119  :48章996:2006/11/12(日)  21:15:13  ID:???
20XX年某月某日  某山道  
ぐおん  
エンジン音が響き、霧の中に緑の車体が現れた。  
陸上自衛隊の軽装甲機動車であった。  
さらにその後から、高機動車が一台と、73式大型トラックが三台、そしてもう一台軽装甲機動車が続いた。  
「んにしてもすごい霧ですねえ〜  
こんなの天気予報でもやってませんでしたよ。」  
先頭車両の運転手、原田3曹が言った。  
「ン、アア」  
隣の小金1曹の間抜けな声。  
彼らの任務は、弾薬の輸送であった。  
昨今、日本では小規模テロが相次ぎ、いつだ何処にテロリストがいるともわからぬ状態であった。  
そんな中、弾薬を満載したトラックを丸裸で走行させる訳にもいかず、軽装甲機動車二台と、高機動者に分乗した二個普通科分隊が  
護衛することとなったのだ。  
そんな中ひとつ問題が発生した。  
それがこの濃霧である。  


120  :48章996:2006/11/12(日)  21:16:06  ID:???
山道に入ってから発生したこの濃霧は、自衛官たちの行く手を阻んでいたが、いまさら引き返すわけにも行かず、車両隊は  
山道を進んでいった。  
「もうかなり走りましたよ。まさか道を間違ったとか……」  
「そんな事ねえって。大体一本道なのにどうやって間違えるんだよ。」  
「そりゃそうですけど……!?」  
延々と白くかすんだ緑と褐色の視界に突如、鮮烈な色彩が現れた。  
きっ  
思わずブレーキを踏む。  
「何でしょう……?」  
「赤い門?  いや、鳥居か……?」  
そう視界に現れたのは道の両脇に支柱を延ばす、鳥居であった。  
本来なら2メートル先もまともに見えない濃霧の中で鳥居の赤が、いやにはっきりと見えた。  
「どうします?」  
「とりあえず中に入れろ。  
中に神社なりあったらそこで道を聞こう。」  
「了解」  
再び発進した車両隊。  
しかし彼らはもっと確認すべきだった。  
自分たちの位置を。  
本来の道を。  
そして、「鳥居」の立つ意味を……  



183  :48章996:2006/11/14(火)  22:14:11  ID:???
鳥居とは、門である。  
神社という、神聖な場所と俗世を隔離する門であり、  
異世界とつながり、神を呼ぶための門である。  
……そして、逆もまた然り。  



ぐろろ……  
相も変わらず、車両隊は、のろのろと徐行運転で濃霧の中を突き進んでいた。  
「見えませんねえ。」  
「みえんなぁ。」  
沈黙  
「……大体、上も上ですよ。  
こんな濃霧の中、ことは緊急を要する、任務を続行せよ、て……」  
「ぶー垂れててもしょうがあるまい。それより運転に集中したほうがいいぞ。」  
「うぐぅ」  
しかし、何か変だ。  
あの鳥居をくぐってから、もう15分は経っただろうか。  
霧はだいぶ晴れたが、それから変わったことは一つも無い。延々と森に囲まれた山道が続いていた。  
徐行運転というのもあるだろうが、いくらなんでもおかしくは無いか。  
そんなときだった。  
きっ  
ブレーキがかかった。  
「前に人影が!」  
「何!」  


184  :48章996:2006/11/14(火)  22:14:42  ID:???
1曹の目つきが変わり、89式小銃をすばやく手に取った。  
「小川ぁ!」  
「ハッ」  
車体上部ハッチから身を乗り出した小川士長はMINIMIの引き金にかかった人差し指と、周りの気配に全神経を集中させ、叫んだ。  
「こちらは、陸上自衛隊のものです!  
恐縮ですが、その場で立ち止まってください!」  
叫びながらも、心臓の脈拍はどんどん速くなってゆく。  
初陣というのもあるし、この状態で攻撃を受ければ、真っ先に死ぬのは自分なのだ。  
人影は、止まらない。  
嫌な汗がポツリポツリと浮いてくる。  
後からの足音にどきりとした、がそれは高機動車から降りてきた仲間のものだった。  
じゃりっ  じゃりっ  
高機動車から降車して来た、IBAを着た三人の隊員は、お互い周りに気を配りつつ、慎重に人影に近づいた。  
先頭を行く花田1曹は、ゴーグル越しに、前方に目を凝らす。  
人影はなおもゆっくりと近づいてくる。距離は大体10メートルといったところか。  
「警告します!  
我々は作戦行動中です!  
これ以上接近するならば、我々は実力を行使することを法律で認められています!」  
銃口を向け、もう一度、同じことを叫ぶ。  
そして、威嚇発砲。  
タタタン  タタタン  
当時、ROEとしては、基本的にイラク派遣時の物と同様なものが適用されていた。  
そして、これで交戦規定はクリアした。後は危害射撃をしてもかまわない。  
静かに人影に銃口を向ける。  
果たして、これで人影は停止し、倒れた。  


