421  名前:  ACE  03/03/18  18:19  ID:???  

ああ、まさか正式な設定があるとは…。<ストーンヘンジ  
あ、そろそろ漏れの作品をうpします。  
作品名「Merciful  Devil」  
///////////////////  
福岡市内  
ある警官がある高校近くの閑静な住宅街を巡回していた。  
最近はオーランからの工作員が破壊工作をしたりしているのだが、  
この警官にはいつもと変わらぬパトロールであった。  
だがその日は違った。彼はある音を聞いた。  
「こいつは…ケンカか…。」  


422  名前:  ACE  03/03/18  18:31  ID:???  

まあ、高校の近くではよくあることだが、その時は少し様子が違った。  
何かがおかしい。そう感じた警官は音のする角へ慎重に歩を進め、  
角から覗き込んだ。  
「な…。」  

そこでは、一人の高校生の少女が倒れていて、その周りに2人の男が倒れていて、  
他に数人の男が囲むようにして立っていた。少女の横には木刀が落ちている。  
「てめえら、何してやがる!!」  
警官は思わずニューナンブを引き抜いて飛び出した。  
男の一人は少女を肩に担ぐと、常人にはあり得ない跳躍で近くの茂みに逃げ込む。  
他の男達もそれに続く―――いや、一人は短剣を抜いて躍りかかった。  
警官は驚き、無我夢中でトリガーを引き続けた。弾が切れても引き続け、  
我に変えると、ただ呆然と立ち尽くした。  


423  名前:  ACE  03/03/18  18:49  ID:???  

工作員は大胆不敵にも犯行声明を出してきた。  
昼間に警察本部に声が響くという形で。恐らく相当のレベルの魔術師がいるのだろう。  
警察は彼らの罠であることを予測し、アジトと思しき海近くの廃工場に  
現在最強の部隊であるSATの突入を決定、自衛隊1個小隊が支援に当たる事になった。  

「みんな、準備はいいか?」  
第1分隊隊長、柊(ひいらぎ)3尉は部下たちに言った。  
「村雨、狙撃準備は?」  
「…あとはそこの狙撃位置につくだけです…。」  
村雨1曹は64式小銃狙撃型のボルトを引いて答えた。  
「武藤、カールグスタフの準備は?多分使わないとは思うんだが…。」  
「一応いつでも撃てますぜ。相手は高レベルの魔術師、油断は禁物であります。」  
小隊で一番大柄の武藤2曹は答えた。  
「まあ、いざとなれば自分のミニミで瞬殺出来る訳ですが(笑)。まあ相手にも  
よるわけですが(笑)。」  
ミニミガンナーの鮫島はどこかで聞いたような口調で答えた。  
「よし、では総員散開、持ち場で待機、援護態勢に入れ!!」  
柊の命令で全員が散った。  
しばらくして、慎重に工場のドアに近づいていたSATが突入しようと、  
スタングレネードを投げ込むのを柊たちはドアの間にある駐車場を挟んで見ていた。  


424  名前:  ACE  03/03/18  19:12  ID:???  

信じられない光景だった。  
SAT隊員が突入した直後、爆発が内部で起こり、様々な方位から突入したSAT隊員を  
肉片に変えてしまった。  
「な…バカな!!総員撤退!!」小隊長が叫んだ。柊も振り返って走り出そうとした時、腕を掴まれた。  
村雨だった。  
「隊長…待ってください…。我々も突入しましょう。アレだけ強力なトラップ、魔法といえども  
そう連発できるものではないでしょう…。今なら、やれます…。捕らえられている少女も心配です。」  
「しかし…。」  
「隊長…俺たちは今までずっと税金ドロボーだの国賊だのと言われてきました。  
でも…今俺たちの助けを求める人が…そこにいます。俺たちを本当に必要としている人が…。  
あなたには、その声が聞こえないのですか…!!」  
村雨は無線機を差し出した。SAT隊員が突入した時のものが内部にあるのだろうか、  
工場内部の声が聞こえる。そこでは、鞭や棒で殴打する音と、少女のうめき声、そして  
男の声が聞こえてきた。  
「オラァ!!」「くうっっっ!!うあっっっ!!」  
「あーあ、てめーのせいで骨折れちまったじゃんかよ…どうしてくれんだ!!」  
「あまり痛めつけるんじゃないよ…大切な生贄なんだからねェ…。」  
「てめえを助けにきた連中はみんな死んだか逃げた!もうてめえを助けに来るような  
骨のある奴はニホンにゃいねーよ!!」  
そんな会話が飛び込んできた。  
「なめやがって…!!」柊は歯軋りして呟く。「…俺は行く。ついてきたくない奴はいい、帰るんだ。」  
誰も撤退しようとはしなかった。  
「俺がグスタフで援護しますぜ、隊長。頃合を見て自分も突入しますぜ。」と武藤。  
「まあ自分のミニミも血に飢えている訳ですが(笑)」と鮫島。  
「…自分も突入します。狙撃じゃ内部の援護はしづらい…。」と村雨。  
「よし…接近戦が予想される。全員着剣!!」  
全員が着剣と同時に整列する。  
「全員、突撃!!」  





433  名前:  ACE  03/03/19  18:31  ID:???  

いや…期待させてなんですが…実は市街戦は最初だけなんです(滝汗)。  
むしろ異世界の異能者と自衛隊の共同作戦がメインになります。「デビルメイクライ」  
みたいなファンタジーと現代科学の共同戦線ってとこですかね。  
すいません。SATはたぶんもう出てきません。ホントすみません…。では本日のうpを…。  

隊員たちは一斉に走り出した。爆発であいた大穴に向かって。そこへ工場の2階の窓から男が  
身を乗り出して弓を慌てた様子で構えた…が。  
84ミリ砲弾は彼を跡形もなく吹き飛ばした。  
それと同時に武藤も走り出す。その頃柊たちは入り口にとりつきスタングレネードを投げ込んだ。炸裂。  
飛び込んだ隊員達にスタングレネードをものともしないかのように工作員たちが襲い掛かる。  
「であァァァァッ!!」  
柊は振り下ろされた剣を銃で打ち払い、返す刀でストックで工作員を思い切り殴りつけた。倒れる工作員に  
柊はシグザウエルP220を引き抜き、3回トリガーを引いた。村雨は銃剣で工作員を刺し貫き、さらにトリガーを引いて  
その向こうのもう一人の工作員を同時に仕留めた。  
だが、剣を受けて一人が倒れる。それと同時に、弓を持った工作員が現れて猛射を開始した。  
数で劣る柊分隊は追い詰められていった。  



434  名前:  ACE  03/03/19  18:41  ID:???  

「そこのジエイタイ指揮官に告ぐ!!貴公は完全に包囲されている!!」女の声がした。恐らく魔術師だ。  
状況から負けを悟った柊は、盾にしている工場のベルトコンベアから身を乗り出そうとした。が村雨が止めた。  
「これは罠です…。抑えてください…。」  
「だが…」  
「此処で死んだら、誰が彼女を救えるのですか…!!」  
その一言に、柊は踏みとどまった。  
「この少女の命が惜しくば投降しろ。さもなければ殺す。こちらとしては生きた生贄の方が良いのだが、死体でも  
別に構わんのでな…。」魔術師は続ける。  
「それはないな…。」  


435  名前:  ACE  03/03/19  19:00  ID:???  

言ったのは自衛隊の面々でも工作員達でも無かった。  
一人、黒いつばの広い帽子に黒いロングコートを着た黒ずくめの男が入ってきた。  
「まあ多少気になる点はあるが…大方召還獣…それもかなりの高レベルの召還獣の召還だろう。  
こいつには生きた処女の血が必要だ…違うか?」  
男は悠々と語った。  
「バカ!!危険だ出て行け!!」  
思わず柊は立ち上がって叫んだ。が、そこを弓兵が一斉に狙ってきた―――が。矢は一発たりと飛んでこない。  
「バカな…皆何をしている!!」魔術師は思わず叫んだ。  
「弓兵?『あれ』がか?」黒い男は言った。弓兵を見てみると、弓兵は全員胸に短剣が刺さった状態で倒れていた。  
「な…貴様一体何をしたァーーー!!」魔術師は射撃魔法シューティングスターで黒い男に一斉射を浴びせた。  
男は次々に光弾を浴びて体が砕け散ってゆく…が、その砕けた体がコウモリとなって一斉に飛び、また人の形になった。  
「無駄だ…。そこの剣兵も見てみるか?」男の言葉も、その奇怪極まる現象を目の当たりにした隊員たちには聞こえなかった。  
が状況を察した魔術師は後ろを振り返った。そこには多数の首と胴体が別々になった死体が転がっていた。  
そしてそこには、無精髭を生やした、黒いローブに身を包んだ男がいた。両手にあまり長くない剣を持っている。  
「二人ともご苦労様。おかげでこの子が助けられたよ。」  
声がするほうを向くと、裸で体中に傷を負った少女を、高校生くらいの赤いコートを着た少年が抱えていた。  



436  名前:  ACE  03/03/19  19:13  ID:???  

