37  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/26  00:15  ID:???  

01  
某支店事務所  

「先輩、暇ですね」  
「ああ、暇だな」  
先輩と僕は日向ぼっこの真っ最中だった。普通なら問題になるのだがそうでは  
なかった。  
真昼間から野郎たちが事務所で暇を持て余していた。  
ある者は将棋。ある者はトランプ。ある者は読書。事務所に併設された寮で寝  
ているツワモノもいる。  
共通するのは暇でだらけた雰囲気だった。  
僕たちは支店をいくつか持つ中堅運送業者(法人向け)のドライバーと社員であ  
り、本来ならば暇を持て余すことはあってはならないのだが…F世界への召還  
という驚天動地の出来事以来、仕事が無くなってしまったのだ。  
召還されてすぐの燃料規制やら何やらの規制で身動きが取れなくなった事と、  
同様の理由による工場等の操業短縮による物流量の激減のダブルパンチは強  
力だ。  
「ウチの支店も暇だが、葛西のトラックターミナル(同業者が集まった巨大ターミ  
ナル。実在)も閑古鳥が鳴きまくってるらしいぞ」  
「先輩、この会社どうなっちゃうんでしょうか…入社してまだ半年なのに…」  
「日本中がそれを考えているさ…ん?支店長が戻ってきた。慌てているな」  



39  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/26  00:16  ID:???  

02  
事務所会議室  
「良いニュースと悪いニュースがある。どっちから聞きたい?」  
戦争映画でありそうなセリフだが、この支店長がこのセリフを使う時はたいてい困  
難な事になると全員が知っていた。だがそうと知っていても返答しなければ支店長  
がヘソを曲げる事もまた全員が知っている。で、返答するのは新入りの役目と決ま  
っていた。つまり僕だ。  
「悪いニュースからお願いします」  
順番は僕の趣味だ。美味しいものは最後までとっておくものだしね。  
「悪いニュースは、近隣の農家を手伝って稼ぐ計画が半分以下になった。やはりど  
こも同じ事を考えるらしい」  
みんなが落胆の声をあげた。食料が調達しにくくなったのだ。士気と食料は切って  
も切れない関係にあるのでこれは大変だ。  
「では良いニュースは?」  
「仕事が見つかった」  
落胆から一気に歓声があがった。これで食料が調達できる…とみんな思った。僕も  
そうだ。  
「仕事は隣国への派遣だ」  
「隣国ってどこです?」  
「F世界での隣国。日本を召還した国に行くんだ」  
歓声が一気に氷点下まで落ち込んだ。  


40  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/26  00:23  ID:???  

>>38  
申し訳ない。Wikiについてよく知らないので今回はそのまま書きます。  

03  
派遣話を持ってきたのは支店長だが、話の元は本社からだった。  
内容が内容だけにいろいろ誤魔化しながらの話だったが要点はこうだった。  
1.自衛隊が展開した後方での勤務。自衛隊向け兵站活動&民生運送を行う。(人手が  
足りないらしい)  
2.できれば若くていろいろ知識がある方がいい。(ウチの支店は仕事が多い割には若  
い奴が僕しかいない)  
3.ウチの支店からは1人を派遣。(他の支店からも来るのか)  
4.出した会社には優先的に仕事を割り振る。(交換条件かよ)  
5.死亡時には通常の倍額の保険金が下りる。  
何のことはない。人身御供みたいなものだ。畜生。  
2と3の条件に合うのは僕しかいないじゃないか。畜生。  
「出発は2週間後だそうだ」  
支店長は済まなそうな顔で僕の顔を見ながらそう言った。  
決定事項かよ。畜生。  


41  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/26  00:25  ID:???  

04  
あれから2週間後。僕は同期入社の連中と一緒に異世界への船に乗り込んだ。  
個人携行が許されたのはバック1つだけ。  
泣いてしまった両親が持たせてくれた食べ物。  
なかなか続編が出ない作家が書いた、日本が宇宙開発に狂奔する小説。  
中学生の頃からのつきあいがある指輪の小説。  
なんとかかき集めたサバイバルに使える道具と教本。  
そして着替え。  
後は…軍事とファンタジーな知識。  

「足りないのは?」  
「勇気だけだ」  
そう答えて船内で笑いをとってしまった。でもみんな笑顔がこわばっている。  
みんな怖いんだ。ここにいる民間人や同乗している自衛隊の隊員も、無敵のサイ  
ボーグではない。だからこそ無理をして笑って恐怖を紛らわそうとしていた。  
でも僕は…少し期待もしていた。まだ見ぬ世界に。  

始まりの終わりか終わりの始まりかは分からないが、僕-草壁守はこうして死と隣り  
合わせのF世界へ旅立った。  




317  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/26  23:27  ID:???  

輸送戦記?(仮)  
2回目の投稿  
05  
日本をF世界に召還した王国に到着して1週間。最初の港町にまだ僕たちはいた。  
まだ僕たちは噂や公式発表レベルでしかこの世界を知らない。そんな集団にいきなり仕  
事をさせる訳がない。合計2週間は港町(正確には郊外の)自衛隊基地で缶詰にされて  

この世界に関する速成教育を受ける事が義務付けられてちょうど半分といったところだ  
。  
正直に言おう。面食らっている。  
ファンタジーの定番種族エルフは確かにいたが…フンドシやビキニアーマーで歩いてい  

れば誰だって驚くだろう。もっともフンドシやビキニアーマーを着用している部族はか  
なり珍しいと説明を受けた。安堵すべきかがっかりすべきか、微妙だ。  
さらに面食らったのは、到着直後から「現地の人たちの言葉が分かる」という事だ。  
指摘されて初めて気がついて教師役の自衛隊の人に聞いてみたところ  
「なぜかはわからん。召還魔法は都合がいいようにできているんだろう」  
と投げやりな返答が返ってきた。最初に来た言語学者が驚きのあまり盆踊りを踊りなが  
ら同じセリフを叫んだという話だ。まぁ考えてみれば召還して言葉が通じなくて…では  
役に立たないから脳味噌か意識に言語がすりこまれているのではないかという仮説が流  
れている。まー便利だから問題ないけど。  


318  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/26  23:28  ID:???  

06  
そして今日、僕たちは基地で何をやっているかと言うと…  
教官「てーいーこーくはクソったれ!」  
僕たち「てーいーこーくはクソったれ!」  
教官「このジジイのチ○ポみてーなクズども!声がちいせえっ!」  
僕たち「はい!」  
教官「誰がんな返事を教えたっ!返事はSir  Yes  Sirだっ!このオカマどもっ!」  
僕たち「Sir  Yes  Sir!」  

ここはF世界ではなくてベトナム戦争の頃の新兵教育キャンプかよ。  
そんなぼやきが聞こえてきそうなグラウンド。  
僕たちは万が一の為に体力向上カリキュラムを(無理やり)組みこまれて「フルメタル  
○ャケットのハー○マン軍曹」みたいな自衛隊の教官にしごき倒されていた。多分、上  
のだれかが心配してこのカリキュラムを組み込んだらしいが…ありがた迷惑だとその時  
は思った。が、このカリキュラムが後々役に立つ事態がこようとはだれも想像  
しなかった。  

教官「よぉーし。ランニング終了」  
僕たち「Sir  Yes  Sir!」  
教官「10分間休憩の後に障害物訓練だ!」  
僕たち「Sir  Yes  Sir」  
教官「声がちいせぇ!もっと増やしたいようだな、このゴミ虫どもは」  
僕たち「Sir  Yes  Sir!」  
教官「フン。休憩開始」  

「畜生。いつか殺してやる」  
みんながその考えで団結した15:00。嫌になるぐらいの快晴の下、夕方まで体力訓練  
はまだ続く。夕食後は休み時間を挟んで午前中と同じく座学。地獄はまだ続く・・・  



319  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/26  23:29  ID:???  

07  
晩の食堂は体力訓練以来、戦場と化した。  
クタクタになるまでしごき倒され、ストレス・疲労が溜まりっぱなしでヤバイ目つきの  

野郎どもが吉野家コピペよろしく殺伐と、夕食の取り合いを始めればそうなる。  
今日はカレーだ。一言も言わずに大盛をたいらげていく野郎の集団は気味が悪い。そん  
な僕たちを他の職員は奇異の目で見ていたが・・・今ではすっかり気にしなくなった。な  
お、自衛隊関係者は最初から気にしていなかった。慣れとは恐ろしい。  

こんな生活の利点は団結力が異常に高まった事か。「内をまとめたければ外に敵をつく  
れ」とは孫子だったかマキャベリだったかはどうでもいいが、その論理でハー○マン軍  
曹を敵にしてそれこそ「犯罪結社の構成員並み」の結束が最終的に出来上がった。  
はたしてコレは上の目論見どおりなのか?  それでもまだ訓練は続く。  



574  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/27  23:54  ID:???  

夕食後の座学。僕は仲良くなった松下と砂川と並んで座っていた。  
松下「魔法の講義だそうだが、先生はエルフらしーぞ」  
砂川「まじ?」  
僕「女性と聞いた。2人。」  
そう噂話をしていると教室に先生が入ってきた。その瞬間、僕たちは叫んでしまった。  
松下「どうして!」  
砂川「エルフなのに!」  
僕「ビキニアーマーじゃないの!」  

3回目の投稿  
輸送戦記?  
08  

秋でもないのに紅葉が3つ見える。正確には入ってきた2人の先生の1人・・・白を基調にし  
たスーツでピシっと決めた、セクシー系ダークエルフに力いっぱい平手打ちを食らった  
痕だ。  
そのダークエルフが紹介を始めた。  
「アタシがお前らに錬金術魔法を教えるルローネだ。そしてこっちのちっちゃいのが…」  
「ルローネ。ちっちゃい言わないで」  
「悪ぃ。こっちが精霊魔法を教えるミランだ」  
ルローネに紹介されたもう1人の先生は、同じくスーツを着ていたがルローネと比べて  
ぽややんな印象があるスレンダーな白エルフだった。そして・・・僕たちはまた叫んでし  
まった。  
松下「どうして!」  
砂川「エルフなのに!」  
僕「眼鏡っ娘なの!」  


575  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/27  23:55  ID:???  