185  :48章996:2006/11/14(火)  22:15:21  ID:???
「!?」  
「……どうします?」  
「遭難者かもしれん。  
姿だけは確認する。」  
慎重に近づく三人。  
大体5メートルほど進むと、全体が鮮明に見えた。  
そこには、少女が一人、うつぶせに倒れていた。  
髪はショートカットで、袖の無い丈の短い着物を着ている。  
そして、その背中には、矢が刺さっていた。  
(時代劇の撮影……?)  
彼の考えを否定するように、少女からは赤黒い染みがじわりじわりと広がっていた。  

懲りもせず続きを書いてみました。ドウでしょう  
考証等に変なところがありましたらどんどん突っ込んでください。  
(自衛官がIBA着てんのは、私の趣味ですw)  





246  :48章996  ◇HuziB7yA:2006/11/18(土)  21:24:47  ID:???
「おい君どうし……」、  

問いかけながら近寄った。  

「おいこっちだ!  」  
「いたぞ!」  

真正面の霧の向うから声が聞こえてきた。  
知らないうちに先ほどよりも薄くなった霧は、数十メートル向うの人影をうっすらと映していた。  
やはり遭難者か、事故に巻き込まれたか。そう思って姿勢をあげたとき。  
ひゅうん  
音がして、何かが地面に刺さった。  
(……矢?)  
そう、それは竹の箆に矢羽の付いた紛れも無い矢であった。  
頭が混乱した。  
銃器や刃物で襲撃された訓練はしても、矢で襲われたときの対応など知る由も無い。  
大体この矢には殺傷能力があるのか?  
ぴしぴしと音を立てて、また矢が地面に刺さった。  
何かの間違いかも知れぬと思い、警告しようとしたそのときであった。  
パァン  
破裂音がして、地面が爆ぜた。  
無論それは銃声であり、  
その光景は、殺傷能力があることを如実に表していた。  
急いで少女を担ぎ、叫びながらLAVの陰に走った。  

「て、敵襲!  十二時の方向、敵襲!」  



247  :48章996  ◇HuziB7yA:2006/11/18(土)  21:26:06  ID:???
敵襲。  
耳に入ったとたん、小川の心臓はさらに早まった。  
この場合、自分が警告するのだ。何度も訓練で叩き込まれた。忘れるわけが無い。  
目まで垂れた汗をぬぐい、叫んだ。  

「け、警告します!我々は作戦行動中です!  
これ以上接近するならば、我々は実力を行使することを法律で認められています!」  

矢はいまだ散発的に地面やLAVにあたっていた。  
小川は、祈るような気持ちで、先ほどより声を荒げてもう一度同じことを叫んだ。  
が、効果は無い。  
小川はMINIMIの俯角を高く取り、人差し指に力を入れた。  
ダダダダァン  ダダダァン  
銃声が周りの大気を震わせた。  
1秒、2秒、3秒。矢は降ってこない。  
小川はほっと胸をなでおろした。その時。  
パァン  グァン  
ほぼ同時に鳴った。  



249  :48章996  ◇HuziB7yA:2006/11/18(土)  21:27:41  ID:???
「うああ!」  
「どうした!?  被弾したか!?」  
「は、はい盾に……」  
「馬鹿野郎!  さっさと反撃しろ!」  

ダダダダダダダダダダダ……  
銃声の合間にちゃりちゃりと金属音が混じる。  
今の攻撃、もしほんの数センチ横だったら、ほんの数十センチ斜めからだったら、  
頭の片隅で浮かぶそんな想像を必死にかき消しながら引き金を引き続けた。  
纏まらない思考を必死に束ね、歯を食いしばり、不安に汗を浮かべせながら、必死に訓練を思い出す。  

「おい、撃ち方やめ、撃ち方やめ!」  

小金1曹がいいながら小川の足をひっぱたいた。  
ハッと小川は手を止める。  
よく見れば、立っている人影はもう無かった。  
指を引き金に掛けながら、双眼鏡をのぞいた。  
いつの間にか霧はすっかり晴れ、敵の惨状はよく見えた  
うっ  
反射的に、心の準備も無くそれを見た小川は、胃の奥からこみ上げてくるものを必死に抑えた。  
もう一度意を決して覗き込む。  
そこでは全員が全身から血を流し、地面に這い蹲り、息絶えていた。  
無数の銃弾を浴びた遺体はずたずたに引き裂かれ、或るものは頭が西瓜のように爆ぜて、灰白色の中身をさらしていた。  
顔には先ほどと違う汗が浮かび、舌には嫌な味が広がったが、もう一度それを飲み込む。  

「敵沈黙!」  
「了解。」  




287  :48章996  ◆FlqnTdSP1M  :2006/11/20(月)  22:03:51  ID:???
SS投下  

コンコン  
LAVの窓が震えた。  
小金が見ると、だ2分隊の花田1曹であった。  
窓を開けた。  

「ん?」  
「敵の死亡確認だ。行ってくる。」  
「ああ。  
ところで保護された少女は?」  
「高機の中で衛生科の治療を受けてる。」  
「そうか。  
気をつけろよ。」  
「了解。」  

