523  名前:  292  03/06/17  17:07  ID:???  

リレー小説第1回(1/3)  

彼が目覚めた瞬間に最初に感じたのは、ひどい不快感だった。肉体的にではなく、精神的にひどい疲れを感じている。うっすらと目を開ける。飛び込んできたのは、どこかで見たことのある灰色ののっぺりとした天井。  
(どこだ、ここは・・・)  
まるで寝ぼけきったかのように、頭がうまく回らない。冷え切った体に鞭打って上体を起こすと、体の間接がバキバキと鳴った。着慣れたボディアーマーが、ひどく重く感じる。  
ボディアーマー?彼はとまどった。なぜ自分はこんなものを着ている?あわてて立ち上がると、何かががしゃりと音を立て、床に転がり落ちた。今度こそ彼は本気で驚いた。  
銃だ。それも、軍用の小銃。  
自分はこれを知っている。これは・・・89式小銃。陸上自衛隊の、現正式採用自動小銃。その弾倉の側面に開けられた残弾確認用穴からは、金色の5.56mm×45弾が顔を覗かせていた。装填されている・・・!  
自分の体を見ると、見慣れた数々の装備品を身にまとっている。迷彩服、マガジンポーチ、銃剣、インカム・・・フル装備だ。やや場違いに感じるのは、腰に吊った一個のスタングレネード。  
腕を見ると、デジタル式の腕時計がストップウォッチ機能のまま、時を刻んでいた。5時間28分。自分はそんなに寝ていたのか。  
ここでようやく彼の頭は正常な判断力を取り戻しつつあった。  


524  名前:  292  03/06/17  17:33  ID:???  

リレー小説第1回(1/3)  

自分は・・・戸田真一。陸上自衛隊3曹。数々の苦行をのりこえレンジャー過程をクリアし、現在陸自が新たに設立した対ゲリラ部隊に引き抜かれ、アメリカの某所で米特殊部隊の講習を受けている。  
そうだ、自分は屋内におけるCQB訓練を、訓練用の建物・・・いわゆるキリングハウス内で行っていた。内部に潜入し、テロリストのいる部屋へスタングレネードを投げ込み、射殺する。何度かの失敗のすえ、  
ついに部屋へとたどり着き、スタングレネードを投げ入れ、目標を照準に捉え・・・それからどうなった?  
見ると、自分がいる部屋の隅にはひどく濃い顔つきの男の張りぼてがぽつんと置かれている。弾痕がないところを見ると、発砲する前に意識を失ったんだろう。  
何かがおかしい・・・。静かだ、静か過ぎる。普段ならほかの訓練生の掛け声やらで、多少はにぎやかなはずだが、そういった声は一切聞こえない。戸田は89式を拾い上げ、窓から外の様子を伺い、目を見開いた。  
思考を停止せざるを得なかった。見慣れた訓練所の風景は跡形もなく消えうせ、その代わりにうっそうと茂る樹海があたりを占めていたのだ。  


525  名前:  292  03/06/17  17:36  ID:???  

リレー小説第1回(3/3)  

「・・・こちらB班、戸田。応答願います」  
インカムで仲間に問いかける。応答が無い。  
建物の外へ出ようとして、戸田は足を止めた。隣の部屋が、無い。今いる部屋と同じコンクリートむき出しの隣部屋は消えうせ、  
そこには先ほどの窓の外と同じ風景が広がっていた。ここでようやく建物全体ではなく、自分のいた部屋のみがそっくり樹海の真ん中に放り出されたということに気が付いた。  
「・・・まいったな」  
異常事態の連続に戸田の混乱しきった頭で最初につむぎだした所感は、以外にも日常的だった。  



543  名前:  名無し三等兵  ◆XqrQAy2Hxg  03/06/19  19:10  ID:???  

rire-  syousetu  1  

彼は改めて室内を見渡し天井に備え付けられていた監視カメラを見つけ手を振ってみる  
「おーい。みえてるか〜〜〜〜?!・・・って電気通ってないな。こいつ」  
カメラは彼を無視し室内に仕掛けられたバリケードとマンターゲットを見つめ続けていた。  
小銃の先でカメラをつついてみたが駄目だった。室内からは確認できないが恐らくケーブルがどこかで寸断されているのだろう。  
「本格的にやばいな・・」  
とりあえず状況確認の為に彼はドアを開けて外に出てみる事にした。  
万が一の際のため片手で小銃の安全装置をはずし逆の手でドアノブを捻り数センチの隙間をつくりそこから外をうかがう。  
予想どうり見渡す限り  森  森  森。  
見える範囲に人の気配が無いのを確認した彼は室内で小銃を構えなおし小銃のの先で一気にドアを開けて飛び出しその身を地面に投げ出した。  
そよ風がドウランで迷彩色に化粧された彼の頬を撫でる中しばらくそのままで付近を伺う。だが人どころか動物の気配すらしていなかった。  
訓練開始時間が2時半  既に五時間以上たっているというのに太陽は頭上から彼を見下ろしその視線が彼の体をボディアーマー越しに温める。  
「人の気配は全くない・・な」  
そう独り言を呟いて体を起こし中腰になり改めて先ほどから電源を入れっぱなしであったインカムで連絡をとろうと試みる。  
「こちらB班、A班、およびC班各員へ、この通信が聞こえたら返答しろ。」  
かれは付近をうかがいながらしばらくその場で待機する。いつもなら間髪居れずに返答が帰ってくるのだが全く返事が返ってくる様子はない。  
それどころか電波すら飛び交っていないのか電波を使用する機械  特有の「ザーーーーー」というような雑音すら全く入ってこない  
彼はため息をついて空を見上げた。そして思いがけずある物を発見した。  
「・・・・なんだぁ?ドラゴンかありゃあ?」  



544  名前:  名無し三等兵  ◆XqrQAy2Hxg  03/06/19  19:11  ID:???  

rire-  syousetu  2    

真っ黒な体に大きな翼、長い首に長い尻尾、そんなものは彼の知る限りゲームの中に出てきたドラゴンしかない。  
先頭の毛色の違うドラゴンがどうやら追われているらしい。後を追うドラゴン達の背中から次々と光が放たれ先頭のドラゴンを追い詰めていく。  
先頭のドラゴンが右に左にロールし急旋回で光を交し更に旋回を続ける。だがついに光に捉えられ光はドラゴンの背中で爆発。  
追われているドラゴンは何とか姿勢を取り戻そうと翼をばたつかせるが  遂に失速。彼の居場所から数百メートル先に落下した。  
先頭のドラゴンを撃墜したドラゴンたちはその場でしばらく旋回を続けていたが戦果を確認したのか編隊を整え飛んできた方向に向かって飛び去っていく。  
彼ー戸田三曹はしばらく呆けた用に飛び去っていくまでドラゴン達を見つめて続けていた。  
「いったい何がどうなってんだよ・・・?」  
だがいくら考えてもドラゴンが日本に居たはずの自分の頭上で空中戦を行なっている理由など分かる訳もない。  
考えれば考えるだけ彼の頭は混乱していった。何とか落ち着こうと彼は頭を振りながら自分に言い聞かせる。  
「いやいやいや落ち着け自分。頭が麻痺していたら助かるものも助からないぞ。」  
混乱する思考を押さえつけ今しなければならない事を記憶の中から捜索し始める。  
(味方と連絡が取れなくなり孤立した状況で真っ先に行なわなければならないのは・・・・・正確な現状の確認だ!)  
彼は役立たずの無線機の電源を切りイヤホンを外して無線機ごとバックパックに放り込みそれと引き換えにコンパスを取り出し方位を確認する。  
「北はあっちだから・・さっきドラゴンみたいなのが落ちたのは・・北東か。距離は2〜300ぐらいだったな」  
そう呟き  彼は正確な現状を確かめる為、ドラゴンが落下したポイント目指し歩き始めた。  

・・・・・・・・・・・・・・・・・  
ってとこです。意味なし落ちなしの話ですが勘弁してください。  
この駄文の後を継いで誰かが頑張ってくれるのを祈ってますw  

追伸、これから先どんな話になるのか分かりませんがヒロインが出てくることがあるとすれば一体どんな娘になるのか楽しみですw  
最初にヒロイン書く人の趣味がはっきり分かりますなW  