09  
紅葉が3から6に増えた教室で講義が始まった。  
最初にエルフについての話から始まり、衝撃的だったのが・・・「ふんどし&ビキニアー  
マーなエルフ」は極少数派の部族のみであり、天然記念物モノらしいという事だった。  
それ以外にもこの世界で必ず遭遇する錬金術魔法と精霊魔法。その2つについての簡易  
な説明があった。平たく言うと  
錬金術魔法は魔力を論理的に体系化して研究し、行使する魔法。  
精霊魔法は精霊に魔力を渡してお願いを聞いてもらう?魔法。  
だそうだ。  
その他にも神官が使用する神聖魔法やら何かに特化した専門魔法体系などあるらしい。  
さらに魔法の系統などで学派で争っていたり、異端扱いされて追放されたり、良識をど  
こかに置き忘れたような禁断の研究にふける魔導師といった暗黒面もしっかり説明され  
た。  

「それでは以上で講義を終わる」  
「起立。礼」  
「ありがとうございました」  
全員、学生に戻ったような気分になってしまって思わず定番な挨拶をしてしまった。  
それだけ講義が面白かったわけであるが。  
当然その後のお喋りの話題は魔法についてのものが中心になったが、その前に全会一致  
で決まった事がある。それは・・・  
ルローネ先生は「姐御」  
ミラン先生は「ミランタン」  
と呼ぶ事だった。  
本人の目の前でうっかり呼んでしまい、小一時間説教を食らうのは3日後の話。  




74  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/30  00:25  ID:???  

4回目の投稿  
輸送戦記?  
10  
今日も座学と訓練。だけど今回は射撃訓練が組み込まれていた。  
僕たちみたいな素人に銃はまずいのではないかと思ったが、渡されたのはショットガンだった。  
ハート○ン軍曹な教官の説明によれば  
「貴様らに小銃を渡しても当たらん。遠距離は弾の無駄。だが近距離でならなんとかなるかもしれな  
い。できればラクで面制圧なものが望ましい。なので拳銃は無し。SMGも扱いが面倒。ショットガンな  
ら比較的なんとかなる」  
らしい。  
それにこの手の教育に必ずある分解整備は「自衛隊員に任せる」事を前提にした簡易的なものだった。  
それ以上教えたいが時間が足りない。人手が足りない。  
とまあ説明はこのぐらいにして、どんな訓練だったかと言うと・・・  
「どんな時でも銃口を味方に向けるな!このピーナッツ野郎!」  
「ショットガンでチャンバラをやるな!このクソ野郎!」  
「撃つ時はもっと腰を据えて撃て!」  
「勝手に分解するな!」  
「弾をバラすな!」  
・・・出だしは激しく不安になる状況だったが、上記のように罵られた連中はもれなく腕立て伏せ500回  
×3セットをプレゼントされたので他の連中は気をつけるようになった。最初より多少はマシ。  
それに全員がこう思った  
「銃取り扱いは慎重に」  
少なくとも暴発事故は少なくなりそうだ。  


75  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/30  00:26  ID:???  

11  
射撃訓練の時に姉御ことルローネ先生&ミランタンことミラン先生が呼ばれて攻撃魔法を見せてくれた  
が・・・全員が内心ビビったと書いておこう。正直、僕は腰が抜けかけた。こう書くと僕たちがかなり  
のヘタレのよう(ヘタレかもしれないが)だが、姉御が使用した魔法は「自分が使える火系最強魔法  
」だった。  

姉御、教育目的としては最高だと思いますけど、標的を含めた半径10メートルをクレーターにしてし  
まうのはやりすぎだと思います。  
姉御も姉御だが、ミランタンもミランタンだった。  
分かりやすいように火の精霊を呼んで火炎放射をやったのはいいが、「ちょっと」(本人談)やりす  
ぎて火事を誘発しかけて皆で消火活動をする破目になった。  

今回の教訓。科学があるからと言って魔法を舐めるのはやめましょう。  



399  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/31  00:12  ID:???  

4回目の投稿改訂版  
輸送戦記?  
10  

今日も座学と訓練。だけど今回は射撃訓練が組み込まれていた。  
僕たちみたいな素人に銃はまずいのではないかと思ったが、渡されたのはショットガンだった。自衛用  
らしい。  
ハート○ン軍曹な教官の説明によれば  
「貴様らに小銃を渡しても当たらん。遠距離は弾の無駄。だが近距離でならなんとかなるかもしれな  
い。できればラクで面制圧なものが望ましい。なので拳銃は無し。SMGも扱いが面倒。ショットガンな  
ら比較的なんとかなる」  
らしい。  
教官「お前らが乗り込む車両にはこいつが必ず1丁ある。そいつを扱えなければ死体袋行きだ。これか  

らの説明を耳をかっぽじって聞け!」  
僕たち「Sir  Yes  Sir!」  

教わったのは装填や発砲などの銃使用方法と、普通のときの銃取り扱い方法の2つだけ。この手の教育  
に必ずある分解整備は「自衛隊員に任せる」事を前提にした簡易的なものだった。  
それ以上教えたいが時間が足りない人手が足りないらしい。  
とまあ説明はこのぐらいにして、どんな訓練だったかと言うと・・・  



401  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/31  00:13  ID:???  

11  
「どんな時でも銃口を味方に向けるな!このピーナッツ野郎!」  
「ショットガンでチャンバラをやるな!このクソ野郎!」  
「勝手にウンチクをたれるな!しかも間違った奴を!」  
「○ーミネーター2みたいに片手で排莢すんな!」  
「撃つ時はもっと腰を据えて撃て!」  
「銃口を覗くなこのオカマ野郎!」  
「銃を粗末に扱うな!」  
「勝手に弾をバラすな!」  
「勝手に銃をバラすな!」  
・・・教官の中の人も大変だな・・・  

「素人に銃を渡すとこうなる」の見本みたいなものだった。  
その中で僕は文句も言わず、余計なことをしなかった。それは賢明だった。  

教官「俺に怒鳴られた奴。お前にお前に、そこのグループ全員。腕立て伏せ500回×3セット」  
指名された面々「何だよそれぐらいで〜」  
教官「何を言ってやがるこの豚娘ども!この研修期間中はお前らは俺の指揮下にある。つまりお前ら  
の空気しか入っていない頭からケツの毛まで全て俺のもんだ!」  
指名された面々「そ、それはつまり」  
教官「弾除けに使おうが標的に使おうが俺の勝手だ!」  
そのあまりの内容と迫力に全員圧倒されてしまった。  

出だしは激しく不安になる状況だったが、罵られた連中はもれなく腕立て伏せ500回×3セットをプレ  
ゼントされたので他の連中は気をつけるようになった。最初より多少はマシになった。  
それに僕も含めた全員がこう思った  
「銃取り扱いは慎重に」  
暴発事故は少なくなりそうだ。  


402  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/31  00:14  ID:???  

12  
「喜べこのクソ共!ルローネ先生とミラン先生が魔法の恐ろしさを教えてくれるそうだ。全員傾注」  
射撃訓練中に姉御ことルローネ先生&ミランタンことミラン先生が呼ばれて攻撃魔法を見せてくれる事  
になった。服は2人とも迷彩服。うーん。姉御はやっぱりカッコイイな。ミランタンは・・・なんか中学生  
が着ているみたいだが、あのだぶだぶ具合がカワイイな。  
「お前らにこれから魔法の恐ろしさを『教育』してやる」  
「ルローネ。あなたそのセリフを言いたくてうずうずしていたでしょ」  
「・・・それでは全員あの標的に注目」  
50m先の標的に向かって姉御が呪文の詠唱を始めた。  
「天空に満ちる・・・1つになり・・・風を巻き込んで・・・渦巻くもの・・・」  
なんだか長い。  
「集まりしもの、汝を光と共に開放する!」  

その瞬間、標的周辺がプラズマ化した。  

・・・全員が内心ビビったと書いておこう。正直、僕は腰が抜けかけた。こう書くと僕たちがかなり  
のヘタレのように見える(本当にそうかもしれないが)が、姉御が使用した魔法は「自分のレベルと  
能力で使える火系最強魔法」を使用したのだった。  
結果を言おう。姉御、教育目的としては最高だと思いますけど、標的を含めた半径10メートルをクレー  

ターにしてしまうのはやりすぎだと思います。  



406  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/01/31  00:17  ID:???  

13  
姉御も姉御だが、ミランタンもミランタンだった。  

「わたしは今から火の精霊さんを使います」  
何か中学生の発表みたいだな〜と僕はその時までそう思っていた。  
「ではいきまーす。サラマンダーちゃんお願い」  
ミランタンがそう言った瞬間、僕たちの目の前を炎の川が流れた。  
分かりやすいように火の精霊を呼んで火炎放射が行われたのだった。  
そのド迫力にまた腰を抜かしかけたがふとつぶやいた。  
僕「あれ、何か範囲が広すぎないか?」  
砂川「そう思うか。やっぱり」  
松下「お前もそう思うか」  
松下たちも同じ想像をしたようだ。  

結果を言おう。ミランタンは火炎放射の範囲を「ちょっと」(本人談)大きく取りすぎて火事を誘発しか  

けてしまったのだ。当然と言うかなんというか皆で消火活動をする破目になったのは言うまでもない。  

今回の教訓。科学があるからと言って魔法を舐めるのはやめましょう。  
なお、姉御もミランタンもその後基地司令に怒られていた。  
もっとも魔力の使いすぎでぼんやりしてしまい上の空だったようだが。  



601  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/01  01:15  ID:???  

14  
5回目の投稿  
輸送戦記?  

草木も眠る丑三つ時。つまりは午前2時。僕は全然眠れなかった。  
同室の連中がたてる鼾が「急に」大きくなってしまえば眠れるものも眠れなくなってしまう。  
大気汚染や人工の光がないから星の光で真昼とまではいかないが、夜なのにとても「明るい」。今日  
は新月だから月が見えない。月が出ていたらもっと明るく見えるだろう。  
そんな美しい夜に僕は宿舎を出て、基地内を気晴らしの散歩をしていた。  
それにしても急に明るくなったな。こんなに明るかったっけ?まあいいや。  
ぐるっと一周してからまた戻ろう。  

と散歩を始めて当直詰め所のそばを通り過ぎたらいきなり捕まった。すぐに放してくれたけど。まー  
真夜中にうろうろしていれば「ばんかけ」を食らう事が日本ではあるし。顔見知りの隊員がいたので  
説教代わりに荷物の運搬を手伝う事になった。  
隊員「A-10の倉庫まで持っていくのを手伝ってくれ。俺も手伝う」  
丁度いい人間が現れた・・・ってところか。  

2人で世間話(ハート○ン軍曹みたいな教官は実はかなりの恐妻家だとか、姉御とミランタンのファン  
クラブが結成されたとか)をしながら歩いている  
うちに気がついた。  
僕「あれ?夜間訓練か何かですか?」  
隊員「いや。そんな予定はねーぞ」  
僕「だって、グラウンドのずっと向こうに黒装束な人が5人ぐらい見えますけど」  
隊員がマジな顔になってよく目を凝らす。  
隊員「・・・よく見えたな。俺だとぼんやりとしか見えんぞ。でも誰かが動いているように見えるな・・・」  
なんだかやばい事になりそうだ。  


602  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/01  01:16  ID:???  

