15  名前:  ACE  03/05/05  19:32  ID:???  

では新スレ設立早々続きいきます。  

海上に浮かぶ巨大なメガフロート。そこでは日本国首相宮井、防衛庁長官柘植、  
アスガルド公国ベルゲン・ガンドール・ヴィジャヤ将軍、そして…  
「はじめまして。統合自衛隊第1メガフロート司令官、唐沢重三海将補です。」  
この3人を初めとする要人の会議が行われようとしていた。唐沢は状況の説明を  
うけ、こう言った。  
「まさか…私が子供のころ、北朝鮮の新兵器で消滅した九州がこんなところに  
あったとは…。」「新兵器!?そんなものだったのですか!?」柘植は驚いて  
言う。「いえ…そんなものがあるという証拠はどこにもなかったのですが、  
なにせ跡形もありませんでしたから、そのように考えられました。むしろ、問題  
はここからなんです…。」「問題?」「ええ…。実はそのあと国内は大混乱。  
北朝鮮にはアメリカからの報復攻撃として9発ものICBMが飛来し、北朝鮮  
はほとんど焦土と化しました。」「何てことだ…。」「戦後、国内の世論は一気  
に右翼化、石原慎太郎政権が成立。自衛隊は再編成され、3自衛隊に加えてPK  
Fの名目で米軍とともに共同で攻撃に当たる統合自衛隊が設立され、憲法も国内  
世論が世論なためすぐに国民選挙で改正、それ以来、日本は海外派兵を繰り返し  
イラン、イラク、キューバ、ミャンマー軍事政権などさまざまな国家を崩壊させ  
てきました…。」  


16  名前:  ACE  03/05/05  20:02  ID:???  

唐沢は続ける。  
「我々も海外派兵で航海中に光にのまれました。そうですか、あれは新兵器など  
ではなく、召喚魔法の光だったのですか…。こうして、生きているのが不思議な  
ように思っていましたが、今納得しました…。」日本国首脳陣はその未来の日本  
の姿に衝撃を受け、言葉も出なかった。  
「…ところで」ベルゲンが話し始める。「我々アスガルドの件についてなのです  
が…」「おお、これは失礼!身内の話ばかりして。で?」「アスガルド公国公王  
ダイゼル3世からの言葉を伝えます。我々は…日本国に全面的な協力はしかねま  
す。」「なぜですか!?」柘植は怒鳴る。「我々にはオーランに匹敵いやそれ以  
上の軍事力があります。ですが、この世界の混乱を可能な限り抑えるため他の国  
との国交をあまり盛んにせず、またどこの国とも同盟を結ばぬ中立国としての立  
場を貫いてきました。」「ですが、今は戦争状態なのです!」「でははっきり言  
いましょう!あなたたちがここにきたことは確かにエルフィールのせいだ。生き  
るためにこの世界に適応することを選んだのも知っている。ですが、あなたたち  
がこの世界の戦争に参加したことで、本当ならオーランの勝利で終わるはずの戦  
争が一転して膠着状態に陥った。あなたたちはイレギュラーなのです!イレギュ  
ラーに全面的に手を貸すわけにはいきません。私の艦「アルビオン」1隻、それ  
が限界だ、それが国王や他の幕僚そして私の意見です。」  
結局会議は、統合自衛隊は日本に全面協力するものの、アスガルドは戦艦1隻の  
軍しか派遣しない、ということでけりがついた。  
統合自衛隊の面々を宮井は送った。そしてエレベーターに乗ろうとした唐沢の護  
衛が、重量オーバーのブザーを鳴らされた。「では、自分は…」その男は出た。  
エレベーター内で唐沢は宮井に言った。「不思議ですか?たった3人しかいない  
重量オーバー、彼は20代のように見えて、実は40代です。」「ほう…しかし  
それとこれと何の関係が…?」「彼はサイボーグなんです。」  


17  名前:  ACE  03/05/05  23:26  ID:???  

「彼の名は?」宮井はたずねた。唐沢はこたえる。「はい、内閣調査室所属、  
九条勇介3佐です。」  

メガフロート内の飛行場で、X−3は補給をうけていた。  
「へえ、X−3かぁ、こんな機体を見られるとはねぇ。」あるパイロットが言っ  
た。「あなたは?」唯はたずねる。「あ、言い忘れたね、俺は3等空佐、富羅賀  
翔(ふらが  しょう)だ。ああ、軍が違うんだから、階級は気にしないで。」男は  
そう言った。「俺たちの時代でも、こんな高機動戦闘機はない…無人機以外は。  
消えちまった伝説の戦闘機ってわけさ。」翔は後ろの戦闘機を指差す。「あの  
F−3や、俺のF−43『デルフィナス2』だって、こいつの前じゃ霞んでくる  
ってもんさ。」先日見たデルタ翼機、そして、見ていると吸い込まれそうな美し  
い曲線をもった、キャノピーすらないのっぺりした前進翼機があった。  
「綺麗ね…あの大きい方の戦闘機。」唯は言う。すると、そこにあの護衛の男が  
現れた。  
「あ、もう行く時間ですか。」「ああ、そろそろ本土へ飛ぶ。護衛任せるぞ。」  
翔にその男は答える。そしてその男は唯を見ると、一瞬目を見開いた。  
「…何でしょう?」唯はいぶかしげに問う。「…いえ、知り合いに似ていたもの  
で…申し訳ない。失礼ですが…お名前は?」「椎名唯と言います。」その男はま  
た顔をこわばらせる。「…私は九条勇介といいます。」男は、静かに言った。  


18  名前:  ACE  03/05/05  23:54  ID:???  

そこに一人の整備兵らしき男が歩いてきた。  
「なんだい?一人だけ?」翔は言う。だが男はサブマシンガンを抜いた。  
「動くな…。」その男はサブマシンガンを構える。「聞いたぞ…異世界に召喚  
されただと!?ふざけるな!!どれもこれも貴様らタカ派分子のせいだ!!世界  
平和をおびやかす悪魔め!!」「貴様…反戦組織の者か…紛れ込んでいたか。」  
勇介は冷静に言う。「ははは…みんなこの世界で野垂れ死ぬんだ、みんな!!」  
男は唯にサブマシンガンを向け、発砲した。翔は血しぶきを上げて倒れる唯を  
想像した…が、その弾丸は、いつの間にか唯の前に立ち塞がっていた勇介にみな  
阻まれていた。顔の前で交差させた、着弾跡から薄い煙をあげる腕をゆっくり下  
ろしながら、勇介は男を睨みつける。  
「向こうの世界の争いを、こっちに持ち込むんじゃない…!」勇介は一瞬消えた  
かのような素早いダッシュで間合いを詰め、男を殴り飛ばす。男は5メートルも  
飛んで倒れた。  
「おい、中村が!」格納庫の陰から、仲間とおぼしき男たちが飛び出す。「くそ  
ぉ、早速トラブルかよ!せっかくのクーデターだってのに!やっちまえ!」男達  
は銃を向ける。だが勇介は銃弾を受け止めながらも高速で突撃、2丁の大型拳銃  
を抜いて全員を一斉射でしとめた。  
「九条さん!」唯は叫ぶ。「大丈夫ですか!?」「ええ、この黒のコートは防弾  
素材ですし…私はサイボーグですから。」  



31  名前:  ACE  03/05/07  19:15  ID:???  

サイボーグ>  
2043年でもサイボーグは珍しいんですが、今回のような遠出の際の補修体制  
は確立している、という設定です。まあ攻殻機動隊を想像して頂ければ…。  
それに彼の体は一応拳銃弾程度なら防弾コートを併用すれば傷一つつかないだけ  
の強度があります。それに彼には唯を守る「非常に重大な」物語の根幹に関わる  
理由があります。それはまだお話できませんが…。  
パーツなら少なくとも戦闘機よりは簡単に工場施設で作れますし…。  
では本日分。  

唯は輸送機に向かう九条の後姿を見ながら思った。  
「どこかで…見たような気がするのよね…。」そこに警報が鳴る。スクランブル  
の警報。  
「やべぇ!おい、唯ちゃん!あんたもX−3を出してくれ!俺たちも上がる!」  
翔は言うと、愛機に駆け寄って飛び乗る。唯は少し遠くに置いたX−3のコクピ  
ットに滑り込む。「アリス、何が起こったの!?」「ストーンヘッジからの砲撃  
です。マッハ14.5で接近中、30秒で着弾します。」  
そのころメガフロート司令室では唐沢たちが宮井たちの前で指揮をとっていた。  
「『ゆきかぜ』の氷川艦長を!!」唐沢が言うと、正面モニターに落ち着いた感  
じの、とても40代とは思えぬ美しい女性が現れた。  
「接近中のアンノウンの撃墜ですね。」その女性、氷川楓1佐は答える。「どう  
やらいつのまにか射程内に入っていたらしいな。ここまでとは…。」柘植は言う  
が、唐沢は落ち着いている。「氷川艦長、これよりメガフロートは全速で退避す  
る。迎撃頼むぞ。」そう言うと、唐沢は命令する。「防空部隊、発進!」  



32  名前:  ACE  03/05/07  19:42  ID:???  

