473  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/16  20:45  ID:???  

37回目の投稿  
輸送戦記?  
138  
あの後、僕たちは捕虜を連れて修道院まで戻った。  
自衛隊は司令部をまるごと捕まえた事に大喜びし、王国は騎士が挙げた大戦果に大喜びした。  
まー王国はほとんど敗残兵処理しか行えなかったから当たり前か。  

その後、クラウスちゃんは帝國軍橋頭堡への突入を希望したが、却下された。  
「なぜ橋頭堡への突撃を私たちに命令しないのです!」  
「半数が馬を失っては機動力が無くなっている。それにクタクタ。無理だな」  
以上がその理由である。  
「でも守…今のうちに叩いておかないと…」  
「さっき陸自が通ったろ。彼らに任せる事になったんだろ」  
「う〜」  
とこの会話で橋頭堡の件は終わった。  

その代わりに新しい命令が来た。修道院守備にあたった将兵は全員、自衛隊王国派遣隊首都そばにある  
基地での休養が命じられた。  
激戦を戦い抜き、大手柄まで部隊には『ごほうび』をあげるのが当たり前。まー妥当な所か。  

その命令を聞いてみんなはほっとしたり、歓声をあげたりして大喜びをしていたりする。さらに、アス  
の策謀で離れた配置にされていたマイヤーさんがかけつけて来て、どー見ても『じいやと姫』と言う  
より『祖父と孫娘』に見えるような喜び方をして、一同を微笑させたりした。  

そして自衛隊王国派遣隊首都そばにある基地に到着して3日後。  


474  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/16  20:46  ID:???  

139  
「乾杯!」  
あれから戻ってきた部隊を対象にした祝勝パーティーである。まーパーティと言ってもかなりささや  
かだったりする。何しろ1週間後に王国主催の祝勝祭があるので、まずは内輪で…らしい。  

向こうには王国軍の騎士団長と伊良子3佐が話し込んでいたり、クラウス隊の騎士が自衛隊の尉官を  
質問責めにしていたりと、各所で楽しい事になっていたりする。  
その中で僕たちはというと…  

「オウ、草壁君も飲め。食え。HAHAHA」  
焼きおにぎり(味噌)に、お手製糠漬けに、冷酒の3連コンボを米空軍ギルバート・ケイン少佐から  
勧められつつ同じテーブルにいる人たちから話を聞いていたりする。クラウスちゃんも一緒だが、こ  
ちらは冷酒代わりにジンジャーエール。  
それにしてもこのテーブルにいる面子はものすごい。  
SEALsにデルタにグリーンベレーに海兵隊のFORCE  RECONに第75レンジャー連隊?のアメリカ特殊部隊  
。SASにSBSの女王陛下の特殊部隊。そして日本の陸上自衛隊第一空挺団。  

…特殊部隊マニアが泣いて喜びそうな顔ぶれである。ただしここにいるのは指揮官レベルだけ。他の  
隊員は「面が割れる」のを嫌がって先に帰ったりしたらしい。指揮官だけが出るのもナンだが、誰も  
顔を出さないのは面子を潰すと判断したそーだ。  
何で日本に各国(と言っても3ヶ国)の特殊部隊がいるのか疑問だけど、F世界召喚前に北○鮮でごた  
ごたしてたから事前展開で来ていたんだろ〜  

「それで皆さんはどんな事をしたのですか?」  
あ〜クラウスちゃん。任務内容は無理だと思うよ。ほら、皆さんが顔を見合わせて苦笑してるし。  


475  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/16  20:47  ID:???  

140  
「ん〜多少なら教えてあげられそうだな」  
とこの場ではギルバート・ケイン少佐の次に先任らしいSEALsの人が代表して答えてくれるようだ。  
なんて運の良い娘だ。  

「私たちは今回、重要な交通ポイントである『橋』を攻撃したんだよ。ある橋は爆破し、ある端は占拠  
してね」  
橋梁爆破は特殊部隊の基礎任務みたいなもんですから適任ですな。  
「上下流にかかる6本の橋をそのまま爆破。1本をそのまま確保。で、その確保した橋を守って陸自が  
殺到するのまで支えていたのさ。おっと、ある部隊は河口にある港町(帝國領)にある船を爆破して  
焼いてきたようだ。ついでに倉庫も焼いてきたが…実は麻薬が積んであったらしい」  

…なんか凄すぎて実感がわかない。それこそ小説に出てくるような話だが、やっぱりすげえや。早く  
続きを聞きたい。  
「少佐にお聞きしたいのですが、確保した橋の方についてですが」  
「帝國軍が動いたのとほぼ同時に基地を発ち、橋の近くにある草原に降下。一緒に下ろした60式自走  
106mm無反動砲や各種車両で橋まで進み、帝國軍橋頭堡を火力で制圧。補給物資をそのまま確保。その  
後に陸自機甲部隊がやってきて終了」  
「え、少佐…60式自走106mm無反動砲(106mm無反動砲2基搭載)使ったんですか?」  
「そうだよ。軽くて火力があって使い潰しても元がとれる装甲車両だからね。それにしても直接火力  
支援車両がいると仕事が楽だよ。まぁM50オントス(106mm無反動砲6基搭載)が支援で便利だったと  
聞いていたから使ったんだがね」  
…105o牽引砲といい、60式自走106mm無反動砲といい、また渋いモノを持ち込んでるなヲイ。  
「んーとそれじゃギルバート・ケイン少佐は何を?」  


476  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/16  20:48  ID:???  

141  
大吟醸の一升瓶を開封しようとしていたケイン少佐に話をふってみる。  
「確かケイン少佐は『橋に向かう』と言っていましたが。  
「ワタシかい?彼らの火力支援だよ。最初から計画されていて、修道院の支援の後に橋の支援に行く  
事になっていたんだよ。まー皆さんも飲んで飲んで」  
そう言って皆に一升瓶を回す。ん、いい香りだ。こりゃムチャクチャ高そうだな。  
「ん、ケイン少佐これは美味しいですね。っと酒もいいですがその後はどうなったのですか?」  
「輸送隊の連中から届けられた時には驚いたね。妻の実家が造っている銘酒でね、手紙と一緒に送っ  
てくれたんだよ。え、続き?近くをうろついていた帝國軍が橋の占拠に気がついてね、反撃をして  
きたんだよ。でも独力でも大丈夫だったかも」  
「いえいえケイン少佐。あの火力支援は非常に助かりました。しかもあの精密射撃はいい土産話にな  
りますよ」  
そうSEALsの人がお礼を言った。  

「結局、作戦は大成功。帝國軍侵攻部隊は補給部隊ごと壊滅し、侵攻路も確保。部隊もマーケットガ  
ーデンやBHDみたいな事にならなくてみんな幸せなワケですか」  
「まぁそういう事だ」  

その他色々話しているうちにみんな酒が回って良い気分。途中で。  
「まもる〜これっておいしいね〜♪」  
「さすが大吟醸…ってクラウスちゃん!何で酒飲んでるの!」  
「え〜これおさけなの〜」  
「いいじゃないか。俺なんか12から酒を飲んでたぞ」  
「だからって勧めんでください」  
と微笑ましい(?)事が起きながら楽しい時間は過ぎていった。  



495  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/16  23:57  ID:???  

38回目の投稿  
輸送戦記?  
142  
厳粛な雰囲気に包まれた王国首都に聳える城。今日はここで勝利報告会が行われている。  
式は城の中庭を飾り立て、その中に自衛隊各級指揮官や王国軍騎士たちが整列している。  
その中で僕は自衛隊列の末席になぜかいる。クラウスちゃんは騎士たちの中にいる。  
あ、アスもいるや。確かかなり発見が遅れたらしい。で、侵入者に襲われたと言い張っていたっけな。  

式は滞りなく進んでいる。  
真っ先に自衛隊指揮官が呼ばれ、王からねぎらいの言葉と恩賞が手渡される。恩賞と言っても目録で  
、しかも中身は換金できるようなものばかりだったりする。何しろ日本国からの要請で土地は勘弁し  
て欲しいとの要請があったかららしい。  

自衛隊指揮官が目録を受け取った瞬間、王国の騎士連中。特に大貴族中級貴族からの激しい敵意の視  
線がダース単位で浴びせかけられたのには困った。自分たちがヘッポコだった(と言うより技術レベル  
が違いすぎ)を棚に上げ、自分たちが受け取るはずだった恩賞を『どこの馬の骨とも知れない奴ら』に  
浚われ、さらに『土地はいらない』という事が常識破りとして敵意をあおっているようだ。  

そのうちに騎士たち向けになった。筆頭はクラウスちゃん。そりゃそーだろー王国軍でもトップどこ  
ろか自衛隊側からも感謝された『敵司令部まるごと捕虜』という功績を挙げたのだから当たり前…な  
のだが…  
「次に騎士に移ります。騎士アス殿。前へ」  
(゚Д゚)ポカーン  
侍従長の発言を聞いた自衛隊関係者が、全員顔を見合わせ、ざわついた。当然僕もだ。  
得意満面なアスが王の前に立つ。  


496  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/16  23:58  ID:???  

143  
「騎士アス殿。あなたは修道院防衛において騎士をまとめ、積極的に敵と戦い、敵将を捕獲した部隊  
を指揮した功により、恩賞を授ける」  

(゚Д゚)ハァ?  
自衛隊関係者が全員首を45度傾けた。えーとまさか。  
クラウスちゃんはアスの指揮下にあり、アスが指揮を放棄したりいなくなったとしても形式上はアス  
が指揮している。ならばその功績のかなりはアスのもの?何を考えているんだ?  
あ、確かアスはマルス伯爵家の三男(12回目の投稿を参照)だったな。まさかオヤジに泣きついて横  
取りしやがったな!をいをい。信賞必罰は組織の基本だろう、これでは組織が崩壊してしまうぞ。  

次にクラウスちゃんが呼ばれた。  
「騎士クラウス殿。あなたは騎士アス殿の下、彼を助けて敵将を捕獲するなど目覚しい功を立てた事  
により、恩賞を授ける。なお、恩賞は北方開拓地優先開拓権である」  
これには騎士たちがどよめいた。ただし上級・中級貴族はニヤニヤして。下級貴族や騎士は驚きで。  

「草壁君これはまずいぞ」  
隣にいた自衛隊の人がささやいた。  
「確か北方開拓地は、気候や作物の関係で開拓がほとんど放棄された所だぞ。それ故領土は広いが」  
「マジですか。形式上は広い領土を与えているが、実際は無価値…これもアスの差金か」  
「おそらく。不幸中の幸いか、確かクラウスちゃんの領土はその開拓地の入り口です」  
「最低」  

どよめきはあるが式は滞りなく進んだが、最後にとんでもない爆弾発言が炸裂した  


497  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/16  23:58  ID:???  

144  
その爆弾発言はアスの口から出た。  
「今回の恩賞を一部返還致します」  
式場が一斉にどよめいた。おーヤク中でも流石は騎士。ここまでひどい差別に憤ったか。  
「返還の代わりにお願いしたい事がありますそれは…騎士クラウスと草壁守を対象にした一騎討ちの  
許可です」  
前言撤回。  
「騎士クラウスと草壁守は常に私を愚弄し、邪魔をし続けました。もうこのような行為には我慢なり  
ません!」  
(゚Д゚)ハァ?(゚Д゚)ハァ?(゚Д゚)ハァ?  
「おお、一騎打ちかこれは楽しみだ」  
「やはり騎士たるものこうでなくては…」  
と的外れな意見が貴族から聞こえる。この雰囲気では確実にクラウスちゃんは受けてしまう。と言う  
より受け入れなければならない状態に追い込まれた。どうしよう。  

「…我が誇りにかけて、その一騎打ちをお受け致します」  
「ならばこの場で…」  
「異議ありっ!!」  
発言の順番はクラウスちゃん、アス、僕の順。  

「騎士クラウスはともかく私は一騎討ちの作法も何も知りません。そのような者に一騎討ちをさせる  
のは騎士の誇りを汚すだけではなく、私も納得いきません。さらに、このめでたい式を血で汚すのは  
どうかと思われます。よって一騎討ちを1月延ばして頂きたい。そこでお互い完璧な準備を持って行  
いましょう。後はもう1つ。2対1は卑怯ですので対象は私だけにして頂きたい」  


498  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/16  23:59  ID:???  

