940  翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  sage  2006/12/18(月)  11:45:17  ID:???  

支援投下。  

とあるPKO部隊の話。  

世紀も二十世紀や二十一世紀と記録する我等が世界。  
だが日本から1歩出てみれば、  
世界には未だ中世然とした国々が幾らもあった。  

そんな海外世界へ、防衛省に昇格した後の自衛隊は、  
「  国際貢献  」の名の下に、  
またしても「  政治  」の都合で、派遣されていった。  

「国際貢献を叫ぶ政J家の連中が行って来いっつの。」  
愚者・・もとい、工藤二士が口を尖らせて言った。  

「ボヤクナ坊や。安保な時代に比べりゃマシだって。」  
小官・・もとい、安室二尉が若い2士に苦笑しながら答える。  

昭和の時代、ある男が言った。  
「  君らが日陰者の方が、国にとっては良い時代なんだ。だから耐えてほしい。」と。  

実際その通りである。  

自衛官だって、家には親も妻も子も待っているのだから。  



941  翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  sage  2006/12/18(月)  11:50:10  ID:???  

“  自衛隊が日陰者で無くなった日  ”というのは、  

自衛隊の家族にも災難が及ぶという時代が来た、という事なのだから。  

「  まあ、戦地に行って来ました!って箔がつくのは、悪くないしな?  」  
社○党や共○党が大変強かった時代の男(安室二尉)が若い2士に答えた。  

「(  まあ、彼らの猛烈な反対があればこそ  )」  
「(  自○党と、流されやすい連中の便利な道具にならずに済んだのでもあるが。)」  

「(  まあ、これは、まだ若い坊やには言えないな  )」と、  
昭和を知る曹が、ぽかりと紫煙を吐きながら、2士には聞こえない声で呟いた。  
何時見ても微笑みを浮かべているクマラン2曹である。  

・・・そんな昭和の男達が消息を絶ったのは、  
日本国が異界に召還される2日前の事であった。  

当地の自衛隊は、それこそ引っくり返った様な大騒ぎになった。  
しかしその混乱の最中に  

「  日本国の国自体が無くなった  」という報道が世界を駆け巡った。  

混乱する各地のPKO部隊。  

しかし、そんな彼らも気がつけば、この世から消えていた。  



943  翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  sage  2006/12/18(月)  11:51:58  ID:???  

「  ・・・・・・・・・・?  」  

「  どこだ、ここは?  」  
「  あの子たち、いませんね???  」  
「  つか、宿営地は何処よ?  」  

安室二尉が車両から降りて、霧の晴れた世界を見渡していた。  
空は異国の空のままの様に見える。  
植生も変わらない様だが・・何かがおかしい。  

地形も何も変わっていない。  
ただ、見慣れた人家や宿営地が、丸ごと、「  無い。」  

自衛隊を見るや、  
御菓子や何やらを強請りに来る現地の子供達も、いない。  

何処からか、というか彼方此方から、  
映画のジェラシックパークや現実の動物園の鳥獣の叫び声が木霊した。  

(昼の投下終了〆)  


70  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/03/19(月)  03:41:27  ID:???  

―  そういや御前、あの男に似ているな。  
―  そうかね。  
―  知っているか?  
―  なにを?  
―  柵の中は、柵の中しか信用しないぞ?  
―  そりゃそうだろ?  
―  永遠に余所者と扱われてなお、いくか?  
―  いくさ。  

最後の竜騎士アン・ヴァイオラと竜ベルガの矜持を立てた男があそこに居る。  
全滅した隊の仲間達に殉じようとしている男があそこに居る。  
国家の名により虐殺者の汚名を被った男があそこに居る。  
未来を信じ未来の為に死ぬ男があそこに居る。  
後に続く者のために死ぬ男があそこに居る。  

―  英雄の叙事詩  第10章  前文より  ―  



71  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/03/19(月)  03:46:06  ID:???  

「  覚悟は、出来ているな!?  」  

部隊の最前列に仁王立つ安室二尉の声に、自衛隊の勇者達が天地に轟く雄叫びをもって答えた。  

「  魔界の死霊どもに告ぐ!  即刻貴様らの地獄へと立ち去れ!  貴様らにこの世は美しすぎる!  」  
満月を背にして吼える安室二尉の声に応じて闇の中から一斉にグエグエと嘲笑の声が轟く。  
本土から持ち込んだ照明灯に映し出されたその怪異は、まさしく海外派兵組を壊滅させた悪魔の大群。  
その声と姿に悲鳴を上げて冬の日本海の様に動揺する大陸の民、1万。  
「  天界を追われた腹いせに人間界を征服???  」  
身長2m〜4m。平均して3mという凶悪なパワーが波打つ4本腕。  
1本1本が当の自衛官の胴体ほども太い筋肉の塊が短刀並に剣呑な20本爪を煌かしている。  
「  その、元は大天使の6枚羽根だった蝙蝠羽根に賭けて恥ずかしいとは思わんのか!?恥を知れ!!  」  
ジャキジャキジャキジャキジャキ!!雄叫びを上げ続ける自衛官達が、  
着剣済みの「  零式7.62mm小銃  」通称64式小銃改と89式小銃を構えて突撃の構えを取った。  
より小柄ではあるが飛翔能力に優れた西洋悪魔像(石像)達や防弾盾の様に並んだ食屍鬼の類、数百体。  



72  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/03/19(月)  04:02:36  ID:???  

安室二尉の指揮する自衛隊の布陣するカース台を抜けぬ旧支配者たちは、  
史上最悪の手でもって自ら壊滅していった。  
後世に名高い“  クリスタル・ナハトの惨劇  ”の幕開け。  
穏健派の王族や、知日派の将軍官僚達、民情に優れた地方領主達が、  
旧支配者たちにより召喚された魔族達の供物として次々に殺戮されていった。  
この史上最悪の手段により長年の宿敵であった穏健派を一掃して浮かれ騒ぐ旧支配者たち。  
しかし惨劇の実態を何も知らぬ彼等はいざしらず、  
実際に惨劇のあとの処理を受持った旧支配者側の軍人官僚達は、  
この地獄の世界を召還した彼等自身の支配者達の愚かさに今更ながら、恐怖した。  
栄華を誇り千年の風雪に耐えた鐘楼は音を立てて崩れ、  
古式ゆかしい彼らの王宮は阿鼻叫喚の残骸だけを残して消滅した。  
その王宮の災厄の巻き添えをくって炎上した城塞都市は両手に余り、滅びた町や村は数十を数えた。  
そして歴史あるこの偉大なる大地から人の気配が途絶えたというのに、  
それでもなお、その惨劇の荒野が彼等旧支配者たちの目に入る事は無く、  
祝杯を挙げるその片端から領土分配について斬り合いが勃発する体たらくであった。  
強大な権限を持つ権力者達に牛耳られ、末端まで腐り果てた組織に、  
最早ひとかけらの真実も無く、残るは、真実を告げぬ事勿れ主義者と御追従ばかり。  
今だ正常な思考力のある者はこの魔都を見限り、地方へと次々に逃亡していった。  
そして魔族の群れは、彼らの愚かしさに深い満足を覚えながら、  
道行く街道に住まう善男善女を嵐の如く飲み込みながら要衝・カース台に向かった。  



73  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/03/19(月)  04:12:36  ID:???  

そして運命の地・カース台では、  
5千を数えた農民兵(  その多くは無理やり徴兵された  )と、  
重装騎兵連隊やゴーレム中隊相手に完勝した時とは比べ物にならない激戦が巻き起こった。  
5.56mm機関銃MINIMIと62式機関銃が塹壕線の各所で唸り、  
虎の子の携行対戦車火器までもがここが正念場と迷い無く投入された。  
中道三佐ら海外派遣組が煮え湯を飲んだ軽火器装備の悲劇はここには無い。  
各装備の有効射程距離の最大間合の十分の一も無い至近距離で、  
容赦無くブチ込まれる平成日本版・鉄の暴風。そしてそればかりでは無く、  
中道三佐ら海外派遣組の血であがなった貴重な戦訓により、  
この地に布陣した安室二尉率いる自衛隊には微塵の隙も無かった。  
弾倉交換に生じる僅かな隙を埋めるべく塹壕線から飛び出す体格優秀者の白兵突撃。  

ガッ!  

身長180cmを超える精悍な安室二尉が繰り出す強烈な斬撃。  
弾倉の交換に手間取った隊員たちが思わず目を輝かす戦場の刹那。  
中道三佐が遂に斬れなかった亡き隊員たち。  
その遺体に憑依した食屍鬼特有の筋張った黄色い身体から、  
涎を撒き散らしながら醜悪な首が虚空へとハネ飛ばされてゆく。  

だが。  

ズルリ。  

撒き散る血の海に、安室二尉の足が取られる。  



74  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/03/19(月)  04:18:33  ID:???  

しかし、そこへ突進するフル・プレート装備の斎藤の巨躯。  

両手装備のバトル・アックスが唸りを上げて、安室二尉に覆い被さる羊頭の巨腕を両断した。  

そして斎藤の1撃に続いて2の太刀、3の太刀を浴びせ掛ける先住民の長槍班の将士たち。  
羊頭が長槍班の繰り出す3本の槍の渾身の刺突を受けて仰け反りながら屈辱の咆哮を上げた。  
その咆哮のあまり大きく開いた口目掛けて背後から火を吹く89式小銃のマズル・ファイヤ。  
弾倉交換に手間取った隊員が歓声を上げて彼等が小隊長に塹壕線への避退を願う。  

それを片目で笑って愛銃の64式小銃の銃撃をもって羊頭にトドメをくれる安室二尉。  

もっとも、安室二尉の事だ。扱いに繊細さの要求される64式は、  
若い隊員や不慣れな隊員に回すよりも自分で受持つ事にしたのだろうが。  
その安室二尉の64式小銃の容赦ない銃撃により文字通り瓦解してゆく悪夢の化身。  

「  こんなものか羊頭!国民のために捧げた小官の命、取れるモノなら取ってみろ!!  」  



75  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/03/19(月)  04:27:22  ID:???  