「不死身の吸血鬼…この短剣さばき…そして赤いコートの少年…まさか貴様らは!!」魔術師はおびえた様子で叫んだ。  
「さあ、泣け、わめけ、豚のような悲鳴をあげろ。」黒い男は言った。そして懐から…南部14年式を抜いて構えた。  
8ミリ南部弾が飛び出す。が、見えない壁のようなもので弾かれた。  
「馬鹿め!そんなもの効かぬわ!!」魔術師がそう言った直後、遅れてきた武藤のカールグスタフが魔術師に直撃した。バリアの貫通には至らなかったものの  
バリアはかなり弱体化した。そこに村雨が狙撃を浴びせる。銃弾はバリアで弾道がずれたものの、貫通して  
魔術師の肩を撃ち抜いた。そこに黒い男が近づく。  
「ま、待て…自分を殺せば…」  
「いい。何が起こるのか貴様の血に訊く。それに何が起ころうが、俺たちの敵ではない。」  
男は魔術師の肩口に噛み付き、血を吸った。魔術師は干からび、最後は燃えて灰になった。  
隊員たちは、ただソレを呆気に取られて見ているだけだった。  

本日はこれにて終了。なんか軍事板向きじゃなくなってきたな…。  


463  名前:  ACE  03/03/22  17:36  ID:???  

では本日のうpを・・・  

「一体何者だ?」真っ先に口を開いたのは村雨だった。  
「僕たちは旅のものです。一度この国に立ち寄りたいと思って来てみたら、  
例の犯行声明で。何かできることは…と、思い、参りました。」  
少年はそう答えた。  
「あ、そうだ…怪我人がいるようですね。アレクサンドル。」  
「は…治療ですな?」  
ローブの男は剣を受けた隊員に近づくと手をかざした。すると、青白い光が  
ぼうっと広がって、傷がみるみるうちに治っていく。隊員たちは驚きのどよめきをあげた。  
「彼、アレクサンドル・シュマイザーは剣術と魔法の両方を極めた人物です。これくらい、  
どうということはありません。」  
「そう言って頂けると光栄です。」  
少女の傷も治すと、アレクサンドルは言った。  
「ご協力…感謝する…。いや、ちょっと頭の中の整理がつかないんだ。あとあと  
細かい事情の聴取なんかが必要だと思うんだけど、滞在地なんかを教えてくれるかな?」  
柊は言った。  
「はい、結構ですよ。」  
少年は答えると、滞在地などを教えた。  
「じゃあ、みんな撤退だ。この3人に敬礼!!」  
隊員たちはいまだに戸惑った様子で帰っていった。  




480  名前:  ACE  03/03/24  11:08  ID:???  

では本日分を…  

さらわれた少女、進藤あすかは病室の中で目を覚ました。病室内を見渡した。  
「そうか…あたしは…ん?」  
ふと壁にかけてある赤いコートが目に入った。それは裸で救出された彼女に少年が  
かけたものだった。  

あすかは次の日には学校に行った。所属している剣道部の面々と早く会いたかったから。  
ところが道場の扉をくぐったら、意外な人物が目に入った。  
「!!あなたは…。」  
「どうも。しばらくここの臨時講師となりました。カイル・エルマリート・ヴィジャヤです。  
よろしくお願いします。進藤あすかさん。」  
あの少年だった。  
「あ…あの…助けていただいてありがとう…。これ…。」  
探して返すつもりだったコートを渡した。  
「ああ、どうも…あ、そんなに見てないですよ!!仕方が無かったんです!!気にしないで!!」  
カイルは突然慌てふためいて言った。  
「?」あすかはなぜそんなに慌てるのか気づかない。  
「いやね進藤。」顧問の先生が言った。「彼は剣士のようだし、この世界で君のように  
工作員に襲われるというようなこともあるだろうと思ってね、彼に自衛のための様々な  
技をしばらくの間教えてもらうことにしたんだ。」  
「と、いうわけです。では、さっそく始めましょう。」カイルも言った。  
「すまないが…カイル君、少し話がある。」  
その突然の声の主は柊だった。  


481  名前:  ACE  03/03/24  11:45  ID:???  

「一体なんですか?」カイルは柊に聞いた。  
「ああ、君とアレクサンドル氏、それと…あの吸血鬼の…。」  
「ヴァルター・ヒュッケバインです。」  
「そうそう、ヴァルター氏。実は自衛隊内部でも今回の工作員のように  
敵地で破壊工作を行う特殊部隊の編成を急いでるんだが、その部隊に、君らも参加して欲しいとの  
ことなんだ。」  
「………。」カイルはしばし考え込む。  
「自分だけでは決めかねます。彼らの意見を聞いてみないと…。」  
「その心配なら無用だ。」柊の影の中からヴァルターが出てきていった。  
「私はお前の従僕だ。お前にあだなす者を片っ端からなぎ払い、お前を遮るものを叩き潰す  
のが私の仕事だ。だが命令を下すのはお前だ。我が主よ。」  
ヴァルターはそう言った。  
「…お断りします。僕はやっと安住の地を見つけられたんだ…。もう戦いは御免です。」カイルは哀しそうに言う。  
「…君にはいったい過去に何が…」柊はいぶかしげに問う。  
「そこまでだ柊」ヴァルターが威圧的な口調で言う。  
「貴様は我が主の過去を詮索しようとした。知られたくない過去をだ。  
もしそれを知ってみろ、貴様生きてここを出られると思うな  
ぶち殺すぞ人間(ヒューマン)!!」ヴァルターは恫喝した。  
「よすんだヴァルター。」カイルは言った。「とにかく、お断りします。すいません。」  
「…分かったよ。自分としても、君をこの戦争には巻き込みたくない。すまなかったな。」  
そう言って、柊は帰っていった。  



483  名前:  ACE  03/03/24  15:11  ID:???  

その日の午後、カイルとあすかは一緒に買い物に出ていた。  
「ごめんなさい、買出しに付き合ってもらっちゃって。」あすかは言った。  
「いいんですよ。あの顧問の先生にも、住むところやらでいろいろお世話になったんだ。  
これくらい当然だよ。ってうあっ!!」  
カイルは人にぶつかった。よりにもよってやばそうな男にである。  
「おう、あんちゃん!!どうしてくれんだゴルァ!!」  
「失礼しました。すいません!!」「ああ!?何様のつもりだ…」カイルの言葉など全く耳に入っていない。  
「おい、そこのヤクザども。」突然声をかけた男がいた。  
「ああ、なんだてめ…ってまさか!!」やくざたちは突然慌て始めた。  
「お前ら確か小田組のモンだろ?もう少しは生かしておいてやろうと思ったが、どうやら  
もっと早く死にたいらしいな…。ああ!?」男はヤクザに向かって言い放った。  
「全く…お二人さん、大丈夫か?こいつらもてねえから、男女で歩いてると絡んできやすいぞ。  
気をつけるこった。」男は言った。  
「あの…あなたは?」あすかは尋ねた。  
「俺か?俺はただのゴミ処理係だ。」  
「よく言うぜ。霧島雅人警部補。暴力団取締班の切り札(ジョーカー)が。」  
口を挟んだのは、いったいどこから出てきたのか柊だった。  
「柊さん!!一体どうして…。」カイルは尋ねた。  


484  名前:  ACE  03/03/24  15:42  ID:???  

「ああ、俺だって買い物くらいするさ…。それにこの博多の大通りは買い物には困らない。  
二人は…さしずめ買出しってところだね。霧島、お前は…」  
その柊の言葉は突然の轟音でかき消された。  
「…これは、魔法によるものでしょう。なにか強力な使い手が空間転移してきた反応です!!」  
カイルは言った。  
「魔法?先日の奴等か!?って、何でお前そんなことが分かる!?」霧島は驚いて言った。  
「柊さん、早く退避しましょう!!」カイルは無視して続ける。  
「ええと…お前もしかして…こっちの世界の人?」霧島はカイルの腰の剣を見て言った。「なんかやばいぞ。ときの声が聞こえる。まさか魔法でたくさん兵隊を送り込んできたんじゃねえのか!?」  
「ええ、おそらく…。」カイルも答える。  
「やばいな…おいそこのヤクザども。」霧島はどさくさに紛れて逃げようとしたヤクザたちに声をかける。  
「てめえら、拳銃(チャカ)と、長い刀、車なんかに置いてねえか?」「ひィ!、置いてありやす!!」  
ヤクザ達はすぐに自分たちの車へ走るとすぐに銃と弾薬、それに木鞘の刀を持ってきた。  
「どうやら声から判断すると…俺たちって囲まれてるらしいね。さてどうする?名前は…」霧島は訊く。  
「カイルです。ここは送り込んできたボスを一点集中で叩くべきです。じゃないと、次々に増援を送り込まれます。」  
「よし…柊、部隊に連絡だ。たぶんパニクった群集で部隊はすぐには来ねえ。俺たちだけでできるだけ粘るぜ。」  
「ああ、分かってる。」柊は答えるとすぐに携帯で連絡を入れる。  
「あすかさん、どうやら君を逃がしている余裕は無いみたいだ…ごめんね。」カイルはあすかに言った。  
「大丈夫…怖いけど、耐えてみせる…!!」あすかはカイルをしっかり見据えて言った。  
「そうか…じゃあ僕が護衛に就こう…絶対に守ってみせる…!!」  
「ああ、  


485  名前:  ACE  03/03/24  16:26  ID:???  