15  
隊員が無線で会話中  
隊員「当直07より当直室へ。現在G-5地点。第1グラウンド付近で侵入者を5名発見。送レ」  
当直室「当直室より07。触接は可能か。送レ」  
隊員「07より当直室へ。同行中の草壁なら見える。だが暗視装置が必要と認む。送レ」  
当直室「当直室より07。暗視装置は無い。非常呼集をダマテンでかけ、今から増援を送る。それまで触  

接を続けろ。送レ」  
隊員「07より当直室へ。了解。触接を継続する。」  

隊員「聞いたな。それじゃあ早速後をつけるぞ」  
私「訓練未了。しかも民間人を使いますか、ふつー」  
隊員「100回の訓練よりも1回の実戦と良く聞くぜ」  
私「訓練100回の方が損害無しで錬度が上がって良いと聞きましたけど」  
隊員「・・・しょうがないだろう。使えるものは親でも上司でも使えさ。悲しいけどこれって戦争なのよ  

ね〜』」  
私「そんな事言う人嫌いです」  
隊員「んな事を言ってないで行くぞ」  
私「休日が欲しい」  
隊員「知らないのか?休日は非常事態のベルで取り消しになると相場が決まっているもんだ」  



603  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/01  01:17  ID:???  

16  
増援が15人+2人  
15人は「ハートマ○軍曹みたいな」教官直率の陸自隊員。残りの2人は姉御とミランタン。  
問題は姉御とミランタンの格好だったりする。  
僕「あの〜姉御たちのその服は・・・」  
姉御「寝ていた所を叩き起こされたんだからしょうがないでしょ」  
確かにそうだが・・・背が高くて、セクシーダイナマイツッッッ(死語)なダークエルフのお姉さんが  
『とんでもなくフリフリなパジャマ』の上に軽い上着を着ているだけというのは衝撃的です。これで  
クマのぬいぐるみを抱えていたら立派な少女趣味です。・・・部屋でやってそうだな。  
ミランタンはかなり透ける素材のネグリジェに黒のランジェリー!  雪のように白いエルフに黒は美し  
すぎます。しかもあのランジェリーとかは全部絹だぞ。高級品なのは間違いない。光沢が違う・・・  
と下着談義はこのへんにする。  

侵入者は10人。それ以外は見つからなかった。教官の意見ではどう見てもプロで、動きが違うらしい。  
まープロなら動きが読みやすいようだが。  
僕がこっそりと侵入者を監視しているうちに、教官が当直司令と作戦についての打ち合わせがおわっ  
たらしい。どうやら姉御たちの支援(照明)を受けた待ち伏せのようだ。・・・ならば交戦までの部隊  
の眼は僕かよ。畜生。責任重大じゃないか。  



850  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/02  17:42  ID:???  

6回目の投稿  
輸送戦記?  
17  

教官「ルローネ先生とミラン先生は私と一緒に来てください。火力支援などで手伝ってもらいます。  
後、草壁。お前も来い。探知機と弾薬運搬係だ」  
僕「アパムにはならんでしょう」  
教官「そんだけ減らず口が叩けるのなら大丈夫だな」  
姉御とミランタンがじっとこちらを見ている。セクシーダイナマイツなお姉さんと、下着姿(一応軽い  
上着ははおっている)から見つめられるのはうれしいんだが・・・なんだか目つきが怖いぞ。  

全員が物陰に隠れ、待ち伏せが完了。  
教官「草壁、あとどれぐらいだ?」  
僕「50mぐらいだと思います」  
教官「夜間だから30までひきつける」  
僕「45…40…30」  
教官「先生、お願いします」  

その瞬間、ミランタンの精霊魔法による照明弾代わりの「光の精霊」が飛び出し、黒装束を照らし出  
した。  
教官「君たちは完全に包囲されている。降伏しな・・・」  
姉御の音を増幅&飛ばす魔法を使用した降伏勧告が終わらないうちに黒装束たちは走り出し  
た。  
同時にかなり離れているはずの正門で爆発が発生した。  


851  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/02  17:44  ID:???  

18  
畜生。黒装束が突入してきた。  

PANPANPANPANPANPAN  

隊員の発砲で黒装束のうち5人が倒れた。夜間で動く目標によく当たったな。  
黒装束たちが黒で塗装した剣を抜き放った。畜生、なんでこんなによく見えるんだ。怖いぞ。  

PANPANPANPANPANPAN  

黒装束5人のうち3人が倒れた。が、もう接近戦だ。  
1人が教官に剣を振り下ろす。恐ろしい事に教官は小銃で剣を横から弾いてかわし、相手をぶん殴った。  
もう1人は目立つ姉御とミランタンに向かったが、うかつにも僕に背をむけていたので、手に持っていた  
弾薬箱(実弾入り)を、思いっきり振って、黒装束の脳天に思いっきり叩きつけた。  


852  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/02  17:45  ID:???  

19  
少し危なかったがこっちはなんとかなった。  
黒装束の損害は射殺5、自決3。捕虜2名。捕虜は僕と教官が殴り倒して昏倒させた分だ。  
僕たちの損害は死者0、怪我1。怪我をしたのは直接格闘戦をした教官だけだった。  
こちらはこれだけの損害で終わったけれども、正門の方に火の手があがっていた。  
小銃や25mmの発砲音が派手に響いている。向こうはものすごい襲撃を受けているみたいだ。  

教官「・・・はい・・・こちらは・・・ええ、無事です。それでは連れて行きます。終ワリ」  
隊員たちが警戒している中で教官が何か報告をしている。その横では縛られて猿轡までかまされた捕虜  
が転がされ、ごていねいに監視までついていた。  
教官の報告が終わったようだ。  
教官「しばらくここで警戒態勢」  
隊員「正門側への救援が必要なのではないでしょうか」  
教官「向こうは確かに派手だ。が、派手なだけで突入してくる様子が無いそうだ。もしかすると陽動  
かもしれない。ならば向こうが助攻でこっちが主攻の可能性がある。だから警戒するのだ。後から増援  
がまた来る」  
まだ気が抜けないようだ。畜生。  

そういえばこの弾薬箱は1つ30キロなんだけど、それをよく片手で軽々と振り回して相手に当てたな。  
やはり火事場の馬鹿力なのか?  
それにしても姉御とミランタンの視線が怖い。何だろう。やっぱり姉御と呼んだのが悪かったのかな。  



853  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/02  17:47  ID:???  

20  
翌日  
結局、僕たちの方からの襲撃はあれから無く、僕たちは朝が来るのを緊張しながら待っていただけだ  
った。後で聞いた話によると正門は囮で、何かあったときの為に騒ぎを起こして注意をひきつけ、  
黒装束の撤退を助けるものだったらしい。  

正門の方は火球などを打ち込まれ、その後に敵の突入があるかと思われたが攻撃はあれだけだった。  
警備に当たっていた隊員が最初の爆発で亡くなったらしい。南無。  

2名の捕虜はあれから営倉に連れて行かれた。が、その後  
「*どあjdpを+せdpfpしえrdp@え〜」  
ととんでもない絶叫が聞こえてきた。その前に入っていった「ふんどしエルフ」が関係あるのだろうか。色々な噂が飛び交っているが真相は営倉の闇の中。  

僕以外の連中は片付けに駆り出されていた。講義や訓練が除外されて最初は歓声をあげていたが・・・  
昨日の状況を説明されてからは歓声は聞こえてこなくなった。自分たちを守り、役目を果たした英霊  
のそばで馬鹿騒ぎをするようなやつはいなかったようだ。  

そして僕は・・・  


854  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/02  17:48  ID:???  

21  
「さぁ、我慢しなくていいのよ。医務室にはもうだれも来ないのよ」  
「せ、先生!  僕は・・・」  
「いらっしゃい。大人の味を教えてア・ゲ・ル」  

という状況は他の連中の脳内で発生していた。  
僕はあの後医務室に放り込まれて自衛隊の医官と姉御とミランタンによる調査を食らっていた。  
なお、姉御たちは既に着替えていて、いつもの服の上に白衣を着ている。  
姉御は少し荒っぽい女医さん。ミランタンはちっちゃくてカワイイ眼鏡っ娘研究者な感じでなかなか  
萌えるな〜。こんな状況でなければ。  
僕「え〜姉、もとい。ルローネ先生。これはあだなで呼んだお仕置きなんでしょーか」  
姉御の指が僕の体をいろいろ触っているけど、なんだか検体をいじくる科学者な感じで全然嬉しくない。  
姉御「いいから黙ってろ」  
僕「はい・・・」  

医官による血液検査や簡易脳波計による脳波測定やらの後、姉御とミランタンに体をいじられていた。  
合間にカルテに書き込みをし、医官や後から来た自衛隊幹部の人とひそひそ話(なぜか聞こえなかった  
)をしながら調査を進めていたが、やっと終わったみたいだ。  

姉御「草壁。重大な事を告知するから気をしっかり持てよ」  
僕「え、はい」(何だ?いきなり癌だなんて言われたらどうしよう。まさか変な寄生生物でもいるのか?)  

姉御「君は魔法使いになった」  




376  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/10  02:34  ID:???  

7回目の投稿  
輸送戦記?  