花田は軽く敬礼をすると、部下を連れて89式を構えた。  
セレクトレバーはすでにアから3に変えてある。いつでも発砲可能だ。  
じりじりとゆっくり近づく。  
ゴーグル越しに見える敵の惨状に、花田は眉間にしわを寄せた。  
だが、さすがにそれ以上表に出さない。  
むしろ、彼はボロ雑巾のようになっているソレに、奇妙な点を見つけた。  
それは、服装であった。  




288  :48章996  ◆FlqnTdSP1M  :2006/11/20(月)  22:05:18  ID:???
(えらく前時代的な服装じゃねぇか。)  

前時代的といっても、ヘルメットにマスクなんてものではない。  
もっと弓矢が似合う、そう、着物と鎧兜であった。  
こんな格好のテロリストなんているのだろうか。やはり何かの間違いだったのか?  
頭の中に疑問がよぎった。  
いや。  
彼は心の中で否定する。  
自分は実際に銃声を聞き、地面が爆ぜるのを見て殺傷能力を判断した。  
何かの事故でも、自分たちに落ち度は無い。  
納得すると、もう一度目の前の光景を一瞥した。  
生存している可能性のあるモノは、皆無であった。  



289  :48章996  ◆FlqnTdSP1M  :2006/11/20(月)  22:06:06  ID:???
「敵5名射殺確認。」  

口に出して確認すると、死体を道脇に寄せ、鎧を着たのが握っている銃を手に取った。  
歴史の教科書や博物館でしか見たことの無いような原始的な代物であった。  
だが、こんなものでも、本物なら十分に殺傷能力がある。  
ソレを裏付けるように、その銃口からは硝煙の痕跡があった。  
もっとも、一撃で命中していたとしても彼のIBAは貫通できなかったであろうが。  
それを背嚢の隙間に突っ込むと、もう一度、車輛隊に戻った。  
LAVに着くと、窓をノックした。  
開いた窓の小金1曹に報告する。  

「敵五名の射殺を確認。  
死体の損傷はかなり激しいが、おそらく殆どが即死だな。  
そんで所持していたのが、これだ。」  
「……火縄銃、か?」  
「たぶんな。」  
「……それより重大な問題が発生した。駐屯地と連絡が取れん。」  
「な!?」  
「それどころか、他のどんな所に連絡しようとしても応答が帰ってこない。  
関連があるかわからんが、GPSも使用不可能だ。」  
「ECMか?」  
「いや、ほかの車両とは通常通り連絡できる。無線の故障でもない。」  
「どうする?」  
「霧も晴れてきた。1度人里に下りよう。20分もあればつくだろう。」  
「了解。」  


290  :48章996  ◆FlqnTdSP1M  :2006/11/20(月)  22:06:37  ID:???
花田は、周りを警戒しつつ、高機に走った。  
後部から中に入ると、片側4人分の荷台座席には、少女の乗った担架が固定されていた。  
この車には、こうった時のために、天井につり革が着いている。  
ただ、大抵の人間は頭が支えるので不評ではあったが。  
花田は衛生科に尋ねた。  

「少女の容態は?」  
「ええ、今のところ命には別状はありません。  
ただ、これを見てください。」  

花田に手渡されたのは、一本の矢であった。  

「彼女の背中に刺さってたものです。  
本物の矢です。もちろん殺傷能力はあります。  
強く食い込んでいて、はずすのに苦労しました。  
幸運なことに、ちょうど肩甲骨で受け止められていて、肺に損傷は無いようです。」  
「ん、この頭のは?」  
「……さぁ、よくわからないのですが、ただの瘤ではないでしょう。  
もしかしたら、何かの奇病なのかも……」  
「そうか。」  




291  :48章996  ◆FlqnTdSP1M  :2006/11/20(月)  22:07:27  ID:???
花田は、自分の助けた少女をもう1度眺めた。  
髪は黒くショートカットで、肌は浅黒く、最近はこういうのが流行っているのか、  
顔から首筋、胴体から手の甲足の甲まで全身に、曲線や渦巻きの流れるような模様の赤い刺青が入っていた。  
そして、額には二つの突起。  
この少女といい、さっきの集団の服装、武装といい、何か変だ。  
彼は気づき始めていたのかもしれない。  
自分たちが別の世界に来たことを。  


投下終了。  
なかなか話が前へ進みません(笑)  
さて、この少女の正体ですが、勘のいい人ならもうわかるんじゃないでしょうか。  
考証等に不備があったら、ご指摘ください。  


315  :48章996  ◆FlqnTdSP1M  :2006/11/22(水)  21:43:34  ID:???
SS投下  


「……うぅ」  

小金1曹は一人唸った。  
もう一度地図を見、今まで来た道を思い出す。  
間違っているところは一つも無い。  
完璧、地図通りだ。彼には確信があった。  
なのに。  
周りを見回した。  
そこに広がるのは、広がる田んぼ、鳴くとんび。のどかな田園風景である。  
だが、地図によればそこには山田町という町があるはずであり、その町は住宅街であるはずだった。  

