125  名前:  前スレ848  04/02/15  01:02  ID:???  

 20XX年近年中国からの圧力に脅威を感じた政府はその年の富士総合火力演習を大規模に拡大し、防衛力のアピールを決定した。  
戦車だけでも1個師団、火砲、対空砲、全て通常に倍以上の規模で実施された。  

 かつて無い規模での実施に見学者すらも軍オタ共も選りすぐりの者が集結していた。  

そして当日、田中角英(たなかすみひで)議員の挨拶に始まり、号砲一発演習が開始された。  
火砲が轟く。  
着弾のその時、演習場は光に包まれた。  




126  名前:  名無し三等兵  04/02/15  01:03  ID:???  


F世界  
魔王領。荒地と険しい山地に囲まれ、唯一南西に開いた海も「魔海」と称される。  
大陸の南に人間に追いやられた魔物たち亜人達が作った国。まだ歴史浅いこの国に早くも危機が訪れていた。  
東の大国「イースペリア」の聖賢王を自称する王が魔族撲滅を決定。  
各国の神殿がそれを承認。魔王領東のアディーシ平原で決戦が起きた。  

結果、魔王軍はイースペリア軍を撃退するも、大打撃を受け、戦力の再編成が急がれていた。  



127  名前:  名無し三等兵  04/02/15  01:04  ID:???  

魔王領古代魔導遺跡  

魔王カイトは焦っていた。  
先の会戦の結果敵軍を退けることに成功した。  
そして敵は戦力の回復に努めている。  
しかし、イースペリアと魔王領では国力が違う。  
国土では倍ほどだが実際は山地や荒野が占めている。  
実際の比率では3倍では足らないだろう。回復力が違う。  
ましてあいては神殿の承認を受けた征伐だ。義勇兵も加わればさらに兵力に差が出る。  

かつて自分が受けたことを思えば負けることは出来ない。  
どんな手を使ってもだ。たとえ賭のような物だとしても。あらゆる手を。  
それ故此処にいる。  

「魔王様、儀式の準備は終了いたしました。」  

イリアの声に驚く。  

「ああ、わかった。今行こう。」  

祭壇に向かい歩き出す。  
絶対に人間共の好きにはさせない_そう思いながら。  




278  名前:  名無し三等兵  04/02/16  02:12  ID:???  

>>125-127  
の続き行きます。  

かつて魔術が栄えた時代この地で様々な魔術が行使され、その助けとなる魔導具、祭壇が多く作られ、その栄光を高めていた。  
 しかし栄光の時代は過ぎ去り古代の英知は失われた。  
残されたのは使い方の知れぬ様々な遺跡、魔導具。  
そして魔族ら異界から来たりしモノの末裔、作られしモノ共。我らの祖先。  

全ての元凶たる忌まわしきモノ。  
しかしこれが在ればこそ、この召還も可能になる。  
異界から僕を招く。強き者。我らが同胞。  


魔王が祭壇の中央に立ち呪文を唱える。  
周りを幾重にも囲む魔導士がそれに合わせ詠唱する。  
響き渡る詠唱。祭壇をマナが巡り始める。  
魔法陣が輝き、遺跡に灯が灯る。  
一刻、二刻、時間時間が過ぎるにつれて増してゆくマナ。  
五刻が過ぎて詠唱が終わろうかと言う時、それは起きた。  
祭壇の一部、魔力柱に亀裂が走り倒れた。  
制御を失っていく術式に駆け寄り新たに術式を書き加える魔導士達。  
祭壇の中央であらん限りの力を振り絞り術の制御を試みる魔王。  
一人倒れ、二人倒れ、その度周りの魔導士が入れ替わる。  
周りに魔導士達が一人も居なくなった時にやっと術は制御を取り戻したように見えた。  
魔王は術を閉じ、真なる音を持って叫ぶ。  

「遙か彼方異界より来たれ!我が僕!」  

召還は発動し、魔法陣に光があふれる。  
そして光は魔法陣内には留まらなかった。  
周りが光り輝き収まるかと思えた時、祭壇中央で爆炎が立ち上った。  



279  名前:  名無し三等兵  04/02/16  02:13  ID:???  

イリアは儀式が始まってから魔法陣の外からじっと魔王を見つめていた。  
出来るならば魔王のため儀式に参加したかった。  
しかし・・・  
「なぜ私は真音魔法が使えないのだ。」  
唇を血が流れるほど噛みしめていた。  

イリアはダークエルフだった。  
魔王のため得意とする精霊魔術に磨きを掛け魔王領内で1,2を争うほどの腕前になった。しかし真音魔法は初歩すら使えない。  
400年の間精霊魔術にのみ明け暮れたためだ。  
そのため今回の儀式では他の戦士団と共に護衛として同行していた。  
術の暴走が起きた時すぐにでも駆け寄りたかった。  
しかし真音魔法が使えない者、まして大きなマナを内包する者が魔術場に入れば術を乱してしまう。  
それ故耐えた。視線をまっすぐ魔王に向け駆け出したい思いを胸に秘めて。  
術式が閉じられ光があふれた時、イリアは魔王へ向かって駆けだした。  
そして爆発。魔王が炎に包まれるのをイリアは見た。  
絶叫を上げた、それは世界に響かなかった。  
衝撃が周りに広がりそれ以外の大気振動をかき消したからだ。  
爆風に吹き飛ばされ倒れ、その勢いのまま立ち上がった。  

辺りは一変していた。  

少し離れたところにおおきな金属の箱が観えた。  
異様な格好の人間らしき者が観えた。  
空を飛ぶ金属らしき怪鳥が観えた。  
だがイリアに見えたのは破壊された遺跡の中で倒れた魔王だけだった。  



280  名前:  名無し三等兵  04/02/16  02:15  ID:???  


魔王カイトは死に瀕していた。  
先ほどの儀式で魔力はほとんど無くなっており、召還と共に起きた爆発で残りの魔力は使い切った。周りでは魔導士達が全滅していた。まともな形をした者すらいなかった。  

なんとか上半身だけ起こすとイリアが駆け寄ってくるのが見えた。  
全ての者が死んだのではなかったのだな  
そう思い視線を巡らすと異様な者達が見えた。  
召還は成功したのか・・・そう安心したところで力が抜けて倒れ込んだ。  

「魔王様!」  

イリアの声が聞こえる  
イリアが駆け寄りヒーリングを掛ける。  


281  名前:  名無し三等兵  04/02/16  02:15  ID:???  

「無駄だ。助からん。それより聞け」  

「いえ、大丈夫です。絶対に助けて見せます。それよりお体に触ります、どうかしゃべらないでください」  

必至にヒーリングを掛けるイリア。  
泣いているのか?  

「いや自分の体だそれくらい判る。それよりイリアおまえに話さねばならん」  

ヒーリングを掛けながら頷くイリア  

「俺の召還は成功したとは言えん。俺が死ねば術者に対する強制力も消えるだろう。  
もともとどの程度効果があったかわからんが。それでも遺跡の翻訳くらいは効いてているはずだ。あいつらをなんとしても魔王領に取り込め。あいつらは人間の様だがそれでも召還されたならば力在る存在だろう。人間側に行くなら我らが滅ぼされるやも知れん」  

それだけ言うとイリアを見上げた。  

「はい、必ず」  

イリアが答え、視線を上げて前を見た。  
目をそちらに向けると異様な風体の人間が近づいてきていた。  




413  名前:  名無し三等兵  04/02/17  01:17  ID:???  

>>278-281  

自衛隊指揮車内  

演習開始してすぐ、最初の砲撃がおかしかったのには気が付いた。  
レーダー反応消失、、通信異常、リンクの混乱。どれも同時に故障とは考えられない。  
何か埋まっていたのか?そんな考えが頭をよぎった。  
数秒で全てが復旧し、通信機から混乱が溢れ出た。  

「おかしい目標が見えない」「どこだ此処は」「指示を、指示を下さい」  
「富士がない!」「なんの冗談ですか、驚きましたから早く戻してください」「!!!」  

大きく深呼吸。周りを覗く。  
演習場・・・か・・・?  
ハッチを開き辺りを見る。  
いや違うな。とりあえずすべき事は・・・  
車内に戻り全車に通信を開く  

「指揮車より各小隊へ、異常事態。各員警戒態勢を取り指示を待て。送れ」  
「了解これより警戒態勢指示を待ちます。送れ」  



414  名前:  名無し三等兵  04/02/17  01:18  ID:???  

「高木三尉、本部から通信、現状把握につとめよ。以上です」  
報告を聞いて頭が痛くなってきた。  
全く、簡単に言ってくれる  

「指揮車より各小隊、戦闘に支障はあるか?送れ」  
「第一小隊問題なし。送れ」  
「第二小隊問題なし。送れ」  
「第三小隊問題なし。送れ」  
「指揮車了解。」  

「本部に通信。第一中隊継戦に支障なし。現在警戒態勢。送れ」  
「本部了解。現在索敵中。送れ」  
「第一中隊了解。」  

うぉ、索敵とか言ってるよ。大丈夫か?  
なんて事を思いつつ顔には出せないところ、士官はつらいねぇ  

「本部より通信。そちらから前方1.4km程のところで石柱が視認できるか?  
そこまでこちらから送る普通科小隊とそっちの小隊で向かえ。送れ」  
「第一中隊了解。」  

ペリスコープを覗いて・・・在る。丘の上にストーンヘンジみたいな柱が並んでいた。  

「指揮車より各小隊。何か見つけたらしい。俺らと普通科とで見てくるからしばらく待ってろ。送れ」  




926  名前:  名無し三等兵  04/02/19  01:03  ID:???  