549  名前:  名無し三等兵  ◇XqrQAy2Hxg  03/06/20  00:48  ID:kbEXSnQe  

rire-  syousetu  3  

時間は少し遡る。  
彼女はドラゴンの背に乗り逃げていた・・・・・・。  
青い長髪に額にある赤い宝石によく似た感覚器のようなもの、そして笹の葉のよう  
な形の長い耳、そして絶世の美女と断言していいほどその端正な顔立ち、それは我  
々の世界のゲームに出てくるエルフという種族とよく似ていた。  
その姿は淡い紫色のシフォンのマントをはおっていて首もとだけがきっちり詰まっ  
ている。真ん中に大きなピンク水晶のブローチをしている。  
その下はビーズや、スパンコールをあしらった淡いピンクのビキニそのものともい  
える軽装的な鎧を身につけている。  
しかしこれは本人の持つ魔力次第では我々の世界の戦車砲の攻撃すら凌げる防御力  
を持っているのだというから驚きだ。  
おまけに寒さも暑さも凌げるという優れものである。  


550  名前:  名無し三等兵  ◇XqrQAy2Hxg  03/06/20  00:50  ID:kbEXSnQe  


彼女は物心ついた時にはある魔法使いの夫婦の娘として育てられていた。  
しかし彼女は自分が二人の娘ではないということに気付いていた。  
父と母は人間、自分のような種族はどう間違っても生まれないと・・・。  
それを本当の意味で知らされたのは十八歳の誕生日の日だった。  
自分は赤ん坊の時に家の前に捨てられていたと。  
そしてそれを知る手掛かりは一緒にあった白い装甲に包まれた片手で扱える銃だけ  
だった。  
しかしその銃は彼女の両親が撃とうとしても使えなかった。  
そして彼女自身あまりにも強大な魔力を所持していた事という事しかわからなかっ  
た。  
そのために両親は彼女に自分の知っている限りの魔法に関する知識、この世界の様  
々な国や地域の文化、風習を学問として教えた。  
彼女自身がその力で自分や他人を傷つける事がないように・・・。  
そして彼女自身が本当の両親を探しに行くときに少しでも役立つようにと。  
話を彼女は聞いた後、彼女はこう言った。  
「父様、母様、私・・・本当の両親を探しに行きたいんです」  
と・・・。  
これは予想していたため二人とも認めてくれた。  
彼女は護身用のレイピアと自分自身でさえ撃つことのできない、しかし本当の両親  
の形見かもしれない白い装甲に包まれた銃を腰に、そして魔法の修行の時に愛用し  
た杖を手にし旅立った。  
旅立つときに父は彼女にこう言った。  
「たとえ血はつながっていなくても君は僕たちの大切な娘だ・・・。だから辛くな  
ったらいつでも帰ってくるんだよ」  
「父様・・・母様・・・私、本当の両親が見つかっても必ずここに帰ってきます・  
・・」  
彼女はそう言った後、しばらく泣いていた。  


551  名前:  名無し三等兵  ◇XqrQAy2Hxg  03/06/20  00:59  ID:kbEXSnQe  

rire-  syousetu  5    

(すいませんが前の文章の最初に  rire-  syousetu  4  とつけるのを忘れていまし  
た。もうしわけありません。もし編集する機会があるならばその辺の修正もお願い  
します。それでは話をどうぞ)  

旅を始めてから三日目、ついた街で必要な物を購入してから五日目に野宿をして目  
が覚めたら、そこは異様な(我々の世界でいうエンジンの音)音のする牢獄だった。  
彼女は呆然とした、目が覚めたらいきなりこうなっていたからだ。  
しかしさらに驚くこととなる。  
いきなり壁の一部分が崩れそこからドラゴンが現れたのだ。  
そのドラゴンは青い表皮に覆われ体の所々が白い甲殻に覆われおり白と青の色合い  
が美しかった。  
彼女はパニック状態になりそうになったがドラゴンの瞳を見たらそれもすぐに収ま  
った。  
ドラゴンの瞳は彼女にこう訴えていた。  
(死にたくなければ自分の背に乗れ)  
まるで催眠術にかかったかのように彼女はドラゴンの背に乗った。  
その後ドラゴンは壁にあいた穴から飛び立った。  
外に出て彼女は三度驚いた。  
ドラゴンの開けた穴を確認してみようとその方向を向いたみたらそこにあったのは  
、空に浮かぶ異形の船、いや軍艦だった。  
その船は大きな白い岩石に鉄の船体をくくりつけたようなもので至る所に砲台がつ  
いており傍から見ると不気味な音を出している。  
どちかといえばそれは我々の世界でいう空母に近かった。  
よく見てみると船の壁に小さな穴があいている。  
おそらくあの穴がドラゴンのあけた穴であろう。  



553  名前:  名無し三等兵  ◇XqrQAy2Hxg  03/06/20  01:09  ID:kbEXSnQe  

rire-  syousetu  6          

だがそんなことはともかく彼女は自分の目が信じられなかった。  
物知りの父から色んなことを教わったが少なくともこんな空を飛ぶ船の話なんて聞  
いたことはないし、船についてる国旗らしきものも彼女の知っている国の中にはな  
かった。  
そう考えているうちに彼女の乗っている青いドラゴンはスピードをあげて空中空母  
から離れていく。  
しかしその後艦の一部が開いたと思ったら、そこから赤黒きグロテスクなドラゴン  
が5騎彼女を乗せた青いドラゴンの方へ飛び立っていった。  
追ってきた5騎のドラゴンは彼女の乗っている青いドラゴンとくらべても、その姿  
は禍々しく悪魔そのものと言ってもよかった。  
おまけに乗っている人間はまるで宇宙服のようなのを着て、ドラゴンの背中に空い  
てある穴に入り、そこから首だけ出してそのドラゴンを操っていた。  
異形のドラゴンは編隊を組み彼女の乗るドラゴンに追いついた後躊躇なく攻撃を仕  
掛けてきた。  
何がなんだかわからないまま彼女も負けずに自慢の魔法で応戦した。  
最初異形のドラゴンは口から爆発性の粘着弾のようなものを放ってきたが、全て彼  
女の魔法で相殺されてしまった。  
しかしそれは自分の乗っている青いドラゴンが必死に回避しているからかろうじて  
可能な状態なのである。  


554  名前:  名無し三等兵  ◇XqrQAy2Hxg  03/06/20  01:14  ID:kbEXSnQe  

いくら魔法には自信のある彼女も彼女も1対5の戦いで追い詰められていく。  
チャンスと見た異形のドラゴンの乗り手達は、今度はドラゴンの攻撃に加え自ら乗  
っている穴(操縦孔)から、銃のようなものを持った片手を出しそれから光を放って  
撃ってきた。  
威力こそ異形のドラゴンの攻撃には及ばないが命中率は高かった。  
彼女も今まで以上に必死に反撃し何とか2騎の乗り手の持っている銃のようなもの  
を弾き落とすことに成功するが、それが他の乗り手の攻撃を当てさせるための陽動  
作戦だったと気付いたときには手遅れだった。  
次の瞬間ドラゴンに攻撃が命中する。  
彼女の高い魔力と比例する防御力を生み出す鎧のおかげで彼女も青いドラゴンも傷  
ひとつなく助かったが、衝撃で飛行バランスを失ったドラゴンは気絶して落ちてい  
った。    
自分の乗るドラゴンが落ちていく中、彼女の意識は途切れた・・・。  

・・・・・・・・・・・・・・・・・  
すいません、連続で続き書かせていただきました。  
後ニャルラトホテプさんすいません。  
次を投稿しようとしたら変な文字化けが起こって間違えてあなたの名のレスがあがっ  
てしまいました。  
ヒロインのモデルは闘神都市2というパソコンゲームに出てくるクライアというキャ  
ラからです。  
コスチュームは・・・すいません色気があったほうがいいかなと思い、ああっ!石投  
げないでください。  
コスチュームのモデルはスクウェアのSaGa2秘宝伝説のエスパーガールからです。  



584  名前:  名無し三等兵  03/06/26  00:04  ID:???  