第4世代型イージス護衛艦「ゆきかぜ」はその200メートル近い3胴の船体を  
加速させた。「超伝導推進作動」氷川艦長はそう命じる。その船体が一段と加速  
する。速度、70ノット。さらに加速。  
「LCS、迎撃モード。」砲雷長木村3佐がCICで命じる。「SPY−5、目  
標を捕捉、追尾中。」オペレーターが言う。新型フェイズドアレイレーダー、S  
PY−5はマッハ14.5の砲弾を捉える。「ジェネレーター出力臨界」「照準  
ロック」つぎつぎに報告が入る。「よし…発射!」船体横のいくつものハッチか  
ら、レーザーキャノンシステムの一斉射撃、レーザーは砲弾を切り裂き、はるか  
彼方の空中で爆散する。  
だが…「レーダーに反応!砲弾から…ドラゴンが飛び出しました!」「バカな!  
発射時のGに耐えられるものか!」柘植は言う。「いや…浮遊魔法の反重力力場  
を発射方向にむけて強力に展開すればGを相殺できる!」東郷大臣は言う。  
「ハウンドドッグ、出撃!」唐沢が言うと、メガフロート内のいくつかの大型ラ  
ンチャーから、小型の前進翼戦闘機が何機か飛び出した。そして時折直角にター  
ンしたりしながらドラゴンに殺到する。「あれは無人迎撃戦闘機QF−45ハウ  
ンドドッグだ。」翔は唯に説明する。「あんなのに手柄とられてたまるか!川崎  
!行くぜ!」「おっしゃあ!」翔はウイングマンの川崎2尉のF−3とともに突  
撃する。ハウンドドッグ隊はその機動性を生かしてドラゴンを翻弄、次々に落と  
す。X−3もドッグファイトに突入、撃墜スコアを増やす。「やるねぇ、さあ俺  
達もな!」翔は叫ぶと、キャノピーすらないコクピットの内側全面にあるモニタ  
ー中の敵に視線照準をあわせる。「くらえ!」F−43の胴体の兵装ルームから  
ミサイルポッドコンテナが投下され、そこから全方位に向かってミサイルが乱舞  
し、敵は一瞬にして壊滅した。  


81  名前:  ACE  03/05/12  18:35  ID:???  

77>  
了解した。すまんかったよ…。  
ではまあ本日分を…。  

「意外と変わらねぇな、未来の銃って…。」霧島は目の前の統自の隊員たちの  
兵装を見て言った。「は、これは24式小銃であります。5.56mm弾を使用  
します。ですが、銃身の下にこのようにランチャーやショットガンなど様様な  
オプションを装着できます。」派遣部隊の分隊長、佐藤3尉は答えた。  
先日制圧したリャド鉱山に向かった調査隊が消息を絶ち、柊たちは統自の陸上部  
隊と合同で捜索に向かうことになった。その車内で柊たちは統自の兵装に興味が  
尽きないようだった。  
「へえ、ランドウォーリアってヤツと同じ思想か。でもその鎧みたいなプロテク  
ター、重くないのですか?」鮫島は彼らのスターシップ・トゥルーパーズのよう  
な鎧を見て言った。「ええ、見た目より軽い素材ですし、それにこの軍服には筋  
力を増強する装置が組み込まれています。意外と速く動けますよ。」「まるでス  
プリガンだな…。」霧島は言った。すると統自隊員の一人が目を輝かせた。  
「え、スプリガンをご存知なのですか!?」「そりゃあリアルタイムで読んでる  
世代だからな。全巻持ってるぜ。」「凄い、俺たちの時代じゃ古い名作としてす  
ごく価値が高いんです!見せてください!」「ああ…生き残ってな…。」  



83  名前:  ACE  03/05/12  18:54  ID:???  

「ここから発進できるのか?ホントに?」ゼンガー少佐はアルビオン艦内の  
発進ゲートで言った。横の愛機タイフーン・トロンベにはアスガルドの整備兵  
達の興味深げな視線が集まっている。  
「空中戦艦から発進なんて…面白そうね。」レジーナ中尉は言う。  
「カイル君、だったね。教えてくれないか。そのミストラスとかいうロボットに  
ついて。」ゼンガーは横でミストラスの前に立っているカイルに訊く。  
「はい。」カイルは振り向く。「この世界には、古代には進んだ文明があって、  
今でもその遺産が残っていることがあります。」「ストーンヘッジのような?」  
「ええ。ミストラスもその遺産です。今では生産能力はどの国にもありません。  
古代文明が滅ぶきっかけになった大戦争で、多くの技術が失われたからです。  
我がアスガルドは比較的破壊の度合いが小さく、運用ノウハウが残っているんで  
す。故にアスガルドはオーラン以上の軍事力を持つに至ったんです。基本的にミ  
ストラスは遺跡などを掘って出てきた分を使用しているんです。」「まさに掘り  
出し物、だな…。」ラインハルト大尉は言った。「で、これが君の愛機、ええと  
何…。」「『雷のリベリオン』、現在最強のミストラス『七大精霊機』のひとつ  
です。この艦には現在そのうち3機があります。」「ほう!最強の機が半分近く  
もあるのか!」ウラジミーは驚いて言う。  
警報が鳴ったのはその直後だった。  


84  名前:  ACE  03/05/12  19:19  ID:???  

鉱山内を分隊は慎重に進んだ。スパルタン分隊と統自の佐藤分隊は一列になって  
ライトで先を照らしながら歩を進める。  
「佐藤隊長!」佐藤分隊の一人が言う。「調査隊をセンサーで感知。この先にいま  
す。」その声で分隊は駆け出す。だがそこにあったのは、とんでもない怪力で引き  
裂かれたかのような調査隊の亡骸だけだった。竜崎3尉が目を背ける。「これは…  
いったい何が!?」柊は冷や汗を流しながら言う。そこに「佐藤隊長、動態反応を  
確認!何かが来ます!!」佐藤分隊の一人がバイザー裏に映るセンサー画面を見て  
言う。全員が今いる広場のような場所のいくつかの分かれ道の入り口に照準を合わ  
せる。だが次の瞬間、横の坑道の壁面の土を破って何かが飛び出した。  
まるで、鎧を着た戦士、といった感じだが、動きはロボットのようだ。剣を振り上  
げて、襲い掛かってくる。統自の隊員たちは突然のことで対応できない。  
「総員、撃てぇ!!」柊は襲い掛かる鎧に89式を浴びせる。そこに武藤のべネリ  
M3が火を噴き、鎧は頭を撃ち砕かれて倒れる。鎧の中には機械のようなものが見  
えた。竜崎3尉は剣をかわし、鎧に膝蹴りを打ち込んで体勢を崩し、89式を浴び  
せて沈黙させた。霧島は鎧を上から真っ二つに切り裂く。アレクサンドルが施した  
刀身強化魔法は恐ろしいまでの切れ味を発揮している。ミラー曹長に至っては、な  
んと鎧を一本背負いで投げ飛ばし、M4で頭部を蜂の巣にする。  
場慣れしたスパルタン分隊により、一人の死者も出さずに鎧は殲滅された。  



46  名前:  ACE  03/05/23  19:07  ID:???  

しかしみなさんの応援がとても嬉しいです。続きいきます。  

ゼンガー少佐率いる選抜部隊は要塞の射程圏内に突入した。容赦ない集中砲火が  
4機の戦闘機を襲う。飛んでくるビームの弾速は目で見て避けられる程度では  
あったが、周囲を覆い尽くす弾幕はすり抜けるのも神経をとてもすり減らす。  
「くそ、ミサイルだと!?」ラインハルト大尉のタイフーンの後方に光る矢のよう  
なものが食らいつく。フレアもチャフも通じない。だがその光る矢が突然砕け散った。  
「少佐!!」ラインハルト機に向かっていたミサイルをガンで撃ち落したゼンガー  
は90度ロールでビームをすれすれでかわしながらバーナー全開で旋回する。  
「みんな、大きく動き回れ!ちまちま動くとやられるぞ!」ウラジミーは叫ぶ。  
「早く来いよ、唯!」レジーナはミサイルから逃げながら言う。そこに、急接近警報  
が鳴った。「来るぞ!全機退避!衝撃波が来る!!」ゼンガーの声で全機が散る。  
そこに衝撃波と共に白と黒の影が横切った。しばらくして甲高いラムジェットエンジ  
ンの轟音が響く。  
「よし、椎名3尉、任せるぞ!!全機、目標をレーダーロック!」ゼンガーの命令で  
囮部隊の4機は要塞をロックした。「フォックス1!!」  


47  名前:  ACE  03/05/23  19:25  ID:???  