「隊長、わかりました?」  
「うぅむ」  

たずねる原田3曹に、唸りで返す小金。  
どうしたものか。  
もう一度地図を眺め、たまりかねたようにそれを膝にたたきつけると、道が聞けるような場所が見つかるまで車を進めろと指示し、同様の  
旨を全車に伝えた。  
1分も走らないうちに、一軒の、農家らしき家が見えた。  
しかしなんとも古臭い藁葺きの家だった。  
脇に止まると、小金は車を降りて玄関まで歩いた。  
しかし、インターホンが無い。  
困った小金は、大声を張り上げた。  



316  :48章996  ◆FlqnTdSP1M  :2006/11/22(水)  21:45:05  ID:???
「すいません!  陸上自衛隊のものです!  
どなたかいらっしゃいますか!?」  

すると、戸が開き、30ほどの背の低い男が出てきた。  
男はとても怯えた様子で、小金に話しかけた。  

「はい、何でございましょう……」  
「陸上自衛隊のものです。  
すみませんが道を教えて頂けませんでしょうか。」  

小金は自衛隊手帳を見せながら言った。  
男は手帳と、小金の腰あたりを不思議そうに見てから言った。  

「はぁ、いいですが。」  
「山田町に行くにはどうしたら?」  
「ここが山田村ですけれども。」  
「山田村?  
……ちょっと失礼。」  

小金はポケットから地図をと取り出し、見た。  
何処にも、「山田村」の文字は無かった。  
小金はもう一度たずねようと、男に向き直った。  

「すいませんが、もういち……」  
「コルァ!  
何じゃ貴様はぁ!?」  

みると、大きな馬にまたがり黒い鎧兜を着た男であった。  



317  :48章996  ◆FlqnTdSP1M  :2006/11/22(水)  21:45:47  ID:???

「何処のもんじゃ貴様は!?  
へんちくりんな鎧をきおって!」  
「鎧?」  

なるほど、彼の着ているIBAは鎧に似ている。  

「私は陸上自衛隊のものです。ちなみにこれは鎧ではなくてIBAといって……」  
「あぁん!?  
怪しいやつじゃのう!  
着いてこい!」  
「いや、だから私は自衛隊の者で……」  
「何じゃぁ!  
我に逆らうかぁ!?」  

鎧の男は手に持った槍の切っ先を小金の首に突きつけた。  
流石に小金もムカッと来た。  

「いい加減にしなさい!  
私は陸上自衛官だ!  
いまは作戦行動中だ!  そこに仲間が控えている!  
いざとなれば私は実力を行使することを認められている!」  
「ぬ……貴様!」  

小金の勢いに一瞬ひるんだが、鎧の男は憤り、槍を大きく振りかぶった。  
小金は紙一重で、よけた。鼻先で槍がひゅうンと音を立てた。  
すぐにホルスターから拳銃を抜き、空に向け、二発撃った。  
破裂音が2回した。  



318  :48章996  ◆FlqnTdSP1M  :2006/11/22(水)  21:46:33  ID:???

「もう一度言うぞ!  
私は自衛官だ!  これ以上邪魔立てするなら、あんたを撃ってもいいんだぞ!」  
「な、なんじゃこるぁあ!!」  

男はもう一度やりを振った。  
小金はまたもよけ、ためらいなく撃った。  
3回の破裂音のあと、男はどうと倒れた。  
鎧には3発の穴が開いていた。  

「隊長!」  

いつの間にか後で降車してきた小川士長と、海山2曹が小銃を構えていた。  
海山2曹が尋ねた。  

「何が!?」  
「いやな、こいつが、突然攻撃してきた。」  
「攻撃って、槍で!?」  
「ああ。」  

小川は、驚いた。  
当然だろう。いきなり、ナイフならともかく、槍で攻撃してくるなど聴いたことも無い。  
さっきの矢といい、おかしい。おかしすぎる。  
と、横を見ると男が一人腰を抜かして尻餅をついていた。  



319  :48章996  ◆FlqnTdSP1M  :2006/11/22(水)  21:48:24  ID:???
「この人は?」  
「この農家の方だ。」  
「大丈夫ですか?」  

小川が手を差し出すと、男はいきなり膝を着き、頭を下げた。  

「ひぃい。  
すいません。すいません。  
私のものなら何でも差し上げます。なんでもします。  
どうかお助けを!」  

男は上ずった声で必死に許しをこいた。  
三人は顔を見合わせた。  
この男は何を言っているんだ?  目の前で銃を撃てば怖いのはわかるが、こんな行動にでるとは。  

「いや、あなたには何もしませんよ。  
それより、110番に電話を。」  
「ひゃ……?」  
「110番ですよ。電話はあるでしょう?」  

男は震えながら首を振った。  
三人はもう一度顔を見合わせた。  

「じゃぁ、この男が何者かはご存知で?」  
「は、はひ。  
佐山家のご家臣の丸田六衛門様かと。」  
「佐山?」  


320  :48章996  ◆FlqnTdSP1M  :2006/11/22(水)  21:49:34  ID:???
佐山。たしか、昔ここを治めてたお侍だったけか。  
矢、火縄銃、槍の次は武将にご家臣とキタ。  