イリアが人影に気付き周りを見ると、奇妙な服を着た集団に遠巻きに囲まれていることに気付いた。剣も槍も持たず鎧も着ていない。細長い棒は棍棒だろうか?  
こんな奴らが役に立つのか?  
そんな疑問が頭をよぎる。  

「大丈夫ですか?これは・・・こいつ等は一体どうしたんですか?」  

一人こちらに来ていた男が声を掛けてきた。  
翻訳はされているようだ。  
こいつ等とは周りの魔導士達のことだろうか?  
答えようとすると魔王様がそれに答えた。  

「ここにいるのは我らが国民。魔族、亜人、竜族、そして意志を交わせる者達。  
そして私はあなた方を召還した者だ。我らはあなた方に協力してもらいたい。  
私はもう死ぬだろう、私の代わりに彼らを、虐げられた民を守ってもらいたい。  
これは召還者としての命令であり、そして願いだ。」  

魔王様は何とかそれだけ言うと喀血した。  



927  名前:  名無し三等兵  04/02/19  01:05  ID:???  

「羽根だと!」  

魔王様の羽根を見て驚く男。  
持っていた棍棒らしき物を構えるのを見て、とっさに魔王様を抱き寄せ庇う。  

「止めろ!イリア」  
とっさに魔法を使おうとした時、魔王様の声がそれを止めた。  
見ると前の男も武器らしき物を構えを解いていた。  

冷静に冷静に自分に言い聞かせる。  
何を為すべきか・・・  
!!  
「皆、彼らは敵ではない攻撃してはダメだ」  

今、手持ちの戦力について思い至り周囲の魔力を探ってゾッとした。  
先ほど周りにいた魔導士達はほぼ全滅した。すぐ近くにいた者達も。  
だが・・・それより離れていた者達は?斥候隊や、野営地の者達は?  
遺跡で爆発が起き、見知らぬ者達に遺跡が囲まれていたら・・・  
当然、私ならば状況を確認、場合によっては奪還を考えるだろう。  
そして今すぐ近くに姿隠しの魔法の気配がする。  
もし今の魔王様を見たなら?  

「皆聞け、魔王様は召還術の暴走で負傷されている、すぐに神官を呼べ。」  



928  名前:  名無し三等兵  04/02/19  01:05  ID:???  

私の声と同時に5.6人ほどだろうか姿を現す。  
遠話の魔法を精霊魔術を試みる者もいる。  

ああ、なぜここに神官達を連れてきていないのか。  
今こそ彼らが必要なのに。  

「なるほど、『敵ではない』か。  
先ほどのあなたの言われたことだが、私には答える権限がない。  
だが上の者に掛け合ってみよう」  

先ほどの男が片膝をつき魔王様に真剣なまなざしを向けていた。  

「本部に連絡。目標地点にて負傷者および情報提供者。これより帰還する」  



103  名前:  名無し三等兵  04/02/20  02:57  ID:???  

../1076/1076745722.html#926  

突然現れた人影に驚いていた隊員達にも害意はないと判って緊張が薄れ、双方にホッとした空気が流れた。  

「本部に連絡。目標地点にて負傷者および情報提供者。これより帰還する」  

同伴してきた普通科の小隊長、草鹿一尉の声がレシーバーに響いた。  

「やれやれ、どうなることかと思ったが。  
まったく、これが『ふぁんたじぃ』ってヤツか。光学迷彩なんて代物この目で見ることになるとはな」  

「第一小隊、普通科の連中が彼らを回収次第帰投する」  
「二号車了解」  
「三号車了解」  

ハッチから顔を出すと、彼らの言う「魔王」にFVに乗り込むよう話しているのが見えた。そして爆発。魔王と話していたやつとその周りにいた2,3人も巻き込まれるのが見えた。同時に20m程離れたところに6人ほどの人間が突然現れた。  

「小隊前進」  
畜生やっぱりろくな事にならない。  



386  名前:  J隊SIDE  04/02/23  01:49  ID:???  

>>103  

「そう言えば名のってもいませんでしたね。自分は草鹿一等陸尉。  
あなたは?」  
出来る限りにこやかに敵意のないことを示しながら名のる。  

「私は魔王領親衛隊長イリア=フォレスタル。  
そしてこちらのお方が魔王領主、魔族王カイト=ヴァルナッシュ陛下である」  

ヒーリングを掛けながらも、精一杯の見栄を張っていた。  
イリアに頷き、FVに向かって声を掛けた。  

「木梨二曹、担架があっただろう、持ってきてくれ」  

「それではご案内しま−」  

再び振り向いた時、イリアさんの顔には驚きと悔恨が一瞬にして流れ、  
そしていつの間にか持っていた筒からひものような物を一気に引き抜いた。  

音のない爆発。  
視界が光と炎に覆われ・・・ほとんど熱くないことに気が付いた。  
イリアさんと魔王さん、そして自分を含む1メートル半ほどの空間だけが炎に覆われていない。  
   
何が起こったのかイリアさんは剣を抜き、辺りを見回す。  
そして先ほどの物と同じような筒を取り出し、ボタンを押し、ベルトに納めた。  




387  名前:  J隊SIDE  04/02/23  01:50  ID:???  

どうなっているんだ?  
疑問がそのまま口に出た、ハズだった。  
「−−−」  
声が出ない。いや、音がしない。  
そう言えば先ほどから無音じゃなかったか?  

イリアさんは剣で自分から観て10時の方向を指し、構えて見せた。  
急速に鎮火しつつある炎の向こうに6人の人影が見えた。  
なるほどあいつ等がやったのか。  

あいつ等にもこちらがやられてはいないことに気付いた様に一斉に行動に移った。  

三人が駆け寄り三人が歩きながらこちらに向かってきた。  
駆けてくる内二人は剣を、一人は棍棒を構えた。  

歩いてくる方は軽装だが得物はまちまちだった。  
一人は漫画に出てくるような魔法使い。杖にローブ、ついでに三角帽子。  
一人は皮のベストのような物を着た金髪美人。弓を構えてこちらを狙って来た。  
一人は普通の服の様なものを着た男。取り出したのは土瓶か?  

明らかにこちらを狙っている。  
そして我が小隊は混乱していて、こちらからは指示すら出来ず戦闘できる状態にない。  
ではどうするか?  

考える前に体は自然に89式を構えていた。  
苦笑。あえて連射にセレクタを合わせる。  
「正当防衛射撃!」  
音のない叫びを上げながらトリガーを引いた。  


388  名前:  F世界SIDE  04/02/23  01:51  ID:???  

サイレンス(静寂)の魔法だ。  
クサカ=イットーリクイの声が不自然に途絶えた。  
敵だ。隠れていたのは味方だけではなかった。  
辺りを探すとクサカ=イットーリクイの後ろに人影が現れた。  
6人、同時に火球の魔法を放った。強行偵察隊か?  

とっておきの魔力障壁の魔法筒を起動する。  
魔王様から頂いた物なのに・・・  
着弾。  
爆発。  

火球は防ぎきった。  
クサカ=イットーリクイが着弾の衝撃からやっと立ち直ったように見える。  
私に話しかけようとしてまた驚いている。  
こんな事も分からないのか・・・魔王様が命をかけてこの程度のやつなのか。  
失望を戦意に換えて剣を抜く。  

『魔王様は私が守る』その思いをのせて  


389  名前:  F世界SIDE  04/02/23  01:53  ID:???  

効果が続いている内に今度は詠唱筒を取り出し起動。  
風の障壁が出来たのを確認すると未だに敵を探すクサカに剣で指してやる。  
魔王様の前に出て敵を待ちかまえる。  

炎が収まり、その向こうに敵が見えた。  
重装戦士がいるのか・・・苦戦しそうだな。  

一尉が私の隣りに並び、武器を構えて・・・笑った。  

いけない、敵が近いというのに。  

敵があと数歩で切りかかって来るかと思った時,  
光の粒が重装戦士を貫き血煙りを上げ倒れこむ。  
あっという間に戦士も神官も前衛3人が倒れる。  
あの重防御の戦士が、回復魔法を使う神官が攻撃すらできないままに。  

愕然として振り向くと一筋の薄煙を出す武器を抱えたクサカの姿が在った。  
まだ矢が向かい、火炎瓶が投げ込まれる状況にもかかわらず、呆然としたままその姿を見ていた。  


390  名前:  名無し三等兵  04/02/23  01:57  ID:???  