145  
式場が大きくどよめいた。貴族も、騎士もそれぞれが話を始めて収拾がつかない。  
自衛隊はそれほどでもないが、外務省の人が顔を真っ青にしている。  

「待ってください!草壁は軍人ではなく自衛隊に雇用された民間人です!」  
伊良子3佐をはじめとした自衛隊が止めにはいるが…  
「民間人であろうと騎士の誇りを傷つけた者は許せぬ!」  
というアスのセリフには勝てなかった。ここではアスの発言の方が王国の常識に合致している。  

「一騎討ちを双方が認めた事により、1ヶ月後の一騎討ちを認める。詳細については追って知らせる。  
これにて報告会を終了する。30分後に凱旋パレードを行うので準備をお願いします」  
侍従長の発言により式の終了が宣言された。  

そのは大変だった。控え室に戻った瞬間。  
「草壁君。君はすぐに日本に戻りたまえ。このままでは日本の国益を害する」  
と外務省の人から強烈な意見を食らったからである。  
「ここまで言い切ってしまってはもう無理です。ここで引いてしまってはそれこそ『日本人はヘタレ  
』との風聞が広がり、国益を損ねます!それに草壁守としてそれは許せません」  
「貴族だけに広がる意見ならどうにでもなる」  
「もうこの段階で騎士どころか一般人にまで広まっています。と言うよりアスが積極的に広めます」  
外務省の官僚が頭をかかえた。  
「もう無理か。せっかく得点を稼ぐチャンスだったのに…それで草壁君。そこまで言うなら勝算はある  

のだろうね?」  
「勝利条件で最善は私の勝利です。次善はクラウスちゃんが無事でいる事です。よって半分はこの時  
点で勝利しています。後は魔法で強化した肉体を使って勝利を掴むのみなのです」  




763  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/22  21:00  ID:???  

39回目の投稿  
輸送戦記?  
146  
外務賞の官僚を納得させたと思ったら、今度はクラウスちゃんが飛び込んで来た。  
「守!何であんな事をいいだしたの!守には無理だよ!」  
控え室に入って来て開口1番がコレだ。まぁ気持ちはわからんでもないが。  

「クラウスちゃん。今はこれが最善です」  
「そんなことない!2人でかかれば…」  
「それこそ一騎討ちの作法に反するのでは?」  
「うー」  
「体格でクラウスちゃんはアスより上ですか?」  
「うー」  
「剣術はアスより上ですか?」  
「うー」  
「朝の練習(17回目の投稿60を参照)で僕に勝った事は?」  
「うー」  
「単独でアスに勝つ自信は?」  
「うー」  
「クラウスちゃんは、勝てない」  

クラウスちゃんが涙を目に浮かべながらこっちを睨んでいる。ちょっとイヤだがここまで言わないと  
納得しないしな。  
「ここまでクラウスちゃんにとって不利な条件が揃っているのではクラウスちゃんを出すわけにはい  
きません」  
「そんなのやってみなくちゃわからないもん!」  
「クラウスちゃん!」  
思わず声を荒げてしまった。  


764  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/22  21:01  ID:???  

147  
「その考え方は1番やってはいけないよ。クラウスちゃんはいつかできる自分の子供にこう言うの?  
『お母さんは自分の命を賭博の対象にしたんだよ』と」  
「そうでもしないといけない時だってあるもん!」  
「その時はいつかは来ます。でもね、そんな賭博は極最小にすべきです。いつもそんな賭博をして  
はツキがなくなります。必要な時までそのツキはとっておきましょう」  
「で、でも」  
「日本は昔、自分の国を賭けの対象にして『仕方が無い』という理由で戦争に突入し、全てを失い  
ました。僕はそんな事を繰り返す事はごめんです」  
「なら守は勝てるの?」  
心配そうにクラウスちゃんが僕を見つめる。  
「情報を集め、最強の装備を整え、こちらが望んだ戦い方ができれば」  
嘘は言っていない。  
「向こうの能力・装備・戦術を全て知る事ができればそれに対抗できたり、裏をかく事だってできま  
す」  
理想は子供でも勝てるレベルにまで準備を整える事なんだよね。もっとも、最強は戦わずに勝つなん  
だけど。  
そろそろクラウスちゃんも納得してきたかな?それじゃトドメといくか。  
「いつか言いましたよね。少しは大人を頼れと。子供の尻拭いをするのは大人の義務です。もっとも  
今回は僕にも原因がありますからなおさら僕がカタをつけなくてはいけません」  
そう言ってクラウスちゃんの頭を「くしゃくしゃ」と撫でた。  

「…本当に、大丈夫なの?」  
「勝てないいくさはしませんよ」  


765  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/22  21:01  ID:???  

148  
「!」  
そろそろパレードの時間なので控え室を出て、曲がり角を曲がったらたら…アスとそのとりまき連中  
にばったり出くわした。  

「そこの小人。尻尾を巻いて逃げ出す準備か?はっはっは」  
「そちらこそ小便はすませたか?神様へのお祈りは?部屋のスミでがたがたふるえて命乞いをする  
心の準備はOK?」  

無事に済むとは思っていなかったがまぁよかろう。使ってみたかったセリフも言えたし。と丁度いい  
からアレを聞いてみるか。  
「アス。1つ確認をしたいが」  
「…何だ小人」  
「あなたは最初から僕たちを目の仇にしていましたが、その理由は何です?今のうちに聞いておかな  
いとあなたが魔女の大釜で水泳を初めては聞けないのでね」  
「…フン。理由、理由か。理由など無いが、あえて言えば…お前らの顔が気に入らない。お前らの声  
が気に入らない。お前らの臭いが気に入らない」  
絶句。  
いきなりアスのとりまきの1人が僕の顔に向けてパンチを仕掛け、僕は反射的にそれを払った。  
「おやおや、私たちはクソ生意気な小人を『教育』する為に『寸止め』をやろうとしたのに暴力で返  
されるとは。全く『お約束』というものを心得ない野蛮人はこれだから」  
「教育。お約束。だと!」  
「当たり前じゃないか。高貴な貴族が野蛮人に『教育』を施す。これぞお約束。そうだろう?」  
アスがそう取り巻きに促すと、取り巻きが一斉に笑った。全員が同意見か。腐ってやがる。  
そう言った後、アスたちは廊下を進んで行った。  


766  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/22  21:02  ID:???  

149  
「守…」  
見ると後ろにクラウスちゃんがいた。しかも僕の上着を心配そうにつかみ引っ張りしている。こりゃ  
離してくれそうにない。  
さらに後ろには伊良子3佐をはじめとする自衛隊や官僚の人たちがぞろぞろ。  

「あのー先程の会話…」  
「全部聞いた」  
僕の後にすぐ部屋を出てきて立ち聞きしてしまったのか。  
「草壁君。我々は最初からそのつもりだが、自衛隊は君を全面的に支援する」  
「伊良子3佐…よろしいのですか?」  
「あそこまでこちらを虚仮にするような奴には1発食らわせて『教育』をするべきだ」  
確かに。  

「外務省としてもあれほどこちらに対しての侮蔑が強いのでは外交が非常にやりにくい。ここで相手  
をへこませるのは良いと思いますよ。それにしても攻防戦や追撃戦であれほど火力を見せ付けたのに  
なぜあのような行為をとるのか理解できません」  
外務官僚まで同意してくれるとは。アスの態度に腹を立てているに違いない。  
「ありがとうございます。けど、本省の方はどうするんですか?」  
「本省(外務省)はおそらく確実に止めるように指示するが、こちらの情況では止めるのはもう無理  
だ。そこらへんを証拠と一緒に報告するつもりだ。そしてこの情況から最大の利益を引き出す。外務  
省が外交で君の尻拭いをしてやる。若造の尻拭いをするのは上役の仕事だ」  
「すいません。ご迷惑をおかけします」  
「なに、構わんさ。ここで上手くトラブルをさばけばこっちの評価があがる」  
「上手くさばいて目指せ吉田茂ですか?」  
「私は傍流でね。石射猪太郎で満足するさ。まぁそれすら過ぎた願いではあるが、な」  




790  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/23  22:24  ID:???  

40回目の投稿  
輸送戦記?  
150  
王国主催の祝勝会から3日後。  
「これより対策会議を始める」  
場所は自衛隊首都そば基地にある会議室。  
出席者は僕に伊良子3佐をはじめとする自衛隊関係者に、外務省官僚に科学者に、姐御こと魔法使いの  
ルローネ&ミランまでいたりする。  
議長は伊良子3佐だ。  
「この会議は、アスの戦力の推定と対応策を検討するのが目標である。まずはそれぞれの持つ情報を  
出して欲しい。それでは始めてくれ」  
1番最初は自衛隊の情報担当から。  
「対象の身長・体重は草壁氏とほぼ同等。体格的ハンデはありません。ただし、草壁氏が魔法と訓練  
により体力が向上し続けているのに対し、対象は麻薬の使用により体力等の低下が見られます」  
「どのぐらいの低下か分かりますか?僕は実際に戦うので分かると楽なんですが」  
「精密測定がされていないので低下の具合は分かりません。ですが王国側から引き出した麻薬中毒者  
データには体力低下が見られます。詳しくはさらなる調査が必要です」  
うーん。困ったな。詳細はわからずか。  
「次に反射神経等ですが、こちらは草壁氏が圧倒的有利と思われます。理由としては魔法による感覚  
系強化があげられます。詳細については修道院攻防戦前に採られたデータがありますので資料A-25を  
参照してください」  
感覚系が上っつーのは心強いな。  
「対象の武装ですが、鎧兜に身を固めた中世騎士の武装になります。主武装は剣です。これは諜報に  
おいて対象が弓矢・斧・槍を使用したという情報が無かった事と、攻防戦での実戦データから見て間  
違いありません。ただし問題があります」  
そう言って担当者が水を1杯飲んだ。問題って何だよ。  
「魔法の武器です」  


791  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/23  22:25  ID:???  

151  
「我々が知る物理法則とは全く異なる『魔法』による武具の強化があります。幸いな事に半永久的処  
理の技術は失われ、そうでない期限付きの処理技術はエルフ・ドワーフ族しか所有していません。さ  
て、肝心の対象の武装ですが、上級貴族はたいてい一般には流通しない上位クラスの『魔法の武器』  
を家宝あるいはそれに準じた扱いで所有しています。そして重要な戦いにはそれを持ち出す事がよく  
あるそうです」  
最低。こっちの武器をあっさり切り飛ばせる剣に、こっちの攻撃を跳ね返す鎧。どーせいっちゅーね  
ん。88Flakがない状態で街道上の怪物とガチバトルしろっつーのかよ。  
「対象の一族が保有している武器については名称は分かっています。剣は『煉獄』。盾は『夢幻』。  
鎧については不明ですが、いずれも高レベルのものです。強度などは科学者の方から詳細が出ます。  
ともかく強力な武装である事は間違いありません。以上です」  
88無しでJSと殴り合いに訂正。  

「次に文部科学省の方にお願いします」  
ひとつ溜息をついた伊良子2佐が次の人を促す。  
「先日の先頭で帝國軍大将が着用していた武具についての解析結果が本土から来ました。参考にはな  
ると思われます。さて、剣についてですが、非破壊検査で成分は単なる鋼鉄であるとわかりましたが  
…この世界での冶金技術から見てありえない程の硬度と、同体積の半分という性能があります。もし  
こんな性質がある鉄がこっちの主流ならば学会が白鳥の湖を踊るぐらいの衝撃ですな」  
「そう言うのならば実際は違う?ああ、伊良子さんと呼んでください」  
「はい、ありがとうございます伊良子さん。その武具は魔法の武具でした。魔法による永久強化が働  
いていて、残念ながら魔法の解析はまだ…」  
少し科学者の人が肩をおとした。そりゃまーある意味『科学の敗北』みたいなもんだからなぁ。  
「それは仕方がありません。情報によれば高レベルの魔法武器のほとんどは『統一帝国』の頃に造ら  
れ、今では解析すら難しいそうです。あなたがたのせいではありませんよ」  
「ええ。ですがこれからも解析は進めます」  


792  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/23  22:26  ID:???  