「ンで、そのご家臣が何でこんな格好でここに?」  
「何でも、ここいらの鬼を退治されるとかで、  
何日か前兵を連れていらっしゃい、かえっていかれました。  
今日もその件だと思います。」  
「鬼、ねえ。」  

今度は鬼か。  
小金は大きく溜息をついた。  



あとがき  
この話はフィクションです。人名、地名等は適当です。  
今回は(も?)ちょっと退屈な話でしたかね?  
派手な戦闘にはもう少し時間がかかりそうです。(笑  
ちなみのこの物語のタイトル募集中。  





493  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2006/12/01(金)  04:32:49  ID:???  
きっ  
ブレーキが踏まれ、車体が止まった。  
小金は腕を組み、眉間にしわを寄せた。  
どうなっている?  
あの後もう一度車列を反転させて戻ってきた。  
戻って道を確認すれば、何かわかるかもしれない。  
そう思った。  
森での敵からの攻撃も考えたが、先ほどからの状況を考えて、受けたとしても致命傷にはなり得ないと思った。  
果たして、あの鳥居は、有った。  
しかし、それより先の道が無かったのである。  
道が無ければしょうがない。  
無線をつけた。  

「一号車より全車、一号車より全車。反転してもう一度道を下る。」  
<三号車より一号車、三号車より一号車。聞こえるか?オクレ>  

三号車には輸送科の責任者の石山1曹が乗っている。  

「こちら一号車。よく聞こえる、何だ。オクレ」  
<さっきから行ったり来たりしている様だが、どうなっている?  
状況を知らせてくれ。オクレ>  
「……状況は、一度森を抜けてから伝える。オクレ」  
<了解。通信オワリ>  

意味もわからず何度もの反転。  
情報を求めてくるのは当然だった。  
さてなんと言おうか。  
やはり、ありのまま言うしかないか。信じてくれるかな。  
車列は無事に森を出た。  


494  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2006/12/01(金)  04:34:00  ID:???  

「一号車より三号車一号車より三号車。」  
<三号車より一号車。何だ。オクレ>  
「状況を説明する。降車してまて。オクレ」  
<了解。通信オワリ>  

石山1曹が降りて少しすると、二号車から花田1曹が降り、その奥で小金1曹が手招きしていた。  
近づくと、小金1曹が言った。  

「現在の状況を一言で表すと、異常、ですな。」  
「はぁ?」  
「だから、異常。」  

そのあと、小金と花田は先ほどの二回の戦闘の詳細を石山に説明してやった。  
なるほど、異常である。  
石山は、こほんと咳を払い、一度息を整えた。  

「それで、ここは何処なんです?」  
「言ったでしょう。異常だって。  
住民から聞いたここの地名は、地図には載っていなかった。  
今まで来た道は、途中で途切れていた。」  
「そんな!  無責任な!」  

石山が呻いた。  
先導は一号車のLAVの仕事のはずだ。なのに。  
彼には小金1曹の対応は、とても無責任に感じられた。  



495  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2006/12/01(金)  04:35:37  ID:???  

「何はともあれ、ほかにも情報を交換しませんと。  
花田、あの少女は?」  
「少女は、まだ高機のなかで寝てる。  
意識はじき戻るらしい。  
背中に突き刺さっていた矢は、本物だそうだ。」  
「ほかには?」  
「それと、彼女、下着を着ていなかったらしい。」  
「それだけか?」  
「ああ、それだけだ。」  

その後三人は自分の持っている知識や意見を出し合ったが、なかなか結論はでなかった。  
そのとき、  

「君!  落ち着け!」  
「一回外に出ろ!」  
「うあぁぁぁぁぁ!!!」  

高機のほうがなにやら騒がしい。  
見ると、中から隊員が我先にと飛び出しているではないか。  

「どうした?」  
「それがあの、少女が目を覚ましまして、」  
「それで?」  
「それがひどい錯乱状態なんです。  
女の子とは思えない力で暴れるもんですから、無茶をするわけにもいかず……」  
「ふむ、わかった。」  

そういうと花田は、もう一度高機に目をやった。  
フロントガラス越しに、少女が見えた。  
見られていることに気づいたのか、キッとこちら睨み付けていた。  


496  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2006/12/01(金)  04:36:52  ID:???  

「ハァ、ハァ」  

少女は肩で息をしながら、座席に腰を下ろした。  

「ここは、何処?  どうなってるの?」  

少女は声に出して、今考えるべき問題を自らに提示した。  
少女は額に指を当て、必死に記憶をたどった。  
怪我をして、気を失った。  
そこまで憶えている。  
しかし、その後がわからない。  
気がついたら、ここにいたのだ。  
そこまで思い出し、彼女は気付いた。  
そうだ、自分は矢で射られ、怪我をしていたのだ。  
彼女は背中に手を伸ばした。  
怪我をしたに場所に手が触れると、痛みが脳髄を貫いた。  
が、矢は刺さっていない。  
それに、包帯が巻いてあって、治療もしてあった。  
誰が?  
彼らが?  
まさか。しかし……  