22  
「は?」  
普通はそう言う。いきなり「君は魔法使いになった」なんて言われたら絶対そう言うぞ。  
僕「えーと姉…ルローネ先生、ミラン先生、詳しい説明をお願いしたいのですけど・・・」  
姉御「と言ってもねぇ」  
ミランタン「わたしたちも首をかしげているのよねぇ」  

何だかんだで色々話を聞いてまとめると  
1.草壁は魔法使いになった。証拠に魔力が感知される。  
2.ただし普通とはかなり違う。  
3.使用可能と推測されるのはマイナーな補助魔法。  
4.ただし通常と違って常に補助魔法が維持されている。自力変更は不能。  
5.感覚系補助に50%。制御系補助に30%。肉体系補助に20%。の魔力が割り振られている。  
6.5の影響で他の魔法が使えない「魔法が使えない魔法使い」になっている。  
らしい。  

僕「・・・えーと肉体強化に特化した肉体派魔法使いでいーのですか?」  
ミランタン「そーなるのよねぇ。あんまり例がないんだけど」  
姉御「魔法が一切使えない○ークシュ○イダーみたいなもん」  
僕「何で姉御がそのマンガを知ってるんですか」  
姉御「まーそれはそれだ。別に殴りアコ○イトや殴りマジ○ャンでも」  
僕「…もういいっす」  
ミランタン「少なくとも初心者にありがちな魔法暴発は無いから安心だね」  
僕「肉体補助の暴走っつーのも恐ろしい気がしますが」  
ミランタン「3日前の演習場でのアレ(12と13を参照)よりは良いと思うけど」  
僕「…確かに」  


377  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/10  02:35  ID:???  

23  
僕「で、魔力の50%を感覚に突っ込んでいるから急に夜目が利いたり、距離が分かったり、耳が良く  
なったりした訳ですね」  
ミランタン「肉体補助に20%が振ってあるから体力も上がっているね」  
姉御「だから30sはある弾薬箱を軽々ブン回せた」  
僕「まーパワーアップできて死ぬ確率は下がったから良いか」  
姉御「パワーアップされたから激戦区に放り込まれたりして」  
僕「姉御。それイヤ過ぎ」  
ミランタン「まぁともかく」  
姉御「我がクラブへようこそ」  
僕「好き好んで入会した訳じゃないけど」  
ミランタン「他に入会者と言うか覚醒した人がいるかもしれないから、日程を延ばして検査だね」  
姉御「その間に色々と教えてやるよ。一対一で」  
僕「激しく不安だ」  
姉御「お姉さんが教えてア・ゲ・ルは男のロマンだろ」  



245  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/15  23:00  ID:???  

8回目の投稿  
間が空いて申し訳ない。  
輸送戦記?  
24  

あの襲撃事件で僕たちは敵の注目を集めている事が分かったらしい…実際に魔法使いが何名か出たの  
で間違ってはないが・・・結局、早めに各基地に配属して人手不足解消&監視の分散化を図る事になった。  
もっとも、本格的魔法使いに目覚めた連中は日本本土に戻るらしい。羨ましいが、ある意味貴重なサ  
ンプルだから戻ってどういう扱いをされるのか。まぁ死と隣り合わせの生活を送る事を義務付けられ  
てしまった僕たちよりはマシだろう。  

そう考えながら僕たちは今、街道を進んでいる。  
進んでいると言っても徒歩ではなく数台のトラックに分乗し、もう2時間は揺られている。  
街道は昔の統一帝国(ローマ帝国が近いのか?)が整備した石畳舗装の立派な道路の成れの果てだ。  
ちゃんと整備され、日本と比べても遜色無い区画があれば、とんでもない区画もある。本来はもっと  
とんでもない区画・・・道のど真ん中に大穴があいていたりする・・・もあったらしいが、ひどい所は陸自  
の施設科が直したり、注意標識を立てたりしているので今の所は大丈夫だったりする。  
僕はトラックの荷台で揺られながら仲間と談笑しながらのんびりと過ごし…たいのだけれどもそうは  
いかない状態だったりする。  

僕は車列の2番目を走る軽装甲機動車に乗り、防盾から頭を出して周りを観察している。  
要するに見張り番。進行方向に怪しいものがないかをいちはやく発見するのが仕事だ。  
本当は1番前が良いらしいが、民間人を先頭にするのはナンなので結局こうなった。  
ふつーは民間人にやらせる仕事じゃないんだが、魔法で感覚系が強化されてしまい、自衛隊員よりも  
役に立つことをこの間の襲撃事件で証明してしまったので、僕に白羽の矢が立ってしまった。  
さらに困った事に「観察」と称して姉御やミランタンも一緒について来ている。もっともこれは他の  
人たちから歓迎されている。僕にとっては実験動物な扱いだならあんまり歓迎したくはないんだけど。  
ああ、さすがに姉御たちは後ろのトラックに乗っている。そしてぐっすり寝ているらしい。いい度胸  
だ。  


246  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/15  23:01  ID:???  

25  
この道は主要街道なので幅がけっこうある。片側2車線の道路ぐらいの幅だ。この道を通っているのは  
僕たちだけではなく、普通の旅人や現地の人たちの馬車も一緒に通っている。よって時速80kmで疾走!  
などはできず、徐行したりとけっこうのんびりとしたスピードで走っている。  
僕たちは「のんびり」と感じているが、F世界ではそれこそ早馬や特殊生物でも使わないと出ないス  
ピードなので、現地の人たちはかなり驚いている。さすがに半年もここを通っているので地元の人は  
慣れっこになっているが、他所からの人はかなり驚いている。普通は驚くだけだが、中にはこっちを  
化け物と勘違いした騎士や旅人や聖職者とトラブルが発生し、しばらく停車する事もあったりする。  

あ、従者を1人連れた騎士?がこっちを指差して何か叫んでる。見たところ少女か?けっこうかわ  
いいなぁ。ん?「この化け物め」「行きがけの駄賃に退治してやる」だと?  またトラブルかよ。  
僕「ホークアイよりダリア00へ。前方に興奮状態の騎士を発見。送レ」  
輸送隊隊長「ダリア00よりホークアイ。またトラブルか?送レ」  
僕「ホークアイよりダリア00へ。トラブルです。こっちを化け物と勘違いしています。送レ」  
隊長「ダリア00よりホークアイ。了解した。これより対応する。終ワリ」  

また停車らしい。  


247  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/15  23:01  ID:???  

26  
少女騎士&従者に隊長が応対している。  
かわいいんだけど完全に頭に血が昇ってるからこっちの言う事を聞いてないな。  
あ、姉御とミランタンも出てきた。  

5分後  
なんとか興奮は収まったみたいだけど、まだこっちを疑っているな。今度は帝國の手先と疑っている  
らしい。まー向こうから見たら訳の分からない鉄の化け物が爆走して、その中から人間やエルフが出て  
来たのだから怪しいと言えば怪しいな。それにしてもこの王国は意思疎通ができてんのかね。一般人  
はともかく支配階級の騎士に話が通ってないのはまずいと思うぞ。  
隊長が何か書類を見せているが…ありゃ、急に少女騎士の口調が丁重なものになったぞ。何かの証明書  
でもみせたのか?まートラブルが片付いてくれるなら大歓迎だけど。  

さらに15分後  
無事に出発。だけどなんであの少女騎士が同じ車に乗っているんだ?普通は隊長車に乗るだろ!  



248  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/15  23:02  ID:???  

27  
へたりこんだ痩せ馬を通りかかった農民に金を渡して預かってもらい、連れてきたらさらに金を渡す  
事にして、少女騎士と従者も同乗する事に。  
従者は隊長車に。少女騎士は僕の車両に同乗。  

化物とこっちを罵っていた割には軽装甲機動車に大喜びしている。やっぱりガキだ。  
話を聞いたら14歳!  確かにガキだ。両親が死亡したのでその年で騎士を継いだそうだ。少女騎士。  
12歳少女メイドみたいに妙なスイッチがはいってしまう人がいるかもしれないけど、僕はガキは守備  
範囲外だからまぁ平気だ。  

名前はクラウスちゃん。男として育てられたそうで。ひとりっこはつらいな。  
一緒にいた従者は先代から仕える執事だそうで。今回の帝國との戦争に馳せ参じる為に出てきたそう  
だけど、参戦と引き換えに領地を認めてもらう為でもあるらしい。領地は小さいから当然収入も少な  
い。貧乏だから政治的影響力も無い。で、両親の死去で領地召し上げや横取りを回避する為に参陣。  
出陣中は領土関連のごたごたは凍結される慣習になっているので安心だが、もしお墨付きがもらえな  
かったらお家断絶になり、彼女いわく「7代前からの名家」が消えてしまう。それに彼女を敬愛して  
くれている領民たちがもっとひどい領主のモノになるのが我慢ならないそうだ。  

単なるDQNかと思ったらけっこう真面目でいい娘だな。これで堅苦しい物腰じゃなければもっともてる  
と思う。そう言ったら思いっきりうろたえてる。うーんかわいい。  

ミランタン「ミランより草壁へ」  
僕「え、草壁からミランへ。どうしました?  送レ」  
ミランタン「ミランより草壁へ。仲良くなるのはいいけど、送信ボタンが押しっぱなしだよ」  
今までの会話だだ漏れだった…  



225  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/21  01:35  ID:???  

9回目の投稿  
輸送戦記?  
28  

クラウスちゃんと従者で執事のマイヤーさんを輸送隊が拾った後、クラウスちゃんは子供らしい好奇心  
のおもむくまま、僕が乗っている軽装甲機動車に乗って質問責め。  
従者で執事のマイヤーさんは隊長車に乗って隊長と密談中。  
主人をほおっておいていいのかよヲイと思ったが、密談に子供を連れていても役には立たないだろう。  
まぁ考えてみれば、クラウスちゃんに暗い話で負担をかけたくないっつー判断があるんだろーな。  
実際、金髪で、色白で、笑顔が可愛くて、それで騎士としてがんばろうとしている姿を見ると…なん  
とかしたくなっちゃうんだよなぁ。  
で、その結果が車の揺れと質問責めのダブルパンチだったりする。  

その質問責めを抜粋すると…  
クラウス「これ(軽装甲機動車)って魔法で動いてるの?」  
僕「魔法じゃない。科学技術で動いている…でいいのか?」  
クラウス「科学技術って言う魔法なんだ」  
僕「違う違う。えーとなんて説明すりゃいいんだ?」  
といった基本な所から  
クラウス「草壁たちは騎士なのか?」  
僕「違うぞ」  
クラウス「ならば学者か聖職者なのか?」  
僕「どれも違う。普通の一般人。庶民だよ」  
クラウス「それは嘘だ。さっき落とした本をちらりと見たが、細かい文字でいっぱいだった。草壁の懐  
から落ちたという事は草壁の私物であろう。ならば読めるはずだ。庶民には字が読める者はいない」  
僕「(ガキのようでもけっこう鋭いな)日本じゃ読み書き計算ができる奴は当たり前だぞ」  
クラウス「それこそ嘘だ。騎士に嘘をつくと承知せんぞ」  
僕「信じてくれよぉ」  

といったかなり鋭い質問まであったりした。  
質問ばっかりで休憩にならんぞ。  
まぁ「草壁」「クラウス」と呼び合うぐらいは仲良くなったのは収穫か?  