一斉に飛び出す30発ものアクティブホーミングミサイル、だが全てX−3を支援  
するための囮である。「アリス、ミサイルに紛れて攻撃開始。FCSをそっちに  
任せるわ。操縦はこっちで担当する!」唯はそう指示すると要塞めがけて一直線に  
向かう。対空砲火でミサイルがたちまち減っていくがその間に懐に飛び込む。  
「フォックス1、フォックス1、フォックス2、フォックス3」アリスは目標を  
自動で判断、次々とミサイルや、たまたま照準が合ったときはガンを撃ちこんで  
対空砲座を潰していく。そしてX−3は高速でパス、ビームは全てX−3のはるか  
後方を飛んでいく。そしてX−3はマッハ3であるにもかかわらずフックで強引に  
旋回、再度突撃して攻撃を再開する。何度も繰り返される一撃離脱、だが旋回時も  
一瞬で旋回、さらに砲座が捕らえられないほどの高速で、しかもRCS、ダイレク  
トリフトコントロールで機体を強引に機動させて回避するX−3にはかすりもしな  
い。そしてついに、上面の管制システムらしき施設をアリスがロック。だが放った  
ガンは魔力障壁で弾かれる。その周辺の対空砲が通り過ぎるX−3を後方から捕捉  
する。だがその時、コクピット内には「I  have  control」のアリス  
の宣言が響いていた。直後、クルビットでX−3は後方を向く。そして襲い掛かる  
ミサイルを全てガンで撃墜。その直後、「You  have」の宣言。X−3は  
機体を横にスライドさせ、ビームを全て回避。魔力で光り輝くサイドワインダーが  
ウエポンベイから飛び出した。  


48  名前:  ACE  03/05/23  19:34  ID:???  

サイドワインダーは要塞の対空管制施設を破壊した。要塞の対空砲火がはたと止む。  
「さあ、将軍!!」「承知!!」ゼンガーの叫びに待機していたガイが力強く言う。  
そして下の森の中からガイのミストラス、デュランダルが飛び出し、一気に要塞の  
上まで上昇。「舞え!斬艦刀!!」デュランダルは巨大な剣を構えた。それの形が  
変わり、さらにその先から光の剣が伸びる。  
「はぁぁぁぁぁッ!!」空気を震わせ振り下ろされた斬艦刀。一瞬の沈黙。だがガ  
イは呟く。「我が斬艦刀に…」要塞が真っ二つに崩れ、核爆発のような閃光が辺り  
を覆う。「断てぬ物無し!!」  

ええと…やりすぎましたかね…一度やってみたかったんです。自衛隊じゃ要塞の完全  
破壊は無理かなと思いまして…。  



72  名前:  ACE  03/05/24  21:04  ID:???  

では第2部終わらせます。  

X−3は攻撃部隊の戦闘機の中で一番最後に着陸した。基地指令達は作戦成功の  
鍵となるX−3の攻撃の成功を祝う予定であったが、ゼンガー達パイロットは  
暗い顔をしていた。「20Gは出てたよな、あれ…。」そんな声があちこちから  
聞こえてくる。駐機エリアに戻ってくるなり、柊はラダーに飛びついてキャノピー  
を開けた。「唯…?まさか…?」だがパイロットは手をヘルメットにかけるとそれ  
を脱いだ。栗色の髪が広がる。「…この通り、生きてるわ。」「馬鹿な!あの高G  
で!?」ウラジミーが驚いて言う。「さあ?なぜかそんなにGがかからなかったの  
よ。ねぇ…」後席を振り返ると、そこにいるはずのヴァルキリーがいない。そこに  
声だけがする。「その鉄の竜に私の力を宿らせました。あなたとこの竜にかかるい  
かなる力でも軽減します。」「成るほど…確かに空の戦士にとって、これ以上の  
『ご加護』は無いな…」ゼンガーは納得したように言う。「あなたの空への情熱、  
守りたいと思う気持ち、そして、その美しい鉄の竜…忘れません。」ヴァルキリー  
の声はそれきり聞こえなかった。「…ありがとう。」柊と唯はなぜか同時に呟いて  
いた。「さあ、降りろよ。英雄だぜ。」みなが言う。だが柊はそれを制した。  
「しばらく…いたいんだろ、コクピットに。」「うん…美香と少し話したいの。  
宇宙に…少し近づいた気がするから…。自分に勝ってね。」  





205  名前:  ACE  03/05/30  00:06  ID:???  

以前は非常に申し訳ないことをしてしまいました。  
今後ああいうことはないよう努めますので。本当にすいませんでした。  
では続き。第3章「60年の時を越えて」  
第1話「第2次福岡防衛戦」  

福岡港に一人の少年が降り立った。「ここが日本…。」少年はそう言うと、地面に  
触れた。「黒い…きめ細かい石かな。石畳とは違う…。」前方の建物を見る。「石  
造りじゃないな。それに白い…凄いな…。」「日本へようこそ。」後ろから声をか  
けられる。ふりむくと、髪を後ろでまとめた女性が立っていた。少年は言う。「凄  
いっすね。見たこともないものばかりだ…あなたは?」「私は警察…あ、この国に  
は軍隊と別に治安を維持する組織『警察』があるの。そこの者で、名前は如月麻耶  
(きさらぎ  まや)っていうの。よろしくね。」「マヤさんですね。俺はシズマ・  
フォーマルハウトっていいます。麻耶さんは、ここの警備なんですか?」「いえ、  
次の船で帰ってくる人を、待ってるの。ずっと戦地に行っててね。」「え、もしか  
して名高い『ジエイタイ』の兵士なんですか!?銃という不思議な武器を操る?」  
シズマはいきなり目を輝かせた。「いや…警察だよ。それにそいつは今時珍しく銃  
だけでなく剣も使うの。」  


206  名前:  ACE  03/05/30  00:26  ID:???  

「へえ、そりゃ珍しい人ですね。会ってみてぇなぁ…。」シズマは言う。「でもね  
ぇ、こっちも驚かされっ放しよ。」麻耶は言う。「あそこで荷物を降ろしてるトロ  
ルや、魔術で治療を行う医師…それに、耳の尖ったエルフの人たち。夢物語だと思  
ってたけど…でも、いい人たちじゃない。」麻耶はシズマに微笑む。シズマは顔を  
赤くした。そして、照れて船の方を見ると、一人の魔術師らしき人間が降りようと  
していた。「あれは…かなり高位の魔術師っすよ。たぶん。なんか悪い予感がする  
んスけどねぇ…。」シズマは言う。すると、その魔術師は埠頭の広くなっている所  
で立ち止まった。すると、足元に直径20メートルはある巨大な魔方陣が姿を見せ  
た。そして周りの者の視線を集めた次の瞬間、そこに多数のオーラン兵が現れた。  
「さあ、者ども。帰路はない。異土になりたくなければ、死ぬ気で戦って占領する  
ことだな。」その魔術師は言った。直後、兵士達は怒涛の勢いで走り出した。近く  
で警備に当たっていた警官が2人斬り伏せられる。麻耶はSIGP230を抜いて  
発砲した。兵士の一人が倒れる。「ど、どど、どうしろってんだ!?」シズマはあ  
わてる。「走るんだよ!早く!」麻耶はそう怒鳴るとシズマの腕を掴んで走り出し  
た。  



270  名前:  ACE  03/06/01  21:20  ID:???  