152  
「鎧に関してですが、材質と重量については剣と同じなのですが…物理法則に反したものがありまし  
た。衝撃が軽減されるんです」  
…え。そりゃ凄いぞ。  
「衝撃試験で内部に浸透した衝撃が、理論値の70%に留まりました。ここまで常識外れなものとは思  
いませんでしたが、これが現実です。以上です」  

科学者の意見を聞いて全員が意気消沈。現代のものより頑丈で軽いボディーアーマーを着たのが相手  
?冗談だろ。どーしよう。  

「次にルローネさんかミランさんお願いします」  
顔色が悪くなった伊良子2佐が促す。  
「アタシが代表するぞ。まず魔法の武器を無効化するのは無理だ。ただし破壊は可能だ。その方法な  
んだが、とんでもない負荷をかけるか、あるいは同じ魔法の武器で傷つけるしかねーな」  
まぁいくら頑丈なものでもそれ以上の負荷をかければ壊れるのは当たり前だな。  
「アタシが知っている魔法に魔力付与の支援魔法があるが、こっちは効果時間が短い。ただし手間暇  
がとてもかかる儀式魔法にすると、いくらかは時間が延びる。問題はどちらにしても統一帝国期のも  
のには絶対かなわない性能にしかならない事だな」  

情報は悪いものばかり。さっきよりさらに伊良子3佐の顔色が悪くなっているような気がする。  
「次に外務省の方、お願いします」  
伊良子3佐は声だけは平静を保っているな。  
「外務省で掴んだ一騎打ちの作法ですが、完全に1対1。見届け人を各2名。殺害してもお咎め無しで  
す。使用武装ですが、大抵は剣などの近接武器。たまに槍やハルバードなどの中距離武器。ごくごく  
ごくまれに弓があるそうです。よって弓の延長上と解釈して銃器を使用できると思われます」  
お、それは心強い。  
「ただし問題が…」  


793  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/23  22:28  ID:???  

153  
おいおい何だよ問題って。  
「本省からの指示によると、相手を殺すなとの指定が来ました。この指定には外務大臣だけでなく、  
内閣総理大臣の署名もありました。理由は一騎打ちを利用した交渉を行うそうです」  
…手加減できないぞ。  
「後、王国でさっそく一騎打ちについての賭けが始まりました。もっとも信頼がおける盗賊ギルド  
のもので、こちらが多少不利。これが酒場等で交わされる話や賭けでは圧倒的不利になっています。  
ああ、今回の情報についてですが、対象の親族が意図的に広めた形跡があり、主要街道においては  
今頃みんな知ってます。帝國軍もです。恐らくあと10日もすると王国全土にまで広まるでしょう」  
「ちょっと待ってください。もしかして当日、僕は大観衆の中で戦う事になりそうなんですけど」  
「まさにその通りです。会場は当初城内のようですが、郊外に変更されそうです」  
うわ〜イヤだ。  
「後、さらにまずい事ですが、対象の親族がごろつきを集めているとの噂が流れています。ここから  
は私の推測なのですが、自衛隊員や我々を拉致してわざと負けるように脅迫する計画があるのではな  
いでしょうか。よって外務省としては注意を呼びかけます。以上です」  

伊良子3佐はもう真っ青。  
「襲撃についてはこちらでも予想し、情報もある程度まで掴んでいる。実は昨日から警戒態勢に入っ  
ている。外出時には武器を携帯し、複数行動を義務づけ、基地警備は強化している。ああ、草壁君」  
「はい」  
「君が1番危険だから一騎打ちまでは基地から出る事を禁じる。かわいそうだがクラウスちゃんも同  
じだ。何せ最大の標的だ。ケガだけでも情況が悪化する」  
溜息をついて了承する。  
「わかりました」  

最悪。いったいどうなるんだろう。  



932  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/29  20:30  ID:???  

41回目の投稿  
輸送戦記?  
154  
「敵の状況が出た。それでは次、こっちの状況は?」  
まだ会議は続く。  
「それではこちらについて説明します」  
そう言って陸自の担当者が説明を始めた。  
「先程の説明の通り、使用できるのは近接攻撃の刀剣・槍などの長柄武器・弓矢とその延長としての  
銃器です。この中から槍などの長柄武器が脱落します。長柄武器は集団戦においては少々の訓練で使  
用できますが、個人での使用はかなりの訓練が必要です。確かに相手を近づかせずに一方的に攻撃で  
き、払いなどの遠心力を使用した攻撃での打撃力などは魅力ですが、たった1ヵ月では無理です。あ  
っという間に接近されてしまうのがオチです」  
あー確かに。いきなり槍とか薙刀を持たされても困る。  
「次に弓矢ですが、こちらも負けず劣らず習熟が必要です。こちらでの決闘の記録によると、那須与  
一級の射手が魔法の弓を使ったそうです。よって度外れた優位が無いと無理です」  
イングランドの長弓兵だったかもかなりの熟練が必要と聞いたしなぁ。  
「刀剣ですがこれについては条件付ながら有効と思われます。草壁氏は昔、剣道を習っていたので多  
少は慣れています。それに教官もいます」  
?教官?聞いておこう。  
「あの〜教官って誰です?日本から居合いの先生でも呼んでくるんですか?」  
「最初はそれも考慮しましたが、ここは各国の特殊部隊の方に教官役になってもらいましょう。無論  
我が陸自の格闘技教官も含めてです」  
まぁ、特殊部隊には近接格闘もカリキュラムにあるか。  
「最後に銃器ですが、対象の殺害が禁止されている事から見てロケット弾を含む重火器は使用できま  
せん。よって小火器、それも非致死性のものになります。これならば既に訓練をある程度受けている  
ので使用できると思われます」  


933  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/29  20:33  ID:???  

155  
「次に装備ですが、モデルはローマ帝国期の『剣闘士』です。防具は通常戦闘服+アーマージャケッ  
ト+ヘルメット。これに加え対魔法処理を施した盾と、小剣を数本。そして銃を携帯します。小剣の  
複数所持は、魔法の剣の強度が高いので打ち負けて折れる可能性があるからです」  
え〜。そんなに持つのかよ。  
「すいませんが、それはかなり重いと思うんですけど」  
「大丈夫です。草壁君には魔法によるブーストがありますから。それにこれから訓練でさらに増やせ  
ば良いのです。格闘訓練を行えば確実に体力は向上しますので」  
え〜  
「え〜とそれじゃ訓練って基礎体力+格闘+射撃を全部?1ヵ月で上げられるところまであげるから  
とんでもない猛訓練になるんですか?」  
「はい。その通りです」  
最悪。  
「それとも草薙君は訓練なしで戦って負けます?」  
それは願い下げだ。  
「訓練をやらせていただきます」  
「ならば決まりですな。こちらに訓練計画書がありますのでこれに沿って行います。熟読を」  
事前準備がしてある!つーことはもう特殊部隊にも声がかけてあるんだろう。なんつー手回しの良さ  
か!  
「結論はもう出たようだな。それぞれの部署はそれぞれの仕事にかかるように。何か質問は?」  
伊良子3佐が締めに入った。  
「ところで訓練の日付が明日になってますが」  
「我々も鬼じゃありません。今晩ぐらいは楽しんでください。明日からは地獄行きですので」  
もう引き返せないのね。やるしかないのか。トホホ。  


934  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/29  20:34  ID:???  

156  
会議が終わって背伸びをしながら部屋を出たら、クラウスちゃんがいた。どうやらずっと会議室の前  
で待っていてくれたらしい。  
「ずっと待ってたの!この時間まで?」  
「迷惑だった?」  
「そんな事は無いよ。…あーそろそろ夕食だから食堂に行こうか」  
そう言って食堂に向かおうとしたら、クラウスちゃんは普通に歩かず、僕の上着の裾を『つかみひっ  
ぱり』しながらついてくるのにはまいった。  
「あの〜クラウスちゃんはどーしてそんな事をするのかな?」  
「迷惑だった?」  
「そーゆー事はないけど」  
「ならいいでしょ」  
別に悪くはないんだけど、けっこう照れくさい。その証拠にすれ違う人たちの目が痛い。羨望の目やら  
なにやらにさらされて歩くのは慣れてないからなぁ。  

「守…一騎打ちはどうなるのか決まったの?」  
「ほぼ決まり。明日から先生の下で地獄の猛特訓が決まった」  
「なら…私もやる」  
思わず立ち止まった。  
「クラウスちゃんちょっと待て。多分それは無理」  
「無理じゃないもん!」  
「体力が追いつかない」  
「大丈夫だもん!」  
クラウスちゃんってこんなに頑固だったっけ。  
「しょうがない。後で相談しておく」  
「うん。ありがと」  


935  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/08/29  20:34  ID:???  

157  
「やはりここは初手でのスタングレネード6発同時起爆による短期決戦こそ最上」  
「いやいや『○チガイナスビ』で気絶させるべき」「それはアンバーにしか使えんからボツ」  
「ならば事前に洗脳してしまえば…」「ジェイドなんか連れて来たらこっちが洗脳されるっつーの」  
「インパルスはアァァァァ世界イチィィィィ!」「ここはマスタードで」「辛子は効きそうだな」  
「そっちじゃなくてガス」「藻前は観客も巻き込む気か」「ならば催涙ガスで」  
「とにかく化学戦から離れろおまいは」「やはりここは火炎放射で…」「殺してどーする殺して」  
「燃料タンクに1発食ったらしまいだぞ」「いやいやここは最強の格闘技『プロレス』技で…」  
「飛び道具はどーする」「非殺傷兵器で有名な刺又で捕らえてしまえば」  
「やはりスコップの優位性は否定できない」  
「やはりここはレールガ」「猊下を召喚してどうすると小一時間…」「ポリウレタンなんてどうよ」  
「鉄なら磁石!」「かゆみ液…自爆したら最悪」「斬馬刀で一刀両断」「対物ライフルの狙撃」  

食堂に着いたら「朝まで○テレビ」状態だった。  
まったくお前らは某巨大掲示板群かと小一時間…  

「おおっ!本人がお見えだ。ここは本人に加わってもらうのが1番だ」  
「おお、そうじゃそうじゃ」  
をいをいなんだか風向きが妖しいぞ。  
「草壁!お前はどう思っているんだ?」  
そう言いながら議論に引っ張り込まれた。  
「あっ守!」  
体も引っ張り込まれた。  
「その前にメシを食わせてくれ〜」  

開放されたのはそれから4時間後の事だった。  



296  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/06  21:35  ID:???  

42回目の投稿  
輸送戦記?  
158  
翌日。さっそく訓練が始まった。  
「これより訓練を開始する。まずか基礎体力からだ」  
「はい!」×2  
「誰がそんな腑抜けた返事をしろと言った!返事は英語!」  
「Sir  Yes  Sir!」×2  
訓練教官のハー○マン軍曹な教官がわざわざ連れてこられてつきっきりになる事になった。教官にシゴ  
かれるのは僕(草壁)と、一緒に訓練をすると言って聞かないクラウスちゃんだ。  
「教官。質問があります」  
「何だ草壁」  
「何で僕は各種迷彩服+ボディアーマー+背嚢合わせて50sを装着しているのでしょうか」  
教官が鼻で笑った。  
「それじゃあ教えてやるこのスカタン。お前がそのボディアーマーに慣れる事と、魔法の補助がある  
から通常より重くしないと訓練の効果があがらんからだ」  
それを聞いて僕のの横で立っていたクラウスちゃんが質問した。  
「それではなぜ私は服だけなのですか?」  
「実戦に参加しない。後は医官からの注文と、13歳の娘にキツイ訓練を施しては体を壊しかねんから  
だ」  
「で、でもそれは守も…」  
「奴は魔法の補助があるからある程度は問題無い。それにこれぐらいの苦境で音をあげるか?」  
最後のセリフは僕を見ながら言いやがった…んな事言われたらこう答えるしかないじゃねぇか。  
「大丈夫です。これぐらいは耐えられます!」  
「がっはっは。それでこそ野郎だ。よーしそれじゃあ始めるぞ!」  
「Sir  Yes  Sir!」  


297  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/06  21:36  ID:???  

159  
自衛隊体操で体をほぐした後、さっそくランニングを開始!  
「声がちいせえ!」  
「Sir  Yes  Sir!」  
と言われながら基地内を走る。走る。ひたすら走る。歩兵は走るのが商売云々というのがあったが、  
ここまできついのには困った。こっちはアゴが出そうだ。まーアゴを出してもペースは落とせない  
から我慢してはしるしかないんだが。  
クラウスちゃんがなんだかヤバそうだが大丈夫かな?  