226  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/21  01:35  ID:???  

29  
そんなこんなで昼食時間になったので休憩する事になった。  
場所はかなり大きい河のそば。昔ながらの石橋と、施設科が架けたらしい鋼鉄製の橋(ベイリィ橋?  
とか言うモノらしい)を見ながらお昼になった。  
クラウスちゃんは執事さんの所へ行ってしまった。やれやれ。これでやっとゆっくりできる。  
…と思ったら今度は松下と砂川の2人が質問責めに来やがった。ゆっくりさせてくれ。畜生。  

僕「だから目が合ったから丁度良いと思われたんだっつーの」  
もぐもぐ  
砂川「本当かよ」  
むしゃむしゃ  
松下「まぁ、ガキのやる事はよくわからんからな。それはともかくこの焼きおにぎり(味噌)はいける  
な」  
ぱく  
僕「それには同意」  
もぐもぐ  
砂川「どっちに同意してんのやら」  
ごくごく  
僕「両方に決まってるだろ。と、御馳走様」  

腹いっぱい+暖かい日差しと来れば眠くなるのが相場だが、そこに現れた黒い影!この甘美な時間を  
妨げる輩は誰だ!と思ったら、クラウスの執事さんだった。  


227  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/21  01:36  ID:???  

30  
執事さんはマイヤーと名乗った。がっしりとした体格。年齢は…40-50か?  
マイヤー「お嬢様がご迷惑をおかけしたそうで。申し訳ありません」  
僕「いえいえとんでもない。こちらも楽しかったし…」  
マイヤー「し…?」  
僕「自分の中途半端な認識を改めるきっかけになりそうでありがたいです」  
マイヤー「?よくわかりませんが」  
僕「向こうにある車が見えますか?」  
マイヤー「あの『とらっく』とか言う乗り物ですね。はい。まったくもって不可思議な乗り物ですな」  
僕「車が動く原理を教えて欲しいといわれましたが、分かりやすく説明するのに骨がおれました。私  
が『なんとなく』しか理解していないのが原因なのですが」  
マイヤー「ああ、しっかり認識していればそんな苦労はしなかった、と?」  
僕「ええ」  

マイヤーさんは何か感じたらしい。何回かうなずいた後、僕の眼をじっとみつめた。  
マイヤー「草壁さん。あなたの所にまたお嬢様がお世話になると思いますがよろしくお願いします」  
僕「微力を尽くします」  
かしこまった物言いに、僕もついかしこまった物言いで返した。  


228  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/21  01:37  ID:???  

31  
マイヤーさんとの会話の後、1人で寝転がっているうちにうとうとしてきた。  
そんな夢心地に、カーラジオから流れる音楽が心地よい。  
F世界の大陸に派遣されている僕たち向けのラジオ番組だ。  
楽しいおしゃべりを流したり、手紙を読み上げたり、リクエストされた音楽をかけたりする。そんな  
他愛のないラジオ番組。だけど僕たちはみんなこの番組が大好きだったりする。  

日本にいた時は何とも思っていなかった日常。だが大陸にいる僕らにはその日常は遠いところにある。  
無くして初めて気がついたもの。それを思い出させてくれるラジオ番組。  

今、流れているのは他愛のないラブソング。  
「こちらを見つめている男の子。その瞳には誰が映っているの?」  
危険があるかどうか視て判断しなければならない日常。  
「迷わず、抱きしめて、キスして」  
死神の抱擁とキスは勘弁してくれ。  
「吐息の日々。揺れる心。戻れなくてもいいから」  
あの楽しかった日々。戻りたい。けれども、この状況を楽しみつつある自分もいる。  

どうしてもこちらでの仕事と重ね合わせて考えてしまうのは僕の悪い癖だ。  
そんな事を考えながらの心地良い時間もあっという間に過ぎてしまう。  

休憩終了の声がする。仕事が嫌に思える一瞬だが、すぐにそんな考えは捨てる。  
仕事だからという理由もあるが、それだけではない。  
いつも夢ばかりでは飽きてしまう。現実の苦味があってこそ、夢は甘美になるから。  



379  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/23  00:20  ID:???  

10回目の投稿  
輸送戦記?  
32  
昼食後、僕たちは出発した。  
僕はまた軽装甲機動車に乗って監視を。  
クラウスちゃんはまた僕と一緒の車に乗っている。なんでここまで気に入られたのやら。理解に苦しむ  
な。  
ともかく車列は何事もなく進んでいく。  
だが、トラブルはすぐ近くにまで迫っていたのだ。  

街道が森に入った。  
今までは片側2車線の良い道路だったが、森の中では片側1車線に狭くなった上に道路状況が極めて悪  
くなった。隊長いわく「施設がかなり補修をした」らしい。補修してコレかよ。  
とゆー事は以前はコレよりももっと劣悪だったわけか…物流にとっては致命的だな。周辺環境まで考  
えると、道が狭くて悪くてカーブが多くて、鬱蒼と茂った木々で日当たりが悪い。雨が降ったら泥濘  
と化して通れなくなるな。WW2ロシアの泥将軍かよ。畜生。で、そこでヒイコラ言うのは僕たちでつ  
か。鬱駄死脳。  
そんな事を考えながら周囲を視ていると…森の中に人の気配がなんとなくする。  
地元の猟師さんか何かだろう。  
そう思って気にしない事にした5分後。前方に障害物が見えた。  


380  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/23  00:21  ID:???  

33  
道のど真ん中を倒木が塞いでいる。車列はゆっくりとスピードを落とし、止まろうとする。  
そこで気がついた。  
人の気配がする。それも大勢。話し声がない。あるのは殺気だけ。  
僕は叫びたくなる衝動を押さえ込む事になんとか成功し、警告を発する。  

僕「警告。警告。待ち伏せ。森に伏兵がいます。数は50人程度と推測」  
輸送隊隊長「ダリア00より全車。警戒態勢。民間人(僕たちの事)は出すな。こちらが気づいている  
事を気取られないようにしろ。その上で障害物を排除だ」  
ははぁ。戦闘は避ける気だな。こっちは単なる輸送隊でしかも民間人を抱え込んでいるからな。  
輸送隊隊長「ダリア00より全車。民間人にアーマーベストとショットガンを渡せ。最悪に備えろ。その準備も気取られないようにしろ」  

ゆっくりと障害物から少し離れたところで車列が止まる。  
輸送隊隊長「ダリア00より全車。障害物排除を準備。できるだけ騒いでそっちの方に注意を向けさせ  
る。その間に民間人の準備だ」  
…ビ○マの竪琴かよ。僕らは日本軍。村にある平屋の集会所?はこの森と障害物。周りにいる敵?は  
英軍。敵はこっちを殺る気満々。日本軍指揮官は大胆にも騒いでいるフリして準備を整える。弾薬車  
を山車のフリして動かすのは…障害物排除準備か。  
今ここで先手を打ってもこっちの戦える兵が少ないからどうなるか分からない。姉御とミランタンの2人  
がいるが、数で押し切られたらおしまい。  

完全に車が止まった。  
襲撃してこない。こっちの出方を伺っているのか?ならこっちにも勝ち目がありそうだ。  


381  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/23  00:21  ID:???  

34  
陸自の隊員が障害物を調べている。  
離れた瞬間に矢が飛んでくる可能性があったがそれはなかった。  
隊員A「おーおーこれまた派手にやりやがって」  
隊員B「木を切り倒して転がしただけか…牽引で少し動かせばOKかな?」  
隊員C「押したほうが早くないか?」  
わざと大き目の声で騒ぎながら作業を進める。  
傍目にはのんびりしているように見えるが、こっちはドキドキものだ。  
この瞬間にも敵が殺到してくるかもしれない。その時は真っ先に殺られるのは彼らだ。彼らが注目を  
ひきつけている間に準備は進む。  
輸送隊隊長「ダリア00より全車へ。準備状況を知らせ。送レ」  
各車より返答が入る。準備完了らしい。姉御たちもOKだ。  

倒木にワイヤーを引っ掛け、車で牽引することで排除しようとしている。  
見ている事でこんなに消耗するとは思わなかった。  
鳥が鳴き声を上げて飛び去る。鳥にもこの緊張感が分かったのだろうか?  

クラウス「草壁。なぜそんな恐い顔をしている?」  
僕「クラウスちゃん。理由は後で話しますから今はしゃがんでおとなしくしていてください」  
クラウス「ん、分かった。草壁の事だ、何か理由があるのだろう」  
僕「助かります。基地に着いたら何かおごりますから」  
クラウス「騎士に二言はないぞ」  
危なかった。もしクラウスちゃんが騒いだらそれをきっかけに戦闘が始まるかもしれなかった。  
周囲の空気は張り詰めた弦のようになっている。何かの拍子で弾けるぐらいの。  


382  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/23  00:22  ID:???  

35  
なんとか倒木の一部排除に成功した。後は通るだけ。  
だが油断はできない。まだ襲われる可能性はある。だから油断はできない。  
今、1番緊張しているのは僕と隊長だろう。  
僕は「感覚が鋭すぎて敵の吐息すらわかってしまうから」  
隊長は「敵前で作業させて無事に通るという大胆な手を打って」  
多分、僕と隊長は汗で3sは痩せるに違いない。ついでに胃潰瘍も発生しているに違いない。  

隊長「ダリア00より全車。出発」  
車列が一斉に動き出した。ゆっくりと倒木をかわし、全車が通り抜けた。そしてスピードを上げて  
森を抜け出した。  

隊長「ダリア00より全車。警戒を解除」  
やっと終わった。  
敵は帝國軍の潜入した連中じゃなかったのか?もしそうなら、敵は山賊。  
キャラバンを狙って障害物を仕掛けたが、引っかかったのは僕たち。自衛隊と知っていれば手がだし  
にくい。彼らからすると驚異的な魔法に見える戦力が目くらましになって襲う気をなくしたのだろう。  
もし知っていない場合は、訳の分からない化け物(に見える)を襲うよりはやり過ごす方を普通は選ぶ  
な。  
帝國軍の潜入部隊なら、偵察目的ならやりすごして情報収集が基本だから攻撃は無し。攻撃目的なら  
民間を襲った方が効率が良い。  

どちらにしても助かった。  




497  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/24  01:10  ID:???  