月夜の戦場に銅鑼が盛大に打ち鳴らされた。  

背後で待機していたドワーフ族の合図の銅鑼の音であった。  

同時に、白兵突撃した隊員たちが背後に向かって文字通り転げ退く。  

視界が開けた。  

直後にエルフ族の破魔の弓が一斉射撃を開始した。  
地面を転げ回る自衛官の遥か頭上を煌き飛ぶ古代のパトリオットミサイルの弾幕。  
たちまち自衛官達を追う魔族達がハリネズミと化した。  
そして視界を奪われて彼方此方で同士討ちを始める魔族の先頭集団。  
ここぞとその胴体に叩き込まれるドワーフ班のバトル・アックス。  
そして再び銅鑼が打ち鳴らされ、  
地面を転げ回るドワーフ班の遥か頭上を血も涙もない鉄の暴風が死神の声を上げて  
魔族の先頭集団に容赦無く叩き込まれてゆく。  

完璧だった。  

海外派遣組の血によって得られた戦訓は、ここに完璧に花開いた。  
軍民共同の水も洩らさぬパーフェクトゲーム。  

塹壕線に長槍班の将士とともに転げ戻ってきた斎藤が家主を見て笑う。  

「  おう。今回は逃げなくてもいいぜ  」  
「  ああ。自衛隊がいるんだ。劉邦の真似事は今夜で終りよ。  」  

他の列国は3方の守備について動けない。だが、自衛隊のいるこの方面は、まるで負ける気がしなかった。  

「  日本召喚  外伝  平成日本の栄光の日  〆  」  


358  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/04/02(月)  02:54:19  ID:???  

「  僕は髪の毛の末端まで君が好きだ  」  

・・・。  

・・・。  

しばし、沈黙しあう若い2人。  

「  それで口説いているつもり???  」  

ややあって口を開いたのは、男から真剣な眼差しを受けている女性の方だった。  
<  金髪碧眼・耳長・容姿端麗・氷の炎のような冷たい眼差し  >  
・・・どこからどう見てもエルフの若い女性である。  
まあエルフの老婆を口説く若いエネルギッシュな男性などソウはイナイのだが。  

「  駄目かい?  」  

熱い笑みをたたえた目を微動だにせず、男らしい低い音色で愛を語る男性は・・・  
ま、見る人が見ればワカル、という奴だ。  

エルフの冷たい眼差しと男性の熱い眼差しが、  
双方の息がかかる間合いで交わされた。  



360  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/04/02(月)  02:57:11  ID:???  

ここは熱砂のダンケ油田を守る航空自衛隊の基地に隣接する自由都市リサ・ナレーニア。  
中道陸将(当時)の率いるダンケ派遣軍を迎え入れた女神の名を冠するこの都市は、  
若い自衛隊隊員にとっても定年間近の自衛隊隊員にとっても天国のような都市であった。  

地獄のような異界戦線にあって、たまにはこんな役得があってもいいだろう。  

自衛隊の航空基地側の歓楽街では空自の隊員がエルフを口説く場面が見られれば、  
海上自衛隊の艦船が寄港する港湾側では天使もどきのネーチャンを口説く海自の姿が見れる。  
まあ極めて稀に人間の都会に出てきてもツンツンするばかりのエルフのネーチャンに比べれば、  
青森娘の純白な心と肌にも引けをとらぬ天使ネーチャン(  仮称  )の歌声の美しさは、  
それを口説く海自の人々にとっては天の甘露の如き心の滋養になった事だろう。  
・・・あんまり本気で口説くと、1日中耳元で歌われて、結果、廃人になってしまうが。  

「  横田さん、またここですか?  」「  自分は妻がいますから・・  」  

身分を隠して、  
リサ・ナレーニアのエキゾチックな歓楽街で羽を伸ばしている家主が1人の男に声をかけた。  
家主の人に声をかけられた男は、少し小太りの中年男であった。  
精悍なイメージの先行する自衛隊の隊員像を大きく離れる<  極めて普通の市民な人  >の印象。  
普段着だから、知らない人は全く気が付かない。が、見る人が見れば一目瞭然。  
そんな男だった。  



361  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/04/02(月)  02:58:03  ID:???  

「  そういえば(  日本で  )自衛隊のヘリが落ちましたね  」  

・・・。  

・・・。  

白亜の大理石の部屋の中で沈黙する2人。  

リサ・ナレーニア神殿の歌姫の歌う古代神話の歌声が流れる高雅なサロンの中。  
「  魔族や怪物の襲撃が何時起きるか解からない世界ですから  」  

ぽつり、と家主が呟く。  

自衛隊のヘリは引っ張りタコだった。  

平成の世界にあっても全国的なDr.の展開が出来なかった日本。  
ましてや異世界では医者など魔法使い並に希少価値であった。  

誰しも好きで僻地にいるわけではなかった。  

生まれた故郷がたまたま僻地だったのだ。  



362  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/04/02(月)  03:03:22  ID:???  

赤子の頃の記憶。幼子だった頃の記憶。小学校に上がり、高校、大学・・・。  
何時しか子供らは本土の大都会へと離れていってしまって、  
彼等が愛する故郷には、彼等僻地の老人だけが残ってしまった。  

平成の豊かな時代ですら、僻地には医者がいなかった。  
まして危険にみちた移転世界にあって、どうして僻地に医者がくるだろう?  

彼等が頼れるのは、自衛隊のヘリだけであった。  

ましてやこんな危険な御時世だった。  
道中の危険を考えると本当は装甲車の方が良いのだが、  
装甲車だと緊急には間に合わぬ。  
間に合わぬのならヘリが飛ぶしかなかった。  
いずれにしても予算オーバー・リスクオーバーな話ではあったが、  
都会の避難所の収容人員容量にも限りがある。  

自衛隊がやるしかなかった。  

聞けば僻地のうえに、  
吸血鬼や人狼が跳梁する満月の夜、しかも霧深き天候であったという。  

そんな危険な状況で、彼らは飛んだのだった。  




364  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/04/02(月)  03:20:36  ID:???  

そして大理石のサロンに甘く静かに響く歌声は、  
古代神話の勇者を称える歌から、  
<  神に仕えた  いと高き義侠の戦士  の歌  >に代わっていた。  
「  そういえば横田さんトコは大丈夫ですか?  」  
・・・。  
家主の人に尋ねられた男は、少し考えてから、静かに答えた。  
「  これは我々に託された任務ですから・・・  」  
そういって横田氏が墜落したヘリへの哀悼のグラスを傾けた。  

実は言うとこの横田氏、海上自衛隊のダンケ派遣部隊に属する、海の空飛ぶ救急部隊の人であった。  

サメが多く出没するこの辺りは海の難所で、  
海上自衛隊が来るまでは沈めば終りの海であった。  
そんな危険な海で横田氏は彼の先輩たちがそうであったように、  
赴任以来、何も見えない乳灰色の世界の中を果敢に飛んでゆく。  
白波渦巻く海上で、  
想像を絶する恐怖に混乱している海難者の頭上に現れる、救いの英雄の広げる翼。  
深き霧に潜む魔を物ともせず救出にあらわれる彼等により救い出された先住民は、  
この僅かな日数のうちに百を数えた。  
「  ああ、そういえばコレを託されたのですよ  」  
家主の人が背後から差し出したのは、  
横田氏に救出された海の男たちの家族の、なけなしの金で購われた白い花束だった。  
「  エーデルワイスの様に美しいでしょ?神々にしか捧げられない異国の地の花だそうですよ  」  
「  そんな貴重な物を・・勿体無い・・  」  

知らぬ人には誰からも気付かれぬ勇者が、少し恥ずかしそうに、笑った。  

(  日本召喚  外伝  古代の神話の歌が流れる暗がりにて  〆  )  




466  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/04/12(木)  00:19:44  ID:???  

<  おまけ1  安室二尉の身分について  >  

原作では高官が徹底的に狙い撃ちされて、  
残った幹部が「  安室二尉  」だけだったつー話。  

(  それ、なんてゴルゴ13ズ?  )  
(  TTRPG出身軍板住人版・魔法使いならその程度の芸当は可能じゃね?  )  
(  オメエ、自衛隊舐めてねえ?  )  
(  つーか日米韓北4軍が崩壊したシナリオを投下しようとしていた翡翠だぜ?>45章  )  
(  オマイ頭良いな。よし俺の軍師に(ry  )  

改定案(  日本召喚  )では、出世して三佐に昇進しているため、  
ある程度の運用の不自由さを削減している。  

(  幹部大量殉職の軟化  )  

だが作者としては不満だったりする。  

ニ尉しか生き残れない過酷な世界、と言う設定でこそ翡翠F世界だから。  



467  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/04/12(木)  00:22:16  ID:???  

<  おまけ2  VS  ガーゴイル対空戦について  >  

夜に襲来してくる「  体温の無い  」ガーゴイルを倒すに当たっては、  
クマラン氏が遠回しに諸兄にヒントを洩らしたように、  
<  いっそ第2次大戦レベルの火器  >がベスト。  

ただ、その理想的な装備Xの運用Yについては高射特科の小官殿の光臨を待つ、という話。  
まあ、馴れ合いになりすぎるだろうkara  却下、状態だが。  

個人的には自衛隊版ゲパルトの87式自走高射機関砲  
の出陣を仰ぎたかったのだが、北海道から抽出するのがマンドクセ。  
って北海道以外の高射が装備しているどーかワカラン。  

他のオマケ解答ならぬ回答は、またテキトーに興に乗った時に。  




473  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/04/12(木)  00:39:22  ID:???  

驚天動地であった<  日本召喚元年  >から70年の歳月が流れた。  

そしてここ、  
日本の宿敵であった<  魔法使いギルド  >の本拠地、  
“  白く輝ける六芒星  ”大学校の学長室で、  
あの日本召喚元年から現在までを生き抜いた唯1人の日本人が永遠の眠りにつこうとしていた。  

・・・元自衛官“  大公  ”、  
ギルド序列第1位“  魔術師  ”その人である。  

「  僕は永遠に呪われた愚者なんだ!  」が口癖だったが故に、  

この世界で名誉ある位階である“  魔法使い  ”の称号を与えられし時、  
ファーストネーム“  愚者  ”の名を彼の師より与えられし男、  
そしてかの“  禁呪呪文戦役  ”では  
全世界に“  スターダスト・ウオー  ”の戦禍を与えし男、  
それゆえに全世界から憎しみを込めて“  Gウイルス  ”の仇名を与えられし男、  
だが、旧文明世界に“  パラレル  ”の扉を開いて旧世界の人民を新世界に導いた男が、  

今、死のうとしている。  



474  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/04/12(木)  00:41:12  ID:???  