今日はここまで  

今回の小物  
魔法筒・・・術者(使用者に限らない)が事前に魔力を込め、  
魔法を仕込んでおく事で一度だけ「事前に設定した魔法が設定の効果をもたらす」事が出来る。  
中に仕込んだ魔力柱もしくは魔法のロールが回転することで起動。使用者は精神力、マナ共に消耗しない。  
使用できる物は真音魔法と一部の神聖魔法に限る。  

詠唱筒・・・術者(使用者に限らない)が「事前に仕込んだ魔法の詠唱を肩代わりする」事が出来る。  
中に仕込んだ魔力柱もしくは魔法のロールが回転することで起動。  
使用者は精神力、マナ共に規定量消耗する。全ての魔法に使用できるが、使用者が使える魔法に限る。  

というわけで魔法筒は手榴弾みたいに、詠唱筒は魔法版ハヤブサの剣みたいに思っていただければOK。  

あと魔法は  
サイレンス・・・精霊魔法。一定範囲内の音を消し去る。効果範囲、到達距離は魔力を多く注ぐことで拡大可能。  
呪文詠唱の必要な魔法は使えません。  
が元々効いてる魔法はかかったままですし、詠唱が必要なければ魔法も使えます。  

火球・・・真音魔法、精霊魔法。共に効果範囲、到達距離は魔力を多く注ぐことで拡大可能。  
燃える物がそこに在れば燃え続けます。威力は基本的にはベアリング抜いた手榴弾くらいを想定してます。  
離れると痛くないです。  

魔力障壁・・・真音魔法。バリヤーです。基本的には魔法を遮断します。  
より高位の魔法なら物理攻撃も遮ります。効果範囲、効果時間は魔力を多く注ぐことで拡大可能。  
今回出たのは使い捨て魔法防御。  

風の障壁・・・精霊魔法。バリヤー2。風の防御飛び道具系の魔法(火球とか)矢をそらしたり出来ます。  
所詮風なので剣なんかは防げません。効果範囲、効果時間は魔力を多く注ぐことで拡大可能。  
今回のは自分で起動してないので調節できません。  




469  名前:  F世界SIDE  04/03/01  00:51  ID:???  

クサカは一瞬何か地面に落ちた物を見て手を伸ばしかけ、思い出したように持っていた武器に何かを付け替えた。  
私が見ているのに気付くと敵の方を指指し何か身振りで・・・  

そうだまだ残っている。  
気が付いた時巨大な金属塊が横を通り過ぎ敵への視界を遮り、音が戻ってきた。  
魔法が切れた?いや、こちらの者が解除したのか?  

クサカが目の前の轟音を立てるゴーレムらしき物に駆け寄ると  
「正当防衛射撃」と声を上げたのが聞こえた。  
魔王様に駆け寄り再びヒーリングを掛ける。  

ああ、今の魔法でマナが薄くなっている。  
ふさがり掛けた傷口が開いていた。  
顔色も悪くなっているようにも見える。  

「大丈夫です。絶対に助かります。もうすぐ野営地から神官が着くはずです。  
そうすればこんな傷すぐに直ります。」  


470  名前:  F世界SIDE  04/03/01  00:52  ID:???  

魔王様に話しかけながら必死でヒーリングを維持する。  
涙があふれ、かすむ視界の中で苦笑を浮かべ  
魔王様は私の手を押しやり言った。  

「もう私のことは良いんだ、イリア。あとのことは頼む。」  

気が付くと周りに仲間達が集まってきていた。  

クサカも私の向かい側で魔王様を見つめていた。  

「し、幸せにな・・・」  

魔王様の言葉の後半は聞き取れなかった。  
それでも最後まで私たちのことを気に掛けて下さったのだと私は信じた。  

魔王様を横たえ姿勢を正す。  

「魔王様に敬礼!」  
私の声に皆は右拳を胸に当て敬礼を贈った。  
草鹿達は見慣れぬ右手を頭に当てる姿勢で_おそらくは彼らの礼なのだろう_贈ってくれた。  

神官達が魔王様を国旗で覆い、担架に載せ帰ろうとした所を呼び止める。  

「待て、まだ城には帰らないぞ、こっちに魔王様を。  
私と魔王様の運び手を含めて・・・8人残れ。他の者は野営地を撤収して城へ帰り報告を」  

「クサカ=イットーリクイこれからあなた方の将に会い、話し合いがしたい。  
あなた方もこのままではいろいろと都合が悪いだろう?そう言ったことも含めた話を詰めておきたいのだ。」  



793  名前:  J隊SIDE  04/03/05  02:15  ID:???  

ったくいきなり俺たち悪者かよ・・・」  

火炎瓶やら弓やらで攻撃していた奴らはすぐに制圧した。  
それは良かったが話が妙なことになっていると気付いたのはそのすぐ後だ。  
助けたのは魔王で、じゃやっつけたのは勇者かよ。まぁそんな単純な話では無いようだがどうにも気にくわない。  

とりあえず現状報告を纏めて本部に連絡したがどうなる事やら。  

草鹿一尉から連絡があったのは本部との通信が終わって暫くしてからだった。  
『魔王』そう、魔王が倒され、その遺体を禁の縁取りの黒い布_後で聞いたら国旗だった_でくるまれるのを横目に周りの警戒をしていた時だ。  

「高木三佐、魔王領の方が同行を希望されているのですが、どうしましょうか?」  

「どうしようかって言われてもこっちで判断できる事じゃないだろ。一寸待ってろ」  

「こちら調査隊一号車、本部応答請う。」  

「こちら本部、どうしたまた問題か?」  

「ええまぁ・・・魔王領の方が八人、こちらの指揮官と事情説明とこの後の協議のためそっちでまず話がしたいと。連れて行って良いですかね?」  

「・・・・・・また面倒な、ちょうど陸将と議員の両方が話し合ってた所だ一寸待て。」  
「了解。」  

陸将も災難だな。  
田中議員だけならまだしも脳中議員まで来るとなると状況無視したこと言われるだろうしな、文民統制ってのも善し悪しだな。  



794  名前:  J隊SIDE  04/03/05  02:21  ID:???  

キューポラから覗くと周りのあちらさん側の移動準備はほぼ終わっているようだ。  
こっちを見ているのがちらほら居るが、さっきほどの人数は見えない。  

「こちら本部、調査隊一号車」  

「こちら調査隊一号車、どうなりましたか?あちらさんはこっちの返答待ちですよ」  

「その前に一つ確認するがこちらの勢力はほぼ中世のに準ずると言うことで良いのだな」  
「はい。魔法なんてのを考えなければ、ですが」  

「それならばこちらに来て欲しいそうだ」  

「良いんですかそんなに簡単に?招いておいてやっぱり止めっての話ですよ」  

「良いんだよ。このままじゃどうにもならん。情報なりなんなりきっかけがなければ話が進まん。  
悠長に会議してられる状態じゃないんだきっかけになればそれで良いって事だろ。」  

「了解した。これより帰還する。」  



189  名前:  F世界SIDE  04/03/08  02:35  ID:???  

>>#../1077/1077724125.html#793  

クサカの乗ってきた大きな箱に乗りこみ、中を見回す。  
座る場所があり、周りをよろわれている。なるほど装甲馬車の様な物か。  

「すいません少し狭いかも知れませんが暫く我慢してください。」  

クサカと部下らしき者達が入って中は我らを含めて14人。  
床に座っている者もいる。ゴォッッと音がしたかと思うと動き出したように感じられた。  
中を見たり触ったりしながら揺られているとすぐに止まるのを感じられた。  

「それではこちらです」  

クサカが立ち上がり扉を開けるとその向こうに今乗っている物と同じようなものが何十と並んでいるのが見えた。  

「あれは・・・今乗っている物と同じ物ですか?」  

「はい。96式といいます。自衛隊の誇る装備の一つです。」  

キュウロクシキから降りると草鹿と同じ制服を着た者達が数百。  
そしてその周りに色とりどりの服を着た庶民らしき者が集まっていた。  
千、いやそれ以上か。  
考えられない人数だった。  
一つの町に匹敵する人数がそこにいる。  

「・・・イリアさん?どうしました?」  

クサカが声を掛けるまで呆然としていたようだ。  

「いや、何でもありません。それであなた方の将はどちらに?」  




190  名前:  名無し三等兵  04/03/08  02:36  ID:???  

案内されたのは天幕  
そこには将らしき者と上級書記官だろうか軍人らしくない男が二人、卓を囲んで居た。  

「失礼します。草鹿一等陸尉ただいま魔王領親衛隊イリア殿をお連れしました。」  

3人がこちらを向き直り将らしき者が歩み寄ってきた  

「ようこそ魔王領の方、私は演習部隊を預かる山下と申します。こちらが国会議員の田中氏、脳中氏です。」  

ヤマシタが右手を差し出す。  
なんだろう?  

「ああこれは失礼。こちらでは握手の習慣がないようですな。  
私たちは『手に何も持たないことを示し攻撃の意志がないことを示すため』に握手という作法があるのですよ」  

私の態度から察したのかそう説明するヤマシタ  

「こちらこそ失礼いたしました。私は魔王領親衛隊長イリア=フォレスタル。  
魔王領主、魔族王カイト=ヴァルナッシュ陛下の遺志を継ぐ者として参りました」  

「失礼ですが、それは貴方が貴方の国、魔王領を代表して出向かれたと言うことですか?」  

「はい。とは言っても未だ正式なものというわけではありませんが。  
正式な取り決めの前にお互いに情報交換と現状で出来る支援、そしてその代価と。  
そういった早急に協議が必要なことをまず決めておこうと言うことです。」  

「判りました。そういったことであれば全て私が決定するわけにはいきませんので・・・」  
「儂らの出番というわけだ」  



555  名前:  田中魔王  04/03/12  01:52  ID:???  

イリアさんを天幕に案内して外に出た。  
俺では聞けない様な話なんだろう。肩を叩かれ出ていくよう促され、  
すぐに観客の警護にかり出された。  

その外側でドーザーが造った仮滑走路にF−4とF15が3編隊6機づつ留まっているのが見える。  
全機降りられたんだな、良かった。  

振り返れば子供達が集まって遊んでいる。  
大人達はどこか不安そうに集まってひそひそ話をしているのとは対照的だ。  
近くでこっくりさんを始める子供もいる。  

「こっくりさんこっくりさん・・・」  
何とはなしに見ていると一人の上に狐か犬か、そんな影が浮かんで見えるような気がする。思わず目をこすり見直してもまだ見える。  

「・・・マジか!?おい源田ちょっとあそこの子供達を見てくれ!その上に犬みたいな影が見えねえか?」    

バディを揺さぶりながら振り向かせようとする  

「また小隊長そんなこといっても騙されないッスよ。」  

「良いから見ろ!!」  

「ってなんじゃこりゃ〜!!」  

何とか振り向かせて見るとさっきより濃くなっている様子。  



556  名前:  田中魔王  04/03/12  01:54  ID:???  

