748  名前:  ドワーフの国とコボルドの国の物語  ◆PujjQOi5D.  2006/07/17(月)  17:20:39  ID:???  

2xxx年。  
魔界・・もとい、現代日本の世界から、  
数多の異世界に飛ばされ続けた『  市民と自衛隊の生き残り  』達は、  

今から語られる“この物語”の頃には  
“現代日本とほぼ同じ状態のドワーフの国”に飛ばされていた。  

この国の名は『ドワーフ・ニーフ皇国』  
この国のドワーフの女神の名を取った国名であるという。  

この国の内容といえば、  
平成日本から日本人とドワーフが入れ替わった様な国、といえば当りだろう。  
ただ、不思議な事に、空港も港もあるのに、  
殆ど現代日本の自衛隊とウリ二つの装備=空自と海自のが、全部お蔵入りしている事であった。  
というか、陸自の装備も殆どお蔵入りしている状態であった。  

それは置いておいても、おかしなことに、  
平和憲法まで謳っているところまで、現代日本とソックリなのであった。  


749  名前:  ドワーフの国とコボルドの国の物語  ◆PujjQOi5D.  2006/07/17(月)  17:25:26  ID:???  


まあ、いずれにせよ、  
方々の異世界に飛ばされまくり(まるで商社のリーマンだ)の  
『  市民20万  と  数万の自衛隊隊員  』達は、  
ほとんどようやく、元の日本の(文明)世界に辿り着いたようなものだった。  

市民達は、ドワーフの番組ではあったがTV娯楽にありつけ、  
自衛隊は、念願の“ある程度の装備品の修復と燃料の完全充填”を果たす事が出来た。  

それで、いつかすごした、  
ひさかたぶりの“安楽な日々”というやつを皆々が満喫することができていた。  

ここには、  
現代日本にある大抵の何でもが、あった。  
まったく、言う事なしの世界であった。  

だが、なかなか、  
『  長き安楽の日々よ、何時までも・・  』とは、いかないものである。  



750  名前:  ドワーフの国とコボルドの国の物語  ◆PujjQOi5D.  2006/07/17(月)  17:29:56  ID:???  


2週間ほど  

“現代日本にいるかのような快適な冷房生活”  
を送っていた彼ら“流浪の市民と自衛隊”の保護国  

『ドワーフ・ニーフ皇国』が、  

隣国からの“  武力行使による嫌がらせ”を受けるにいたったのである。  



751  名前:  ドワーフの国とコボルドの国の物語  ◆PujjQOi5D.  2006/07/17(月)  17:32:46  ID:???  


天羽日  午前10時10分  
ドワーフ・ニーフ皇国「難民宿泊地・自衛隊駐屯区」施設内  

「  臨時ニュースを申し上げます  」  

突然のブラウン管からの警告に、隊長の本田の目が鋭く光る。  
同時に、隊員達にも様様な衝撃が走った。  

「  皇国平泉年・安月・天羽日の本日午前10時  」  
「  北マンセレッド共和国軍が、新型ミサイルを発射  」  
「  ミサイルはドワーフ・ニーフ皇国領ニーフ海北部に着弾  」  
「  現在、皇国は北マンセレッドに対し厳重抗議を準備中・・  」  

「  本田さん!  」「  騒ぐな!!  」  
突然の臨時ニュースに総立ちした隊員達を、  
ここにいる隊員総ての長である本田が一喝のみにて沈めあげた。  
「  皇国政府に状況を確認してくる。皆は静かに報告を待て  」  
「  首相官邸に電話を!  」「  いかん!敵に盗聴されていたらどうする!  」  
本田は、隊員達に厳重に待機を厳命したのちに、  
駐屯地宿泊施設から線路で直通している皇国議事堂へ向けて、  
駐屯地駅に停車したばかりの『  快速電車・ドワーフ大陸1号  』へ飛び乗っていったのであった。  



752  名前:  ドワーフの国とコボルドの国の物語  ◆PujjQOi5D.  2006/07/17(月)  17:43:56  ID:???  