外は荒れ狂う吹雪の夜だった。  

「  さても災禍の中心その人の最後の夜に相応しき夜かな  」  

とゴシップ好きな連合国の群臣たちがあれやこれやとさざめく中、  
大公は彼が唯1人愛した魔法使いの少女の肖像を秘めたロケットを握り締めて、  

「  あの愚か者達の最後の生き残りが死ぬだけだというのに、なんと五月蝿い奴らだ  」  

と、賢者長にあるまじき悪態を誰にも聞こえぬ小さな声でつぶやいていた。  

ああ、これがあの、若かりし自衛隊現役ニ士の頃ならば。  

「  工藤が寝ている?!何?何を言っても起きてこないだと?!  」  

「  あの馬鹿が!!!!!!!起こせ!叩き起こせ!!責任は俺が取る!!!!  」  
「  親にも殴られた事の無い餓鬼が!!!!!!!  」と景気良く罵りながら、  

あの安室二尉殿が幹部にあるまじき蛮行をイヤというほどブチ込んでくれるものを。  

「  つーか、幹部がニ士如きのためにしゃしゃりでてくんなよバ幹部のコンコンキチがっ  」  



475  翡翠(星砂)  ◆F1KoBsy57M  sage  2007/04/12(木)  00:42:20  ID:???  

・・・。  

・・・寒い。  

この“  パラレル  ”世界の中で、  
最も温かなベッドの中に包み込まれているというのに。  

「  ・・・ニ尉、殿・・・  」  




737  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/04/23(月)  00:45:14  ID:???  

穴?  いや、穴への答えは答えたよ?  
足りない部分があるなら補修してくれ。  
んで↓  

2−5  

(  ま、火龍のファイヤーブレスを相手にしているよりはマシだな  )  

民間の右手100m向こうでは、  
斎藤が左手で火龍の背中の羽根を、右手で火龍のブレスを模しながら笑いかけている。  
斉藤の背中は火龍のファイヤーブレスによるケロイドがまだ治っていない。  
本来なら今だベッドの上で地獄の苦しみを味わっている筈だが・・・  
流石だな。鍛えに鍛えた体、いや、精神がその苦痛をネジ伏せ切っている。  
・・・本当は脂汗モノのハズなのに。  

それにしても春のまだ浅い時期でよかった。  

風はいまだ冬の冷気をまとって、身心に心地よかった。  
そして日差しは柔らかく、大地は熱を有するには至っていなかった。  
そう・・・置かれている状況は糞だが、冷たい草と土の寝床はある意味、極上の戦場だった。  
火傷も間違い無しどころかサソリが何所に潜んでいるか解からぬ砂漠、  
何所にチロチロと赤い舌を踊らしている毒蛇がいるか解からぬ夏の草地、  
不可解な魔力で維持された肉体を土中から伸ばしてくる死体どもが埋没している古戦場、  

そんな自然の地雷原とは無縁な<  ここ  >が戦場で本当によかった。  



738  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/04/23(月)  00:48:28  ID:???  

3−5  

(  ああ、そうだな  )  

斎藤の場違いなユーモアに同じく笑みで返しながら、内心、退却したい民間。  

逆に、戦場で真価を発揮するタイプの相棒の方は、  
背中のケロイドの痛みはともかく、精神的には全然余裕のようだった。  
流石、元自と言うべきか、国外雄飛組と言うべきか。  
これでアイツが64式の1丁でも持っていればなあ・・・。  

目標までの距離は、目測でおよそ200メートル。  
斎藤なら1発で確実に1人を殺れる距離だ。  

まあ、遠距離目視時に具体的な比較対象になる建物や車輌が無い状況なので、  
ド素人が仕方なく片手の人差し指と親指の目分量で測っている上に、  
状況の都合上、大地に伏しながら乾いた馬糞越しに見上げる形だから・・・  
実際の間合いは、どうかな。  
つーか、こんな角度での、こんな障害での目測なんざ想定していねえ・・・  

それにしても匍匐・・・匍匐・・・匍匐か・・・死ぬよりマシ、だが。  
まあ、相手に迫撃砲があったら匍匐ドコロじゃないけどね。  
もっとも、敵が迫撃砲や空兵を装備していないのが確実だったから参戦した訳、だが。  

匍匐前進中にドラゴンフライやガーゴイルに襲われたりしたらと思うとゾッとする。  




741  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/04/23(月)  00:54:13  ID:???  

739  埋められないならいいよ。  
740  はいはい。  
で↓  

4−5  

目測距離、およそ190メートル。  

だんだん弾道がヤバクなってきている。  
・・・俺らの期待の1発逆転劇は、まだか?  
ワーテルローのグルーシーのお馬鹿宜しくプロイセンなんぞに先を越されないでくれよ?  
相手は最初は虚ろな目でトリガーハッピー宜しく、遥か上を撃ちまくってくれていたから、  
自分まじりのコチラも200mも接近できたが・・・。  
(  本当に、空兵はいないんだろうな?  )(  しるか  )  
(  本当に、自衛隊は来るんだろうな?  )(  しーらーねー  )  
地面に手の平をつけた民間の人指し指が空と前方を指差しながらクルクルと回る。  
そしてソレに同じく手の平を地面につけながらお手上げを示す斎藤。  
もっとも、今更ドラゴンフライがお出ましした所で、手持ちの弓矢は全部使いきってしまったが。  
これで斎藤並にデキル兵士がいればなあ・・・自分ではオトリにしかならん。  
自分が斎藤並にデキル兵士なら・・・もう斎藤の短剣が目標の首を薙いでいるものを。  
目測距離およそ180メートル・・・手前の地面に機関銃弾が突き刺さる、その時だった。  

敵の背後から、草がイキナリ立ち上がって、目標の1人を呑み込んでしまった。  

驚く目標達。ものの1秒もしないうちに<  草達  >に呑み込まれていった。  
<  草達  >に呑みこまれた彼等は、まるで震える人形の様に倒れ伏して、  

<  草達  >だけが残った。  



744  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/04/23(月)  00:59:57  ID:???  

742  
悪意のために誰が暇無しの時間、金無し金を限界まで使うかと。  
んで↓  


(  速いな  )(  そりゃそうさ  )  

180メートル向こうで、「  草  」が敬礼、  
そして「  草  」はコチラの返礼を見る間も無く現場の処理に取りかかる。  

・・・何者かに操られた自衛官達がこの世界の彼方此方を荒らしていた。  
その彼等に向かって日本国から放たれたのは同じ自衛官達であった。  
彼らは日本全国から集められた文字通りの精鋭達であった。  
何者かに操られた自衛官達を狩るために各国で傭兵が雇われる中、  
各国の正規軍をなんなくと蹴散らしていた生ける操り人形達を次々に屠ってゆく日本の精鋭達。  
・・・何者かに操られていたとはいえ、かけがえの無い身内を国家になりかわって討った彼等。  
そして手早い交信が行われ、瞬く間にヘリが到着、哀れな身内を回収して飛び去ってゆく。  
おそらく他の敵性分隊も1人残らず消してしまったのだろう。  
そうでなければ貴重なヘリが呼ばれる訳が無い・・・なんという仕事の、速さ。  
自衛隊討伐に向かった傭兵隊の中で生き残ったのは、恐らく俺ら2人だけだというのに。  
その、かつての身内を回収する彼等を見まいと後ろも見ないで去る2人。  
・・・ヘリの凄まじい爆音と爆風が背中に襲いかかる。  

まるで、彼等の魂の慟哭そのものの、ように。  

(  5−5  完了  )  





836  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/04/26(木)  02:50:11  ID:???  

>>735-744  (  1−5  )の続き。  

草原の小さな白い花が風に揺れていた。  

春はまだ浅く草原を拭き抜ける風はいまだ冬の冷気をまとって身心に心地よかった。  
そして日差しは柔らかく、大地は熱を有するには至っていなかった。  

そしてサワサワと波打つ草の海の中に、傭兵達の亡骸が見え隠れしていた。  

・・・様々な装いの彼等。  

中世欧州世界が好きな学徒達にはたまらない光景が広がっていた。  

其処に倒れているのは、スイス傭兵のような装いをした男であった。  
その隣に倒れているのは、どこの名門の子弟であろうか。  
若くハンサムな青年の着込んだ白い鎧が日の光を照り返している。  

その向こうに1400年代のイタリア製の完全鎧に似た装備が野に伏している。  
その側に青地に星の紋章をちりばめた盾が転がっていた。  
・・・あの紋章は何処の家の者だろう?  
この世界の紋章官はあの盾の持ち主を見事、鑑定できるのであろうか。  

その骸達の側で、民間と元自は、大の字になって寝っ転がっていた。  
その2人の見上げる空には、ただ、済みきった青があるだけ。  

あの「  草達  」に呑みこまれたうつろな目に、この空は映っただろうか。  

・・・いい奴等ばかりだったのに。  



838  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/04/26(木)  02:57:19  ID:???  

民間の側には馬に覆い被さるように死んでいる銃手の亡骸があった。  

彼はどこの国からきたのだろう?  
息が臭いのには閉口したが、陽気で気のいい奴だった。  
隣の茶色のこゆい髪をした青年は、傭兵には似合わぬ透みきった目をしていた。  
あのうつろな目をしていた自衛官たちも、元はこんな目をしていただろう。  

そして今は光りを宿さぬ目。  

もう、微動だにしない目が悲しかった。  

その彼の頬の側で、小さな白い花が揺れ、  
バッタの様な虫がキチキチと鳴きながら飛び跳ねて行った。  

冷たい冷気をはらんだ風が流れてゆく。  

青い空に、地平線のむこうに。  

「  賞金はもらえそうもないな  」「  まあいいさ  」  
あいつ等の葬儀はどうやって出してやろう?  

あの自衛官たちは国葬でもって迎えられるのであろうか?  

それとも「  犯罪者どもめ!  」と、口汚く罵られるのであろうか。  



839  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/04/26(木)  02:59:44  ID:???  

2人が王の元に帰ったのは、それから数日してからの事だった。  

「  よくぞ生きて帰った  」  

髭の豊かな王が機嫌良く迎えてくれた。  

言葉の通わぬ主従であったが、それもまた良いものだ。  
むしろ、言葉の通わぬ者同士が、カタコトで交流する味が、なんとも良い。  

その相手が王であるなら、尚更であった。  

意外にも髭の王はいたく御機嫌のようだった。  
それに、“  2人の帰路の盗賊退治  ”にも。  

「  いや、それは違うんですよ。それは自衛隊がやりましてね  」  

と、事実を伝えても、どうも彼には別の意味で取られているらしい。  
「  相変わらず、なんと慎み深い者達なのだ!気に入ったぞ!  」  

王の愛想の良さを判断するに、そんな事でも言って感嘆しているのだろう。  
・・・違うんだけどなあ。  
が、言葉の通わぬ主従だったから、どうしようもない。  

王が機嫌良く与えるまま5000リーブの報奨金を受け取った2人は、  
銃眼ばかりが目立つ「  カ・シェル  」の城門を後にした。  



840  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/04/26(木)  03:07:07  ID:???  