「ふふふふふ、お困りのようですね。」  

気が付くとすぐ近くにひょろ長い体型に白一色の上下。  
町で見かけたら警察に通報されそうな男がこちらを向いて両手を頭の上で交差させバレエの様なポーズを取った男が立っていた。  

瞬間的に殴り倒したくなったが何とか堪えて声を掛ける。  

「貴方は?」  

「ひ・み・つ(はぁと)」  

「喧嘩売ってんのか?」  

殴ろうとした源田を取り押さえながら聞き返す。  

「まさか。私はいつもステキなナイスガイといわれる男。  
そのようなことがあろうハズもない。  
それはさておきあそこの影ですが。」  

暴れる源田を放したい誘惑に駆られたが話の後半を聞いて気を取り直した。  

「あれが何か判るんですか?情報提供をお願いします」  

「あれはこっくりさんですよ。狐狗狸さん。  
みんなやったことあるでしょう。あんなにはっきり形を取ることはないけれど。  
『日本は言霊の幸う国ですから』」  

いちいち決め台詞っぽい所でポーズを決める男  


557  名前:  田中魔王  04/03/12  01:56  ID:???  

子供達の方を見ると狐狗狸さんを終えようとしている処だった。  

「狐狗狸さん狐狗狸さん、どうぞお戻り下さい」  

狐狗狸さん(?)は子供達の頭越しに中をのぞき込み、ふっと消えた  

「ありがとうございました」  

子供達に駆け寄り声を掛ける  



559  名前:  田中魔王  04/03/12  01:58  ID:???  

「君たち大丈夫か?何ともないか?」  

「なんだおっさん心配性だなぁ。今時狐狗狸さんでこんなに心配するやつなんていないぜ。」  

「今、君たちの上に狐狗狸さんがいたんだよ。」  

「そんなの見える訳無いじゃん。行こうぜ」  

そういい残すと子供達も走っていってしまった。  
一体どうなっているんだ。この世界は  
ただ俺はそこで立ちつくしているしか出来なかった。  




851  名前:  田中魔王の中の人  04/03/14  23:52  ID:???  

思いついたは良いが0.5秒で却下したSS案投下。  

1/2BADEND  

異世界に召還された自衛隊ら、領主との交渉を行って2日目。  
異世界の味付けになれないと愚痴をこぼす使節。  
食べても食べてもお腹が空く。  

そこに科学者らからの報告が!  
この世界の生物は「D型アミノ酸で出来ています」  

どんなに食べても餓死する。  
栄養に出来るのは自分たちのみ。  
食人を繰り返し最後には一人になってエンド。  

どうやっても話が展開しない上、自衛隊が自衛隊として影響出来るほど長く存在出来ないためボツ。  
そういえば「戦闘妖精雪風」でも似たような話あったな  


生化学まめ知識  

アミノ酸にはL型とD型が存在しこの世界の生物は「L型アミノ酸のみで構成されている」ために  
酵素によっては分解出来ても、吸収出来ないため死にます。  
 ブドウ糖(C6H12O6)位なら吸収出来るけど砂糖だけじゃ死ぬし。  



883  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/15  03:48  ID:???  

>>555-559  

「それでは今日はここまで!ばいび〜〜〜!」  
一声残して人混みに向かって駆けだしていく。  

「そう、今日のところはね。」  

人混みに紛れ駆け抜ける瞬間姿を変える。  
黒髪は金髪へ  
白い上下は黒のスリーピースへ  
ふざけた表情は理知的な表情に  
瞬時に変化し歩調を落とす。  

後ろで騒ぐ声が聞こえる。  
そしてすぐに先ほどの子供達が横を駆け抜けていった。  

今回はどうなるかな。  
前回は何も出来ずに立ち枯れていった。  
その前は世界から反発を受けて抹消された。  
せいぜい今回も楽しませてくれたまえ。  


884  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/15  03:50  ID:???  

自衛官が一人あたりを見回しながらこちらに向かってくるのが見える  

「何かあったんですか?」  

突然「外人」に声を掛けられて驚きを隠せない様子の男は気を取り直すと答えた  

「そこで不審な人物がいたそうで探しているんですよ。  
こちらに黒髪に白の上下の怪しい男を見かけませんでしたか?」  

「残念ながら」  

「そうですか、それでは失礼します」  

自衛官がまた駆け出し、誰もが視線をはずしたその瞬間、  
影に沈みその場には影だけが残っていた。  




391  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/19  01:40  ID:???  

草鹿一尉  
「伝達は以上で終了だ。配置につきたまえ」  

狐狗狸さん騒動が終わって暫くしたところで普通科の小隊長クラスの招集があった。  
どうやら会談は一段落着いたようだと思いながら本部に行ってみると、  
会談結果の簡単な説明と観客として来た一万を超える民間人に演説の警護を仰せつかった。  
最悪なことに配置は観客席の真正面、仮設の演台のド真ん前。  
つい愚痴の一つも言いたくなる。  

「何で俺ばっかりこんな目に遭うんだ。俺が何かしたのか?  
何かあったら真っ先にやばい所じゃないか」  

当然、『威圧感を与えないために装備は小銃のみ』ときた。  
判ってはいるが心細いことに変わりはない。  
頼みは田中議員が巧く説明して納得してもらうことだけど……難しいよなぁ。  
思わずこぼれるため息。足が重い、まったく。  

早足で歩きながら気持ちを切り替える。  

仮設空港近くの担当区域に戻るとすぐ小隊を集め、説明をして配置に付く。  
見張りは機甲部隊が引き次ぐとのことだったが……来たのは74式戦車だった。  
随伴歩兵無しで、しかも見張りなんて出来るのか非常に疑問だが、手持ちを考えると仕方ない事なのだろう。  
演習よう特殊編成の一個師団でもともと普通科も少ない上に演説の警護に着くんじゃ人手不足にもなるだろう。  
適材適所とはいかないと納得するしかない。  


392  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/19  01:42  ID:???  

「これより、田中議員より現状の説明があります。ご来場のみなさま、一度席にお戻り下さい」  

来場者は先ほどからハンドスピーカを持って走りながら知らせる自衛官のおかげで観客席に戻りつつあった。  
今駆けていった男もさっきから走り通しで叫ぶ声も疲れが見える。  


視界にの端に田中議員が目に入った。  
そろそろか?  チラチラ横目で即席の演壇に立つのを見ていた。  
壇上に立った田中議員はごく平静で、まるで何事もなく閉幕を宣言するようなそんな様子だった。  
ゆっくりマイクに向かって歩み寄り、何も言わずに立っていた。  
ざわめきが静かになっていく。  
一瞬、静かになった時、やっと議員は話し出した  

「みなさんにお知らせしなければならないことがあります。  
薄々お気づきでしょうがここは今までいた世界とは違う全く別の世界になります。  
どういった理由か不明ですが演習場にいた人、装備がこの世界に移動しております。  
またこの世界が中世に非常によく似た社会を持つということは自衛隊の偵察の折りに判明しております。」  

それだけ言うと田中議員はいったん口を切った。  
観客席が一斉にどよめく。  
怖い。もしこっちに矛先が向かったらと思うとゾッとする。  
ただ、ただ、議員が刺激しないように巧く纏めてくれることを祈る。  
そしてざわめきが静まりはじめると再び議員は話し出した。  



393  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/19  01:43  ID:???  

「先ほど自衛隊の偵察を行った際、幸運にもこの世界の住人とコンタクトを取ることが出来ました。  
またその際にこの国の住人とのコンタクトの時に起こった偶発的戦闘に巻き込まれやむなく自衛のための戦闘を行いました。  
結果、そのため非常に友好的な会談を持つことが出来ました。  
現在この地区を治める国、その国が戦争状態にあり、非常の事態となっております。  
現段階において選択出来ることは多くはありません。  
一つはこの国に協力して支援を取り付けること。  
一つは近隣の戦争状態にない国に避難し支援を求めること。  
一つはここに留まり同様の事態を待つことです。  

 食料は現在、後2日分ほどしか確保出来ません。  
また現在、自衛隊が保持する兵器の補給は不可能となっています。  
現実に即する案としては最初の戦争状態であるこの国に協力関係を築く以外には路はありません。  

みなさんにはこれから不自由になるでしょう。  
危険もあるでしょう。そして我々に協力していただく事になるでしょう。  
しかしながら日本人として、誇りを持って、この世界で在るために、一致協力して対処したいと考える次第であります」  


394  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/19  01:45  ID:???  


再び一区切りを置いた田中議員に対し、観客席は先ほどより大きなどよめきに包まれた。  
しかし、暴動になることはなく何とも言えない熱気が渦巻いているように思えた。  
田中議員はこの後、現状での注意やこれからの予定を大まかに話し最後にこう切り出した。  

「以上のことは我々議員と自衛隊幹部らの会議で決定したことです。  
納得出来ない方もいらっしゃるかと思いますが、  
これに勝る現実的案無き場合は自己責任において他国への避難等、自由にしていただいて構いません。」  

それだけ言うと田中議員は一礼して演台から降りて行ってしまった。  
結局、騒ぎは起きなかったし、必要だと思うことは伝達出来たと思う。  
現状の理解もしてもらえたとも思う。しかし。  
……きつ〜、何も最後にそんなこと言わなくても。  



579  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/21  02:54  ID:???  