4人はカイルの感覚を頼りに大通りを歩いていった。火器などを使用しないだけあって、焼け焦げた車がごろごろしているという訳でもなかったが、ガラスなどは無残に砕かれていた。  
すると、目の前の角から、オーランの軽装歩兵が数人出てきた。  
「お…獲物みっつけた(・∀・)」敵兵は言った。  
「獲物ねえ、まあいいか。オラ、さっさとこいや。」霧島は言った。腰に下げている刀は鞘に入ったままだ。  
「なめてんのか…ニホンジン!!鞘に刀がはいったまんまだぜっ!!」敵兵の一人が剣を振り下ろ…すまえに敵兵の首が飛んだ。  
「俺の剣はな…鞘に入った状態が一番強いんだよ。」霧島は残酷な笑みを浮かべて言った。  
「馬鹿な…総員、かかれぇ!!」敵兵の長と思しき男が声を上げて、部下と共に斬りかかってきた。が、霧島の鞘から銀の光が一閃し、敵兵の首が次々と飛んで全滅した。  
「…すこし子供には強烈すぎたか…」顔を押さえているあすかに霧島は言った。  
「凄い…霧島さん、これは一体…」カイルは驚きを隠しきれない様子だ。  
「これは、『居合』っていうこの日本に古くから伝わる剣術だ。鞘から刀が抜ける際の滑り落ちる力を利用して斬撃の速度を一気に上げて超高速で必殺の一撃を撃ちこむ、  
この国独自の究極の一撃剣だ。この霧島は銃を構えるより速いこの居合『早撃ち』で多数の暴力団を壊滅させてきた。  
ついでに、剣だけじゃ限界があるから銃の腕も抜群、正直、この国で現在最も戦闘能力の高い男だ…。」  
柊が説明した。  
「へえ…ところで大丈夫?あすかさん?」カイルはうずくまるあすかに言った。  
「ええ…大丈夫。気にしないで…。」  
そこに、槍を持った兵士と、鎧で身を固めた重歩兵の集団が押し寄せてきた。  
「僕も負けてられないな…。」カイルは剣を抜いた。片刃で幅4センチほど、刀身の長さは1メーターほどの銀色の剣だ。  
「薙ぎ払え、マーシレス!!」カイルが叫ぶと、その剣は光って形を変え、長い両手剣になった。ちょうど映画「ブレイブハート」で主人公が使っていた剣のような、身長ほどもある剣だった。  



491  名前:  ACE  03/03/25  11:01  ID:???  

486>いやいや、確かに名前の由来はそいつなんですが、ブラックホールは使いません。  
むしろ彼の必殺技は拘束制御術式クロム(以下検閲  
では本日分を…  

カイルはその両刃の長剣マーシレスで槍兵たちを次々と薙ぎ払い、それを見て興奮した霧島も重歩兵を一人二人と突き殺していった。  
「バカな…なぜ我々の鎧が…」重歩兵の長は信じられないといった様子で言った。  
「はあ?こいつはな、鎧の隙間を狙うこの国の古流剣術だ。鎧っつったら斧かハンマーでぶっ潰すしか能のねえアフォどもが!!」  
霧島は一喝した。その間にも、あすかは拾った鉄パイプで剣道の技で敵の斬撃を払いながらそのまま叩きのめし、柊はヤクザから奪ったマカロフで敵を撃ち抜きつつ、後ろから来た敵兵を一本背負いで投げ飛ばした。  
「みなさん、強いですね…。」カイルはそう言うと、突然あすかをかばうように抱きしめた。直後、彼の背に矢が突き刺さり、カイルは低い呻き声をあげた。  
「カイルさん!!」あすかは完全に慌てていた。「大丈夫…だよ…」カイルは後ろを振り返った。  
そこには、長い銀髪で黒いコートを着た貴族風の男が弓を手にして立っていた。  
「カイル、奴は…」柊は尋ねる。「あいつは…『魔人』ボルヴェルグ…ヴァルターでもアンデルセンでも倒せない…あいつを倒せるのは…僕だけだ…!!」  
カイルは苦しそうに立ち上がった。カイルの体に稲妻が走る。  
「む…まさか!!」ボルヴェルグは弓に矢をつがえ、構えた。矢が光り輝き始める。  
そして、矢が放たれた。  


492  名前:  ACE  03/03/25  11:40  ID:???  

矢がカイルに命中、爆発する。  
「カイルさん!!」あすかは泣き叫んだ。が、煙が晴れて彼の姿が見えたとき、彼女は言葉を失った。  
そこには『人にあらざる者』魔人がいた。  

体表は黒い鎧のようになり、赤いコートはそれと同化し、その顔は人間の時の面影を少し残しているものの、漆黒の硬質な肌になっていた。刺さっていた矢はいつの間にか抜けている。  
「あすかさん…君にだけは見せたくなかった…。あまり見ないでください…。」カイルは寂しそうに言った。その声は、普段と変わらない。  
「やっと出てきたか、『魔人』カイル・エルマリート・ヴィジャヤ。一度、あのヴァルター、アレクサンドルがつき従う最強の魔人と戦いたかった。」ボルヴェルグは言った。  
「一体何が目的だ。君のような魔人や、先日の魔術師シュリー、みなオーランには加担していなかったはずだ!なぜ彼らの軍勢に手を貸す!?」カイルは尋ねた。  
「フセインも必死でね、私のような第3勢力に声をかけているのさ。もうすでにウダイの手で我々のような者をまとめた工作機関が完成しつつある。そうすれば、この日本とて敵ではない。」ボルヴェルグは笑みを浮かべて言った。  
そこに霧島と柊はほぼ同時に銃をボルヴェルグに向けて放った。ニューナンブの38スペシャル減装弾とマカロフの9ミリマカロフ弾がボルヴェルグを貫いた…かにみえたが、彼はそれを恐ろしいまでの反射神経でかわした。  
「けっ…銃弾なんか通じませんってか?なめた野郎だ。」霧島は言った。  
「フ…人間にしてはやるほうのようだが…所詮貴様らとは次元が違…」ボルヴェルグは言いかけた。  
「黙れ。」  



494  名前:  ACE  03/03/25  15:00  ID:???  

割り込んできたのはヴァルターだった。  
「貴様私の主を本気にさせたな。」彼はナンブ14年式を抜いた。「死をもって償え。」  
彼が左手を挙げると、物陰から飛び出してきた男たちがいた。柊分隊だった。  
「直接火力支援!!一斉射撃!!」ヴァルターの掛け声で、64式小銃、ミニミ、カールグスタフが一斉に火を噴く。  
武藤のカールグスタフが重歩兵を吹き飛ばし、ミニミが浮き足立った敵兵を「刈り取る」。  
カイルにも敵兵がさらに多く、50人ほど押し寄せてきたが、彼は長剣マーシレスを横に薙いだ。  
すると赤黒い残像が伸び、いつもの5倍のリーチで数十人の敵兵を一撃で薙ぎ払う。  
さらにカイルは剣をもとの片刃剣に戻し、迫る敵集団に突き出した。すると剣が多数の銀の線でしか見えない程何度も高速で突き出され、敵兵を蜂の巣にした。  
そしてカイルは背中に翼を生やし、地を蹴って一気に上空へと飛び上がり、両手に稲妻を走らせた。  
「消えろ!!」両手の稲妻が地に叩き込まれ、爆発した。敵兵が吹き飛ぶ。  
「ほう…ならば、フレキ!ゲリ!」ボルヴェルグの足元に魔方陣が2つ現れ、そこから2匹の狼が飛び出した。  
襲い掛かる狼。だが一匹は突然真っ二つになって息絶えた。  
「遅い。」アレクサンドルが、両手の剣をクロスさせて立っていた。もう一匹は鮫島に襲い掛かった。  
が、鮫島は飛び掛る狼の横っ面をミニミのストックで殴りつけた。吹き飛んだ狼を容赦ないミニミの掃射で蜂の巣にした。  


495  名前:  ACE  03/03/25  15:58  ID:???  

「さあ、ボルヴェルグ。さっさと退くんだ。」カイルは言った。  
「退く?」ボルヴェルグは首をかしげる。「なにを言っている。まだ私は健在だ。まあ貴様のことだ。  
私と力をぶつけ合えばとんでもない被害が出る。それを恐れているのだろう。」  
「柊さん。」カイルは言った。「みなさんを連れて早く逃げてください。できるだけ遠く…。」  
「何をするつもりだ!?」「僕の最大の技を以ってボルヴェルグを消し去ります。おそらくこの一帯は更地になります。」  
「冗談じゃねえ!!」霧島は叫んだ。「後は任せますってか!?ちったあ俺たちを信用しろ!!」  
だが、もうカイルの耳には届いていない。空中のカイルが光り輝き、オーラが集束し、体に稲妻が走る。  
「よろしい…ならば…。」ボルヴェルグは弓を構えた。その矢にもオーラが集束し、炎が燃える。  
「そうだ…俺達を信じろ、カイル…。」柊はつぶやくと、声の限り叫んだ。「村雨ぇぇぇぇぇぇっ!!!!」  
一発の銃声。ボルヴェルグの背後から飛んだ7.62ミリ減装NATO弾は、一直線にボルヴェルグの頭を貫いた。  
事前に後方に回り込んでいた村雨が、ボルヴェルグを狙撃したのだ。ボルヴェルグは信じられない様子で弓をとりおとす。  
「総員、一斉射撃!!」柊の掛け声で、村雨はセレクターを『タ』から『レ』に切り替え、トリガーを引いた。  
それと同時に、64式小銃が、ミニミが、マカロフが、ニューナンブが、ナンブ14年式が一斉に火を噴き、瞬く間にボルヴェルグはボロ雑巾のようになった。  
だが、それでもボルヴェルグは倒れなかった。蜂の巣になったままで不敵に笑う。  
「フフ…さすがだ…今日のところは退いておくよ。なかなかこの戦争、楽しめそうだ…。」言い終わると、彼の体がすうっと透明になっていった。  
「カイル。」彼は言った。「その少女、せいぜい大事にするがいい。この戦争から彼女を守りきれるか、しっかり見届けてやろうじゃないか。」  
そう言い残して、ボルヴェルグは消えた。  



496  名前:  ACE  03/03/25  16:49  ID:???  