王の元への帰り道、2人は戦場から最寄の村に立ち寄った。  

そこで仲間たちの屍を回収するための男達を雇うつもりだった。  

荷車や馬は十分にあった。  
だが、2人だけで傭兵隊の屍を全部運ぶには時間がかかる。  
そしてまごまごすれば鐘の音とともに、恐怖の夜がやってくる。  
2人は急がねばならなかった。  
そして2人は隊から事前に貰った前金のすべてを吐き出す事になるが、  
我々は生きており、彼らは皆、死んでいる。迷う事はなかった。  

だが、2人が向かったその最寄の村は、悲惨の坩堝であった。  

王から金を貰うだけ貰って、  
自衛隊の自動小銃に立ち向かわなかった馬鹿どもが盗賊に早代わりして、  
思う様に雇い主の領土を略奪中、の真っ最中であった。  
家畜達の断末魔は凄まじかった。  
しかし、泣き叫ぶ娘達とその家族の慟哭に比べれば鈴虫の音に等しかった。  

頭で考えるより先に体が動く。  
しかしだからといって、2人で傭兵部隊を倒せる訳も無い。  

仕方なく2人は手持ち無沙汰の馬鹿面をして、娘達が犯される側を歩き回った。  



841  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/04/26(木)  03:18:57  ID:???  

(  まずは彼らの規模を把握しなくては  )  

幸い、馬糞交じりの大地の中へ鼻まで突っ込んだ2人だった。  
その汚さ具合といったら、  
雇い主の領土で乱暴狼藉を働くこの連中とまったく見分けがつかなかった。  
もっとも、集団での略奪の快楽の最中に、  
“  仲間  ”の事まで気を回せる賊などそうそういないが。  
というか“  仲間  ”の1人1人が腹立たしい競争相手であった。  
マゴマゴしていれば金目の物は無くなり、女たちも冷たくなっているだろう。  
金で集まった何処の馬の骨とも判らぬ者同士、  
なんたって、か弱い村人から略奪して嬉々としている者同士、  
誰がかまうものか、遠慮するほうが馬鹿というものだ。  
まして2人が面を泥だらけの覆いで隠しきった今、  
2人がよそ者だと気づく者は1人もいない。まずは目の前の獲物の確保だ。  

(  ・・・30人ってとこか  )  

民間がざっと計算したところ、賊は30人。  
9人が娘達に覆い被さっており、4人が家々から金品を巻き上げている。  
10人は7つの家に分かれて飲食中であり、  
7人は凄まじく暴れる豚やニワトリと格闘中だった。  

この国の王は弓兵やクロスボウ兵の割り当てを500戸に1人と定めるほどの  
治世の名君であったので諸国から流れてきた食い詰めたちには魅力的に映ったのだろう。  
実際、賊に純潔を汚されている娘達は美しい。  
余所の・・そう、パーレ7世の大国などは都市部の妙齢の娘ですら老婆に見えるというのに。  



842  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/04/26(木)  03:30:15  ID:???  

(  30人か?  )(  だろ?  )  

斎藤の目が座っている。  
斎藤はヤル気だ。  

しかし正直、30人が相手では彼等が酔い潰るのを待つしかあるまい。  

(  ヤルならどこから消す?  )(  村外れからだ  )  
(  いきなり親玉からかよ  )  

ぼそぼそと段取りを練る2人の前で、娘達の肢体が賊の体の下で見え隠れしている。  
彼女等が自衛官を篭絡した疑惑者の筆頭である魔女や吸血鬼、夢魔であるなら。  
全く馬鹿な奴等だ。ここにこれほど飢えた野獣たちがいるというのに。  
やつ等ならただ指をしなやかにクネらせるだけでたっぷり相手してやるだろうに。  

もっとも、  
この世界の分屯地や宿営地を片端から荒らした奴等の背後に誰がいるかは、  
考えなくても判るというものだ・・・日本国には彼らに対する免疫が全く無い。  
まさか、正面ゲートから堂々と乗り込んでくる敵がいるとは誰も思うまい。  

・・・娘達が痛みに耐えかねてすがるような目を此方に送ってくる。  
自動小銃を持たぬ身が悲しかった。  

たった1丁の64式があれば、今すぐ1つの村が救えるというのに。  

そんな苦虫を噛み潰した2人に賊が振り返って叫んだ。  

(  投下終了  )  



158  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/05/07(月)  02:25:16  ID:???  

<  中世欧州  >とは農業の時代であった。  

1説によるとある欧州の帝国の<  中世時代  >とは、  
日本の著名大都市程度の人口から東京都に匹敵する人口を得る歴史であった。  
人口増加が人間の繁栄の尺度とするなら、  
それは後の産業革命に匹敵する拡大の歴史であった。  
人口増加を支えるのは当然ながら“  食  ”である。  
その食を生み出したのは欧州の農村であった。  
つまり<  中世欧州  >とは農村の時代であった。  

東京都に匹敵する人口を誇った帝国は大部分が農村暮らしであった。  
自衛隊「甲」師団の勢力を超える都市は両手両足で数えるに足り、  
とある年代の文化層が好む呼称「  ラストバタリオン  」程度の都市は、  
その構成員数の3倍近くもあったが、  
とどのつまり、それ以外の人口は総て農村にあったのだった。  

しかし、その美しき平和、麗しき繁栄の美姫=農村が今、ここでは、  

古代ギリシャやローマの時代の如く、  

ただただ征服されるもの、収奪されるものとしての対象と見られていた。  



159  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/05/07(月)  02:26:55  ID:???  

「  オマエラ!何を見ている!この女はオレんだ!余所に逝け!  」  

身も知らぬ娘の上に覆い被さった男が、スッポンの様に首を向けながら叫んだ。  
それに対して(  汚い尻を晒してよく言うぜ  )と、鼻で笑う2人。  
まあ、こういう時だけは全身鎧じゃない格安スタイルが効果的という好例か。  

そんな2人のハイハイ、という態度に何を思ったのかこのスッポン、  
「  なんだ・・?オメラ、童貞か?か?女ってのはなあ  」  
急に機嫌良くなったかと思うと娘を座らせ、背後から勢い良く突いて見せ始めた。  
「  こうやるんだよ、こう!  」  
おうおうおうおうおう・・・頑張るネエ・・・スッポンハゲが、よお。  
「  こうすると女は喜ぶんだ!  」  
喜んでネーって・・・イテ―から身をよじるワ、うめくワすんだろがボケ。  

このスッポン野郎を見ていると第1回十字軍が、  

ギリシャ女の美しさを餌に募兵されたっつー与太も真実味を帯びてくる。  
エドワード3世がある城を落とした時に語ったという、  
「  (  中略  )彼女達は騎士の救いが無ければ生まれの卑しい弓使いにでも犯されただろう  」  
というのも、与太じゃないのかもしれん。ハイランドの悲劇の報告も。そして、  
貴族が兵卒に混じってあらゆる階層の女性、無論、尼僧も襲ったっつー与太もな。  



160  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/05/07(月)  02:29:44  ID:???  

(  助けて  )  

娘の、涙に光る目が訴えている。  

2対2ならなあ、瞬殺なんだが・・・30人はチト、無理・・・。  
だがまあ現代白人兵に比べれば驚くほど小柄なのが幸い、と言うべきか。  

(  斎藤  )(  なんだ  )(  見ていられん。後は頼んだ  )  

これだよこれ・・・オマエが自衛隊に逝けなかったのはコレだよコレ、  
と、斎藤が頭を振っている。  
チエッ、元はと言えばオメ―がヤル気出すのがイケネ―んだろうが。  

・・・という訳でとりあえず、  

スッポンを囃しながら飛び跳ねつつ背後に回って、  
スッポンハゲの後頭部にショートスォードをフルスイング。  
・・・後、29名。  

その後、娘に覆い被さる。  

なに、分捕り品の奪い合いで殺し合い、なんざ茶飯事すぎて誰も気にしねえ。  

なるたけ馬鹿っぽく野蛮にやっておけば・・・誰にも注目されん。  



161  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/05/07(月)  02:32:47  ID:???  

助けを求めた男に覆い被されて、娘の目が限界まで開かれている。  

が、ここで娘の口を塞いで  

(  助ける、安心。目、閉じる。オマエ、黙る  )(  ・・・  )  

・・・通じた。  

これで私もジョン万次郎の眷属の仲間入りだ。  

腰だけ動かして、抱いているフリ、開始。  
日よけのマントを羽織っていてよかったよかった。  
片手で口を塞ぎ、娘は目を閉じ、マントを羽織った尻はオサカンそのもの。  

うむ。これで私も誰が見てもレイ○マン確定ですな(  涙  

・・・私の尻振り振りが余りにキュートだったのか、  
それともショートスォードの打撃音が余りに強烈すぎたのか、  
族の1人が近づいてきた・・・彼もまた小柄であった。そして、  
あっという間に斎藤によって物言わぬ物体と化して地面に転がった。  

・・・これであと、28名。  

そのうち、頃合を見て娘1人は逃がす事が出来た。  

リスクを背負いに背負って、たったの1人だけ。  
これが現実。  
依然、そこかしこで女達の悲鳴と家族の慟哭が吹き荒れている。  



164  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/05/07(月)  02:42:54  ID:???  

ここに1丁の64式があれば、もう済んでいる状況だというのに。  

斉藤のアウトレンジでちょちょいのちょいだ。  
村人が人質に取られてもオールOK。  
1人1人、正確に眉間をブチ抜かれてボサっとしているヤツはいない。  
じゃあ弓矢はというと、突進されると多数に無勢で、とても敵わん。  
やっぱりここぞという時はフルオートを浴びせれる自動小銃が無いと無理だろう。  

(  状況は?  )(  変わり無し  )(  夜までふけるべ  )  

2回目の確認でも族の状態は変わらない。じりじり焦るが仕方がない。  
さっさと酔っ払ってくれねえかな、と切に願うも、状況は遅々として進まぬ。  
そんな訳で状況を見ながら、草叢へと身を隠す。  
・・・娘を犯すフリも、村人から略奪するフリも、そうそう演じていられない・・・。  
そのうち、残念ながら、逃げ出した娘が偵察隊に捕らえられて引き摺られてきた。  
無念。2人でこの状況では村外の偵察隊(  2人  )までは読めなかった。  
強引に片腕を引っ張られている彼女を見れば股の出血が逃がした時より酷い。  
「  このマントは誰のだ!  」「  あああ、アイツラのだ!  」  
隊長らしき奴が娘にあげたマントを取り上げて、1時の手下達を集めている。  
随分と物騒なべしゃりを意訳すれば↑こんな感じだろう。  
見通しの悪い草叢からの確認では、親玉?の古くからの子分らしき男が7名、有象無象が22名。  
「  あいつ等ならすぐにわかるぜ!上から下まで糞まみれだったからな!  」  

・・・・これだよこれ。  

せっかく鉄製の面覆いで顔をバッチリ覆って匿名希望状態も完璧だったのに。  



165  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/05/07(月)  02:45:59  ID:???  