結局、演説の後大きな騒ぎもなく、○○新聞等の総火演に取材に来てたマスコミが愚痴るだけで、「自分たちだけで他国に避難して、自力で保護を求める」なんて奴は出なかった。  

その替わりに。  

「草鹿一尉、大至急本部へお越し下さい。」  

事前の指示通り警護が終わり次第、すぐに元の警戒任務に戻る。  
そのつもりだったところ本部の方から伝令らしき二士が走ってきた。  

「部下達は行かなくてもいいんだな?」  

やっとの事でプレッシャーから解放された我が小隊は  
そこにしゃがみ込んでいる者、隣り合った者と思わず抱き合って喜ぶ者、曹から指示を受けている者と様々だった。  

「はい。草鹿一尉と聞いております。」  
「判った。源田、後は頼む。」  
「判ってるッスよ。行ってきてくださいッス。」  

伝令に連れられて本部へ書けて行くと途中から声が聞こえてきた。  
そして声の方には人混みが。  

「放してくださいよ。怪しい者じゃないよ。良いから田中議員に会わせてよ!」  

誰かが本部前で騒いでいるようだ。  
何とか隙間を拡げて本部に入り報告。  

「草鹿一尉出頭しました」  



580  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/21  02:57  ID:???  

その声が終わるか終わらないかの内に、外で暴れていたらしい男が入ってきた。  
何というか重量感あふれる体躯に、森林迷彩のパンツ。  
汗をかなりかいていて、手にはノートパソコンを持っている。  
というか多分一言で言い表せる外見の男が。オタク(太)。  

「こんな事もあろうかと!そう、こんな事もあろうかと!  
いつ異世界に飛ばされても良いように、タイムスリップしてもいいように各種基礎データからF8Fの設計図まで!  
役立つデータをここに満載して持っています。」  

満面の笑みを浮かべ手荷物パソコンを掲げる乱入者。  
…………っっはっ。意識が飛んだか?  
我に返るとほぼ同時に山下陸将の声が掛かった。  

「彼を拘束したまえ。錯乱しているようだ」  

「このキチ○イが!」  
「おとなしくしろ!」  




581  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/21  02:57  ID:???  

警護に配されていた陸士がパソコンを確保し、二人で男の腕を極め、無力化する。  
まぁ、妥当な判断だよなぁ?  
ちょっと正気を疑うし、ほっといても面倒だし、関わり合いになりたく無いし……な?  
何となく近寄りがたい気がして既知GAYっぽい奴を大回りに避けて……  

「まぁ、待ちたまえ。君の名前は?」  

床に押さえられた不審者に、奥に座っていた田中議員が立ち上がり声を掛けた。  
そのまま押さえられた男の前まで歩いていく。  

「辻  晴武(つじ  はるのぶ)といいます。ぜひアドバイザーとして置いて下さい」  

「今すぐ返事というわけには行かないが、良いかね?  
その気があるなら待ってる間に君の現状に対する考察、対処案など纏めておいて欲しい。」  

「はっ、はい!喜んでやらせてもらいます!」  

田中議員は立ち上がり、俺の方を見ると一瞬だけ笑ったような気がした。  
すぐにまた元の場所に戻ったが、陸将となんか相談してるよ……嫌な予感がしてきた。  

「早く、早く纏めたいんだ。ささっと行こうよ。」  

不審者、もとい辻とかいう奴は本部の外に連れ出され。  
というか自分でその場所まで走り出しそうだったが  

「……えー、改めて、草鹿一尉出頭いたしました。  
それで今度は何をすれば良いんですか?」  





200  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/26  02:17  ID:???  

「ウチらの世界の常識がこの世界の常識と違うのは判るな草鹿一尉?  
でもどれ位違うか判らないんで大まかに纏めて欲しいんだ。  
実際に戦闘をして魔法を体験したのは君らの小隊だけだし、  
何よりも彼女らにうち解けてるみたいだしな」  

そう切り出されたのは騒ぎの15分後、本部天幕の隅でのことだった。  
言い出した二佐自身も頭をかきながら言いずらそうだったが。  

「そうは言われましても……魔法なんて、ホントに突然で、いまいち判らなかったんですが。」  

「それでも体験したことに変わりはない。書記官というか事務の子一人付けるから渡せる限りの情報は出すよ。  
それにさっきの奴、あれも入れるから管理よろしく」  

さらっと聞き捨てならないこと言いましたね。  
それと人と話す時は視線を合わせて話すよう言われなかったんですか。  
さっきから目が泳いでこっちをまともに見てすらいない。  

「一寸待ってください。何でアレを一緒にするんですか!?  
仮にも交渉に出す資料を纏める部署なんでしょう?」  

テーブルに手を付き身を乗り出して声を張り上げる。  
周りの視線が集中するが声の主が俺だと判ると納得したように元の作業に戻る。  
畜生、確定済みかよ。  



201  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/26  02:18  ID:???  

「いや、さっきノートパソコン調べてみたら技術資料としても使えるようなモノが多く入ってたんだ。それに本人も言動はアレだが知識はあることが判った。  
『熱意は余るほどあるし、常人とは違う発想で役に立つかもしれない』という田中議員のありがたい言葉でさっき決まった。  
キチ○イと刃物は使いようってやつさ」  

「それ間違った格言ですよ」  

「判ってる。洒落ただけだ」  

「判りました。どうせ拒否出来ないんでしょうし、やらせて頂きます」  


そんなやりとりが一時間も前にあったわけですが……  
イリアさんとお付きがもう二人F世界側からやってきて、早速会議開始。  
お互いに質問し合い、大まかの確認を済ませた所、衝撃の事実が!  

「あのキチ○イが一番役に立ってました!」  

妙にポイントを付くんだよなぁ。  


202  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/26  02:19  ID:???  

例えば  

・溶鉱炉はないらしい  

・魔法使いは珍しい存在だが、各国人口比で三十人に一人位はいるらしい。  

・さらに真音魔法:精霊魔法:神聖魔法の比率は2:4:4程度らしい。  

・この大陸(竜の大陸)では共用語が話され、読み書き出来るのは1/3程度  

・他にエルフ語、古語(真音言語)、竜語、etcが有り、魔王領では共用語が公式に使われていること。  

・魔王領は人口(?)全種族併せて約30万、内訳  
人間は10万程度、ゴブリン+オークで16万、エルフ(黒含む)、  
ハーフエルフ+ドワーフで2.5万、残り1.5万で竜族、魔族、その他友好的種族が含まれる  

・ほぼ中世の世界に相当するが所々魔法の影響で進歩している部分と退行している部分があるようだ。  
例えばこの世界には火薬があるのに火砲がない。  
また魔法労働者(Sorcer  Worker)によって鉱脈の探索、鉱石精錬の補助、戦闘要員等が行われている。  

・この辺り強力な動物や危険な地形、毒を持つ植物が多いらしい。  
まぁゲームでもラスボス近くの町はそんな感じだしな  

というわけで今さっき、一時資料を纏めて出した訳ですが。  
みんな一段落付いてホッとしたような雰囲気が漂っていた。  
さっきから辻の奴はにやにやしっぱなしでノートパソコンに向かっているし、  
イリアさん達は会議の最初にもらった紙にメモ書きを纏めている。もっとも最初は紙とボールペンに驚いていたようではあったが。  



203  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/26  02:21  ID:???  

何となくイリアさんを眺めてふと思ったことが口に出た  

「そういえば、この国、今戦争中なんですよね?何が原因なんですか?  
私たちでモノによってはどうにか出来るかもしれない」  

俺の言葉にイリアさん達は驚いたように顔を上げ、何とも言えない表情で答えた。  

「原因ですか?色々ありますが……  
私たち魔王領側は我が国民への不当な差別、迫害。  
および北部ドワーフ連邦などへの内政干渉…これは我が国への禁輸を押しつけることに対する抗議です。  

そしてイースペリア側は我が国民が国境線を越えて傷害、盗みを行い、国民を害しているということ。  
犯罪者が我が国に入りそれを匿っているということ。  
最後に我が国の信教に対する非難です」  

「ずいぶんと多いんですね」  

俺の答えにあからさまな作り笑いを浮かべてイリアさんは答えた  

「ええ、向こうのいってることは我が国建国当初から言われている事ですし、  
まぁ言いがかりみたいな物ですね。おそらくは我が国が順調なのが気に入らないってことでしょうね。  
ただこちらとしても完全に白とは言い難いのが問題ですね」  

「つまり解決は難しいと?」  

「そうですね。しかし身の証を立てる意味でも負けられません」  

そこまで言ってイリアさんは俺の方をじっと見た。  
そんな目で見られても……困る。  

「えーと、そうですね。私たちにも他人事じゃないですし……そうだ前の決戦の時はどんな風だったんですか?」  



204  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/26  02:25  ID:???  