rire-syousetu  8  

鬱蒼と生い茂る森の中を森の中を戸田三曹が目的地に向けてジョギングでもするかのように軽快に駆け抜けていく  
そのペースからは考えられないくらいに静かに・・そして後を残さずに・・・である。  
仮にその姿を誰かが捕らえたとしたならば  彼は闇から闇へと突き進む森の死神に見えただろう。  

ドラゴンが墜落した地点から十数メートルのところで彼は進行速度を歩行レベルまでに落し改めて小銃を構えなおした。  
親指で安全装置の指標を「ア」から「タ」に動かし89式小銃を発射可能体制にする。  
彼は気配を消しかすかに見えるドラゴンの翼目掛けてゆっくりとゆっくりと近づいていく。  
もちろん真っ直ぐにではない。ドラゴンが着陸の際になぎ倒したと見られる木々に巧妙に隠れつつである。  

・・15m・・14m・・・13m・・・  
近づくにつれてだんだんと横倒しになってかすかにしか動かないその巨体がはっきりと見えてくる。  
体長はおよそ7メートル前後、尻尾を入れるならおおよそ11メートル前後だ。  
背中からあふれ出た血が  小さな血の川を作りつつある。  

「まだ何とか生きてるみたいだな・・・こいつ・・」  
ドラゴンから約5メートルの地点で足を止めた戸田三曹は時折かすかに動かされる尻尾を見てそう呟く。  
その背には荷物でも載せてあったのだろうか。  
ドラゴンの胴体を一回りする大きなベルトに雑嚢が幾つも括り付けられている。  
あるものは裂け  アジア系の民族衣装のような衣服が悲惨な状況で辺りに撒き散らされ  
またあるものは中から  食糧のようなものを覗かせていた。  
彼はドラゴンが動かないのを確認するとドラゴンの頭に小銃の照準を合わせたまま  
つま先で引っ掛けるようにして落ちていた衣類のような物を持ち上げ左手だけで起用に広げそれがなんであるのか確かめる。  
「スカート?・・人間の荷物だな。こりゃあ・・人でも乗ってたのか?」  

続く。  


585  名前:  名無し三等兵  03/06/26  01:08  ID:???  


彼がそのスカートをほうり捨てて辺りをうろつきながら他に落ちていたものを手にとって調べていた時  
意識を取り戻したのか突如ドラゴンがその首を擡げ咆哮をあげた。  
『グオオォォーーーーーン!!!』  
「う・・うっわ!!!」  
突然の事に驚愕した戸田は慌てて距離を取ろうと後ろに飛ぼうとして先ほど投げ捨てたスカートに足を取られその場に尻餅をついてしまった。  
その際  彼は受身を取ろうと小銃を投げ出してしまっていた。  
派手にすッ転んだ彼をドラゴンは倒れた姿勢のまま見下ろしていた。  
「くそ!!」  
彼はそう叫んで素早く辺りを見渡す。そして直ぐに目当てのもの・・小銃を見つけるがそれは数メートル以上離れていた。  
だが彼はそれを回収する前に頭の直ぐ上から自分を見下ろしているドラゴンと目があってしまった。  
「は・・はははは・・・どうも・・・・」    
顔を引き攣らせうつろな笑みを浮かべながら訳も分からずにドラゴンに挨拶する。  
ドラゴンはしばらく彼を睨み付けていたがやがて興味を無くしたのか何かを探すように辺りを見渡し始める。  
しばらくその場に呆然と座り込んでいた戸田三曹ではあったが、  
ドラゴンがあたりに視線をめぐらしているのを見て自分から注意が離れたのを確認するとゆっくりと腰を地面にすりながらゆっくりと銃の方に向かって後退を始める。  
ドラゴンは戸田三曹がいる方向には探しているものが見つからないのか首を回し逆側にに視線を向けた。  
(チャンスだ!!  今なら逃げられる!!)  
彼は静かに立ち上がり小銃を拾い上げると抜き足差し足忍び足っとドラゴンに気付かれないようにドラゴンに背をむけゆっくりとドラゴンから遠ざかろうとする。  
『おい。人間族の青年。ちょっとまてや。』  
ビクッ!!  
突然背後から日本語で呼び止められ彼は咄嗟にドラゴンに背中を向けたまま不自然にその場で足を止めた。  
そしてゆっくりと頭だけ振り返る。ドラゴンが先ほどと同じ姿勢で彼をを見つめていた。  
『ワシの背中に乗ってた娘知らんか?』  

・・・・・  
とりあえずこれだけ・・・これで続けられるのかな?とかなり疑問が残りますが取り合えずということで・・・  



587  名前:  名無し三等兵  03/06/26  07:21  ID:???  

rire-syousetu  10  

『おい、人間族の青年・・・』  

深い闇の底に沈んだ女の意識に、低い振動が伝わった。  
ここは黄泉の国か・・・、しかし声の主が彼女に話しかけているわけではないということは、  
言葉の内容から容易に推測された。自分以外に少なくとも二人居る。ぼんやりした思考では  
そこまでしか考えることが出来なかった。しかし、記憶だけはしっかりと残っていた。  

『・・・娘を知らぬか?』  

さらに声は響く。  
(娘?わたしのことかな?)  
彼女の頭が普段の回転を取り戻し、その瞬間に意識は闇の中から光の世界へと浮上した。  


588  名前:  名無し三等兵  03/06/26  07:25  ID:???  

rire-syousetu11  

彼女の目に始め飛び込んできたのは、朽ちた葉の積もった地面だった。木漏れ日が地面に影を落とし、  
日がまだ高いことが窺い知れた。腐葉土の柔らかく湿った感触を肌に直接感じた。  

次に彼女は自分の身体に意識を向けた。うつぶせに地面に倒れているが、痛みはない。  
四肢の感覚もしっかりしている。とりあえず生命の心配は無いようだ。  

そして彼女はゆっくりと顔を上げた。  
どうやら自分は低木の茂みの中に倒れているようだ。頭上には折れた枝が見える。  
まっすぐ前方を見ると、茂みの間からドラゴンと、一人の人間が垣間見れた。  
かなり距離は離れている。ドラゴンはちょうど顔がこちらに向いていた。自分には気付いていない。  
人間はドラゴンのほうに向き直ったところだった。そのため、彼女からは背中が見えており、  
顔を確認することは出来ない。身にいろいろぶら下げていてはっきりとは分からないが、体格からして男性だろう。  
身体をこわばらせ、ドラゴンを警戒しているようだ。その緊張感は離れた場所に居る彼女にも  
伝わってきた。  

人間は見なれぬ格好をしているが、自分を追っていた者たちも見なれぬ格好をしていた。  
現時点で、相手が敵か味方か判断することは出来なかった。むしろ、彼女は過剰に警戒していた。  


589  名前:  名無し三等兵  03/06/26  07:37  ID:???  

rire-syousetu  12  

人間はドラゴンに何か話しかけているようだが、その内容はよく聞き取れない。それに対して  
ドラゴンは、腹の底に響くような低い声で応えた。  
『・・・彼女は精霊の子だろう。ヒトの子と違い、そう簡単には死なんわい。』  
人間はその答えに黙ったようだ。そして、左手の指でドラゴンの尾の方向を指し、  
続いてドラゴン自身を指差して円を描いたあと、親指で彼女の居る方向を指した。  
『賢い推測だ。』  
ドラゴンが同意した。そこで、二人が彼女を探しているらしいことに気付いた。  

彼女は自分の杖を手繰り寄せようとし・・・間違えて太い木の枝を、音をたてて折ってしまった。  
それに反応し、ドラゴンと人間が同時に彼女の居る場所に視線を向けた。  
ドラゴンの表情から何を考えているのか読み取るのは容易ではないが、  
どうやらホッとしているようだ。  
人間のほうは明らかに神経を尖らせ、両手で持った道具を構え、  
異国のことばで何か呟くと素早い動きで木陰に姿を隠した。  

もはや隠れている意味はなくなった。そして、自分の魔力なら万が一交戦する羽目になっても、  
自分に危害が及ぶ可能性は少ないだろう。  
「私はここよ!」  
そう叫び、茂みのしたから這い出し、塵を払い落とすと、いつでも呪文を唱えられるように  
心の準備をしてドラゴンのほうに歩いていった。  
杖はどこか離れた場所に落ちたらしく、すぐそばには見当たらなかった。  