気がつくと、カイルは元の姿に戻っていた。  
「とうとう、見られちゃいましたね…。あすかさんが怖がって動けなくなる前に、僕は行きましょう。」  
カイルは柊たちに背を向けて歩き出す。アレクサンドルは寂しそうな顔で、ヴァルターは苦虫を噛み潰したような顔で。  
「待てよ。」霧島は言った。「カッコよかったぜ。カイル。」その一言にカイルは思わず立ち止まって振り返る。  
「行くのはお前が決めたことだ。でもよ…これだけは言っておきたかった、俺の本心だ。怖いとかじゃねえ、純粋にカッコいいと思った。」  
「…お気持ちは嬉しいですが、隊員の皆さんにもこれ以上迷惑はかけられません。では…」  
「待って!!」あすかが言った。「待ってよ…。行かないでよ…。あなたが何をしたっていうのよ…。あなたあたしたちを助けてくれたじゃない!!  
なんで謝るのよ!!」  
「カイル。」柊は言った。「俺たちはお前を必要としてる。お前は多分、その力にずっと苦しんできたはずだ。それがお前の『過去』なんだろう?  
だが、お前はそれでも力を使うことをやめなかった。何故だ?」  
「貴様…!!」ヴァルターは南部に手をかけた。柊は構わず続ける。  
「それは…お前が恐ろしい『魔人』でもなんでもない、やさしい奴だったからだろう!!  
それはここにいる全員が知っている!!ここにお前を恐れるような恩知らずはいない!!」  
柊は別に引き止めたいとは思っていなかった。ただカイルに、いつまでも自分自身を恐れて欲しくなかっただけだ。  
「…奴らを放っておけば、きっと皆さんにも危機が訪れるでしょう。分かりました。僕も協力しましょう。いいね、二人とも。」  
柊とあすか、そして隊員たちの顔がぱっと明るくなる。めったに感情を表に出さない村雨が、かすかに微笑んでいる。  
そしてヴァルターとアレクサンドルも、カイルをしっかり見据えて言った。  
「了解(ヤー)、我が主(マイマスター)。」  


497  名前:  ACE  03/03/25  17:30  ID:???  

いよいよ出発の日になった。福岡空港に待機しているC130の前に、新編成の特殊部隊、  
「陸上自衛隊第2特務分隊『スパルタン』」が待機していた。  
メンバーは隊長に柊3尉、副隊長にSEALSから派遣されてきたSEALSの予備隊員ミラー曹長、  
村雨1曹、武藤3曹、鮫島2曹、そして偵察部隊から引き抜かれてきた徒手格闘及び銃剣道の達人竜崎3尉、  
そして警察からの出向扱いで霧島警部補、それにカイルとヴァルター、アレクサンドルだった。  
見ての通り、所属もばらばらな異色の部隊である。  
「よし…時間だ。総員、搭乗!」柊は言った。カイルはある人物を見つけて駆け寄った。  
「隊長、カイル君を…」「いいんだ。すぐすむよ。」柊はミラー曹長をなだめた。  
「カイル君、見送りに来たよ。」あすかだった。「えっと…あの…か、帰ってきてよね、死んじゃヤだから…。」  
「…分かったよ。死なない。帰ってくる。約束だ。」カイルはそう言うと、C130に向かって歩き始めた。  
もう振り返らない、また戻ってくるまでは。  

ハーキュリーズ(巨人)は、エルフィールの空を一直線に駆け上がって行った。  

ふう、第1部みたいなのやっと終了です。では本日はこの辺りで。  
あとてさりすとさん、面白いと言って頂いてありがとうございます。すごく励みになりました。  
『神』てさりすと氏に誉めていただきとても光栄です。  





625  名前:  ACE  03/04/24  20:25  ID:???  

では第1部「プロローグ」に続いて第2部「蒼穹を駆ける」行きます。  

第一話「折れた翼」  
築城基地に緊急連絡が入った。先ほど発ったC130がドラゴンに襲われているというもので  
信じられないことに、護衛の2機のF15は苦戦しているという。  
ちょうど、国連多国籍軍ドイツ連邦軍のユーロファイター・タイフーンが2機、スクランブル体制に入っていたが  
ドラゴンは信じられぬほど多く、築城基地に駐屯していたアメリカ海軍のF14が2機、  
ロシア軍のS37ベルクト1機も出撃体制に入った。  
「こちらゼンガー。ラインハルト、編隊離陸だ。」ドイツ空軍のトップエース、ゼンガー・ハルトマン少佐は  
ウイングマンのラインハルト大尉にそう言った。大尉はすぐに答える。  
「よし…行くぞ、トロンベ…。」  
ゼンガーはそう言って、黒と黄色と赤でペイントされた愛機のタイフーンを発進させた。  
「ゼンガー少佐へ。レジーナ・マッケンジー中尉、離陸します。」  
レジーナのF14も飛び出す。  
「こちらウラジミー、行くぜ…。」  
その直後、真っ黒のベルクトがそれまでの3機とは一味違う強力なダッシュで離陸した。  


637  名前:  ACE  03/04/25  18:44  ID:???  

では本日分。  

海上ではC130が第一エンジンから火を噴きながら逃げ惑い、2機のF15が必死に敵の攻撃を引き付けていた。  
「柊、やばいんじゃねえかオイ!!」霧島が叫ぶ。「ああ、そうだ!!すぐに援軍が来るそうだ。それまで逃げ切れるよう祈れ!!」  
柊も答えて叫ぶ。さっきまで下の景色を興味深げに眺めていたカイル、ヴァルター、アレクサンドルも今ではじっと  
押し黙ったままである。  
「隊長…あれを…。」村雨が窓の外をさした。そこには4機の先ほど築城を発った戦闘機がいた。  
「あれは…『黒騎士』トロンベ!ゼンガー少佐か!」  
ドラゴンの群れに4機の戦闘機は真っ直ぐに突撃する。  
「さあ…トロンベよ、今が駆ける時!!」ゼンガーはそう決心したように言うと、バーナー全開で敵陣に切り込む。  
そしてF15を追う1匹のドラゴンを照準に収めた。  
(速い…普通のドラゴンではないな…だが…)ゼンガーはトリガーを引き、マウザーBK27が吼え、  
花火のような音を毎秒数十発の速度で立てる。27ミリの嵐は、ドラゴンを軽々と引き裂き、海の藻屑と化す。  
そこにレッドタイガーが数発飛んできたが、ゼンガーはフレアを使おうとはしなかった。  
「この程度の追尾性か…このトロンベ、F15とは違うぞ!」  
ゼンガー機はバーナー全開で回避機動を開始。F15ではできない程のハイGスライスターンでレッドタイガーを  
すべて振り切った。  
「すげえ…あれがドイツのトップエース、ゼンガー少佐とタイフーン・トロンベか…。」  
F15のパイロットは思わずつぶやいた。  




666  名前:  ACE  03/04/28  20:41  ID:???  

本日分いきます。なんか最近ラーゼフォンにはまってるので空中戦好きです。  
鋼鉄の咆哮2にもはまってますが…(ちなみに自分の艦は航空戦艦「アドミラル・シナプス」  
新型プラズマ砲と80cm45口径の主砲、20基以上のCIWS、多目的ミサイルのVLS  
で武装しています。艦載機は5機だけですが)。  

レジーナ及びケビン・マクダネル中尉のF14Dもドッグファイトに突入していた。  
「レジーナ、後方に敵ドラゴン!」「分かってる!3オクロックにも敵、先に後ろから片付ける!」  
レジーナはドラゴン上の騎士の放ったシューティングスターを右ロールで回避、そのまま右回り  
バレルロールに移行、速度を上げていた敵ドラゴンを前方に捉え、バルカンで撃墜した。  
ウラジミール・スルゲイレフ大尉のベルクトは、その圧倒的な機動性でドラゴンを翻弄した。  
後方についたドラゴンを「コブラ」で前方に出し30ミリ機関砲で粉砕。左旋回に移ったベルクトを  
追うドラゴンを「フック」でまたもや前方に出し機関砲で撃墜。  
そしてすぐ横にいるドラゴンにヘッドマウントサイトでロックオン、短距離空対空赤外線追尾ミサイル  
R73を発射、だがドラゴンの騎士はそれを着弾寸前までひきつけてかわした…かに見えた。  
ドラゴンを通過したR73はほとんど直角にターン、ドラゴンに突っ込んだ。  


667  名前:  ACE  03/04/28  21:08  ID:???  