天羽日  午前10時20分  
ドワーフ・ニーフ皇国「  快速電車・ドワーフ大陸1号  」車両内  

「  ・・・????  」  

本田の・・・気のせい、なのだろうか?  
冷房の良く効いた、美しい曲の流れる快適な『  ドワーフ大陸1号  』の中で、  
本田のこめかみに、一筋の不愉快な汗が流れ出していた。  

午前10時20分、本田隊長は、  
ド皇国の「  快速電車・ドワーフ大陸1号  」車両内に、いた。  
「  快速・ドワーフ大陸1号  」車内は、  
繰り返し繰り返し、朝の臨時ニュースをアナウンスし続けている。  

どこからどう見ても、国家危急存亡の秋、のはずで、ある。  
なのに。  

本田の目の前の光景は、  
謹厳実直なる男の見本である本田の理解を超える光景ばかりであった。  

寝ている。どいつもコイツも寝ている。  
起きている奴は、どいつもコイツも電車内だというのに、  
懐の中のワインを取り出してグビグビグビとやりだして真っ赤ッ赤であった。  

まともそうなドワーフも、  
・・・いや、総ての、どのドワーフも、まるで、上の空だった。  

というか、  
朝っぱらから・・・電車の中で酒盛りの真っ最中であった。  





775  名前:  名無し三等兵  2006/07/18(火)  23:08:42  ID:???  

>>752  の  続き  

ド皇国は。  

先の枯泉の月に、  

突然・この世界に飛ばされてきた『  現代日本の市民と自衛隊  』を、  
なんの驚きも無く、即座に受け入れてくれた国家であった。  

それどころか、現代日本とほぼ同じ科学文明の享楽、  
ガス・水道・電気・TV等等・・を、  
なんの見返りの要求も無く分け与えてくれた国であった。  

―  重大な恩義であった。  

本田は、  
部下に仮の宿を提供してくれたド皇国に報いたく思う事、大であった。  
本田は、あの日以来、  
ド皇国の恩義に答える機会を待つ“  侍  ”そのものであった。  

なのに。  

現代日本なら、時の政府が転覆しかねない事件だというのに、  
このド皇国のドワーフどもときたら。  
報恩の気概に燃える本田の目の前で、ガーガーと高いびきまでかき始めていた。  



776  名前:  名無し三等兵  2006/07/18(火)  23:10:20  ID:???  


天羽日  午前10時30分  
ドワーフ・ニーフ皇国「  皇国議事堂駅  」出口  

午前10時30分、本田隊長は、ド皇国の皇国議事堂に到着した。  

「  ・・・  」  

謹厳な本田が、  
防大、いや、全自衛隊の鏡とまで言われた本田が、  
ぽかん、と口を空け、目を虚ろに点にして、しばし、呆然と・・動けない。  

本田の目の前では、本田の視界の見渡す限りが、  
“  赤  い  ビ  ヤ  樽  ”ドモで・・・埋め尽くされていた。  
ド皇国の皇国議員ドモは、そして国難に集まった?市民は、こんな非常事態だというのに、  
朝からどいつもこいつもへべれけに酔っ払っい、  
皇国議事堂前広場!にて“  大  宴  会  ”の真っ最中であった。  
(  ―  私の頭がおかしくなったのか????  )  
謹厳実直な本田が、不意に襲ってきた“  眩  暈  ”に、ぐらり、と揺れた。  

よく、視界がぐにゃり、と曲がるという描写があるが、  
本当のショックに襲われれば、たしかに視界は“  曲がる  ”のである。  
本田は、視界を埋め尽くした酔っ払いの大群に耐え切れず、  
ヨロヨロと構内の1つの柱にもたれかけ、  
やがて、皇国議事堂前駅の出口にて本当に眩暈を起こして、崩れ伏してしまった。  
そこには、本田が1生見たくない光景があった。  

「  ・・・・・・・  」薄れゆく本田の意識の中で、  
故国・日本の、極めて悪質な戯画が、ゆらゆらとゆらめいて、ふっつりと、消えた。  





55  名前:  ドワーフの国とコボルドの国の物語  ◆PujjQOi5D.  2006/07/23(日)  16:50:57  ID:???  