次回  
F世界会戦に続く  
なんでかっていうと考えてたネタが一寸前にぽろっと出たので……  

ついでにタイムスケジュールぅ!  
0700  F世界で魔王、儀式開始  
1200  F世界召還  
1240  自衛隊魔王と接触(この間、別の偵察隊はまだ未帰還で索敵中)  
1245  自衛隊戦闘開始  
1255  戦闘終了  魔王死亡  
1300  イリアさん魔王城に連絡筒を送る。乗車  
1320  演習場(?)着  
1400  会談終了。イリア再び魔王城に連絡。食料+毛布等、輸送準備開始  
1430  田中議員演説開始  
1500  演説終了  
1515  草鹿本部呼び出し  
1540  史料編纂委員会(仮)兼F世界ご一行さま警護隊結成(草鹿)  
         会議中  
1700  第一次資料提出(草鹿)  
1705  イリア語る  

……あんだけ続けてまだ夕方かよ!  
最初は時間飛ばしにくいから仕方ないんだが一日経ってねぇし。  



611  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/30  00:52  ID:???  

>>200-203  
F世界戦闘編  

私たちとクサカ達との違い、それは先ほど短い会議で分かることすら驚くほど多く、衝撃的だった。  
私たちのために、彼らのために今は。  
クサカを、ツジを、そして最後に傍らのゼナムをゆっくり見回し、話し出す。  

「先ほど開戦の理由について話しましたが、それが理由で戦争に至る事はほとんどありませんでした。  
ある程度はどこの国も、人間の国でも行われている事で、  
私たちも半ばいつもの本題の前の前置きとしか考えませんでした。」  

 私たちの国は多くの種族が暮らしておりますが、元々はこの大陸の流刑地でした。  
耕地になる場所はごく少なく、ほとんどが荒れ地で迫害を受けて流れてきた者達が建てた国です。  
それ故その技を生かした加工や、人間には難しい採掘などで食料を購うために季節が巡るごとに近隣諸国と会合を持つようにしています。  
お互いあれこれと言い合っては有利にことを進める。  
そんな一幕と思っていたのです。  

しかし、イースペリアは我が国に一方的な通達をし、通商断絶。  
北部ドワーフ連邦と南部商工ギルドにも同様の対応を取るようの言い出したのです。  
結局、会合は我が国にイースペリアが宣戦し、我が国がそれに対応して宣戦。  
実質他に何も決まらないまま閉会しました。  

イースペリア側が軍を取り纏め、出陣したのはそれからすぐの事でした。  
明らかに動きが早く、事前の準備があったと思われます。  
我が国でも迎撃のため軍を編成し僅かに遅れて出陣しました。  


612  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/30  00:53  ID:???  

イースペリア軍は  
総勢1000を越えるの大軍で内訳は騎兵150(内ペガサス30)、魔導兵100、ゴーレム15、歩兵が800程でした。  

対して我が軍は840。  
内訳は騎兵100、魔導兵100、ゴーレム20、歩兵600、魔獣兵、竜兵併せて40となっていました。魔獣兵や竜族の者は少なく見ても実質、兵4,5人の働きはするのでほぼ同等の戦力になります。  

イースペリア軍が僅かに国境を越え我が国に入ってきた時点で、お互い先触れを出し、  
決戦は魔王領東のアディーシ平原で行われました。  

平原に着いたのは夕刻近くなってから。  
その日はお互い陣を張り明朝の決戦を決めた上で野営し、明日に備えて英気を養ったのです。  

明日5の刻、野営地を離れお互い布陣しあった所で、我が国の軍使がイースペリアの非道さを訴え、相手も同じように我が国を罵ってきました。  
陣立ては基本的にはこの通り、これに魔導兵が必要に応じて配置された。  
相手方もほぼ同じ陣です。  


613  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/30  00:54  ID:???  

←敵  

ゴ  騎兵  
レ  騎兵  
ム  歩兵  歩兵    
ゴ  歩兵  歩兵    
レ  歩兵  歩兵    
ム            
ゴ  歩兵  歩兵    
レ  歩兵  歩兵  本  
ム  歩兵  歩兵  陣  
ゴ                
レ  歩兵  歩兵    
ム  歩兵  歩兵    
ゴ  歩兵  歩兵    
レ  騎兵  
ム  騎兵  

←敵  




614  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/30  00:55  ID:???  

ゴーレムは各国多少差異はありますが基本的に  
5m程の高さで鋼の人型、腕は長め、足は短め。  
騎馬突撃が防げる程度の厚みを持った中空構造で内側に中枢魔法装置を持ちます。  
武装は片手に弩  (いしゆみ)反対の手に近接武器が基本です。  
マナが無くても稼働出来るようなっている替わりに連続で一刻(二時間)  
弱、全力稼働で半刻程度の稼働時間に限られる。  
運用に魔導兵3名程度の魔力を消費します。  

戦場に於いて兵として、投石機として、馬防柵として、掩体として活用されます。  

魔導兵は便利に使われる事が多い兵です。  
魔法攻撃および防御は魔導兵の魔法使用回数の許す限り行われる事が多いです。  
が、一回は使用回数を残して備えるのが常識です。  
 攻撃に多く使えば相手の攻撃を受けた時に被害が多く、防御に多く使えば効果が薄くなります。  
結局数が大きく上回っていない限り大差なく終わります。  
また、飛兵(ペガサス、ドラゴン、グリフォン等)の攻撃に対処出来る兵でもあります。  

弓兵という兵科はなく歩兵が兼ねます。  
重装歩兵は竿状武器+大盾+近接武器  
軽装歩兵は弓+盾+近接武器  
を装備します。  




615  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/30  00:56  ID:???  

騎兵  
機動力を生かし一撃離脱を繰り返します。  
竿状武器+短弓(+近接武器)  
いわゆる騎士とは違い、騎兵槍での突撃は行いません。  
あくまで「強力な騎馬戦士」であり、ゴーレム部隊以外に対処出来る兵科です。  

飛兵  
数は少なく補充も難しい兵ですが最速の兵で、かつ防御の難しい兵です。  
対抗手段は限られ、飛兵同士で当たるか、魔法攻撃か、ゴーレムのいしゆみを利用した大量同時射撃以外では反撃がごく難しく効果が薄くなります。  
 攻撃手段は飛兵自身の火炎弾、投石、投げ槍、弓がありますが弾数が限られ一過性の攻撃になりやすい反面、  
使いようによっては戦局が動く兵科です。  

通常であれば  
まずお互いに弓、ゴレム装備石弓または石弾、魔法攻撃の長射程攻撃のやりとりから始まり、盾、ゴレム、防御魔法でお互い防御し合います。  

次いで飛兵があればこの時投入される事が多いです。  
同時に騎兵の投入。  
ゴーレムも突撃させる事がありますが、防御に残す事も多いです。指揮官次第ですね。  

お互い近づきながら陣に乱れが出た時点で歩兵の投入。  
戦果の拡大や防御に使われ、この時点でほぼ全ての兵が戦場に投入されます。  
騎兵が走り、魔導兵が引き、ゴーレムは時間の許す限り稼働します。  

趨勢が決まれば、時間の許す限り、追撃が行われます。  
城塞近くで決戦が起こった時は攻城戦となることもありますが、城に入られた時点で兵を引くのが一般的です。  

日が落ちるか、城に入るか、降伏を認めるかした時に停戦し、  
翌日に勝敗、決戦の行われた場所、被害、人質の有無を鑑みて要求を呑む、または取り下げるといった政治に戻ります。  


616  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/03/30  00:57  ID:???  

今回は兵力でほぼ同程度、順当に推移すれば我が方優勢か引き分ける形で、  
結果イースペリア軍は引き上げ、国境付近の警備強化の約束と禁輸の取り消しといった予想で始まりました。  




777  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/02  02:20  ID:???  

我が軍は三日に渡る強行軍を行い、国境付近での迎撃に成功しました。  
野営をして我が軍は英気を養い明くる日の決戦に備えたのです。  

明けて5の刻、我が軍は布陣を終えて200m程の距離を置いて敵軍と対峙しました。  
魔王領の黒旗がはためき、揃いの鎧を身につけた兵が整然と立ち並ぶなか、  
例によってお互い罵りあいから始まりました。  

「あなた方魔王領は我らが聖賢王が哀れに思い、自由にさせていたにもかかわらず、  
それを裏切り我が国民に害為した。また邪神を奉じ邪な性を現した。その罪許し難く征伐を為さん。」  

「あなた方イースペリアは聖賢王を自称する王を抱きながら、  
虚偽を持って軍をたて我が国に、近隣の国々に武力を持って無理を通さんとする。  
これを破りこの地にやすらぎをもたらさんとす。」  

「「いざ、武を以てこれを問わん」」  



778  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/02  02:21  ID:???  

互いの軍使の声と共に百人長は右手を上に差し上げた。  
軽装歩兵の長弓が一斉に引き絞られ、緊張が高まる。  
軍使が自陣に駆け込み、それに僅かに時間をおいて戦闘開始を告げるラッパが鳴り響く。  
それとほぼ同時に矢が放たれる。  
腰の矢筒から矢を引き抜き、つがえ、一歩踏み出すと共に胸当てまで引き絞る  
次から次へ矢筒から引き抜いてはつがえ放つ。  
狙いもなくただ、敵陣へより多く送り込むそのために。  

次々に放たれる矢は放物線を描き互いの陣に降り注ぐ。  
矢除けの紋も気休めにしかならない。  
魔法は効果を求めるならばそれに見合う代価を必要とする。  
そしてこの矢の雨から完璧に身を守るには倒れるまで気力を振り絞っても足りるものではない。  
よほどの業物でなければそれは為しえず、そして戦闘の前に気力を根こそぎ奪われるような装備を兵に許す事はないからだ。  
盾を上に掲げるも合間を縫って矢が突き刺さる。  
じりじりと歩み寄りながら、死体を踏み越え、倒れ伏す者を置いて。  
ひたすら弾雨の中を進みゆく。槍を抱え、大盾をかざして、攻勢を待つ。  
今はまだその時でない。  




779  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/02  02:22  ID:???  