497  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2006/12/01(金)  04:37:24  ID:???  
お嬢さん。」  
「!?」  

見ると、開かれた後部ドアの向こうに男が一人立っていた。  
混乱のために気付かぬとは、不覚であった。  
とっさに、半裸の体を護るように手で前を隠した。  

「落ち着きましたかね?」  
「あなたたち、何者?」  
「ああ、申し送れました。陸上自衛隊の花田一等陸曹といいます。」  
「私を治療したのはあなたたち?」  
「ええ、そうですよ。」  
「何のために?」  
「怪我をして倒れていたら助けるのは当たり前でしょう。  
もし見捨てたりなんかしたら、週刊誌になんて書かれるかわかりませんしね。」  
「?  あなた達、人間?」  
「私たちが幽霊にでも見えますか?」  



498  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2006/12/01(金)  04:38:42  ID:???  

花田は笑いながら言った。  

「それともあなたは、妖怪かなんかですか?」  
「見てわからないの?  私は、鬼よ。」  
「鬼?」  

言った後で少女は自分の失敗に気付いた。  
鬼だと気付いていないなら、そのままにしておけばよかったのに。  
しかし、花田はよく意味がわからなかった。  
当然だろう。  
現代日本人で、いきなり自分は鬼だといわれて字面通りに受け取る人間がいるだろうか。  
その時である。  
1分隊の小川士長の叫び声が聞こえた。  

「前方より接近するものあり!  
馬に乗ったのが3、歩兵が6!全員槍で武装している!」  


あとがき  
今回も戦闘はありませんでした。  
でも次回は戦闘にしようと思っています。  
ちなみに少女の名前募集。(マタカ  



652  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2006/12/05(火)  01:08:53  ID:???  
某月某日  マダデラ海上空  

マダレラ海。  
日本が移転し、その後資源確保のため、確保した数少ない植民地のひとつ。  
当然、日本が確保したように、海上交通の要でもある。  
また、その気候は南ヨーロッパに似ており、暖かい海と快適で安定したな気候、風光明媚な眺めと海産資源が売りだ。  
しかし、彼のいる場所からは、そんなリゾートの空気はまったく感じられなかった。  
その部屋は閉めきられ、まったく窓がなく、暗い部屋中で、計器類が陰鬱な光を淡々と発していた。  
ここは、海上早期警戒飛行艇ES-2の内部である。  
移転前から使われてきた救難飛行艇PS-2を改造したもので、この世界では対空火器が殆どなく、一定の海上の空間を一時的にでも確保できれば離着水できるため、日本は、飛行艇を臨海部でよく使った。  

「!  かかった!」  

彼が不意に声を上げた。  

「獲物と思しき艦艇が「エサ-02」に引っかかりました。」  
「了解。通信士、部隊へ連絡せよ。」  
「了解。  
Wadatumi  to  Yatagarasu,Wadatumi  to  Yatagarasu.Game  hung  to  bait  -02.  
Be  dispatched  promptly.  Over.  
(ワダツミよりヤタガラス、ワダツミよりヤタガラス、エサ-02に、獲物がかかった。  
直ちに出動せよ。オクレ)」  
<Roger.  
I  go  to  the  spot  promptly.  Out.  
(了解  
直ちに現場へ向かう。オワリ)>  
「ヤタガラス、現場へ向かいました。」  
「了解。」  


653  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2006/12/05(火)  01:10:04  ID:???  
一機のOH-1が海上を行く。  
その機体はわれわれが見慣れているものとはすこし違うところがある。  
塗装である。  
機体上部は濃い青、下部が薄い青。いわゆる洋上迷彩である。  
また、その機体のテールには、黒い文字で「海上自衛隊」とかれていた。  
機体上部の索敵サイトが、斜め前を向き、目標を確実に捕らえていた。  
その目標、海賊船は、ある島の入り江に入っていった。。  
そして、その島こそがOH-1の目的であった。  

「ビンゴ!」  

パイロットが小さく呟くと、一気にサイクリックレバーを引く。  
高度がぐんと上がり、心地よいGが体にかかった。  
島の周りを旋回しながら情報を得る。  
なるほど。島は大きく盛り上がり、一見何の変哲もない。  
だが、天頂にほんの少し穴が開いており、中がかすかに見える。  
中が空洞になっており、海賊船はここをアジトにしていた。  

数時間後。  
すでに日が落ち、月が海面にその姿を映していた。  
ウォータージェットを響かせ、二隻の船がその姿をかき乱していった。  
それこそが、海上自衛隊、機動海上治安維持隊所属の「ひまわり」型哨戒艇、「ひまわり」「あじさい」の二隻であった。  
排水量は約230t。ミサイル艇「はやぶさ」型を基本に艦橋の上に、独自開発の12.7mm多銃身機関銃が一門搭載され、船体を延長してミサイルを降ろし、複合艇と特殊部隊員を乗せられる。  
一方、島の内部では、海賊たちが浜辺で焚き火をして大騒ぎしていた。  
浜には三隻の中型船があり、それが彼らの商売道具であった。  