夕方。僕たちは目的地である「王国」首都郊外にある基地に到着した。  
…日章旗が掲げられているのは当たり前だけど、星条旗が隣に掲げられているのは何で?  

11回目の投稿  
輸送戦記?  
36  

到着後、基地司令の目の前で着任の報告をさせられた後に基地の案内があった。  
この基地はけっこう広い。  
輸送の要であるから倉庫やら何やらが広いのは当たり前。航空機用の格納庫はあるわ、各種修理工場  
はあるわ、通信用のでっかいアンテナはあるわ、自給自足の畑と鳥小屋まであった。  
「パ○レイバーの特車2課かよ」  
「戦況が悪化した後の南方基地?」  
そんな感想が出たのもしょうがない。  
その他に上級司令部やら各省庁の出張所やらおまけに米軍もいる。もっとも米軍はいろいろあるらしく  
て自衛隊指揮下にあるらしい。  

その後の各種説明(どこそこがねぐらだとか、ここには入るなとかそーゆーもの)を受けた後、早速  
仕事が入った。人手が足りないからしょうがないか。  
まぁ、ウチみたいに到着後説明無しで仕事を振られ、さらに日付が変わるまで働いたような奴にはこれ  
ぐらいは屁でもないけれども。  


498  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/24  01:10  ID:???  

37  
で、仕事が一段落して食事。  
ここは他と違って食事は食券制だ。本当は事前に食券をまとめて渡されるはずだったが、色々手違いで  
今回は自腹になった。1食500円。出費は500円で済むはずだったのだが…  
クラウス「草壁。約束を果たしてもらいにきたぞ」  
と食堂に来たクラウスちゃんとマイヤーさんの分も払う事になった。約束は約束だからな。  
今日の献立はカレーだ。  

とにかく食う。  
クラウスちゃんは辛さにびっくりしながら食べている。  
マイヤーさんは一口をじっくり噛み締めながら味わっている。分析しているみたいだな。  
マイヤー「草壁殿。やはり日本は豊かな国なのですね」  
僕「まぁ、そうかもしれませんね」  
マイヤー「『かれー』と言う食物は香辛料が異常にはいっていますね。私の所にも香辛料を使っての料  
理はありますが…このように大量に使用したものは見受けられません」  
僕「やはり香辛料は高いのですか?」  
マイヤー「ええ。食料費でもかなりの割合になります。それに塩も」  
そう言って卓上塩を持ち上げて少し手のひらに出した。  
マイヤー「塩は高価です。しかもこの様に真っ白なものは高級品です。それがこのように普通のものと  
一緒に置いてあるという事は、これらは日本では取るに足らない調味料扱いされている事を示していま  
す。これだけでも豊かさが伺えます」  
マイヤーさんは塩が入った透明な容器を羨ましそうに眺めた。  

F世界と日本との落差をまた1つ実感した。  

食事が終わった後、まだ時間があるので飲み物を飲みながら世間話。  
クラウスちゃんたちに普通のお茶を飲んでもらおうかな。と思って自販機(そんなものまである!)  
の所に行って驚いた。  
僕「コーラがある」  
米軍がいる時点できがつくべきだった。日本人は米と塩と味噌があれば大丈夫だが、アメリカ人には  
コーラが必需品(偏見です)なのだ!それに関する逸話もある。ようし、ここはコーラを勧めて驚か  
せてみよう。  



500  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/02/24  01:11  ID:???  

38  
クラウスちゃんは少し離れたテーブルで姉御たちとお喋り中。  
で、こっちは男同士の内緒話。  
コーラの炭酸に驚くという王道イベントの後、色々話をした。  

今日は遅いのでここに泊めてもらう事(基地司令の許可済み)になった事。  
これからもちょくちょくこちらに来て勉強させてもらう事。  
場合によってはクラウスちゃんをここに預け、自分は王宮との交渉に没頭するかもしれない事。など。  

僕「クラウスさん。王宮の会議などに騎士が出なくていいんですか?」  
マイヤー「お嬢様がまだ幼いことは知られています。なので代理です。それに、私は騎士としてそれ  
なりに知られていますので大丈夫ですよ」  
僕「基本的な事を聞きたいのですが、なぜそれなりに知られたあなたがクラウスちゃんに仕えている  
のです?」  
マイヤー「昔、ちょっとした契約がありましてね。それ以来です。それに今ではお嬢様が実の子供の  
ように思えてしまいまして。病で妻と娘を亡くした身なので」  
僕「…すいません。つらい事を思い出させてしまいまして」  
マイヤー「いえいえ。かまいませんよ」  

クラウスちゃんたちが笑っている。人とエルフの違いはあるが、女性同士で気が合うようだ。  

僕「あんな笑顔を見てしまえば、全力で守りたくなりますね」  
マイヤー「ええ。ですが家督を継いで以来、お嬢様の笑い顔はあまり見られませんでした。その笑顔  
を再び見る事ができました。私はあの笑顔で明日を戦えます」  
僕「同じですね」  
マイヤー「ええ」  
そう言い、グラスを少し持ち上げる。  
僕「コーラではなく酒が相応しいのですが」  
マイヤー「構いませんよ。それでは」  

『明日の笑顔の為に』  



474  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/01  01:26  ID:???  

12回目の投稿。輸送戦記?  39  
王国首都(と言っても日本の地方都市並)近郊にある基地に到着してから1週間。  
僕たちは環境にも慣れて仕事に励んでいた。  

「第2便到着。手すきは手伝え!」  
「あれ、数が合わない。2個たりないぞ」  
「げ、これ空箱だぞ」  
「お、重い。誰か平台車くれ〜」  
「リフトでパレットごと降ろしたいな」  
「リフトは今、修理中だから駄目」  
「誰か書類を事務室に持ってけ」  
「馬鹿野郎!その前に過不足分の確認だ!」  
本業である荷物の積み下ろし。  
「スパナよこしてくれ」  
「はい。…ん?ここのボルトがゆるんでますけど大丈夫ですか?」  
「何だと!…よく気がついたな」  
「いえいえ。単に目に入っただけです」  
「修理時間延長がたった今決定」  
「しょーがないですね。整備不良で死人が出るよりはマシですね」  
「当たり前だ」  
「前いた所で整備不良で車を出していたところが…」  
「民間もおそろしーな」  
車両整備の手伝い。  
「C棟でトイレットペーパーが足りないそうです」  
「よーし。お前、倉庫から補充して来い」  
「あーちょっと待って!あとBの廊下で蛍光灯が切れたからそれも」  
「あ、それならさっき終わらせましたけど?」  
「それとは別件」  
「またですかい」  
「ジュースが届いたので補充の手伝いに行ってきます」  
総務な仕事。  
そのほか畑仕事(ローテーション制)などに駆り出されたり、本当に忙しい。  


475  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/01  01:27  ID:???  

40  
で、僕は今、書類配達の為にママチャリで王都を走っていたりする。  

王都と言う位だから立派なんだろーなと考えていたが、甘かった。  
F世界でならかなりの大都市なのだが、日本と比較するとそこらへんにある地方都市ぐらいの人口  
しかなかったりする。元は統一帝国の植民市でそこから発展していったそうだ。  
で、統一帝国期からの市街地である「旧市街」を抜けて後から発展した「新市街」に入ったが…  
新市街の方が駄目だ。ごちゃごちゃしている。道の石畳はぼろい。そのほか…  さすがに道に汚物  
などは落ちていないが(後で聞いたら自衛隊の医官が衛生の観点から清掃を強力に要請したらしい)  
なんだか汚い。  
さらには今回の戦争で発生した難民がへたりこんでいたりと戦争の影響も見受けられたりする。  

そんな中を自転車で走っているとけっこう物珍しげに見られる。  
青い作業着+ヘルメット+カバンの異世界人がよくわからない機械に乗って走っているのだから目を  
引かないほうがおかしいけど。  
僕にとっては逆に全てが珍しいけど、仕事中だからよそ見なんかしていられない。  
ラミネート加工と通しナンバーが入った市街地地図(自衛隊謹製で譲渡・コピー禁止)を見ながら  
目的地である城に向かって走っている。  

やっと城に着いた。日本にいるファンタジーヲタなら「これぞファンタジーな城!」と断言しそうな  
城だ。水堀に囲まれ、高い壁に囲まれ、隅には塔。王道中の王道な城だ。1番最初にここに来た時は  
思わず見とれてしまったが、3回も来るともう見飽きてしまった。さっさと中に入ろう。  

「日本国自衛隊、王国派遣隊伝令、草壁守だ!開門願う!」  


476  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/01  01:28  ID:???  

41  
届け先は城内の1室。自衛隊と外務省職員がつめる連絡室。  
僕「お疲れ様です。こちらが書類になりますので確認と受け取りのハンコをお願いします」  
担当者「ご苦労様。帰るついでに頼まれてくれないか?駐屯地にはこっちで連絡しておくから」  
僕「いいですが、何でしょうか?」  
担当者「この書類をある貴族の所に届けて欲しい」  
僕「時間指定はありますか?」  
担当者「特に無し。今日中に届けてくれればいいよ」  
僕「承りました。それではお預かりします」  

一仕事終わったらまた一仕事。大変だなぁと考えながら正門に向かっていると騒ぎに出くわした。  
騒ぎと言っても少人数で、1人の騎士と5人の騎士が睨み合っている。なお、どっちもガキ。触らぬ神  
になんとやら…と無視を決め込みたかったけれども、1人の騎士がクラウスちゃんだったりするから  
無視するわけにもいかない。  

僕「クラウスちゃんどうした?」  
クラウス「草壁か」  
騎士A「ん誰だ?雑兵は去れ。我らに見苦しい姿を見せるな」  

ナンだコイツは。ものすごく失礼な奴。見たところいいとこのお坊ちゃんだな。それにしても…こ  
いつが紅い服で、後が青・緑・黄・ピンクと戦隊カラーなのが笑える。紅い服のとりまきみたいだな。  

騎士A「8代前からの由緒正しき家系を誇る高貴な我の前に出てきたなら名を名乗れ」  
僕「日本国自衛隊王国派遣隊所属の草壁守です」  
騎士A「フン。異世界人か。まったく、王も奴らに頼らずとも我らだけで帝國を撃退できると言うの  
に…」  
コイツは馬鹿なおぼっちゃんだ。こんなお約束な奴がいるとは…現実は小説より奇なりだ。  
僕「人が名乗ったら名乗り返すことが騎士の礼儀だと愚考しますが、如何」  
騎士A「無礼な!」  


477  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/01  01:28  ID:???  