*(ここまで)  



594  名前:  名無し三等兵  03/06/26  17:17  ID:???  

rire-syousetu  13  

ドラゴンのほうに歩いていく時に、彼女は人間のほうは異国の言葉を喋っていたのを思い出す。  
(あ・・・そういえばあの人、異国の言葉を喋ってたな・・・。何か警戒してたし、こっちの言葉が通じなかったら敵じゃなかったとしても、下手をすると敵だと思われちゃう・・・)  
あらかじめ自分自身に言語を訳する魔法をかけておく。  
彼女はドラゴンの怪我を確認したらすぐさま駈け寄りその傷を回復魔法で治し始めた。  
それ以前にドラゴンの傷はすさまじいスピードで治り始めていたが・・・。  
光が傷口に集まり出血が止まった後、完全にふさがった。  
「あの・・・大丈夫ですか?それにあの時どうして私を助けてくれたんですか?」  
と疑問を投げかける。  
『その話なら後だ。それより隠れている人間のほうを』  
周りを見てみると酷い状態だった。  
あの空中空母から逃げ出すときにドラゴンの体に縛り付けておいた旅の荷物が散らばっていた。  
とりあえず落ちている野宿の際の食料や、宿屋に泊まった時の寝巻きなどは後で拾うことにして、念の為に腰のレイピアと魔法をいつでも使えるようにしておく。  
そして人間の隠れた方向を確認した後、警戒を緩めることなく大きな声で呼びかけた。  
「すみません!私の言葉はわかりますよね?あなたに危害を加えるつもりはありません。だから、そこから出てきてもらえないでしょうか?」  
すると相手はこっちの言葉を理解できたらしく、両手で持った道具を構えながらもゆっくりとこちらへ歩いてきた。  
その道具は自分の腰にある銃と形こそ違えど同じだと彼女は悟りながらも、相手があくまでそれで威嚇しているだけで使うつもりがないということもわかった。  
(少なくともあの異形のドラゴンに乗っていた人たちとは違うってことかな?)  
警戒しつつも相手も銃を降ろした後やっと口を開く。  
「君は一体誰だ・・・?それにさっきのは・・・・・・」  
そこで言葉は止まりじーーーっと彼女を見つめる。  


595  名前:  名無し三等兵  03/06/26  17:21  ID:???  

rire-syousetu  14  

「あ、あの・・・なんですか?私の体に何か?」  
彼女も今になっていきなり自分を見つめる彼に対して戸惑いを隠せない。  
ちなみに戸田三曹は本人に自覚はないがかなりの美少年の風貌をしており、女性自衛官の裏人気が高かったらしい。  
同僚からは「自衛官としてあるまじき男である」とまで言われている。  
そんな彼が次第に顔は赤くなっていき最後には慌てだした。  
「ど、どうしたんですか?」  
あまりの慌てぶりに彼女もうろたえだす。  
「あ、あの!何て、何て格好してるんですか!?そんな過激な格好!!うわっ!!!」  
無理もない、彼女の世界では別にどうってことのない旅をしているときの装備でも、ちなみに散らばっていたのは下着や寝巻きである。  
彼・・・戸田三曹の世界ではそんな女性の格好は夏の海やコスプレパーティ、または下着姿などでしかお目にかかれないものである。  
警戒心が薄れたこの状況で彼女の姿は、ビキニそのものの鎧とマントを羽織っただけの姿はあまりに(その上装備している彼女自身が美人だったのもある)刺激が強すぎたのだ。  
しかしこれにはすぐ彼も慣れるようになるのだが・・・。  
彼はゆでだこのような顔になって意味不明の言葉を連発した後、足元に落ちていた寝巻きに足を取られそのまま転倒、派手に後頭部を石で打ってしまった。  
「キャア!大丈夫ですか?しっかりしてください!」  
彼女の声を聞きながら彼の意識は深い闇に飲まれていった。  

「どうしよう・・・」  
彼の無事を確認した後、彼女はとりあえずちらばった荷物と飛んでいった杖を回収した。  
その後気絶している彼に自分と同じように言語を訳する魔法をかけておいた後、彼の目覚めるのを待つことにした。  
彼に膝枕をしてその顔に知らず知らずのうちに見とれながら・・・・・・。  

ちなみにドラゴンはというと、『疲れた、少し眠らせてくれ』といつの間にか寝ていた。  



633  名前:  名無し三等兵  03/06/27  07:35  ID:???  

rire-syousetu  15  

二人のうち、先に目を醒ましたのは戸田三曹のほうだった。  
日は西の地平線に沈もうとしていた。彼は時刻を確認したが、デジタル時計は午前四時過ぎを示していた。  
もしこれが時差に由来するものなら、今居る場所はヨーロッパのどこかに当たる。  
しかし周囲の森は温帯モンスーンにみられる、じめじめした広葉樹林だった。  
夏場、日本の雑木林に迷い込めば同じような体感が得られるだろう。  

彼はドラゴンを探し、そして目が合った。ドラゴンは、うろこに覆われた唇の無い口の端を歪め、目を細めながらこちらを見ている。  
『肉なるものよ、霊なる者のオナゴは苦手なんか?』  
彼は幾分愉快そうな口調で話しかけた。  
「いや、そうでもないけど・・・、このような肌を露出するような服装には不慣れであり・・・」  
彼は視線をそらして言い訳がましく付け答えたが、平静を保とうとすればするほど口調が固くなる。  
あるいはこのことは彼のメンタル面における最大の弱点であろう。実際、膝に頭が乗っていることに気付いてはいるが、それをできるだけ視界に入れないように努めていた。  
そのことに気付いた彼は、自分に腹立たしさを覚えた。  

(女子がだからなんだ!)  

彼は自分でも意味不明なことを心の中で呟くと、体を起こし、膝に頭を乗せている女性に目を向けた。  


634  名前:  名無し三等兵  03/06/27  07:37  ID:???  

rire-syousetu16  

均整の取れた顔立ち。特に西欧人っぽいワケでもなく、日本人でもない。民族、国籍共に不明。  
長く青い髪、昼間見たときは染めているのかと思ったが、実際にそういう色素を元来含んでいるらしい。  
それは夕日の中では色褪せて見えた。彼は、女性が眠っていることを確認すると、  
恐る恐るその髪に指を触れた。人間の髪に比べて滑らかだが、不自然な感じもする。  
彼は一瞬、ナイロン糸に指を触れているかのような錯覚を覚えた。  
その髪の隙間から異様に尖った耳が突き出している。人間で言うと、軟骨の部分が鋭い三角形になっている。  
そして額には鉱物質ともキチン質とも付かない、赤く丸い突起物。見なれない所為か、間近に見てそれを痛々しいと感じた。  
ただ、人工的に埋めこまれたものではなく、本来の姿として其処にあるものらしいと言うことは窺い知ることができた。  

「そういえば、この娘のことを精霊の子≠ニか呼んでたけど、この娘は一体ナニモノだ?(明らかに人間ではないし)」  
彼はドラゴンをみた。獣と言うには賢すぎるその生き物は彼を凝視し、低い声をより一層低くして唱えた。  
『炎より出でたる者、魔術者アレーニウスの恵まれし娘・・・』  
「で、名前とかは?」  
『今言ったとおりや。う〜む・・・・・・ははぁ、翻訳術かかってるんか。んー、まぁ、好きなように呼べや。』  
「そんな無茶な・・・」  
少なくとも、呼びかけるには長すぎる。とりあえずこのことはそのうち本人に訊こうか。  


636  名前:  名無し三等兵  03/06/27  07:43  ID:???  