天羽日  午後01時00分  
ドワーフ・ニーフ皇国「  皇国議事堂駅  」出口  

「  やれやれ・・想像以上の平和国家ですなあー  」  

皇国議事堂駅に降りたった今井が最初に発した台詞が、これであった。  
それなりに酒宴の席は見慣れているはずの(民間の)今井も、  
国会議事堂前を埋め尽くした酔っ払いの大群団には、しばし、呆然であった。  
つーか、この暑苦しい空気、酒臭い風がどうにもたまらん今井であった。  

「  ・・・・・・  」  

駅出口でノビている本田隊長の左側に、静かに立っているのみ、の、斎藤隊員は、  
後ろからやってきた今井に振り返ろうともせず、  
そのままド皇国議事堂正面に向き合ったまま、沈黙している。  
そして飽きもせず・・その光景、を、見やっている。  
もともと、自分を高める事意外には、何事にも無関心な男なのである。  

だからそうして、  
何時もの様に何も語らず、静かに腕を組んで・・それだけ、であった。  

後の話では、  
「  すぐに連絡を入れるから  」  
と、生真面目な本田隊長が出て行って、2時間が立っていた。  

おかしいな、  
と、斎藤が本田を捜しに出てみたら・・・  
気の毒な本田が目を回していた、という事らしい。  

で、何時もの如く、  
余人には見せられぬ、という事で(  今井を  )呼んだ、と。  



56  名前:  ドワーフの国とコボルドの国の物語  ◆PujjQOi5D.  2006/07/23(日)  16:55:37  ID:???  


それにしても・・・豪快にして呑気な光景、であった。  

昭和日本と平成日本の常識の中で生まれ育った斎藤と今井は、  
この“  世にも幸せそうな酔いどれ親父ドモ  ”のだらしない姿に、  
ただただ、立ち尽くすだけであった。  

“  びょおおおおおお・・・・・  ”  

皇国議事堂前に、強いビル風が吹いた。  
そして空に舞うスルメのビニール袋につまみ類。花吹雪ならぬ袋吹雪。  

(  やれやれやれやれやれ・・・  )  

夏の日中に、こいつら熱中症で死なないのかな?、とか思ったりする。  
しかし、どこか憎めない髭親父どもであった。  

そういえば・・ステレオタイプのドワーフは、いないような。  
どちらかというと、白雪姫の7人の小人、そんなドワーフ達ぽい雰囲気であった  

「  ぐー、がー、んががががががが、、、んぐー  」  
(  ・・・、おうおうおうおうおう・・ようーけ寝る事よ・・・  )  
愛らしいというか、なんというか・・・  



57  名前:  ドワーフの国とコボルドの国の物語  ◆PujjQOi5D.  2006/07/23(日)  17:01:50  ID:???  


・・・それでも、  

この、ゴロゴロと寝転がるドワーフ人達が、  

“  流浪の平成日本の市民20万  と  数万の自衛隊隊員  ”達の、  
“  かえがえのない尊き恩人達、命かけて恩にむくいねばならぬ人達  ”  

と見る目は、斎藤も、今井も、かわらない。  
それは、気の毒にも目を回している本田隊長にしても、そうだろう。  

また、彼らが、こんな長閑な(?)国民性だったからこそ、  
時空の果てから飛ばされてきた我等、“  現代日本からの流浪の民  ”を、  
どの世界の、どの国民、どの民族よりも“  快く受け入れてくれた  ”のだろうだから。  

「  ・・いきますか?  」  

今井の呼びかけに、  
斎藤が無言で答え、本田を担ぎ上げて歩き出す。  

どの道、斎藤隊員が政治に関わる事はありえない。  
とりあえず、ここは誰に責任を負うでもない今井が勝手に動いてみよう。  
(  幸いな事に、それで総てが上手くまわっていた  )  
足元にころがる恩人達を、うっかり踏んでしまわぬよう、気をつけながら。  



58  名前:  ドワーフの国とコボルドの国の物語  ◆PujjQOi5D.  2006/07/23(日)  17:05:36  ID:???  


その時、  
斎藤の足元で、1人のドワーフが寝返りをうった。  

なんとも幸せそうな寝顔である。  

斎藤が思わず・・・  
背をかがめて何かをかけてやろうとするのを、1秒先に今井が動いた。  
不意に斎藤と今井は、  
田舎の親父や叔父たちを思い出していたのに・・気がついた。  

(  なるほどね  )  

にくめないわけが、そこにあった。  



87  名前:  ドワーフの国とコボルドの国の物語  ◆PujjQOi5D.  2006/07/25(火)  22:28:00  ID:???  