曲がった事と不正には途端に殺気走る斎藤と、  

情に流されて方針を徹底できない俺の1番悪いパターンがこれ。  

(  見捨てるか?  )今なら俺ら2人だけは逃げ延びられるんだがね。  
(  ・・・  )・・・聞く方が馬鹿だった。はいはい。斎藤、目が据わっています。  

もっとも私も斎藤がいなきゃ目が座っているんだろーけれど。  
30対02・・・念の為、娘もこれ以上苦しまないように・・・殺しておくか。  
それとも生きた財宝である娘たちは殺されないと踏んで、あくまで夜を待つか?  
娘は50m向こうで観念してマントの裾を掴んで瞑目している。  
その顔面に向けて愛用の弓矢の照準を合わせる。  
出きれば逃げる算段のトラップを幾重にも張り巡らしたいが、時間は無いだろう。  
つか50mなんて距離、俺じゃ無理なんだけどね。  

やっぱり夜までまつか?  

その時。  

一瞬だけ、太陽の光が有り得ない方向から飛び込んできた。  



166  翡翠(星砂)  ◆X9uEcr1WoA  sage  2007/05/07(月)  02:47:11  ID:???  

「!?」  

眩しさに目をその方向に向けると・・・「  しー  」っと、  
指を唇に立てるジェスチャーをする草のお化けが・・・  
(  久間2曹じゃねーの!  )(  ほう  )(  しー  )  
見れば、久間2曹が手信号を向ける各所に、いるわいるわ。  
・・・何時の間に???  

森が動いた。草が動いた。  

空間が人の形を得て動き出した。  

ぞぞぞぞぞぞ、と動き出した怪異、全部で・・・○○名。  
彼等は待っていたのだ・・・たったの1撃で完膚無きまで制圧できる機会を。  
辛抱強く、辛抱強く。こちらに向けた久間2曹の顔には蟻が列をなしていた。  
しかし、常人には耐えられぬであろうその状態のまま、ぞぞぞぞぞぞ、と  
音も立てず要所に布陣した終えた彼等は・・・  

たった1発のスタン・グレネードで勝負を決してしまった。  
(  実際には数発が放り投げられていた  )  

スタン・グレネードが炸裂を終えたとき、そこには、  

自衛隊の特殊部隊の戦闘力の爪跡が残されているだけだった。  

(  今夜はこれで〆  )  

32  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/10(金)  02:00:49  ID:???
ショート  B1+  

民間の今井がファンタジー世界で寝ていると、  
ある日、狐の赤子と卵が1つ、枕元に置いてあった。  
そしてその傍で、何処から来たのかカラス天狗氏が「んがごご」と寝息を立てていた。  

「何じゃこりゃ?」  
珍しい事もあるもんだと、狐の赤子は頭にのせて、  
今井がもう1つの卵の方を斉藤隊員に見せに行くと・・・  
斉藤隊員の手のひらの中で、卵からドラゴンの子が孵ったではないか。  
「ほう、可愛いなあ」  
目を細める斉藤隊員の手のひらで、ゴツイ彼を母親と見たドラゴンの幼生が、  
ミャーミャーと頭を(手の平に)擦り付けて愛嬌を振りまいていた。  

ちなみにカラス天狗氏の方は、酔っ払っているのか起こしても起きなかったので、  
そこらへんにほったらかしてある。  

ショート  B2  

それから数年が立った。  
ファンタジー世界では、この世界の住人の年月は飛ぶように過ぎていても、  
異界からやってきた我々平成の世の連中はぜんぜん年を取らない。  

そんな訳で、未だにパツンパツンの肌艶の斉藤隊員に、  
数メートルのデカサに成長した2脚歩行可能のドラゴンが、  
彼の差し出された手のひらをミャーと言いつつ、ベロンと舐めるのであった。  

「ずいぶんと成長しましたね〜」  
今井が人に慣れた(!)ドラゴンに感嘆の声を惜しむ事なく、その成長したドラゴンの子を見上げている。  
「食わすのが大変だがな」  
そういう斉藤隊員の頬をベロンと舐めるドラゴン君。  


33  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/10(金)  02:03:55  ID:???
ショート  B3  

まあ物持ちのズバ抜けている+大概の新規隊員を育て上げてきた自衛隊の事だから、  
ドラゴンの子を育て上げるのも可能だったのかもしれない。  
「じゃ、行って来る」  
そう言うと斉藤隊員は、成長したドラゴンの子の背にまたがって、  
草原や森に潜む虎や熊、野生馬、野生牛を狩りに出かけていった。  

で、今井の寝床にいた狐の赤子はと言うと、  

今では立派な九尾の狐(赤子のくせに)の幼生に変身、  
そのフサフサな白と金の毛で、戦闘後遺症に悩む女性隊員に大人気であった。  
「キッ君可愛い〜!」  
まるで女子高生時代に戻ったかの様に嬌声を上げる田中隊員たちは、  
夜もこの子を奪い合って枕にしているらしい・・・。  

ショート  B4  

そんな、女子高生・・もとい、女性隊員に大人気!の九尾の狐に、  
心中深くやっかんだカラス天狗氏が今井の耳元で、  
「アイツだけ女子に人気とは許せんでゴワス!」  
とか言っていたが、カラス天狗氏は「可愛い!」というか「カッコいい!」だからなあ。  
だが安易に女性隊員からの密かな人気(人気者なんですよ。意外に。)を教えると、  
調子乗って神通力を無くしてしまうかも、だから、  

「任務に精勤していれば人気も出るから早く池!」  

と本多隊長の元へと叩き出す今井。  
ヘリの燃料が切れて偵察にも事かいて久しい「この時の」自衛隊とって、  
時の氏神の様に重宝がられているこのカラス天狗氏。  
自分が意外に女性隊員に好かれている事も知らないまま、今日も空を飛んでいくのであった。  
(ここまで前投下分+追記)  


34  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/10(金)  02:05:03  ID:???
ショート  B5  

「折角、斉藤氏の養子になったんですから」  

斉藤氏の頭の上でミャーミャーと鳴いている(猫かよ)ドラゴンの赤子。  
だが、このまま成長すると、どんな食性に育つかわからん。  
この子たちを連れてきたハズのカラス天狗氏が、彼らの出生については口をつぐむので、  
仕方なく今井の提案で、人間の手(火)を通した料理しか食わせないことにしてみた。  
(斉藤氏が目を細めているこの子が、憑かれた目をして犬や人を追いかける図とか、見たくないからなあ・・)  

んで、数年がたったのだが、案外イケている所を見ると、このまま人類文明に取り込めるかもしれない。  
最初のころは、呆れた事に脱脂粉乳のミルクでもOKだった。  
で、現在は、斉藤氏のハンティングで捉えた熊のバーベキュー、もとい、サイコロステーキを食わしたりしている。  

で、今のところ、この子が、生物を追っかけたりする事は、皆無。(ウソみたいなホントの話)  


ショート  B6  

「最初はナイルワニや入り江ワニもどきの恩知らずじゃないかと冷や冷やしてましたが」  
「逆に入り江ワニもどきから俺を救う事もあるよ」  

クメール戦争のころまでは、今井からプレゼントされていた馬に乗って出かけていた斎藤隊員。  
現在(ショートBの時代)は立派に成長したドラゴン君の背にまたがって、湿地帯の移動とか随分楽になったそう。  
で、危険な所ばかりうろつく斉藤氏の相棒は今井の人と相場が決まっていたが、  
(命がけの職務なのに、あえて任務以外で危険な事や余計な訓練等をする人とか滅多にいない)  
国家統治者代理になっても、行こうと言われればホイホイついていく人とはいえ、所詮は帰宅部の民間人。  
ヒルのいる森や湿地帯には金輪際近づかないし、犬の背より高い草が生えている場所にも絶対に近づかないので、  
斉藤氏としては「いい相棒ができた」と言った所だろう。  

そんな訳で斉藤氏は、途中で荷物を今井に預けて、今日もドラゴン君と湿地帯でワニ狩りだそーな。  


35  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/10(金)  02:31:28  ID:???
ショート  B7  

次元ジャンプ最初のゾンビ戦で、深刻な戦闘後遺症に悩む女性自衛官の田中嬢、  
最近は寝ても覚めても九尾のキツネの子の「キッ君可愛い!」であった。  

で、ふさふさの白い毛と金の毛のキツネの子はと言うと、  
そんな(戦場の)傷心の乙女達に猫可愛がりされて育ったためか、  
ヌイグルミの様な可愛らしさを益々パワーアップしながら成長している。  

「ふむう。可愛がられて育つ子は可愛くなる、というのは本当らしい」  

そんな女性隊員たちにきゃあきゃあ言われて可愛がられている彼を興味深げに見ていた  
元ミスナ先遣隊司令かつ2児のパパりん・西崎○佐、  
何やらこの子に芸を仕込もうと遊び始めたではないか。  

そしてキツネの子の彼が得た得意技は、空中とんぼ返りからの瞬間移動。  
ここまでは、化けキツネらしくて実に良い。  

しかし、2児のパパりんの西崎○佐にしこまれたせいで、  
「女性隊員の首に巻き付いてリアルマフラーになる」というエゲツナイ必殺技を開発してしまった。  

当分、女性陣人気投票No.1  の座は、揺らぎそうも無い。  


36  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/10(金)  02:37:52  ID:???
ショート  B8  

九尾のキツネの子に女性陣の人気を独占されて、日々面白くないカラス天狗氏、  
最近は無頼を気取って、下品なハルピュイヤ族と毎日毎日、喧嘩の日々。  

「お前はカッコイイんだから、しっかり自分を持て!」  
と今井は叱咤するが、  

勘違いも過ぎて、すっかりヒネクレテしまっていた。  

しかし。  

上品な南嬢(女性陣の頭格で、実に美人)と、たまたまコーヒーブレイクの縁があって以来、  

今ではその修験道服の洗濯も日々欠かさず(カラス天狗なのに)、  
男性隊員にねだってマスターした自衛隊風ノリ付けもビシッ!と決まりだしてきた。  
(勿論、その草鞋草履も何時もピカピカである!)  