rire-syousetu17  

「それからもうひとつ、今こうやって日本語で会話できてるってのは、ひょっとして今さっき言ってた翻訳術≠ニか言うヤツで?」  
彼は催眠術の一種のようなものを想像していた。ただ、女がドラゴンに治癒を施している様子も目の当たりにしている。  
『ウム・・・』  
ドラゴンは難しそうに口篭った。  
『確かにその通り、まさかワシの咽喉で二足の者の言葉を発声できるとは思えんやろ、え?』  
そういいながらドラゴンは口を大きくあけ、咽喉の奥を見せた。そうしながらも、低い声は滞りなく彼の耳に届いた。  
『ワシの声はおぬしの母語に聞こえているはずやが、それはいわば一種の幻覚や。娘も同じ。彼女の魔力は桁違いやけど、形を取らぬ術に関してはワシから言わせればヒヨッコ、  
 生きた年数が少ないんもあるけど、知識だけで実がないってやつや。もし汝が上に知恵の霊がとどまるんなら、ワシはともかくその娘の術は化けの皮が剥れるやろ。  
 彼女が何十年か異国を渡り歩いてスキルアップせん限り会話が成り立たんくなる。そうすれば次は地獄の苦しみ・・・』  
ドラゴンは言葉を切り、口の端を歪めた。  
『二年かけて異国語を習得するときの苦労を、二つ瞬きする間に味わう必要がある。猛き言霊は汝に情けをかけん。覚悟せぇよ?』  
二年分の苦労が数秒で済むなら楽なもんではないか、戸田三曹はそう考えた。  
(まぁ、その『知恵の霊』ってのは俺はあやしいな。)  
彼は知る由もないが、実際はその術は脳の言語野に大きな揺さぶりをかけて術者の母語を被術者に叩き込むものであり、被術者の魔法防御力と運に左右されるが副作用が極めて大きい。  
過負荷から脳全体にノイズが走りてんかん発作(魔術師や聖職者は悪霊によるものと解釈していた)に似た症状が出ることが多く、術後会話のコツを覚えるまで一時的に失語症を発症し、  
極度のストレスからほぼ確実に自律神経を失調し、術者のスキルまたは運が悪ければ本来の母語を永久に喪う。  
メリットとしては、覚えた言葉は術者、被術者の魔力によらずネイティヴとして物理的、恒久的に使用できる。誤訳が原因で誤解を生ずることもない。  
『知らぬが仏っちゅうかな』  
ドラゴンがそういうのとほぼ同時に、膝の上にあった精霊の子≠フ頭が動いた。  
「んーー・・・、起きてたんですか?」  
寝ぼけた声が聞こえた。  


637  名前:  名無し三等兵  03/06/27  07:44  ID:???  

rire-syousetu18  

『無知、汝を救わん、などというが・・・』  
彼女は目を醒ました。ドラゴンが発する低い声の振動は、夢の中で心地よい響きとなっていたが、意味を聞いて理解できるのは目が醒めている間だけである。  
「んーー・・・、起きてたの?」  
焦点はまだ定まらない。  
『人の子がおぬしのことを知りたがってな。』  
ドラゴンの声には罪のない悪意がこもっているように思えた。  
『カナ=アレーナ(恵まれたる者、アレーニウスの娘)。汝の名だろう。』  
それは彼女の育った国における呼び名だった。この周辺の国々では一般に女性の社会的地位が低く、  
社会的に通用する女性の名として父親の姓を女性形に変換した『**家の女』と言う意味の語が使われる。  
一方、家族や親しい間柄では個人の特徴や生い立ちからニックネームがつけられる。  
育ての親が暮らす地方では、過去の事実からニックネームを付けることが一般化していた。  
その地方の方言で、運に恵まれる、あるいは慈悲から拾い上げられることを意味する『カーノー』から  
彼女の名はつけられていた。名付け親は養母であり、それは本来、ごく内輪だけで使われるべき名である。  
「だから・・・長くて呼びにくいんだよな・・・」  
人間の男には名前は直訳されて伝わっているようだった。どっちみち、本来あるべき名からは遠いのだが。  
それより、何故ドラゴンがこの名を知っているのかが気になった。命の恩人とはいえ、彼の目的はまだ知れない。  



638  名前:  名無し三等兵  03/06/27  07:45  ID:???  

rire-syousetu19  

気がつくと、男は彼女を注視していた。昼間と違い、何か目的をもって観察しているようではあったが。  
彼女は今だ膝枕状態だったが、まだしっかり頭が働いておらず状況を把握できていなかった。  

「あのー、なんでしょうか?」  

間延びした声を出す。男はそれを聞いて、何故か首をひねっていた。  
「う〜ン、分からん。」  
『知恵の霊は汝の上を通りすぎたもう。』  
ドラゴンは楽しそうに侮蔑的な言葉を発した。男は怒っているふうではなかった。  



646  名前:  名無し三等兵  03/06/27  18:38  ID:???  

rire-syousetu  20  

「あの・・・髪の毛、離してもらえないでしょうか?」  
「あっご、ごめんなさい。あまりに綺麗な髪だったもので」  
「いっ、いえ・・・(そんな綺麗だなんて)」  
互いに顔を赤くする。  
彼女を注視していた戸田三曹は未だに彼女の髪を触ったままのうえに、膝枕状態なのを思い出し慌てて起き上がった後、彼女から少し離れてお互いに見つめあう形で座り直した。  
ちなみにドラゴンはそれを黙って面白そうに見ていた。  
(下から彼女の胸を見たが結構あったな・・・。バスト85〜88ぐらいあったし、最初彼女の全身を見たときも一目でモデル並のプロポーションだと判るくらい見事だった・・・ってこんな時に何考えてんだ撲は!)  
どうやら見ているところはしっかりと見ているらしい。  
どうやらドラゴンの危惧したような副作用は起こらず意思の疎通はしっかり大丈夫のようだ。  
とにかくお互い言葉は通じるようになったし、敵意はないということはわかったので(さっきの騒ぎで警戒心はすっかり吹き飛んでしまった)自己紹介をすることにする。  
「その様子だと大丈夫そうですね。私はカナ=アレーナといいます。アレーナと呼んでください」  
「あ、僕は陸上自衛隊対ゲリラ部隊所属戸田真一三曹といいます。戸田でかまいません」  
戸田のほうは彼女の名前がわかったので一安心したが、アレーナのほうは戸田真一が彼の名前だとわかったが、自衛隊や三曹という単語の理解にかなり悩んでいた。  
「トダさんでいいんですね。それと自衛隊や三曹というのはなんでしょうか?組織の名前、それに所属する者に対しての階級までとは理解できるんですけど・・・。それにあなたは何処から来たんですか?その姿からどこかの国の兵隊とまではわかりますけど・・・・・・」  
「それが僕にもわからないんです。気がついた時にはここにいたんです。それにここは一体・・・・・・」  

グウウウウゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・  

そこまで言ったところで二人のお腹から腹の虫が鳴った。  
無理もない、二人ともしばらく何も食べていなかったのだ。  


662  名前:  名無し三等兵  03/06/28  01:24  ID:???  

rire-syousetu  21  

「ご馳走様でした。すみません。会ったばかりだというのに飯まで食べさせていただいて・・」  
「いえいえ。困った時はお互い様です。」  
戸田から返却された携帯食糧を入れていた小さな革の袋を自分が食べた携帯食糧の袋を重ねて折りたたみながら続ける。  
「ところで戸田さん。これからどうするおつもりですか?」  
立ち上がりかけていた戸田はその場にゆっくりと腰を下ろして困ったように頬を指でかきながら返答した。  
「そうですね・・・とりあえずここが自分が元居た世界で無いと言う事が判明しましたし・・」  
そりゃそうである。彼が元いた世界にはドラゴンや魔法なんて存在しないのだから  
「とりあえずは、元の世界に帰る方法を探してみます。」  
カナは思案気にうつむいていたが  やがて何かを思いついたのか戸田に向かって何事かを話し掛けた。  
先ほどまでの会話と同じように二人の横で寝そべったままのドラゴンがその言葉をを通訳する。  
「そうですか・・なら、ここから東に30日ぐらいの位置にある王都の魔術府か王立図書館に行かれるのが宜しいかと思います。  
 王都なら召還術の権威やあらゆる種類の魔術書、研究書がありますから  もしかしたらその『日本』という国に帰る方法も  
 見つかるかもしれません」  



663  名前:  名無し三等兵  03/06/28  02:02  ID:???  

