに衝撃的な内容だ
『半分以上が落とされた、だと?』
空自は決して、練度が低い軍隊ではない。それが・・・
『全体から見ても、戦闘機隊の損耗率は14%を越えている事になります』
コ・パイが素早く計算して言う。いわゆる全滅として判定されるのは戦力の三割を失った時と言われているが、現状の時点で、既にその半分を達成されているのだ
『ますます、俺達が外す訳にはいかねぇな』
次の護衛は期待出来そうに無い。大規模な一斉攻撃はこれっきりに違いない
『もう一度グラフィックを確認しろ!』
『はい!』
RF-4Eが写して送って来た映像から弾き出された伊艦隊それぞれのシルエット、そのデータを元に、ミサイルは飛んでいくのだ
『空母、戦艦、重巡・・・海自から出来るだけ潰してくれと言われたイージス・・・よし』
955 :辞(ryの人:2008/01/03(木) 21:15:28 ID:???
36機、計144発のミサイルを、振り分ける。空母と戦艦に12発ずつ72発、重巡に8発ずつで16発、イージス艦にも8発ずつで五艦
それから前路啓開に駆逐艦を4発送り込んで四隻沈める
『だが、敵の防空火力がどれほどかまでは、俺達には分からない』
そればかりはやってみなければ分からない。場合によっては、手も足も出ない場合とてありかねる
《こちらヘッドキャップ2、戦闘が始まってから15分が経過した》
ちなみにタイフーンが戦闘行動半径を計る際、10分の戦闘空中哨戒が見込まれた数字が使われている。それが示すのは、欧州で空中戦が行えるのはその程度が限界ということだ
今回は相手側が防衛側なのも加味して、15分。そうAWACSのタコは判断した。今がチャンスだ、と
《今からフルバーストで空戦海域を回り込めば、もし敵にまだ機体があったとしても、最低限の接触ですむ》
空自特有の、地名を交えた方位説明でルートを説明される
《ありがとうヘッドキャップ2、戦闘機の奴らを退かせてやってくれ。擦り切れちまう》
《わかってる・・・頼んだぞ、仇を取ってくれ》
《誓ってな、対価を・・・払わせてやる!》
青きゼロが、蛇(ウ゛ァイパー)の如く、その喉首に喰らいついてやるさ!
956 :辞(ryの人:2008/01/03(木) 21:18:17 ID:???
アドレナリンが脳内で爆発する
『へ、へへっ!』
『ひゃ、ははっ』
あの麗風とイーグルのドッグファイトも、格闘戦の常として長期化していた。お互い高Gの中回りすぎて、頭の中がバターのようになっている
『ぐぅおおっ!』
イーグルが捻りこんで麗風の機銃弾を避ける。いや、バシンッと翼端灯が弾けて飛んでいる
『ちぃっ!』
殺ったと思っていた麗風の旋回半径が僅かに膨れる。今度はイーグルが後ろを取る
『はぁっはぁっ・・・!フォックス2!』
こういった場合、ミサイルをまだ保持している方が優位だ。白煙を曳いて、麗風へと突き進む
『フレア!グギギギギギ!』
フレアをばらまくと共に、思い切りよくエンジンを最低出力へ、勿論、失速して急降下。ヤバイ、フラップが片方壊れた
『でぇえええっ!』
ミサイルは急機動で外したが、キリモミしつつ真っ逆さま。イーグルも追ってくる
『こなくそぉ!』
こうなったら自棄だ!と、機体制御よりも先にエンジンを全開へ。青い壁、海面が迫ってくる
『なんだと!?』
ギリギリの所で間に合って、麗風は上昇する。割を食ったのはイーグルだ
麗風が海面ギリギリで噴いたジェットで出来た水柱が、引っ掛けられたのだ
『トドメだっ!』
957 :辞(ryの人:2008/01/03(木) 21:23:22 ID:???
水柱に怯んだイーグルを、インメルマンターンで完全に麗風がガンサイトに捉えた。正にその時だった
《戦闘機隊!戻れ!敵攻撃隊だ!》
『なにっ!?』
《まて!燃料が危うい、俺達は無理だ!》
《こっちもダメだ!機銃も弾切れだ!》
あちこちから、味方の悲鳴のような報告が沸き上がる
『あんたらの頑張りすぎだ!それでも来るか!?』
その間に、体勢を立て直したイーグルは逃走をはかる
『ぬぅうううっ!』
彼は迷った。燃料はともかく、まだこの機体には機銃弾が残っている
『てめぇ、負けた訳じゃねぇぞ!』
彼は麗風を傾けた。空母さえ無事なら、また戦える。絶対次にあった時には、落としてやる・・・!
P.258のタコが行った要請は、ギリギリで間に合わなかった。いや、上げられるだけはあげ、F-2をなんとか9機だけ撃墜する事に成功している、最善は尽くしていたのだ
だが、幾多の犠牲の元、確かに108発のASM-2がイタリア艦隊に放たれたのだ。蛇(ウ゛ァイパー)の毒が
次回【砲撃〜Gun fire〜】