で…続きいきます…。あ、そういえばMiG25は現用戦闘機でも苦戦しません  
ね…。訂正します…。  

麻耶や他の警官隊はパトカー装備の非致死性武器を使用して敵兵の進攻を食い止  
めようとした。ネットが敵を絡め取り、ガス弾が舞い、プラスチック弾で敵兵が  
薙ぎ倒される。だがそれをなめられていると感じた敵兵はさらに士気をあげる。  
警官隊は押しに押されて、気がつけば福岡タワーを背にしていた。「こいつら…  
タワーに何か目的でも…?」麻耶は2本の特殊警棒で敵兵を殴り倒している。P  
230はとっくに撃ち尽くしている。警察官服務規定で5発以上の弾薬を装填で  
きないのが仇になって、弾が尽きて近接格闘を挑んだ警官が何人も斬り捨てられ  
ていた。「シズマ君、どうなの!?」「俺が思うに…この街が一望できる高い所  
から巨大な魔方陣を敷き、巨大な召喚獣を召喚して攻撃開始…ってとこっすかね  
ぇ。こんな異国の土地で一気に勝負を仕掛けるには、それしかない。」シズマは  
倒れた警官の拳銃を2丁拾った。どうやらまだ弾が残っているらしい。シズマは  
無造作に腰ダメでトリガーを引く。敵兵が倒れる。「この使い方であってるな…  
よし!」シズマはニューナンブを2丁構え、2人の敵に同時に狙いを定め、トリ  
ガーを引いた。敵兵が2人同時に倒れる。「凄い…初めてで2丁拳銃を使うなん  
て…。」麻耶は驚いて言った。  



271  名前:  ACE  03/06/01  21:52  ID:???  

シズマは剣を振りかぶって襲い掛かる敵兵に銃を向けた。敵兵は怯む。だが引き  
金を引いた後出たのは、ハンマーが落ちる音だけだった。「あ…。」シズマは息  
を飲む。敵兵はにやりと笑うと、剣を振り下ろそうとした。  
その敵兵は突然横合いから殴られて5メートルも飛ばされた。敵兵のいた場所に  
黒いコートを着た男が立っている。敵兵は突然の乱入者に驚いているようだ。  
「あんたは…?」麻耶が訊く。「防諜部の九条3佐だ…。援軍だよ。」「たった  
1人!?」「ああ。だが心配するな。俺は…普通じゃない。」九条はソーコムピ  
ストルを2丁抜いて敵兵の真っ只中に躍りこむ。「ち…こいつやるぞ!あれを使  
え!」敵兵の1人がそう叫ぶと、敵兵たちの姿がすうっと消える。魔法で透明に  
なったようだ。「さあ、これからどうする?異界の戦士よ。」敵兵の1人が言っ  
た。そして襲い掛かる。麻耶達には見えない。だが九条には、サイボーグの赤外  
線視覚にはしっかり捉えられている。振り下ろされた剣をかわし、すれ違いざま  
にソーコムを撃ち込む九条。撃ち殺された敵兵だけが突然姿を現す。麻耶たちか  
らは、まるでダンスを踊っているようにしか見えない九条。いや、むしろその手  
の先から死体を現す九条のほうが、よっぽど魔術師のようだった。だが、1人だ  
け取り逃がした敵が、麻耶のほうへ走った。九条は間に合わないと思って焦った  
が、その敵兵に横から飛び掛った男がいた。その男は刀を抜き、その敵を斬る。  
「雅人…なの?」麻耶は訊く。そこに立っているのは、赤外線ゴーグルをつけて  
はいるが、霧島雅人警部補その人だった。  



341  名前:  ACE  03/06/04  23:31  ID:???  

あの…上でレシプロ機の話が出ましたが…実は自分レシプロ機を出すつもりです。  
ついでに神話級のモンスターも出すつもりですし、対処法も考えてます。  
事前に能力を公開するとしらけるんで言いませんが…。では続きいきます。  

「スパルタン分隊、遅ればせながら到着だ、麻耶。」霧島は言った。そして霧島は  
振り向きざまに敵兵に居合いを打ち込む。だが、首の途中で刃が止まった。もっと  
も、敵兵は絶命したが。「鮫島、魔術師の場所は!?」そこについた柊が米軍供与  
の携帯型UAVを操作している鮫島に言った。「ええと…ああ、タワーの上にいる  
訳ですが(苦笑」鮫島は言う。双眼鏡でタワーの上を見ると、浮遊魔法でタワーの  
上に上った魔術師が呪文を唱えていた。「村雨、M82の使用を許可する!さあ、  
やってやれ!」「了解…。」柊の指示で、村雨はバレットM82(米軍供与)をスタ  
ンディングで構えて、スコープに魔術師を捉え、少し照準からずらしてトリガーを  
引いた。  
耳をつんざく轟音。見事に魔術師に命中。魔術師は2つになって落ちてきた。  




345  名前:  ACE  03/06/04  23:55  ID:???  

スタンディングでバレット撃つのは可能っぽいです。以前月間GUN誌で  
スタンディングでバレット撃ってた元陸自レンジャーの人がいました…。  
更に続き。  

築城基地に4機のF/A−18Eが着陸した。その4機にはみな髑髏のマークが  
尾翼に描かれ、先頭の機体には黒と黄色のラインが入っていた。  
そしてその先頭の機体から降り立ったパイロットを、ゼンガーとレジーナが笑顔で  
迎える。「よう、久しぶりだな、ゼンガー・ハルトマン少佐。在独米軍時代以来  
だな。それにレジーナ。腕を上げてるそうだな。今度手合わせしてくれ。」その  
パイロットは笑顔で言った。「こちらこそ久しぶりだ。アーノルド・フォッカー  
少佐。また強者のスカル小隊を見られるとは、光栄だ。」ゼンガーも答える。「教  
官、あなたも召喚されていたんですね。」レジーナが言う。「ああ、そこでこの  
精鋭の第207混成飛行隊に配属された。これからは俺達も一緒だ。」フォッカー  
は言う。そして、ふと、ハンガーの奥を見た。「なんだ?人型のロボットだと?」  
奥にあったのはエルフィールから派遣された唯一のミストラス部隊のミストラスだ  
った。空間戦術と、日本・アスガルド整備員の共同開発した魔力操縦装置の実験の  
ためだった。  


408  名前:  ACE  03/06/07  22:51  ID:???  

ええと、新作マトリックス見ました。グロック18が出たのにはビビッた…。  
では続きいきます。  

「へえ、空中戦もできるロボットか。面白そうだな。」フォッカー少佐は言った。  
「そうか?私はあまり…。」ゼンガーはそう言う。「俺もだよ。」後ろから声を  
かけられる。「ああ、岩城2佐でしたか。」第207混成飛行隊の新たな隊長に  
任命された岩城貴志2佐だった。以前は空自のイーグル乗りで、50歳を過ぎた  
今でもアクロバット飛行士として活躍していたが、今回の異世界召喚で、空自の  
パイロットに以前の経験を生かして志願したのだった。「だが、兵器体系を変化  
させるのも、この世界で戦うためには必要なのだろう。今度の戦闘演習が楽しみ  
だ。」岩城はそう言った。そこに、格納庫の方からエルフィールのパイロット達  
が歩いてくる。先頭の女性が言った。「お前達が、私達の相手をする騎士達か?  
せいぜい、全滅しないようにしろよ。」その女性、フライヤ卿は言った。「へぇ  
ま、せいぜいよろしくな。」フォッカーは言った。  

二日後、玄界灘で、第207混成航空隊とエルフィールのミストラス部隊、さら  
にカイルのリベリオンを加えた部隊で、模擬ミサイルと擬似魔法(威力は全く  
無い)を用いた演習が行われた。  


409  名前:  ACE  03/06/07  23:23  ID:???  

「カイル、とかいったわね」フライヤは言った。「しっかりやれよ。7大精霊機の  
力で、ミストラスは役立たずじゃないことを教えてやれ。」「ええ、リベリオンま  
で馬鹿にされたくはありませんからね。」カイルも答える。そのとき、演習空域に  
到着した。「よし、これから演習を開始する。散開して索敵、戦闘に入る。」岩城  
が言うと、ミストラス部隊と戦闘機隊は散開、しばらくして、戦闘機隊のレーダー  
に反応。しかしミストラス部隊の方もなぜか戦闘機隊を感知していた。  
「全機、アムラームで攻撃。これでカタをつけてやれ!」岩城が言う。その直後に  
フォックス1のコールとともにアムラームが放たれた。ミストラス部隊の半数は  
撃墜判定をうける。だが半数はミサイルを回避し接近する。「スカルリーダーより  
各機へ!スカル3、4は右翼の部隊をやれ!スカル2は俺に続けぃ!!」フォッカー  
は叫ぶ。「ラインハルト!『フォイヤークロイツ』、いつでも出せるようにしてお  
け!」「了解!やってやりましょう!!」ゼンガーの指示にラインハルトも威勢良  
く答える。  
「じゃあみなさん、いきますよ…。」カイルはそう呟くと意識を集中する。「雷の  
力よ、我が敵を撃て!サンダー・ラアム!!」リベリオンから行く筋もの雷が放た  
れた。「来るぞ、回避!」「甘い!」ゼンガーとフォッカーは口々に叫んで回避し  
た。「シーカーオープン、フォックス2!」レジーナがAIM−9を放った。まっ  
すぐにフライヤ機に飛んでいく。「その程度か?」フライヤのミストラスは剣を  
抜き放ち、ミサイルを横に払った。  



480  名前:  ACE  03/06/11  23:14  ID:???  