カナはその細く綺麗な指で土の上を軽くなぞり簡単な地図を書いて彼に説明する。  
その地図によれば現在いる森からまともな街道に出るまでに2,3日  
さらに王都までは山脈をいくつか越えないといけないということであった。  
はっきり言って普通の人間どころか、鍛え上げられた人間にもかなりきつい道のりである。  
「王都・・ですか。分かりました。ちょっと遠いですが行ってみます。  
 先ほど食事の際に言っていたご家族が見つかる事を祈ります。それでは」  
戸田が持っていた食糧はポケットに入れっぱなしになっていた栄養バー(携帯食糧の一種)が三日分だけだったが、彼にはそれで充分であった。  
何しろ彼が特殊作戦群に入る前に受けたレンジャー徽章を取る為の選抜試験を思い出せば、30日の行軍はそれほど難しいとは思えなかったのだ。  
30キロ以上になる重装備を担ぎ、たいした水や食糧も与えられずに行軍し、戦闘訓練を何度も行なわされたのだから・・  
与えらる水分や食糧は明らかに少なく、あまりの喉の渇きの為に転んだ振りをしては泥水をすすり、それを見破られては罰則を受け、  
そのあまりの辛さに脱落するものも少なくなかった。彼にはその訓練を耐え抜いたと言う自負があったからであった。  
『ちょっと待てや青年。お前この世界の人間と話が出来ないのに王都に行っても入れてくれるわけは無いで?』  
突然それまで黙っていたドラゴンがカナに礼を言って立ち去ろうとした戸田に向かって後ろから話し掛けた。  


664  名前:  名無し三等兵  03/06/28  02:42  ID:???  

『考えてみ?言葉が通じん上にその格好や、何処の衛兵でも街の中に入れてくれる別けないで?』  
「あ・・」  
戸田がはっとしたようにその場で立ち止まった  
「そうですね・・大きな町なら街に入る理由も聞かれますしね・・・・」  
カナもそのドラゴンの発言に同意する。彼女もまたドラゴンに言われるまで言葉の壁と言うものに気付いていなかったのだ。  
『自分がお前について行ってやって通訳してやる訳にもいかんしな。  
 アレーナを放ってはおけんのも理由の一つやけど、自分が王都になんか行ったら一発で討伐されるからなあ。』  
ドラゴンが遠い目をして空を見つめて肩を震わせる。恐らく自分が討伐される光景を想像してしまったのだろう。  
「どうしたもんかな・・・」  
それを聞いた戸田が渋面を浮かべる。彼にとっていきなり打つ手がなくなってしまったのだから。  
「うー・・・あ!そうだ!戸田さん。こんなのはどうですか?」  
カナが何かを思いついたように手をポンと叩いて戸田に提案する。  
「私の両親を探すのを戸田さんに手伝ってもらいたいんです。一人じゃ街で聞き込みするのも大変ですし。  
 その代わりと言ってはなんですが、両親が見つかり次第直ぐに私が王都に言って  
 戸田さんの変わりに元の世界に帰れる方法を探させていただきます。いかがでしょうか?」  


・・・・・・  
いじょ  中途半端なとこですがこれで終わりです。  
そろそろ戦闘シーンが書きたい今日この頃・・・w  



666  名前:  名無し三等兵  03/06/28  05:45  ID:???  

rire-syousetu  22  

一方先程までカナ=アレーナを捕まえていた空中空母のほうは闇夜の中、青いドラゴンによって開けられた穴の修復が行われていた。  
会議室のほうでは司令官らしい人物とこの艦の艦長、そして異形のドラゴン部隊を率いていた隊長らしい人物が話をしていた。  
形こそ違うが全員我々の世界の軍隊に近い感じの軍服を着ている。  
「この報告書に記載されている事は事実なのか?」  
司令官らしいオークの男がまだ若い隊長らしい人間の男性に質問する。  
「はい、トリク司令官間違いありません、あれは過去に我が軍を何度も危機に陥れたドラゴンです。恐らく私たちの操るドラゴンメアに呼ばれ甦ったかと・・・」  
「この大陸に来て目標を捕まえたと思ったら、よりによって最も忌々しい奴の邪魔をうけることになるとはな・・・・・・」  
「しかしあのドラゴンはまだ目覚めたばかりで攻撃機能がまだ完全に覚醒してないらしく、心配していた追尾製の高い光の矢による反撃もありませんでした。  
ただ乗っている娘の魔法の反撃で、遺跡で発掘された銃を二つも失いそうになったのは失敗でした。あの後すぐに回収しましたが、あれはわが国にも10丁もないものだったというのに・・・・・・」  
「エヴ、その点は気にしなくてもいい。本国の遺跡に眠るドラゴン一千騎、あの娘さえ手に入れば我らのものだ。その為にもなんとしてもあの娘を捕らえるのだ。  
レーン艦長、この艦に搭載されている兵器をもう一度教えてくれ」  
「はい、この空母にはエヴ隊長指揮下の特殊部隊の操るドラゴンメアが5騎、人員輸送用の小型艇が5機、浮遊戦車が1機、爆装可能な戦闘機が12機搭載されています。  
本当はもっと搭載できるのですが、この艦は単独でこの大陸に遠征していることもあって補給ができないのです。その上本国から隠密行動を心掛けるようにと命令を受けています。  
そのため長期間の作戦行動のために、本来戦闘機などを搭載する格納スペースに補給物資を余分に積み込んであります」  
レーンと呼ばれた艦長らしい、メガネをかけたエルフの女性がすぐに答える。  
「よしエヴ、小型艇に君の特殊部隊の兵を10人乗せてドラゴンの墜落した所へ向かわせろ。目的は娘の捕獲、ドラゴンの生死の確認だ」  


667  名前:  名無し三等兵  03/06/28  05:50  ID:???  

rire-syousetu  23  

「ちょっと待ってください司令官、ドラゴンが生きている場合を考えて始めから全戦力を投入したほうがよいのでは」  
レーン艦長はこれにすぐ異を唱える。  
「艦長、我々の存在がこの大陸の人間に知られるのはまだまずい。できるだけ見つかる危険は避けたい。それに今回はあくまで威力偵察だ。ドラゴンという予想外の因子が発生したからな・・・。この戦力で対応できるか正直不安だ。  
なんせ相手はただのドラゴンじゃない。最悪の場合本国から援軍を呼ぶことも考えねばならん。なお目標の娘は姿こそエルフに似ているが正確にはエルフではない。魔力も桁外れだ。麻酔弾で眠らせて捕まえろ。万が一の際はすぐに撤退するんだ。  
なおドラゴンが生きている場合は信号弾か小型艇の無線で連絡、ドラゴンメアの支援を要請しろ。ちなみにエヴは待機、ドラゴンメア部隊をいつでも指揮できるようにしておけ。」  
すぐに格納庫では茶色のコートのような軍服を身にまとい、とがった帽子をかぶり、我々の世界でいうボルト・アクションライフル(威力は火縄銃より少し上ぐらいで装弾数は6発、有効射程距離も連射能力を優先したためそんなに長くはない)  
を手にした兵士らが次々と小型艇に乗り込んでいった。  
「兵員は小型艇の操縦手1人、通信員1人、特殊部隊は魔法使い兵2人、銃兵8人の計12名です」  
「よし、作戦開始」  
こうして捕獲部隊を乗せてゆっくりと小型艇は空母から地上へと降りていった。  



761  名前:  名無し三等兵  ◆XqrQAy2Hxg  03/07/09  18:32  ID:???  

rire-syousetu  24  >>667  

空母から出撃してから数十分後、小型船に乗っていた特殊部隊の隊員達は  
先ほど味方がドラゴンを撃ち落したと報告した地点上空まで刻々と近づきつつあった。  
先ほどまで視界いっぱいに広がっていた草原の中に点々と木々が見え始めていた。  
いつしかそれは見渡す限りの大森林へと移り変わり地面すら判別のつかないトリプルキャノピーへと移り変わっていた。  
「目標まで後5分。降下要員は装備の最終点検をし降下に備えよ。」  
先ほど指揮官から聞いたポイントに近づいた事をパイロットが乗員に大声で伝える。  
それを聞いた隊員達が無言で銃に弾丸を詰めボルトを引いていつでも撃てる状態にする。  
魔術士の二人は改めて呪文のスペルを書き込んだ札の枚数を数えて懐にしまいこんだ。  