10kmあたりでクラウスちゃんがバテた。つーかよくここまで持ったな。  
「クラウスちゃん大丈夫」  
「だ、だいじょ、う、ぶ」  
「全然大丈夫ではないな」  
やっぱりまだ13歳だからなぁ。強がって大丈夫なフリをしているけど、バテバテなのはもろわかり  
だ。  
「んーしょうがない。草壁、お前クラウスちゃんを背負って走れ」  
「え、背負うんですか?」  
「そりゃそーだろ。ここは建物から離れている。バテたクラウスちゃんをここにほっぽり出すか?」  
「そーゆー訳にはいきませんな」  
「わかったらさっさと背負え」  
そう言われてクラウスちゃんを背負った。今、装備している重量とクラウスちゃんの体重を合わせた  
ら…自分の体重より重いぞこりゃ。クラウスちゃんの体重は極秘扱いになっててわからんが。  

さすがにランニングのペースは落ちてしまった。つーかこんな状況でペースを落とさない奴がいたら  
見てみたいもんだと思いつつ、建物まで戻ってきた。  
「よーし。これより30分の休憩に入る。休憩後は屋内訓練場に来る事」  
助かった。  


298  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/06  21:37  ID:???  

160  
地面に座り込んでゆっくりしながらスポーツドリンクを飲んだ。  
クラウスちゃんは大丈夫みたいだな。安心安心。  

「ごめんなさい、守」  
「なに、いいっていいって」  
そう言ってまたスポーツドリンクを飲み、寝転がって空を見上げた。  
「いい天気だ」  
空を鳶が飛んでいる。  
「うん。領地でもよくこんな風に寝転がってたな」  
「そういえば今まで聞かなかったけど、クラウスちゃんの領地ってどーゆー所?」  
そう言ってクラウスちゃんの方を見た。  
「そうだね…気候はここよりも寒くて、土地はやせている。けど領民はみんな元気で優しいんだ」  
「クラウスちゃんはそこで生まれたの?」  
「うん。ちょっと前までは領民の子供たちと一緒に遊んだりしていたんだよ」  
まぁほんの少し前まで子供だったんだから当たり前っちゃあ当たり前なんだがな。  

「へぇ、みんなとの関係は良いから後は良い実りがあればいいんだろうな」  
「うん。でもそれが難しいんだ。父上が亡くなってから記録を見たんだけど…収穫がものすごく低く  
て、父上はいつも苦労していたんだ」  
「マイヤーさんも一緒になってなんとかしようとしたんだろうな…」  
「そうなんだ、守。でもそう簡単には行かず、多分その心労で父上は…」  
ありゃ、まずい方向にいっちまったな。  
「…ごめん。クラウスちゃん」  
「いいんだ。これは本当の事なんだし、父上も本望だと思う。ただ、解決できないのが心残りだろう  
けどね」  
クラウスちゃんの無理した笑顔がなんだか悲しい。  




300  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/06  21:39  ID:???  

161  
痩せた土地。日本の農業技術を突っ込めばなんとかなるんじゃないのか?。  
「問題は痩せた土地か…」  
「それだけじゃないんだ、守。水なんだ」  
「水が不足しているの?クラウスちゃんの所は」  
「水は近くの河から取るから大丈夫なんだけど…水に『黒い水』が混じるんだ」  
「黒い水?」  
黒い水って何かあったっけ?F世界特有の何かかな?  
「その黒い水って何なの?クラウスちゃん」  
「黒くて、ネバネバしていて、大量に流れ込むと畑がダメになる。飲めない。昔、黒い水を飲ん  
だ領民がいたそうだけど…」  
「どうなったの?」  
「体を壊して亡くなったんだ」  
飲用×農業用×毒性アリの黒い水か。  
「でも大丈夫だよ。日本の技術はけっこう良くてさ、砂漠にメロン畑を作るような事もできる。水  
をキレイにする力もある。クラウスちゃんの所にも技術が入ればすぐ良くなるよ」  
「そうなの?」  
「そうさ。親日本なクラウスちゃんを見捨てる奴はいるだろうか。いやない(反語)。だから援助は  
すぐに入るさ」  
「本当?」  
「砂漠に行って、給水作業を完璧にこなして、そして全員が無事に帰ってきたような頼もしい人たち  
がいる。そんな人たちが派遣されたなら問題なんてすぐに解決さ」  
味方を増やす為にも援助は絶対入るから大丈夫だろう。  
「お、そろそろ時間だ。屋内練習場へ行くよ」  
「うん!」  




442  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/12  21:10:24  ID:???  

43回目の投稿  
輸送戦記?  
162  
次の訓練は接近戦…といきたいが、練習前に『どのように戦う』かについての説明等がまだだったので  
まずは座学からになった。先生は特殊部隊の隊長で、接近戦の教官も務めたことがあるベテランだった  
りする。  

「軍隊系の接近戦ではナイフ戦が主流だ。草壁の使用する山刀+盾の戦法とは武器の性質などが違う  
が、ある程度の共通性があるので応用したものをお前に教える」  
教官はそう言って方針を説明した。細い優男だけど…顔の傷がすんげぇ怖くて、雰囲気がそれこそ  
ナイフみたいに鋭い教官にこれからみっちり絞られる事になった。  

「まずは自分の使用する武器について理解しろ」  
整備長からあがってきた実物大モックアップを用いての説明。まー自分の武器について知るのは基本  
ですが、ところでこりゃなんだ?  
「教官。盾がファンタジーでよく見る丸型や角型ではなくなんつーか流線型なんですか?あとはこの  
デコボコは?」  
「ああ、形状だが魔法の剣を馬鹿正直に受けると材料が保たないし疲れる。だから『受け流す』機能  
を重視した。その上で最適な形状を考えたらこうなった。強度は特殊な材料を使えばいいんだが、そ  
んなに予算や材料が余っているわけでもないらしい」  
「厚みで誤魔化せませんか?」  
「その分重くなるがいいのか?」  
確かに。  
「次に盾にある突起だが、盾で殴る時に使用する。盾をある程度の重量があるから鈍器になる。使わ  
ない手はないだろう」  
「使えるものは何でも使えとゆーやつですか」  
「その通り。この他にも足技なども教えるぞ」  


443  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/12  21:11:00  ID:???  

163  
「そういえばこのスタイルは古代ローマの剣闘士だそうですが、ならば他の…網闘士(投げ網+三叉  
矛装備)でもいいのでは?そっちの方が楽そうですしそこらへんはどうなのです教官?」  
「確かに俺もそう思う。だが資料によると今まで網を使った奴が1名いたそうだ」  
「なら良いと思いますが」  
「卑怯者と書かれていた」  
やっぱ卑怯なのか。ダメじゃん。  
「他に重装備な剣士も候補にあがったが、重すぎてデメリットが大きかったりしたのでダメになった。  
戦車闘士なんて戦車…と言ってもチャリオットに乗った奴だからもう論外だぞ」  
「それで結局はコレに落ち着いたワケですね」  
「奇をてらったものよりオーソドックスなものの方が信頼性があるから問題無い」  
「…ポルシェ博士が作った戦車なんてご免みたいなものですか?」  
「わっはっは。そんなもんだ」  

なんだか座学とゆーより雑談会のような気がしてきたが、要点が押さえてあれば変に堅苦しくする必要  
はないんだろうな。  

「教官。それなら足技も卑怯と言われるような気がしますが」  
「網をつかうよりゃマシだ。草壁」  
「そりゃそーですが」  
「足技と言っても蹴りやひっかけとかそれぐらいだ。腕より力がある足を使わないのはもったいない。  
それに相手のバランスを崩すのに足を攻撃するのはよくある事だ。それに聞いた話だと日本の剣術にも  
足を攻めるやり口があったらしいじゃないか」  
「なら大丈夫かな?」  
でも不安だな。あ、ここで唯一騎士としての戦闘を知る人物がいるじゃないか。  
「クラウスちゃんはどう思う?」  


444  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/12  21:11:52  ID:???  

164  
クラウスちゃんは少し困り顔。  
「うーん」  
「やっぱ足技はダメ?」  
「正規の訓練にはくみこまれていないよ。守」  
「ならダメか」  
「でも、実際の戦いではみんなよく使っているってマイヤーが言ってたよ」  
本音とタテマエってやつね。  
「ほう。なら採用は決定だな」  
これは教官。  
「それじゃあ特殊部隊流の足技ってのをお願いします。教官」  
「おぅ。まかしとけ」  

この後は細かい所の打ち合わせに入った。  
「教官。一撃必殺ってのはダメですか?」  
「ダメ」  
「何でです?」  
「外したらどうする。一撃必殺はいいが、それをやった後は絶対隙ができるぞ」  
「それではどうします?」  
「向こうの防御力がかなり上だからな。手数を多くして、難度も相手の装甲が弱い所を叩くしかない  
な」  
「で、打撃の蓄積による相手の疲労を待つ?」  
「そうだ。そうすれば強度がよくわからん魔法の鎧相手でもなんとかなるだろう」  
「装甲を抜くことができないから中の人をなんとかしようって所か。…日本海海戦の時の連合艦隊?」  
「なんだそりゃ?」  
「装甲が抜けないから下瀬火薬の爆発力で人や機械を吹っ飛ばす。そうして戦闘力を奪おうという戦法  
ですよ」  


445  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/12  21:12:36  ID:???  

165  
「そろそろ時間だ。次は昼休み後に射撃訓練場だ。遅れるなよ」  
そう言って教官は屋内練習場を後にした。僕たちも行くか。  

「守。なんとかなりそう?」  
「なんとかなりそうだ」  
クラウスちゃんと話をしながら食堂へ。  
「クラウスちゃんこそどう?」  
「うーん。今まで習ってきた事と違う所があってっ混乱しそうだよ」  
まぁ騎士のやり方と軍人、それも特殊部隊のやりかたとは違いも大きいわな。  
「まーゆっくり覚えりゃいいさ」  
「ゆっくりだと守を手伝えないよ」  
一生懸命背伸びをしたがっているみたいだな。  
「なに、ゆっくり覚えてゆっくり大人になってくれ。そっちの方が助かるよ」  
「あ、守…また私を子供扱いした」  
あーすねちまった。  
「ごめんごめん。そんなに拗ねないでくれよ」  
「ふーん(怒)」  
「食堂で何かおごるからさ」  
「何をおごってくれるの?」  
「食堂長特製プリン(500円)でどうだ」  
「しょうがないなぁ。それで手をうってあげよう」  
なんだかんだ言っても子供だな。もっとも食堂長特製プリンは異常な程の人気を誇るからしょうがな  
いか。  

その後食堂で定食を腹いっぱい食べ、クラウスちゃんにプリンをおごらされ、30分だけ昼寝をして、  
それから射撃訓練場へ向かった。  




584  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/19  21:13:14  ID:???  

44回目の投稿  
輸送戦記?  
165  
射撃訓練場前で待っていると、米陸軍の教官が銃を持ってやってきた。  
「待たせたね。それでは始めようか」  
そう言って5.56o銃弾使用の自動小銃を僕に渡した。  

「あの、教官。僕が使うのはコレに決まったんですか?」  
「ああ、そうじゃねぇ。まだ決まってねぇからまずはコイツで銃に慣れてもらうから持ってきた」  
「はあ。それじゃいつ決まるんでしょう?」  
「詳しくは知らねぇが、耐弾試験が終わるまでは決まらんらしい」  
なるほど。  
「ならば決まるまでは普通の歩兵と似た訓練で慣らしておこうとゆーわけですか?」  
「そんなもんだと思うぜ」  
いったいどんなのが来るのやら。  
「よーしそれじゃあ始めるぞ。まずは構造の把握と構え方からだ!」  

まず銃各部の名称と機能の説明を終わらせ、構えを練習して…思ったより大変だなこりゃ。  
「よーしそれでは撃ってみるか」  
教官が僕とクラウスちゃんに耳栓を渡した。  
「なぜに耳栓?」  
「今日だけで何百発も撃ってもらうからな。そのままだと耳がつぶれるぞ」  
「初日からそんなに撃たせるんですか」  
「時間が無いんだろ。なら撃ちまくってでも練習しないとな。それじゃあ撃ってみろ」  
許可が出た。えーと弾は入っていて、薬室にも装填済みで、えーとこう構えて、セレクタを単射にし  
て、安全装置を解除して…  
「それじゃ撃ちまーす」  


585  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/19  21:13:49  ID:???  