だがドラゴンの数はあまりに多く、またこのドラゴンは戦闘機並みのスピードを誇るため  
戦闘機部隊は次第に追い詰められていった。  
「ゼンガー少佐よお、やばいぜ!こっちはそろそろ弾が尽きる!」ケビンはそう言った。  
「最悪弾切れのまま囮として戦う羽目になるかも…ね?」レジーナも言った。  
「ひるむな!C130は何としてでも守り抜く。敵に飲まれたら終わりだ!!」ゼンガーは言った。それにこうも考えていた。  
そう、いざとなれば…自分のとりわけ目立つ愛機だけを囮にすればいい。  
だが、その決意はどうやら無駄に終わりそうな気がして、そしてそれは現実になった。  
はるか上空からタイフーンのエンジン音をも上回る竜の咆哮のようなエンジン音がかすかに聞こえた。  
「まさか・・・」柊は呟く。それは紛れも無い、彼にはおそらく一生忘れることの出来ない、  
ロールスロイス・バハムートMkVのエンジン音だった。  
上空から10発ものAMRAAMが飛来した。それは次々とドラゴンに炸裂する。  
突然上空に現れた謎の戦闘機、逆ハの字型に開いた垂直尾翼、軸間が比較的離れた双発、先端に下反角のついた  
デルタ翼の主翼の無尾翼型で、コクピットの後ろには同じく逆ハの字型に開いてついたカナード翼がある。  
その戦闘機はマッハ2以上で突入、すれ違いざまにドラゴンを2匹機関砲で撃墜。8Gで旋回してほとんどスピードを  
変えずに旋回、サイドワインダーを発射して離脱、生き残ったドラゴンの騎士たちは次々と  
レッドタイガーを放ったが、謎の戦闘機は絶大な加速でこれを振り切った。  



669  名前:  ACE  03/04/28  21:29  ID:???  

その戦闘機は再びターンしてドラゴンの群れに突っ込む。  
騎士たちはレッドタイガーやシューティングスターで迎撃したが、謎の戦闘機は機体を  
バンクさせずに右左と高速で蛇行しそれらをかわしていく。そして直撃しそうになった  
レッドタイガーを通常の戦闘機とは比べ物にならないロール率でローリング、ギリギリで  
かわす。  
この場に居合わせた誰もが、この謎の戦闘機の動きに心を奪われていた。が、敵だけは  
例外だった。「化け物が!!」あるドラゴンの騎士はそう叫ぶと謎の戦闘機の真上から  
急降下一撃離脱攻撃をかけようとした。  
「唯!!」柊は叫んだ。必殺のタイミング、回避不能。だが、予想を裏切ることに関しては  
その戦闘機は長けていた。  
その戦闘機は「コブラ」に突入、ただしマッハ1.8で、しかも通常の数倍の速さで機首  
を持ち上げた。ドラゴンに正対した戦闘機の垂直尾翼の間を騎士の放ったレッドタイガーが  
すり抜ける。そして戦闘機はAMRAAMを発射、またすぐに機首を上げ、そのまま回転、  
下を向いた。ミサイル着弾、爆発と同時にバーナーオン、全速離脱。  
そしてその戦闘機は何事もなかったかのようにC130のエスコートについた。そう、  
「何事も無かった」かのように。  

飛行場に着くなり、柊は一緒に着陸した戦闘機に駆け寄った。ラダーをあがり、救急  
隊員に抱えられている気絶したパイロットを抱きかかえ、ヘルメットを外した。そこには  
肩のあたりまである栗色の髪の美しい女性が目を閉じたままの姿があった。  
「唯!返事をしろよ!頼む!返事をしてくれぇっ!!!!」柊の声と救急車のサイレン音だけが  
むなしく響く。  



681  名前:  ACE  03/04/30  18:46  ID:???  

では本日分のうpを…。  

「またこの『ヴァルキリー』を見ることになろうとはな…。」霧島は格納庫の前で  
呟く。そこには先ほど柊たちの命を救った戦闘機があった。  
「柊はどこだい、村雨さんよ?」霧島は村雨に尋ねる。「隊長なら医務室におられます。」  
村雨は淡々と答える。「そうか、まあいいや、色々あったんだよあの二人、  
ほっといてやろう…。」霧島は沈んだ声で言う。  
だがその時、基地に面した道路の方からときの声が聞こえた。霧島と村雨は可能な  
限りの状況の推定をする。  
「これは…まさか…」「隊商のふりをした敵の奇襲か…。すぐに全員を招集せねば  
ならないか…。」二人は武器を取って走る。霧島はニューナンブとSATのサイド  
アーム選定で候補にあがっていたサンプルのマニューリンMR73を、村雨は米軍  
供与のPSG−1用ストック付きのG3−SG/1を取った。  


682  名前:  ACE  03/04/30  19:07  ID:???  

医務室  
ベッドで眠っているあの戦闘機のパイロット、その横に座っているのは柊だった。  
ただその寝顔をじっと見つめている。だが、そこにときの声が聞こえてきた。  
それで彼女が目を覚ます。  
「何…?」「じっとしてろ、迂闊に動くんじゃない。」柊は言うと、9mm拳銃を  
抜き、彼女を抱きかかえた。  
「ちょっと!何すんの!?」「敵の奇襲だ!もっと安全な場所へ移動する。掴まってろ  
走るぞ!」  
柊は彼女を抱きかかえて部屋を出、一目散に司令部の方へ駆けた。途中で、廊下の  
曲がり角から敵兵が飛び出した。剣を突き出して襲い掛かってくるが、柊は剣を  
銃で受け止めた。が、こちらは片手、向こうは両腕で力を込めてくるが、すぐに  
力が抜けて、がくりと倒れた。その後ろには剣を手にしたカイルがいた。  
「柊さん!無事ですか?」「ああ、何とかね、助かった。この人を連れて行く、  
援護してくれ。」「分かりました。」カイルは答えると、新装備のレミントンM87  
0(エクステンデッドマガジン、固定ストック)を構え、柊と共に走り始めた。  
そして司令部に着くと、そこの衛兵に彼女の保護を任せ、味方の援護に向かおうとした。  
「ねえ、雄二(ユウジ)…」彼女は柊に話し掛ける。「心配すんな、唯。こんなところで  
死ぬつもりは無い。さあ、カイル、行くぞ!」決意に満ちた顔で柊は言い、カイルも  
それに了解と答えて、二人は走り出した。  



697  名前:  ACE  03/05/02  18:41  ID:???  

では本日分。  

村雨は滑走路近くの草地に伏せると、G3を構え、コッキングハンドルに通した紐の  
輪に指をかけ、一気に引いて、手を離した。勢いよくハンドルが前進、初弾が装填される。  
スコープには突撃してくる人間とオークの混成部隊が映る。そのうち一人に照準をあわせ  
トリガーを引いた。敵兵が鮮血を撒き散らして倒れる。もう一人、さらに一人と  
仕留めていく。敵兵たちも危険と判断したのか別の方向へ逃げる、がそこに5.56mm弾  
の雨が降り注ぐ。  
「さすがですな村雨1曹。」鮫島がMINIMIを構えている。二人は十字砲火で次々敵兵を  
葬ったが、数に勝る敵はしゃにむに突っ込んでくる。  
「霧島警部補!」「よっしゃあ!!」鮫島の声で霧島が飛び出す。霧島はマニューリン  
とニューナンブを両手に構えて、敵陣に躍り込む。両手のリボルバーが38口径の強装弾  
を次々と吐き出す。弾が尽きるやいなや霧島は銃を戻し、刀を抜いて敵兵に斬りかかる。  
敵兵は剣で受け止めようとしたが、霧島は剣ごと敵兵を切り捨てた。アレクサンドルの  
魔法で強化された刀身は恐ろしいまでの切れ味を発揮した。そのまま剣を鞘に収め、  
居合抜きを放つ。数人の敵兵が倒れた。  
「いやいや、ここまで強くなってるとはね…。」霧島は自分の剣の切れ味に驚嘆した。  



699  名前:  ACE  03/05/02  18:59  ID:???  

格納庫裏ではパイロット達までも銃をとって応戦していた。  
「レジーナ、伏せろ!」ケビンはM9でレジーナの後ろに迫ったオークを撃つ。  
「うわ…。」二人は初めて銃で撃たれて死んだ生き物を見て、吐き気をおぼえた。  
「まずいな…。防ぎきれん。」ゼンガー少佐も弾切れになったG36を捨ててUSP  
を抜く。  
「苦戦しているようだな。これが本当の『闘争』というものだ。」ゆらりとヴァルター  
が出てきた。両手に銃身の下に大きなスタビライザーのついたイーグル6.0を持って  
いる。  
「あんたは…柊3尉のとこの…。」「ゼンガー少佐、手を貸そう。」ヴァルターは  
迫り来る敵兵を確認すると両手の拳銃を向けて次々と放つ。次々と敵兵は倒れるが  
屈強なウルクはそれでも突っ込んできた。  
「ほう…良かろう。」ウルクはすでに剣を振り上げていたのに、ヴァルターは銃を下に  
向けている。だがウルクが剣を振り下ろそうとして瞬間、銃身の下のスタビライザーから  
ナイフが飛び出し、逆袈裟切りで下からウルクを斬り捨てた。そしてもう一人のウルク  
の胸にナイフを突き刺し、トリガーを引いた。  
管制塔周辺は敵がどっと押し寄せていたが、次々に数が減っていった。アレクサンドルが  
両手の十四年式銃剣を振るって敵兵を次々と切り捨てたからだ。敵兵はアレクサンドルに  
飛び道具で対抗しようとしたが、アレクサンドルは無数の銃剣を投げて敵兵を一掃した。  


700  名前:  ACE  03/05/02  19:17  ID:???  