おや、新たな職人さん降臨ですか?楽しみですね。じゃ続き。  

「レジーナ!そいつは俺が相手をする!」フォッカーのF/A−18が割り込んで  
来る。「へえ、来な!」フライヤのミストラスは強力な加速で即座に距離をとる。  
「ち、機動特性はヘリのスピードと加速を極端に高めた程度、か。嫌な相手だ。」  
フォッカーは呟く。フォッカー機はバレルロール機動でフライヤ機が手に持つ銃の  
魔力弾を回避、AIM−9を2発放つ。フライヤ機は横に急加速して回避、ターン  
して食らいつくAIM−92発を銃で撃ち落す。  
岩城のF−15Jとゼンガー、ラインハルトのタイフーンはカイルのリベリオンと  
その周辺のミストラスの相手をした。「こちらが勝っているのは…速度だけか。な  
らば!」岩城機はバーナー全開で上昇。ミストラス達はゼンガー達の相手に精一杯  
で、岩城機に気づかない。そして岩城機は一気に急降下。気づいたミストラス達は  
手に持った銃から次々と魔力弾を放つが、ランダムに動きながら降下する岩城機に  
はかすりもしない。そして岩城機はアムラームを放って離脱する。しかもすれ違い  
ざまに1機のミストラスにバルカンを叩き込んでいた。ミストラスのボディがペイ  
ント弾の塗料で染まる。「アムラームか、便利だな。すぐ離脱できる。俺がいた頃  
はなかった装備だ。」岩城は、そう思った。  


508  名前:  ACE  03/06/14  20:50  ID:???  

血かあ…そこまで考えたことなかったなぁ…。まあ続き。  

ラインハルトは1機のミストラスに突進した。そのミストラスはラインハルト機に  
正対して800キロ以上で後退しながら銃を撃ってきた。ラインハルトは横滑りで  
回避する。「少佐!『フォイヤークロイツ』仕掛けます!タイミングは!」「こち  
らで合わせる!構わん、行けっ!」ゼンガーは叫んだ。すると、ゼンガー機は敵の  
横に回り込もうとした。同時にラインハルトが正面から突進。サイドワインダーを  
1発放つ。敵ミストラスは横に飛んで回避。だが横合いからゼンガーがガン攻撃を  
仕掛け、これを撃墜する。「ゼンガー少佐、僕が相手だ!」カイルのリベリオンが  
ゼンガー機に向かっていく。「俺を忘れるなよな!」ラインハルトが横合いから攻  
撃をかける。「対ミストラス用に考案した十字砲火攻撃、かわせるか!?」ゼンガ  
ーはそう思った。タイミングをずらして2機のタイフーンがアムラームを放つ。ア  
ムラームのレーダーはすぐに覚醒、リベリオンに一直線に吸い込まれる。「リベリ  
オン、疾れ!!」カイルのリベリオンは時速800キロから一気に海面マッハ2ま  
で加速、アムラームを引き付け、右手の銃で撃墜、切り返してラインハルト機に  
向かう、そしてすれ違いざまに魔力弾を撃ち込んだ。「な…撃墜された…だと?速  
すぎる…。」  



787  名前:  ACE  03/07/13  22:08  ID:???  

久々に続きいきます。  

柊はカイルとシズマを乗せて愛車のパジェロを走らせていた。シズマは初めて  
乗る自動車にはしゃいでいる。「すまないが…2人とも、ちょっと寄らなきゃ  
ならないところがあるんだ。いいかな?」柊は言った。「いいですよ。」カイル  
は答える。「いいっすよ。どこです?つってもここの地理には詳しくないけど。」  
シズマも答える。「実はな…墓地なんだ。」柊はそれきり黙る。  
街のはずれの墓地で柊は車を止めた。柊は2人に待っているように言ったが、2  
人もついていくといった。一緒に弔いたい、と。「すまないな…。」柊はそう  
言った。  
墓地を歩いていく3人。カイルとシズマははじめて見る日本の墓にも興味を持っ  
たようだった。と、柊の足が止まった。「やっぱり来てたか、みんな。」柊は予  
想していたことが当たったことを確認した。ある墓の前に唯と麻耶と、そして霧  
島がいた。「柊…覚えてたのか…。」霧島は驚いたように言う。「ああ、去年も  
一昨年もここじゃ会わなかったが、一度だって、俺と唯は忘れたことはないよ。  
そうだよな…唯。」「ええ…。」「柊さん、この墓には一体誰が?」カイルは  
尋ねた。だが答えたのは霧島だった。「霧島美香、俺の妹だ…。」  



789  名前:  ACE  03/07/13  22:38  ID:???  

続き。  

「そうですか…すいません、こちらでは、死者を弔うときどうすればいいんです  
か?」カイルは言った。「気にしなくていいわ。あなたたちなりのやり方でいい  
の。要は気持ちの問題ね。」麻耶は微笑んで言う。「じゃあ…あれやるか、カイ  
ル。」「君は?」「知らない奴とやるのは初めてだけどな…。」二人は墓の前に  
立って、少し息を吸った後、何事か語りだした。二人の口からすらすら言葉が出  
る。この世界だけの言葉なので、何を言っているのか分からないが、規則的な音  
数とリズムを持っている。  
2人が語り終わると、柊は言った。「意味は分からないけど…きれいな言葉だっ  
たよ。」「この世界では」カイルは話し始める。「死者を弔うとき、この『フラ  
ト』という韻律詩を詠うんです。ちなみに僕が今詠った詩の意味は『できること  
なら、もう一度会いたい。出来ることなら、僕も君の所へ行きたい』とか、そん  
な意味です。」シズマも言う「俺のは『大切な人を失った…もう…誰も失いたく  
ない、だから、残ったみんなを命をかけて守ろう』こんな意味です。」それをき  
いて、麻耶と唯は泣き始めた。柊も目を潤ませている。そして霧島は。「なあ、  
カイル、シズマ。お前達も、誰かを失ったのか…?」二人は黙る。「…ああ、い  
いんだ。言うな。二人とも…ありがとう。」いつもイーグルのタクティカルウェ  
アに、スピードローダーで一杯のタクティカルベストを身に着けた頼もしい霧島  
が、今日だけはスーツの襟に涙を落としていて、ひどく、頼りなく見えた。  



799  名前:  ACE  03/07/15  00:17  ID:???  

さて、続き。  

福岡市は日本でも有数の大都市である。だが、郊外に出れば昔ながらの田園地帯が  
開けている。その中の道を柊のパジェロが走る。「柊さん…霧島さんの妹さんって  
なんで亡くなられたんすか?」シズマは尋ねた。柊は答え始める。「新型戦闘機の  
テスト中、そいつの人工知能…まあ心みたいなもんだ。それが狂ってとんでもない  
機動を始めたんで、大きな力がかかって、それに耐え切れず死んだんだ…。」「そ  
れってまさか…。」カイルは顔を強張らせる。「そう…唯のX−3だ…。」カイル  
はそれきり押し黙る。シズマはどうやら事情が分からなくて困惑していた。  
そうこうしているうちにパジェロはある民家の前で止まった。3人は車を降りた。  
すると中から1人の老婆が出てきた。「ただいま。ばあちゃん。」柊は言った。  
老婆はにっこりと笑う。そしてカイル達を見ると、また微笑んだ。「柊さんの…お  
ばあ様ですか?」カイルは言う。「ああ。前からここに住んでいる。俺が福岡の  
部隊に配属されたときから一緒に住んでるんだ。ばあちゃん、しばらくこの二人を  
ここで世話してやってもいいかな?」柊は言った。柊の祖母は笑って頷いて、二人  
をしきりに手招きしながら中へ入っていった。柊は快諾されてほっとした。最も、  
断られるとも思っていなかったが。だがカイルはあることに気づく。  
(あのおばあさん、なんで一言も喋らないんだろう…。)  



815  名前:  ACE  03/07/15  23:40  ID:???  