ラッパの響きと同時にゴーレム付きの魔導兵は背中のハッチに手を伸ばし、一挙に魔力を送り込む。  
めまいがするほどの疲労感と引き替えの魔力がゴーレムを起動させる。  

今まで「物」だったゴーレムが「者」に、今だけは、今の限られた時間だけは強大な鋼鉄兵に変わっていく。  
片膝を立て両手を地に付いた姿勢から立ち上がり、右手の弓を力強く引き絞り射撃体勢にする。  
それを待っていたゴーレム付き歩兵がへたり込んだ魔導兵の横を駆け抜け、  
一抱えもあるような壺を装填し、導火抗に点火。  

矢が降り始めた中、胸を張りゴーレムは進み出す。  
へたり込んだ魔導兵を置いて、一歩一歩、ゆっくりと、しかし確実に。  
ゴーレムの腕から油壺が唸りを上げて飛んでいく――新兵器、火炎壺だ――敵兵の上で壺が割れ、  
敵上広範囲に油をまき散らす。同時に打ち込まれた火矢がまかれた油に点火。  
炎が上がりゴーレムが、歩兵が火達磨になる。  
すぐに火を消すも倒れた者、錯乱する者が陣形を乱す。  

ゴーレムの後ろでは戦闘用魔法杖を構えた魔導兵が電光を、火球を放つ。  
自らの身長程もある戦闘用魔法杖。  
詠唱筒が唸りを上げて回転し、大量の体力と精神力と引き替えに増幅された魔法を放つ。  
火球が敵集団を吹き飛ばし、電光が盾を掲げた敵を貫く。  
レバーを切り替え、防壁を展開する。  



780  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/02  02:23  ID:???  

敵からも石弾が、矢が、電光が、火球が放たれ、盾であるいは魔法で防御していく。  
何度かやり取りが繰り返し、急速に魔法の勢いが衰えていく。  
互いの魔導兵が消耗し、間合いもつまり、その時を見計らいイースペリア側からペガサス騎兵が駆け上がり、  
右翼からゴーレム部隊を越えようとしたその時。  
それに呼応するように我が方の飛竜、龍編隊が迎撃する。  

ペガサス騎兵が投げ槍で、飛竜が火炎の息で、龍が魔法で熾烈な空中戦を繰り返す。  
あるところではペガサスが飛竜の横を駆け抜ける瞬間、騎兵が鉾鑓で斬りつける。  
またあるところでは投げ槍を騎手の居ない身軽さで、身を捻り、かわして火炎でペガサスごと火達磨にする。  

お互いに一歩も引かず、僅かに我が方優勢ではあるが結局は対地攻撃に参加出来ないままついに双方、騎兵投入に至った。  



66  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/08  01:34  ID:???  

ゼナムら黒エルフ騎馬隊は右翼に配されていた。  
無論、人間族らの重装騎兵も共に突入の時を計っている。  
エルフら強力な魔導戦士ではあるが専門の騎馬兵に比べればどうしても力負けしてしまう。  
同数で重装騎兵中心の人間族国家の騎兵とまともにぶつかれば不利だ。  
いかに敵をかわし、効果的に使えるかはタイミング次第と言っていい。  
手綱を握る両手にじっとりと汗が浮かんでいた。  

本陣からの突撃ラッパが鳴り響き、馬蹄の響きを立てて走り出す。  
空の戦いをちらりと眺め、左手にワンドを握りしめる。  
詠唱筒が回転し始め、発動の時を待っている。  
グレイブは鞍に固定したまま一挙に敵前に迫る。  

時同じくして最前面のゴーレム部隊も突撃を開始する。  
重々しい足音を響かせながらそれぞれ左手の戦斧を、戦槌を振りかぶる。  


敵ゴーレム隊の前を騎馬隊が駆けていく。  

「大地の精霊よ!」  

ワンドが唸り精霊魔法が発動。  
敵ゴーレム前に突然、溝が走り、瞬時に拡大、何体かのゴーレムが動けなくなった。  
左翼から突入した魔族騎兵らの方では大きな爆炎が上がる。  
一撃を加えた後はグレイブを取り、そのまま敵前で左翼の騎兵らと交差しそのまま敵右翼側面を衝かんとする。  
味方のゴーレムが来る前に離脱しなければ巻き込まれてしまう。  
敵陣前面の切れ目が見えた時、その先からまっしぐらに向かい来る重装騎兵が見えた。  

「分が悪い……かな?」  



67  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/08  01:35  ID:???  

騎兵が駆け抜けた後の混乱した敵陣に今度は我が軍のゴーレム部隊が襲いかかる。  
ゴーレムの戦斧が唸るたびに5人、6人と構えた盾や槍ごと切り飛ばされる。  
溝にはまったゴーレムは動きのとれぬまま戦槌の一撃で中枢を破壊され動きを止める。  

相手方のゴーレム部隊も戦斧で、戦槌で、こちらのゴーレムを迎撃する。  
右手の散弾を撃とうとしたゴーレムが頭から叩き潰され。  
返り血を浴びたゴーレムを側面から切り飛ばす。  
敵陣の混乱が大きくなり、所々ミンチの山を造る様子が見える。  


本陣でギャラハッドは戦況を見ていた  
将である彼と同族の地竜が5頭、魔導兵が10、重装歩兵が40  
最後の予備兵でもある本陣詰めの兵は最精鋭ではあるが、如何せん数は多くない。  
最後まで温存しておきたい。  

押している。  
騎兵らは苦戦しているようだが、全体の流れはこちらが握った。  
全面攻勢に出れば勝てる。  
そう思った時、敵本陣から勇壮な歌声が響いた。  
戦神官共の戦歌だ!  


68  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/08  01:36  ID:???  

敵陣の混乱は見る間に小さくなり、  
何度目かの騎兵同士のぶつかり合いに我が方の騎兵は撃ち散らされ、敵騎兵はそのままゴーレムに向かって斬りかかる。  
優勢だった我が方のゴーレム部隊は突入された騎兵に足を傷つけられ、動きが鈍ったところで魔導兵がゴーレムがとどめを刺す。  
優勢は消え去り、互いのゴーレムも一体、また一体と限界時間を迎える。  
被害は相手の方が多い、「今は」という文句が付くが。  
しかし……戦歌を受けて敵軍の志気は天を衝かんばかり。  
負傷した者すら痛みを忘れて戦列に加わわっていく。  
おそらく魔導兵の余力はもう無い。しかし。  

これはまともに当たれば負ける。  
竜族である彼は竜としては若輩でも120年の生涯の中で、  
幾度か戦歌の効果を経験した事があった。  
戦歌は血を滾らせ、痛みを忘れさせる。  
そして何より、ごく僅かながら防護の守りを着ける。  
そしてそれは戦場に於いて大きな意味を持つのだった  

僅かに迷い、しかし顔には出さぬよう決断する。  
傍らの兵に声をかけ、命を伝え走らせた。  
本陣に赤旗を掲げさせ、鉦を鳴らす。  

開戦から一刻は過ぎている、おそらくはこれで双方息切れするだろう。  
あとは凌ぐだけだ。  



532  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/17  02:05  ID:???  

本陣から鉦の音が鳴り響く。  
ゴブリン歩兵団百人隊長のギギが僅かに振り返れば本陣には赤旗がはためいている。  
将軍、勝負に出たな。  
敵は戦列を整え終えようとしている、まもなく敵側の総攻撃だろう。  
大きく息を吸い込み兵達に叫ぶ。  

「今回の勝敗は俺たちが鍵だ!  
魔王領のために絶対には負けられん。人間族に俺たちの意地を見せてやれ!」  

合い言葉を織り込んだ激励が飛び、配下の小隊長らは頷き返す。  

「おう!!」  

前衛央軍たるゴブリン歩兵が僅かに前に出た時、敵軍が動き出した  


533  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/17  02:06  ID:???  

戦闘は最終局面を迎えようとしていた。  
敵軍が地響きを立てて突撃を開始する。  
100mを切っていた距離が見る見る詰まり、一度は整っていた戦列もあっという間に乱れ、怒濤となって叩きつけられた。  

最初の瞬間に数十もの兵が死に、僅かの間拮抗する。  
その間にやっとの事で敵を殲滅させた我が軍の飛兵が、僅かに残った力で地上掃射を行った。6発ほどの火球が炸裂し、飛兵らはこちらに向かい、先ほどまで本陣があった所の、さらにその向こうに避退する。  

「すまぬ、将軍。ろくに役にたてなんだ」  

こちらの上を通り過ぎるときに、皆傷つき魔法も火球も尽き果てたぼろぼろの姿でなお詫びる飛兵らを見おくり、再び前を見据えた。  

「我らが兄弟達に恥じぬ戦いを!」  

「応!」  

地竜らは静かに闘志を燃やしながらその時を待っていた。  


534  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/17  02:07  ID:???  