管制塔から連絡が入った。北東の方からサイのような獣、ガールが突進して来ると。  
そしてガールが滑走路を横切って管制塔に突撃してきたが、そこにカイルが立ちはだかる。  
「さあ、来い!!」カイルの姿が「魔人」に変わる。カイルはショットガンを片手で  
構えると、ガールに向けた。そして引き金を引く。  
ダブルオーパックの散弾すべてが20ミリ機関砲並みの威力で突き刺さった。次々と  
ショットガンを撃ち込まれてガールは力尽きる。  
そこにドラゴンが一匹一直線に突っ込んできた。が、カイルとドラゴンの間に柊が  
立ちふさがり、M203付きに改造された89式小銃を構え、右手をマガジンに  
左手をランチャーに添えて、トリガーを引いた。放物線を描いて飛んだグレネードは  
見事にドラゴンに命中。  
気付けば、敵も退却を始めていた。  

柊は撃墜したドラゴンに歩み寄ると、そのうろこを1枚はがした。そして、建物から  
出てきた椎名唯3尉にそれを渡す。  
「何これ・・・?」「ドラゴンのうろこさ。」「うろこって…何でこんなものを?」  
「いいじゃねーか、綺麗なんだから、さ。」そう言って、柊は宿舎に戻っていった。  
「椎名さん…でしたっけ?」カイルが話し掛けてくる。「君は…。」  
「ここではね、ドラゴンのうろこを女性に渡すことは、愛を誓う印なんです。」「え…?」  
唯は顔を赤くする。「どこの世界でも、異性を想う気持ちは変わらないんですね。」  
そう言って去るカイルの背中を、唯はいつまでも見つめていた。  



718  名前:  ACE  03/05/03  13:00  ID:???  

なんかキャラが増えてきました。まとめて紹介します。  
・カイル・エルマリート・ヴィジャヤ  
この世界の少年剣士。17歳。「魔人」に変身する能力を持つ。  
・ヴァルター・ヒュッケバイン  
「不死の王(ノーライフキング)」の異名を持つ吸血鬼。カイルの部下。  
・アレクサンドル・シュマイザー  
魔法と剣を極めた戦士。56歳。カイルの部下。  
・柊雄二  
陸上自衛隊3尉。27歳。自衛隊・国連軍共同特殊部隊「スパルタン」分隊隊長。  
・霧島雅人  
福岡県警暴力団取締係警部補。拳銃射撃および居合の達人。スパルタン分隊に  
出向中。  
・村雨秀一  
陸上自衛隊1曹。30歳。スパルタン分隊の狙撃手。  
・鮫島大介  
陸上自衛隊2曹。27歳。スパルタン分隊のミニミガンナー。  
・武藤猛(猛)  
陸上自衛隊3曹。28歳。スパルタン分隊のカールグスタフの砲手。  


719  名前:  ACE  03/05/03  13:20  ID:???  

訂正。(猛)は読み方を書いたつもりが変換してしまいました。  
(たけし)と読んでください。ではキャラ紹介続き。  
・トーマス・ミラー  
SEALS予備隊員。32歳。曹長。スパルタン分隊副隊長。  
・竜崎一哉(かずや)  
陸上自衛隊3尉。22歳。徒手格闘及び銃剣術の達人。スパルタン分隊所属。  
・椎名唯  
元航空自衛隊3尉。27歳。新型高機動戦闘機「X−3ヴァルキリー」の  
元テストパイロット。  
・ゼンガー・ハルトマン少佐  
ドイツ連邦空軍のトップエース。30歳。愛機を「トロンベ」と呼ぶ。  
黒いユーロファイター・タイフーンに搭乗。  
・ウラジミー・スルゲイレフ大尉  
ロシア空軍のテストパイロット。ベルクトに搭乗。  
・レジーナ・マッケンジー中尉  
米海軍パイロット。27歳。F14Dに搭乗。  
・ケビン・マクダネル中尉  
米海軍パイロット。27歳。F14Dの後席オペレーター  
・リヒター・フォン・ラインハルト大尉  
ドイツ連邦空軍のユーロファイター乗り。ゼンガー少佐のウイングマン。  




723  名前:  ACE  03/05/03  14:28  ID:???  

では本日分を。  

基地のブリーフィングルームで柊は作戦の説明を始めた。  
「今回の我々の任務は、ストーンヘッジ用砲弾の原材料となるオリハルコンを  
産出している鉱山の内一つの奪取作戦の支援だ。」  
「隊長、質問があります。」カイルを除けば最年少の竜崎3尉が言った。  
「鉱山基地を一つ制圧したところで、ストーンヘッジを止められるとは思えません  
が…。」「それは俺も疑問に思ったことだ。そこで、この命令の目的について  
聞いたところ、この作戦には、未知の金属であるオリハルコンの鉱山を手に入れて  
研究するところにある、とのことだ。さらに言えば、この目的地「リャド鉱山」  
にはオーランの精鋭部隊「フェダーインサダーム」の一部が駐屯している。  
我々を使うのはそのためなんだ。」柊は説明した。  
「隊長、その部隊の練度はどの程度なのですか?」ミラー曹長が尋ねた。  
「どうやらエルフィール側の密偵の報告によると、対銃器用の戦術を開発中らしい。  
それに、『リョフ』というオーラン最強と言われる豪傑が指揮をとるらしい。  
戦意も高く、最後の一兵まで戦う精強な軍だ。接近戦は可能な限り避けろ。  
我々はこの中核となる「リョフ」の部隊を一点突破で叩く。あとは指揮系統を失った  
残りの敵を友軍が掃討する。以上だ。  



727  名前:  ACE  03/05/03  15:10  ID:???  

では続き。  

リャド鉱山近くのフェダーインサダーム駐屯地。その近くにリョフの屋敷がある。  
「パパ、おかえりなさい。」帰ってきたリョフを娘の小さな女の子が迎えた。  
それと同時に並んでいたメイドたちも頭をさげる。  
「ああ、ただいま。さあ、ごはんにしよう。」リョフは女の子を抱きかかえると  
食堂へと向かった。そして食堂に入ると、美しい妻が出迎えた。  
「まあ、おかえりなさい。」「ああ。ただいま。」そう言って皆テーブルにつき  
食事が始まった。  
「パパ、今日はどんなことをしたの?」「ああ、いつも通りの訓練さ。別の軍隊から  
お前たちを守ってやらないとな。」「パパかっこいい!」  
だが娘とは対照的に妻は沈んだ顔で言った。「あなた、ペンネのジエイタイが近々  
攻勢に出るって噂が…。」「…密偵から報告があった。明日にでも攻撃が始まる  
らしい…。すまないな。ここも戦場になるかもしれんが、絶対に守ってみせるよ。」  
「…貴方に…軍神のご加護がありますように…。」妻は祈った。  
「ねえ、パパ!今日もお話を聞かせて!」娘は無邪気に言う。「ああ、いいとも…。」  
リョフはそう言うと、娘と一緒に食堂を出る。その背中を、妻はじっと見つめていた。  


728  名前:  ACE  03/05/03  15:42  ID:???  

あ、忘れました。第2話のタイトルは「総攻撃」です。では続き。  

日本標準時午前6時  
陸上自衛隊ペンネ駐屯地から次々と車両が走り出していった。そのなかに、スパルタン  
分隊のライトアーマーと高機動車、それに竜崎の偵察用オートバイの姿があった。  
そして鉱山から5キロの地点でフェダーインサダームの主力部隊と自衛隊が激突した。  
次々と装甲車から下車して銃火を開く普通科部隊を尻目に、スパルタン分隊は一直線に  
敵陣へと斬り込んで行く。だが、そこに、木を束ねて盾としたものを押し立てた戦列が  
立ちふさがった。  
「あれが銃器対策戦術か…。武藤、グスタフでやれ!突破する!!」柊の指示通り  
高機動車から身を乗り出した武藤はカールグスタフを発射。戦列に穴を開ける。  
そこを一気に突破。そこに騎馬隊が襲い掛かる。今度は高機動車に据え付けられた  
キャリバー50やライトアーマーのミニミ、それに竜崎の89式が火を噴き、騎馬を  
薙ぎ倒しながら突き進む。上空にはちらほらと友軍機が敵のドラゴンを撃墜している  
のが見えた。そこにはあの「黒騎士」の姿も見える。  
そして、敵陣の中心部に、一際大きな、真っ黒な鎧を着た男を発見した。  
「奴がリョフだ!突っ込め!」柊はそう叫んだ。  

上空では唯のX−3がTARPSを装備して警戒に当たっていた。  
「CAUTION.現在戦闘エリアに向けてアンノウンが多数接近中。3時間後に  
戦闘エリアに到達すると推定します。」支援用AI、アリスが告げる。  
「アンノウン?でもこれは地上を移動しているわ。ドラゴンじゃなければ…一体何?」  


729  名前:  ACE  03/05/03  16:21  ID:???  