「今回はちょろかったなぁ!」  

一人が叫んだ。  


654  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2006/12/05(火)  01:11:10  ID:???  
「んだんだ。」  
「カイジョウホアンチョウのやつらも出てこなかったしな!」  
「船員たちも先を争って逃げていきやがる。ろくな抵抗もされなかったし。」  
「これだから海賊はやめられねぇや!」  

ほかの人間も、口々に賛成した。その時。  
ぶぁぁん  
聞きなれない音がして二隻の船が入ってきた。  
男が立ち上がろうとした瞬間、12.7mm多銃身機関銃が吼えた。  
浜にい居た人間のことごごとくが血煙と化した。  
また複合艇にて強襲した特殊部隊員により船内の敵も制圧され、金品は没収された。  
こうしてまたか海賊団がひとつこの世から消滅した。  



あとがき  
どうだったでしょうか。  
ちなみにはじめての海モノ。  
このほかにも、洋上迷彩のAH-64Dとか、US-2にいろいろ乗せてガンシップとかそのうち書けたらなと思います。  
それと、海自の航空無線て英語でよかったんですっけ?  



30  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2006/12/24(日)  00:43:21  ID:???  
何なんだ、やつらは。  
心の中で呟く。  
木と木の間、はるか向こうに、金属の塊が見えた。  
その中の一つに仲間がいる。  
ただ不思議なことに、その鉄の籠も、そこから突き出ている人間も、森になじむような色合いだった。  
妙だ。人間というのは皆、特に戦士は、目立ちたがり屋で派手な鎧を着るものだ。  
その実例が前の道から近づいている。  
やはりやつらは仲間なのか?  
それにしては雰囲気が妙だ。  

「姉様、どうします?」  
「ふむ。」  

今事実として判明しているのは、籠の中に仲間がいて、近づくほうの人間は敵だということだ。  
彼女は決断した。  

「私が、前のを全部やる。お前はここで待っていろ。」  

そう言うと、腰から短刀を引き抜いた。  




31  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2006/12/24(日)  00:44:16  ID:???  

ひづめの音に馬のいななき。  
それに数名の足音。どれも草鞋だ。  
距離は約20メートルといったところか。  
通常ならば、こんなに接近されることは許されない。というかしたくてもできないだろう。  
理由は、敵の戦力の間合いが圧倒的に狭いことである。  
いざとなったらMINIMIと、2分隊の89式で一網打尽にできる。  
今必要なのは情報だ。敵を殲滅するのはそれを手に入れた後でも遅くない。  
小金1曹の判断だった。  
小川は、正直言えばその判断は聞きたくなかった。  
引き金の横の人差し指に力が入らない。  
一応言っておくと、人を殺したくないなんて「お上品」な理由ではない。  
人を殺すことには先の一件で吹っ切れた感がある。  
問題はそのあとだ。  
当然人を殺せば、死体になる。  
そして死体とは、あんまり見ていて気持ちのいいものではない。  
少なくとも彼はまだそこまで、「兵士」にはなりきれていなかった。  
またあの光景を、それも至近距離で見るのか。  
そう思うと少し憂鬱だ。  
勢いで撃つのではなく、そう思える余裕があるのがまた曲者である。  
足音が、止まった。  
馬に乗った男が、腰から刀をぬていた。  
瞬間、憂鬱は吹っ飛び、グリップと銃床を握る手に汗が浮ぶ。  

「まだ撃つなよ。」  

1曹の言葉が聞こえた。  
男が、叫んだ。  


32  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2006/12/24(日)  00:45:27  ID:???  
「とおくば声を耳に聞け!  近くば寄って目にも見よ!  やあやあ我こそは……」  

聞きながら小金は89式を手に取った。  
人差し指をセレクトレバーに掛け、左手をドアに持っていった。そのときだった。  
だあん  
森から出てきた影が、男を引き落とした。地面に落ちたときには、動脈に穴が開き、事切れていた。  

「!?」  

それに気付いたときには、すでに次の男が倒されていた。  
その影は、流れるようにすばやく確実に、敵を一掃してしまった。  
影が、止まった。  
影の正体は女であった。  
先ほどの少女よりは年上に見える。  
返り血で濡れそぼったその女は、その鋭い眼光で自衛官たちを射る。  
その眼には、明らかな殺意が湛えられていた。  

「…………」  
「…………」  



33  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2006/12/24(日)  00:46:11  ID:???  
痛いほどの沈黙。  
空気がぴんと張り詰めた。  
眼が合った。  
視線をそらすことができない。  
眼だけでなく、全身の筋肉が緊張し、ポツリポツリと汗が浮かんだ。  
何もかもが張り詰め、動かすこともできない。  
思考もままならず、ともすれば飛んでいきそうな意識を、歯を食いしばって縛り付けた。  
小金だけではない。  
横の原田も、後ろの海山も、1分隊の隊員たちも、誰もかれもが一緒だった。  
唾を呑むことすらままならなず、ただただ時が過ぎてゆく。  
そこにいた人間は誰もその空気を打ち砕くだけの精神力を持っていなかった。  
その中で小川は、女の眼に、その吸い込まれそうなほどに深い瞳を、一瞬ではあるが、綺麗だと思った。  
張り詰めた緊張の糸を断ち切ったのは、声であった。  

「姉様!」  
「!!  紅葉!」  

先頭のLAVの、その陰の隊員たちの、さらに後ろから聞こえてきたその声に、女は歓喜の声を上げた。  
周りの空気は粉雪のごとく氷解し、皮膚からは汗がどっと吹き出す。  
しかし小金は緊張がとけない、いやとかない。  
セレクトレバーをアから3に変え、ドアを開けた。  

「お取り込みのところすいませんが。」  
「なんだ、貴様は。」  

きっと女が睨む。  



35  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2006/12/24(日)  00:47:14  ID:???  