おーい、>>809のコピペ張った奴出て来い、怒らないからw  
続き。  

「柊さん、おばあさん…なんで一言もしゃべらないんですか?」カイルは尋ねた。  
柊は一瞬とまどったが、話し始めた。「ああ…昔、旦那さん、つまり俺の祖父に  
当たる人を戦争で亡くしてね…。その時のショックで口がきけなくなったんだ。  
でも一通りのことはできるから。耳はきこえるしね。」「じゃあ俺達もいろいろ  
手伝ってやろうぜ。」シズマは言った。カイルは頷き、3人は中へ入っていった。  
夕方、柊は市内へ戻った。待ち合わせの場所に急ぐ。待ち合わせ場所には唯の姿  
があった。車を止めると、二人であるバーへと歩いていく。「もうゼンガー少佐  
達は来てるんじゃないか?」「そうね。急ごうか。」二人は小走りでバーに向かい  
ドアをくぐった。  
「ああ、椎名3尉、柊3尉もか。こっちだ。」一角から声がした。見るとゼンガー  
がこちらを手招きしている。そこには第207混成飛行隊のパイロット達が集まっ  
ていた。「機体のオーバーホールでメガフロートにいたので、お目にかかるのは  
初めてですね。岩城2佐。椎名3尉です。」唯は敬礼した。「ああ、今はオフだし  
階級は気にしなくてもいいよ。こちらこそ対空中要塞戦の英雄に会えて光栄だ。」  
岩城は答える。「ほう…あの『ロック』岩城隊長がここまでほめるとは…。」フォ  
ッカー少佐は言った。  




819  名前:  ACE  03/07/16  00:05  ID:???  

さらに続き。  

「いや、俺はあんな先進的な高機動機は苦手だ。あれを操れるだけでもたいした  
もんだ。若いのに。それにひきかえフォッカー、お前ずっと前に俺とDACTを  
したとき、俺のF104にF14で負けたことが…。」「おいおい、そんな昔の  
話を持ち出さんで下さいよ。」一同は笑い始めた。  
「けっ…。パイロット野郎どもがいい気になりやがって…。」そんな声が聞こえ  
てきた。同じバー内にいる各国の陸軍兵たちだった。「何だと…」ウラジミーが  
グラスを置いて上目遣いで兵士達を睨む。「イスに座って戦争するだけで英雄  
呼ばわりされるなんて楽な商売だな。」「ほう…どうやらお前達、死にたいらし  
いな…。」フォッカーは立ち上がって指を鳴らしている。「止めろフォッカー、  
早まるな!」ゼンガーは必死で止めようとする。「みんなも止めてくれ!俺も  
陸戦兵だ!」柊も兵士達を必死に止めようとする。「おいてめぇ!陸戦兵のくせ  
にパイロット野郎の味方をすんのか!?」「そのパイロットの女がそんなに気に  
いってんのか!?イイのか!?」「何…!」柊は拳を握り締める。「ちょっと、  
あんたたち言い過ぎだよ!」レジーナは怒鳴る。フォッカー以下スカル小隊員は  
全員既に戦闘態勢に入っている。「くそ、やっちまえ!」「望むところだっ!」  
兵士の1人とフォッカーのパンチが同時に繰り出された。だがそれはお互いに  
相手を捕らえることないまま黒いコートの男に止められた。「邪魔すんな!お前  
もパイロットか!?」兵士は割って入った男に言った。「残念だったな。情報部  
だ。」男は答えた。唯はその男の名を思わず呟く。九条3佐、と。  



840  名前:  ACE  03/07/19  23:44  ID:???  

今日映画の踊る大捜査線見てきたけどSATかっこいいなあ。ラペリングとか結構  
参考になったし。  
じゃ続き。  

九条は2人のパンチを同時に受け止めていた。その手は微動だにしない。「あなた  
達。」1人の女性が立ち上がった。九条と同じ黄色いラインが一部入った黒いコー  
トを着ている。「あんまりこういう場所で揉め事を起こさないことだ。一般の客や  
マスターに迷惑だ。」彼女は言った。「何だと…」陸戦兵達は掴みかかろうとした  
が、九条はソーコムを抜いて突きつけた。「やめろ、と言っている。」九条は冷た  
く言い放った。フォッカーの方にも睨みをきかす。陸戦兵たちもパイロット達も銃  
を向けられては引き下がるしかなかった。そのまま、お互いに分かれて再び飲み始  
める。  
「助かりました。九条3佐。」唯は言った。「礼ならこっちの俺の上司に言ってく  
れ。止めるよう命令したのは彼女だ。」九条は横の女性を指し示して言った。ショ  
ートカットのどこか知的な感じを受ける、氷の像のような切れるような美しさだっ  
たが、目はどこかやさしい。「初めまして。内閣調査室国防部主任、三枝奏(さえ  
ぐさ  かなで)、階級は2佐。よろしくね。」彼女は言った。「柊3尉、なかなか  
立派だったわ。ゼンガー少佐もね。」「いや…俺は大したことしたわけじゃ…」柊  
は照れる。  


841  名前:  ACE  03/07/20  00:11  ID:???  

「ところで…お二人は未来の人間なわけだよな…。」岩城は言った。「俺達は本当  
に、帰れないのか、元の世界に?」しばしの沈黙の後、九条が答える。「少なくと  
も、2043年の時点で、帰還した部隊は皆無です。あの九州があった場所は今で  
も国連軍が監視しています。」「そうか…。私は運良く、ここに家族も全員いるの  
だが…それ以外の自衛隊員や国連軍の連中には酷な話だな…。」岩城は言った。  
「ですが…」ゼンガーは話し始める。「私は最近、この世界が少し気に入ってきま  
した。家族に会えないと知ったときは、どうしようかと思いましたが…。今では  
家族同然の絆で、岩城隊長を始めとする尊敬すべきパイロットと、柊3尉のような  
勇敢な戦士と、そしてカイル君やベルゲン将軍のようなこの世界の戦士と、結ばれ  
ている…。それが、私は嬉しい。失ったものは大きいが、得た物だって決して小さ  
くは無いはずだ。そう私は思うんですよ。」ゼンガーの言葉をウラジミーやレジー  
ナ達他のパイロット達は静かに聞き入っている。岩城は言った。「私も…退官以来  
アクロバット操縦士をしていた。またF15に乗る羽目になるとは思わなかったが  
懐かしい仲間に久しぶりに会った気がする。しかも、その相棒が、気のせいかな、  
まるで嬉しそうに見えるんだ。やっとその力を胸を張って使える戦場を見つけられ  
たから、なのか…。」「…私は、あなた達が羨ましい。」三枝は言った。「生きよ  
うとする意思がある。どんな所でも。」「…よろしければ…未来の自衛隊の武勇伝  
でも、聞かせてくれんでしょうか…?」フォッカーは言った。「ええ、いいわ。」  
三枝は微笑んだ。  


847  名前:  ACE  03/07/20  00:54  ID:???  

上の奴ってリレー小説だよね…。まあ続き。  

ひとしきり飲んだ後、ゼンガー達パイロットは帰っていった。柊と唯、情報部の  
2人も店を出る。  
「椎名3尉、柊3尉。」九条は言った。「プライベートな場所では、俺と同年代  
のように話してくれないか?」「なんでです?」唯は言う。「いや…その、俺は  
一応歳は40いってるけど、心は27歳のときのままのつもりで。わけあってサイ  
ボーグになったが。」少し黙った後、柊は言った。「分かったよ。九条。」「あり  
がとう、柊。」九条は言う。「そうね。私も何故か九条君が古い知り合いに思える  
のよね。いいかしら?『九条君』で。」「ああ、それでいい。」答える九条を  
見て三枝は言う。「まるであなたたち、昔からの友達みたいね。」「そうかな…?」  
九条は言う。「じゃあ、私達も帰るわ。柊3尉?」「は?」「椎名3尉を大事にし  
なさい。命令よ。」「…了解しました…!」悪戯っぽい三枝の命令に柊は答える。  
唯はそれを見て少し顔を赤くした。  
去っていく2人の背を見送りながら、柊は言った。「九条3佐、三枝2佐、いい人  
達だったな。」「ええ…ねえ雄次…」「今日は勘弁してくれ。家に帰らなきゃ。客  
がいるもんでね。」「そう…じゃあ今度…。」柊は微笑むと、背を向けて歩き出した。  



916  名前:  ACE  03/07/23  00:07  ID:???  