「いいぞ。これだけ濃い密林なら目標に気付かれずに接近できるな」  
特殊部隊の隊長が小型船の窓から外の様子を確認してそう確信する。  
「しかし・・着陸に適したポイントが見つかりません。このままだと任務を達成できたとしても目標の女を連れて帰れません。」  
心配そうに言った隊員を振り返り、隊長が鼓舞するように彼の頭をポンと叩きながら返答する  
「なに。二、三日かけて森が切れている所まで女を運んでいけばいいさ。何も今日中に連れて帰らなくちゃならない訳でもないしな。  
 まだ生きているのかどうかは知らんが撃墜されたドラゴンも森の中なら身の自由が利かん。それにブレスも使えない。」  
今度は別の隊員が手を上げて彼に質問する。  
「隊長。撃墜されたドラゴンの背中に乗っていた女を捕まえて来いって命令ですが、  
 ドラゴンと一緒に落ちたその女、本当に生きてるんですかね?」  
「しらん。だが上層部のお偉いさんたちは生きてると信じ込んでいるようだ。」  
彼は質問した隊員に肩をすかしてみせる  
「ま。死んでたら死んでたで弾を使わずにすんで得したと思いな。」  
隊長がそういった瞬間だった。  


762  名前:  名無し三等兵  ◆XqrQAy2Hxg  03/07/09  19:38  ID:???  

「降下部隊へ。小屋を見つけた。1時の方向だ。」  
小型船を操縦していたパイロットが隊長にそう報告する。  
それを聞いた隊長が窓から一時の方向に目を向けると確かに森の中に突然現れた10m四方ほどの草原の真ん中に  
ぽつんと箱のような小屋が立っているのが確認できた  
「まずいな・・現地住民との接触は禁じられているのに・・  
 仕方が無い。機長。ここらで降ろしてくれ。残りは歩いて接近する。」  
「了解。撤収ポイントはどうする?」  
隊長が小型船のドアを開き部下にラペリングの準備をさせながら返答する  
「明日の今ごろ、森の手前にあった湖で回収してくれ。スモークを焚いて知らせる」  
「了解。幸運を祈る。」  
手の空いているパイロット達が彼らを振り返り敬礼する。隊長はそれに答えた後部下に向かって降下命令を出した。  
「良し!行くぞ諸君!!降下降下降下!!」  
その命令に従って特殊部隊の隊員と魔術師たちはロープを伝い一斉に森の中に降下していった  


763  名前:  名無し三等兵  ◆XqrQAy2Hxg  03/07/09  19:38  ID:???  

rire-syousetu  25  
場所は移って森の中の二人と一匹  

「分かりました。それならその条件でしばらくの間  貴方を護衛させてもらいます。」  
戸田三曹が小銃を肩に背負いなおしカナに手を差し伸べた。  
「こちらこそよろしくお願いします戸田さん。」  
カナが思ってもみなかった戸田の好返答に両手でその手を強く握り返し数回軽く上下に振った。  
『それが一番いい判断や戸田三曹。そのほうがお前の安全にも繋がるしな』  
ドラゴンもその胴体から見ればあまりに小さい腕を伸ばして戸田と握手をしようと試みる。  
だがその声は戸田に届いていたが、戸田の意識は目の前で手を握っている女性の方に完全に集中されていたため  
ドラゴンが伸ばしている手に気が付かなかった。そのためドラゴンは憮然とした顔で手を下ろさざるを得なかった。  
『ふん。人間族のエロガキめ・・』  
そう言ってドラゴンは一人淋しくこの大陸における現在地を知るために精霊と交信を試みるのであった。  

「これでやっと安心して、のんびり温泉やお風呂に浸かれる・・・」  
カナが嬉しそうに彼の手を握ったままボソッとそう呟く。  
もちろん文字どうり目と鼻の先で彼女に意識を集中していた戸田に聞こえない訳が無い。  
「はあ・・のんびり温泉・・・ですか?」  
戸田が訳がわからないと不思議そうに首を捻る。  
「えっ!あ!  いえ!なんでもないんです!ははは・・・」  
カナは慌てて握り締めていた手を放し視線をそらした。  
彼女が話をそらそうと口を開いた瞬間  精霊と交信していたドラゴンが二人に急を告げた。  
『そこのお二方。南西から追撃部隊が接近中や。どうする。』  



247  名前:  前前スレ292  03/09/21  20:52  ID:???  

じゃまぁせっかく書いたんで、晒します。  
はぁ、ドキドキ(爆)  

(1/6)  
 広大な平原が終わりを告げ、悠々とそびえるエメラルドグリーンの山々が姿を見せ始めた。季節は春。  
この時期になると木々の葉はすっかり変え代わり、平原の草木の色と見事にマッチした美しい緑色で埋め尽くされる。  
その世界に住む現住動物はその豊かな恩恵の元に、子を産み、育て、そして死んでゆく。  
そしてその死骸の養分を大地が吸収し、糧として新たな恩恵をもたらし、動物たちに提供する。  
何千年と変わらぬ、そしておそらく世界の終わりまで繰り返される、決して変わらぬ風景。  
 そんな風景の中に、この世界のものではありえない物体が紛れ込んでいた。  
グレイの下地にダークグリーン系3色迷彩を施したその物体は、下界の木々にすっぽり溶け込み、  
高度1000mの空を悠々と飛ぶ。鳥に似てはいるがあまりにも大きく、そしてずんぐりとした外見は、  
今運良く見るものがいたとしたら、間違いなく明らかにこの美しい自然の光景からは浮いた存在だと思うだろう。  
 それは羽ばたくわけでもなく、後部から噴出す噴流以外はまったくの不動の姿勢で  
青空を駆けていたが、その首付近にわずかながら有機物が納められており、唯一それだけが  
この微動だにしない異形の物体の中で生き物らしい動きを見せていた。  


248  名前:  前前スレ292  03/09/21  20:54  ID:???  

(2/6)  
 2体の有機物体のうち、後部に納められたほうが声を上げた。  
 「レーダーに感、機影1。9時方向」  
 その声に反応し、前部に納められたもう一体の首が左を向く。  
だが視力2.0を誇る彼の目には、吐き出さんばかりに広がった青空以外何も写らなかった。  
 「何だ?」  
 前席の男が後席に問う。  
 「分からん、IFFも応答がない。かなり大きい。こんなところを米軍機が  
飛んでいるはずはないが・・・」  
「目標までの距離は?」  
「あと10km」  
前席はすばやく判断を下した。  
「降下する」  
宣言するが否や、操縦桿を倒し一気に高度を下げる。どの道そろそろ高度を  
下げる頃合だった。正体不明機は気になるが、まずは任務を遂行せねばならない。  
気にするほどのことではない。この世界はまだまだ彼らにとって未知数であり、  
しかし自分らに危害を加えるほどの生物の存在は確認されていないのだから。  


249  名前:  前前スレ292  03/09/21  20:57  ID:???  

(3/6)  
一気に地面との距離を詰めた物体は、速度を絞って山肌を縫うようにして飛ぶ。  
緊張の瞬間。前席の男の体がこわばる。一瞬の油断が死に繋がる。男は慎重に機体を  
操り、山に隠れながら目標との距離を詰める。  
「目標まであと5km。4・・・3・・・2・・・」  
後席が距離をカウントダウンする。前席の緊張がさらに高まり、操縦桿を握った手に力がこもる。  
 「・・・1・・・ッ!」  
 少し出っ張った山をひょいと飛び越える。そのとたんに情景が一気に変わった。  
山々の間にぽっかりと空いた平原。そこに駐屯する大量の人、馬、攻城兵器・・・内通者からの  
情報が正しければ、総兵力5万の軍勢だ。突然の襲撃に、集まっていた兵士たちが将棋倒しになるのが見えた。  



252  名前:  前前スレ292  03/09/21  23:59  ID:???  