166  
射撃場に銃声が何発か響いた。  
「なんでぇ。撃ったことあるのかよ。それならそう言えよ」  
「正規の訓練を受けたわけじゃないんで」  
初心者にしては慣れた感じを教官は感じたらしい。そりゃまー実戦で発砲した事(36回目投稿を参照)  
があるからそりゃ慣れはあるわな。  
「そんなに慣れてるんならカリキュラムを進めても構わんな」  
「えーそんなにホイホイ進めていいんですか?」  
「教官の俺が許可出したんだから問題ない。つーわけで今から一定時間内に今から用意する弾を撃って  
もらう。当然命中率も見るぞ」  
「はい。で、何発撃つんですか」  
教官が弾の箱を取り出した。  
「とりあえずは600は行ってもらおうか」  
…いきなり600発も撃つんですか。  
「さすがに無理じゃないですか?」  
「銃身の事か?スペアが1ダースはあるから大丈夫」  
「じゃなくて僕の体の方です」  
「魔法で頑丈になっているクセに文句をつけるな」  

しょーがない、やるか。とほほ。  
えーと、単発だと時間切れに引っかかるからたくさん撃てるモードにして…って3点バーストが無い  
かわりにフルオートがある。しょーがないから無理やり反動を押さえつけてやるか。  

「ほらほらとっとと撃たねぇと時間切れになるぞ〜」  
あおらんでください。  
それじゃ行くか。  


586  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/19  21:15:06  ID:???  

167  
射撃終了後の検討会では「初心者が撃ったにしては上出来」と来た。褒められているのかけなされて  
いるのかよーわからん。  
「よーし、今日の射撃訓練はこれで終わりだ。次はまた体力練成だそうだから急げ」  
ま、またですか。銃の反動で体が痛いんですけど。  
「クラウスちゃんは大丈夫?午前中のランニングでバテてたけど」  
「だ、大丈夫だよ。今の時間は休憩できたし」  
本当に大丈夫か激しく不安だ。  

本日2回目の体力ハー○マン軍曹な教官の下でランニング…ではなく、壁をよじのぼったりなどのア  
スレチックなものだった。これなら幾らかは楽かなーと思いきや、僕はまた完全装備の50sを装備し  
てだからあんまり変わらなかった。  
問題はクラウスちゃんだったりする。  

「おーい大丈夫かー」  
「ま、まだ、まだ、だいじょ、う、ぶ」  
「全然大丈夫じゃないじゃん」  
またバテバテだ。  
「騎士クラウス。これ以上は体を壊すから休憩をとれ」  
教官も止めに入ったが…  
「イヤ。守と一緒に訓練を受ける」  
と言って聞かない。  
しょうがないから限界まで行かせて諦めさせる事になった。  
そんなキツイ訓練が日が落ちるまで続いた。  
クラウスちゃんはなんとかついていく事に成功した。まったくもってすごい頑張りだ。  



588  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/19  21:15:50  ID:???  

168  
訓練終了後はすぐ自由時間…ではなかった。  
すぐに医務室に直行して体力関係の検査&メディカルチェックが入る。クラウスちゃんも一緒だが、  
当然彼女は別室だ。  

我ながらけっこう筋肉がついたなー。と裸な上半身を見ているとすぐに検査が始まった。  

「ところで、何でこんな検査がいるんです?」  
色々な機器で検査をしている医官の人に聞いてみた。  
「草壁君の体だけど、魔法の補助がかかりっぱなしになっているよね」  
「はい。そのおかげで楽をしていますが」  
「そんな特殊な肉体の発達は例がありませんからそのデータとりです。それにこれから草壁君の体に  
支障がでるかもしれません。その時のための基礎資料造りでもあるんです」  
「はぁ。だからですか」  
確かに珍しいわな。…もしかして僕は下手すりゃ研究所行きなんじゃねーか?実験動物扱い(偏見)  
されたりしなくて本当に良かった。  

「あそーだ。食事の後に風呂に行けますよ」  
「あれ?お風呂は交代制じゃありませんか?」  
「決闘が終わるまではいつでも良いとなったそうです。上からの指示です」  
「そんな事になったら他の人から恨まれません?」  
「決闘が近いことは皆知ってますから大丈夫ですよ。あ、そうそうこの湿布を渡しておきますので寝る  
前に張って下さいね」  
「ありがとうございます」  

その後、医務室をクラウスちゃんと一緒に出た。  
さて、今日の晩御飯は何かな?  




607  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/20  00:27:48  ID:???  

45回目の投稿  
輸送戦記?  
169  

カコーン(カポーンでも可)  
と音がする。  
「ふう、いい湯だ」  
ここは自衛隊王国首都基地内にある風呂だ。  
長期間駐留するのでかなり立派な造りになっている。え、F世界にまで持っていくかって?馬鹿な事を  
言ってはいけない。PKOなどでしっかり風呂を持っていっている実績があるし、んな事言ったら専用  
サウナを持っていく北欧某国はどーなんだという話になるので問題なかったりする。  

時間帯の関係で丁度僕だけが入っている。けっこうでかい湯船に1人だけはいっているのは気持ちいい  
ねぇ。  

「うわークラウスちゃんお肌がキレイねー」  
「そ、そんな事はないぞ」  
「食べちゃいたい〜」  
壁の向こう側でクラウスちゃんとWACの皆さんの声が聞こえる。  
…おいおい向こうではどんな事になっているんだ?ものすごーく気になるぞ。  
実はここの風呂は銭湯と同じ造りで、男女が壁1枚で区切られている。ただし完全にではなく、空気  
循環用のダクトが設けられているからそれぞれの音がまる聞こえだったりする。  

「うりうりもーっとよくおねーさんにみせてみなさーい」  
「え、ちょ、ちょっと何をするんです〜」  
(派手な水音)  
う、熱膨張してしまった。  


608  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/20  00:29:07  ID:???  

170  
こうなったのは少し前に遡る。  
食事ですいとん定食をおかわりまでして食べた後。  
「僕はこの後風呂へ行くけどクラウスちゃんは?」  
「私も一緒に行くよ」  
と会話を交わした後に風呂へ行く事に。  

風呂の前には警務隊の人が短機関銃片手に警備中。ただしいるのは女風呂入り口の方だけ。  
ちなみにタシーロ行為は重営倉だそうで。  
「お疲れ様です」  
と声をかけてから僕は男風呂に入ろうとしたら、クラウスちゃんが気づかずについてこようとした!  
さすがに警務隊の人と僕が止めたがある意味で危ないところだった。  
あんまりまずいので警務隊の人に相談。  

「うーん、クラウスちゃんは今日の訓練でクタクタみたいだ。だから注意散漫になっている。こんな  
状態で1人で入らせるのは危険ですね」  
「自分もそう思います。今日はシャワー程度で我慢してもらうのが良いと思います」  
「そーなんですけど、シャワーでも危なくないですか?」  
「やはりそうですよね」  

さて困った。さすがに一緒に入るわけにはいかないし、第一そんな事をやらかしたらこっちの理性が  
フラフラになる。困った。  
そんな所に現れたのはWACの皆さんだったりする。  
「…とゆー訳で申し訳ありませんがクラウスちゃんをお願いできませんか?」  
「いいよー」  
「ありがとうございます」  
とゆー訳で向こうにWACの皆さんとクラウスちゃんが入ることになった。  


609  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/20  00:30:01  ID:???  

171  
えーい向こうの声が気になるが、気にしない事にする!それでは気を紛らわせる為に手足のマッサー  
ジだ。  
今日の激しい訓練で手足はかなり疲れているはずだ。ちょうど風呂で体がほぐれた所でマッサージを  
しておけば披露がとれて明日も大丈夫なはずだ。本当は風呂上りに全身マッサージをお願いしたい所  
だが、ここにそんな事をしてくれる人はいないから我慢だ。  
「おーいクラウスちゃーん」  
「なーにー?まもるー」  
「医官の人に言われたと思うけどー、手足のマッサージはしておいてねー」  
「わかったよー」  
これでクラウスちゃんも大丈夫だろう。  
「へーマッサージねぇ」  
「ふーんマッサージねぇ」  
なんだか妖しい声が聞こえるなぁヲイ。こりゃやばいか。  
「私たちが手伝ってあげるよ」  
あ、まずい。  

「あ、う、そこがいいです」  
「ここはどうかな?」  
「そこは…痛い!」  
「あーごめんごめん」  
「ここならどう」  
「そこなら気持ちいいです」  
「やっぱり女同士だから疲れる所はよくわかるわ」  

まずった。声だけ聞くと何か非常に妖しい光景が思い浮かんでしまう。う、また熱膨張が…  


610  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/20  00:31:02  ID:???  

172  
風呂上り。  
湯上りでさっぱりしたWACの皆さん&クラウスちゃん。  
なんだか疲れたように見える僕。  
「それじゃーねクラウスちゃん」  
「はい。ありがとうございました」  
そう言ってWACの皆さんは自分の部屋に戻っていった。  

「守…大丈夫?」  
「ああ、大丈夫だよ」  
肉体的には大丈夫だが、精神ダメージはけっこうキツイ。  
「この後は守はどうするの?」  
「食堂で牛乳を飲んで寝る」  
風呂あがりに生ビールと枝豆と行きたいが、そんなのはここには無い。正確にはエールやグルートと  
いう酒はあるが、酒は決められた所で決められた順番でしか飲めないのでダメ。それにビールと比べ  
て味が…ねぇ。  
「そう言うクラウスちゃんは?」  
「んー守がそうするならつきあうよ。私はそうだね…コーヒー牛乳かフルーツ牛乳だね」  
「それは邪道だ!漢なら牛乳でしょう」  
「私女の子だもん」  

そんな馬鹿な話をしながら食堂へ。  
そうして僕は牛乳。クラウスちゃんはコーヒー牛乳を、『腰に手を当てて』一気飲みをしてからそれ  
ぞれの部屋へ戻る事に。  
「おやすみ。守」  
「おやすみ。クラウスちゃん。明日もいつも通りにね」  
「うん」  
そうして僕たちはいつもよりはやく眠る事にした。  





784  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/26  20:36:11  ID:???  

46回目の投稿  
輸送戦記?  
173  

決闘まであと3日。  
基地はピリピリしていた。これには理由がある。  
2回ほど基地が襲撃を受け、さらには公用で外出中の官僚&自衛隊員が誘拐されかけたからだ。  

基地襲撃は、1回目はわざと手薄にした所からこっそり侵入しようとした、F世界人の皆さん10名。恐  
しい事にその中には暗殺者まで入っていたそうだ。この集団は侵入口に設置されたセンサーと、監視  
カメラに侵入を感知され、包囲された時に抵抗。8人が死亡し、2人が捕虜になった。その捕虜も尋問  
前に自害をした為に背後関係は探れず仕舞いに終わった。一応遺留品はあったが、もろに帝國とわか  
る代物だったのでフェイクであると判断されたそうだ。  

2回目は正門前でかなり派手な騒ぎを起こし、そのスキに自衛隊の迷彩服を着た連中が潜入したが…  
階級章などが全くついていなかったのですぐにバレた。こっちは整備の人たちと大立ち回りを演じた  
後、全員が死亡した。  

誘拐事件の方は、安全の為に車両で移動中に「当たり屋」よろしくぶつかり、騒ぎを起こした所で「  
偽王国騎士」が「事情聴取」と称して官僚を連れて行こうとした。この時に行く行かないと押し問答  
をしているうちに本物がやってきて、偽者はそのまま逃走したそうだ。  

この他、基地出入り業者を脅したり買収して侵入しようとしたり、一般人や貴族が入ろうとして拒否  
され、それを不満に思った一般人が大騒ぎ。貴族は貴族で凄んで無茶を通そうとしたり…とまートラ  
ブルが山のように発生し続けた。  

僕はこれらの事件についてあまり深くは知らなかった。あまり心配させるのは問題と上層部の判断で  
全てが終わった後に知らされた。  


785  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/26  20:37:05  ID:???  