「待って姉様。この人たちは、私を助けてくれたの。」  
「何!?」  
「見て、背中に矢の傷があるでしょう。矢を抜いて包帯を巻いてくれたの。」  
「……」  

女は少し考えると、もう一度こちらを向いた。  

「お前たちが何物かは知らないが命だけはとらないでおいてやる。  
直ちに立ち去れ。森の中に仲間がいる。下手なことは考えるな。」  
「そういわれましても、こちらも状況をうまく把握していないんです。  
治療の替わりといっちゃなんですが、すこぢばかリ情報をいただきたい。  
なに、あなたたちに危害を加えたりはしませんよ。」  

女は相変わらず、疑いの目をこちらに向けた。  

「姉様。大丈夫よ。私は少なくともうそではないと思う。」  
「お前がそういうなら。」  

女は森に目配せすると、警戒しつつも自衛官たちに近づいた。  
小金は、女と少女を一番広い高機に案内した。  



790  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2007/01/29(月)  23:03:53  ID:???  
小金は高機動の中で、花田と石山ととも、に女の話を聞いていた。  
この目の前で、やたら尊大な態度で話している、自称鬼の女の名前は氷柱というらしい。  
小金は今までの話を頭の中で整理しながら、女の話を聞き続ける。  

「ちょっと失礼。」  

小金が言った。  

「少し外で話をしても?」  
「かまわん。」  

氷柱は相変わらず尊大な態度でうなずいた。  
隣で聞いていた花田と石山に目で合図し、外に出る。  
外ではもう日が傾いていた。  

「ここは戦国時代らしい。  
そんでもって彼女らは鬼だと。」  
「そんな馬鹿な!」  

小金の言葉に石山が声を上げた。  

「彼女の話を信用するならば、だ。  
花田、お前はどう思う?」  
「嘘を話しているとは思えん。だが、本当だとも思えん。」  
「だよな。どっかのB級映画じゃあるまいし、戦国時代にタイムスリップそれもファンタジー要素つきとは。」  

笑いながら、続けた。  

「もし、本当だったらどうする?  やっぱり佐山家に協力を求めるか?」  
「それは無理だ。」  
「!?」  


791  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2007/01/29(月)  23:05:12  ID:???  

小金の問いに答えたのは、いつの間にか高機から降りていた氷柱だった。  

「盗み聞きとは趣味が悪い。」  
「貴様らの声が大きくて、自然に聞こえただけだ。」  
「で、無理だというのは?」  
「さっき気付いたのだが、貴様らからは、我らと同じ匂いがする。  
人ならぬものの匂いだ。」  
「それで?」  
「佐山の主が怪しげな神を信じ始めたのだ。  
そのおかげでわれわれは奴等に追い回される羽目になった。  
自然、奴等はお前たちを味方だとは思わないだろう。」  
「そうですか。しかし、我々は見ての通り人間ですが?」  
「貴様ら、鳥居をくぐってきたのだろう?」  
「ええ。」  
「ならば同じだ。ここの人間たちとは違う。」  

口に笑みを浮かばせると、氷柱は言った。  

「我らの仲間だ。」  

やはり、この女の言うことは突拍子もない。  
鬼だの戦だの武将だのと話されても、普通は信じない。  
だが、そうすればすべての辻褄があってしまう。  
頭のどこかで、その話を信じようとする自分が居り、一方でそんなことはありえないと反対する理性がある。  
結局自分では何も決心することはできず、それに足る確証もない。  



793  48章996  ◆FlqnTdSP1M  sage  2007/01/29(月)  23:06:16  ID:???  

「それ来たぞ。確証とやらがな。」  
「前方に人間1!」  

小川の叫びを聞き、彼女の視線を追うと、いつの間にか車列の前に一人の、旅行脚が立っていた。  
距離は20mもない。  
見張りは何やってた。なぜここまで気付かなかったのか。  
旅行脚は笠を少し上げ、顔を見せる。  
深く皺の刻み込まれた、微笑んだ好々爺の顔だった。  

「拙僧は啓徳と申すもの。仏の名において、鬼を討伐しに参った。」  

そう言うと、微笑を崩さぬまま、車列に手をかざした。  

あとがき  
今回は少し短くてすいません。  
次回いよいよ待ちに待った戦闘に突入です!  
ところで質問なんですが、自衛隊がバレットM95を装備してるってのはやめた方がいいですかね?