やっぱ純情悪たれの男の子の修正法は、大人なお姉サマとの縁を多く作っちゃるに限る。  

ちなみに南嬢とのコーヒーブレイクの機会を設けたのは本多隊長。  
やっぱり本多隊長、見ている所は見ているぜ☆  


37  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/10(金)  02:46:26  ID:???
ショート  B9  

ちょっとした紛争のとき、自衛隊は巨人の捕虜を1人得た。  

彼は北欧の戦士を思わす衣装で、また、酷く人間っぽかった。  
身長4mの彼は、そのデカさを除けば、まるっきり北欧の気の良い親父だった。  

「・・・こんな奴捕虜にしても、国内法の何に触るか判らん・・・」  

と、何時もの自衛隊風ボヤキとともに、  

その巨人氏、  
自衛隊から今井、今では東方ライン皇国に、回されてきた。  

で、幸い、今井んトコには魔法学校の少女が2人いて、  
言葉は通じなくても意思疎通は彼女らの魔法により、  
「双方の脳内イメージの交換」で、なんとか会話が成った。  

で、彼女らの協力の元での調べによると、どうやら巨人には巨人の世界があるらしい。  

「へえ、北欧神話ってマジなんだな」と、本多隊長・斎藤隊員・民間今井が顔を見合す。  

で、巷でよく見かける狂暴な連中は、  
その世界から落っこちて、「悲しみの余り狂っている」連中なんだそーな。  

で、現在その巨人氏は、  
「東方ライン皇国派遣社員」として、  

こちらの自衛隊施設科で、その上背と怪力を重宝されている。  




103  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/11(土)  22:03:37  ID:???

少女は眠っているかのように見えた。  

次元ジャンプ以来、  
転戦に転戦を重ねた歴戦の戦士・陸上自衛隊普通化隊員・斉藤一(はじめ)は、  
廃墟の中の崩れかけた家の中で、  
幼い弟らしき幼児を抱いているその娘を発見した。  

凍死者である。  

「・・・その家も“そう”でしたか・・・」  

普通化隊員きってのナイスガイ・クマラン2曹が、外で待っていた。  
アメリカ海兵隊経験者の2世、またはハーフという触れ込みだが、  
本部や情報部にいた者の常で経歴なんぞは当てにはならぬ・・  
もっとも、他ならぬ斉藤一も謎の多い人物であったが。  

・・・そっちも、“そう”だったのか?  

眠っているかのように綺麗な姉弟を抱いて出てきた斉藤は、  
前日までは氷が張っていた後らしき水溜りの中で紫煙を流している彼に、  
無言のままの視線を投げかけていた。  




105  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/11(土)  22:17:29  ID:???

不思議な事に、廃墟と化した村は、  

氷が解けた跡らしい水溜りと、凍死者を除けば、何処にでもあるミスナの平凡な村であった。  
人によってはソー○ワー○ドの匂いのある、ごくごく普通の中世の村。  
そして村には、つい昨日まで、  
健康な生命と生活に満ち溢れていたらしい名残が、至る所に残されていた。  
この、昨日までは平和だったような村に、いったい何が起きたというのだろう。  

斉藤ら、平成の世の自衛隊が、初めて異界に強制召還された時、  

そこは人間側と怪物側、  
否、秩序側人間勢力と混沌側人間側勢力が真っ向から衝突した戦場であった。  

斉藤らは、  
海の向こうの某国の横暴のために、にわかに盛り上がった愛国心?に後押しされて、  
富士の総火演を遥かに上回る2万の兵力と20万の観衆とを集めた国家祭典規模の大演習の最中にあった。  

しかし気がつけば、そこは殺戮の暴風の吹き荒れる地獄であった。  



106  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/11(土)  22:30:31  ID:???

「お待ちください・・」  
魔法学校の生徒だったという少女が2人、駆け寄ってきた。  
別の次元世界で、  
斉藤と今井に対し「ファイヤ・ボール」を雨霰と打ち込んできた、  
漫画の中の主人公の様な桁違いの呪力を見せ付けた少女達。  
しかし、  
今は彼女らがいた世界の100分の1の実力も発揮出来ないでいるのだが。  

(次元次元で、精霊たちや魔法発動システムがまるで違うらしい。)  

そんな彼女達が斉藤が抱いている姉弟を覗き込んで、  
何やら魔法語めいた呪文を唱えていた。  

何時もの事だが、何を言っているのかは判らないが・・  
そして彼女らは、平成の世の医者がするように、  
幾らかの触診を済ませた後で、  
2人揃って「ほっとした」ような表情で胸を撫で下ろしていた。  

「大丈夫です・・彼女達は助かります・・」  



107  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/11(土)  22:47:35  ID:???

斉藤とクマラン2曹、そして魔法学校の少女らが、  
そんなやり取りをしていた頃。  

村の教会跡で、  
この場にいる全自衛隊のトップであった安室2尉と「今井」が、  
教会跡に残された惨劇の残に絶句して、言葉も無かった。  

安室2尉は、平成の世に昭和の気風を残す、熱血溢れる好ましい幹部自衛官の1人であった。  
「今井」は、平成の世の、ごくごく普通の民間人であった。  
しかし彼らも強制召還以来、あらゆる修羅場を見て、  
日常に埋没させていたあらゆる本領を発揮せざるを得なくなっていた。  

そんな、異世界の「あらゆる場面」を見たはずの彼らが、言葉も、無い。  

安室2尉の護衛である隊員たちが、教会の中に入ろうとして、  
余りの血生臭さに、息を呑んで、凍り付いていた。  

そして安室2尉と「今井」は、静かに教会の外に後ずさりしながら出て、そして、  
その重い扉を、ゆっくりと閉めた。  

今井は、その中から1本のハルバートを持ち出していた。  

村の最後を守った、勇敢な戦士の形見として。  



108  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/11(土)  22:58:21  ID:???

ショート  C1  

クマラン2曹と、カラス天狗が、青空の下で寝っころがっている。  

「あんさん、つよおおますな」  

「あんたもな☆(^^)」  

「・・・・・」  

「・・・・・」  


ぼーっとした昼下がり。  

小官どの(安室2尉の通称)の隊が到着するまでは、ただただ待っているだけの、平和な時間。  

ひゅるるるるる、と、上品な方のハーピー族が天高く鳴いて、雲間の向こうを泳いでいる。  

「きもちよさそうでごわすな〜」  

「んー☆(^^)」  

・・・って、アンタ、賞味国は何処なのさ?  

・・・あんさんだけには言われとーおまへんわ〜  

平和な、平和な、ファンタジー世界の昼下がり・・・  




141  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/12(日)  01:55:11  ID:???

ショート  C2  

クマラン2曹と、カラス天狗が、青空の下で寝っころがっている所に、  
「あ”〜、そこに居ましたか☆」  

戦国武者を数名引き連れて、ぽかりぽかりと民間今井がやってくる。  

自衛隊と共に死線を潜って幾星霜。  
最近は最強の僥倖を誇ったタッグの斉藤隊員が、  
ざぶざぶと湿地帯でワニ狩りばかりしているものだから、すっかり暇になったらしい。  

そういや今井も勝手な人間だが、  
斉藤隊員も随分自由奔放な方である。  

いくら親友でも、あそこまで独断専行を許せるものなのかな?  
「はじめっち、もしか情・・」  

娑婆の人に言われた斉藤隊員は、フッと笑って、空を見ているだけだった。  

やれやれやれ。まだまだ男らしさか優しさが足りないよなあ、俺。  

「じゃなくて、・・娑婆に愛人囲っていねえ?」  

「俺の給料じゃあ、無理だあ」  

愉快そうに笑う斉藤氏。ああああああああああ。すまねえなあ、、、。  




147  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/12(日)  19:34:53  ID:???
>>111  関連作品  

ショート  E1  

「あ”−今井君?ちょっとちょっと」  
「今井の人」に呼ばれた「今井君」は、現在18歳(いいなあ)。  

根っからの軍事ファンらしく(もっと幼い時に)例の大演習の時に巻き込まれた市民の1人である。  
そして自衛隊に守られた市民20万人の中で、  
最も早く現実へと適応・覚醒した市民の1人でもある。  

「は、はい!なんでしょう!」  
うはっ。キラキラしていてイイなあ。。やりなおせたらな・・じゃねえって。  

「実はね、小官どのの隊がさ、そう、あの毎回最先鋒を務める精鋭部隊。  
 そこがちと人手不足でね。それで君を見込んでウチから派遣社員として行ってもらいたいだな。」  

「本当にいいんですか!?僕、身長170cmも無いんですよ!?」  
「169cmの健康体で学力優等、その上、自衛隊に理解がありゃ十分OKだべな。」「やったー!」  

「(↑羨ましい奴;)まあ、あれだ。イザっつー時はソ連軍と本土決戦で刺し違える気だった世代だから、  
 ちょおーっと荒っぽいと思うんだけど・・まあ、君なら大丈夫じゃね?  