174  
決闘まであと2日。  

護衛役の皆さんと一緒に会場を見に行った。  
場所は基地からも近い平原で、そこに木製の雛壇が造られて観客席とされ、その前に闘技場としての  
広場ができていた。  

「思ったより広いですね」  
「1対1用ではこの広さは大きすぎるんじゃないのか?」  
この2つが見に行った僕たち共通の疑問だが、ここの設営は自衛隊及び日本国はかかわっておらず、  
全て王国側によって造られたから向こうの規格か作法か何かだろうと思い、あまり気にしなかった。  

訓練は全てのカリキュラムが終わったので後はおさらいと言うか、軽い復習程度のものとされた。  
要するに、  
「後は英気を養っておとなしくしていろ」  
とゆー事だそーだ。  

そうやっておとなしくしていると外務省の人が色々な事を教えてくれた。  
「おいおいすごい事になったぞ草壁君」  
「何です?」  
「今回の決闘だけどな、観客が多くなりすぎて今、増設を行っているぞ」  
「…確か中世では娯楽が少ないから、死刑執行でも観客が鈴なりになったらしーですから…」  
「そうだ、草壁君。ぶっちゃけヒマな連中が押し寄せて来るんだ」  
思わず溜息。  
「おめーらこれは見世物じゃねーと小一時間…」  
「話によると帝國でもこの件に関してすごい話題らしいぞ」  
「勘弁してくれ」  


786  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/26  20:37:41  ID:???  

175  
決闘前日  

僕は部屋で明日の準備中。同室者はみんな仕事でいない。  
火器はやばいので武器科の人に預かってもらって整備中。それ以外の武器や防具の点検中。  
ブーツはそれこそ「顔が映るぐらい」磨き上げる。  
戦闘用の服には、F世界に派遣された民間人有志がでっちあげ、そのまま半公式になりつつある部隊  
章。さらには先に発生した帝國軍との戦闘参加者に着用権利がある、従軍章をはりつける。  
ヘルメットも磨き上げる。  
山刀も刃こぼれがないか点検。  
そんな事をしているとドアをノックする音が聞こえた。  

「どうぞ〜鍵はもとからついてないよ〜」  
その声を聞いてから入ってきたのはクラウスちゃんだ。  

「守…今、いい?」  
「かまわないよ」  
僕がそう言うと、クラウスちゃんは僕の近くに座った。  
「明日の準備中?」  
「そうそう。明日はこいつらに命を預ける事になるからね。整備をしとかないと心配でね」  
「魔法の武器がないけど、大丈夫?」  
「簡易対魔法処理を施した盾ならあるぞ」  
そう言って姉御たち謹製の盾を示した。  
「でも、アスは全部魔法の武具を使うから、その…心配だよ」  
「はっはっは、心配性だなクラウスちゃんは」  
そう言ってクラウスちゃんの頭を「くしゃくしゃ」と撫でた。  
「兵器の性能が、戦力の絶対的な差ではない事を、教えてやるさ」  


787  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/09/26  20:38:13  ID:???  

176  
決闘当日。  
雲ひとつ無いいい天気。ああ、今日は、決闘をするには良い日だ。  
「おはよう。クラウスちゃん」  
「おはよう。守」  
いつものようにクラウスちゃんと軽くランニングをしてから食堂へ。  

「おはよう。草壁の朝食はこっちの特別メニューだ」  
「食堂長…朝っぱらからすんごい大きさのトンカツですね。ありがたくいただきます」  
食堂長からの特別メニューを腹いっぱい食べてから出かける準備。  

戦闘服を着込んで、アーマーをつけて、ヘルメットをかぶり、山刀をつけ、盾を持った。そうして姿  
見に自分を移して確認。近代の兵士の装備と、盾がなんだかミスマッチなような気がしたが、まあよ  
かろー。  

武器科の人から使用するショットガンと弾薬をもらい、玄関でクラウスちゃんと落ち合った。  
「守、足りないものは?」  
「勇気だけだよ。クラウスちゃん」  
そう言い交わしてクラウスちゃんと一緒に玄関を出たら、手すきの隊員の皆さんや、民間人がみんな  
そろって見送りに出ていた。  
「勝ってこいよ!」  
「アスの野郎をへこましてやれ!」  
そんな声をいくつもかけられた。  

高機動車に乗って正門を出ようとしたところ、基地内部にある監視塔からサーチライトを使用した発光  
信号が送られてきた。  
『貴君ノ武運ヲイノル』  
思わず皆で顔を見合わせた。ならば返答はこれしかあるまい。  
『誓ッテ戦果を掲グ』  




34  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/03  19:25:40  ID:???  

47回目の投稿  
輸送戦記?  
177  
高機動車に揺られて会場へ。後部キャビンにいるのは僕、クラウスちゃん、伊良子3佐の3人だけ。  
内部で行われているのは事前説明だったりする。  
「あと数時間で決闘が始まる。草壁君」  
「はい…やはり少し緊張しますね」  
「守、わたしがついているよ」  
完全武装のクラウスちゃんが励ましてくれる。ああ、ええ娘や。  
「ところで、何でクラウスちゃんまで完全武装なんです?」  
「守になにかあったら助けに行くからに決まっているよ」  
「…その時はお願いしますよ。クラウスちゃん」  
そんな事はないようにするけどね。  
「え〜仲が良い所を遮ってしまって無粋なのは承知だが、説明したいのだが」  
「えう、すいません。伊良子3佐」  
「今から話すのは裏での行動についてだ。今なら無粋な立ち聞き野郎はいないからな」  
な、なんだなんだ?  
「会場警備は表向き陸自と騎士団が合同で行っている。だがこれだけではない。王国側は民間人に変  
装した兵を入れている」  
「3佐、もしかして、いざという時の…」  
「ありえる。だがこちらも準備はできている。会場の近くに戦車小隊と普通科中隊を待機させている。  
当然装甲化された奴だ。もし異常事態が発生した場合は彼らが駆けつけて君たちや重要人物を救出す  
る手筈になっている」  
頼もしいけど、下手すりゃ戦闘か。  
「でも3佐、そこまでなる状況ってのは」  
「草壁君。君が勝ったらその勝ちを無効にする為。負けたら敗者を見せしめにする為。君を血祭りに  
する可能性がある。なお、アスの場合は彼の親の勢力が保護に走るがな」  
「…ありがたいのですが3佐、なぜそこまでしていただけるのです?」  
「日本国民を守る事が我々の使命であり、それ以前に身内だからだ。これ以上の理由が必要か?」  


35  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/03  19:26:46  ID:???  

178  
「身内、ですか」  
「そうだ。同じ飯を食い、後方で働き、前線でも働いた。その従軍章に見合うだけの働きをしている。  
そこまで働いた奴を他人として知らん顔を通すか?否。私は認めない。誰一人としてそんな事は認め  
ない。ならば助けようとするのは当たり前じゃないか」  
ああ、みんなそう思ってくれているのか。  
「あ、草壁にクラウスちゃん。煙草吸っていいか?」  
「いいですよ」  
「いいよ」  
「ありがとう」  
そう言うと伊良子3佐は煙草を取り出して咥えた。  
「火です。どーぞ」  
「悪いな」  
まぁ、基本と言えば基本ですから。  
「それにだ、あの勝利報告会でな、クラウスちゃんが無理矢理決闘をさせられそうになったろ」  
「はい。そこに私が口を挟んで今の状況になったわけですが」  
「あそこでな、口を挟めるのが一体何人いる事やら。文句があっても異議を唱えるのは非常に難しい。  
そんな中で躊躇なく『異議あり!』と叫んでクラウスちゃんをかばい、自分が身代わりに立つ。そんな  
事ができる奴。そいつに賞賛以外の何を抱けと言うんだ?」  
「…自分で言うのもなんですが、何も考えず、ただ行動しただけかもしれませんよ」  
伊良子3佐が煙を大きく吐き出した。  
「そうかもしれない。だがな、少なくとも俺、伊良子としてはそんな奴が隣にいてほしい。そんな漢気  
のある奴を見てだ、隊員のかなりの連中が君を支持しているのだ」  
「男の人って、その漢気だけでも動くの?」  
おずおずとクラウスちゃんが聞いてきた。  
「なぁに。男ってのは子供っぽくてな、それだけでも十分なんだよ。だがな、その漢気を見せるのが  
非常に難しいのだが、な」  


36  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/03  19:27:42  ID:???  

179  
高機動車のスピードが落ちてきた。そろそろか?  
「そろそろ会場だな。草壁君、降りる準備だ」  
「はい」  
そう言って伊良子3佐は煙草を消した。  
「クラウスちゃんはこっちで保護しておく。ただし最前列で見ると言って聞かないので最前列に陣取る  
事になったよ」  
と苦笑交じりにクラウスちゃんの方を見た。  
あーなんだかクラウスちゃんはもじもじしているな。  
「だって……守が私の変わりに戦ってくれる。その戦いを1番高い所で見ているなんて…その…したく  
ないし…それに…その…心配だし…」  
思わずため息。  
「まったくクラウスちゃんは心配症だなぁ。相手はあのヘタレ貴族のアスだぜ。パパっと5分で片付  
けて戻ってくるさ」  
「…大丈夫なの?」  
「さっさとケリをつけて食堂長が祝勝パーティー用に作っているケーキを食いきってしまおうぜ!」  
それを聞いたクラウスちゃんは沈んだ顔から笑い顔に戻った。  
「そうだね。私はあまりケーキを食べたことがないから楽しみだよ」  
「おう、その意気だぜ」  
そんな妙な方向に向いた会話を聞いた伊良子3佐。  
「いや〜若いねぇ」  
それを聞いた僕とクラウスちゃん。  
「伊良子3佐だってまだ若いでしょーに」  
「いやいや、君たちには負けるよ」  
「なんだか褒められた気がしない気がするー」  
「いやいや褒めているんだよ」  
そうしてまた笑いの花が咲いた。  


37  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/03  19:28:40  ID:???  

180  
高機動車が止まった。  
「さて、草壁にクラウスちゃん。会場に到着だ。草壁は選手専用のテントへ。私とクラウスちゃんは  
一緒に観覧席だ」  
それを聞いてクラウスちゃんは渋い顔。  
「え、私…守と一緒にいる」  
「うーん、クラウスちゃん。気持ちはわかるが、マイヤーさんから説明を受けている通り、テントには  
選手とセコンドしか入ってはいけない事になっているんだよ。それにだ、もっと重要な事が待っている  

」  
「何?」  
「挨拶と掃除さ」  
少し拍子抜けしたみたいだ。  
「『掃除』だが、マイヤーさんたちが先発して席に仕掛けられたトラップの掃除を行っているし、観  
客に化けた暗殺者を発見するには人手がいる。『挨拶』だが、これを機会に王国の実力者連中に顔を  
売っておいたり仲良くなっておくと良いぞ」  
「ええと、伊良子3佐。それは『せんりゃくてきゆういをかくほするためのこうどう』なの?」  
「そう。次の、次の次の行動を優位にする為の準備。布石だな。その為の行動です。しかいまぁこの  
状況で『戦略的優位を確保する為の行動』なんていうセリフが出るとは。勉強してますね」  
実は僕も驚いた。  
「だって、守たちの話がわからなくなる事があるから、いろいろ聞いて勉強するんだ」  
おお、マイヤーさんが聞いたら涙を流して喜ぶぞ。そういや基地で勉強中は先生役の人と一対一で勉強  
しているな。すんげぇ贅沢だな。と、下手すりゃ知識でこっちが追い抜かれるかも。精進するか。  

「それではそれぞれの『戦場』へ向かうぞ」  
「はい!」×2  
そうして僕は歩き出した。  
「行って来ます」  



39  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/03  19:30:48  ID:???  

48回目の投稿  
輸送戦記?  
181  
選手用テントにいるのは僕、姐御、ハー○マン軍曹な教官の3人。  
装備の最終点検を続けている。  
姐御がリストを読み上げ、僕と教官がチェックを入れる。  
「山刀、予備の小剣、ナイフ」  
「山刀、予備の小剣、ナイフ問題無し」  
「スモーク及びスタングレネード」  
「スモーク及びスタングレネード問題無し」  
「ショットガン」  
「ショットガン問題無し」  
「硬質ゴム弾及びスラグ弾」  
「硬質ゴム弾及びスラグ弾全弾問題無し」  
「盾と魔法処理」  
「盾問題なし。魔法処理有効期限内。使用可能時間30秒」  
全部終わった。  

「装備確認は全て終了した。次は戦術の確認を行う。草壁、口述してみろ」  
「初手はゴム弾による銃撃。無力化が出来なかった場合は山刀を使用した接近戦に。接近時などに  
スモーク及びスタンを使用しての撹乱は自由。魔法攻撃に関しては、避ける事をで対応するが、魔法  
処理をされた盾で受ける事も可能」  
「うむ、それで良い。それではルローネ先生、魔法処理についてお願いします」  
「アタシたちが用意した魔法処理だが、こいつは対火系魔法に特化した処理がされている。理由はアス  
の持つ剣『煉獄』が火系属性だからだ。これにより火系魔法であればかなり強力な奴でも30秒は持た  
せる事に成功した。ただし30秒を過ぎたら単なる盾になるから気をつけろ」  


40  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/03  19:31:32  ID:???  