ぬおっ、てさりすと氏復活に新職人降臨!?マジで!?俺もがんがろう。  
続き。  

「なあ、カイルよう。」布団の中でシズマは言った。「柊隊長のおばあさんって  
いい人だな。こんなに世話になっちゃってさ。」「そうだね。きっと、口がきけ  
なくなっても、ずっと強く生きてきたんだ。凄い人だね。」「ああ…なあ、カイル  
よう、お前…好きな女の子とかいんの?」「何を突然!?」カイルは顔を真っ赤に  
する。「いや…お前強いし、ハンサムだし…もてるかな?って…。」「おいおい…  
…。」だがカイルは突然顔を暗くする。「…昔はいたけど…死んだんだ。その人。  
今は…どうだろうな。もう、失いたくないからね。そういう人を持たないようにし  
ようと思うんだ。」「ふぅん…。」深刻な話にも、シズマは軽く答える。  
ちょうどその時、柊が帰って来た。  

大分県にある宮本武蔵が晩年を過ごしたという洞窟、そこをアレクサンドルとガイ  
は訪れていた。「あちらの世界にも」アレクサンドルは言う。「英雄はいるものだ  
な。」「ええ、個人の力ならこちらの世界の方が上だと柊隊長はおっしゃいました  
が、このように強い男がいたのなら、そうでもありませんな。」「ああ…二刀流と  
いうのも興味があるな…。」  


917  名前:  ACE  03/07/23  00:25  ID:???  

「そういえば」アレクサンドルは言った。「この九州は鹿児島に、示現流という  
一撃必殺を旨とする剣術が今も残っているという。ガイよ、お前にふさわしい  
剣であると思うので、その道場にも行って見たいのだがどうか。」「分かりまし  
た師匠。私も興味があります。」ガイは答えた。二人はそのまま部隊の出発まで  
武者修行を続けた。  

ヴァルターは部隊一のオタ、鮫島の家に来ていた。彼はこちらの世界の映像文化と  
言うものに絶大な興味を示した。すでに多数の映画とアニメを鑑賞し、その虜と  
なっていた。「このヘルシングという作品の主人公」ヴァルターは言った。「えっ、  
ああ、確かに。ヴァルターさん、あなたまるでアーカードですよ。」「はは、そう  
か。」ヴァルターは楽しそうに笑う。「…この拳銃、欲しいな…。」ヴァルターは  
画面の中の全長32センチの漆黒の巨大拳銃を見て呟いた。「ところで」鮫島は  
言った。「あなたそういえば、南部14年式を持ってますよね。あれどこで手に  
いれたんですか?」「ああ、あれは…日本共和国、旧日本軍に知り合いがいる。  
そいつにもらったんだ…。そろそろ弾も少なくなってきた。45口径があるが、  
そろそろまた行きたくなったな。」  



95  名前:  10  03/09/10  19:15  ID:???  

>>84さん、お待たせしました。では「見敵必撮」開始です。  

北朝鮮の突然の宣戦布告から始まった第2次朝鮮戦争。その最中、九州が丸ごと異世界に召還されるという事件が起こった。人々はその世界の  
小国エルフィールと同盟を組み、大国オーランに対抗した。九州に集結していたかなりの自衛隊の戦力と僅かな米軍は  
破竹の大進撃を続け、両国のある中央大陸の右半分を制圧しようとしていた…。  

大陸のほぼ中央、最前線から東のオーラン側に10キロの位置にある軍事拠点ガルデニアを、境界線を挟んで西のエルフィール側にある前線  
基地から飛び立った支援戦闘機隊が爆撃していた。戦闘機の圧倒的な性能に防空にあがったドラゴンは手も足も出ない。程なくして、支援戦闘機  
部隊は爆撃任務を終了した。そしてその戦果確認のため、1機のRF−4EJがその上空を飛んでいた。  
「帰還しようぜ、風間」後部席にいる座間3尉は最後の写真のシャッターをきるとそう言った。「了解。ナビ頼む」前席の風間3尉はそう答えると  
無線を開く。「こちらアインハンダー1よりスカイアイへ。戦果確認任務終了。RTB。」「こちらスカイアイ、了解」AWACSの回答が来る。  
風間のRF−4EJは踵を返して基地へ向かう。そこに送り狼にでもなるつもりか、1組のドラゴンランサーが追いすがった。  
「風間、後方から1匹。」「分かってる、振り切るさ。バーナーオン」座間の意見に素直に従い風間は戦場を離脱する。一応主翼下にはサイドワイ  
ンダーが4発ぶら下げてあり、バルカンも撃てるのだが、偵察部隊は空戦が任務では無い。  
「ちい…やつめ、いつもいつも攻撃もせず逃げ帰るとは…卑怯だぞ!」追いすがるドラゴンランサーはそう吐き捨てた。  


111  名前:  10  03/09/11  19:09  ID:???  

というわけで今回は以前別のスレでレス番号表すときに使ったハンドルが  
たまたま俺と同じ「10」だったってことで決着、にしましょう。  
信じる信じないはそっちの勝手ですが。一応友達の名誉に関わる問題なんでね。激しく弁護させてもらったしだい。  
じゃあ本日の俺の作品を。  

前線基地に戻った風間、座間の両名は写真の現像に立ち会った後、基地内のエプロンの近くにある草地に並んで寝転んでいた。  
「ああ…くそ、またイーグルのパイロットに戻りてえなぁ…。」風間はあくびをすると言った。  
「おいおい…俺がナビじゃ不満か?」座間は言う。「いや、別に。ただやっぱ俺は空戦がしたいというか、なんというか…」  
風間は眠そうに答える。「でもまあ…『ザマザマコンビ』なんて言われたくねえしな。やっぱパートナー変えてもらおうかな」  
「お互い様だ。」風間の冗談に座間はぶっきらぼうに答えた。そして座間も腕を枕にして仰向けになる。  
自分たちがいた世界の草とあまり変わらないその背中の感触に、2人は少し安心感を覚えた。  
と、突然2人の視界が少し暗くなった。少し首を傾けると、そこには12歳ぐらいの少年が立っていた。  
「どうした?ボウズ?」風間は言う。「あんたたちは…あのヒコウキとかいう乗り物を動かせるのかい?」その少年は尋ねた。  
「こっちの方はな」座間は少し寂しそうに言った。その座間を風間はちらりと見る。だがすぐに少年の方を振り向いて言った。  
「ところで…ここは民間人は立ち入り禁止だぜ。」だが少年は言った。「ミンカンジンって?」首をかしげる少年の様子を2人  
は呆然として見つめていた。  



281  名前:  ♯ACE  03/09/24  19:16  ID:???  

お久しぶりです。10を自演していた大馬鹿者です。信じてくれた方々には本当に申し訳ありません。  
自分で反論する勇気をもてず、つい他人のふりをして自分をかばってしまいました。  
本当にすいません。責任を取るためにも、最後までやり抜きます。  

二人のファントム乗りはすぐに気がついた。ここはもともとエルフィール領で、エルフィールは兵農分離が進んでおらず、従って  
いざとなれば皆武器をとって戦わねばならない。よって非戦闘員の概念がないのだ。少年が民間人という言葉を知らないのも  
当然といえた。そこで風間は少年に言った。  
「まあ…要するに…俺たち異世界の人間以外は入っちゃいけない、ってこった。」  
少年は納得したように頷いた。  
「ふうん…つまんないの…。」「でもまあ…無下に追い出すのもあれだしな。何しに来た?」  
つまらなさそうに呟く少年に座間がにこりと笑って答えた。ただ、非常に気味の悪い笑顔だったので風間と少年は顔を  
引きつらせた。ひきつった顔のまま少年は言う。  
「あのヒコウキって乗り物を見に来たんだ…。見せてくれる?」少年らしい理由に、風間と座間は顔を見合わせる。そして同時に頷くと  
立ち上がって少年の肩を叩いた。  
「よし…じゃあ見せてやるよ。ただ…警備の連中に見つかったら、引き渡すからな。うまく隠れろよ…。ところで名前は?」  
「ラングだよ。」風間の問いに、少年は答えた。3人はハンガーに向けて少し隠れるように歩き出した。  



386  名前:  ACE  03/10/01  19:12  ID:???  

続き行きます…。  

風間、座間、ラングの3人は案の定警備員に見つかり、ラングを家まで送り返すように言われた。  
ただ2人のファントム乗りはなるべくエプロン脇を通って、たくさんの機体をラングに見せるようにした。  
風間はF−15や米海兵隊のハリアー、救難隊のUH−60などを使用目的などからラングにわかりやすく説明し、ラングも驚くほどの  
理解をみせた。ただ、偵察飛行隊の機の紹介で、ラングは風間に尋ねた。  
「偵察って?」「要するに斥候のことだ。敵の布陣などを探る重要な役割だ。だから基本的には生還し、その情報を持って帰ることを  
最優先とする。」風間は自慢げに答える。だがラングは思わぬことを言った。  
「ってことは…戦わずに逃げ帰るのが最高だ、ってこと?」「ああ、そうだ。」風間はきっぱりと答えた。が、ラングは突然怒り始めた。  
「そんなの卑怯じゃないか!!様子だけ見て、後は後続に任せて逃げ帰るなんて!?もういいよ。そんな卑怯な奴らといると  
卑怯が移っちまう!!」  
そう言い捨てると、ラングは突然走り始めた。しかもとても速く、2人は追いつけなかった。息を切らせてへたりこむ風間に座間は言った。  
「…子供なら、言ってもおかしくないことだ。気にすんなよ。」風間はしばらく苦しそうに肩を上下させていたが、ラングの走り去った  
方をきっとにらみつけて言った。  
「…不思議なもんだな、前イーグルのパイロットに戻りたいと思ってたころなら、卑屈になってたとこだけど…。今じゃ誇らしいんだな、  
偵察魂ってもんが。あいつに教えられたよ。」  


413  名前:  ACE  03/10/03  18:50  ID:???  