42  
睨んできたが睨み返す。そうしたら向こうが目をそらした。勝った。  
クラウス「草壁…こちらの騎士はマルス伯爵家の三男であるアス様です」  
伯爵。そりゃまずいな。ものすごく嫌だけど一応こっちから謝っておくか。  
僕「アス様。失礼な物言いをしてしまい申し訳ありませんでした」  
アス「フン。ようやくわかったか。これだから出自も分からぬ者が治める国の者は」  

こいつはムカつく。鼻っ柱を折っておくのも悪くないかも。無礼が無いようにな。  

僕「失礼ながらアス様は日本国についてはどれぐらいご存知で?」  
アス「下賤の国など知らんでも良いのだ!」  

馬鹿決定。こいつに「教育」してやるか。  

僕「日本国の象徴である天皇陛下。ああ、こちらの感覚では皇帝にあたりますな」  
アス「フン。蛮族の王か」  
僕「現在の天皇陛下は125代目にあたります。万世一系で」  
アス「フ、フン!何代であってもね、年数なら我が家は200年を誇るぞ!」  
僕「伝説を含めるのなら天皇家は2600年ほど。省いても1500年は堅いですな」  
アス「…く。ただ長いだけでは高貴とは言えぬぞ。我が領地の臣民の数は王国で1番だぞ!」  
僕「日本国の総人口は約1億2000万ですが何か?」  

おーおー真っ赤になって反論できんでやんの。  

アス「フン!帰るぞ!」  
そう言うととりまきを連れて逃げ出した。捨て台詞が無いだけ立派か。  
しかしまぁ伯爵クラスの子供でアレかよ。日本の情報が伝わってないのか?まずくないか?  



675  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/03  02:10  ID:???  

13回目の投稿  輸送戦記?  
43  
騎士レンジャー(笑)が逃げ出した後。  
クラウスちゃんが顔を真っ赤にしている。もしかして…途中で介入して、騎士レンジャーをおっぱら  
った事が誇りを傷つけたかな?  

「ごめん」  
「あ、ありがとう」  

お互いのセリフに妙な顔をする。  

「え?クラウスちゃん怒っているんじゃないの?」  
「なぜ怒る必要があるのだ?不利な所を助けてもらった。礼をするのが当然ではないか」  
「え〜いやぁ…もしかするとクラウスちゃんの誇りを傷つけちゃったのかなと思ってね」  
「  家の誇りを傷つけられて、苦しんでいた私を助けてくれた草壁には感謝している」  
「クラウスちゃん、さっきの状況を教えてくれないか。多分、あの騎士レンジャーを敵に回して  
しまった可能性が高い。状況は掴んでおきたいんでね」  
「分かった」  
クラウスちゃんが頷いた瞬間。  

「ぐうぅ〜」  

僕とクラウスちゃんの腹の虫が同時に鳴った。  
「ぷ。あははははは」  
緊張感台無し。  
「よーしそれでは腹ごしらえでもしながら話でもしますか」  
「マイヤーから美味しい店を教えてもらっているからそこへ行こう」  
「それでは誇り高き騎士殿、まいりましょうか」  


676  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/03  02:10  ID:???  

44  
クラウスちゃんが昼食に連れてきてくれたのは、旅籠兼食堂『蒼龍館』  
実はここ、自衛隊及び政府関係者半公式食堂でもあったりする。で、そんな所だから食料やら調味料  
(塩や砂糖はもちろん、味噌や醤油も常備!)は充実している。さらにはコックもいい腕をしている。  
その結果は…  
「美味しかった」  
と満足顔の僕とクラウスちゃん。  

「で、クラウスちゃん。そろそろあの状況を教えてくれないか」  
「うん。そうだな」  
食後の緑茶(日本からの輸入モノで自衛隊提供品)をすすりながら聞いたところによると…  

・王との謁見が終わった後、あの騎士レンジャーに捕まった。  
・騎士レンジャーの赤は著名な伯爵の息子で、マイヤーから注意するように言われていた人物。  
・ものすごく馴れ馴れしい口調で話しかけられ、着ている鎧(胸だけをおおうブレストプレート)を  
馬鹿にされ、女で騎士をしている事を馬鹿にされ、「騎士をしているよりウチに奉公に来い。下女と  
して使ってもいい」と言われた。  
・さらには自分の家系や親の役職をひけらかしたので、馬鹿にした目で見ていたら「なんだその眼は。  

気に入らない」と言われて睨み合い。  
・そこに僕がやって来た。  
という状況だったらしい。  

「私は、私は悔しかった。たった1人では誇りも守れない自分。あの時は強がっていたが、実はとて  
も恐がっていた自分。そんな無力な自分が許せなかった…」  
湯呑みを覗き込み、両手でぐっと握り締めた。  


677  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/03  02:12  ID:???  

45  
「なあ、クラウスちゃん。もうお前は1人じゃないぞ」  
「え?」  
クラウスちゃんが不思議そうな顔をする。  
「マイヤーさんはいるし、僕もいる。基地には姉御やミランタン、WACの女性陣もいる。何が足りない?  

」  
「でも、私は草壁たちの仲間じゃないし…」  
「何を言っている。1週間、同じ基地で寝起きして、同じ釜の飯を食って、色んな人に色んな事を教  
えてもらって、すっかりみんなに溶け込んでいる。もう仲間、身内だろ」  
「でも…私はしてもらってばかりだから…」  
そう言ってクラウスちゃんはうつむいた。  

ふう。すっかり自身を無くしているな。  

「クラウスちゃん。もうちょっと僕たちを頼れよ」  
「私は騎士で、当主だ。そんな事はできない」  
「何を言ってるのやら。14歳と言ったら日本国では立派な子供だコ・ド・モ。子供は大人を頼って  
いいと相場が決まっている」  
「私は子供じゃない!」  
「お、やっと元気になったな」  
「…草壁、私を煽ったな」  
「ごめんごめん。でもこれでクラウスちゃんが元気になるんだったら安いもんさ」  
そう言ってクラウスちゃんの頭を「くしゃくしゃ」と撫でる。  
「さて、それではそろそろ出るか」  


678  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/03  02:13  ID:???  

46  
「それでクラウスちゃんはこの後どこに?」  
「グラス侯爵の所に挨拶にいく所だ。お昼も終わったところだから丁度良い時間だろう」  
「丁度いい。僕もそこに書類を届ける仕事があるから一緒に行こう」  
「うん!」  

準備、と言っても城から押してきたママチャリを引っ張り出すだけだが、全てを整えた。  
「それではそれでは誇り高き騎士殿。私めにあなたを後ろに乗せるという名誉を与えていただけません  
か?」  
少しびっくりし、笑い、そしてわざとらしい顔をしたクラウスちゃん。  
「うむ。特にさし許す。末代までの誇りにするがよい」ニヤニヤ  
「はは〜ありがたやありがたや」ニヤニヤ  

そうしてママチャリに2人乗りした僕とクラウスちゃん。  
当然漕ぐのは僕。後ろに乗っているのはクラウスちゃん。  
汗をかきながらペダルをこぐ、珍しいいでたちをした異世界人。その後ろに乗っている女性騎士。  
王都の人たちはもの珍しげに見ていた。  
王都以外の人たちも見ていた。  

その光景についておもいっきり冷やかされるのは基地に戻ってからの話。  


679  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/03  02:14  ID:???  

47  
おまけ  
自転車に2人乗りしながら…  
「草壁の所の皇帝が125代というのは本当なのか?」  
「本当だよ」  
息を切らせながら答えた。  
「僕と仲良しの松下は確か12代目の跡取り息子だぞ。確か武士だとか」  
「…日本にはそんな人たちが大勢いるのか?」  
「けっこういるんじゃないかな?中には『この間の戦争』が50年前の戦争ではなく、500年前の戦争を  
指すのが当たり前な連中もいるとか」  
クラウスちゃんが呆れたようなため息をついた。  
「7代ぐらいではまだまだ、か」  
「別にいいんじゃない?」  
「なぜ?」  
僕はいっそうスピードを上げながら答えた。  
「いくら名家であっても、誇りを鼻にかけるような奴では駄目さ」  
「違いない」  
そう言ってクラウスちゃんは笑い、上がったスピードで振り落とされないように僕にしっかり掴まっ  

た。  




168  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/08  00:22  ID:???  

14回目の投稿  輸送戦記?  
48  

クラウスちゃんの装備は妙だ。  
妙と言っても特撮ヒーローみたいな装備になっているわけでも、全身タイツな服装になっているわけ  
でもない。  

きっかけは何気ない会話だったようだ。  
「守。相談なのだが…私の装備はやはり頼りないのか?」  
上半身を保護するブレストプレートだけでは不安だな。  
「どーゆー風の吹き回しだ?  まぁこの世界なら問題がないかもしれない。でも個人的にはブレスト  
プレートだけでは不安だな」  
「やはりもっと重装備になるべきか?」  
「でもあまりにも重装備になると機動力が減るからな。動かない戦車は単なる的だし」  
それを聞いて少し考え込むクラウスちゃん。  
「後半はよく分からないが、あまり重装備なのも考え物ということか」  
「何事もバランスが重要って事」  

その後さらに考え込んだクラウスちゃんは笑顔で礼を言うとどこぞへ出かけていった。  

色々教えてもらってから色々考えているみたいだな。アレなら生き残る率もあがるだろう。もっとも  
クラウスちゃんが危険な目に遭うのは、僕やマイヤーさんが倒れた後になるから元々低いけどね。  


169  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/08  00:23  ID:???  