182  
戦術確認はこれで終了。  
「教官。決闘開始は昼からなんですね」  
「そうだ。1200より開始だが、正確には1145からだ」  
「なぜです?」  
「入場やら説明やらで時間が要るんだと」  
思わずため息。  
「本っ当に見せ物なんですね。教官」  
「まぁな。観客は2時間前だっつーのに満員になってるしな」  
「決闘って…酒場の前とかでやるようなイメージで、みんな固唾を飲んで見守るってゆーイメージが  
あったんですけどねぇ」  
「西部劇じゃあるまいし。まぁそれにしても大歓声の下で行うとは俺も思わなかったが」  

「ああそうだ、忘れるところだった。勝利条件は何なのです?」  
「それなんだがな草壁。まず相手を殺す事」  
「それは総理の命令でダメなんですよね」  
「そうだ。2つ目は相手を気絶させる事」  
「それならまだなんとか」  
「3つ目は相手が降伏した場合」  
「アスのやろうが降伏するようなタマですかね?」  
「草壁よ、俺も同意見だ」  
教官が少し笑った。  
「で、教官。3回ダウンしたら負けとか補足ルールは?」  
「無い。これだけだ」  
「まったくもってシンプルな事で」  
「あんまり規則ばかりの決闘もどうかと思うぞ」  


41  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/03  19:32:29  ID:???  

183  
そうして話をしていると、伊良子3佐がやってきた。  
「アレ?伊良子3佐?確か選手テントには選手とセコンドしか入ってはいけないのでは?」  
「確かにそうだ。草壁君。だが『激励に来た』人物は例外だ」  
「そんなもんですか」  
「そんなもんだ」  
まぁ、実情に合わせたルールなんだろ。  
「それでいったいどうしたんですか?」  
「アスの最新情報を持ってきた」  
おお、それは凄い。  
「で、どうなんですか?伊良子3佐」  
伊良子3佐がいきなり携帯型TV?みたいのを取り出した。  
「実は小型カメラ&小型マイクの設置に成功してね。何しろ向こうのテントは異常に大きいからやり  
やすかったらしい」  
そう言ってスイッチを入れた。  

「しかしまぁアス殿。あの小人どもは勝てるとふんでいるのでしょうなぁ。スー」  
「然り。確かに小人の使う武器は強力だが、それはあの奇妙な車に乗っていたりするものが多く、大  
きいものばかりだ。人が持てる程度ならば鍛えに鍛えた私が勝つに決まっている。それが『お約束』  
というものだ。わっはっは。スー」  
画面にはテント内で喋りながら麻薬を吸っているアスととりまきがいた。  

「伊良子3佐…奴らは何をやってるんです?決闘までもうすぐというのに」  
「それは私も同意する。多分儀式の一端か何かだろ」  
「儀式?アレが?」  
「戦闘前にヤクを吸わせて意識を高揚させるのがあるからな」  


42  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/03  19:33:23  ID:???  

184  
こうなってもヤクを使うとは…驚くより呆れる。  
「士気高揚ってのはけっこう大事だからなぁ」  
「ですけど…」  
「WW2のソヴィエトで、整列した兵を1人おきに射殺して士気を上げたのがあったらしいぞ」  
「それと比べりゃマシですか」  
「あとはそうだな…ウォトカの特配みたいなものか?ヤクは。まぁ地球にもヤクが身近な地域での  
話で、そこの民族で戦争時にヤクを吸わせて送り出すのがあるから、けっこう常識的かもな」  
「そんな常識っつーのもどうかと思いますけどね」  
「まぁそこまで嫌がるな、草壁。世界にゃこんな話はゴロゴロしている。BHDじゃヤクを決めた民兵  
をなかなか止められなくて困ったり、ヤク漬け少年兵がいたりするんだ。そんな連中の1人をそうだ  
な…『助ける』ようなもんさ」  
「3佐…『助ける』とゆーより『おしおき』の方が近いような気がするんですけど」  
「どっちにしても同じさ」  

「で、だ、草壁。アスは今ヤクを使っている。これによる利点・欠点をあげてみろ」  
「利点。士気の高揚。痛覚麻痺による打撃ダメージの減少。身体能力の一時的向上」  
「次、欠点」  
「判断能力の低下。体力の低下。身体状況把握が困難」  
「そんなところだな。それによる予想される状況は?」  
「えーと…痛覚が麻痺してますから、いくらダメージを与えてもそのまま向かってくる。身体能力の  
一時的向上による何と言うか、火事場の馬鹿力がありえる?」  
「そんなところか。まぁこれを頭に入れておいてくれ。と、私はそろそろ戻る」  
そう言って伊良子3佐は出て行った。  
さてさていったいどうなるのやら。決闘までもう少し。もうちょっと考えてみるか。  




49  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/03  23:26:04  ID:???  

49回目の投稿  
輸送戦記?  
185  
「時間だ」  
教官の声で我に返り、テントを出た。ついに決闘だ。  
とテントの前には陸自隊員が20人ばかりいた。  
「草壁さん。命令によりあなたを護衛致します」  
「ありがとうございます。でも何でまた」  
「ここから会場まで野次馬がいっぱいなんです。そこを少人数で行かせるわけにはいきません。それ  
に…」  
ここからひそひそ声になった。  
「暗殺者が2名捕まりました。まだいる可能性があるので」  
うわ、ギリギリまでやばいのね。  
「それではお願いします」  

陸自に守られて会場への道を歩いたが…会場に入りきらなかった野次馬が道の両側に鈴なりになって  
いて、こっちを指差して色々しゃべっていた。  
「おや、あいつか。誰だよ身長が2mはある大男って言ったの」  
「オラが聞いた話だと口が耳まで裂けて、翼がある悪魔みたいなやつと聞いたぞ」  
「いやいやあんな格好をしているが中身はひどいに違いね」  
…いったいどんな噂が飛んでいるんだ?  

そうしているうちに会場へ到着。僕は入り口前で待機。内部に入るのは入場が宣言されてからなので  
ここで待たなくてはならない。ちなみに会場は四角形になっている。内部が闘技場。辺にあたる所が  
観客席。角に当たる所が出入り口になっている。アスは正反対の入り口で待機しているそうだ。  
そうして待っているうちに宣言がなされたようだ。  
「これより選手入場!」  
ものすごい歓声が沸きあがった。  


50  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/03  23:27:04  ID:???  

186  
司会者は日本が貸しているらしい放送機材を使っているのでよく声が聞こえた。  
「それでは先に入場するのは有名なマルス伯爵家の子息。先の帝國との戦いで活躍され、国王陛下か  
らも激賞された勇者。アス様です!」  

大歓声。すげーなこりゃ。完全にアウェイだなー。  
そう考えていると音楽が聞こえてきた。  
ん、なんだこの音楽は?マーチか?けど聞いたことがない曲だし、何か変だな。これはスピーカーか  
らではなく、生演奏だ。ならアス側の音楽隊か?  
「演奏は有志によって結成された音楽隊です!」  
ああ、アスたちが造らせたっつーやつか。聞いたところでは旅芸人とかを無理矢理集めたらしいが。  
それにしても日本のブラスバンドとちがって何か、こう、変に聞こえるなぁ。小太鼓や大太鼓は普通  
なんだけど、何だか色々な楽器をかき集めただけのようなマーチだな。まぁ勇壮でいいけど。  

演奏が10分近く続いた。多分ゆっくり観客席を1周して愛想をふりまいているんだろーなぁ。  
後で聞いたら本当にそうしていたらしいが。  

「長いですね、教官」  
「ああ、まったくだ。だがこれでいいんだ」  
「何でです?」  
「草壁、お前勝つつもりだろ」  
「当たり前です。負けるために来たんじゃありません」  
「なら、ここで大騒ぎをさせた奴があっさり負けたらどうなる?」  
「赤っ恥ですな」  
「分かってるじゃねえか、草壁」  
「それにだ、こっちも対抗策があるからな」  
「対抗策?何ですか教官?」  
「まぁ見てなって」  


51  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/03  23:27:49  ID:???  

187  
「それではアス様に挑戦してきた相手を紹介いたします」  
待て、挑戦してきたのは向こうだっつーの。  
「ニホンから派遣されたクサカベ・マモルです!」  
随分と扱いが下じゃねーか。  

僕の前にある扉が開いた。  
同時にブラスバンドの生演奏で音楽が流された。  
と同時に僕は思わずツッコんだ。  
「何で『ニュルンベルクのマイスタージンガー』が流れるんだ!」  
ここは『ワルキューレの騎行』だと思うんだが。  

しょうがないのでそのまま入場。愛想ふりまきなんて無視。とゆーよりんな事してもアウェイ状態だ  
から歓声の代わりにゴミが降ってきそうだ。  
入ってすぐに見えたのは闘技場中央で待つアス。そして後ろに控えた臨時音楽隊。  
ならば今この音楽を演奏しているのは?と見てみたら、入口右側の観客席前に並んだ自衛隊の音楽隊  
の皆さんがいた。  
個人的な感想ではこっちの演奏の方が断然上だな。  

そうしてさっさと闘技場の真ん中へ。アスがかっこつけていやがる。それにしてもずいぶんと立派な  
全身鎧を着ていやがる。アレが魔法の鎧なんだろうな。普通、全身鎧を着ていると重くて動きにくい  
と相場が決まっているが、何せ魔法の鎧だからなぁ。あ、でも視界は悪そうだ。  

「やっと来たか小人。てっきり尻尾を巻いて逃げ出したかと思ったぞ」  
僕はわざと左右を向いて声の元を探しているフリをした。  
「ああ、そこにいたのですか。わたしゃてっきり前にあるのは鎧の置物だと思っていたのでね」  
「無礼な!」  
さっそくにらみ合い。  


52  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/03  23:28:58  ID:???  

189  
そこに割って入ったのは司会者。  
「にらみ合いもよろしいですが、開始はまだですよ。ご両人」  
にらみ合いに割って入る事ができるとは、いい度胸をしているな。それとも何も考えてないかもしれ  
ないが。  
「はい。それでは双方揃った所でまずは宣誓をお願いします」  
宣誓?何だ?  
「毒は使わない。騎士道に則った戦いをすると宣誓をお願いします」  
「我、マルス伯爵家三男アスは毒は使用せず、騎士道に則った戦いをする事を誓う」  
ならば僕もだ。  
「我、草壁守は騎士ではない。しかし毒は使用せず、正々堂々と戦う事を誓う」  
そこに司会者が突っ込んで来た。  
「マモルさん『騎士らしく』が抜けてますが?」  
「僕は騎士じゃないですから」  
「騎士なら騎士の誇りにかけてもらうのですが…」  
「ああ、ならば私の名前にかけて誓いますよ」  
「ふむ、ならば良いでしょう」  

「両者の宣誓は終了しました。それでは両者共にここを離れ、闘技場に記された所定の位置について  
ください」  
ここでの作法は「いきなり接近した状態での開始」ではなく「ある程度の距離をおいてから開始」ら  
しい。まぁ弓を使う人もいたからそこに配慮した作法なんだろう。  
ゆっくりと歩きながら考える。山刀などの刀剣類はしっかり持っている。ショットガンには硬質ゴム  
弾が装填済み。予備弾も持っている。命弾のスラグ弾もある。準備はOK。後は戦うだけだ。  
そうして所定の場所につき、アスに向き直った。  

「それでは決闘の開始を宣言します!」  





64  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/04  21:17:46  ID:???  