ついに柊はリョフを捉えた。だがここで敵は思いもよらぬ行動に出た。  
なんと先ほどの盾を持った集団が分隊に四方八方から襲い掛かってきた。  
「まずい、囲まれる!武藤!」「分かってまさあ!」グスタフが盾を吹き飛ばす。  
が、だが吹き飛ばしたところに別の盾が割ってはいる。しかも屈強な男数人に抱えられた  
大きな盾の集団は一瞬にして柊たちを取り囲んだ。そしていくつかの盾が体当たりで  
車を止めてきた。その信じられないパワーに、柊の高機動車は止められ、それに従い  
ライトアーマーとバイクも止まる。完全に囲まれた。  
「く…まさかここまでとは。全員、下車!やむをえん、このリョフを倒せる機会を  
逃すわけにはいかない!」分隊員は全員下車した。そして剣や槍を振るって襲い掛かる  
敵兵と白兵戦に突入した。柊は敵集団に向けてM203を発射、だが敵はそれでも  
向かってくる。そこに、カイルが飛び出す。その姿は「魔人」。カイルの剣はあの  
長い長剣になり敵を薙ぐ。  
「さあ、突破を!」分隊はカイルを先頭に突撃。盾の戦列をカイルの雷が焼き払う。  
そこに騎馬隊が突貫してきた。鮫島のミニミと村雨のG3が馬上の敵兵を撃つ。  
横から襲い掛かる敵はミラー曹長と竜崎が次々と撃ち抜く。  
そこにあの黒い鎧の大男の馬が駆け込んできた。  
「ここまで来るその意気やよし、だが少々無謀すぎたな!」リョフは言った。  
「へっ、狙い通りに出てきやがったか、霧島ァ!!」柊は叫んだ。そこに霧島が  
飛び出す。そしてリボルバーでリョフの馬の足を撃った。リョフの馬はその場で  
たまらず倒れる。が、リョフは飛び降り、手にした巨大なハルバードを構えた。  
「さあ、異界の剣士よ!このリョフと勝負を!!」「望むところだぜ!!」  
霧島は答える。するとリョフが大地を震わすような大声で叫んだ。  
「者ども!!この戦いは一対一、手出しは無用だ!!しかと見るがよい!!」  
その気迫に、敵も分隊員もみな飲まれた。  





739  名前:  ACE  03/05/03  21:02  ID:???  

あ、忘れてた…>オリハルコンなどの魔法石、さらに大量の金も産出していた  
自前で持つのも大事ってことで…。もっともあそこが本当にオリハルコンしか  
ないのかってのは言い切れないんですが…。  
さて続きを…。  

スパルタン分隊、フェダーインサダーム、そして後続の自衛隊の兵士たちが見守る  
中、霧島とリョフは静かに向き合った。  
「異界の剣士よ、名は?」「霧島、雅人。」「キリシマか…。すまんな。私とて  
負けるわけにはいかんのだ。家族を守るためにな…。」リョフは静かに言った。  
霧島は黙って刀の柄に手をかける。そして腰を落として構えた。リョフは愛用の  
巨大なハルバードを構える。しばしの沈黙。だがそれはすぐに鞘走りの鋭い音に  
破られる。  
霧島の鞘から銀の光が奔る。だがリョフはそれを冷静に受け止める。火花が散る。  
すぐに霧島は鞘に刀を戻し第2撃を繰り出そうとしたが、そこにハルバードが  
振り下ろされる。大振りの武器にはあるまじき速度で、霧島はギリギリでかわす。  
空を斬ったハルバードは地面に刺さり、あろうことか砕けた土が舞い上がる。  
「パワーもスピードもあるのかよ!」そのまま踏み込んでリョフが次々と放つ連撃  
を霧島はかわすのに徹した。しゃがんだり身を捌いたりする度にハルバードが空を  
斬る音が聞こえ、神経が擦り減っていく。  


740  名前:  ACE  03/05/03  21:50  ID:???  

リョフは右から左にハルバードを振った。霧島はバックステップでかわさず、  
背を向けるようにして右足を振り上げ、ハルバードを下から蹴り上げて跳ね上げた。  
大きく武器を跳ね上げられてリョフに隙が出来る。そこに霧島は居合を放った。  
狙いは首。だがリョフはわずかに首を動かし、刀は鎧にぶつかって火花をあげる。  
今度は霧島に隙。リョフは今度は左から右にハルバードを振るう。  
「これで終わりだ!!」「まだだァーッ!!」霧島はバック宙でまるで棒高跳びの  
ようにハルバードをかわす。切られた少しの髪がはらりと落ちる。そして着地した  
霧島は、刀をリョフの鎧のわきの部分の隙間に突き刺した。  
リョフは顔を歪めて崩れ落ちる。霧島は剣を抜き、おろす。  
「…見事だ。キリシマ。最高の戦士だよお前は…。」リョフは苦しそうだが、  
わずかに微笑んでいた。「心配すんな。家族のこと、俺がなんとかしてやるよ。」  
霧島はそう穏やかに言った。「そうか…すまない…。」そう言ってリョフは目を  
閉じた。  
するとフェダーインサダームの兵士たちは次々と武器を捨てて投降した。  
「な…なにを…。」柊は驚いて言った。「我々はもしリョフ殿が戦死した際には  
リョフ殿のご家族を死んでも守る気でしたが、リョフ殿は異世界の軍隊は寛大  
だから、もし家族のことを保証してくれるのなら投降しろとおっしゃりました。  
よって、投降します…本当なら、敵であるそちらを信用するのは危険ですが、  
リョフ殿の言うことに間違いはありません。」  
次々と武器を捨てる兵士たち。だが、その目にはいまだ闘志がみなぎっている。  
「家族を守る…か、それはそうだな。みんなそうだ。こいつらそのために生きてる。  
俺たちは、けして平和の解放軍ではないんだ。」柊は言った。  


741  名前:  ACE  03/05/03  22:34  ID:???  

リョフの屋敷にスパルタン分隊は入った。  
「あ、貴方たちは!出て行ってください!」メイドたちがとどめようとする。  
「すまないが、ここの、リョフ殿の奥様に話がある。通してもらおう。」ヴァルター  
はそう穏やかに言った。するとリョフの妻と娘が出てきた。  
「…殺しなさい…。でもこの子だけは…。」「リョフ殿の遺言もありますし、  
我々はあなた方の安全を保証します。」柊は静かに言った。  
「ああ、あなた…。」妻は泣き崩れた。  
「ねえ、お兄ちゃん。」娘は霧島に聞いてきた。「パパは?パパはいつ帰るの?  
ねーえー、教えてよー。」にこにこしてたずねる女の子。「ねーえー、教えてよ  
お兄ちゃん!」霧島は、何も言えないままたたずんでいた。  


747  名前:  ACE  03/05/03  23:34  ID:???  

屋敷を後にする分隊。外まで聞こえる泣き声が容赦なく霧島を責め立てる。  
「柊3尉、聞こえるか。」上空を監視中の空中コマンドポストから連絡が入る。  
「柊3尉、大変だ。信じられんだろうが…ロボットの軍勢が接近中だ。」  
「はあ?」柊は呆れた声で言った。「ロボット…ミストラスのことか?」ヴァルター  
は言った。「ミストラス?」「作業用の大きな人形だが…戦闘用に改造し、  
人が乗って操るように改造したものを編成した軍をオーランは保有している。  
戦闘力はかなり高いぞ。戦闘機の空爆か戦車の一斉砲撃で叩き潰すしかない。」  

ヴァルターは言った。そこに観測ヘリから通信「来るぞ!!」直後、鉱山の後ろから  
数機のミストラスが背中からエネルギー風を噴出しながら飛び出した。  
みなその光景を呆気に取られて見ていたが、自分たちの目の前数十メートルに  
5メートルほどの巨体のミストラスが着地すると、自衛隊員たちは一目散に逃げ出した。  
「全員、後退!!」柊と武藤はグレネードとカールグスタフを撃ちながら後退したが  
ミストラスは構えていた盾で受け止めた。そしてまるで巨大なボウガンのような銃を  
抜いて撃ってきた。次々と車両が撃ち抜かれて爆発する。  
「戦車部隊は!特科の援護射撃はどうした!」「戦車部隊は現在ここから数キロの  
地点で猛獣部隊と交戦中!あの機動性でこちらの陣に入られては、同士討ちの危険も  
あって特科の支援砲撃は無理です!」そんな会話も聞こえてくる。  
そこに国連軍の戦闘機部隊が空爆を開始する。「うろうろするな!!」ゼンガー少佐  
はそう言うと、ガシャガシャ走るミストラスの一体に照準を合わせる。そしてMk82  
爆弾を投下、だが、ゆっくり落ちる爆弾を、ミストラスは戦車とは比較にならぬ  
瞬発力でかわす。「ちぃ、かわしたか。ならば!」ゼンガーは武装をガンに変更。  
急降下から超低空水平飛行、ガンのトリガーを引き、27ミリ弾の火線がミストラスに  
吸い込まれていって、ミストラスの頭部を撃ち砕く。だがミストラスの対空射撃が  
ゼンガーに殺到、ゼンガーはこれを回避した。  


748  名前:  ACE  03/05/04  00:23  ID:???  

「く…有効なのはガンだけか。これじゃ奴らを殲滅する前に普通化部隊が全滅する…。」  
ゼンガーは歯軋りした。「椎名君!X−3で援護してくれ!残念だが、我々だけで  
ミストラスを殲滅する!」「了解。もうやってますけど。」いつの間にかX−3は  
降下していて、また水平蛇行を続けながら接近する。「ガン攻撃モード。FCSを  
自動攻撃にシフト。照準内に入り次第発砲します。」アリスが答える。その通りに  
蛇行中に敵を照準内に捉えた時にだけ正確に発砲。だが距離があるためミストラス  
たちはステップで次々にかわし、通過したX−3に集中砲火、だが高速でシャンデル  
機動で離脱。光の矢ははるか後方を空しく通過する。  
「せめて『リベリオン』か『クバルカン』があればね、アレクサンドル。」カイルが言う。  
「そうでございますな…カイル様、『魔人』をまたお使いになるのですか?」「うん。  
仕方がないよね。ミストラス相手だ。みんなは下がってて。」カイルの姿が変わる。  
そして空中に飛び上がると両手に雷がみなぎる。それを見たミストラスはボウガン  
を撃ってきたが、透明な壁に当たってはじける。  
「カイル様、今です!」バリアを張りながらアレクサンドルが叫ぶ。「ああ!!」  
カイルは答えると、ショットガンを構えて、銃に雷を走らせた。そしてトリガーを  
引いた。散弾が一つの光の太い筋となって飛び、そして分裂。一発一発が120ミリ  
戦車砲並みの威力のホーミングレーザーが9発飛んで、盾ごとミストラスを9機  
撃破した。しかしミストラスはまだかなり残っている。戦車部隊はいまだ足止めを  
くらっていたようだった。「どれだけ助けられるんだ、僕は…。」カイルは一人呟いた。  
そこに空中から戦場全体を監視していたAWACSから通信が入る。  
「現在アンノウンが戦闘エリアに向け超低空を高速で飛行中だ。間もなく接近する。」  



749  名前:  ACE  03/05/04  01:08  ID:???  