49  
それから3日後。  
休日なので自室(と言っても6人部屋)で休んでいると整備場から呼び出しがかかった。  
…車両を壊した覚えはないんだけどな。  

そう思いつつ行ってみると手すきの整備の人たちが集まっている。何だ?  整備班長までいるぞ。  
その整備班長が僕を呼び寄せる。  
「おお、主賓が来たな」  
「主賓?何かあるのですか?」  
「まぁここに座れ」  
そう言うと僕に席を勧める。  
「お前さんはあの嬢ちゃん(クラウスちゃんをみんなそう言う)の保護者だってな」  
「…ただマイヤーさんから色々頼まれただけです」  
「はっはっは。そーゆー事にしとこう」  
いや別に保護者ではないんだけどなー。  

「でだ、保護者としては嬢ちゃんの安全は確保したいわな」  
「…マイヤーさんにも頼まれていますから。それに整備長、あの笑顔が見られなくなるのは悲しく  
ありません?」  
「確かに。でだ、俺たちが色々造ったものを嬢ちゃんにやったんだが、嬢ちゃんは最初にお前にも見  
せると言って聞かないんだよ」  
「ああ、それで僕を呼んだわけですね」  
「ああ。それではお披露目といきますか」  
そう言うと整備長は立ち上がった。  
「嬢ちゃん、いいぞ」  


170  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/08  00:24  ID:???  

50  
クラウスちゃんはウェディングドレスで出てきた。  

というのは真っ赤な嘘だ。  

全部がオリーブドラヴ色に塗られた騎士っつーのも変だな。  
整備長が解説を始めたが…なんかノリがシバ○ゲオ調。  

「まずは鎧。これは嬢ちゃんが鎧に固執したのでこうなったが、色々あまった鉄板を使って造ってみ  
た。多分こっちの世界の製鉄技術の低さが原因だが、重量は1/2で強度は2倍になった。さらには音が  
しないようにクッションを間接部に挟み、露出部は廃棄予定のアーマーベストから流用した防刃繊維  
を採用!  軽くなって動きやすくてなおかつ通気性も考慮しているのだ!!」  

待て。重さが1/2で強度が2倍って凄くないか?  

「次は剣。こっちも鎧と同じ理由で軽くて強くなった。そして嬢ちゃんが振り回せる長さに調節した  
から使い勝手が良くなっているぞ」  

まー最初の剣は代々伝わっている長剣だから長すぎる感じはしたな。  

「頭は員数外のヘルメット。そのほかにニーパッドやら何やらをつけて総重量は前と変わらず。性能  
は倍以上だ!!  どーですお客さん?」  

お客さんってTVショッピングじゃないんだから。まー送料は負担しますと言わないだけマシか。  
そう考えていると目の前にクラウスちゃんが来た。  


171  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/08  00:25  ID:???  

51  
「えへ。どうかな?」  
恥ずかしがりながら拭くの感想を聞いてくるというなかなか萌えるシチュだが、その「服」が戦闘装備  
一式であるのがなんとも。  
「う、うん。かっこいいぞ」  
「良かった」  
うーんかわいいな。  
「でも問題があるぞ。その格好で城や他の騎士の所に行ったら絶対浮くぞ」  
クラウスちゃんはそう言われても笑顔のまま。  
「大丈夫だよ。儀礼用の時には前の鎧を着ていくから」  
さらに加えて問題発言が飛び出した。  
「これで守と一緒に出られるね」  

思わず凍りついた。  
「ちょっと待て。今なんて言った。一緒に出られる?駄目だ。危険だから駄目だ。それにマイヤーさ  
んもきっと反対…」  
「しないよ。だってマイヤーは大賛成だったよ。それに整備の人たちの魂がこもった特別装備だから  
大丈夫だよ」  
整備員から歓声があがる。  
「でも司令たちが許可…」  
「許可もらったよ。社会勉強は良い事だだって。あとは身分は観戦武官だって」  

どうやら外堀は全て埋められていたようでつた。  
「それに、守を頼っていいんでしょ。しっかり守ってね」  
墓穴までほってしまったようだ。とほほ。  


173  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/08  00:27  ID:???  

「え、またご指名ですか?」  

15回目の投稿  輸送戦記?  
52  

断っておくが、ここはホストクラブでも風俗店でもなく、自衛隊王国派遣隊首都そばにある基地だ。  
朝イチで上役に呼ばれた僕が思わず言ってしまったセリフだ。実はコレには理由がある。  
魔法による強化で感覚系がとんでもなく強化されてしまい、「歩くセンサー」だの「生体レーダー」  
だのと言われている。で、実績もあるので危険物輸送や偵察の時によく連れて行かれてしまうのだ。  
その分危険手当が増えるけど。  

「今回はどちらに?」  
「最初の訓練をした港湾都市近くの基地は憶えているな?」  
「はい。あそことハー○マン軍曹な教官を忘れるような人間はいないと思いますが」  
「・・・そこの基地まで行き、そこからある場所へ行くそうだ」  
「ある場所?」  
「くわしくはは秘密だそうだ」  
「はぁ。それでは陸路ですので到着は午後ですね」  
「いや。丁度C-130Hが帰る所だから乗せてもらえるように手配した。つーより隙間が空いているから  
何でもいいから乗せるモノを欲しがっていたんでな」  
「分かりました。それではすぐ準備します」  
そう言って部屋を出ようとしたところに上司が追い討ちをかけた。  
「嬢ちゃんも一緒に連れて行けよ」  
あうあう。整備工場の一件はあっという間にひろがってしまったようでつ。  


174  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/08  00:28  ID:???  

53  
首都そば基地→C-130Hで乗り継ぎ→港湾都市そばの基地。そうして港湾都市で僕が目にしたのは…  

河川用輸送用の船だった。  
港湾都市そばには大河があり、それは首都そばまで流れているから使わない手は無いな。  

1.水深調査が終了  
2.水量調査が終了  
3.輸送ルートの不足  
4.危険物の輸送  
が理由で河川輸送が決まったそうだ。で、今回が大規模輸送の1回目だそうだ。理由の4が激しく気に  
なるが、まぁ大丈夫だろう。  

僕の役目は先頭の船に乗っての見張りだ。つまりは今までと同じ。  
エンジンと帆を組み合わせた機帆船。帆が風にはためく音とエンジン音。そして水音が河に響く。  
「陸上輸送よりはラクだなぁ」  
「守、どうしてなのだ?」  
僕がつぶやくと“観戦武官”なクラウスちゃんが理由を聞いてくる。  
「陸だと道のそばまで森が来ている事がある。そこに伏兵とかがいたら危険だけど、河のど真ん中を  
行く船だと少なくとも河が堀の役目をするから襲撃しにくい」  
「あ、そうか。守は前(10回目の投稿に起きた事件)の事件を心配しているのだな」  
「そーそー。心配なのは橋の上からの襲撃だけど、王様の命令で僕たちが通る時には橋が通行止めに  
なるんだ」  
「でも守、帆はどうするのだ?高さがつかえるぞ」  
「その度にたたむんだって。橋の数がすくないからそんなに苦労しないし、畳まなくても通れる橋も  
あるんだって」  


175  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/08  00:28  ID:???  

54  
大きな船には初めて乗るらしく、クラウスちゃんは少しはしゃいでいた。  
だけど僕はうわべだけ明るく振舞っていた。これには理由がある。積荷だ。  

この1番船は偵察も兼ねているので食料品をいくらか積んでいるだけだ。が、後の2番船以降には別の  
ものが積まれている。その積荷が嫌だ。  
その積荷は弾薬だ。  
小銃弾や手榴弾だけならなんとか。まーそれでも恐いが、その他に12.7mm銃弾や25o砲弾、カールグ  
スタフや迫撃砲や155o砲弾。チラリと見ただけだがあれは航空機用爆弾じゃないか?  さらには最後  
尾は燃料が積んであったぞ。とにかく引火したらあっと言う間にあの世行きだ。そういや予備砲身な  
んかもあったな。  
これを陸路で運ぶ事と比べるとかなりラクで良いんだけど…やっぱり恐いぞ。  
クラウスちゃんには後で言おう。ここで恐がらせてもしょうがない。  

新しい輸送ルートができてまた荷物が増えるな。でも変だな、維持だけなら今まででもなんとかなる。  
ただ単に余裕が欲しいだけかもしれないな。だがここで悪いほうに考えてみるか。  

・燃料弾薬輸送が急に増えた。  
・そういえば司令部棟(侵入禁止)の出入りが慌しかったな。  
・ここ最近RF-4戦術偵察機がよく飛んでいるな。後はチラリと見ただけだがU-2?みたいのが1回来た。  
・燃料や弾薬を大きく使う演習が無いのにこれだけの輸送が必要。  
・おととい、前線そばの基地から修理車両が来たけど、来た人がピリピリしていたな。  

これによる結論は…  


176  名前:  Call50  ◆XVAlPbeLKw  04/03/08  00:29  ID:???  

55  
戦闘が近いんだ。  

・作戦前は司令部が忙しいのは当たり前。  
・偵察機がよく飛んでいるのは相手の動向を調べるからで、とすると兵站などを見ているんだろう。  
・作戦前に燃料弾薬を備蓄するのは当たり前。  
・前線では事情が説明されているからピリピリしていて当たり前。敵偵察部隊との小競り合いも頻発  
していそうだから余計にピリピリするはず。  

『兆候』は出ている。ならば敵は?これは簡単で、帝國軍だ。しかし大丈夫かな。王国所属の諸侯軍  
や各騎士団は大損害を食い、クラウスちゃんみたいな弱小騎士まで呼び寄せているらしい。無事(と  
言っても損害はあった)なのは王の直属騎士団だけらしいんだよなぁ。  
最初の戦闘は自衛隊の支援でなんとか撃退したそうだけど…  

あ、でも大丈夫だな。  
考えてみると自衛隊は極東ソヴィエト軍と(数日だけでも)ガチ勝負ができるよう整備されてきた。  
前線には連隊規模?がいるらしいし、当然陣地を造って火砲も準備している。これでは負けないな。  
可能性としては人民解放軍ばりの人海戦術が恐いけどね。  
でも魔法が恐いな。前に姐御たちが見せてくれた魔法の威力には驚いたけど『鉄の雨』に勝てるか?  

そんな事を考えていると、後ろからクラウスちゃんに頬を両側から引っ張られた。  
「なひほすふんだくるうふひゃん」  
「何恐い顔をしているんだ?」  
クラウスちゃん。君の身に危険が迫っているんだよ。そう言いたかったがいえなかった。  
この事を言っておけば良かったと僕は後で後悔した。