50回目の投稿  
輸送戦記?  
190  
いきなりアスが剣を抜いた。あーなんだか紅くて装飾が色々ついてなんだかかっこいい剣だな。あれ  
が噂の魔法の剣なんだろーな。  
「これこそ我がマルス家に伝わるかほ…」  
PAN  
「敵を前にして演説すんな」  
さっそく硬質ゴム弾の初弾を叩き込んだ。馬鹿かこいつは?  
「き、きさま誇り…」  
PAN  
外した。  
PAN  
「ひ、卑怯だ」  
PAN  
「うげ」  
PAN  
あ、これは外した。  
PAN  
「ぐは」  
PAN  

最後の1発でアスはぶっ倒れた。よし、これで終わりかな?だが万一を考えてショットガンに装填を  
開始する。当然アスを観察しながら。  
観客席は静まり返っている。そりゃまー予想に反して開始10秒程度でアスがダウンだもんなぁ。  

そう考えていたらアスが起き上がった。  


65  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/04  21:18:27  ID:???  

191  
「おいおいなんで硬質ゴム弾5発食らって立ち上がれるんだ?」  
「ありえない!」  
「あいつは化物か!」  
観客席の自衛隊関係者から驚きの声があがった。僕も驚いた。本当に驚いた。  

アスは腰に下げた袋から取り出した粉末を、兜のすきまから突っ込んだ。アレはヤクか?  
「やはり小人は小人だな。卑怯な先制攻撃と飛び道具に頼らねば戦いひとつできんとはな。それでは  
次はこちらからゆくぞ!」  
全然こたえてないように見える。こりゃ接近しないと効き目が薄いのかな?  
アスが剣を掲げた。  
「我が剣『煉獄』よその力の全てを示せ!」  
その直後、会場は驚きの声でいっぱいになった。  

「なんてインチキ!」  
思わずそう口走ってしまった。だってあんなのを見たらだれでもそう言ってしまうだろ。  
何せアスの剣から『直径1mはある火柱』がもえさかっているのを見たらこうなる。  
しかも、長い。こいつはもう近距離武器の『剣』じゃない。長さは槍を超えていて、触れば黒こげ。  
これで振り回しにくくなっていれば問題は無いんだが…うわ、軽々と振り回してやがる。  

「どうした小人。さっきまでの威勢はどうした?」  
「卑怯云々ってそんなムチャクチャなモノを持ち出したそっちの方が100倍卑怯だろヲイ」  
「フン。飛び道具に頼ってばかりの者が何を言う」  
「魔法に武具に頼ってばかりのヘタレ貴族よりは1000倍マシ」  
「貴様!」  
う、挑発したのはまずかったかな。  
「食らえ!」  
こっちに火柱が降ってきた。  


66  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/04  21:19:24  ID:???  

192  
なんとか避ける事に成功。こっちは大丈夫だが、火柱の一部が観客席に突っ込んでる!  
「おいアス!観客に被害が出てるぞ!」  
「あ?小人よ、他の者の心配をするより自分の心配をしたらどうだ?」  
そう言って今度は横殴りに振って来た。やばい。  
ガギン!  
なんとか盾で受けたが、その代わり体ごと飛ばされた。単なる火柱と思ったがそうではないらしい。  
畜生。  

「これだから小人は。お前が『お約束』通りに死ねば被害は最小限で済むぞ。降伏でもいいぞ。今なら  
寛大な条件で『名誉ある敗北』を許可してやろう」  
なんつー尊大な物言い。  
火柱はごうごうと音を立てて今だ健在。それを振り回して自分の力を誇示していやがる。  
「僕は昔から決めている事があってね」  
「あ?」  
「『名誉ある敗北よりみじめな勝利』を常に心がけているんでね!」  
「これでから小人は救いがたい」  
「救おうとなんざこれっぽっちも考えてねぇクセに」  
僕はそう叫ぶと同時に、腰につけておいたスモークグレネードのピンを抜き、アスに向かって投げつ  
けた。しかも3本。  

あっと言う間にアスを中心として闘技場全体に白い煙が充満した。これでアスの視界を奪う事に成功  
した。後は…  
「ぬ、卑怯だぞ!どこにいる!騎士らしく正々堂々と勝負しろ」  
あーアスが何かわめいているな。さっきの宣誓の時に言った事をもう忘れているのか?だって僕は  
騎士じゃないのだから。  


67  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/04  21:20:11  ID:???  

193  
アスが喚きながら火柱を振り回している。  
観客席の方から悲鳴が聞こえている所をみると、かなりの迷惑になっているようだ。ごめんなさい。  
「うおっと!」  
頭の上を火柱がかすめた。ちょっとヒヤリとしたが助かった。そんな事を考えながらアスに接近して  
いく。正確にはアスの背後に回るように走っている。  
こっちの飛び道具の効きが悪い→ならば接近して→火柱で接近は困難→スモークで目潰しで命中率低  
下→そのスキに接近→ショットガン近接射撃→ウマー  
を予定しているが、どうかな?  

む、思ったより晴れるのが早い。火柱なんかを振り回しているから気流が発生したのか?まずい。  
こうなったらまた誤魔化しをやるか。  
伊良子3佐の煙草に火をつけたライターを取り出して、こっそり持ってきた爆竹に火をつけて、自分  
とは反対側にブン投げた。  
パパパパパパン  
「ぬ、そこか!」  
アスの声が聞こえた。  
そのスキに接近。アスの姿が見えた!よし、計画通りこっちに背中を向けている!  

PANガチャPANガチャPANガチャPANガチャPANガチャPANガチャPANガチャ  
全弾を叩き込んでやった。これで効かなきゃおかしい。だが安全の為に距離をおこう。自爆でもしか  
ねない。弾も装填もしないとな。  

スモークが晴れた。そして見えたのは火柱を抱えたアスが、片ひざをついてうずくまっている姿だっ  
た。おいおい、不死身にも限度があるぞ。  
そしてアスは立ち上がり、火柱を振り上げた。  
ああ、もう終わりか。そう思った瞬間。火柱が立ち消えた。  




80  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/05  00:49:53  ID:???  

51回目の投稿  
輸送戦記?  
194  
「え?」  
僕もアスも観客も、全員があっけにとられた。  
ついさっきまで猛威をふるっていた『火柱』がいきなり立ち消えてしまった。  
僕と観客は安堵。アスは愕然といったニュアンスの違いはあったが。  

「し、しまった!剣の魔力がなくなってしまった!」  
アスが妙な事を口走った。  
え、剣の魔力?ってことは、『煉獄』に蓄えられている魔力で動いている事になるよな。なんと言うか  
電池とか燃料が入っているようなもんか。で、魔力が無くなったら補充で問題が無いと思うが、あの  
うろたえっぷりからすると簡単には補給ができないんだろうな。とすると今の『煉獄』はガス欠か、  
それを自動感知してのアイドリング状態になったようなものか?とゆー事は…  
「ちゃーんす」  
という事でよいのかな?  

こっちは体のあちこちが痛いが問題ない。向こうは鎧が固いが、煉獄が使えなくなったから、あとは  
ボコ殴りでOK?これならなんとかなりそうだ。  

「アスよ。ここは『名誉ある降伏』を選択すべきところじゃないかな?」  
「ふ、ふん。このぐらいで優位をとったつもりか」  
「煉獄は封じられ、攻撃力はほとんど封じられた状態ですが?」  
「封じられただと…フッフッフ。こりゃおかしい」  
?まだ何か手があるのか?  
「やはり小人は小人のようだな。ならば見よ!我が鎧の力を!」  
そう言うとアスはヤクを取り出しまとめて吸った。  


81  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/05  00:50:49  ID:???  

195  
思わず盾を構えて警戒したが、10秒経っても何も起こらない。  
「おいおい何大嘘こいているんだよ」  
アスからの返答が無い。  
「おーいどしたー」  
何も無い。ヤクの吸いすぎで逝ってしまったか?と思っていたら動きがあった。  
「ウヒャヒャヒャヒャッハ…」  
どう聞いても逝ってしまった笑い声と、それと同時にアスの鎧が巨大化?いや、この場合は成長?し  
始めた。身長は当初の170pから500p近くに。その他の部位もパーツがどう見ても増殖して成長して  
いる!ちょ、ちょっと待て。いくら魔法だからってこんなインチキはありかよ!  

成長しきったアス?それとも鎧?はゆっくりとこっちに向直った。鎧のデザインがかなり怖くなって  
いるし、殺気がものすごい。こんな化物になるなんてゲームにしかないぞ!  
待てよ。いくら化物と言っても物理法則には屈するはず。こっちが使えるものを使えばなんとかなる  
に違いない。多分。  

「コノヤロー!」  
僕はそう叫んでショットガンを連射した。1発2発…コンバットロードしていた7発目。全弾が命中し  
たのに…鎧はこゆるぎもしなかった。アスの時はいくらか効いたはずなのに。  
「は、はは。そんな…」  
思わず呆然としている僕に鎧が近づいてきた。あまりのショックに動けない。クラウスちゃんたちが  
何か叫んでいるようだが良く聞こえない。  

そうして鎧は長くなった腕を無造作に振ると…僕を薙ぎ払った。  
盾で受けたが、僕はそのまま観客席に叩きつけられた。  


82  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/05  00:51:41  ID:???  

196  
ああ、なんだかそらがあおいなぁ。  
それにしてもからだがいたいなぁ。  
あれ?あのこわいばけものはなにをしているんだろう。  
あれ?おんなのこのほうにあるいていくぞ。  
ってちょっとまて。あれはクラウスちゃんじゃないか?  
クラウスちゃんが危ないじゃねぇか。  
俺は何こんなところでボンヤリしてるんだ?  
クラウスちゃんを守るってマイヤーさんと約束したじゃねぇか!  

鎧はクラウスちゃんに向かい、腕を振り上げた。  
クラウスちゃんは震えながら剣を抜いて立ち向かおうとしていた。  
一緒の陸自の皆さんは小銃を構えていた。  
そこに飛び込んできたのは1本の小剣だった。それは怒声と一緒だった。  

その小剣は鎧の頭部に命中し、耳障りな音を立てて弾かれた。そして鎧は少したじろいだ。  
「何してやがるこの(不適切用語の為に抹消)野郎!そいつは俺んだ!」  
小剣を思いっきりブン投げ、叫んだのは僕だ。  
僕は歩きながら命弾として用意したスラグ弾を装填。  
鎧は僕をまた脅威と認識したのかクラウスちゃんから僕に向かって向直った。  
「クラウスちゃん。今のうちに引いて」  
「い、イヤだよ!守と一緒にいる!」  
「いいからさっさと行け!教官、お願いします」  
「心得た!」  
泣き喚くクラウスちゃんを教官がかつぎ、陸自の皆さんと一緒に逃げ出した。  
観客は逃げ出し、ここにいるのは僕と鎧。後は、記録用のカメラだけ。これで思い切り殴りあいができ  
る。  


83  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/10/05  00:52:38  ID:???  

197  
僕は鎧の射程距離ギリギリまですすみ、そしてあるモノをブン投げた。効くかどうかはわからない。  
だがやってみる価値はある。それは、1本しか持って来ていないスタングレネードだ。  
爆発。  
光と音で対象を数秒間無力化する暴徒鎮圧用。なんとか効いたらしいが、それは2秒しか持たなかっ  
た。その間に懐へ飛び込み、3発しかないスラグ弾を全て鎧の片足に叩き込んだ。  
撃った直後にすぐ後退。危うくまた腕の直撃を受けるところだったが、スタングレネードの影響らし  
く、スピードがトロくてすぐにかわせた。ラッキー。  

「グゥォオオオオオッ」  
鎧が叫んだ。足を見たらかなり大きい破孔が3つ空いていた。そうしてみているうちにその部分が崩  
れた。よし、これで足は封じた。  
そう思って安堵したが、甘かった。  

「グゥォオオオオオッ」  
また鎧が叫び、崩壊したはずの足が再生しやがった!いったいどこまでインチキなんだ!それとも魔  
法帝国時代の技術力がケタ外れなのか。まぁそんな事はどうでもいい。今ここにある危機の方が重要  
だ。  
こっちの優位は消えてしまった。畜生。もう決闘は無効として、多分こっちに向かっている戦車小隊  
に任せようと思ったのに。その為に足を封じたのに。もう打つ手が無い。  
僕は弾がもう無いショットガンを投げ捨て、山刀を抜き、運よく遠くに飛ばなかった盾を構えた。  
「来い。化物。戦ってやる」  
そのセリフに応えたかは知らないが、鎧の腕が来た。先端には『煉獄』が握られている。  
なんとか避け、腕に山刀を叩き付けたが、こっちの腕が痺れた。こりゃまずい。  
数度打ち合ったがもうこっちはボロボロになってしまった。こりゃ覚悟を決めるか?そう考えた直  
後、鎧に変化が発生した。