「くそ、一体何がくるってんだ!」霧島は怒鳴る。「霧島さん、たぶん味方です。  
分かるんです。」「味方…知り合いか?」「はい。ほら、来ますよ。」  
カイルは地平線のある一点を指差した。みなそちらを向いた。すると地平線から  
1機の大型の、全長10メートル以上はあるミストラスが姿を現した。腕を組み  
地表すれすれを土煙を上げながら突進する。そして自分の全長の1.6倍はある  
長い片刃の細い長剣を横一文字に構えて斬り込んで来た。そして剣を振りかぶると  
剣の形が変わり、幅のかなり広い両刃の剣になった。そしてその剣を横に薙ぎ払う。  
すると剣の先端から光の剣先が伸び、数十倍のリーチでミストラスを全て一刀両断した。  
その光景を見ていた一同は、カイルとアレクサンドルを除き皆またもや呆気にとられていた。  

その大型のミストラスは柊たちの目の前に着地した。中から一人の剣を背負った  
男が降りてきた。  
「カイル、久しぶりだな…。師匠もお元気そうで…。」男はそういった。「ガイさん、  
助かりました。ありがとうございます。」カイルはそう言い、アレクサンドルも頷く。  
「カイル、この方は…?」柊は尋ねた。「ああ、この人は僕の兄弟子でアレクサンドルの  
一番弟子、ガイ・グランベルト将軍です。」「ガイで結構ですよ。」ガイは言う。  
「ジエイタイの皆さん、私は特使としてここに来ました。あと3日後にこちらの  
全権大使が到着します。どうか、受け入れを許可願います。」「それはいいでしょう  
が…一体どこの特使でしょうか?」  
「はい…。この大陸から海を遠く隔てた国家、アスガルド公国からです。」  



752  名前:  ACE  03/05/04  09:42  ID:???  

どこかで見聞きした事があるような名称が羅列されるのは少々萎え。>  
全くもって申し訳ない…。  
では第3話を…。  

陸上自衛隊のペンネ駐屯地、そこの防空レーダーに巨大な影が映った。  
「何だコリャ?」「時間は…あの全権大使が到着する時刻ですね。しかしこれは…。」  
CAPに上がっていたF15のパイロットはこの影の正体を肉眼で捉えた。  
「こいつぁ…空中戦艦てやつか…。ラピュタみてーだな…。」  

駐屯地に戦艦が降りた。飛行船のような船体に多数の砲塔が据え付けられ、黒い鉄  
の装甲が全面に張り巡らされている。  
「こんな重い物が空を飛ぶとはな…。」ゼンガー少佐はそれを見てつぶやく。  
「ゼンガー少佐、勝てますか、あなたならこの『アルビオン』に?」ガイが言う。  
「現代戦はチーム戦です。私たちのの世界では、あなたのような強力な戦士が、あの  
ミストラスのように強力な兵器を用いて単独で戦況を変えるようなことはありえない。  
あくまで集団の戦いなんです。かつては、そのようなこともあったらしいですが…。  
ですから、私が勝てるか?というのは私には全く意味のない質問です。ですが…、  
『私達』が勝てるか?と言えば、勝てます。あのような大艦巨砲主義は私たちの世界では  
とっくに廃れている。断言しましょう。たとえどんな強力なものを相手にしようと、  
相手が組織的集団戦を行わぬ限り、我々に負けはありえません。」  
ゼンガーはそうきっぱりと言った。  





770  名前:  ACE  03/05/04  21:53  ID:???  

てさりすとさんキター(・∀・)−!!あやなみが…。  
続きいきます。  

その戦艦から一人の中年の豪華な軍服を着た男が降りてきた。その横には美しい  
妻らしき女性もいる。そして、この駐屯地の指揮官の前に歩み出た。  
「はじめまして。ここの責任者の河野です。」指揮官は敬礼をした。  
「アスガルド公国第12空中機動旅団指令、ベルゲン・ガンドール・ヴィジャヤ  
です。」その男はそう言った。「残念ですが、こちらの国の為政者はまだ到着しては  
いません。」「いえいえ、突然押しかけたのはこちらです。いくらでも待ちましょう。  
他にもすることがありますし。」ヴィジャヤ将軍はそう言って周りを見回す。  
「うちの剣士が一人来ているはずです。彼と共にここの視察をしたいのですが…  
よろしいか?」「ええ!もちろんです。どうぞ!!」指揮官は直々に案内を始めた。  
将軍は妻と共に駐屯地内を見て周り、最後にスパルタン分隊の所へ来た。分隊員は  
全員一直線に並び敬礼する。だがカイルとヴァルターだけは違った。  
「…父さん…母さん…。」カイルは絞り出すように言った。その場にいた全員が  
固まる、アレクサンドルとガイを除けば。  
「カイル…もしかして…この方々は…」柊は慌てたように言う。「はい…僕の  
両親です。」  




771  名前:  ACE  03/05/04  23:14  ID:???  

カイルとその家族の久々の再会。柊たちは部屋を出た。  
その夜、ベルゲンが柊たちを訪れた。  
「夜分遅く申し訳ない。ですが、皆さんがカイルを温かく迎えてくれて、お礼が  
言いたいのです。」「そんなことはありません。彼には何度も助けられました。  
本当に感謝しています。」頭を下げるベルゲンに柊は言う。「アレクサンドル、  
よくここまでやってくれた。本当に感謝する。」「は…光栄です。」アレクサンドルは  
深々と頭を下げる。「アレクサンドルさん、あなたは…?」「はい、元ヴィジャヤ家  
家臣です。」二人の意外な出身に皆驚く。「…実の子でないあの子を大切に育てて  
来ましたが、国ではあの力ゆえ嫌われてあの子は国を飛び出しました。あなたがたの  
ような人々に出会えて、幸せです。」「カイル君は」竜崎が話し始めた。「弟みたいな  
存在です。正直頼りない兄貴ですよ、情けない。」「そりゃお前だけだよ!!」霧島が  
つっこみ、皆一同笑い出す。  
「ところで」ベルゲンは話題を変えた。「そちらも大変ですね、全くの異世界に  
召喚されて。先日もわが国にたまたま寄ったのか、補給をわが国で受けた自衛隊の  
船があったそうです。詳しくは知りませんが。」みなその言葉に凍りついた。  
もともとアスガルドはある事情により他の国との国交があまりない。国交がある  
他の国もその事情により日本には今までその存在を隠していた。アスガルドに補給に  
立ち寄る船は、存在しないはずだ。  


772  名前:  ACE  03/05/05  00:38  ID:???  

駐屯地から数百キロ離れた海上をX−3が偵察飛行していた。海上にかなり大きな  
反応があった。「IFF、所属不明。」「そりゃそうでしょ…って、応答があった  
の!?」「はい、ですが、NATOでもワルシャワのものでもありません。警告。  
アンノウン2機が海上の物体から出現。あらゆる  
周波数でこちらに呼びかけています。」「回線を開いて!」回線を開き、唯は話だす。  
「こちら、航空自衛隊・国連軍合同空軍第5航空団第502飛行隊所属の椎名唯3尉。  
そちらの所属をお聞かせ願いたい。」「はあ!?」なんと返事は日本語で返ってきた。  
「航空自衛隊だあ?内地の部隊が何やってんだよ国連軍と!?」「あのねえ、あんた  
誰って訊いてんのよ!さっさと答え…」「警告。アンノウン右下方を通過します。」  
唯は怒鳴ろうとしたがやめて右下方を見た。そこには2機の戦闘機が飛んでいた。  
だが、無尾翼、外側に上反角がついたデルタ翼、双発双垂直尾翼のカナード機。こんな  
機体は自衛隊には存在しない、だがその主翼にはあろうことか日の丸が描かれている。  
「俺たちはなぁ、統合自衛隊航空隊、第5航空団第202飛行隊だ!!」ありえない、  
と唯は思った。第5航空団の202飛行隊はとっくに解散している。それ以前に統合  
自衛隊とは…?  
「そこのメガフロートから飛んできたんだよ!」唯は目を凝らして前方を見る。  
月の明るい光に、誘導灯のような光のぽつぽつ灯った全長10キロほどの人工島らしき  
ものがみえた。  
「な…何あれ…。」震えた声で唯は言う。「おいおい、知らねぇのか!?5年前に  
出来たばっかだろうが!!」相手のパイロットは乱暴に答える。「5年前って…?」  
「アフォか!?2038年のことだろうが!!」