さらに続き…。  

結局ラングを家まで送り届けられなかった風間と座間は基地司令にこっぴどく叱られた後、近くの酒場に飲みに出かけることにした。  
基地を出てすぐのところに、パイロットたちが集まるようになった酒場があった。そこに入ると、一人の日本人が声をかけてきた。  
「よう、今日は災難だったらしいな。」陸自の偵察部隊の隊員、村上亮2尉だった。以前から親交のある顔なじみである。  
「いったいどうしたんだ、カザマさんにザマさんよ?」すっかり知り合いになってしまったドワーフの店主が、3人がカウンターに  
つくと話しかけてくる。風間は今日ラングにさんざんに言われたことをぶちまけた。すると店主は驚いて言った。  
「お前さん、今ラングって言ったか?」背の低いドワーフの店主は覗き込むようにして訊いてきた。風間は前に屈んでそうだと答えた。  
ドワーフの店主は店の中で忙しくテーブルの間を歩き回る一人の女性を呼んだ。自分たちの世界にいたころの癖で、給仕のことなどほとんど  
意識しなかった風間たちだったが、改めて見てみるととても美しい、清楚な感じの女性であった。  
「彼女がそのラングの姉、シェリルだ。」ドワーフの店主は言った。風間たちは思わず飲んでいた酒を危うく吹き出しそうになった。  
シェリルと呼ばれた女性はいきなり頭を下げて言った。  
「うちの弟が失礼なことを言ったようで…申し訳ありません。」  
「いや、いいんですよ。気にしてませんから…。」いきなりのことだったので、風間も反射的に謝ってしまった。必死に止めるような  
手振りをしている。  


414  名前:  ACE  03/10/03  19:19  ID:???  

「マスター」シェリルは言った。「この人たちの分は私が払いますので…」きっぱりとそんなことを言い切ってしまったので、風間たちは  
慌てて止めさせようとしたが、彼女は何かお詫びをしたいと言って聞かなかった。そこで3人はあまり飲まずに、いつもより早く店を出た。  
風間はシェリルのことが気にかかるようになっていた。それを察したのか、座間はからかい始めた。  
「お前…もしかして惚れちまったんじゃねえの、シェリルによ?」  
「…実はな」ここで村上はヒュウと口笛を鳴らす。「なんかさ、すっげえ毅然としてるけど、優しそうな人だし、美人だしな。」  
「けどよ…」村上が口を挟んだ。「気をつけろよ風間。ありゃあんなとこでウエイトレスやってるような女じゃねえはずなんだよ。」その一言に、風間と座間は疑問の目を村上に向ける。村上は続ける。  
「店にいたときに見たあいつの動き、素人目にはわからんだろうけど、全く無駄がねえ。ついでに服の上や腕の感じも、逞しいってわけじゃねえがだいぶ引き締まってる。ありゃあ…戦士だな。」  
風間と座間は自分たちが全く気づかなかったことを指摘されて少し混乱した。風間は村上の目を見つめて言った。  
「それってどういう意味だよ。彼女は危険だってのか」「そうは言ってねえ。ただかなり場違いなことは確かだよ。最悪、オーランのスパイなんて線も考えられる。そうでなくてもワケ有りなことは  
確かだ。」村上はあくまで冷静に分析した。風間もその分析に間違いが見当たらなくて、ただ黙るしかなかった。  

2日後、風間・座間両名のRF−4EJは基地を飛び立った。この世界では全く使い道の無くなった電子偵察ポッドではなく、広角カメラの入ったポッドをぶらさげて。  
いつもなら低空で偵察目標上空まで侵入し撮影するのだが、この世界には強力な対空火器やレーダーは無いので燃費のいい高高度を飛んでいる。腕がなまっちまいそうだと風間は思った。  
だが今回はそれが仇になるとは、2人は知る由も無かった。  




444  名前:  ACE  03/10/08  19:18  ID:???  

じゃ続き行きます。  

2日前、現在次の自衛隊の攻撃目標となっているオーラン軍拠点、メリトンにある騎士が赴任してきた。いや後退と言うべきか。彼は先日風間たちを追おうとしたドラゴンナイトの隊長グナイストであった。  
彼は度重なる自衛隊の空爆に対抗する手段を何とかして考えようとした。  
大型バリスタやカタパルトによる攻撃。だがこれらの兵器は射程が短い。やはりドラゴンによる迎撃が最も有効、というか、それしか届かないのが現状であった。  
だが手持ちのドラゴンでは戦闘機に追いつけない。あらかじめ自衛隊機の来る方向に待機して、空中で櫓の様に敵を攻撃するほかは無い。  
何とかして攻撃の来る方向を察知できないものか…。  
ふとグナイストは気づいた。以前は低高度から侵攻して来たのに最近では高高度を侵攻して来ることに。  
部下にいる者に、斥候として活躍していた「視力を上げる魔法」を使えるものがいたことを思い出した。山に隠れなければ、見える。例え100キロ先でも。  
「見ていろよ異世界人。いつまでもいつまでも、ここの空が自分たちのものだなど思わないことだ…。」  
グナイストは力を込めて決心したように呟いた。  

攻撃前の偵察に投入された風間・座間機。だが拠点メリトン上空はまるで大規模空襲に備えるかのように多数のドラゴンで守られていた。それらのドラゴンから、追尾型の魔法光弾が一斉に放たれた。  
「死ね…。」「フレアァァァァッ!!」  
グナイストが勝ち誇ったように呟くのと、座間が風間に向かって叫んだのはほぼ同時だった。  



463  名前:  ACE  03/10/17  19:09  ID:???  

今回も諸事情によりちまちました更新になります、すいません…。  

前方より一斉に向かってくる光の弾の群れ。レーダーには映っていないが、ある程度接近しているため肉眼でも確認できた。  
風間は座間の叫びに応じてフレアをばら撒きつつスロットルをMAXに叩き込んだ。そのまま操縦桿を左に倒しフットバーを蹴る。  
今までの戦いで、この魔法はフレアをばら撒くことで回避出来ることは分かっていたが、数が多すぎてフレアに引きつけられなかった群れがRF−4EJを襲う。  
RF−4EJは一気に左旋回降下を開始した。それに追いすがる光の弾。風間はフルパワーで旋回しながらドラゴンの群れに突っ込む体勢をとった。  
「仕方ねえ、座間、仕掛けるぞ!」風間は叫ぶ。それを聞いて座間も基地に報告する。「こちらアインハンダー1、現在敵の迎撃を受けている!エンゲージ!」  
こちらの世界のAAMほど速度の速くない光の弾の群れを引き連れながら、風間は武装パネルからAAM−3を選択した。そのまま敵ドラゴンの群れの中心のドラゴンをロックする。  
「フレアに反応するなら…こいつにも…」AAM−3が主翼のランチャーを飛び出した。ドラゴンの群れは突っ込んでくるRF−4から逃れようと回避運動を始めるが、ドラゴンより遥かに速いファントムが通過した  
後に、ファントムに食らいついていた光の弾の群れがドラゴン達に襲い掛かった。だが中心にいたドラゴンナイト、グナイスト隊長はただ一人、光の弾もAAM−3も急激なバレルロールでかわした。  
「マジかよ…」風間は絶句した。群れを離脱した後スプリットSで退避したファントムは今グナイストに背を見せている。フレアはもうない。それに、まだ偵察写真を撮っていない。  
だがグナイストのドラゴンは突然左の翼を失った。目に一瞬映った「何か」を風間も座間もグナイストも追った。  
下方にはドラゴンにも負けない大きな鳥が、ファントムにも負けない速度で降下していた。グナイストのドラゴンはそのまま落ちていった。  
風間は本来の任務である写真撮影に戻り、写真を撮って引き返した。そこに、さっきの大きな鳥が並んできた。  
「俺たちを助けてくれたのか…」座間はそう呟くと、鳥に敬礼をした。風間もそれにならう。  
大きな鳥は返事をするように2、3度羽ばたくと、旋回して離れていき、見えなくなった。