・・・怒れない訳だ・・・・。  

何時の間にか我々は、  
故郷・日本の田舎に残してきた実父や叔父たちの面影を、  
このよっぱらいドワーフ達に重ねてしまっていたらしい・・。  

足元で、幸せそうに寝返りを打っている、このあかっ面の髭親父たちに、  
隊員モードの時は、まるで愛想の欠片も無い斎藤隊員が、ぐすり、と微笑んでいる。  

・・・・戦闘モードの時は、  
まるで猛禽の様なこの男の実父様は、どんな男なのだろう・・・・?  

鉄面皮を崩して微笑む斎藤の横顔を見ながら、  
今井も自身が故郷の老父を思って、自然に微笑みが止まらない事に気が付きだしていた。  

そうして2人はそろそろ・・と、  
酒臭さ全開のビヤ樽親父たちの間を慎重に、時には笑みに顔表を崩しながら、ゆっくりと歩を進め・・、  
やがて、、、ド皇国議事堂の重厚な玄関の前に、辿り着いた。  



88  名前:  ドワーフの国とコボルドの国の物語  ◆PujjQOi5D.  2006/07/25(火)  22:44:34  ID:???  


ドワーフ・ニーフ皇国議事堂。  

どの世界でも、建築工芸において最高の評価を得るドワーフ族の彼らが、  
その飽くなき想像力と、集中力と、辛抱強さ、とを込めて作った、1000年の名作。  

現代日本の斎藤と今井には、  
独逸の質実剛健・豪壮華麗な大宮殿を思わすソレが、  
酒臭さに満ちた大気も総て忘れさせてしまうかの様な永遠の時の中に、鎮座していた。  

・・・しかし、不思議な事で・・あった。  

建物は見てのとおり、  
人間大の種族間では、“  最高のバーサーカー  ”との定評も折り紙つきのドワーフ、  
らしい、まことに偉大で豪壮な大宮殿が2人の前にそびえ立っているなの、だが・・。  

こと、実際の人(ドワーフ)のあいだには、  
故国・日本とソックリな装備で武装していた国・・とは思えない、  
ナンともいえぬ弛緩ぶり、が、  
国家の首都、そしてその中心であるド皇国議事堂の衛兵たちにも・・充満していたのだった。  

その・・1000年の豪壮、を、守る武装兵が、  
現代日本からやってきた2人の男の前に立ちはだかっている。  
立ちはだかっているのだが・・・  
斎藤の横2倍はありそうなその、ドワーフの衛兵  が、やってきて、  
「  おお、日本国自衛隊の者達か。ふむふむ。・・・宜しい。首相室まで案内してやろう  」  

と、あっさり通してくれたのには・・流石の2人も顔を見合わせてしまった。  



89  名前:  ドワーフの国とコボルドの国の物語  ◆PujjQOi5D.  2006/07/25(火)  22:56:46  ID:???  


天羽日  午後01時30分  
ドワーフ・ニーフ皇国「皇国議事堂内」首相室  

午後01時30分、3人は首相室に通されていた。  

首相室の中で、  
斎藤隊員が、王を前にして痩せ我慢をしている本田隊長を支えて、壁を背に立っている。  
今井は斎藤の前で自前の簡易な「  折りたたみ三脚椅子  」につき、  
趣向を凝らした業物の椅子に座るドワーフ・ニーフ皇国首相と向き合っている。  
※ドワーフの背は低いので、あいにくと丁度いい席が用意されていなかった。  

「  ・・・・・  」  

あっさり、首相室には通してもらえたが・・・  
なんとも意外な光景に、斎藤と今井は無言のまま顔を見合わせて、呆れている。  

平成日本の首相なら、  
心不全でぶっ倒れてもおかしくない激務中だろうに、  
このド皇国の首相ときたら、  

「  外  の  連  中  と  全  く  同  じ  」(  後の今井・談  )  

朝(  昼だ  )から、ビール樽そのまんま、の怪生物ブリ、で、あった。