お待たせしました。続きをトゾー(・ω・)ノ  

(4/6)  
ドンピシャ。前席の男はそう内心つぶやくと、すかさず右手に握った操縦桿のトリガーを引く。  
弾丸は発射されなかった。彼らの乗る偵察機、RF-4Eに武装はない。その代わり、  
機首に納められたKA-56偵察カメラが作動し、すぐ下の卒倒する兵士、片付けられた攻城兵器、  
積み上げられた糧食をフィルムに納める。  
いったん陣地の真ん中を突っ切ると、今度は大きく外縁を旋回し、側面のカメラで撮影を続行する。  
混乱は広がる。撮影は続く。カシャカシャ。  
元いた世界なら、このような自殺行為も同然の強行偵察など論外だ。たちまち対空砲やSAMの餌食になる。  
本来はそのまま突っ切り一目散に逃げるのだが、あいにく今回の同盟軍の軍師はより制度の高い  
情報をお望みだった。すなわち、古参兵と新兵の比率、攻城兵器等の種類と数、糧食の正確な量、  
エトセトラ。そのためには、普段以上の精度の高い画質と大量の写真が必要だった。  



253  名前:  前前スレ292  03/09/22  00:01  ID:???  

(5/6)  
どの道、この世界の軍で自分らを落とす効果的な攻撃法など、ごく一部を除いて存在しない。  
時たま思い出したかのように矢が飛んでくるが、大部分は高速で旋回するジェット偵察機を  
捕らえることすら出来ず、仮に運良くあたっても空しく機体にはじき返された。恐れることはない。  
そう、一部を除いて・・・・。  
「FBを2発確認、5時方向!」  
目視で警戒に当たっていた後席が警告を発する。それを聞き、前席が軽く舌打ちした。  
FBとはファイアーボールの略で、その飛行形態から自衛隊側が暫定的につけた呼称で、  
数少ないこの世界の効果的な対空攻撃魔法の一つである。元々は大型の飛行生物を狩ったり、  
土木作業の発破用に使われていたらしいが、どんなものでも利用できるものは何でも  
戦争の道具としようとするのはこちら側の人間も同じらしい。だがそれだけに威力は十分で、  
誘導は術者の目視で低速だが、直撃すれば確実に撃墜される。  
「もう十分だ、離脱しろ!」  
FBはレーダーの効果が低いため直接目視で見続けている後席が悲鳴を上げた。前席はそれに従う。  



254  名前:  前前スレ292  03/09/22  00:03  ID:???  

(6/6)  
アフターバーナーに点火、スロットルを一気に押し切る。とたんに今までおとなしく最低限の推力を提供していた  
2基のJ79-GE17エンジンが咆哮を上げ、総重量24.4tの機体にすさまじい加速を与える。  
たちまち機体はFBを振り切り、陣地の端を突っ切ってその場をあとにした。離脱する直前に、  
後席はこちらを呆然と見上げている兵士を見つけた。まだ若い兵士だった。おそらく少年兵だろう。  
敵も必死なのだ。日本という正体不明の勢力を味方につけたリームコン国を敵に回して。  
謎の敵を撃退して、彼らはおそらく今頃湧いているだろう。だが彼らは気づいていないに違いない。  
この瞬間、彼らは自分らの情報をすべて握られ、それがどれほど致命的なことであるかということに・・・。  
あの少年兵の運命を思うと、気が沈んだ。  
彼らが偵察した軍団が、日本側が提供した情報を元に待ち伏せたリームコン国の軍勢に  
壊滅させられたことを聞いたのは、それから一週間後のことだった。  




272  名前:  前前スレ292  03/09/24  02:24  ID:???  

熱も冷めず、また懲りずに書きました。そんなわけで、また晒します。  
どこまで続けることが出来るかに関しては、ホントに未知数(爆)  

(1/4)  
 情報という名の糧をたらふくフィルムという腹に収めたRF-4Eは、もと来た道を高度3000で巡航飛行。  
帰路に着く。夕焼けが地平線に沈みつつあり、それを空から見ると地上で見るより、より美しく見える。  
その光景だけは、向こうの世界と同じだ。あちらの夕焼けも、負けないくらい美しかった・・・。  
 鳥がうらやましい、と後席の男は思った。彼らは、生まれたときからこの光景を独占できるのだ。  
地べたを這いずり回る人間には、このような道具を使わない限りかなわないことだ。道具に頼らず、自分の力で  
空を翔るというのはどういう気分なのだろう。こんな鋼鉄の機体に押し込められ、風圧をキャノピーで遮断し、  
空気を切り裂いて空を飛ぶのとはまず違うのだろう。ハングライダーなどの方が近いのかもしれない。生まれ変わりが  
あるとしたら、来世は鳥になるのも悪くないかもしれないな・・・。  
 キャノピー越しに自然の宝石に心を奪われ、物思いにふけっていた後席の注意を  
ヘルメット内に響いた警告音が呼び戻す。あわててレーダーに目を戻した。機体前方に、機影。  
大きさは先ほどの不明機とほぼ同じ。  



273  名前:  前前スレ292  03/09/24  02:26  ID:???  

(2/4)  
 「レーダーに感、機影1。12時方向。真正面、すぐ近くだ」  
 「またか?何も見えんぞ。レーダーの故障じゃないのか?」  
 後席も身を乗り出して前だけじゃなくあたりを見渡してみるが、それらしいものは見えなかった。  
 「おかしい、この大きさならもう有視界内に入ってもおかしくないんだが・・・」  
 「やっぱり何も見えないぞ。レーダーの故障だ、間違いない。無理もないさ、けっこう無理して  
使ってたからな。帰ったら最優先で調達してもらうよう、整備長に頼んでみよう」  
 しかし後席は訓練されたとおりにレーダー上の目標を追い続けた。ふらふら機体の  
前方を行ったり来たりしている。  
やはり故障か・・・。そう思い始めた瞬間、目標がいきなりこちらに向かってきた。  
かなり速い。その速度に、パイロットの本能が警告を発する。  
「こちらに向かってきた、かなり速いぞ」  
「何も見えない。心配ないよ、レーダーの故障だ」  
「いやな予感がする、念のため回避しろ」  
「了解、回避する」  


274  名前:  前前スレ292  03/09/24  02:28  ID:???  

(3/4)  
前席はスロットルを倒し、操縦桿を引く。RF-4Eは一気に高度3000から6000へ上昇。  
さらに機体を左に倒して軽く旋回、目標の軌道から逃れる。するとまるでその動きを  
待っていたかのように目標が増速、急上昇。RF-4Eに迫る。その動きに、後席の予感が確信へと変わった。  
「やばい、まるでミサイルだ。ひねってかわせ、ブレイク!」  
しかし同じくレーダーに注意を払っていた前席はその警告を聞く前にすでに行動をとっていた。  
スロットルを一気にミリタリーへ、操縦桿をひねって一気に斜め急上昇、目標の軌道から外れようとする。  
今までの緩慢な動きとは別の、元戦闘機の名に恥じぬ鋭い機動で相手の追撃をかわす。  
おそらくレーダーにしか映っていない目標にとっても(意思があったらの話だが)予想を超えた動きだったに違いない。  
とっさに判断が送れ、ギリギリでこちらの動きについてこれない。  
レーダーの目標と自機が交差する。問題ない、かわせる。二人がそう判断した、その瞬間。  



275  名前:  前前スレ292  03/09/24  02:30  ID:???  

(4/4)  
バン!すさまじい音と、機体のへの衝撃。後席は一瞬意識が飛ぶ。機体のバランスが崩れる。  
ヘルメット内に響くすさまじい警告音。意識せずとも危機感をあおられる。後席は頭を一振りして  
意識をしっかりさせると、目の前の計器をチェック。4割に異常発生の印が灯っていた。  
顔に風圧がかかる。キャノピーが破られたか。機体はバランスを回復せず急降下。高度計のメーターが  
すさまじい勢いで回る。  
 「前席、高度が落ちてる、スティックを引け!」  
 後席はレーダーを再度確認しながら怒鳴る。目標は自分らとすれ違ったあと、速度を落とさず旋回中。  
リアタックするつもりか。機体は変わらず急降下。  
「どうした、矢上2等空曹、意識が無いのか?あったら返事しろ!」  
 返事が無い。後席は軽く舌打ちし、脇に添えられたサイドスティックをつかむ。その瞬間、前から吹き寄せる  
風圧に乗って何かが後席の顔面に降り注いだ。バイザーにこびりつき、視界をふさぐ。  
オイルでも飛んだか?あわてて左手でこすると、グローブに赤褐色のしみが出来た。後席は戦慄した。オイルじゃない。  
これは・・・。