 バスケOK、ラグビーOK、柔剣道OK・・  
 性格立ち振る舞いは先輩年配組に特に好かれそう・・完璧だな。」  

「いきます!」って、あらら。人の話を聞かないでいっちまったよ。  

・・まあいいや。書類は俺が適当に書いておこう・・。  



148  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/12(日)  19:38:40  ID:???
>>103-107の続き(104作品は翡翠以外の人の作品でふ)  

昨日までは牧歌的な村だったはずの廃墟の中央で、弔いの炎が舞いあがった。  
その炎は、村人たちの最後の拠り所であった教会を燃やす炎であった。  
人の血肉が焼ける臭いとはまた違った、毒気を含んだ煙が風に流されて行く。  
「・・・」「・・・」  
後ろも見ないで後ずさりをしながら外に出て、教会の重い扉を閉めた後、  
この場の最高位者であった安室2尉と、「今井」は、  
しばし御互いの顔を見合わせた後、手持ちの車輌を側近くによせ、まずは赤外線確認。  
次に「今井」配下の魔法学校の少女2人を呼んで、「魔」の反応が無いかを確認、  
その後、「専門家」のクマラン2曹と斎藤隊員がブービートラップの確認。  
これら総ての「異常無し」の確認を取った上で、改めて2人が中に入って死体を引きずりだしてきた。  
部下にはさせられない。これは上官の仕事である。そして、部下には到底見せられない光景であった。  
クマラン2曹と斎藤隊員だからこそ、潜入させたのである。  
そして、異常な世界の中の亡骸たちを、どうにか部下に見せられる状態にしてから1体1体運び出す。  
安室2尉は主に老人を、膝の壊れている今井は主に子供を、成人男女は曹の2人が。  
「中はどんなだったんです?」などというたわけた質問をする者はいない。  
旅客機墜落事故の現場整理を担当した者達も中に入れなかったのである。  
つまり、これは、尋常な世界の成せる業の現場後では無かった。  
「本隊はどうなっているのだ?」安室2尉が本隊の安否を憂いて空を見上げたが、そこは、  
何の変哲も無いソー○ワール○風の世界の空が広がっているばかりであった。  
後ろで遠巻きにしているドワーフ族がうめいた。「奴らが帰ってきたのだ」  
その周りで、その美しい顔を歪めてエルフ族が顔を背けた。ホビッド族は髭の後ろに隠れていた。  



149  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/12(日)  19:40:21  ID:???

北ミスナの空の下、自衛隊の混成戦闘団と今井の軍閥が青ざめた顔をしている時、  
ここ東方ライン皇国では、平和な時間だけが流れていた。  
そして自衛隊の行動サポートのために結成・練兵されている派遣用将兵らは、  
1番最初に支給されたショートスォードと小盾で、来る日も来る日も白兵戦を磨く日々であった。  

また軍閥の首魁である今井に特に懇願され、軍事顧問として派遣されていた自衛隊の諸氏らは、  
今は特にやる事も無いので、今井がWW2から連れてきた日米英蘭の石油会社のテクノクラートと、  
馬上にて石油の埋没している可能性のある地域を探して汗を流す日々であった。  

たしかにミスナ上空はグレムリンが跋扈する空域のため、  
あの空では自衛隊の誇る装備が使えないままでいるが、  
燃料確保の目処さえ立てば、自衛隊に恐れる存在は何処にもいない筈・・であった。  




168  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/14(火)  17:53:04  ID:???

ショート  C3  

クマラン2曹とカラス天狗氏が青空の下で寝っころがっている所に、  
小官どのの隊がやってくる気配が風に乗ってやってきた。  
「じゃあ、そろそろ失礼しまっさ」  
カラス天狗氏は立ちあがり、空の彼方へと飛んで行った。  
それを見上げながら、見まわり地点に到着した安室2尉たち。  

そして、接近しなければとても判らないほど、巧妙に偽装され、  
かつ、風通しのよい清潔な塹壕で敬礼しているクマラン2曹。  

安室2尉は、ボコボコに腫れ上がった顔のクマラン2曹から正午前の報告を受け取った後、  
クマラン2曹を引きとって、ここを「菅原一曹と新人隊員達」に任せて帰路につく。  
警戒線から離れて2人だけになったところで、クマラン2曹からの「本当の報告」を聞く小官氏。  

「どうだった?」「流石カラス天狗氏(^^)」「蘭君が相手を認める事もあるんだなw」  
「他には?」「底の見えぬ奴ですよ☆(^^)」「ん・・、御苦労・・、・・その軟膏は?」  
「今井氏に売りつけられましたよww(^^)」「灰色の忍者氏特製軟膏●か?効き目は?」  

「流石忍者薬ですね凄い効き目です☆(^^)2尉も如何です?」  
「洋モク1箱と交換でいいかな?」  
「まだストックを持っていたんです?(^^)」  
「これくらいは(部下に)好きに吸わせてやりたいからな・・・」  
「・・・(^^)・・・。」  

そんな2人の頭上の青い空の遥か上空で、  
上品な方のハーピー族が、気持ち良さそうに歌を歌っていた・・。  



169  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/14(火)  17:54:28  ID:???

ショート  C4  

「ふふふふふ☆どうだい?クマラン氏は強かっただろ?w」  
「もー、おこったってーな旦那。御蔭でワイのハンサムな顔が凸凹でっせホンマw」  

こちらは今井んトコの陣地。  
で、顔が凸凹になっているカラス天狗氏の、充実し切った様な顔に軟膏を塗り捲っている今井氏。  
「実際カラス天狗氏と試合って引き分けるなんて、タダゴトじゃねー☆」  

試合った後らしい2人の側を通りかかった時、今井氏は、  
目の前のアオタンだらけの2人を見て、含み笑いを止めるのが大変であった。  
女性の人や文系の人にはワカランかもだが、互角の相手が居ることの、幸せ。  
カラス天狗と言えば、古き良き日の本妖怪の代表選手。  
まあ中には人さらいの人食いの僧侶たぶらかしのと言った馬鹿者も多ではあるけれど、  
基本的には修験道という荒修行をしていた人達のなれの果て(江戸期は特に)。  

人面獣身の有翼人でカラスのクチバシから人語を喋る図、を、進化というべきか、畜生界に堕天したというか。  
武芸に優れ有名な創作?では源平合戦の源義経(みなもとのよしつね)の武芸師範だったり。  

んな妖怪戦士の代表格と五分とか。ほんま、あーた、何者ですかと。(www))  



170  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/14(火)  17:59:15  ID:???
ショート  C5  

「でもあれだよね。鞍馬山のカラス天狗氏と、クマラン氏。偶然なのかしら?」  
「・・今井殿?カラス天狗氏は“何時”“我々に”回して下さるのです???」  

カラス天狗氏がいないとこで、今井の戦国武者勢が、ちょっと不満そう。  
こちらの手持ちの馬は先の大戦で大悪魔に全部乗っ取られており、  
ゆえに我らは新撰組宜しく徒歩で駐屯地周辺を見廻りする日々。  
流石に徒歩では効率悪いという事でソー○ワール○なこの世界の村村から現「金」で馬を借りたりしているけど、  
馬代だけでも馬鹿にならない訳で。(正確には銀貨だが、面倒臭いので金貨でまとめ借りしている)  

馬は仕方無いとしても、  

この世界では“当然ながら”彼らの武具を細かく修繕できる職人など、居ない。  
それで仕方なく大都市まで出向いて、ここの仕様の刀鍛冶に鎧職人らに高い金を払って、  
少しでも故国の武具に近い奴をオーダーメイドしているのだけど・・やっぱ、なんか、違う・・。  
御蔭で今は、サーベルとかシャムシールがメインウエポンとか。(ランスを使えよランス)  

まあ、でも、そりゃ燃料の(も)無い自衛隊さんも同条件。  
六四式や八九式小銃、どうやって整備しているんだろう?  
そういや小官どのらは六四のパーツ1つ1つの名前を、ソラで言えていたっけ。  
斎藤氏も目隠しで組み立てて見せていた。(以外に簡単だぞ?とか言うがホンマかいな?)  

・・・彼らに「靴の小人さん」は要らないのかもね☆  

「自衛隊に燃料補給のメドが立つまで」「そんな」  
「いいじゃん。アチラには南嬢がいるんだもん。」「・・。」  

カラス天狗氏の姿に心底脅える戦国の女房たちと、  
カラス天狗氏がヌイグルミかペットにしか見えない現代女性の感覚じゃー勝ち目無しよね。  
本多隊長が居る御蔭で、人間世界でも幸せだろうね、カラス天狗氏。  


171  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/14(火)  18:19:18  ID:???

ショート  E2  

今井の人に呼ばれた今井君(現在18歳)が、「いきます!」って、  
人の話を聞かないで行ってしまってから、数日が立った。  

まさかこの子が後に、  
アーデルハイド嬢をバイクに乗せて、凄い事やらかすとはね☆  

それはさておき、  
今井君の教官は「菅原一曹」に決まったそうな。  
小官どのの新隊員(正確には違うが)達への愛情がわかろうというものだ。  

新隊員挨拶では、  
自己紹介の場でそれぞれが次元ジャンプ前後の辛い思い出を語り合い、  
意外な程に親睦感が深まったそうな。  

「なんか、スッゴイ、いい雰囲気でした」  

「んー、そうか・・先輩達に可愛がられるようにな・・」  



173  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/14(火)  18:55:56  ID:???
>>148-149の続きでふ  

「う・・ん」  

本田隊長の腕の中で、  
凍死していたはずの少女と幼い男の子が目を覚ました。  

「ほっほー!譲ちゃん達は運が良い!!!」  

さっきまでは後ろで遠巻きにしていたドワーフ族達が歓声を上げて、どっと駆け寄ってきた。  
「歩くビヤ樽」だの「エルフとドワーフの喧嘩は犬も食わぬ」など、  
色々オイオイ、な喩えにされる髭モジャ妖精族の彼らだが、(妖精族の癖に嫌に人間臭い種族だ)  
根っからの武辺なだけに、彼らの飾り気の無い温かさは本物であった。  
(民話にも歌われた有効種族からの折り紙つきの“無愛想な気難しさの壁”をクリアさえすれば)  

「奴らが帰ってきたのだ、と言ったな?」  

斉藤隊員が、小柄でずんぐりとした体に戦斧を抱えた彼らに質問を投げかける。  
途端に、  

ほっとした笑顔を見せかけていたエルフ族が再び顔を歪めて顔を背けだした。  
ホビッド族は髭族や斉藤のズボンにしがみ付いてワナワナと震えていた。  
そしてドワーフ族は、まるで猛犬の様に歯を向き出して、勢いよくつばを地面に吐きかけた。  
大本は大地の妖精族である筈のドワーフ族のこの態度が、“奴等”をよく物語っていた。  





184  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/15(水)  04:32:54  ID:???

>>173の続きでふ  

0400  

少し早めの時間である。  

当直で巡察中の「菅原一曹」隊員氏らの班が、  
朝食担当の糧食班を起こすために、暗闇の中でぼそぼそと声をかけ始めている。  

世界の総てを浄化する朝日は、まだ昇らない。  
そんな肌寒い中を、パチパチと燃える焚き火の炎を見つめる、小官どのと、「今井」。  

「私のお父さんは、両腕に刀傷が一杯あるの!お願い!探してください!」  

狂気の様な勢いで死体を掻き分けていた少女の、  
その振り向いた時の涙一杯の目が、2人の瞼(まぶた)の裏にちらついて、離れない。  

村の教会の中で、最後まで戦ったであろう戦士の形見、ハルバートの槍。  
今井が握っているその槍の影が、焚き火の炎と悲しげに踊っていた。  

何も語らない今井から、小官どのが、  
その槍を受け取ってぽつりと言った。  

「あの娘の親父さんのハルバートなんだろうね」  

安室2尉は炎に照らされた彫像の様な顔で、槍だけを静かに握り締めていた。  

ぶわり・・、と、焚き火の炎がひときわ熱く、燃えた。  



185  :翡翠(星砂)  ◆djVD4M.9Gw  :2006/11/15(水)  04:40:41  ID:???