戦況は突如動いた。  
前列央軍のゴブリン歩兵団が崩れ、下がり始めたのである。  
敵軍はそれに乗じ中央突破を狙い、両翼の軍勢を中央に集中し出した。  
図らずもくさびを打ち込んだかのように食い込み、ゴブリン達を抜いて後列に達した時、  
彼らを待っていたのは地竜達のはき出す爆炎だった。それに続き、魔導兵達の電光の乱舞。  
そして両翼からは怒りに燃えたゴブリンらを先頭にした歩兵団が、前面からは地竜と重装歩兵の突撃が一挙に敵軍に襲いかかった。  

三方から同時に襲われてしまえば重装歩兵であろうとも全て防ぎきる事は出来ない。  
まして隊形は混乱し、地竜の猛攻に前面は押し返されて下がることしかできない。  
敵が僅かに残った騎馬を側面攻撃に向けるが、こちらも騎馬で押し返す。  

そして、騎馬が側面にたどり着く前に、敵軍の混乱は恐慌へと転化した。  
後退りしながらも戦っていた者達が背を向けて走り出し、それは時間が経つにつれ増大していく。  

敵陣からは銅鑼の音が鳴り響き全軍が後退、いや敗走に移る。  
追撃戦の開始である。  


535  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/17  02:08  ID:???  

首将たるギャラハッドは最初の攻撃に全力を注ぎ、火炎を吐き、強大な魔力衝撃波を叩きつけると僅かな警護兵を引き連れて前線を離れていた。  

乱れた呼吸を整え、大きく深呼吸を一つ。  
後衛を抜け、改めて戦場を見ると地竜が突撃を開始したところだった。  

「勝ったな。何とかなった」  

地竜は強い。  
無論万能ではあり得ないが、ゴーレムは動けず、騎馬は走れず、魔導兵の魔法が飛ばない現状で止められることはまずない。  
無論、兵の中に「竜殺しの勇者」なんて者が居れば話は別だろうが……  
そしてなにより、地響きを立てて突撃してくる地竜は純粋に『恐ろしい』、相対した兵が志気を保てない程には。  
それを証明するかのように敵陣からは銅鑼の連打が聞こえてきた。  
撤退の合図だろうか、敵兵が後退していく。  

彼は牙をむき出しにして笑うと近くにいた兵を呼びつけた。  

「両翼後列の百人隊長に伝令!  
手勢を纏めて左右から挟み込むように追撃させろ。  
その際は逃げ道は絶対に塞ぐなよ、必死で反撃されると面倒だ。  
こっちが片づくまで無理をするな。  
以上だ。おまえは左翼、おまえは右翼に行け」  

あわただしく敬礼すると弾かれたように左右に駆け出す兵を見て  
もう一人兵を呼び、飛兵隊に走らせた。  



536  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/17  02:08  ID:???  

今や楔は抜け落ち、ただの敗残兵と化した集団が陣から弾かれ、左右から削られ、倒されながら後方へ引いていく。  
途中、僅か10に満たない兵が隊を組んで向かってくる事が何度かあったが、ほとんどの兵はただ逃げるだった。  
そして……  
武器も、鎧も捨て、身軽になった健常な体力のある兵のみが野営地を越えバラバラ逃げ去っていった。  

日暮れまで半刻を切った時点でギャラハッドは軍を引き、敵の野営地や戦場から戦利品の回収を命じ野営地に引いた。  
そして日が落ち、一夜が明けてもイースペリアの軍使は来なかった。  
回復した兵らを配置し、古式に則り使者を待つよう布陣したのが4刻半。  
日が中天に上っても軍使が来ない事に業を煮やし、飛兵を放ったのが6刻。  
敵兵が影も形もない事が判明したのはそれから半刻の後の事だった。  

困惑を隠せないギャラハッドが椅子(?)にもたれ、雲一つ無い空を見上げた。  

「どうなっているんだ。この戦いはどうなるというのだ」  

しかしそのつぶやきに答えられる者は魔王領軍に80人の捕虜を含めてさえ誰もいなかった。  




31  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/23  01:10  ID:???  

誰もいませんか〜?  
だんだん週間ペースになってきた中の人です。  

>>../1081/1081338122.html#541  
本作に登場する竜は4種+出ないのが1種  

・飛竜と表記されるモノ=ワイバーン前肢が翼になっている、自力飛行出来る種。ドラゴンライダーの乗ってる奴。  

・地竜と表記されるモノ=洞窟に住む重厚な肉体を持つ種。聖ゲオルギウスのドラゴン退治に出てくるような奴。  

.龍と表記されるモノ=東洋の蛇身の種。魔法が得意。  

・真竜と表記されるモノ=一対の前肢、一対の後肢、背中に一対の羽根を持つ、ファンタジーのドラゴンのような形。  
上記三種とは違い特に強力な力を持つ。  

・原初の竜と表記されるモノ=神話において無から現れ大地になったとされる、伝説上の竜神。出ませんと言うか地面です。  

上記三種が一般的で0〜10齢が幼竜、10〜100齢で若竜、100〜500で古竜と表記。平均寿命500程度  
それぞれ得意不得意があるが古竜になった時点で不得意な事も高いレベルでこなせるようになる。  


以上設定メモより抜粋。  
リザードマンも居るけど「竜」には含めてません「竜人」と表記。  

>>../1081/1081338122.html#532  


32  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/23  01:11  ID:???  

「……というわけで現在、『未だに戦争中』という異常事態になっています。  
ともかくその時は連絡筒で報告して、魔王さまの指示を仰いだのですが、結局その日は何もなく、  
次の日に届いた高速便で捕虜もろとも引き上げる事になりました。」  

イリアは卓上に拡げられた図表を片づけながら語り終え、  
草鹿は一段落付いたように思えた所で疑問をぶつけてみた。  

「話を聞いてみて思ったんですが、あなた方の戦争というのは私たちの言う『限定戦争』に当たると思います。  
魔王領とイースペリアの戦力を比較してみると国力ほどの差は出ないように思うのですが?」  

草鹿の問にイリアはゆるゆると頭を振り、力無い笑みを浮かべて答えた  

「確かに竜族や魔族は強く、人間族の戦士の数倍以上の力を持ちます。  
しかし、彼らは長命であるが故に人間族に比べ出生率が遙かに低いのです。  
最初は拮抗していても人間族に相打ちにされればそれだけで戦力が大きく落ちます。  
そして人間族に比べ補充は容易ではありません。  

それに、先の戦いでのイースペリア軍の異常なまでのしぶとさは結局、神官達がその魔力を奮った結果だったようです。  
戦神ガルフの聖印だけでなく他の6大神の聖印も多く見つかりました。  
後で分かった事ですが、イースペリア王、聖賢王を自称していますが、大陸の各神殿につなぎを取り支援を受けた上での事だったようです。  

こうなれば我が国に対しイースペリアは他国の支援のもと戦う事になり、純粋に戦力としてみても大差が付けられていると判断しています」  



33  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/23  01:12  ID:???  

イリアは卓上に手製の地図を書き、それを拡げ、大陸の何カ所かを指し示しながら答えた。  

「つまり圧倒的に不利……と」  

草鹿は地図に目をやり、大陸に分散して居る各大神殿の場所に目をやった。  
この『竜の大陸』の西南、さほど大きくない魔王領。竜の尾と後ろ足に僅かに掛かるこの国  

「ええ、しかしこちらが全力で、魔王領民全てで戦う気になれば、世界全てを敵にしてもしばらくは戦ってみせます。そして相手はそれを知っているはずです。  
ですから私たちの潜在的な力を過大評価させ、かつ恐れさせ過ぎないというのが基本戦略の一つです」  

イリアはそう言うとニヤリと笑って見せた。  
その顔にはただやられるだけではないと言う自信がうかがえた。  

「それに……」  



34  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/23  01:12  ID:???  

イリアさんが何か言いかけた時、天幕の外から一人の2士が駆け込んできた。  

「失礼します!イリア様大至急こちらの天幕まで来ていただけますか?」  

「どうやら到着したようですね」  

イリアがつぶやいて入ってきた2士を見やり、立ち上がる。  

「ゼナム行くぞ!」  

副官を連れて天幕を出る寸前、イリアは優雅に一礼し出ていった。  


イリアは天幕から出てゼナムと共に先導する2士に付いて駆けていた。  
天幕の間を抜け、人がすぐに少なくなってそれから100mも行かない内に、  
駐屯していた外れの辺り、駆け行く先に両脇から槍のようなモノを飛び出させた金属らしい箱形のモノが見えた。  



35  名前:  田中魔王の中の人  ◆5GBapmFDjc  04/04/23  01:13  ID:???  

『87式自走高射機関砲』そう言うらしい。  
そこまで駆けよると長らしき者が自衛隊式敬礼をして、名乗った。  

「自分は特設第13師団所属第一高射特科小隊長  及川2尉であります。  
先ほど十時の方向より大型の飛行物体を複数探知いたしました。  
速度は100ノット弱。間もなく視認出来ると思われます。  
イリア殿には敵味方の識別をして頂きたい。」  

そう言うと左手に持っていた双眼鏡を差し出した。  

「おそらく我が国の誇る飛竜隊でしょう。  
イースペリア側とは方角が違います。それにこの方角60km先には我が国の首都があるのです。  
……それにしても高速を誇る飛竜隊をこんなにも早く探知出来るとは凄いですね」  

礼を言って受け取り、双眼鏡を覗くとクリアな視界に目盛りが切ってあった。  
何かの意味があるのだろうが……それは後だ。  
飛んでくる影を探し、言われたとおりにピントを合わせるとはっきりと姿が視認出来た。まだ4,5kmは在るようなのに……こんな所でも技術の差を痛感させられるな。  

「確認しました、我が軍の高速輸送隊です。食料を持ってきたはずですが」  

双眼鏡を降ろし、及川2尉に言うと部下に迎撃中止を告げ、彼は明らかにホッとした様子を見せた。  
そして草鹿がこちらを追いかけ、駆け寄ってきた時、飛竜達は到着した。