地の精霊族の末裔であるドワーフ族が猛犬の様に牙を剥き、大地につばを吐き捨てていた。  

原型を留めている亡骸は少なかった。  
もっとも、全部原型など留めていなければよかった。  
原型の留めいてる亡骸は、奇妙なアートと化していた。  
その「悪意そのものを塗りたくった図」を見たのは、  
安室2尉、クラマン2曹、斉藤隊員、民間今井の4人だけである。  
「死者への弔いである!方々、死者への無礼の無き様、宜しく願いつかまつる!」  
戦国時代からの生き残り・剛勇・山中鹿介の掛け声のもと、  
何時ものゾンビ化封じを兼ねた懇切丁寧な埋葬が始まった。  

「やってやろうぜ!・・・やるしかねえしな!??」  

陸自の誰かの勇ましい声が聞こえてくる。  
その声に助けられた者達は、いったい何名にのぼるだろう。  
あちこちで嘔吐を催す者達には、斉藤隊員の激が飛んだ。  
「まだ生存者がいるかもしれん!気分の悪くなった者は・・!!!」  
汗まみれ、血まみれの埋葬作業が始まった。もっとも、今に始まった事じゃあない。  
あちこちで嘔吐する者達には無理をさせず、生存者捜索に振り分ける。  
もう、何度も繰り返した事だ。効率!効率!効率!  

しかし、結局のところ、夕刻までこの作業にかかりっきりだろう。  
現場に顔を背けたエルフ族とホビッド族には、  
無理をさせず、  
ケンタウロス族とともに後方警戒に当たって貰う事にした。  

ここは災害現場じゃない。・・戦場なのだから・・。  




202  :ほーせき蜜柑  ◆T0nRgrwDYs  :2006/11/17(金)  23:46:30  ID:???

ショート  D1  

「・・・それだけ自衛隊に対する市民の期待が高いという事だ。」  

大隊本部の天幕の中で、西崎司令の訓辞が続いている。  
西崎司令の訓辞を聞いているのは本多隊長だ。  

「身の引き締まる思いです。」  
「そうだ本多君。今後も市民本位で・・。」  

そこまで言って、  
生真面目な訓辞を延々と続けていた西崎司令は、  
「フウ、。」と、なんだかな、な、深い溜息をついて、腰を下ろしてしまった。  

そして、几帳面に西崎司令の訓辞に全身で答えていた本多隊長も、  
なんだかな、な、表情で、天幕のあらぬ方向を見つめている。  

ふう。  

はあ。  

市民本位。  

・・・いや、まあ、確かに、迷う類の事では、無いのだが。  



203  :ほーせき蜜柑  ◆T0nRgrwDYs  :2006/11/17(金)  23:47:23  ID:???

ショート  D2  

確かに、現在の時空流浪の市民の大勢は、自衛隊に理解がある。  
しかし、我らが意のナナメ上を逝く「生命体」が存在する事は、  
何も極東某国某国某国の専売特許では無いのは、今更の事である。  
例えば、某社○党系の議員などは、  
某自○党の議員のように、数の論理でゴリ押ししたりはしないだろう。  
だが、綺麗事の演説はともかく、  
彼らとて、彼らの属する団体の利益誘導を図っている訳だ。(例外除く)  
だが別段、彼らが悪い訳ではない。  
政治家だって、最初は理想の念に燃えて出馬するものなのである。  
そして、喉を潰した街角演説で、数の論理で黙らさられる議会の中で現実を知り、変貌する訳である。  
要は、理想の念に燃えた新人議員すら変貌させてしまう場を作ってしまう国民のレベルが問題なのである。  
もっとも市民のレベルがどうの、というのは、現実を知らぬ学徒の常なのだが。  
学徒は知らぬ。世の中の企業体がどんな思いで経営に苦労しているかを。  
別に殴打足蹴でもって部下を馬車馬のように追いたてるのは某系企業の専売特許では無い話であった。  

また人間は、自分に直接利害が及ばぬ限りは、我関せず。  
偽善といわれようが赤い羽共同募金に寸志を入れれる人間ならば上出来だ。  
そしてこれが何かと責任を問われる官僚の身であるなら、尚更だ。  
当然ヤルべき自らの使命に殉じて動いた幹部が、報われる事無く首を切られるのが現実世界。  
だから、個々人は口をつぐむ。見猿言わ猿聞か猿。だが、彼らはまだまだ上等な部類だ。  
何せ、責任を負わぬ者に限って、やたら声がデカイ。  
郷土から出征してゆく若者を万歳三唱で送った連中が、復員してきた彼らに何をしてやっただろう。  



204  :ほーせき蜜柑  ◆T0nRgrwDYs  :2006/11/17(金)  23:49:07  ID:???

ショート  D3  

「でも、あの時よりはマシです。」  
「ああ。」  

PKO出動の時くらい、心配顔で見送ってもバチは当たらないじゃないか。  
自衛隊派兵反対!を叫ぶなら、国会議事堂前でやってくれよ。  
(対外イメージ操作のための演出なら見上げたものだが。)  
こちとら国民の血税で給料貰っている以上は、その勤めを果たさにゃならんだけだ。  
新婚だってーのに・・。  
故郷(クニ)の老親(おや)を見れるのは俺だけなのに・・。  

「では、すまんが、行ってくれ。」  
「本多隊、行ってきます。」  
「部下達を、宜しく頼む。」  

本多が大隊本部の天幕から出てくると、奇妙な連中が叫んでいた。  
ファンタジー世界に来ても、奇妙な事を叫ぶ奴は叫ぶ。  
まあ、大演習の観客が飛ばされたのが主体なのでその絶対数は多くないのだが。  
「・・・・・・・。」  
本多隊長がげんなりとした表情を浮かべていると、  
本多の袖を引っ張る者がいた。  

頭の上にキツネの子を乗っけた今井氏である。  



205  :ほーせき蜜柑  ◆T0nRgrwDYs  :2006/11/17(金)  23:50:50  ID:???

ショート  D4  

「まま、さ、どぞ」  
「公務中ですので・・」  

・・・また、今井氏に無理矢理「浜辺」に拉致られた。  
まあ、隊は斎藤が居るから大丈夫だが。  
本多が「公務」「職務」「公務員」「命令」等を連発して、  
なんとかやんわりとこの袖を掴む手から逃れようとするのだが、  
どうにもこの人は「しつこい。」・・職務中なのに。  
まるで故郷で御見合い写真を持参して家にまで上がり込んで来る叔母さん達のようだ。  

それは置き、今井の側には、  
今井に雇われたらしい戦災未亡人達の綺麗所がそろっている。  
良く見ると、  
耳の長い華奢な妖精族の女性もいる。・・エルフ族か。  

・・・あれは、噂に聞く櫻の木の精霊・・それともハイエルフ族?  
なんとも華やかな薄桃色の和服を羽織って、なんとも言えぬ見目の良さ・・。  

・・・なるほど、安室(2尉)さんの言うとおり、美しいものだな・・・。  



206  :ほーせき蜜柑  ◆T0nRgrwDYs  :2006/11/17(金)  23:51:34  ID:???

ショート  D5  


・・・・・・・・・・。  

「・・・マスコミに叩かれそうな図ですね。」  
「まあ、そう言わずに1杯。桜酒です。美味い(甘い)ですよ?」  

・・・非番の日に、  
クマラン2曹が1斗樽ほど一気飲みして、妖精族から大歓声を受けたという、アレか。  

「すみません、本当に急ぎますので・・。」  

では、これをどうぞ、と言われて、何やら今井氏が押し付けた物。  

「これは・・・?」  
「ミスナの戦いで得た至宝の1つで、“思い出石”という古代魔法具だそうです。」  
「?」  
「まあ、御守り代わりに持って行ってください。」  

「本当に辛くなったら、この“思い出石”を月に掲げてみてくださいね。」  

・・・今井氏は奇妙な首飾りを押し付けて、どっかに逝ってしまった。  
1人取り残された本多隊長は、キツネに包まれた様な態で、自分の隊に帰り、  
居住区の行動制限の規制緩和を叫ぶ市民の声を尻目に、  
近隣の大都市との交易路の警護へと出発していった。  
その2日めの夜。  
望郷の念に駆られて泣いている若い陸士達が居たので、一緒に“思い出石”を掲げてみた所・・・  



207  :ほーせき蜜柑  ◆T0nRgrwDYs  :2006/11/17(金)  23:55:46  ID:???
ショート  D6  

3日目の朝  
福島隊と交代して居留区に戻ってきた本多隊長は、  
何も言わず今井氏の手を握り締めていた。  

そして、本多隊の若い陸士の面々が後から後から御礼にやって来た。  
「何があったんです?」  
と今井氏が聞くまでも無く、彼らの方から話してくれた。  

彼らは2日目の夜、  
国の家族を思って塞いでいる所を本多隊長に発見されて慰められていたが、  
急に何かを思い出した様子で本多隊長が首飾りを月に掲げてみたらしい。  

すると、首飾りが暖かげな光を放ったそうだ。  
そして、えも知れぬ芳香を放って、明滅して消えた、と。  
で、首飾りは消えたが、暖かな空気と芳しい芳香はずっと各自を取り巻いていたと。  
ある者は首飾りの放った光の中で、天使たちが踊っていたとも証言していたそうな。  
(ある者は祭囃子の笛の音すら聞こえたという。)  

この不思議な出来事にすっかり度肝を抜かれて、彼らの悲しみも何処へやら。  
そんな訳で、本多隊は良い雰囲気でそれぞれが仮眠につけたらしい。  

そしてその夢の中で、  
平成の世で彼らの帰りを待つ家族と何事かを楽しく話し合えたそうな。  
そして滂沱の涙を流して御礼をいって帰っていった隊員達。  

・・・この様子だと、もっと、はじめっちと探検に行かなきゃイカンなあ・・。  
(大勢で行くと、カンの良い山師や他の冒険者に取られちゃうから・・)  

(ショートD“夢の中で会えた光景”〆)